JP4024363B2 - ブロック共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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- BVBKRRFATVNTBM-UHFFFAOYSA-N CC(C(C)=C1C)C([O]=C=C)=C1[U]=C=C Chemical compound CC(C(C)=C1C)C([O]=C=C)=C1[U]=C=C BVBKRRFATVNTBM-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性に優れ、単独でペレット化可能な優れた加工性を有するだけでなく、熱可塑性樹脂とブレンドした時に相溶化することにより、または2種類以上の熱可塑性樹脂とアロイ化した時に相容化剤として働くことにより、耐衝撃性、透明性、屈曲性および耐折り曲げ白化性等の物性バランスを大幅に改良するブロック共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、重合体中に不飽和二重結合を有するジエン系ブロック共重合体の熱安定性、耐候性及び耐オゾン性を改良する手段として、該不飽和二重結合を水素添加(以下「水添」という)する方法が公知であり、例えば特公昭36−3895号公報、特公昭42−8933号公報、特公昭42−25304号公報、特公昭45−39274号公報等に水添ブタジエン重合体および水添スチレン−ブタジエン共重合体の製造方法について開示されている。これにより得られる耐熱性、耐候性及び耐オゾン性に優れる水添ポリマーは、熱可塑性エラストマーとしての性能に優れるため様々な樹脂の改質用途に使用されている。特にスチレンブロックを有する水添スチレン−ブタジエン共重合体はスチレン系樹脂との相溶性に優れるため、これらの樹脂の改質剤として使用されている。
【0003】
さらにペレット化可能な優れた加工性を有し、かつ、オレフィン系樹脂の改質効果を高める目的で、水添前のポリブタジエンブロックのミクロ構造(1,4−付加および1,2−付加)をコントロールする方法が提案されている。
【0004】
例えば、特公昭62−45883号公報には、ビニル含量の低い(15%未満)ポリブタジエンブロックとビニル含量の高い(85%以上)ポリブタジエンブロックからなるジブロック共重合体を水素添加することにより、結晶質ブロックと非晶質ブロックからなる水素化共重合体について開示している。しかし、ポリスチレンブロックを含み、かつ、熱可塑性エラストマーのソフト部として作用し結晶性を持たないビニル含量の中程度(33%以上62%未満)のポリブタジエンブロックと、同じく非晶質でビニル含量の高い(62%以上)ポリブタジエンブロックを有するブロック共重合体の水素添加物については開示されていない。
【0005】
ポリスチレンブロックを含む水添ブロック共重合体の例として、特開平2−133406号公報には、ポリスチレンブロック、ビニル含量30〜80%のポリ共役ジエンブロック、ビニル含量30%未満のポリブタジエンブロックからなるブロック共重合体の水素添加物およびその組成物について開示されている。ビニル含量の低いブロックを水添し、ポリエチレン類似結晶性を付与し樹脂的性質を高めたものである。これにより熱可塑性エラストマーとしての性能を引き出している。しかし、このブロック共重合体はビニル含量の高いポリブタジエンブロックを持たないので水添しても特定の熱可塑性樹脂との組成物の柔軟性改良効果は十分ではなかった。
【0006】
また、ポリスチレンブロックおよびビニル含量の高いポリブタジエンブロックを含む水添ブロック共重合体の例として、特開平5−170844号公報、特開平7−118335号公報には、ポリスチレンブロック、ビニル含量70%を超えるポリ共役ジエンブロック、ビニル含量30%以下のポリブタジエンブロックからなるブロック共重合体の水素添加物について開示されている。いずれの場合も、ビニル含量の高いポリブタジエンブロックを水添することで特定の熱可塑性樹脂との組成物の柔軟性改良効果を高めるとともに、ビニル含量の低いブロックを水添することでポリエチレン類似結晶性を付与し樹脂的性質を高め、ペレット同士の付着の発生を抑えることができるようにしたものである。
【0007】
しかし、これらの水添ブロック共重合体中において、熱可塑性エラストマーのソフト部として作用するブロックは、ビニル含量の高いポリブタジエンブロックを水添したためガラス転移温度が高くなり、ゴム的性質が低下する。このことが原因で熱可塑性樹脂の改質効果、特に耐衝撃性改良が十分ではなかった。
【0008】
このように、ポリスチレンブロック、熱可塑性エラストマーのソフト部として作用しガラス転移温度の低いビニル含量の中程度(33%以上62%未満)の水添ポリブタジエンブロック、同じく非晶質でビニル含量の高い(62%以上)水添ポリブタジエンブロックからなるブロック共重合体については開示されていない。
【0009】
さらに、特開平8−208911号公報には、ポリスチレンブロック、ビニル含量50%以上のポリ共役ジエンブロックおよびビニル含量25%以下のポリブタジエンブロックからなるブロック共重合体の水素添加物および該水素添加物とPPからなるPP系フィルムについて開示されている。しかしながら、これらの水添ブロック共重合体を熱可塑性樹脂とブレンドした時、または2種類以上の熱可塑性樹脂とアロイ化した時に、耐衝撃性、透明性、屈曲性および耐折り曲げ白化性等の物性バランスを得るには不十分であり、改質剤(相溶化剤、相容化剤)としてのさらなる性能を有するポリマーが要望されていた。
【0010】
本発明は、単独でペレット化可能な優れた加工性を有するだけでなく、熱可塑性樹脂とブレンドした時に相溶化する、という特徴を有するブロック共重合体を用いて、耐衝撃性、透明性、屈曲性および耐衝撃白化性等の物性バランスを大幅に改良するブロック共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ビニル芳香族化合物ブロック−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水添物のポリマー構造と、その加工性および熱可塑性樹脂の改質剤としての効果について鋭意検討を進めた。その結果、同一ポリマー分子鎖中に熱可塑性エラストマーとして機能するブロックと特定の熱可塑性樹脂と相溶化する機能をもつブロックを含むブロック共重合体が優れた加工性を有するだけでなく、熱可塑性樹脂とブレンドした時に相溶化することにより、耐衝撃性、透明性、屈曲性および耐衝撃白化性等の物性バランスを大幅に改良する熱可塑性樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
すなわち、本発明の第1は、
ポリプロピレン系樹脂99〜1重量%、
(1)スチレン単量体成分が90モル%以上、からなるスチレンブロック(S)を2つ以上、
(2)構成される単量体成分が主に1−ブテン(a)成分、エチレン(b)成分からなり、各成分の構成比が(a)成分が20〜45モル%、(b)成分が80〜55モル%で、(a)+(b)≧90モル%であるエチレン−1−ブテンランダムブロック(B1)を1つ以上、
(3)(2)と同じ単量体成分からなり、各成分の構成比が、(a)成分が45〜100モル%、(b)成分が55〜0モル%で、(a)+(b)≧90モル%であるエチレン−1−ブテンランダムブロック(B2)を1つ以上、
からなり、2つ以上の(S)ブロックの間に(B1)ブロックおよび/または(B2)ブロックが存在し、分子量が20,000〜1,000,000、分子量分布Mw/Mnが1〜5であるブロック共重合体1〜99重量%、
とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【0013】
本発明の第2は、
ブロック共重合体中のブロック(S)の合計含有量が5〜80重量%、ブロック(B1)の合計含有量が10〜70重量%、ブロック(B2)の合計含有量が10〜70重量%(但し、(S)+(B1)+(B2)=100重量%)であることを特徴とする第1の発明の熱可塑性樹脂組成物。
【0014】
本発明の第3は、
ブロック共重合体が(S)−(B1)−(S)−(B2)の構造を有することを特徴とする第1および第2の発明の熱可塑性樹脂組成物。
【0017】
