JP4026983B2 - 光飛跡観測装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光パルスなどの光の飛跡を観測することができる光飛跡観測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
大強度の超短パルスレーザーなどのレーザー技術の発展に伴って、通常の光に比べて強度が大きいレーザー光によって生じる光カー効果等の物質の非線形光学効果(nonlinear optical effect)と、それに起因する様々な現象が問題となっている。すなわち、電場の2次以上の高次の項に対する物質の非線形感受率は1次の項に比べて小さい値であるため、通常の光においては線形の応答のみが観測されるが、レーザー光などの充分に大きい強度(電場)を有する光に対しては、このような2次以上の非線形項による効果が現れる。
【0003】
このような非線形光学効果による現象としては、例えば、大強度の光パルスを物質に照射することによって生じる光の自己集束効果(self-focusing effect)や、光のビーム径が細いままで伝搬するチャネリングやフィラメンテーションなどの自己束縛効果(self-trapping effect)が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、上記した諸現象のレーザー光の制御等への利用が進められているが、一方でこのような現象は、超短パルスレーザー等を利用する上で問題を生じる場合がある。例えば、自己集束効果や自己束縛効果が生じた光パルスによって、レンズなどの光学素子・光学材料が破壊され欠陥を生じるなどの問題を生じる。
【0005】
また、光パルスを気体や液体に集束させようとするとレーザープラズマを生じ、その散乱などによって有効に集光することができないという問題を生じる。この問題を回避するためには光学系を真空とする必要があるが、この場合、真空にする必要性から装置構成や光パルスの使用条件が制限されてしまう。
【0006】
このような問題を解決するためには、物質中における光パルスの飛跡を直接的に観測する技術を確立することが重要であるが、従来、そのような観測方法または観測装置は知られていない。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、光パルスの飛跡を直接的に観測することができる光飛跡観測装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明による光飛跡観測装置は、パルス光源によって供給された光パルスから、それぞれの出力タイミングが同期された第1の光束と第2の光束とを生成して出力する光源部と、光パルスの飛跡を検出し観測するための検出媒体と、第1の光束に基づいて励起パルスを形成し、検出媒体に励起パルスを入射する励起光学系と、第2の光束に基づいてプローブパルスを形成し、検出媒体に励起パルスが入射されることによって非線形光学効果による屈折率変化が誘起された光飛跡領域を含む検出媒体の所定領域にプローブパルスを照射するプローブ光学系と、検出媒体の所定領域を通過したプローブパルスを検出する光検出部と、を備え、励起光学系は、励起パルスを所定の偏光状態とするための励起パルス偏光手段と、励起パルスを検出媒体に所定の入射条件によって入射させる入射光学系とを有し、プローブ光学系は、プローブパルスを所定の偏光状態とするためのプローブパルス偏光手段を有し、光検出部は、検出媒体の所定領域を通過したプローブパルスのうち、所定の偏光成分のみを透過させる検光手段と、検光手段を透過したプローブパルスの2次元光像を検出・観測する光検出手段と、検出媒体の所定領域を通過し検光手段を透過したプローブパルスの2次元光像を光検出手段に結像させる結像手段と、を有することによって、光飛跡領域における屈折率の異方性を検出して、励起パルスの光の飛跡を観測することを特徴とする。
【0009】
上記した光飛跡観測装置においては、超短パルス光源である高強度フェムト秒レーザーなどのパルス光源を用い、パルス光源から出力された2つの光束からそれぞれ所定の偏光状態にある励起パルス及びプローブパルスを生成して、それらを検出媒体に入射・照射する。このとき励起パルスの入射によって、検出媒体中に励起パルスの飛跡に対応して非線形光学効果により屈折率が変化して屈折率に異方性を生じた領域(光飛跡領域)が形成される。この光飛跡領域の像を、検出媒体を通過したプローブパルスのうち、偏光状態の変化した成分を検光手段によって選択し光検出手段によって検出することによって観測する。ここで、この光飛跡領域は検出媒体に入射した励起パルスの光飛跡に相当しているので、これによって光飛跡を直接的に観測することができる。また、超短パルス光源などのパルス光源を用いることによって、高時間分解能での光飛跡の観測が実現されている。
【0010】
また、特に検出媒体については、例えば非線形光学効果を効率的に起こし得る物質を選択して用いれば良いが、特に、非線形光学効果の応答速度が高速である液体または気体からなる物質を用いることが好ましい。また、このような光飛跡観測装置を、他の装置中などにおける光飛跡の観測に利用する場合には、対象とする装置のうち光が通過する所定の部分がこの検出媒体として用いられる。
【0011】
光源部については、例えば、光パルスを出力する単一のパルス光源と、光パルスを分岐して第1の光束と第2の光束とを生成する光分岐手段と、を有して構成することができる。この場合、同一のパルス光源を用いることによって2つの光束が同期され、光源部の構成を簡単化することができる。
【0012】
あるいは、光源部は、第1の光束となる光パルスを出力する励起パルス光源と、第2の光束となる光パルスを出力するプローブパルス光源と、第1の光束及び第2の光束の出力タイミングを同期させるタイミング制御手段と、を有して構成することができる。この場合、タイミング制御手段によって2つの光束が同期される。このタイミング制御手段は、例えばトリガー回路と遅延回路とから構成することができる。このような構成の場合、例えば励起パルスとプローブパルスのパルス幅や波長を異なるものとして設定することが可能である。
【0013】
また、励起光学系またはプローブ光学系のいずれか一方は、励起光学系とプローブ光学系との光路長差を設定・変更するための可変光遅延手段を有することを特徴とする。
【0014】
また、入射光学系は、その光路方向の位置が可動である可動光学系を有して構成されていることを特徴とする。
【0015】
励起パルスの入射に対するプローブパルスの照射タイミング、またはプローブパルス照射時の励起パルスの空間分布形状を、可変光遅延手段または可動光学系を用いて変更することによって、光飛跡の位置・形状等の状態を変化させた観測を行うことが可能となる。
【0016】
さらに、励起パルス偏光手段及びプローブパルス偏光手段は、少なくとも一方に波長板または偏光子を含んで構成されて、励起パルス及びプローブパルスの偏光状態はそれぞれ所定の直線偏光に設定され、プローブパルスの検出媒体への照射軸は、励起パルスの検出媒体への入射軸を含み励起パルスの直線偏光の軸に対して垂直な平面内にあって、プローブパルスの直線偏光の軸は、前記平面に対して45度の傾きとして設定され、検光手段は、検出媒体の所定領域を通過したプローブパルスのうち、検出媒体に照射されるプローブパルスの直線偏光と直交した偏光成分のみを透過させることを特徴とする。
【0017】
また、プローブパルスの照射軸の、励起パルスの入射軸に対する照射角度が90度であることを特徴とする。
【0018】
このように各パルスの偏光状態及び検光手段等を設定することによって、効率的な観測装置の構成とすることができる。
【0019】
また、プローブパルスの照射軸の、励起パルスの入射軸に対する照射角度が0度より大きく90度より小さい角度に設定され、プローブ光学系は、プローブパルスの波面を励起パルスの波面に一致させて検出媒体に照射するための波面変換手段を有することを特徴とすることによって、時間分解能を損なうことなく、かつ、励起パルス及びプローブパルスの相互作用長を長くとることができる。
【0020】
また、励起光学系、プローブ光学系及び光検出部の一部または全部を一体化して保持するとともに、励起パルスの入射軸を回転軸として回転駆動が可能なように構成されて、検出媒体に対する励起光学系、プローブ光学系及び光検出部の設置角度を変更することが可能な光学系保持機構をさらに備えることを特徴とすることによって、光飛跡を異なる角度から観測し、得られたデータに対して例えばX線CTと同様の画像再構成法を用いて、光断面の情報等を得ることが可能となる。
【0021】
また、本発明による光飛跡観測装置は、パルス光源によって供給された光パルスから、それぞれの出力タイミングが同期された第1の光束と第2の光束とを生成して出力する光源部と、光パルスの飛跡を検出し観測するための検出媒体と、第1の光束に基づいて励起パルスを形成し、検出媒体に励起パルスを入射する励起光学系と、第2の光束に基づいてプローブパルスを形成し、検出媒体に励起パルスが入射されることによって非線形光学効果による屈折率変化が誘起された光飛跡領域を含む検出媒体の所定領域にプローブパルスを照射するプローブ光学系と、検出媒体の所定領域を通過したプローブパルスを検出する光検出部と、を備え、励起光学系は、励起パルスを所定の偏光状態とするための励起パルス偏光手段と、励起パルスを検出媒体に所定の入射条件によって入射させる入射光学系とを有し、プローブ光学系は、プローブパルスを所定の偏光状態とするためのプローブパルス偏光手段を有し、光検出部は、検出媒体の所定領域を通過したプローブパルスのうち、所定の偏光成分のみを透過させる検光手段と、検光手段を透過したプローブパルスを検出・観測する光検出手段と、検出媒体の所定領域を通過し検光手段を透過したプローブパルスを光検出手段に結像させる結像手段と、を有することによって、光飛跡領域における屈折率の異方性を検出して、励起パルスの光の飛跡を観測するように構成され、プローブパルスの照射軸の、励起パルスの入射軸に対する照射角度が90度であり、光検出部は、検出媒体の所定領域を通過したプローブパルスの2次元の光像を1次元の光像に変換する光像変換手段をさらに有し、光検出手段は一次元光検出器を有して構成されていることを特徴とする。
【0022】
シリンドリカルレンズなどを用いた光像変換手段によって2次元光像を1次元光像に集束・変換し、一次元光検出器によって1次元画像として検出して、その1次元画像の時間に対する変化を観測することによって、光の飛跡移動の観測を効率的に行うことができる。
【0023】
