JP4028275B2 - 電子部品用薄膜の製造方法および電子部品 - Google Patents

電子部品用薄膜の製造方法および電子部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックコンデンサや薄膜積層型フェライトなどの電子部品を製造するためのセラミックグリーンシートやフェライトグリーンシートなどの電子部品用薄膜を製造する電子部品用薄膜の製造方法、およびその製造方法に従って製造された電子部品用薄膜を用いて製造した電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の電子部品用薄膜の製造方法に従って製造した電子部品用薄膜を用いた電子部品として、図8に示す積層セラミックコンデンサ(以下、「セラミックコンデンサ」ともいう)51が従来から知られている。このセラミックコンデンサ51は、複数の内部電極2a,2a・・を有するセラミック誘電体層(以下、「誘電体層」ともいう)2と、誘電体層2の上下に形成されて誘電体層2を保護する保護層53,53と、誘電体層2および保護層53,53の左右両端部を覆うように形成されて内部電極2a,2a・・に対して交互に接続された一対の外部電極4,4とを備えている。この場合、誘電体層2は、一例として厚み20μm程度のセラミックグリーンシート12の表面に内部電極2aを形成したセラミックグリーンシート12a,12a・・が積層されて構成されている。また、保護層53は、一例としてその厚みが100μm程度となるように、所定枚数のセラミックグリーンシート12,12・・が積層されて構成されている。
【0003】
このセラミックコンデンサ51を製造する際には、最初に、セラミックグリーンシート12を製造する。この際に、まず、セラミック粉体、結合剤(バインダー)および有機溶剤を混合してスラリー状塗布液を生成し、このスラリー状塗布液を薄膜製造用の剥離フィルムに塗布する。次に、この状態の剥離フィルムを乾燥工程で乾燥させることにより、スラリー状塗布液内の有機溶剤を揮発させて除去する。これにより、スラリー状塗布液が固化してセラミックグリーンシート12が作製される。続いて、誘電体層2として用いるセラミックグリーンシート12上に、導電性ペーストからなる塗布液を用いて内部電極パターンを印刷し、これを乾燥させて内部電極2aを形成する。この結果、セラミックグリーンシート12aが作製される。次に、剥離フィルムを剥がしたセラミックグリーンシート12a,12a・・を所定枚数積層することにより誘電体層2を形成する。次いで、剥離フィルムを剥がしたセラミックグリーンシート12,12・・を誘電体層2の上下に所定枚数ずつ積層することにより、保護層53,53を形成する。続いて、一体化した誘電体層2および保護層53,53を所定のチップ形状に切断した後に、所定温度で焼成する。この後、誘電体層2および保護層53,53の両端部に外部電極を形成することにより、図8に示すセラミックコンデンサ51が製造される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のセラミックグリーンシート12(電子部品用薄膜)の製造方法およびセラミックコンデンサ51(電子部品)には、以下の問題点がある。すなわち、従来の製造方法では、誘電体層2と保護層53とに共用可能な厚みでセラミックグリーンシート12を作製し、このセラミックグリーンシート12を所定枚数ずつ積層して誘電体層2および保護層53,53を形成している。この場合、保護層53としては、誘電体層2の保護機能を十分に発揮すると共にセラミックコンデンサ51全体としての厚みを調整するために、その厚みが50μmから500μm程度必要とされる。したがって、従来のセラミックコンデンサ51では、厚みが20μm程度のセラミックグリーンシート12を目的の厚み(この場合、例えば100μm)となるように多数枚積層することにより、保護層53を形成している。このため、多数枚のセラミックグリーンシート12,12・・を積層する作業が煩雑であり、セラミックコンデンサ51の製造コストが高騰しているという問題点がある。
【0005】
また、セラミックコンデンサ51などの電子部品には、近年、より小形で、しかも大容量の性能が望まれている。したがって、誘電体層2を形成するためのセラミックグリーンシートとして、その厚みが10μm以下の薄形タイプが使用される傾向にある。このため、セラミックコンデンサの製造に際して、厚みが10μm以下のセラミックグリーンシートを共用して誘電体層および保護層の両方を形成する場合、保護層を目的の厚みとするために、さらに多くのセラミックグリーンシートを積層しなくてはならない結果、保護層を形成するための積層作業がさらに煩雑になるという問題が発生する。
【0006】
一方、少数枚のセラミックグリーンシートを積層して保護層を目的の厚みにするために、セラミックグリーンシートを厚手に作製する方法が考えられる。しかし、厚手のセラミックグリーンシートを製造する場合、剥離フィルムFに塗布したスラリー状塗布液を乾燥させる乾燥工程で長時間を要するため、セラミックグリーンシートの製造コストが高騰するという問題が生じる。また、乾燥工程を短時間化するために高温で乾燥させた場合、有機溶剤がスラリー状塗布液内から急激に揮発することに起因して、セラミックグリーンシートにおけるひび割れの発生や、剥離フィルムからのセラミックグリーンシートの部分的剥離を生じるという問題が生じる。さらに、ひび割れや部分的剥離の発生を防止するために、より低温で乾燥させた場合には、セラミックグリーンシートの乾燥状態が不十分となる。かかる場合には、乾燥後のセラミックグリーンシートをロール状に巻回した際に、その表面の一部が、その外周に巻回される剥離フィルムの裏面に転移するという問題が生じる。
【0007】
この場合、特開平5−24903号公報には、スラリー状塗布液の乾燥に際して、その乾燥温度を段階的に上昇させることにより、乾燥時におけるひび割れの発生を防止する製造方法が開示されている。一方、特開昭64−65056号公報には、スラリー状塗布液の生成時に、沸点が110℃以上の高沸点溶剤と、沸点が90℃以下の低沸点溶剤とを混入してスラリー状塗布液の粘度を適宜調節することにより、乾燥処理時におけるひび割れの発生を防止する製造方法が開示されている。しかし、これらの製造方法では、溶剤の沸点と、設定された乾燥温度との関係によっては、依然としてセラミックグリーンシートにひび割れが発生する。また、ひび割れの発生を防止するためには、乾燥温度を低温に設定せざるを得ない結果、乾燥工程で長時間を要するという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、ひび割れや部分剥離の発生を回避しつつ、短時間で電子部品用薄膜を製造し得る電子部品用薄膜の製造方法を提供することを主目的とする。また、製造コストの低減を図り得る電子部品を提供することを他の目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る電子部品用薄膜の製造方法は、薄膜用粉体、結合剤および溶剤を混合してスラリー状塗布液を生成し、当該スラリー状塗布液を薄膜製造用の剥離フィルムに塗布した後に、前記塗布したスラリー状塗布液を乾燥工程において乾燥させることにより、前記剥離フィルムに電子部品用薄膜を形成する電子部品用薄膜の製造方法であって、前記溶剤として、沸点が所定温度の第1の溶剤と、沸点が前記所定温度よりも高温の第2の溶剤とを混合した溶剤を使用し、前記電子部品用薄膜の乾燥後の厚みが50μm以上500μm以下となるように前記スラリー状塗布液を前記剥離フィルムに塗布すると共に、前記乾燥工程において、35℃以上であって前記第1の溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下の温度範囲内で所定時間乾燥させる第1の乾燥工程と、前記第2の溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下の温度範囲内で所定時間乾燥させる第2の乾燥工程とを経て乾燥温度を段階的に上昇させる。