本発明の主たる特徴は、主に1−ブテン構造およびエチレン構造からなり、その組成割合が異なる2種類の特定構造をもつブロックが同一ポリマー分子鎖中に存在するブロック共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物であることにある。このような特定のブロック構造にすることにより、熱可塑性エラストマーとして機能するブロックと熱可塑性樹脂と相溶化する機能をもつブロックが同一ポリマー分子鎖中に含まれることになる。該ブロック共重合体は優れた加工性を有するだけでなく、熱可塑性樹脂とブレンドした時に相溶化することにより、耐衝撃性、透明性、屈曲性および耐衝撃白化性等の物性バランスを大幅に改良できる熱可塑性樹脂組成物が得られることを見いだしたものである。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。はじめに本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるブロック共重合体の特徴を以下に記載する。ブロック(S)は主にスチレン(s)成分からなり(s)成分は90モル%以上、好ましくは95モル%以上である。(s)成分以外に1−ブテン(a)成分、エチレン(b)成分、1,4−付加ブタジエン(c)成分および1,2−付加ブタジエン(d)成分が含まれていても良いが、これらの成分の合計は10モル%未満であり、好ましくは5モル%未満である。スチレン(s)成分が90モル%未満ではハードブロックとしての凝集力が弱まり、熱可塑性エラストマーとしての機能が劣る。また、該ブロック共重合体中にブロック(S)は2つ以上含まれる。好ましくは2つ以上6つ以下、さらに好ましくは2つである。ブロック(S)が1つでは、熱可塑性樹脂とブレンドした時、耐衝撃性等の物性が大きく劣る。また、7つ以上では生産性が悪くなる。
【0019】
ブロック(B1)は主に1−ブテン(a)成分およびエチレン(b)成分からなり、実質的にはエチレン−1−ブテンランダムブロックである。(a)成分、(b)成分以外にスチレン(s)成分、1,4−付加ブタジエン(c)成分および1,2−付加ブタジエン(d)成分がランダムあるいはテーパーに含まれていても良いが、これらの成分の合計が10モル%未満、好ましくは5モル%未満である。10モル%以上含まれると、該ブロック共重合体の耐熱・耐候性またはゴムとしての低温性能が低下する。また、ブロック(B1)中の1−ブテン(a)成分が20〜45モル%、好ましくは25〜45モル%で、エチレン(b)成分が80〜55モル%、好ましくは75〜55モル%である。1−ブテン(a)成分が20モル%未満ではエチレンユニットが連続し、ポリエチレン性の結晶化が起こりやすくなるためゴム弾性が低下する。また、1−ブテン(a)成分が増えるに従いブロック(B1)のガラス転移点が高くなり、低温下でのゴム成分としての効果が低くなる傾向にあり、45モル%を超えるとブロック(B1)のガラス転移点が高くなりすぎ、低温性能が不十分となる。また、該ブロック共重合体中にブロック(B1)は1つ以上含まれる。ブロック鎖長が長いほどゴム弾性を発揮しやすいので有利であることから、好ましくは1つ以上3つ以下、さらに好ましくは1つである。ブロック(B1)が4つ以上では生産性上好ましくない。
【0020】
このようにブロック(B1)は該ブロック共重合体においてガラス転移点の低いソフトブロック成分として働く。そのためにはブロック(B1)はハードブロック成分となるスチレン(s)成分を主体とするガラス転移点の高い2つのブロック(S)に挟まれた時に熱可塑性エラストマーとしての最大限の効果を発揮する。
【0021】
ブロック(B2)は主に1−ブテン(a)成分およびエチレン(b)成分からなり、実質的にエチレン−1−ブテンランダムブロックである。(a)成分、(b)成分以外にスチレン(s)成分、1,4−付加ブタジエン(c)成分および1,2−付加ブタジエン(d)成分がランダムに含まれていても良いが、これらの成分の合計が10モル%未満、好ましくは5モル%未満である。10モル%以上含まれると、該ブロック共重合体の耐熱・耐候性、熱可塑性樹脂との相溶性、相容化剤としての機能が低下する。また、ブロック(B2)中の1−ブテン(a)成分が45〜100モル%、好ましくは55〜100モル%で、エチレン(b)成分が55〜0モル%、好ましくは45〜0モル%である。1−ブテン(a)成分が45モル%未満では、熱可塑性樹脂とブレンドした時の相溶化の効果が低下し、耐衝撃性、透明性、屈曲性および耐衝撃白化性等の物性が改良できない。また、該ブロック共重合体中にブロック(B2)は1つ以上含まれる。ブロック鎖長が長い方が熱可塑性樹脂に相溶化しやすくなるため、好ましくは1つ以上3つ以下、さらに好ましくは1つである。ブロック(B2)が4つ以上では生産性上好ましくない。
【0022】
このようにブロック(B2)は該ブロック共重合体において熱可塑性樹脂と相溶化する機能を有する。従って、ブロック共重合体中におけるブロック(B2)の割合が高いほど、ブロック(B2)の分子量が大きいほど、相溶化する機能および相容化剤としての機能が高くなる。
【0023】
これらの各ブロックの割合は、ブロック(S)の合計含有量が5〜80重量%、ブロック(B1)の合計含有量が10〜70重量%、ブロック(B2)の合計含有量が10〜70重量%(但し、(S)+(B1)+(B2)=100重量%)の範囲である。好ましくは、ブロック(S)の合計含有量が5〜50重量%、ブロック(B1)の合計含有量が25〜60重量%、ブロック(B2)の合計含有量が25〜60重量%(但し、(S)+(B1)+(B2)=100重量%)の範囲である。
【0024】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有されるブロック共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が20,000〜1,000,000であり、分子量分布Mw/Mnが1〜5である。Mnが20,000未満では単独でペレット化が困難となり、強度および改質剤としての効果も大きく劣る。また、Mnが1,000,000を超えると加工性が著しく劣る。Mw/Mnが5を超えると低分子ポリマーによる表面のべた付きが激しくなる。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有されるブロック共重合体のブロック構造は上記ブロックを含むものであればよく、たとえば(S)−(B1)−(S)−(B2)、(S)−(B2)−(S)−(B1)、(B2)−(S)−(B1)−(S)−(B2)、(S)−(B1)−(S)−(B2)−(S)、(S)−(B1)−(B2)−(S)、(S)−(B1)−(B2)−(S)−(B2)で表される直鎖状ポリマー、[(B2)−(S)−(B1)]nX、[(B1)−(S)−(B2)]nX、[(S)−(B1)−(B2)]nX、[(B2)−(S)−(B1)−(S)]nX(ここで、n=2以上の整数、Xはカップリング剤残基)で表される直鎖状、分岐状、放射状ポリマーまたはこれらの組み合わせなどいずれの場合でも十分な効果が得られるが、高い効果が得られるのは(S)ブロックの間に(B1)ブロックが存在し、かつ、(B2)ブロックを分子鎖末端に含む構造、たとえば(S)−(B1)−(S)−(B2)、(B2)−(S)−(B1)−(S)−(B2)、[(B2)−(S)−(B1)]nX、[(B2)−(S)−(B1)−(S)]nXの場合であり、熱可塑性エラストマーとしての性能と相溶化の性能のバランスに優れる。最も好ましいブロック構造は直鎖状ブロック(S)−(B1)−(S)−(B2)である。カップリング剤を使用して直鎖状、分岐状、放射状ポリマーを製造する際には、少量の未カップリングポリマーが残っていてもよく。最終的に得られるポリマーの流動性を高めるために未カップリングポリマーを残してもよい。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有されるブロック共重合体は下記に示すベースとなるブロック共重合体を水添触媒の存在下にブタジエンユニットのオレフィン性二重結合を水素化することにより得られる。
【0027】
(1)スチレン単量体成分が90モル%以上、からなるスチレンブロック(S)を2つ以上、
(2)構成される単量体成分が主に1,4−付加ブタジエン(c)成分および1,2−付加ブタジエン(d)成分からなり、各成分の構成比が、(c)成分が38〜67モル%、(d)成分が62〜33モル%で、(c)+(d)≧90モル%であるランダムポリブタジエンブロック(RB1)を1つ以上、
(3)(2)と同じ単量体成分からなり、各成分の構成比が、(c)成分が0〜38モル%、(d)成分が100〜62モル%で、(c)+(d)≧90モル%であるランダムポリブタジエンブロック(RB2)を1つ以上、
からなり、2つ以上の(S)ブロックの間に(RB1)ブロックおよび/または(RB2)ブロックが存在し、分子量が20,000〜1,000,000、分子量分布Mw/Mnが1〜5であるブロック共重合体。
【0028】
ここで、(S)ブロックは本発明のブロック共重合体中の(S)ブロックと同一である。また、ブロック(RB1)は本発明の共重合体中の(B1)ブロックに相当するブロックで、主に1,4−付加ブタジエン(c)成分および1,2−付加ブタジエン(d)成分からなり、スチレン(s)成分がランダムあるいはテーパーに含まれていても良いが、(s)成分の合計が10モル%未満、好ましくは5モル%未満である。また、ブロック(RB1)中の1,2−付加ブタジエン(d)成分が33〜62モル%、好ましくは40〜62モル%で、1,4−付加ブタジエン(c)成分が67〜38%、好ましくは60〜38モル%である。