また、本発明による光飛跡観測装置は、パルス光源によって供給された光パルスから、それぞれの出力タイミングが同期された第1の光束と第2の光束とを生成して出力する光源部と、光パルスの飛跡を検出し観測するための検出媒体と、第1の光束に基づいて励起パルスを形成し、検出媒体に励起パルスを入射する励起光学系と、第2の光束に基づいてプローブパルスを形成し、検出媒体に励起パルスが入射されることによって非線形光学効果による屈折率変化が誘起された光飛跡領域を含む検出媒体の所定領域にプローブパルスを照射するプローブ光学系と、検出媒体の所定領域を通過したプローブパルスを検出する光検出部と、を備え、励起光学系は、励起パルスを所定の偏光状態とするための励起パルス偏光手段と、励起パルスを検出媒体に所定の入射条件によって入射させる入射光学系とを有し、プローブ光学系は、プローブパルスを所定の偏光状態とするためのプローブパルス偏光手段を有し、光検出部は、検出媒体の所定領域を通過したプローブパルスのうち、所定の偏光成分のみを透過させる検光手段と、検光手段を透過したプローブパルスを検出・観測する光検出手段と、検出媒体の所定領域を通過し検光手段を透過したプローブパルスを光検出手段に結像させる結像手段と、を有することによって、光飛跡領域における屈折率の異方性を検出して、励起パルスの光の飛跡を観測するように構成され、光検出部は、検出媒体の所定領域を通過したプローブパルスの2次元の光像を1次元の光像に変換する光像変換手段と、光像変換手段及び光検出手段の間に設置される分光手段とを有するとともに、プローブ光学系は、プローブパルスをチャープさせるパルスストレッチャーを有することを特徴とする。
【0024】
プローブ光学系にパルスストレッチャーを設置してプローブパルスをチャープ、すなわち時間波形を波長によって広げて、各波長成分が時間情報と対応するようにし、一方、光検出部においてシリンドリカルレンズなどの光像変換手段からの1次元光像を分光手段によって分光し、分光によって生成された2次元光像を光検出手段によって観測する。これによって、分光された波長軸が時間軸に対応した観測像を得ることができる。
【0025】
また、励起光学系またはプローブ光学系の少なくとも一方は、励起パルスまたはプローブパルスの波長を変化させる波長変換手段を有することを特徴としても良い。あるいは、励起光学系またはプローブ光学系の少なくとも一方は、励起パルスまたはプローブパルスの個々の波形またはパルス列の構成などの時間波形を変化させる時間波形変換手段を有することを特徴としても良い。波長または波形の変換手段を備えることによって、様々な状態での光パルスに対する光飛跡の観測を行うことができる。
【0026】
さらに、時間波形変換手段は、励起パルスまたはプローブパルスを時間間隔可変のパルス列に構成するパルス列生成手段であることを特徴とすることによって、様々なパルス数・パルス時間間隔などによるパルス列を用いて観測を行って、複数の観測像を同時に取得することや観測時の検出媒体の状態を変えた観測を行うなど、様々な条件での観測を行うことが可能となる。
【0027】
また、励起光学系またはプローブ光学系の少なくとも一方は、励起パルスまたはプローブパルスの空間分布を変化させる空間分布変換手段を有することを特徴としても良い。これによって、様々な空間分布(空間強度分布、光パルスにおける空間的な光強度の分布)の光パルスに対する応答を観測することができ、また、例えば通常重畳されて観測される励起パルスの空間分布及び検出媒体の応答がより分離・区別された状態で光飛跡の観測を行うことが可能となる。
【0028】
また、空間分布変換手段は、所定形状の単一または複数のスリットを有し、励起パルスまたはプローブパルスの空間分布をスリットによって単一または複数のスリット形状に構成するスリット状マスクであることを特徴とすることが好ましい。
【0029】
さらに、スリット状マスクは、スリットの長手方向の設置角度を変更することが可能な角度変更機構をさらに備えることを特徴とすることが好ましい。
【0030】
スリット状マスクによって効果的に空間分布の制限・変換を行うことができ、また、その角度を可変とすることによって、スリットを交換せずに異なる空間分布についての測定を行うことができる。
【0031】
また、励起パルスの時間波形または空間分布の少なくとも一方に第1の情報を付加し、プローブパルスの時間波形または空間分布の少なくとも一方に第2の情報を付加して、励起パルス及びプローブパルスを用いた光の飛跡の観測で第1の情報及び第2の情報から得られる第3の情報を抽出することによって、所定の演算を行うことを特徴とする。
【0032】
このように、時間波形変換手段または空間分布変換手段を用いて各光パルスに数値情報などの情報を付加し、それらの光パルスを用いた光飛跡の観測を利用することによって、ある種の演算をフェムト秒域で高速に実行させることが可能となる。なお、各光パルスに付加される情報としては、0、1などのデジタル的情報や、それ以外のより一般的な情報などがある。
【0033】
また、第1の情報または第2の情報において、光刺激を与える前と後の所定のサンプルを透過させることによって励起パルスまたはプローブパルスへの情報の付加を行って、光刺激によるサンプルの変化を抽出する演算を行うことを特徴としても良い。これによって、光によってサンプル物質を励起させるなど所定の変化を起こさせる光刺激の前後での影響を効率良く抽出することができる。
【0034】
さらに、光検出手段からの画像データの処理を行う画像処理手段を有することによって、例えば画像データから自己相関波形を導出し、パルス幅を測定するなどの画像処理や必要な演算等をリアルタイムで行うことが可能となり、観測をより効率化できる。
【0035】
また、光源部のパルス光源としてパルスレーザーを用い、パルスレーザーのレーザー媒質を検出媒体とし、パルスレーザーの共振器内の光パルスを励起パルスとし、パルスレーザーから出力された光パルスからプローブパルスを形成して、観測された励起パルスの情報に基づいてパルスレーザーのレーザー制御装置にフィードバックを行って、パルスレーザーの動作の最適化、安定化を行うことを特徴とする。これは、光飛跡観測装置を他の装置であるパルスレーザー中における光飛跡の観測に利用するものである。
【0036】
また、このような装置は、動熱力学の観測または制御に適用することが可能である。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明による光飛跡観測装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0038】
図1は、本発明に係る光飛跡観測装置の第1の実施形態を示すブロック図である。本実施形態における光飛跡観測装置は、光源部1、励起光学系2、プローブ光学系3、検出媒体4、及び光検出部5とから構成されている。
【0039】
光源部1は、光パルスを生成・出射する超短パルス光源11と、光分岐器12とを有して構成される。超短パルス光源11から出射された光パルスは、光分岐器12によって、励起光学系2へと導光される第1の光束とプローブ光学系3へと導光される第2の光束とに分岐される。
【0040】
光源部1から出力された第1の光束及び第2の光束は、それぞれ励起パルス及びプローブパルスとされて、検出媒体4へと導かれる。励起光学系2は、光源部1からの第1の光束に基づいて励起パルスを形成し、所定の入射軸から検出媒体4に入射する。この励起光学系2は、励起光学系2とプローブ光学系3との遅延時間差を設定・変更するための可変光遅延器21と、励起パルスを所定の偏光状態とするための波長板23及び偏光子24からなる励起パルス偏光手段22と、励起パルスを検出媒体4へと所定の入射条件によって入射させる入射光学系25とを有して構成されている。
【0041】
一方、プローブ光学系3は、光源部1からの第2の光束に基づいてプローブパルスを形成し、所定の照射軸から検出媒体4に照射する。このプローブ光学系3は、プローブパルスを所定の偏光状態とするための波長板33及び偏光子34からなるプローブパルス偏光手段32を有して構成されている。
【0042】
以上の構成において、励起パルスは励起光学系2を介して検出媒体4に例えば集束して入射される。このとき、集光された励起パルスは検出媒体4中の所定領域で大強度・高密度の光束を形成し、その領域内において、光カー効果等の非線形光学効果により検出媒体4中の屈折率の変化が誘起される。このような屈折率変化を生じた領域は励起パルスの光が分布している空間領域に相当するものであって、以下これを光飛跡領域と呼ぶ。
【0043】
ここで、光飛跡領域を含む検出媒体4の所定領域にプローブパルスをプローブ光学系3を介して照射すると、光飛跡領域内における屈折率の異方性によって、光飛跡領域を通過したプローブパルス成分のみ、検出媒体4のその他の領域を通過したプローブパルス成分に対してその偏光状態が変化する。この変化した光成分を光検出部5を用いて観測することによって、光飛跡領域の像、すなわち励起パルスの飛跡を観測することができる。
【0044】
光検出部5は、検出媒体4の所定領域を通過したプローブパルスのうち所定の偏光成分のみを透過させる検光子51と、検光子51を透過したプローブパルス成分を結像させる結像レンズ52と、結像したプローブパルスの光像を観測するための光検出手段であるカメラ53とを有して構成されている。これによって、光飛跡領域を通過したプローブパルス成分を検光子51によって選択的に透過し、カメラ53によってこのプローブパルス成分を観測・撮像して、励起パルスの飛跡を観測する。
【0045】
なお、上記した実施形態においては、偏光手段22、32はそれぞれ波長板23、33及び偏光子24、34とから構成されているが、これは偏光手段22、32の構成の一例を示したものであって、励起光学系2及びプローブ光学系3に入力される光束の偏光状態と、設定する励起パルス及びプローブパルスの偏光状態によって、その他の構成、例えば波長板のみからなる構成等、を用いることができる。
【0046】
また、励起光学系2における入射光学系として、励起パルスを集束して検出媒体4に入射させる入射光学系25を用いているが、励起パルスの強度や検出媒体4として用いる物質の選択等の観測条件によって、集束を行わない光学系を入射光学系として用いても良い。
【0047】
図2は、図1に示した実施形態による光飛跡観測装置について、具体的な構成とともに示す一実施例である。
【0048】
本実施例においては、波長800nm、パルス幅100fs、パルス当たりのエネルギーが7mJのチタン・サファイアレーザーを超短パルス光源11として用い、このパルス光源11からの光パルスは、例えばハーフミラーなどからなる光分岐器12によって第1の光束l1及び第2の光束l2に分岐される。ここで、この光パルスは、図2中において紙面、すなわち後述する励起パルスの検出媒体4への入射軸及びプローブパルスの照射軸を含む平面(以下、検出平面という)、に対して水平な方向の直線偏光を有している。なお、必要があれば、パルス光源11と光分岐器12との間に波長板などを設置しても良い。この場合、光分岐器12として例えばプリズム型の偏光ビームスプリッターを用いることが可能である。
【0049】
第1の光束l1は、励起光学系によって励起パルスleとされて検出媒体4へと導かれ、一方、第2の光束l2は、プローブ光学系によってプローブパルスlpとされて検出媒体4へと導かれる。
【0050】
励起パルスleとプローブパルスlpとの検出媒体4への入射・照射のタイミングは、励起光学系における可変光遅延器21と、プローブ光学系における光路部分30とによって調整・設定または変更される。
【0051】
プローブ光学系の光路部分30は、装置の構成時に設定され固定されるものであって、遅延時間が固定された光遅延器としての機能を有し、励起光学系に対する光路長差とそれによる遅延時間差の初期条件を調整・設定するために用いられる。一方、励起光学系の可変光遅延器21は、可動直角ミラー21aを有して構成されており、この可動直角ミラー21aを移動させることによって光路長を変化させて、プローブ光学系に対する光路長差とそれによる遅延時間差を変更・設定することが可能なように構成されている。
【0052】
励起パルスleとプローブパルスlpとのそれぞれの偏光状態は、励起光学系における励起パルス偏光手段である波長板23及び偏光子24と、プローブ光学系におけるプローブパルス偏光手段である波長板33及び偏光子34とによってそれぞれ設定される。
【0053】
励起パルス偏光手段の波長板23は本実施形態においては1/2波長板であり、可変光遅延器21を通過した第1の光束l1は、1/2波長板23によってその直線偏光の方向が90度回転されて検出平面に対して垂直な直線偏光を有するように変換され、さらに垂直な直線偏光を有する成分のみを透過する偏光子24を通過する。これによって、検出平面に対して垂直な直線偏光を有する励起パルスleが得られる。なお、この偏光子24は垂直な直線偏光を有する成分をより確実に選択するためのものであって、設置しない構成とすることも可能である。
【0054】
一方、プローブパルス偏光手段の波長板33は1/4波長板であり、光路部分30を通過した第2の光束l2は、1/4波長板33によってその直線偏光が円偏光に変換され、さらに検出平面に対して45度傾いた直線偏光を有する成分のみを透過する偏光子34を通過する。これによって、検出平面に対して45度傾いた直線偏光を有するプローブパルスlpが得られる。ここで、1/4波長板33を1/2波長板として、直接45度傾いた直線偏光を有するプローブパルスを生成し、これを用いても良い。
【0055】
上記のようにして得られた励起パルスle及びプローブパルスlpは、それぞれ所定の入射軸及び照射軸によって検出媒体4に入射及び照射される。検出媒体4としては、常温・一気圧の空気を用いる。ただし、図2に示した実施例においては装置全体が空気雰囲気中に設置されているので、その空気のうち所定の領域にある部分をそのまま検出媒体4として用いている。
【0056】
励起光学系からの励起パルスleは、焦点距離50mmの平凸レンズである集束レンズ25aを通って、所定の入射軸によって空気である検出媒体4に集光されつつ入射される。このとき、検出媒体4内に励起パルスleと空気との相互作用によって、光カー効果等の非線形光学効果を生じた光飛跡領域が生成される。この光飛跡領域内では検出媒体4の屈折率が変化し、特にその屈折率にプローブパルスlpの照射軸に垂直な面内での異方性を生じる。
【0057】
この光飛跡領域を含む検出媒体4の所定領域に対して、プローブ光学系からのプローブパルスlpが、励起パルスleの入射軸に対して垂直な軸を照射軸として照射される。このプローブパルスlpのうち、検出媒体4を透過した成分である透過プローブパルスlp’が光検出部によって検出される。
【0058】
透過プローブパルスlp’は、対物レンズ54を介して検光子51に入射する。この検光子51は、透過プローブパルスlp’のうち、検出媒体4に照射されたプローブパルスlpの直線偏光に対して直交した直線偏光成分のみを透過するように構成されている。したがって、検出媒体4の非線形光学効果による屈折率の異方性を生じていない領域を透過した透過プローブパルスlp’の成分は検光子51を透過せず、光飛跡領域を通過して光飛跡領域内の屈折率の異方性によってその偏光状態が変化を受けた透過プローブパルスlp’の成分のみが検光子51を透過する。すなわち、検光子51を通過した透過プローブパルスlp’の成分による光像は、非線形光学効果による屈折率変化が誘起された光飛跡領域の像に対応し、したがって、検出媒体4内に入射・集光された励起パルスleの飛跡に対応している。
【0059】
検光子51を通過した透過プローブパルスlp’の成分による光像は、結像レンズ52によってCCDカメラ53上に結像されて撮像され、これによって、励起パルスleの飛跡が観測される。なお、本実施例においては、対物レンズ54は倍率10倍のものを用い、CCDカメラ53のカメラレンズの焦点を無限大として観測を行っている。また、CCDカメラ53は横640×縦480画素を有して16ビットの強度情報が得られるものを使用し、走査線の影響を低減するために、CCDカメラ53は検出平面に対して90度傾けて画素構造の縦方向が励起パルスleの検出媒体4中での伝搬方向(入射軸方向)と一致するように設置した。この条件において、CCDカメラ53の画素間隔に対応する観測面上の距離は4.8μmである。
【0060】
また、図2に示した観測装置においては、励起パルスleが検出媒体4内の非常に小さい領域内に集光されるので、これに伴って空気がブレークダウンを起こし空気プラズマが生成されて、プラズマ発光が起こる。このプラズマ発光は広帯域のスペクトル成分を有する白色光である。この発光の影響を除去するため、検光子51及び結像レンズ52の間にプローブパルスlpと異なるスペクトル成分を除くための波長800nmの干渉フィルター55を設置している。
【0061】
一方、プローブパルスlpと同一のスペクトル成分については、飛跡の観測前に、プローブパルスlpを照射せず他の条件を観測時の条件と同一とした測定を行い、この測定結果の画像データを飛跡観測時の観測結果の画像データから減算することによって、透過プローブパルスlp’による飛跡の光像の選択的な観測・撮像を行った。ただし、励起パルスleがプラズマ発光を伴わない条件によって観測を行うこともできるが、その場合には、上記したような画像データの減算処理は行わなくても良い。
【0062】
また、励起パルスleのパルス当たりのエネルギーは、各光学要素における損失等によって、集束レンズ25aの直前において3.5mJであった。なお、図2に示した実施例による光飛跡観測装置によって励起パルスleの飛跡の観測を実際に行ったが、この観測においては、さらにNDフィルターによって励起パルスleを減光して、パルス当たり2.3mJとして観測を行った。
【0063】
以下に、本発明に係る光飛跡観測装置による効果を、上記した実施例による装置構成及び観測条件によって行った観測の結果とともに説明する。本光飛跡観測装置においては、光源として超短パルス光を出力可能な超短パルスレーザーをパルス光源11として用い、その超短パルスの光束を光分岐器12によって分岐させて励起パルスle及びプローブパルスlpを形成している。このように非常に短い光パルスの時間幅を有する超短パルスを用いることによって、高時間分解能での光飛跡の観測が可能となる。また、その超短パルスを分岐させて用いることによって、励起パルスle及びプローブパルスlpの検出媒体4への入射・照射のタイミングの同期が実現できる。
【0064】
特に、上記した実施例での超短パルスのパルス幅100fsのように充分に短い時間幅の光パルスを用いることによって、励起パルスleの特定の時間における光の空間分布にほぼ対応した光飛跡の像を、2次元画像として直接的に観測することがはじめて可能となる。実際の観測結果では、66.7fsの遅延時間間隔で48個の光飛跡のデータを連続的に取得し、光パルスの飛跡中における複数の光のフィラメント及びその時間変化など、励起パルスle内における光の空間分布及び伝搬状態に関する微細構造等の観測に成功している。
【0065】
さらに、上記した実施形態においては、励起光学系2は可変光遅延器21を備えており、これによって励起パルスle及びプローブパルスlpの入射・照射の相互のタイミングを変更することができる。このとき、このタイミングの変化はプローブパルスlpが照射されるときの励起パルスleの入射軸方向への位置の変化となり、したがって、相互のタイミングを連続的に変化させることによって、励起パルスleが検出媒体4中を伝搬する飛跡の時間変化を高時間分解能の連続的な画像として観測することができる。
【0066】
図3に、このようにして観測された励起パルスleの飛跡移動を模式的に示す。横軸は、励起パルスle及びプローブパルスlpの入射・照射の相互のタイミングの変化である遅延時間を表す。一方、縦軸は、励起パルスleの伝搬距離を表す。ここで図3においては、CCDカメラ53によって得られた2次元画像のうち、励起パルスleの入射軸に垂直な方向についての画像データを加算して、励起パルスleの入射軸方向、すなわち励起パルスleの伝搬方向についての1次元画像(以下、これを演算画像とよぶ)にそれぞれの遅延時間に対する画像データを変換してそれを図中の縦方向に表示し、その1次元画像データを連続的に並べることによって飛跡移動(斜線部分によって示されている)を示している。
【0067】
図3より、本発明による光飛跡観測装置によって、励起パルスleの伝搬軸(入射軸)上での移動(時間変化)の様子が、高時間分解能で明確に観測されていることがわかる。この飛跡移動の像の傾きは、検出媒体4中における光速度に相当する。また、中央付近の横方向強度プロファイルは自己相関波形となり、これからパルス幅計測が可能となる。
【0068】
励起光学系2の入射光学系に長焦点の凸レンズを用いるなどして、観測される光飛跡領域における励起パルスleのビーム径が小さく、かつ大きなビーム径の変化がない、すなわちプローブパルスlpとの相互作用時間が短く、かつ光励起密度が均一である場合には、前記した演算画像は自己相関波形に対応する。さらにまた、プローブパルスlpのパルス幅が励起パルスleのそれよりも充分に短く、細部に構造を持たないパルスの場合には、前記演算画像は励起パルスleの光パルス波形計測に用いることができる。