【0010】
この場合、前記溶剤は、前記第1の溶剤および前記第2の溶剤の占める割合が90%以上100%以下であって、当該第1の溶剤と当該第2の溶剤との混合比率が30:70から70:30までの範囲内に規定されているのが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る電子部品は、上記のいずれかの電子部品用薄膜の製造方法に従って製造した電子部品用薄膜を積層または貼付して製造する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電子部品用薄膜の製造方法および電子部品の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
最初に、本発明における電子部品に相当するセラミックコンデンサ1について、図1,2を参照して説明する。
【0014】
セラミックコンデンサ1は、図1に示すように、誘電体層2、保護層3,3および外部電極4,4を備えて構成されている。誘電体層2は、厚み20μm程度のセラミックグリーンシート12の表面に内部電極2aを形成したセラミックグリーンシート12a,12a・・が積層されて構成されている。保護層3は、その厚みが100程度μmとなるように、厚み50μm程度のセラミックグリーンシート13,13が誘電体層2の上下にそれぞれ2枚ずつ積層されて構成されている。この場合、誘電体層2および保護層3の厚みについては、セラミックコンデンサ1の電気的特性などの諸条件に応じて適宜変更することができる。また、これに応じてセラミックグリーンシート12,13の厚みも適宜変更することができる。外部電極4は、誘電体層2および保護層3,3の左右両端部を覆うように形成されて内部電極2a,2a・・に交互に接続されている。この場合、セラミックグリーンシート12(12a)およびセラミックグリーンシート13が本発明における電子部品用薄膜に相当する。
【0015】
このセラミックコンデンサ1の製造に際しては、まず、後述するセラミックグリーンシートの製造方法に従って、セラミックグリーンシート12,13を製作する。次に、セラミックグリーンシート12の表面に内部電極2aを形成することにより、セラミックグリーンシート12aを製作する。次いで、図2に示すように、セラミックグリーンシート12a,12a・・およびセラミックグリーンシート13,13・・を所定枚数ずつ積層することにより、誘電体層2および保護層3,3を形成する。なお、同図では、本発明の実施の形態についての理解を容易とするために、その厚み方向を拡大して図示している。この場合、このセラミックコンデンサ1では、厚みが50μm程度のセラミックグリーンシート13を積層して保護層3を形成している。このため、厚みが20μm程度のセラミックグリーンシート12を多数積層して保護層53を形成していた従来のセラミックコンデンサ51と比較して、少ない枚数のセラミックグリーンシート13(この場合2枚)で厚み100μm程度の保護層3が形成される。次いで、誘電体層2および保護層3,3に対して上下方向から圧力を加えることにより、誘電体層2および保護層3,3内の各シート間の空気を排除して互いに圧着する。続いて、圧着したセラミックグリーンシート12a,12a・・13,13・・を同図の破線で示す部位で切断することにより、セラミックチップ1aを形成する。この後、このセラミックチップ1aを焼成し、さらに、その両端部に外部電極をそれぞれ形成することにより、図1に示すように、セラミックコンデンサ1が完成する。
【0016】
このように、このセラミックコンデンサ1によれば、従来のセラミックコンデンサ51におけるセラミックグリーンシート12よりも厚手のセラミックグリーンシート13(この場合、厚み50μm)を積層して保護層3が形成されている。このため、保護層3を形成するために必要なセラミックグリーンシート13,13・・の使用枚数を少なくできるため、保護層3の形成時における積層作業時間を大幅に短縮できる結果、セラミックコンデンサ1の製造コストを十分に低減することができる。
【0017】
次に、セラミックコンデンサ1に使用されるセラミックグリーンシート13の製造方法を例に挙げて、本発明における電子部品用薄膜の製造方法について説明する。なお、セラミックグリーンシート12の製造方法に関しては、セラミックグリーンシート13の製造方法と基本的に同じため、その説明を省略する。
【0018】
最初に、セラミックグリーンシート13を製造するためのスラリー状塗布液13aを製作する。この際に、まず、粒径が例えば0.5μm程度のチタン酸バリウム、酸化クロム、酸化イットリウム、炭酸マンガン、炭酸バリウム、炭酸カルシウムおよび酸化硅素の粉末をそれぞれ焼成して混合することにより、本発明における薄膜用粉体に相当するセラミック粉体を生成する。次に、生成したセラミック粉体と、結合剤(バインダー)としてのアクリル樹脂と、本発明における第1の溶剤に相当する沸点56.0℃の第1主溶剤と、本発明における第2の溶剤に相当する沸点81.0℃の第2主溶剤とを、φ10mmのジルコニアビーズを用いてポット架台により24時間程度混合することにより、スラリー状塗布液13aを作製する。この場合、すべての溶剤に占める第1主溶剤および第2主溶剤の混合割合が90%以上であるのが好ましい。また、この第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率は、30(第1主溶剤):70(第2主溶剤)から70:30の範囲内であるのが好ましい。さらに、第1主溶剤の沸点よりも第2主溶剤の沸点が高い条件において、第1主溶剤と第2主溶剤とのそれぞれの沸点の差が10℃以上30℃以下の範囲内であるのが好ましく、さらには、両主溶剤の沸点の差が20℃以上であるのが、より好ましい。かかる条件を満たすことにより、後述するように、本発明における電子部品用薄膜の製造方法によってのみ奏される顕著な効果を得ることができる。したがって、本発明の実施の形態では、一例として、第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を50:50とし、この第1主溶剤および第2主溶剤がすべての溶剤に占める割合を100%としてスラリー状塗布液13aを製作する。なお、スラリー状塗布液13aの原料となる混合物は、上記した組合わせ例に限定されず、例えば、セラミックグリーンシート13の平滑性を確保するための各種助溶剤や、その他の添加剤などを必要に応じて混合することもできる。
【0019】
次に、スラリー状塗布液13aを、図3に示す薄膜製造装置21にセットする。この薄膜製造装置21は、薄膜製造用の支持体として用いられる剥離フィルムFにスラリー状塗布液13aを塗布して乾燥させることにより、剥離フィルムF上にセラミックグリーンシート13を形成する装置であって、ロール状に巻回された剥離フィルムFを送り出す送出し側回転軸22と、剥離フィルムFにスラリー状塗布液13aを塗布する塗布装置23と、剥離フィルムF上のスラリー状塗布液13aを乾燥させてセラミックグリーンシート13を形成する乾燥器24,25,26と、セラミックグリーンシート13を剥離フィルムFと共にロール状に巻き取る巻取り側回転軸27とを備えている。なお、本発明の実施の形態についての理解を容易とするために、薄膜製造装置21の上記した構成以外の機構の詳細な記述と図示とを省略する。
【0020】