【0029】
ブロック(RB2)は本発明の共重合体中の(B2)ブロックに相当するブロックで、主に1,4−付加ブタジエン(c)成分および1,2−付加ブタジエン(d)成分からなり、スチレン(s)成分がランダムあるいはテーパーに含まれていても良いが、(s)成分の合計が10モル%未満、好ましくは5モル%未満である。また、ブロック(RB2)中の1,2−付加ブタジエン(d)成分が62〜100モル%、好ましくは71〜100モル%で、1,4−付加ブタジエン(c)成分が38〜0モル%、好ましくは29〜0モル%である。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有されるブロック共重合体中のブロックを構成する1−ブテン構造およびエチレン構造は、それぞれ1,2−付加ブタジエンユニットおよび1,4−付加ブタジエンユニットを水添することによってできる構造である。従って、1,4−付加ブタジエンユニットを水添した場合にはエチレンユニットが二つ連続した(テトラメチレン)構造となる。従って、水添前のベースとなるブロック共重合体の(RB1)ブロック中に1,4−付加ブタジエン(c)成分が38%で、1,2−付加ブタジエン(d)成分が62%含まれる場合には、水添後のブロック共重合体の(B1)ブロックには水添率100%の場合、1−ブテン構造が45モル%、エチレン構造が55モル%含まれていることになる。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有されるブロック共重合体のベースとなる水添前のブロック共重合体の製法について以下に記す。単量体として1,3−ブタジエンおよびスチレンをヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン等の不活性炭化水素溶媒中で有機リチウム化合物等のアニオン重合開始剤を用い、ビニル化剤としてジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン(BOP)の如きエーテル化合物や、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ジピペリジノエタン(DPE)の如き第3級アミン化合物を用いる。また、必要に応じカップリング剤としてエポキシ化ダイズ油、炭酸ジエチル、ジメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジメチルジフェニルシラン、四塩化ケイ素の如き多官能性化合物を用いて、直鎖状、分岐状、放射状のブロック共重合体を得ることも出来る。
【0032】
1,3−ブタジエンの付加重合においては、トランス1,4−付加、シス1,4−付加および1,2−付加の3種類の付加が起こりうる。この比率は上記ビニル化剤の種類、添加量、および重合温度によって制御できる。1,2−付加すなわちビニル含量を高くするためには、重合温度を下げる、あるいはビニル化剤の添加量を増やすことが効果的である。
【0033】
また、水添前のブロック共重合体は上記有機リチウム化合物を開始剤として使用する以外の他の重合法、例えば、ニッケル、コバルト、チタン等の有機金属化合物と、リチウム、マグネシウム、アルミニウム等の有機金属化合物とからなるチーグラー系触媒を使用する方法ないしはラジカル重合法によるものであっても構わない。
【0034】
水添反応の反応および条件は、本発明で規定する水添率のブロック共重合体が得られるのであれば、いずれの方法および条件を用いることが可能である。それらの水添方法の例としては、チタンの有機金属化合物を主成分とする触媒を水添触媒として使用する方法、鉄、ニッケル、コバルトの有機化合物とアルキルアルミニウム等の有機金属化合物からなる触媒を使用する方法、ルテニウム、ロジウム等の有機金属化合物からなる触媒を使用する方法、パラジウム、白金、ルテニウム、コバルト、ニッケル等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持した触媒を使用する方法などがある。各種の方法の中では、チタンの有機金属化合物単独、または、それとリチウム、マグネシウム、アルミニウムの有機金属化合物とからなる均一触媒(特公昭63−4841号公報、特公平1−3797号公報)を用いる方法が、低圧、低温の穏和な条件で工業的に水添できるので好ましく、また、ブタジエンユニットのオレフィン性2重結合への水添選択性も高く、スチレンユニット中の芳香環を水添しないので本発明の目的に適している。特に好ましい触媒は、下記一般式で示されるチタノセン化合物と還元剤を用いた系で、別々に反応系内に添加しても良いし、あらかじめ調製したこれらの反応生成物を反応系内に添加しても良い。あらかじめ調製する場合、特公平7−25811号公報に記載されているようにオレフィン性不飽和二重結合含有重合体を共存させてもよい。
【0035】
【化1】
【0036】
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10は、それぞれ水素または炭素数1から8の炭化水素基を示し、それらは同一でも異なっていても良いし、脂肪族環あるいは芳香族環を形成したり、二つの置換シクロペンタジエニル基を橋かけしたようにつながっていても良い。R11,R12は炭素数1〜12の炭化水素基、ベンジル基、アリーロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン基およびカルボニル基から選択された基であり、R11とR12は同一でも異なっていても良いし、チタンを含むメタラサイクルを形成していても良い。また、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10,R11,R12は炭素を主体とした基であるが、水添活性に悪い影響を及ぼさない限り、酸素、窒素、ホウ素、ケイ素、リン、硫黄、塩素等の原子を含んでいても良い。また、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トリメチルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン等との錯体を形成していても良い。
【0037】
使用できるチタノセン化合物の中、同一の(未)置換シクロペンタジエニル基を使用した例として、ジ−m−トリル−ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジ−m−トリル−ビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジ−m−トリル−ビス(η5−インデニル)チタン、ジ−m−トリル−ビス(η5−テトラヒドロインデニル)チタン、ジ−m−トリル−ビス(η5−フルオレニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−ジ−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−トリメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス−(η5−トリブチルシクロペンタジエニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−テトラメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−インデニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−テトラヒドロインデニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−フルオレニル)チタン、ジフェニルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジフェニルビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−ジ−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−トリメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−トリブチルシクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−テトラメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−ペンタ−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−インデニル)チタン、ジクロロビス(η5−テトラヒドロインデニル)チタン、ジクロロビス(η5−フルオレニル)チタン、ジブロモビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジブロモビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジフロロビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジヨードビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジメチルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジメチルビス(η5−ジ−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)チタン、ジメチルビス(η5−トリメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジメチルビス(η5−トリブチルシクロペンタジエニル)チタン、ジメチルビス(η5−テトラメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジメチルビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジエチルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジヘキシルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジオクチルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジ−トリメチルシリルメチルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジ−トリメチルシリルメチルビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジベンジルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジベンジルビス(η5−ジ−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)チタン、ジベンジルビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジメトキシビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジメトキシビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジエトキシビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジエトキシビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジ−n−ブトキシビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジ−n−ブトキシビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジフェノキシビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジフェノキシビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジ(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジ(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、メチルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタンクロリド、メチルビス(η5−ジ−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)チタンクロリド、メチルビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンクロリド、トリメチルシリルメチルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタンクロリド、トリメチルシリルメチルビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンクロリド、ジ(トリメチルシリル)メチル(η5−シクロペンタジエニル)チタンクロリド、ジ(トリメチルシリル)メチル(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンクロリド、ベンジルビス(η5−シクロペンタジエニル)チタンクロリド、ベンジルビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンクロリド、メトキシビス(η5−シクロペンタジエニル)チタンクロリド、メトキシビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンクロリド、フェノキシビス(η5−シクロペンタジエニル)チタンクロリド、フェノキシビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンクロリド、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシビス(η5−シクロペンタジエニル)チタンクロリド、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンクロリド等が挙げられる。
【0038】
さらに、種類の異なる2つのシクロペンタジエニル誘導体基を使用する場合には、シクロペンタジエニル基、ジ−トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、オクタヒドロフルオレニル基、あるいはこれらの誘導体のどの組み合わせからでも選択することができる。
【0039】
また、上記シクロペンタジエニル誘導体基2つのあらゆる組み合わせにおいて、選択された2つのシクロペンタジエニル誘導体基をジメチルシリル基や1,2−エチレン基により橋かけしたものであっても良い。
【0040】
R11とR12がチタンを含むメタラサイクルを形成しているものとしては、o−キシリデン基、1,1’−ビナフチル−2,2’−オキシ基、下記化学式に示すようなチタナシクロブタン誘導体、チタナシクロペンタン誘導体等が挙げられる。
【0041】
【化2】
【0042】
ここで、mは3以上の整数を示し、R13、R14は水素または炭素数1から8の炭化水素基を示す。これらは同一でも異なっていても良いし、脂肪族環あるいは芳香族環を形成していても良い。
【0043】
R11とR12は炭素を主体とした基であるが、酸素、窒素、ホウ素、ケイ素、リン、硫黄、塩素等の原子を含んでいても良く、例えばジメチルアミノアルキル基、ジフェニルフォスフィノアルキル基等が挙げられる。
【0044】
これらのチタノセン化合物のうち特に好ましいものは、ジ−m−トリル−ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジ−p−トリル−ビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン、ジクロロビス(η5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンである。
【0045】
還元剤としては、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛の有機金属化合物または水素化物であり、有機金属化合物としては、例えば、活性を保持しているリビングアニオン重合体や、重合開始剤である有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、二有機置換マグネシウム、有機置換マグネシウムハライド、三有機置換アルミニウム、有機置換アルミニウムハロゲニド、有機置換水素化アルミニウム、アルミニウムオキシ化合物、二有機置換亜鉛などである。
【0046】
有機リチウム化合物の具体的な例としてはメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、2−エチルヘキシルリチウム、オクチルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、キシリルリチウム、メトキシリチウム、エトキシリチウム、n−プロポキシリチウム、iso−プロポキシリチウム、n−ブトキシリチウム、ペンチルオキシリチウム、ヘキシルオキシリチウム、オクチルオキシリチウム、フェノキシリチウム、4−メチルフェノキシリチウム、ベンジルオキシリチウム、4−メチルベンジルオキシリチウム等が挙げられる。さらにフェノール系の安定剤とアルキルリチウムを反応させて得られるリチウムフェノラート化合物や、トリメチルシリルリチウム、ジエチルメチルシリルリチウム、ジメチルエチルシリルリチウム、トリエチルシリルリチウム、トリフェニルシリルリチウム、トリメチルシロキシリチウム、ジエチルメチルシロキシリチウム、トリエチルシロキシリチウム、トリフェニルシロキシリチウム等の有機ケイ素リチウム化合物さらにはジ−イソプロピルアミドリチウムのようなアミドリチウムも使用できる。