【0069】
なお、上記した相互のタイミングを変更する手段である可変光遅延器21については、励起光学系2ではなくプローブ光学系3に設置する構成、または両光学系2、3に設置する構成としても良い。また、特定のタイミングでの光飛跡の観測のみを行い、時間変化を観測する必要がない場合には、可変光遅延器などのタイミング調整手段を有しない構成としても良い。
【0070】
また、上記のように可変光遅延器を用いて観測を行った場合、遅延時間を変化させると、観測時における励起パルスleの伝搬軸方向の位置(観測・撮像される光像の位置)が変化するとともに、集光状態の変化によって光パルスの空間分布(観測・撮像される光像の形状)が変化する。これに対し、光パルスの空間分布変化の観測については、例えば図2に示す実施例において可変光遅延器21を用いずに遅延時間を固定し、入射光学系である集束レンズ25aを光軸方向に可動な構成の可動光学系とすることによって、検出媒体4中の同一の観測点での励起パルスleの集束状態を変化させて、可変光遅延器21を用いた場合と同様の観測を行うことが可能である。
【0071】
このように可動な集束レンズ25aを用いた装置とした場合、常に同じタイミング条件で観測を行うことが可能となり、観測点が移動しないためにCCDカメラ53の撮像範囲による観測範囲の制限がなく、より広い集束状態の範囲について観測を行うことが可能となる。また、プローブパルスlpの空間ビームパターンが常に同じとなり、得られる画像の精度が向上される。
【0072】
また、図2に示した実施例では、プローブパルスlpの照射軸は、励起パルスleの入射軸に対して垂直の照射角度を有して設定されているが、この照射角度は必ずしも90度である必要はない。例えば、照射角度を0度より大きく90度より小さい角度とし、回折格子などを用いて構成された波面変換手段によってプローブパルスlpの波面を励起パルスleの波面と一致させて照射を行うことにより、時間分解能を損なうことなく、かつ励起パルスle及びプローブパルスlpの相互作用長をより長くとることが可能となる。
【0073】
検出媒体4については、図2に示した実施例では空気を用いているが、それ以外の非線形光学効果を生じ得る物質を検出媒体4として用いても良い。特に、検出媒体4としては気体または液体からなる物質を用いることが好ましい。この場合、気体または液体の非線形光学効果の応答速度は固体の場合に比べて一般に高速であり、したがって、より高時間分解能での観測が可能となる。例えば、検出媒体としてはCS2(常温で液体)を用いることができ、この場合、空気の場合よりも応答時間は遅いが、励起パルスの強度を小さくして観測を行うことができる。
【0074】
なお、検出媒体に用いる物質として好ましい条件としては、(1)入射する光パルスの波長に対して充分な透過率があること、(2)励起パルスの検出平面に対して非線形光学効果が大きく高速応答すること、(3)プローブパルスの偏光状態を乱さないこと、(4)プローブパルスのパルス幅を大きく変えるような分散を持たないこと、(5)入射光の光エネルギーに対して充分な耐性があること、などがある。
【0075】
検出媒体の設置方法としては、図2の実施例では装置全体が検出媒体となる空気中に設置された構成とされているが、このような設置方法以外にも様々な方法が考えられる。例えば、励起パルスle及びプローブパルスlpが入射・照射される所定の領域と、それ以外の装置の一部とを含む領域に対して囲いを設置し、その囲いの内部を検出媒体によって満たすという方法がある。囲いを設置する領域としては、例えば図2に点線によって示した領域40aまたは40bなどが可能であり、また、これ以外の領域に設定することもできる。この場合、囲いのうち少なくとも光パルスの入射・照射または出射が行われる部位を構成するための材質は、上記した検出媒体についての好ましい条件を同様に満たすものを用いることが望ましい。
【0076】
この場合の囲いについては、図4に囲い40としてその一例を示すように、光パルスの入射・照射または出射が行われる部位以外は、背景光の影響を低減するため黒色などに塗装すること(図4中の斜線部分)が望ましい。また、光パルスの入射・照射または出射が行われる部位は、例えば両面に反射防止膜が施された石英ガラスなどからなる窓状に形成する。
【0077】
図4においては、図2に示す領域40bのように囲いが光検出部をすべてその内部に含む場合に用いられる囲い40を示し、励起パルス入射面41に形成された入射窓41aが示されている。また、プローブパルス照射面43についても同様に照射窓(図示していない)が形成されている。なお、図2に示す領域40aのように光検出部の一部が囲い40の外部に設置される場合には、さらにプローブパルス出射面44に出射窓を設ける必要がある。また、励起パルス出射面42についても、必要があれば出射窓を有する構成としても良い。また、囲いを設置する領域が小さい場合など、観測中における検出媒体の変性が問題となるときには、ポンプ等を接続して検出媒体を循環させる構成とすることが望ましい。
【0078】
検出媒体が気体であれば、光パルスの入射・照射または出射が行われる部位について、窓ではなく開口部とすることも可能である。この場合、開口部から放出されてしまう検出媒体である気体を、ボンベからホース等を介して囲いの内部に連続的に供給することが必要である。
【0079】
また、無害の気体を検出媒体とする場合において、囲いを用いずに、ボンベ等に接続されたホースの出力口を検出媒体の領域近傍の所定の位置とし、気体をその領域に噴射することによって供給して、検出媒体として用いることも可能である。この場合、気体の純度という点ではやや劣るが、実行が容易であって装置が簡単化するとともに、窓材による光の吸収・反射等の問題が生じない、という利点がある。
【0080】
さらに、検出媒体の領域に、検出媒体となる気体または液体を充填したセルを設置して検出媒体とする方法がある。この方法は、特に液体や、有毒ガス等の取り扱いが困難な気体を用いる場合に適している。また、用いる検出媒体の分量を少なくすることができる。この場合、セルを構成するための容器は、囲いの場合と同様に、上記した検出媒体についての好ましい条件を同様に満たすものを用いることが望ましい。
【0081】
このとき、入射光の偏光方向が確定していることに対応して、図5にセル45として(a)上面図及び(b)側面図を示すように、励起パルス入射面46あるいは励起パルス出射面47を、その法線(図5(b)中に点線で示す)が光軸に対してブルースター角θbとなるように形成することによって、励起パルス入射面46については反射を抑制させ透過率を増加させることができ、また、励起パルス出射面47についてはセルの出射端面で反射して検出媒体内に戻る光を抑制して時間分解能の精度を向上させることができる。これは、検出媒体中における泡の発生が問題となる液体を用いた場合に、反射光が泡で散乱することを防ぐことができるので特に有効である。
【0082】
なお、励起パルスleの入射・出射面に対して上記のようにブルースター角を用いるときには、特に液体を検出媒体として用いた場合、空気と屈折率が大きく異なるので、励起パルスleの進行方向が変化することを考慮してその光路を設定する必要がある。
【0083】
また、プローブパルスlpの照射・出射面については、反射防止膜が施されていることが望ましい。また、プローブパルスlpの偏光状態に影響を与えない範囲において、図6(a)及び(b)にそれぞれ上面図によってその例を示すように、光の反射を抑制する目的でプローブパルス照射面48、プローブパルス出射面49を水平方向等について斜めに形成して、セルが上面からみて台形状(例えば図6(a)の形状)または平行四辺形状(例えば図6(b)の形状)などになるようにしても良い。この場合にも同様に、光パルスの進行方向の変化を考慮して光路を設定する。
【0084】
このようにセルを用いた場合、検出媒体である気体または液体を適宜交換または循環等できるように上部等に2つのコックを設置しておくと良い。また、特に検出媒体を気体としたときにその純度を高める方法として、最初に一方のコックからセル内を真空引きし、そのコックを閉じた後、他方のコックから気体を充填する方法を用いることができる。なお、セルの形状については、上記したものに限らず、光パルスのエネルギー、偏光状態、光路等の諸条件に応じて、様々な形状・構成とすることができる。
【0085】
なお、従来、このようなプローブ光を用いた装置としては、例えば国際公開WO97/45747号に記載されたE−O結晶を用いた装置、または Phys.Rev.Lett., vol.80, pp.5137-5140 (1998)に記載された装置がある。しかしながら、これらの装置は、前者がテラヘルツ(THz)波の測定、後者が磁場の測定を行うためのものであって、本発明による光飛跡観測装置とは構成・機能ともに異なり、特に上記の従来装置では、いずれも光飛跡を直接的に観測することは不可能である。
【0086】
図7は、本発明に係る光飛跡観測装置の第2の実施形態を示すブロック図である。本実施形態における光飛跡観測装置は、光源部1、励起光学系2、プローブ光学系3、及び検出媒体4については第1の実施形態と同様である。一方、光検出部5については、検光子51及び結像レンズ52の後段に、透過プローブパルスの2次元の光像を1次元の光像に変換する光像変換手段であるシリンドリカルレンズ56と、シリンドリカルレンズ56によって生成された1次元の光像を検出するための一次元光検出器57とが設置されている。特に、このシリンドリカルレンズ56を、励起パルスの入射軸に垂直な方向について一次元光検出器57上に透過プローブパルスを集束して1次元光像を形成するように設置することによって、図3に示したような光の飛跡移動についての画像をより効率的に生成することが可能となる。
【0087】
図8は、本発明に係る光飛跡観測装置の第3の実施形態を示すブロック図である。本実施形態における光飛跡観測装置は、光源部1、励起光学系2、及び検出媒体4については第1の実施形態と同様である。一方、光検出部5については、第2の実施形態と同様に光像変換手段としてシリンドリカルレンズ56が用いられ、このシリンドリカルレンズ56の後段に、分光器58が設置されて、シリンドリカルレンズ56によって生成された1次元光像を分光器58の入射スリットに入射して分光し、分光器58の出力結像位置とカメラ53の受光面とを一致させて、分光器58からの2次元の出力像をカメラ53で観測する。
【0088】