塗布装置23は、ドクターブレード23aと剥離フィルムFとの間隙が適宜調節されることにより、その間隙に応じた塗布厚でスラリー状塗布液13aを剥離フィルムFの表面に塗布する。乾燥器24,25,26は、その内部空間S1,S2,S3が所定の乾燥温度に維持され、この内部空間S1,S2,S3にスラリー状塗布液13aを塗布した剥離フィルムFが順次通過させられることにより、乾燥温度を段階的に上昇させてスラリー状塗布液13a内の第1主溶剤および第2主溶剤を揮発させる。この場合、本発明における第1の乾燥工程を行う乾燥器24の内部空間S1における乾燥温度を、第1主溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下の温度範囲内に維持するのが好ましい。また、本発明における第2の乾燥工程を行う乾燥器26の内部空間S3における乾燥温度を、第2主溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下の温度範囲内に維持するのが好ましい。さらには、内部空間S1における乾燥温度を、第1主溶剤の沸点に対して−10℃以上−0℃以下の温度範囲内に維持し、内部空間S3における乾燥温度を、第2主溶剤の沸点に対して+10℃以上+20℃以下の温度範囲内に維持するのがより好ましい。この場合、スラリー状塗布液13aの塗布に際しては、一般的に、室温が25℃前後の作業室で塗布作業が行われる。このため、内部空間S1は、塗布作業時の周囲温度として一般的な25℃よりも若干高温の30℃以上であるのが好ましく、さらには、25℃よりも10℃ほど高温の35℃以上に維持されているのが、より好ましい。したがって、本発明の実施の形態では、一例として、乾燥器24の内部空間S1における乾燥温度を、第1主溶剤の沸点に対して6℃ほど低温の50℃に維持し、乾燥器26の内部空間S3における乾燥温度を、第2主溶剤の沸点に対して19℃ほど高温の100℃に維持し、乾燥器25の内部空間S2における乾燥温度を、内部空間S1,S3の乾燥温度のほぼ中間である70℃に維持した状態でセラミックグリーンシート13を製造する。
【0021】
一方、剥離フィルムFは、ベースフィルム(PETフィルム)上に剥離層を形成して構成されている。この場合、ベースフィルムは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分とからなる結晶性の線状飽和ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなど)の未延伸フィルムを、二軸延伸させて形成されている。また、剥離層は、ベースフィルムに剥離特性を付与する層であって、ベースフィルムの片面に硬化性シリコン樹脂を含有する塗布液を塗布乾燥させて形成されている。
【0022】
この薄膜製造装置21を用いたセラミックグリーンシート13の製造に際しては、まず、送出し側回転軸22および巻取り側回転軸27を矢印A1,A2の向きでそれぞれ回転させる。これにより、剥離フィルムFが送出し側回転軸22から送り出され、矢印Aの向きで移動する。この際には、塗布装置23によってスラリー状塗布液13aが剥離フィルムF上に均一に塗布される。この場合、剥離フィルムF上に塗布したスラリー状塗布液13aは、後述するように乾燥させた際に、厚み方向に収縮する。このため、乾燥後のセラミックグリーンシート13の厚みが50μmとなるように、ドクターブレード23aと剥離フィルムFとの間隙を適宜調節しておく。続いて、剥離フィルムFが、乾燥器24の内部空間S1に案内される。この内部空間S1では、主としてスラリー状塗布液13a内の第1主溶剤の大半が揮発させられると共に、第2主溶剤が少量揮発させられる。この場合、内部空間S1の乾燥温度が第1主溶剤の沸点よりも6℃ほど低温の50℃に維持されているため、スラリー状塗布液13a内の第1主溶剤が沸騰することなく緩やかにスラリー状塗布液13aから揮発する。これにより、第1主溶剤の急激な揮発に起因するひび割れや部分剥離の発生が内部空間S1において防止される。
【0023】
次いで、剥離フィルムFは、乾燥器25の内部空間S2に案内される。この内部空間S2では、スラリー状塗布液13a内に残留していた第1主溶剤がほぼ完全に揮発させられ、かつ、第2主溶剤が徐々に揮発する。この場合、乾燥器24によって第1主溶剤の大半が既に揮発させられているため、内部空間S2の乾燥温度が第1主溶剤の沸点よりも高温に維持されている場合であっても、第1主溶剤の揮発に起因するひび割れや部分剥離が発生することなく、スラリー状塗布液13a内に残留する第1主溶剤が、ほぼ完全に揮発する。同時に、第2主溶剤の沸点よりも低温で、かつ内部空間S1の乾燥温度よりも高温の乾燥温度で乾燥させられる結果、多くの第2主溶剤が緩やかにスラリー状塗布液13aから揮発する。
【0024】
続いて、剥離フィルムFは、乾燥器26の内部空間S3に案内される。この内部空間S3では、スラリー状塗布液13a内に残留する第2主溶剤が、ほぼ完全に揮発する。この場合、乾燥器24,25によってスラリー状塗布液13a内の第1主溶剤がほぼ完全に揮発させられ、かつ多くの第2主溶剤が揮発しているため、内部空間S3の乾燥温度が第2主溶剤の沸点よりも高温の100℃に維持されていたとしても、第2主溶剤の揮発に起因するひび割れや部分剥離の発生が防止される。以上の乾燥処理により、第1主溶剤および第2主溶剤がほぼ完全に揮発してスラリー状塗布液13aが固化するため、ひび割れや部分剥離がなく、しかも十分に乾燥した良品のセラミックグリーンシート13が剥離フィルムF上に形成される。この後、セラミックグリーンシート13は、剥離フィルムFと共に巻取り側回転軸27に巻き取られ、これにより、ロール状に巻回されたセラミックグリーンシート13が完成する。
【0025】
このように、このセラミックグリーンシート13の製造方法によれば、乾燥器24の内部空間S1における乾燥温度を第1主溶剤の沸点よりも6℃ほど低温の50℃に維持したことにより、内部空間S1における第1主溶剤の急激な揮発を防止できるため、ひび割れや部分剥離の発生を防止しつつ、厚手のセラミックグリーンシート13を短時間で製造することができる。また、この内部空間S1において、全溶剤中の50%を占める第1主溶剤の大半と、第2主溶剤の一部とが揮発するため、後の乾燥工程(内部空間S2,S3)において第1主溶剤の沸点を超える乾燥温度で乾燥させた際にも、第1主溶剤の揮発が僅かな量のため、第1主溶剤の揮発に起因するひび割れや部分剥離の発生を防止することができる。
【0026】
さらに、内部空間S3における乾燥温度を第2主溶剤の沸点よりも19℃ほど高温の100℃に維持したことにより、スラリー状塗布液13a内に残留していた第1主溶剤および第2主溶剤がほぼ完全に揮発する結果、乾燥状態が良好な厚手のセラミックグリーンシート13を短時間で製造することができる。この場合、乾燥後のセラミックグリーンシート13に対する第1主溶剤および第2主溶剤の残留量が極度に多ければ、セラミックグリーンシート13の巻取り時に、セラミックグリーンシート13の表面が剥離フィルムFの裏面に部分的に転移する。また、乾燥状態が不完全のセラミックグリーンシート13を焼成した際には、クラックやノンラミネイション(剥離)などが発生するおそれがある。したがって、乾燥後のセラミックグリーンシート13に占める残留溶剤は、0.5%以下であることが望ましい。なお、発明者の実験によれば、本発明における電子部品用薄膜の製造方法によれば、電子部品用薄膜に占める残留溶剤の割合が0.5%以下となることが確認されている。
【0027】
加えて、本発明の実施の形態では、その内部空間S2の乾燥温度を、内部空間S1,S3のそれぞれの乾燥温度のほぼ中間温度に維持したことにより、この乾燥工程において、第2主溶剤の沸点以下の乾燥温度で第1主溶剤をほぼ完全に揮発させると共に、多くの第2主溶剤を揮発させることができる結果、ひび割れや部分剥離が発生せず、かつ乾燥状態が良好な良品のセラミックグリーンシート13を短時間で製造することができる。
【0028】
【実施例】
次いで、本発明における電子部品用薄膜の製造方法について、図4〜7を参照しつつ、本実施例によってさらに詳しく説明する。
【0029】
図4に示す実施例1〜10および比較例1〜20によって作製(製造)したセラミックグリーンシートについて、以下のように評価した。
1.セラミックグリーンシートの乾燥状態についての評価
セラミックグリーンシートの乾燥状態については、セラミックグリーンシート内の残留溶剤の総重量を測定し、セラミックグリーンシート全体に占める割合を求めた。
この場合、乾燥後のセラミックグリーンシートに占める残留溶剤が、0.5%以下であることが望ましいため、残留溶剤が0.5%以下のものを○、残留溶剤が0.5%よりも多量であって大量に残留していないものを△、残留溶剤が0.5%を超えて大量に残留しているものを×として図4に示す。
【0030】
2.ひび割れおよび部分剥離の発生の有無
乾燥後のセラミックグリーンシートにおけるひび割れや剥離フィルムFからの部分剥離の有無を外観検査した。
この場合、乾燥後のセラミックグリーンシートにひび割れや部分剥離が発生していないものを○、セラミックグリーンシートの幅20cm、長さ10m当り1個または2個程度のひび割れまたは部分剥離が発生したものを△、セラミックグリーンシートの幅20cm、長さ10m当り3個以上のひび割れまたは部分剥離が発生したものを×として図4に示す。
【0031】
(実施例1)
<使用した溶剤、およびスラリー状塗布液の塗布厚>
沸点56.0℃の第1主溶剤と、沸点81.0℃の第2主溶剤とを50:50の混合比率でスラリー状塗布液を生成し、このスラリー状塗布液を、乾燥後のセラミックグリーンシートの厚み(以下、「グリーンシート厚」ともいう)が80μmとなるように剥離フィルムFに塗布した。
【0032】
<スラリー状塗布液の乾燥処理>
スラリー状塗布液を塗布した剥離フィルムFを、乾燥器24〜26を用いて乾燥温度を段階的に上昇させて乾燥させ、セラミックグリーンシートを作製した。
この場合、乾燥器24内(以下、「ゾーン1」とする)の乾燥温度を36℃に維持し、乾燥器25内(以下、「ゾーン2」とする)の乾燥温度を65℃に維持し、乾燥器26内(以下、「ゾーン3」とする)の乾燥温度を91℃に維持し、乾燥器内の通過時間を1.2分として、スラリー状塗布液を乾燥させた。なお、乾燥器内の通過時間については、ゾーン1〜3のすべてを通過するのに要した所要時間を示す。
【0033】
(実施例2)
ゾーン2の乾燥温度を75℃とし、ゾーン3の乾燥温度を111℃とし、そのほかの作製条件を実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0034】
(実施例3)
ゾーン1の乾燥温度を46℃とし、ゾーン2の乾燥温度を75℃とし、ゾーン3の乾燥温度を101℃とし、そのほかの作製条件を実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0035】
(実施例4)
ゾーン1の乾燥温度を56℃とし、ゾーン2の乾燥温度を75℃とし、そのほかの作製条件を実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0036】
(実施例5)
ゾーン1の乾燥温度を56℃とし、ゾーン2の乾燥温度を80℃とし、ゾーン3の乾燥温度を111℃とし、そのほかの作製条件を実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0037】
(実施例6)
本発明における第2の乾燥工程を行うゾーン2の乾燥温度を91℃とし、乾燥器26(ゾーン3)は使用せずに、そのほかの作製条件を実施例1と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。なお、乾燥器内の通過時間については、ゾーン1,2の両方を通過するのに要した所要時間を示す。
【0038】
(実施例7)
ゾーン2の乾燥温度を111℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0039】
(実施例8)
ゾーン1の乾燥温度を46℃とし、ゾーン2の乾燥温度を101℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0040】
(実施例9)
ゾーン1の乾燥温度を56℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0041】
(実施例10)
ゾーン1の乾燥温度を56℃とし、ゾーン2の乾燥温度を111℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0042】
(比較例1)
ゾーン1の乾燥温度を34℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0043】
(比較例2)
ゾーン1の乾燥温度を35℃とし、ゾーン2の乾燥温度を90℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0044】
(比較例3)
ゾーン1の乾燥温度を35℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0045】
(比較例4)
ゾーン1の乾燥温度を35℃とし、ゾーン2の乾燥温度を111℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0046】
(比較例5)
ゾーン1の乾燥温度を35℃とし、ゾーン2の乾燥温度を112℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0047】
(比較例6)
ゾーン1,2の乾燥温度を35℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。なお、乾燥器内の通過時間については、ゾーン1,2を通過するのに要した所要時間を示す。
【0048】
(比較例7)
ゾーン2の乾燥温度を90℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0049】
(比較例8)
ゾーン2の乾燥温度を112℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0050】
(比較例9)
ゾーン1,2の乾燥温度を36℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。なお、乾燥器内の通過時間については、ゾーン1,2を通過するのに要した所要時間を示す。
【0051】
(比較例10)
ゾーン1の乾燥温度を56℃とし、ゾーン2の乾燥温度を90℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0052】
(比較例11)
ゾーン1の乾燥温度を56℃とし、ゾーン2の乾燥温度を112℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0053】
(比較例12)
ゾーン1,2の乾燥温度を56℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。なお、乾燥器内の通過時間については、ゾーン1,2を通過するのに要した所要時間を示す。
【0054】
(比較例13)
ゾーン1,2の乾燥温度を56℃とし、乾燥器内の通過時間を2分とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。なお、乾燥器内の通過時間については、ゾーン1,2を通過するのに要した所要時間を示す。
【0055】
(比較例14)
ゾーン1の乾燥温度を57℃とし、ゾーン2の乾燥温度を90℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0056】
(比較例15)
ゾーン1の乾燥温度を57℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0057】
(比較例16)
ゾーン1の乾燥温度を57℃とし、ゾーン2の乾燥温度を111℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0058】
(比較例17)
ゾーン1の乾燥温度を57℃とし、ゾーン2の乾燥温度を112℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0059】
(比較例18)