【0047】
また、有機ナトリウム化合物としてはメチルナトリウム、エチルナトリウム、n−プロピルナトリウム、n−ブチルナトリウム、sec−ブチルナトリウム、tert−ブチルナトリウム、ヘキシルナトリウム、オクチルナトリウム、フェニルナトリウム、トリルナトリウム、ナトリウムナフタレン等が挙げられる。、さらに有機カリウム化合物としてはメチルカリウム、エチルカリウム、n−プロピルカリウム、n−ブチルカリウム、sec−ブチルカリウム、tert−ブチルカリウム、ヘキシルカリウム、オクチルカリウム、フェニルカリウム、トリルカリウム、トリフェニルメチルカリウム、フェニルエチルカリウム、カリウムナフタレン等が挙げられる。
【0048】
二有機置換マグネシウム化合物としてはジメチルマグネシウム、シエチルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、n−ブチル−sec−ブチルマグネシウム、n−ブチルエチルマグネシウム等が挙げられ、トリブチルナトリウムマグネシウムなどのアート錯体も使用できる。さらに、有機置換マグネシウムハライドとしてメチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムクロライド、tert−ブチルマグネシウムブロマイド、tert−ブチルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムクロライド等も使用可能である。
【0049】
三有機置換アルミニウム化合物としてはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム等が挙げられ、有機置換アルミニウムハロゲニドとしてはジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、iso−ブチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、iso−ブチルアルミニウムジクロライド等が挙げられる。さらに有機置換水素化アルミニウム化合物としてはジエチルアルミニウムハイドライド、ジ−iso−ブチルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、アルミニウムオキシ化合物としてはメチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン等が挙げられる。また、二有機置換亜鉛化合物としてはジエチル亜鉛、ビス(η5−シクロペンタジエニル)亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。
【0050】
これらの他に、ナトリウムアルミニウムハイドライド、リチウムアルミニウムハイドライド、ジ−iso−ブチルナトリウムアルミニウムハイドライド、トリ(tert−ブトキシ)リチウムアルミニウムハイドライド、トリエチルナトリウムアルミニウムハイドライド、ジ−iso−ブチルナトリウムアルミニウムハイドライド、iso−ブチルナトリウムアルミニウムハイドライド、トリエチルナトリウムアルミニウムハイドライド、トリエトキシナトリウムアルミニウムハイドライド、トリエチルリチウムアルミニウムハイドライド等の2種以上の金属を含有する還元剤でも構わない。また、これらは2種以上を相互に混合して使用しても差し支えない。
【0051】
水添は触媒に不活性で、共重合体が可溶な溶剤中で実施される。好ましい溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタンのような脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘプタンのような脂環族系炭化水素、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類の中から単独またはそれらを主成分とする混合物である。特にブロック共重合体を製造するときに得られる共重合体溶液をそのまま用いることがコスト的にも有利である。この場合、一般的には活性末端リチウムをアルコール等の活性水素を有する化合物で完全に失活させることが好ましいが、活性末端リチウムを上記還元剤の一部または全部として残しておくことも可能である。また、共重合体製造時に使用したビニル化剤等の有機化合物がそのまま含まれていても良い。
【0052】
水添反応は、一般には共重合体を水素または不活性雰囲気下、所定の温度に保持し、攪拌下または不攪拌下にて水添触媒を添加し、次いで水素ガスを導入して所定圧に加圧することによって実施される。不活性雰囲気下とは、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン等の水添反応を阻害しない雰囲気を意味する。空気や酸素は触媒を酸化させ、触媒の失活を招くので好ましくない。また、窒素は反応系内に少量存在していても良いが、水添反応時触媒毒として作用し、水添活性を低下させることがあるので好ましくない。特に、水添反応器内は水素ガス単独の雰囲気であることが最も好適である。また、水添共重合体を得る水添反応プロセスは、バッチプロセス、連続プロセス、それらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0053】
また、水添触媒としてチタノセンジアリール系化合物を用いる場合は単独でそのまま反応溶液に加えても良いし、不活性有機溶媒に溶かした溶液として加えても良い。触媒を溶液として用いる場合に使用する不活性有機溶媒は、水添反応を阻害しない前記各種溶媒を用いることができる。好ましくは重合に用いた溶媒と同一の溶媒である。また、触媒の添加量は水添前のブロック共重合体100g当たり0.02〜20ミリモルである。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有されるブロック共重合体を得る最も好ましい方法は、水添前のブロック共重合体を有機リチウム開始剤およびビニル化剤を用いて溶液中でアニオンリビング重合し、重合終了後必要に応じカップリング剤を添加するか、あるいはアルコール等の活性水素を含む反応停止剤を加えた後、得られたポリマー溶液をそのまま次の水添反応に用いることであり、工業的に極めて有用である。また、この水添後のブロック共重合体溶液から溶媒を除去することにより、該ブロック共重合体を単離して得ることができる。溶媒を除去する方法例としては、ブロック共重合体溶液をメタノール等により凝固させた後、加熱あるいは減圧乾燥させるか、同ブロック共重合体溶液を沸騰水中に注ぎ、溶媒を共沸させ除去した後、加熱あるいは減圧乾燥することにより得られる。
【0056】
熱可塑性樹脂は、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂である。
【0057】
該ブロック共重合体の(B2)ブロック部がポリプロピレン系樹脂と相溶しやすいことから、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を使用する。該ブロック共重合体とポリプロピレン系樹脂とをブレンドすると、ポリプロピレン系樹脂の透明性を保持したまま軟質化させることができる。ポリプロピレン系樹脂を軟質化するのに必要な量は、求める柔らかさにもよるが、ポリプロピレン系樹脂90重量部に対し、該ブロック共重合体10重量部添加すれば十分な効果が得られる。ブロック共重合体の添加量が多いほど、軟質化の度合いは当然大きくなる。
【0058】
一方、ポリプロピレン系樹脂とブロック共重合体の(B2)ブロック部が相溶しているかどうかは、衝撃白化性を調べることで評価できる。衝撃白化性もブロック共重合体の添加量を増加することで衝撃白化を防ぐことができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるブロック共重合体の場合、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して5〜80重量部以上の添加により衝撃白化性を改良することができる。しかし、ブロック共重合体の添加量が多すぎると、得られる組成物が軟質化しすぎてしまうという欠点がある。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有されるブロック共重合体の特長、つまりあまり軟質化させることなく衝撃白化性を改良するという目的には、10〜45重量部の添加が好ましい。