このとき、プローブ光学系3に、図8に示すようにパルスストレッチャー37を設置し、パルスストレッチャー37を通過したプローブパルスをチャープさせてパルス幅を広げる(図8中にその光路上の各点における時間軸に対する波長成分分布を示した)。このように時間波形を広げることによって、プローブパルスの各波長成分と時間情報とを対応させることができる。なお、パルスストレッチャー37としては、例えば光ファイバー、回折格子対、プリズム対、後述する波形変換手段等からなるものを用いることができる。
【0089】
このような構成を用いて得られる観測像の一例を図9に示す。横軸は波長であるが、前述のようにこれは時間軸に変換・対応されており、したがって、図9に示した図3と等価な図が一回の測定によって観測できることとなる。なお、測定精度を向上するために、あらかじめプローブパルスのスペクトルを取得しておいて、得られた観測像にフィルターをかけるなどすることが好ましい。
【0090】
図10は、本発明に係る光飛跡観測装置の第4の実施形態を示すブロック図である。本実施形態における光飛跡観測装置は、その装置構成については第1の実施形態と同様であるが、装置各部の制御や画像データについての演算等を行う制御部6がさらに設置されている。この制御部6は、画像処理装置61、制御装置62、及び表示装置63を有して構成されている。
【0091】
画像処理装置61はCCDカメラ53に接続されており、この画像処理装置61によってCCDカメラ53で撮像された観測像の整理や解析・必要な演算等が行われる。例えば、図2に示した実施例について上記したプローブパルスの照射時・非照射時の画像データの減算や、図3に示した図の生成などは、CCDカメラ53によって画像データを取得した後、解析を行うことによって得ることができるが、図10に示すようにCCDカメラ53を画像処理装置61に接続することによって、観測時にリアルタイムで上記したような画像処理を行うことが可能である。
【0092】
この画像処理装置61はさらに装置全体を制御するための制御装置62に接続されている。この制御装置62は、画像処理装置61を介した画像データ等の取得、得られたデータの表示装置63による表示等を行う。また、制御装置62は可変光遅延器21に接続されており、遅延時間を観測と相関させて制御することができる。また、必要があればパルス光源11等にさらに接続される構成としても良い。
【0093】
また、観測を行った結果によれば、図2に示した装置においては、透過プローブパルスの強度は励起パルスの強度の2乗にほぼ比例し、主に検出媒体4中に生じる光カー効果によって観測が可能になっていることがわかった。このとき、得られた観測像の画像データは励起パルスの強度の2乗分布に対応している。したがって、上記した画像処理装置61において各画素の画像データの強度についてそれぞれ平方根をとるか、またはarcsin2などの演算を行って観測像とすることによって、より正確に光パルスの強度の空間分布が反映された観測像を得ることができる。
【0094】
図11は、本発明に係る光飛跡観測装置の第5の実施形態を示すブロック図である。本実施形態における光飛跡観測装置は、T字状に構成された光学系保持機構7によって各部が一体化されて保持されている。この光学系保持機構7は、励起パルスの入射軸を中心軸として設置されて励起光学系を保持する円筒状の励起光学系保持部71と、プローブパルスの照射軸を中心軸として設置されてプローブ光学系の一部及び光検出部を保持する円筒状のプローブ光学系保持部72とを有して構成されている。
【0095】
本実施形態においては、パルス光源11と光分岐器12の間に1/4波長板13が設置されており、光分岐器12によって分岐される第1の光束及び第2の光束は円偏光を有している。これに対して、励起パルス偏光手段及びプローブパルス偏光手段は、それぞれ偏光子24及び34のみによって構成されて、励起パルス及びプローブパルスの直線偏光状態を選択している。
【0096】
励起光学系保持部71は複数の円筒部分に分割されており、それぞれの間に光遅延器21、偏光子24、及び入射光学系25が固定されている。このように励起光学系保持部71を分割して形成し、その間の部位に各光学要素を設置することによって、各光学要素の交換を容易にするとともに、光遅延器21の光路を妨げない構成とすることができる。なお、分割された励起光学系保持部71の各部は連結部73によって連結されて一体化されている。
【0097】
プローブ光学系保持部72の中心部には、検出媒体4が配置され、この検出媒体4に対面する所定の部分には開口部72aが設けられており、この開口部72aに励起光学系保持部71が接続されて、検出媒体4への励起パルスの入射が行われる。開口部72aに対向する面にも開口部72bが設けられている。また、プローブ光学系保持部72の上部にはプローブ光学系の偏光子34が保持されている。
【0098】
本実施形態においては、プローブ光学系の光路に光ファイバー35を用いており、この光路の途中に光ファイバー用の可変光遅延器31が設置されている。また、光ファイバー35への入射・出射のために、集光レンズ36a、36c及びコリメートレンズ36b、36dが配置されている。
【0099】
なお、このように光ファイバーを用いた場合には光ファイバーの分散によってプローブパルスのパルス幅が広がってしまい、飛跡観測の時間分解能が劣化してしまう。このため、分散シフトファイバー、グレーティングファイバーや、回折格子対、プリズム対等を用いることによってパルス幅の広がりを補正し、検出媒体4においてパルス幅が短い光パルスとなるように構成することが望ましい。
【0100】
プローブ光学系保持部72の下部には光検出部の各要素、すなわち対物レンズ54、検光子51、結像レンズ52、及びCCDカメラ53が保持されている。
【0101】
ここで、この光学系保持機構7は、固定・保持されている各光学系の光学要素等とともに励起パルスの入射軸を中心軸として回転可能に構成されている。このような構成とすることによって、検出媒体4中における光の飛跡を異なる角度から観測することが可能となる。したがって、例えばX線CTと同様の画像再構成法を用いて、特定の遅延時間における光の空間分布について光断面の情報等の3次元情報を得ることができる。
【0102】
図12は、本発明に係る光飛跡観測装置の第6の実施形態を示すブロック図である。本実施形態における光飛跡観測装置では、光源として用いられている超短パルスレーザーであるパルス光源11のレーザー媒質4aを検出媒体としている。このとき、励起パルスはパルス光源11のレーザー共振器内に存在する光パルスであり、プローブパルスは光分岐器12によって分岐されたパルス光源11の出力レーザーパルスを用いている。
【0103】
このような構成において、カメラ53によって得られた観測像からレーザー共振器内の光パルスの状態についての情報を得て、その情報をレーザー制御装置14を介してレーザーにフィードバックすることによって、パルスレーザーの最適化や安定化に利用することができる。このような観測は、分散補償プリズムを検出媒体としても行うことができる。また、レーザーを対象とした本実施形態は本発明による光飛跡観測装置の利用の一例であって、レーザー以外の様々な装置に対しても同様の応用が可能である。なお、レーザー媒質4a中の光の偏光状態を考慮すると、図中の2つのプリズムは、紙面に垂直に配置することが望ましい。
【0104】
図13は、本発明に係る光飛跡観測装置の第7の実施形態を示すブロック図であり、ここでは光源部1に単一のパルス光源を用いるのではなく、励起パルス及びプローブパルスに対してそれぞれ別の励起パルス光源11a及びプローブパルス光源11bを用いている。
【0105】
励起パルスに対するプローブパルスのタイミングは、可変光遅延器21に加えてタイミング制御回路15によって制御されている。タイミング制御回路15は、トリガー回路16及び遅延回路17を有して構成されており、これによって両パルスを同期させるとともに、遅延時間差の設定・変更を行うことができる。この場合、励起光学系2及びプローブ光学系3がともに可変光遅延器を有しない構成としても良い。また、このように2つの光源を用いた場合、励起パルス及びプローブパルスのパルス幅や波長を異なるものとすることができる。特に、励起パルスに対してプローブパルスのパルス幅をさらに短くするようにプローブパルス光源11bを選択することによって、さらに高時間分解能での測定が可能となる。
【0106】
本発明による光飛跡観測装置は、上記した実施形態・実施例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、励起光学系またはプローブ光学系の光路上に、励起パルスまたはプローブパルスの波長を変化させる波長変換手段を設置しても良い。励起光学系に波長変換手段を用いることによって、異なる波長の光が検出媒体に入射したときの光飛跡を観測することができる。また、プローブ光学系に波長変換手段を用いることによって、励起パルスとプローブパルスとの波長を異なるものとし、例えば検出媒体中においてレーザープラズマ発光が発生している場合に、プローブパルスの波長をこのプラズマに吸収または散乱されにくい波長として、観測の効率を向上することができる。このような波長変換手段としては、例えば光パラメトリック増幅器、和・差周波発生装置、SHG結晶等がある。
【0107】
また、励起光学系またはプローブ光学系の光路上に、励起パルスまたはプローブパルスの時間波形等を変化させる時間波形変換手段を設置して、様々な時間波形を用いて光パルスの光飛跡を観測するようにしても良い。時間波形変換手段は、光パルスの個々の波形、またはパルス列の構成などを変化させるものであって、例えば特開平10−206234号公報に開示されているものなど、様々なものを目的に応じて用いることができる。
【0108】
図14に、このような時間波形変換手段の一例であるパルス列生成器81の構成を示す。このパルス列生成器81は、2つの直角形状のビームスプリッター81a、81b、及び直角ミラーである全反射ミラー81cから構成されており、パルス列生成器81に入力された光パルスl0に対して、ビームスプリッター81aをそのまま透過して出力される光パルスl1、ビームスプリッター81bによって反射されて出力される光パルスl2、全反射ミラー81cによって反射されて出力される光パルスl3、の3個の光パルスからなる時間波形を有するパルス列が生成される。
【0109】
上記したような構成からなるパルス列生成器によって生成・出力されるパルス列については、用いるビームスプリッターの個数等によってパルス列を構成する光パルスの個数を設定・変更することができ、また、ビームスプリッター及び全反射ミラーの設置間隔などの位置関係による各光路の光路長等の設定によって、それぞれの光パルスのパルス時間間隔を任意に設定・変更することができる。