ゾーン1,2の乾燥温度を57℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。なお、乾燥器内の通過時間については、ゾーン1,2を通過するのに要した所要時間を示す。
【0060】
(比較例19)
ゾーン1,2の乾燥温度を75℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。なお、乾燥器内の通過時間については、ゾーン1,2を通過するのに要した所要時間を示す。
【0061】
(比較例20)
ゾーン1,2の乾燥温度を80℃とし、そのほかの作製条件を実施例6と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。なお、乾燥器内の通過時間については、ゾーン1,2を通過するのに要した所要時間を示す。
【0062】
上記実施例1〜10および比較例1〜20では、図4に示すように、第1の乾燥工程を行うゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下(この場合、36℃以上56℃以下)の温度範囲内に維持すると共に、第2の乾燥工程を行うゾーン3(またはゾーン2)の乾燥温度を第2主溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下(この場合、91℃以上111℃以下)の温度範囲内に維持したときに、乾燥状態が良好で、かつひび割れや部分剥離が発生しない良品のセラミックグリーンシートが作製できた。この場合、3段階に亘って乾燥処理を実行した実施例1〜5と、2段階で乾燥処理を実行した実施例6〜10とを比較すると、本発明における第1の乾燥工程と第2の乾燥工程との間に中間の乾燥工程が存在するか否かを問わず、第1の乾燥工程を行うゾーン1の乾燥温度が第1主溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下の温度範囲内であって、かつ、第2の乾燥工程を行うゾーン3(またはゾーン2)の乾燥温度が第2主溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下の温度範囲内であれば、良品のセラミックグリーンシートを作製できることが理解できる。
【0063】
これに対して、ゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点に対して−20℃未満または−0℃を超えた温度(この場合、36℃未満または56℃を超えた温度)に維持したとき、およびゾーン3(またはゾーン2)の乾燥温度を第2主溶剤の沸点に対して+10℃未満または+30℃を超えた温度(この場合、91℃未満または111℃を超えた温度)に維持したときのいずれかのときには、乾燥状態の不良、または、ひび割れや部分剥離の発生が認められた。この場合、比較例14〜17のように、ゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点よりも高温に維持したときには、作製したセラミックグリーンシートの乾燥状態がほぼ良好となるものの、ゾーン1内で第1主溶剤が急激に揮発することに起因してひび割れや部分剥離が数多く発生する。同様にして、比較例18〜20のように、ゾーン1,2の乾燥温度を第1主溶剤の沸点よりも高温に維持したときにも、第1主溶剤が急激に揮発することに起因してひび割れや部分剥離が数多く発生する。また、比較例4,5のように、ゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点に対して−20℃未満の温度に維持したときには、ゾーン1における第1主溶剤の乾燥が不十分となり、残留した第1主溶剤がゾーン2において急激に揮発することに起因してひび割れや部分剥離が発生する。
【0064】
さらに、比較例6のように、ゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点に対して−20℃未満とし、ゾーン2の乾燥温度を第2主溶剤の沸点よりも低温に維持したときには、ひび割れや部分剥離の発生が認められないものの、作製したセラミックグリーンシートの乾燥状態が不完全となる。また、比較例6,9,12,13のように、ゾーン1,2の乾燥温度を第1主溶剤の沸点以下に維持したときには、ひび割れや部分剥離の発生が認められないものの、作製したセラミックグリーンシートの乾燥状態が不完全となる。この場合、比較例13のように、乾燥器内の通過時間を延長することにより、セラミックグリーンシートの乾燥状態を改善することができるが、完全に乾燥させるには、10分以上の乾燥時間を要することが確認されている。したがって、第1の乾燥工程を行うゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下の温度範囲内に維持すると共に、第2の乾燥工程を行うゾーン3(またはゾーン2)の乾燥温度を第2主溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下の温度範囲内に維持することにより、乾燥状態が良好で、ひび割れや部分剥離が発生しない良品のセラミックグリーンシートを短時間で作製することができる。
【0065】
図5に示す実施例11〜13および比較例21〜23に示す条件で作製したセラミックグリーンシートについて、その乾燥状態、並びに、ひび割れおよび部分剥離の発生の有無を、図4によって作製したセラミックグリーンシートと同様に評価した。
【0066】
(実施例11)
<使用した溶剤、スラリー状塗布液の塗布厚>
沸点56.0℃の第1主溶剤と、沸点81.0℃の第2主溶剤とを50:50の混合比率で使用して、スラリー状塗布液を生成し、このスラリー状塗布液を、グリーンシート厚が50μmとなるように剥離フィルムFに塗布した。
【0067】
<スラリー状塗布液の乾燥処理>
スラリー状塗布液を塗布した剥離フィルムFを、ゾーン1〜3の乾燥温度を段階的に上昇させて乾燥させてセラミックグリーンシートを作製した。この場合、本発明における第1の乾燥工程を行うゾーン1の乾燥温度を50℃とし、ゾーン2の乾燥温度を70℃とし、本発明における第2の乾燥工程を行うゾーン3の乾燥温度を100℃とし、ゾーン1〜3のすべてを通過するのに要した乾燥器内の通過時間を1.2分として、スラリー状塗布液を乾燥させた。
【0068】
(実施例12)
グリーンシート厚が100μmとなるようにスラリー状塗布液を塗布し、乾燥器内の通過時間を2分とし、そのほかの作製条件を実施例11と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0069】
(実施例13)
グリーンシート厚が500μmとなるようにスラリー状塗布液を塗布し、乾燥器内の通過時間を6分とし、そのほかの作製条件を実施例11と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0070】
(比較例21)
ゾーン1〜3のすべての乾燥温度を60℃とし、そのほかの作製条件を実施例11と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0071】
(比較例22)
グリーンシート厚が100μmとなるようにスラリー状塗布液を塗布し、ゾーン1〜3のすべての乾燥温度を60℃とし、乾燥器内の通過時間を2分間とし、そのほかの作製条件を実施例11と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0072】
(比較例23)
グリーンシート厚が500μmとなるようにスラリー状塗布液を塗布し、ゾーン1〜3のすべての乾燥温度を60℃とし、乾燥器内の通過時間を6分間とし、そのほかの作製条件を実施例11と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0073】