【0059】
近年、リサイクル性の問題、環境問題の点から、軟質塩ビ代替材料が求められている。軟質塩ビの特長として適度な柔らかさ、透明性、および折り曲げても白化しないという物性バランスが挙げられる。ポリプロピレン系樹脂と該ブロック共重合体を含有する組成物はこの軟質塩ビの特長を有するものである。
【0060】
さらに、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、該ブロック共重合体を80重量部以上添加することにより得られる組成物は、引張時の白化開始伸びが改良される。特に該ブロック共重合体を200重量部以上添加することにより得られる組成物からは硬さ、伸び、および引張時の白化開始伸びのバランスの良い成形体を得ることができる。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には補助添加成分、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等を添加することができる。さらに、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、タルク、アラミド繊維等の充填剤やオイル、可塑剤、低分子量ポリマーを単独あるいは併用して用いることもできる。また、ペレットあるいはクラムのブロッキングを防止するため、当業界で使用されている各種ブロッキング防止剤を添加してもよい。
【0063】
これらの組成物を製造する方法としては特に制限されるものではないが、公知の方法、例えば各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ラボプラストミル等で各成分を混練する方法が挙げられる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
−ブロック共重合体の測定法−
ブロック共重合体中のスチレン含量
UV測定により算出した。
【0066】
ポリブタジエンブロックのビニル結合含量
フーリエ変換赤外分光(FT−IR)法を用い、ハンプトン法により算出した。ポリブタジエンを重合する度に測定することにより、仕込んだブタジエンモノマーの重量比から、各ポリブタジエンブロックのビニル結合含量を求めた。
【0067】
ポリブタジエンブロックの水添率
重水素化クロロホルムを溶媒に用い、400MHz、1H−NMRスペクトルより算出した。
【0068】
ブロック共重合体の数平均分子量
テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用い、カラム温度43℃でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。
【0069】
<重合参考例−1>
窒素置換した100リットルのオートクレーブに乾燥、精製したシクロヘキサン60リットル、テトラヒドロフラン(THF)605グラム(8.40モル)、n−ブチルリチウム9.69グラム(0.151モル)を含むシクロヘキサン溶液を仕込み、60℃に昇温した。そこへスチレン577グラムを添加して重合を行った。続いて1,3−ブタジエン4.63キログラム、さらにスチレン577グラムを逐次添加し、重合を続けた。ここで温度を40℃に冷却してからテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)35.1グラム(0.302モル)をさらに添加し、1,3−ブタジエン3.86キログラムを重合温度が60℃を超えないように徐々に添加し重合を行った。重合を終了した後、メタノール3.83グラム(0.120モル)を添加してリビング活性末端を失活させた。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約7万、スチレン含有量12wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが37%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が53%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量は72%であるS−RB1−S−RB2型ブロック共重合体であった。
【0070】
<重合参考例−2>
THFの代わりにTMEDA4.54グラム(39.1ミリモル)、n−ブチルリチウムを8.94グラム(0.140モル)を使用した以外は重合参考例1と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約8万、スチレン含有量12wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが49%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が62%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量は77%であるS−RB1−S−RB2型ブロック共重合体であった。
【0071】
<重合参考例−3>
重合開始剤であるn−ブチルリチウム量を7.89グラム(0.123モル)使用し、THFの代わりにB1ブロック部の重合時にはTMEDA3.87グラム(33.3ミリモル)、TMEDAの代わりにB2ブロック部の重合前に2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン(BOP)56.6グラム(0.308モル)を使用した以外は重合参考例1と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約9万、スチレン含有量12wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが40%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が57%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量は76%であるS−RB1−S−RB2型ブロック共重合体であった。
【0072】
<重合参考例−4>
窒素置換した30リットルのオートクレーブに乾燥、精製したシクロヘキサン18リットル、THFの代わりにTMEDA1.76グラム(15.1ミリモル)、n−ブチルリチウム3.73グラム(58.3ミリモル)を含むシクロヘキサン溶液を仕込み、60℃に昇温した。そこへスチレン275グラムを添加して重合を行った。続いて1,3−ブタジエン1.92キログラム、さらにスチレン275グラムを逐次添加し、重合を続けた。ここで温度を40℃に冷却してからBOP26.8グラム(0.146モル)をさらに添加し、1,3−ブタジエン275グラムを重合した以外は重合参考例1と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約6万、スチレン含有量20wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが35%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が39%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量は71%であるS−RB1−S−RB2型ブロック共重合体であった。
【0073】
<重合参考例−5>
重合開始剤n−ブチルリチウム3.34グラム(52.3ミリモル)、TMEDA1.64グラム(14.1ミリモル)の存在下に、スチレン219グラム、1,3−ブタジエン1.75キログラム、スチレン219グラムを逐次重合し、BOP24.1グラム(0.131モル)をさらに添加した後、1,3−ブタジエン547グラムをゆっくりと添加して重合温度を40〜45℃にコントロールして重合した以外は重合参考例4と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約6万、スチレン含有量16wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが42%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が52%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量は84%であるS−RB1−S−RB2型ブロック共重合体であった。
【0074】
<重合参考例−6>