【0110】
さらに、これらのビームスプリッター、全反射ミラー等を可動として光路長可変な構成とすることによって、光パルスの時間間隔を可変とすることができ、パルス列の条件を変更することが可能となる。また、それぞれの光パルスの強度比についても、ビームスプリッターの分岐比の設定などによって任意に設定・変更可能である。なお、図14においては、3つの光パルスの強度が等しくなるように設定されている。
【0111】
図14に示した例のようにビームスプリッター及び全反射ミラーから構成されるパルス列生成器の他にも、例えばマイケルソン干渉計、マッハツェンダー干渉計、ファブリペロー干渉計、フィゾー干渉計などを変形して利用する形態のものや、エタロンなどを利用することができる。
【0112】
時間波形変換手段を励起パルスまたはプローブパルスに適用することによって様々な計測が可能となる。例えば、上記のパルス列生成器を図1または図2に示す光飛跡観測装置のプローブ光学系3に適用して、プローブパルスを複数の光パルスからなるパルス列、例えばパルス幅0.1ps、パルス間隔1psで強度が等しい3つの光パルスからなるパルス列、とすることによって、一回の計測・観測で高時間分解による観測像を同時に3つ、すなわち、時間軸・励起パルスの伝搬軸に沿って、パルス時間間隔によって決まる間隔で並んで観測される3つの観測像を取得することができる。
【0113】
また、パルス列生成器を励起光学系2に適用して、例えば励起パルスをパルス幅0.1ps、パルス間隔0.5ps、強度比が第1のパルス:第2のパルス=5:1の2つの光パルスとし、強度5の第1のパルス(プリパルス)の入射・伝搬によって検出媒体4に生じたレーザープラズマ中を、0.5ps遅れて入射する強度1の第2のパルス(アフターパルス)を伝搬させ、その光の飛跡を観測することによって、レーザープラズマが発生した状態での伝搬状態を観測することができる。それ以外にも、様々な条件での光の伝搬状態を調べることが可能である。
【0114】
上記のように励起光学系2にパルス列生成器を適用した場合において、さらにプローブ光学系3にもパルス列生成器を適用し、プローブパルスを例えばパルス幅0.1ps、パルス間隔5psで強度が等しい3つの光パルスからなるパルス列とすることによって、励起パルスの上記した第1のパルス及び第2のパルスに対してそれぞれ3つ、合わせて6つの高時間分解の観測像を同時に取得することができる。これによって、プラズマ状態の発生と、その中での光の伝搬を効率的に観測することができる。また、パルス列生成器以外の時間波形変換手段、例えば個々の光パルスの時間波形を変換するものを用いることによって、波形による応答の変化等を調べることができる。
【0115】
上述した時間波形変換手段は光パルスの時間波形に関するものであるが、光パルスの空間分布についても、励起光学系またはプローブ光学系の光路上に励起パルスまたはプローブパルスの空間分布等を変化させる空間分布変換手段を設置して、様々な空間分布による光パルスの光飛跡を観測するようにしても良い。空間分布変換手段としては、例えば、所定形状の単一または複数のスリットを有し、励起パルスまたはプローブパルスの空間分布をスリットによって単一または複数のスリット形状に構成するスリット状マスクを用いることができる。
【0116】
励起パルス及びプローブパルスによる光飛跡観測においては、励起パルスの空間的な光強度の分布(空間分布)と、検出媒体4中での媒質の応答及びその分布とが重畳されたものとして観測像が取得・観測されるが、観測において必要とされる時間分解能などの諸条件によっては、この2つの重畳が問題となる場合がある。
【0117】
これに対して、励起光学系2に空間分布変換手段としてスリット状マスクを設置する。例えば、図2において集束レンズ25aの前に所定の幅、例えば2mm幅、の単一のスリットを有するスリット状マスクを、その長手方向を図2の紙面に垂直な方向(励起パルスの入射軸及び検出平面に垂直な方向)として設置する。このとき、プローブパルスの照射軸方向についての励起パルスの空間分布幅がスリットの通過によって制限されて狭くなり、したがって、プローブパルスが励起パルスの領域を通過して相互作用する時間が短くされる。
【0118】
図15に、スリット状マスク設置時における観測像の変化を模式的に示す。ここで、(a)〜(d)の各図においてその横軸が励起パルスの伝搬軸(時間軸)である。図15(a)は、スリット状マスクなどの空間分布変換手段を用いていない場合の光飛跡の観測像を示している。これに対して、上記したように単一のスリットを有するスリット状マスクを、スリットの長手方向を垂直方向として励起光学系に設置したときの観測像の形状を図15(b)に示す。
【0119】
この場合、上記したようにプローブパルスの通過時間が短くなるため、相互作用中の励起パルスの伝搬距離が短くなり、したがって、観測像においては図示のように伝搬軸(時間軸)方向の励起パルスの空間分布幅が制限・短縮された像が得られる。これによって、検出媒体4の媒質の応答を特徴的に抽出した計測が可能となり、より高時間分解能での計測によって媒質の応答時間などを知ることができる。さらに、この情報を観測及びそのデータ処理等に利用することによって、正確に光飛跡の観測を行うことが可能となる。
【0120】
スリット状マスクの設置条件としては、上記した設置方向以外に、例えばその長手方向を図2の紙面に平行な方向(励起パルスの入射軸に垂直、検出平面に平行な方向)とした場合においても空間分布を制限した観測を行うことができる。このとき得られる観測像は図15(c)に示すように垂直方向の空間分布幅が制限・短縮されたものとなる。
【0121】
また、スリットの長手方向を所定の斜めの角度方向、例えば45度の設置方向とした場合には、プローブパルスが励起パルスの領域を通過する間に、相互作用する励起パルスの光パルス部分の垂直方向の位置が時間とともに移動していくので、得られる観測像は図15(d)に示すように斜めの像となる。これによって、スリットを垂直方向とした場合と同様の時間分解能を維持しつつ空間分布を有効に判別する計測が可能となる。
【0122】
さらに、スリット状マスクを、スリットの長手方向の設置角度を角度変更機構を用いて変更・設定することが可能なように構成することによって、適宜スリットの設置方向・設置角度を変更し必要な空間分布形状を設定して、スリット状マスクを交換等することなく空間分布に適合した様々な情報を取得するための観測を行うことができる。
【0123】
また、空間分布変換手段については、上記したスリット状の空間分布とするスリット状マスクに限られず、目的に応じて様々なものを用いることができる。例えば、空間光変調器などを用いて任意の空間分布を持たせるようにしても良い。また、上記の例では励起パルスに空間分布変換手段を適用しているが、プローブパルス、または励起パルス及びプローブパルスの両方に適用することも可能である。
【0124】
上記した時間波形変換手段及び空間分布変換手段を用いた、励起パルスまたはプローブパルスの時間波形、空間分布の変換・設定によって各光パルスに所定の構造を与え、例えば、励起パルスの時間波形または空間分布の少なくとも一方に第1の構造を付加し、プローブパルスの時間波形または空間分布の少なくとも一方に第2の構造を付加して、励起パルス及びプローブパルスを用いた光の飛跡の観測で第1の構造及び第2の構造に基づいて観測像に形成される第3の構造を抽出する観測が可能となる。
【0125】
これにより、目的に応じて多様な観測方法を用いることができる。例えば、上記した各光パルス及び観測像の構造をそれぞれ所定の対応方法等によって数値情報などの情報と対応付けすることが可能である。このとき、それら2つの光パルス、励起パルス及びプローブパルス、の検出媒体4を介した相互作用によって光像を形成して観測像を得る過程を利用して、両者の情報から演算(以下、光演算という)を行うことができる。
【0126】
すなわち、励起パルスに第1の情報(第1の構造)を付加し、プローブパルスに第2の情報(第2の構造)を付加して、それらの励起パルス及びプローブパルスの相互作用を介して特定の観測・光演算を行って、その観測結果・演算結果として観測像から第3の情報(第3の構造)を抽出することが可能である。ここで、各光パルスに付加される情報・構造については、時間波形または空間分布の一方によって付加しても良いし、時間波形及び空間分布の両方を用いて情報を付加しても良い。
【0127】
このような光パルスへの情報・構造の付加、及び光飛跡観測を介した光演算の一実施例を、図16及び図17を用いて説明する。なお、ここでは簡単のために集光レンズを用いない系で観測・光演算を行った場合について説明する。
【0128】
図16は、本実施例における励起パルスへの情報(第1の情報)の付加を示す。この励起パルスでは、時間波形についてはパルス幅0.1ps、パルス間隔0.6psの等強度のダブルパルスとして、図16の左方にスリット通過前の励起パルスとして示したように、時間軸について(1,0,1)の情報を付加する。また、空間分布についてはスリット幅の等しいダブルスリットによって、空間軸について同様に(1,0,1)の情報を付加する。このとき、励起パルスには、図16の右方にスリット通過後の励起パルスと対応させて示した3行3列(計9個の数値)の行列による数値情報
1,0,1
0,0,0
1,0,1
が付加される。ここで、横が観測像の時間軸、縦が空間軸に対応している。
【0129】
一方、プローブパルスには、時間波形については励起パルスと同様にパルス幅0.1ps、パルス間隔0.6psの等強度のダブルパルスとして、時間軸について(1,0,1)の情報(第2の情報)を付加し、空間分布については制限・変換を行わずに情報を付加しないこととする。
【0130】
ここで、励起パルスに適用されるダブルスリットを有するスリット状マスクは、スリットの長手方向を水平方向(プローブパルスの照射軸と平行な方向、図15(c)に示した場合と同様)として設置するものとする。このとき、図16に示したように4つのパルス部分に分割された励起パルス、及びそれに対応する3行3列の行列は、プローブパルスの照射軸方向から励起パルスを見たときのものであって、このような励起パルスに対して、ダブルパルスであるプローブパルスは紙面に垂直な方向を照射軸として照射される。
【0131】
また、励起パルス及びプローブパルスについて、それぞれ入射軸・照射軸(時間軸に相当)上で前方の早い光パルス成分を第1のパルス、後方の遅い光パルス成分を第2のパルスとする。ただし、励起パルスについては、第1の励起パルス及び第2の励起パルスはそれぞれダブルスリットによって空間的に分割された2つのパルス成分を合わせたものをいうこととする。