上記実施例11〜13および比較例21〜23では、図5に示すように、第1の乾燥工程を行うゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下(この場合、50℃)の温度範囲内に維持すると共に、第2の乾燥工程を行うゾーン3の乾燥温度を第2主溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下(この場合、100℃)の温度範囲内に維持したときに、塗布厚の大小(グリーンシート厚の大小)を問わず、乾燥状態が良好で、しかもひび割れや部分剥離の発生しない良品のセラミックグリーンシートが作製された。
【0074】
これに対して、本発明における電子部品用薄膜の製造方法によらず、一定の乾燥温度(この場合、60℃)で乾燥処理を行う乾燥方法では、乾燥状態が不完全で、しかもひび割れや部分剥離が発生した。この場合、実施例12,13では、実施例11と比較して乾燥器内の通過時間を長くしているが、これは、塗布厚に応じて乾燥時間を延長させたためである。この必要最低限の乾燥時間の延長によって、同じ通過時間で乾燥させた比較例22,23とは異なり、ひび割れや部分剥離を発生させずに、厚手のセラミックグリーンシートを十分かつ良好に乾燥させることができる。したがって、ゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下の温度範囲内に維持と共に、ゾーン2の乾燥温度を第2主溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下の温度範囲内に維持することにより、ひび割れや部分剥離が発生せずに乾燥状態が良好な厚み50μm以上の良品のセラミックグリーンシートを作製することができる。
【0075】
図6に示す実施例14〜17および比較例24〜27に示す条件で作製したセラミックグリーンシートについて、その乾燥状態、並びに、ひび割れおよび部分剥離の発生の有無を、図4によって作製したセラミックグリーンシートと同様に評価した。
【0076】
(実施例14)
<使用した溶剤、スラリー状塗布液の塗布厚について>
沸点56.0℃の第1主溶剤と、沸点81.0℃の第2主溶剤とを70:30の混合比率で使用して、スラリー状塗布液を生成し、このスラリー状塗布液を、グリーンシート厚が80μmとなるように剥離フィルムFに塗布した。
【0077】
<スラリー状塗布液の乾燥処理>
スラリー状塗布液を塗布した剥離フィルムFを、ゾーン1〜3の乾燥温度を段階的に上昇させて乾燥させてセラミックグリーンシートを作製した。この場合、本発明における第1の乾燥工程を行うゾーン1の乾燥温度を50℃とし、ゾーン2の乾燥温度を70℃とし、本発明における第2の乾燥工程を行うゾーン3の乾燥温度を100℃とし、ゾーン1〜3のすべてを通過するのに要した乾燥器内の通過時間を1.2分として、スラリー状塗布液を乾燥させた。
【0078】
(実施例15)
第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を60:40とし、そのほかの作製条件を実施例14と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0079】
(実施例16)
第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を40:60とし、そのほかの作製条件を実施例14と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0080】
(実施例17)
第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を30:70とし、そのほかの作製条件を実施例14と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0081】
(比較例24)
第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を80:20とし、そのほかの作製条件を実施例14と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0082】
(比較例25)
第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を75:25とし、そのほかの作製条件を実施例14と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0083】
(比較例26)
第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を25:75とし、そのほかの作製条件を実施例14と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0084】
(比較例27)
第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を20:80とし、そのほかの作製条件を実施例14と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0085】
上記実施例14〜17および比較例24〜27では、図6に示すように、第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を70:30から30:70の範囲内に規定したときに(実施例14〜17)、乾燥状態が良好で、かつひび割れや部分剥離の発生しない良品のセラミックグリーンシートが作製された。
【0086】
これに対して、第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を70:30から30:70までの範囲を外れ、第1主溶剤の占める割合が大きいとき(比較例24,25)には、乾燥状態は良好であるものの、ひび割れや部分剥離が発生した。これは、第1主溶剤がゾーン1内で十分に揮発しない状態でゾーン2,3において沸点以上の乾燥温度で乾燥させられた結果、ゾーン2,3で第1主溶剤が急激に揮発することに起因するものと考えられる。一方、第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を70:30から30:70までの範囲を外れ、第2主溶剤の占める割合が大きいとき(比較例26,27)には、ひび割れや部分剥離が発生しないものの、乾燥状態が不十分であった。これは、第2主溶剤がゾーン1の乾燥温度では十分に揮発せず、しかも、ゾーン2,3の乾燥温度でも十分に揮発せずに残留するものと考えられる。したがって、第1主溶剤と第2主溶剤との混合比率を70:30から30:70までの範囲内に規定することにより、乾燥状態が良好で、しかもひび割れや部分剥離が発生しない良品のセラミックグリーンシートを作製することができる。
【0087】
図7に示す実施例18〜25および比較例28〜43に示す条件で作製したセラミックグリーンシートについて、その乾燥状態、並びに、ひび割れおよび部分剥離の発生の有無を、図4によって作製したセラミックグリーンシートと同様に評価した。
【0088】
(実施例18)
<使用した溶剤、スラリー状塗布液の塗布厚>
沸点39.8℃の第1主溶剤と、沸点77.1℃の第2主溶剤と、沸点90.2℃の助溶剤とを60(第1主溶剤):30(第2主溶剤):10(助溶剤)の混合比率で使用してスラリー状塗布液を生成し、このスラリー状塗布液を、グリーンシート厚が80μmとなるように剥離フィルムFに塗布した。
【0089】
<スラリー状塗布液の乾燥処理>
スラリー状塗布液を塗布した剥離フィルムFを、ゾーン1〜3の乾燥温度を段階的に上昇させて乾燥させてセラミックグリーンシートを作製した。
この場合、本発明における第1の乾燥工程を行うゾーン1の乾燥温度を35℃とし、ゾーン2の乾燥温度を61℃とし、本発明における第2の乾燥工程を行うゾーン3の乾燥温度を88℃とし、ゾーン1〜3のすべてを通過するのに要した乾燥器内の通過時間を1.2分として、スラリー状塗布液を乾燥させた。