重合開始剤n−ブチルリチウム2.47グラム(38.5ミリモル)、TMEDA1.21グラム(10.4ミリモル)の存在下に、スチレン164グラム、1,3−ブタジエン1.31キログラム、スチレン164グラムを逐次重合し、BOP17.7グラム(0.096モル)をさらに添加した後、1,3−ブタジエン1.09キログラムをゆっくりと添加して重合温度を40〜45℃にコントロールして重合した以外は重合参考例4と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約7万、スチレン含有量12wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが35%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が57%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量は83%であるS−RB1−S−RB2型ブロック共重合体であった。
【0075】
<重合参考例−7>
重合開始剤n−ブチルリチウム7.13グラム(0.111モル)、TMEDA6.47グラム(55.7ミリモル)の存在下に、スチレン524グラム、1,3−ブタジエン3.76キログラム、スチレン524グラムを逐次重合し、TMEDA12.9グラム(0.111モル)をさらに添加した後、1,3−ブタジエン3.93キログラムをゆっくりと添加して重合温度を40〜45℃にコントロールして重合した以外は重合参考例1と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約11万、スチレン含有量12wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが58%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が66%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量は73%であるS−RB1−S−RB2型ブロック共重合体であった。
【0076】
<比較重合参考例−1>
THF258グラム(3.57モル)、n−ブチルリチウム4.12グラム(64.3ミリモル)を含むシクロヘキサン溶液を仕込み、60℃に昇温した。そこへスチレン275グラムを添加して重合を行った。続いて1,3−ブタジエン2.06キログラム、スチレン275グラムを逐次重合した後、添加剤を加えずに1,3−ブタジエン137グラムを逐次重合した以外は重合参考例4と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約5.3万、スチレン含有量20wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが36%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が36%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量も36%であるS−RB1−S−RB1型ブロック共重合体であった。
【0077】
<比較重合参考例−2>
THFの代わりにTMEDA2.09グラム(18.0ミリモル)を使用した以外は比較重合参考例1と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約5.3万、スチレン含有量20wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが42%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が42%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量も42%であるS−RB1−S−RB1型ブロック共重合体であった。
【0078】
<比較重合参考例−3>
THFの代わりにTMEDA9.07グラム(78.0ミリモル)を添加し、n−ブチルリチウム8.77グラム(0.137モル)の重合開始剤を用いてスチレン689グラム、1,3−ブタジエン8.02キログラム、スチレン689グラム、さらに添加剤を加えずに1,3−ブタジエン495グラムを逐次重合した以外は重合参考例1と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約9.5万、スチレン含有量15wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが59%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が59%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量は59%であるS−RB1−S−RB1型ブロック共重合体であった。
【0079】
<比較重合参考例−4>
窒素置換した100リットルのオートクレーブに乾燥、精製したシクロヘキサン40リットル、TMEDA8.46グラム(73ミリモル)、n−ブチルリチウム15.5グラム(0.243モル)を含むシクロヘキサン溶液を仕込み、70℃に昇温した。そこへスチレン1233グラムを添加して重合を行った。続いて1,3−ブタジエン7.92キログラム添加し、A−B2型ブロックポリマーを得た。カップリング剤としてジクロロジメチルシラン7.05グラム(54.6ミリモル)を添加して約30分カップリング反応を行った。カップリング反応が終了した後、メタノール2.56グラム(80ミリモル)を添加して残りのリビング活性末端を失活させた。得られたブロック共重合体は、ピーク分子量約4万および約8万のバイモーダルなGPC曲線を示し、スチレン含有量13wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量41%であるS−RB1/S−RB1−RB1−S型ブロック共重合体で、重量比が30/70の2型/3型ブロック共重合体であった。
【0080】
<比較重合参考例−5>
n−ブチルリチウム3.42グラム(53.5ミリモル)を用い、スチレン412グラム、1,3−ブタジエン1.79キログラム、スチレン412グラム、1,3−ブタジエン137グラムを逐次重合した以外は比較重合参考例1と同様にブロック共重合体を作った。得られたブロック共重合体は、数平均分子量約6.7万、スチレン含有量30wt%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合含有量は最初に重合したポリブタジエンブロックが36%、最終共重合体の1,2−ビニル結合含有量が36%であったことから、最後に重合したポリブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量も36%であるS−RB1−S−RB1型ブロック共重合体であった。
【0081】
<水添参考例−1>
窒素置換した20リットルのオートクレーブに重合参考例1で得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液12リットルを仕込み、水素置換した後、水素圧力0.7MPa(ゲージ圧力)に昇圧し、温度を70℃に昇温した。次いで攪拌しながらジクロロビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン254ミリグラム(1.02ミリモル)およびトリメチルアルミニウム147ミリグラム(2.04ミリモル)を含むシクロヘキサン溶液4ミリリットルを添加するとともに水素圧力が0.7MPa(ゲージ圧力)を維持するように水素を1時間供給し続けた。水素の吸収が終了した後、このポリマーを少量サンプリングして分析したところ、ポリブタジエンブロックの平均水添率は99%であり、ポリスチレンブロックの芳香環は水添されていなかった。
【0082】
<水添参考例−2>
重合参考例2で得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液にジクロロビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン423ミリグラム(1.70ミリモル)およびジエチルアルミニウムクロライド1.23グラム(10.2ミリモル)を含むシクロヘキサン溶液7ミリリットルを添加した以外は水添参考例1と同様に水添反応を行った。得られた水添ブロック共重合体のポリブタジエンブロックの平均水添率は98%であり、ポリスチレンブロックの芳香環は水添されていなかった。
【0083】
<水添参考例−3>
重合参考例3で得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液にジ−m−トリル−ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン368ミリグラム(1.02ミリモル)を含むシクロヘキサン溶液40ミリリットルを添加した以外は水添参考例1と同様に水添反応を行った。得られた水添ブロック共重合体のポリブタジエンブロックの平均水添率は99%であり、ポリスチレンブロックの芳香環は水添されていなかった。