【0132】
入力データとして上記の条件で生成された光パルスを用いて、検出媒体4における光飛跡観測によって得られる観測像の構造(第3の構造)、及びそれらを情報と対応付けすることによって実行される光演算とその演算結果の出力データを図17に示す。ここで、(a)〜(c)の各図においてその横軸が励起パルスの伝搬軸(時間軸)である。励起パルスの像は、先に照射される第1のプローブパルスによる像、及び後に照射される第2のプローブパルスによる像の2回にわたって観測される。得られる像をそれぞれ図17(a)及び(b)に模式的に示す。
【0133】
このとき、励起パルスにおける第1の励起パルス及び第2の励起パルスのパルス時間間隔と、プローブパルスにおける第1のプローブパルス及び第2のプローブパルスのパルス時間間隔とは上記したように等しく設定されているので、図17(a)に示す第1のプローブパルスによる像での前方の第1の励起パルス(図中右方の2つ)の位置と、図17(b)に示す第2のプローブパルスによる像での後方の第2の励起パルス(図中左方の2つ)の位置とが一致して像が形成・観測される。
【0134】
観測像は、図17(c)に示すように、上記の2つの像を重ね合わせて形成される第3の構造を有するものとして得られる。この第3の構造は、伝搬方向に3個、それに垂直な方向に2個の計2×3=6個の光像からなり、そのうち伝搬軸方向の中央にある2個の像は、第1及び第2のプローブパルスによる像の重ね合わせにより他の約2倍の強度で観測される。このように、励起パルス及びプローブパルスにそれぞれ構造を付与することによって、様々な構造の観測像を形成することができる。
【0135】
このとき、上記の観測像に対してその光像の第3の構造(強度分布)を情報と対応付けして、光演算の演算結果の出力データとして第3の情報を抽出することとすると、図17(c)の下方に観測像と対応させて示した3行5列(計15個の数値)の行列による数値情報
1,0,2,0,1
0,0,0,0,0
1,0,2,0,1
が演算結果として得られる。
【0136】
なお、入力データの第1、第2の構造、及び出力データの第3の構造の各情報における数値と光強度との関係はそれぞれについて相対的に定められるものであり、励起パルスに入力データとして付加される数値情報で1に対応する光強度と、プローブパルスに入力データとして付加される数値情報で1に対応する光強度と、観測像から出力データとして得られる数値情報で1に対応する光強度とは、それぞれ相互に一致させる必要はない。
【0137】
光演算の種類と得られる演算結果については、各光パルスの構成等によって様々に変更・設定することができる。例えば、プローブパルスを図17において左方2/5の部分が制限されて除かれた空間分布とすることによって、演算結果として3行3列(計9個の数値)の行列
2,0,1
0,0,0
2,0,1
を得ることができる。
【0138】
以上のように、励起パルス及びプローブパルスに構造・情報を付加し、それらによって検出媒体を介して生成される観測像から演算結果となる情報を抽出することによって、特定の演算に関して光パルスを用いた演算(光演算)を実行することが可能である。このような光演算は、その演算方法からフェムト秒域で高速に行うことが可能なものである。
【0139】
光演算によって実行が可能な演算については、上記した実施例のようなデジタル的な演算に限られるものではなく、時間波形や空間分布を任意に変化させて目的に応じた演算を行うことができる。また、その演算の内容については、励起パルス及びプローブパルスのそれぞれの時間波形及び空間分布と、それらの入射・照射タイミング等によって変更・設定することが可能である。
【0140】
また例えば、上記した実施例において、プローブパルスのダブルパルスのうち第1のプローブパルスについて、サンプルである物質を透過させたパルスとし、さらに、プローブパルスのダブルパルスのうち第2のプローブパルスについて、前記励起パルスと同期したシングルパルスの他の励起パルス2によって励起した前記サンプル物質を透過させたパルスとして、サンプル物質が励起されていない場合と励起された場合との光の透過特性をプローブパルスの第1パルス及び第2パルスにそれぞれ反映させ、この違いを適当な演算によって効率良く抽出可能なようにすることができる。このように、物質の励起等の光相互作用・光刺激の結果として高速に変化する情報を効率良く抽出して観測することが可能になる。
【0141】
本発明による光飛跡観測装置を用いた光飛跡の観測は、例えば図12に示したように様々な装置における光飛跡の観測に用いることができる。また、例えば、励起光学系の入射光学系に用いられる光学要素(例えば図2における集束レンズ25a)を置き換えて、それぞれに対する光飛跡を観測することにより、光学要素の評価を行うことができるなど、様々な利用が可能である。
【0142】
さらに、媒質中の光速度等の測定が可能であり、これによって媒質の屈折率の測定や、レーザープラズマが生成されている場合におけるプラズマ密度、プラズマ温度、プラズマの誘電率等を測定することが可能である。このような測定は、例えば非平衡高エネルギー状態の観測、半導体のレーザーアブレーション、液晶のレーザーアブレーション、レーザー加工等に用いるレーザーの飛跡の観測等、動熱力学の観測・制御に適用することができる。
【0143】
【発明の効果】
本発明による光飛跡観測装置は、以上詳細に説明したように、次のような効果を得る。すなわち、超短パルスレーザーなどから出力される同期した2つの光パルスをそれぞれ所定の偏光状態とし、観測対象である励起パルス及び観測プローブであるプローブパルスとして用いることによって、高時間分解能での光飛跡の観測を行うことができる。
【0144】
観測方法としては、所定の物質を検出媒体として用い、この検出媒体内の励起パルス光が分布している領域(光飛跡領域)に生じる非線形光学効果による屈折率変化を、プローブパルスの偏光状態の変化を利用して検出する。これによって実際の光飛跡に相当する光飛跡領域をCCDカメラ等の光検出器によって直接的に検出・観測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光飛跡観測装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示した実施形態による光飛跡観測装置の一実施例を示す構成図である。
【図3】図2に示した光飛跡観測装置によって観測された光の飛跡移動を模式的に示す図である。
【図4】検出媒体に用いられる囲いの一例を示す斜視図である。
【図5】検出媒体に用いられるセルの一例を示す(a)上面図、及び(b)側面図である。
【図6】検出媒体に用いられるセルの他の例を示す上面図である。
【図7】本発明に係る光飛跡観測装置の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る光飛跡観測装置の第3の実施形態を示すブロック図である。
【図9】図8に示した光飛跡観測装置によって観測される光像を示す図である。
【図10】本発明に係る光飛跡観測装置の第4の実施形態を示すブロック図である。
【図11】本発明に係る光飛跡観測装置の第5の実施形態を示すブロック図である。
【図12】本発明に係る光飛跡観測装置の第6の実施形態を示すブロック図である。
【図13】本発明に係る光飛跡観測装置の第7の実施形態を示すブロック図である。
【図14】時間波形変換手段の一例であるパルス列生成器を示す構成図である。
【図15】スリット状マスクを励起パルスに適用した場合の観測像を模式的に示す図である。
【図16】光演算の一実施例における励起パルスへの第1の情報の付加を説明するための模式図である。
【図17】光演算の一実施例における演算結果の観測像からの抽出を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1…光源部、11…超短パルス光源、11a…励起パルス光源、11b…プローブパルス光源、12…光分岐器、13…波長板、14…レーザー制御装置、15…タイミング制御回路、16…トリガー回路、17…遅延回路、
2…励起光学系、21…可変光遅延器、21a…可動直角ミラー、22…励起パルス偏光手段、23…波長板、24…偏光子、25…入射光学系、25a…集束レンズ、
3…プローブ光学系、30…光路部分、31…可変光遅延器、32…プローブパルス偏光手段、33…波長板、34…偏光子、35…光ファイバー、36a、36c…集光レンズ、36b、36d…コリメートレンズ、37…パルスストレッチャー、
4…検出媒体、4a…レーザー媒質、40…囲い、45…セル、
5…光検出部、51…検光子、52…結像レンズ、53…カメラ、54…対物レンズ、55…干渉フィルター、56…シリンドリカルレンズ、57…一次元光検出器、58…分光器、
6…制御部、61…画像処理装置、62…制御装置、63…表示装置、
7…光学系保持機構、71…励起光学系保持部、72…プローブ光学系保持部、72a、72b…開口部、73…連結部、
81…パルス列生成器、81a、81b…ビームスプリッター、81c…全反射ミラー。

Claims (22)

  1. パルス光源によって供給された光パルスから、それぞれの出力タイミングが同期された第1の光束と第2の光束とを生成して出力する光源部と、
    光パルスの飛跡を検出し観測するための検出媒体と、
    前記第1の光束に基づいて励起パルスを形成し、前記検出媒体に前記励起パルスを入射する励起光学系と、
    前記第2の光束に基づいてプローブパルスを形成し、前記検出媒体に前記励起パルスが入射されることによって非線形光学効果による屈折率変化が誘起された光飛跡領域を含む前記検出媒体の所定領域に前記プローブパルスを照射するプローブ光学系と、
    前記検出媒体の所定領域を通過した前記プローブパルスを検出する光検出部とを備え、
    前記励起光学系は、前記励起パルスを所定の偏光状態とするための励起パルス偏光手段と、前記励起パルスを前記検出媒体に所定の入射条件によって入射させる入射光学系とを有し、前記プローブ光学系は、前記プローブパルスを所定の偏光状態とするためのプローブパルス偏光手段を有し、
    前記光検出部は、前記検出媒体の所定領域を通過した前記プローブパルスのうち、所定の偏光成分のみを透過させる検光手段と、前記検光手段を透過した前記プローブパルスの2次元光像を検出・観測する光検出手段と、前記検出媒体の所定領域を通過し前記検光手段を透過した前記プローブパルスの前記2次元光像を前記光検出手段に結像させる結像手段と、を有することによって、前記光飛跡領域における屈折率の異方性を検出して、前記励起パルスの光の飛跡を観測することを特徴とする光飛跡観測装置。