【0090】
(実施例19)
ゾーン2の乾燥温度を71℃とし、ゾーン3の乾燥温度を107℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0091】
(実施例20)
ゾーン1の乾燥温度を39℃とし、ゾーン2の乾燥温度を63℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0092】
(実施例21)
ゾーン1の乾燥温度を39℃とし、ゾーン2の乾燥温度を73℃とし、ゾーン3の乾燥温度を107℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0093】
(実施例22)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0094】
(実施例23)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン2の乾燥温度を71℃とし、ゾーン3の乾燥温度を107℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0095】
(実施例24)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン1の乾燥温度を39℃とし、ゾーン2の乾燥温度を63℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0096】
(実施例25)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン1の乾燥温度を39℃とし、ゾーン2の乾燥温度を73℃とし、ゾーン3の乾燥温度を107℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0097】
(比較例28)
ゾーン1の乾燥温度を34℃とし、ゾーン2の乾燥温度を60℃とし、ゾーン3の乾燥温度を86℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0098】
(比較例29)
ゾーン1の乾燥温度を34℃とし、ゾーン2の乾燥温度を67℃とし、ゾーン3の乾燥温度を100℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0099】
(比較例30)
ゾーン1の乾燥温度を34℃とし、ゾーン2の乾燥温度を71℃とし、ゾーン3の乾燥温度を108℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0100】
(比較例31)
ゾーン2の乾燥温度を60℃とし、ゾーン3の乾燥温度を86℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0101】
(比較例32)
ゾーン2の乾燥温度を71℃とし、ゾーン3の乾燥温度を108℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0102】
(比較例33)
ゾーン1の乾燥温度を40℃とし、ゾーン2の乾燥温度を63℃とし、ゾーン3の乾燥温度を86℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0103】
(比較例34)
ゾーン1の乾燥温度を40℃とし、ゾーン2の乾燥温度を70℃とし、ゾーン3の乾燥温度を100℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0104】
(比較例35)
ゾーン1の乾燥温度を40℃とし、ゾーン2の乾燥温度を74℃とし、ゾーン3の乾燥温度を108℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0105】
(比較例36)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン1の乾燥温度を34℃とし、ゾーン2の乾燥温度を60℃とし、ゾーン3の乾燥温度を86℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0106】
(比較例37)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン1の乾燥温度を34℃とし、ゾーン2の乾燥温度を67℃とし、ゾーン3の乾燥温度を100℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0107】
(比較例38)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン1の乾燥温度を34℃とし、ゾーン2の乾燥温度を71℃とし、ゾーン3の乾燥温度を108℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0108】
(比較例39)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン2の乾燥温度を60℃とし、ゾーン3の乾燥温度を86℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0109】
(比較例40)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン2の乾燥温度を71℃とし、ゾーン3の乾燥温度を108℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0110】
(比較例41)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン1の乾燥温度を40℃とし、ゾーン2の乾燥温度を63℃とし、ゾーン3の乾燥温度を86℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0111】
(比較例42)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン1の乾燥温度を40℃とし、ゾーン2の乾燥温度を70℃とし、ゾーン3の乾燥温度を100℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0112】
(比較例43)
第1主溶剤と第2主溶剤とを65:35の混合比率で使用し、助溶剤を混合せずに、ゾーン1の乾燥温度を40℃とし、ゾーン2の乾燥温度を74℃とし、ゾーン3の乾燥温度を108℃とし、そのほかの作製条件を実施例18と同様にしてセラミックグリーンシートを作製した。
【0113】
上記実施例18〜25および比較例28〜43では、図7に示すように、助溶剤の混合有無に関係なく、ゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下の温度範囲内であって35℃以上に維持し、かつ、ゾーン3の乾燥温度を第2主溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下の温度範囲内に維持した場合、乾燥状態が良好で、かつひび割れや部分剥離が発生しない良品のセラミックグリーンシートが作製された。これに対して、ゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点を超える温度に維持したとき(比較例33〜35,41〜43)、ゾーン1の乾燥温度が35℃未満のとき(比較例28〜30,36〜38)、および、ゾーン3の乾燥温度が低温または高温のとき(比較例31,32,39,40)のいずれかのときには、乾燥状態が不完全か、または、ひび割れや部分剥離が発生した。したがって、ゾーン1の乾燥温度を第1主溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下の温度範囲内であってかつ35℃以上に維持し、かつ、ゾーン2の乾燥温度を第2主溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下の温度範囲内に維持することにより、助溶剤の混合比率が10%以内、つまり第1主溶剤および第2主溶剤の混合比率が90%以上である限り、乾燥状態が良好で、しかもひび割れや部分剥離が発生しない良品のセラミックグリーンシートを作製することができる。