【0084】
<水添参考例−4>
重合参考例4で得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液にジ−m−トリル−ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタン245ミリグラム(0.68ミリモル)およびn−ブチルリチウム0.82ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加した以外は水添参考例1と同様に水添反応を行った。得られた水添ブロック共重合体のポリブタジエンブロックの平均水添率は99%であり、ポリスチレンブロックの芳香環は水添されていなかった。
【0085】
<水添参考例−5>
重合参考例5で得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液に水添触媒としてPd/C(Pd5重量%)を用い、水素圧3.5Pa、約120℃で水添反応を行った。得られた水添ブロック共重合体のポリブタジエンブロックの平均水添率は96%であり、ポリスチレンブロックの芳香環は水添されていなかった。
【0086】
<水添参考例−6>
重合参考例6で得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液に、水添触媒としてニッケル2−エチルヘキサノエートとトリエチルアルミニウム(Al/Ni=2/1)をあらかじめシクロヘキサン中で反応させておいたものを用い、Niとして約900ppmに相当する量を添加し、水素圧約0.65MPa、約80℃で水添反応を行った。得られた水添ブロック共重合体のポリブタジエンブロックの平均水添率は98%であり、ポリスチレンブロックの芳香環は水添されていなかった。
【0087】
<水添参考例−7>
重合参考例1で得られたブロック共重合体に代えて重合参考例7で得られたブロック共重合体を使用する以外は、<水添参考例−1>と同様にして水添ブロック共重合体を得た。
【0088】
<比較水添参考例−1〜5>
重合参考例1で得られたブロック共重合体に代えて比較重合参考例1〜5で得られたブロック共重合体を使用する以外は、<水添参考例−1>と同様にして水添ブロック共重合体を得た。
【0089】
得られたブロック共重合体の構造および分析結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
また、実施例で使用した組成物の物性測定については以下の様に実施した。
【0092】
−配合物の調製−
押出条件・・・30mmの2軸押出機で、220℃、250rpm、吐出圧力0.7MPaで配合物を調整した。
【0093】
射出成形試験片は日精樹脂工業製の射出成型機FE−120を用い、回転数70rpm、射出速度50%、射出圧50%、射出時間7秒、冷却時間30秒、成形温度200℃にて作成した。
【0094】
使用したポリプロピレン(PP)は日本ポリオレフィン(株)製の商品名ジョイアロマーFG464(ランダムPP、キャストフィルム成形用)、同MD772H(ランダムPP)、同M−8649(ブロックPP、射出成形用)、同M−7646(ブロックPP、射出成形用)を使用した。
【0095】
−配合物の物性測定−
硬さ
デュロメータDを用いてJIS K7215に準拠して測定、あるいはJISK6253−93に準拠して測定した。
【0096】
曲げ弾性率
射出成型機により作成した3.2mm厚さ×12.7mm幅×127mmの試験片をASTM D790−9に準拠して測定した。
【0097】
衝撃白化性
射出成型機により作成した名刺判(約90mm×50mm×厚さ2mm)の試験片をデュポン衝撃試験機(温度23℃)にて撃芯半径1/4”、荷重1kg×高さ50cmからの衝撃強さを与え、シートの衝撃白化性は衝撃前後の透過率の差として以下の式により評価した。
【0098】
△T%=成形品T%−衝撃変形箇所T%
目視により確認できる白化限界△T%=4.5%で値が低いほど白化の度合いが少ないことを示す。
【0099】
全光線透過率
上記2mm厚さのシートをJIS K7105−81に準拠して測定した。
【0100】
曇り度
上記2mm厚さのシートをJIS K7105−81に準拠して測定した。
【0101】
Izod衝撃強度
ノッチ付きIzod衝撃強度は、−30℃での測定は−30℃にコントロールしたドラメタ中に5分間静置した後に測定した。
【0102】
引張試験
JIS K6251−93に準拠して、引張速度200mm/分にて測定した。
【0103】
この際、白化開始時伸び(%)を目視にて確認した。
【0104】
<実施例−1〜4および比較例−1〜4>
ポリプロピレンとして日本ポリオレフィン(株)製のランダムPP(商品名;ジョイアロマーFG464)を用い、表2に示す配合重量組成比にて各組成物を調製した。実施例1〜4は、本発明のブロック共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物が透明性にも優れ、衝撃白化性も大きく改良した組成物であることを示している。また、比較例1〜3において同レベルの硬さおよび曲げ弾性率と比較しても衝撃白化性が大幅に改良されていることを示している。
【0105】
【表2】
【0106】
<実施例−5〜7および比較例−5>
ポリプロピレンとして日本ポリオレフィン(株)製のブロックPP(商品名;ジョイアロマーM−8649)を用い、表3に示す配合重量組成比にて各組成物を調製した。実施例5〜7は、本発明のブロック共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物が十分に軟質化されることを示している。また、該ブロック共重合体中の(B2)ブロックの含有量が高くなるほど、または(B2)ブロック鎖長が長くなるほど、より軟質化された組成物が得られることを示している。特に実施例7に示したように、重合参考例6のブロック共重合体を使用するとPP軟質化効果と衝撃強度改良のバランスが良好な組成物が得られることがわかる。
【0107】
【表3】
【0108】
<実施例−8〜9および比較例−6〜9>
ポリプロピレンとして日本ポリオレフィン(株)製のランダムPP(商品名;ジョイアロマーMD772H)を用い、表4に示す配合重量組成比にて各組成物を調製した。射出成形機にてシート(90×120×2mm)を作成し、3号ダンベルで打ち抜き、試料片とした。実施例8〜9は、本発明のブロック共重合体を含有する組成物が延伸時の白化開始伸びに優れることを示している。
【0109】
【表4】
【0110】
以上説明したように、本発明の特定のブロック共重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、透明性、屈曲性、耐衝撃白化性、および耐折り曲げ白化性等の物性のバランスに優れている。
Claims (4)
- ポリプロピレン系樹脂99〜1重量%、
(1)スチレン単量体成分が90モル%以上、からなるスチレンブロック(S)を2つ以上、
(2)構成される単量体成分が主に1−ブテン(a)成分、エチレン(b)成分からなり、各成分の構成比が(a)成分が20〜45モル%、(b)成分が80〜55モル%で、(a)+(b)≧90モル%であるエチレン−1−ブテンランダムブロック(B1)を1つ以上、
(3)(2)と同じ単量体成分からなり、各成分の構成比が、(a)成分が45〜100モル%、(b)成分が55〜0モル%で、(a)+(b)≧90モル%であるエチレン−1−ブテンランダムブロック(B2)を1つ以上、
からなり、2つ以上の(S)ブロックの間に(B1)ブロックおよび/または(B2)ブロックが存在し、分子量が20,000〜1,000,000、分子量分布Mw/Mnが1〜5であるブロック共重合体1〜99重量%、
とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - ブロック共重合体中のブロック(S)の合計含有量が5〜80重量%、ブロック(B1)の合計含有量が10〜70重量%、ブロック(B2)の合計含有量が10〜70重量%(但し、(S)+(B1)+(B2)=100重量%)であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ブロック共重合体中のブロック(S)の合計含有量が5〜50重量%、ブロック(B1)の合計含有量が25〜60重量%、ブロック(B2)の合計含有量が25〜60重量%(但し、(S)+(B1)+(B2)=100重量%)であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ブロック共重合体が(S)−(B1)−(S)−(B2)の構造を有することを特徴とする請求項1〜3記載の熱可塑性樹脂組成物。
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