  2. 前記光源部は、光パルスを出力する単一のパルス光源と、前記光パルスを分岐して前記第1の光束と前記第2の光束とを生成する光分岐手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の光飛跡観測装置。
  3. 前記光源部は、前記第1の光束となる光パルスを出力する励起パルス光源と、前記第2の光束となる光パルスを出力するプローブパルス光源と、前記第1の光束及び前記第2の光束の出力タイミングを同期させるタイミング制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の光飛跡観測装置。
  4. 前記励起光学系または前記プローブ光学系のいずれか一方は、前記励起光学系と前記プローブ光学系との光路長差を設定・変更するための可変光遅延手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  5. 前記入射光学系は、その光路方向の位置が可動である可動光学系を有して構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  6. 前記励起パルス偏光手段及び前記プローブパルス偏光手段は、少なくとも一方に波長板または偏光子を含んで構成されて、前記励起パルス及び前記プローブパルスの偏光状態はそれぞれ所定の直線偏光に設定され、
    前記プローブパルスの前記検出媒体への照射軸は、前記励起パルスの前記検出媒体への入射軸を含み前記励起パルスの直線偏光の軸に対して垂直な平面内にあって、前記プローブパルスの直線偏光の軸は、前記平面に対して45度の傾きとして設定され、
    前記検光手段は、前記検出媒体の所定領域を通過した前記プローブパルスのうち、前記検出媒体に照射される前記プローブパルスの直線偏光と直交した偏光成分のみを透過させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  7. 前記プローブパルスの前記照射軸の、前記励起パルスの前記入射軸に対する照射角度が90度であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  8. 前記プローブパルスの前記照射軸の、前記励起パルスの前記入射軸に対する照射角度が0度より大きく90度より小さい角度に設定され、
    前記プローブ光学系は、前記プローブパルスの波面を前記励起パルスの波面に一致させて前記検出媒体に照射するための波面変換手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  9. 前記励起光学系、前記プローブ光学系及び前記光検出部の一部または全部を一体化して保持するとともに、前記励起パルスの前記入射軸を回転軸として回転駆動が可能なように構成されて、前記検出媒体に対する前記励起光学系、前記プローブ光学系及び前記光検出部の設置角度を変更することが可能な光学系保持機構をさらに備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  10. パルス光源によって供給された光パルスから、それぞれの出力タイミングが同期された第1の光束と第2の光束とを生成して出力する光源部と、
    光パルスの飛跡を検出し観測するための検出媒体と、
    前記第1の光束に基づいて励起パルスを形成し、前記検出媒体に前記励起パルスを入射する励起光学系と、
    前記第2の光束に基づいてプローブパルスを形成し、前記検出媒体に前記励起パルスが入射されることによって非線形光学効果による屈折率変化が誘起された光飛跡領域を含む前記検出媒体の所定領域に前記プローブパルスを照射するプローブ光学系と、
    前記検出媒体の所定領域を通過した前記プローブパルスを検出する光検出部とを備え、
    前記励起光学系は、前記励起パルスを所定の偏光状態とするための励起パルス偏光手段と、前記励起パルスを前記検出媒体に所定の入射条件によって入射させる入射光学系とを有し、前記プローブ光学系は、前記プローブパルスを所定の偏光状態とするためのプローブパルス偏光手段を有し、
    前記光検出部は、前記検出媒体の所定領域を通過した前記プローブパルスのうち、所定の偏光成分のみを透過させる検光手段と、前記検光手段を透過した前記プローブパルスを検出・観測する光検出手段と、前記検出媒体の所定領域を通過し前記検光手段を透過した前記プローブパルスを前記光検出手段に結像させる結像手段と、を有することによって、前記光飛跡領域における屈折率の異方性を検出して、前記励起パルスの光の飛跡を観測するように構成され、
    前記プローブパルスの前記照射軸の、前記励起パルスの前記入射軸に対する照射角度が90度であり、
    前記光検出部は、前記検出媒体の所定領域を通過した前記プローブパルスの2次元の光像を1次元の光像に変換する光像変換手段をさらに有し、前記光検出手段は一次元光検出器を有して構成されていることを特徴とする光飛跡観測装置。
  11. パルス光源によって供給された光パルスから、それぞれの出力タイミングが同期された第1の光束と第2の光束とを生成して出力する光源部と、
    光パルスの飛跡を検出し観測するための検出媒体と、
    前記第1の光束に基づいて励起パルスを形成し、前記検出媒体に前記励起パルスを入射する励起光学系と、
    前記第2の光束に基づいてプローブパルスを形成し、前記検出媒体に前記励起パルスが入射されることによって非線形光学効果による屈折率変化が誘起された光飛跡領域を含む前記検出媒体の所定領域に前記プローブパルスを照射するプローブ光学系と、
    前記検出媒体の所定領域を通過した前記プローブパルスを検出する光検出部とを備え、
    前記励起光学系は、前記励起パルスを所定の偏光状態とするための励起パルス偏光手段と、前記励起パルスを前記検出媒体に所定の入射条件によって入射させる入射光学系とを有し、前記プローブ光学系は、前記プローブパルスを所定の偏光状態とするためのプローブパルス偏光手段を有し、
    前記光検出部は、前記検出媒体の所定領域を通過した前記プローブパルスのうち、所定の偏光成分のみを透過させる検光手段と、前記検光手段を透過した前記プローブパルスを検出・観測する光検出手段と、前記検出媒体の所定領域を通過し前記検光手段を透過した前記プローブパルスを前記光検出手段に結像させる結像手段と、を有することによって、前記光飛跡領域における屈折率の異方性を検出して、前記励起パルスの光の飛跡を観測するように構成され、
    前記光検出部は、前記検出媒体の所定領域を通過した前記プローブパルスの2次元の光像を1次元の光像に変換する光像変換手段と、前記光像変換手段及び前記光検出手段の間に設置される分光手段とを有するとともに、前記プローブ光学系は、前記プローブパルスをチャープさせるパルスストレッチャーを有することを特徴とする光飛跡観測装置。
  12. 前記励起光学系または前記プローブ光学系の少なくとも一方は、前記励起パルスまたは前記プローブパルスの波長を変化させる波長変換手段を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  13. 前記励起光学系または前記プローブ光学系の少なくとも一方は、前記励起パルスまたは前記プローブパルスの個々の波形またはパルス列の構成などの時間波形を変化させる時間波形変換手段を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  14. 前記時間波形変換手段は、前記励起パルスまたは前記プローブパルスを時間間隔可変のパルス列に構成するパルス列生成手段であることを特徴とする請求項13記載の光飛跡観測装置。
  15. 前記励起光学系または前記プローブ光学系の少なくとも一方は、前記励起パルスまたは前記プローブパルスの空間分布を変化させる空間分布変換手段を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  16. 前記空間分布変換手段は、所定形状の単一または複数のスリットを有し、前記励起パルスまたは前記プローブパルスの空間分布を前記スリットによって単一または複数のスリット形状に構成するスリット状マスクであることを特徴とする請求項15記載の光飛跡観測装置。
  17. 前記スリット状マスクは、前記スリットの長手方向の設置角度を変更することが可能な角度変更機構をさらに備えることを特徴とする請求項16記載の光飛跡観測装置。
  18. 前記励起パルスの時間波形または空間分布の少なくとも一方に第1の情報を付加し、
    前記プローブパルスの時間波形または空間分布の少なくとも一方に第2の情報を付加して、
    前記励起パルス及び前記プローブパルスを用いた光の飛跡の観測で前記第1の情報及び前記第2の情報から得られる第3の情報を抽出することによって、所定の演算を行うことを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  19. 前記第1の情報または前記第2の情報において、光刺激を与える前と後の所定のサンプルを透過させることによって前記励起パルスまたは前記プローブパルスへの情報の付加を行って、前記光刺激による前記サンプルの変化を抽出する前記演算を行うことを特徴とする請求項18記載の光飛跡観測装置。
  20. 前記光検出手段からの画像データの処理を行う画像処理手段を有することを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  21. 前記光源部のパルス光源としてパルスレーザーを用い、前記パルスレーザーのレーザー媒質を前記検出媒体とし、前記パルスレーザーの共振器内の光パルスを前記励起パルスとし、前記パルスレーザーから出力された光パルスから前記プローブパルスを形成して、
    観測された前記励起パルスの情報に基づいて前記パルスレーザーのレーザー制御装置にフィードバックを行って、前記パルスレーザーの動作の最適化、安定化を行うことを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
  22. 動熱力学の観測または制御に適用したことを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項記載の光飛跡観測装置。
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