【0114】
なお、本発明は、上記した発明の実施の形態に限らず、適宜変更が可能である。例えば、本発明の実施の形態では、セラミックコンデンサ1を例に挙げて説明したが、本発明における電子部品はこれに限定されず、薄膜積層型のフェライトなど各種電子部品が含まれる。また、本発明における電子部品用薄膜は、保護層3用のセラミックグリーンシート13に限定されず、誘電体層2として使用するセラミックグリーンシート12a(12)や、薄膜積層型のフェライトに使用するフェライトグリーンシートなどが含まれる。
【0115】
さらに、本発明の実施の形態では、乾燥器24〜26(または乾燥器24,25のみ)を用いて段階的に温度上昇させつつスラリー状塗布液13aを乾燥させる例について説明したが、本発明における電子部品用薄膜の製造方法はこれに限定されず、4段階以上の乾燥工程を経てスラリー状塗布液13aを乾燥させてもよい。また、本発明の実施の形態では、沸点が互いに異なる第1主溶剤および第2主溶剤を使用した例について説明したが、本発明における電子部品用薄膜の製造方法はこれに限定されず、第1主溶剤および第2主溶剤を含む3種類以上の主溶剤の使用や、2種類以上の助溶剤を使用した際にも、本発明における電子部品用薄膜の製造方法を好適に実施することができる。この場合、例えば沸点が互いに異なる3種類の主溶剤を使用するときには、沸点が最も低い主溶剤を本発明における第1の溶剤とし、沸点が最も高い溶剤を本発明における第2の溶剤とする。ただし、沸点が最も低い主溶剤または沸点が最も高い主溶剤の溶剤に占める割合が30%未満のときには、その主溶剤に次いで沸点が低い溶剤または高い溶剤を第1の溶剤または第2の溶剤とする。
【0116】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る電子部品用薄膜の製造方法によれば、第1の乾燥工程として35℃以上かつ第1の溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下の温度範囲内で所定時間乾燥させ、第2の乾燥工程として第2の溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下の温度範囲内で所定時間乾燥させることにより、第1の乾燥工程において、第1の溶剤が急激に揮発することなく、十分に揮発し、同時に、第2の溶剤の一部が緩やかに揮発する。したがって、スラリー状塗布液内の溶剤の残留量を大幅に減少させることができるため、第2の乾燥工程において第2の溶剤の沸点以上の乾燥温度で乾燥させる際に、残留している第2の溶剤が急激に揮発することなく、ほぼ完全に揮発させることができる。この結果、第1の溶剤および第2の溶剤の急激な揮発に起因するひび割れや部分剥離がなく、しかも、十分に乾燥した良品の電子部品用薄膜を製造することができる。
【0117】
また、本発明に係る電子部品用薄膜の製造方法によれば、電子部品用薄膜の乾燥後の厚みが50μm以上500μm以下となるようにスラリー状塗布液を薄膜製造用剥離フィルムに塗布することにより、例えば、この製造方法によってセラミックコンデンサの保護層として使用されるセラミックグリーンシートを製造した場合、少ない枚数のセラミックグリーンシートを積層して目的の厚みの保護層を形成することができるため、セラミックコンデンサの製造コストを十分に低減することができる。
【0118】
さらに、本発明に係る電子部品用薄膜の製造方法によれば、スラリー状塗布液の生成に際して、第1の溶剤および第2の溶剤の溶剤に占める割合を90%以上100%以下に規定し、かつ第1の溶剤と第2の溶剤との混合比率を30:70から70:30までの範囲内に規定したことにより、第1の乾燥工程における第1の溶剤の揮発、および第2の乾燥工程における第2の溶剤の揮発が十分かつ緩やかに行われるため、両溶剤の急激な揮発に起因するひび割れや部分剥離がなく、しかも十分に乾燥した良品の電子部品用薄膜を製造することができる。
【0119】
また、本発明に係る電子部品によれば、請求項1から3のいずれかに記載の電子部品用薄膜の製造方法に従って製造した電子部品用薄膜を積層または貼付して製造することにより、乾燥状態が良好でひび割れや部分剥離のない良品の電子部品用薄膜によって構成される良品の電子部品を製造することができる。また、厚手の電子部品用薄膜を用いることができるため、少ない枚数の電子部品用薄膜を積層または貼付して目的の厚みの層を形成できる結果、電子部品の製造コストを十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るセラミックコンデンサ1の断面図である。
【図2】 セラミックコンデンサ1の製造過程において、セラミックグリーンシート12a,12a・・およびセラミックグリーンシート13,13・・を積層した状態の断面図である。
【図3】 薄膜製造装置21の構成を示す構成図である。
【図4】 実施例1〜10および比較例1〜20のそれぞれにおけるセラミックグリーンシートの製造方法、および作製したセラミックグリーンシートの比較結果を説明するための説明図である。
【図5】 実施例11〜13および比較例21〜23のそれぞれにおけるセラミックグリーンシートの製造方法、および作製したセラミックグリーンシートの比較結果を説明するための説明図である。
【図6】 実施例14〜17および比較例24〜27のそれぞれにおけるセラミックグリーンシートの製造方法、および作製したセラミックグリーンシートの比較結果を説明するための説明図である。
【図7】 実施例18〜25および比較例28〜43のそれぞれにおけるセラミックグリーンシートの製造方法、および作製したセラミックグリーンシートの比較結果を説明するための説明図である。
【図8】 従来のセラミックコンデンサ51の断面図である。
【符号の説明】
1 セラミックコンデンサ
2 誘電体層
3 保護層
4 外部電極
12,12a,13 セラミックグリーンシート
13a スラリー状塗布液
21 薄膜製造装置
23 塗布装置
24〜26 乾燥器
F 剥離フィルム
S1〜S3 内部空間

Claims (3)

  1. 薄膜用粉体、結合剤および溶剤を混合してスラリー状塗布液を生成し、当該スラリー状塗布液を薄膜製造用の剥離フィルムに塗布した後に、前記塗布したスラリー状塗布液を乾燥工程において乾燥させることにより、前記剥離フィルムに電子部品用薄膜を形成する電子部品用薄膜の製造方法であって、
    前記溶剤として、沸点が所定温度の第1の溶剤と、沸点が前記所定温度よりも高温の第2の溶剤とを混合した溶剤を使用し、
    前記電子部品用薄膜の乾燥後の厚みが50μm以上500μm以下となるように前記スラリー状塗布液を前記剥離フィルムに塗布すると共に、
    前記乾燥工程において、35℃以上であって前記第1の溶剤の沸点に対して−20℃以上−0℃以下の温度範囲内で所定時間乾燥させる第1の乾燥工程と、前記第2の溶剤の沸点に対して+10℃以上+30℃以下の温度範囲内で所定時間乾燥させる第2の乾燥工程とを経て乾燥温度を段階的に上昇させる電子部品用薄膜の製造方法。
  2. 前記溶剤は、前記第1の溶剤および前記第2の溶剤の占める割合が90%以上100%以下であって、当該第1の溶剤と当該第2の溶剤との混合比率が30:70から70:30までの範囲内に規定されている請求項1記載の電子部品用薄膜の製造方法。
  3. 請求項1または2記載の電子部品用薄膜の製造方法に従って製造した電子部品用薄膜を積層または貼付して製造した電子部品。
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