以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。この第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子は、実屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。図1を参照して、以下に、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造について説明する。
第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造としては、サファイア基板1上に、約4μmの膜厚を有するメサ状部を有するSiドープGaNからなるn型コンタクト層2が形成されている。n型コンタクト層2のメサ状部の上面上には、約1μmの膜厚を有するSiドープAlGaNからなるn型クラッド層3、および、InGaNの多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有するMQW発光層4が形成されている。このMQW発光層4は、約8nmの厚みを有する3つのInxGa1-xN量子井戸層と、約16nmの厚みを有する4つのInyGa1-yN量子障壁層とが交互に積層された構造を有する。このMQW発光層4において、x>yであり、本実施形態では、x=0.13およびy=0.05を満たすように形成されている。なお、MQW発光層4は、本発明の「発光層」の一例である。
MQW発光層4上には、約1.5μmの幅を有する凸部を有するMgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型クラッド層5が形成されている。このp型クラッド層5の凸部の膜厚は、約0.4μmであり、凸部以外の平坦部の膜厚は、約0.1μmである。p型クラッド層5の凸部の上面上には、約1.5μmの幅と約0.01μmの膜厚とを有するMgドープGaNからなるp型第1コンタクト層6が形成されている。これらのp型クラッド層5の凸部およびp型第1コンタクト層6によって、約1.5μmの幅W1を有する電流通路部(リッジ部)が構成されている。なお、p型クラッド層5は、本発明の「クラッド層」の一例である。
また、電流通路部(リッジ部)の側面と、p型クラッド層5の平坦部と、MQW発光層4、n型クラッド層3およびn型コンタクト層2の側面と、n型コンタクト層2の上面の一部領域とを覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層7が形成されている。この誘電体ブロック層7は、p型クラッド層5の平坦部の上面上の、電流通路部の近傍に、選択成長のための開口部7aを有するように形成されている。
誘電体ブロック層7の上面上の電流通路部(リッジ部)の近傍には、電流通路部の側部を埋め込むように、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層8が形成されている。半導体ブロック層8は、半導体ブロック層8と電流通路部(リッジ部)との合計幅W2が約7.5μmになるように、電流通路部の近傍にのみ形成されている。また、半導体ブロック層8は、誘電体ブロック層7に設けられた開口部7aを介して、p型クラッド層5と接触するように形成されている。なお、これらの誘電体ブロック層7および半導体ブロック層8によって、電流ブロック層が構成されている。
そして、電流通路部(リッジ部)上、半導体ブロック層8上および誘電体ブロック層7上には、電流通路部および半導体ブロック層8を埋め込むとともに、誘電体ブロック層7の上面上の一部領域を覆うように、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層9が形成されている。
p型第2コンタクト層9上には、約1nmの膜厚を有するPtと、約3nmの膜厚を有するPdとからなるp側オーミック電極10が形成されている。p側オーミック電極10の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるp側パッド電極11が形成されている。また、n型コンタクト層2の露出された表面上には、約10nmの膜厚を有するTiと、約0.1μmの膜厚を有するAlとからなるn側オーミック電極12が形成されている。n側オーミック電極12の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるn側パッド電極13が形成されている。
第1実施形態では、上記のように、電流ブロック層を、誘電体ブロック層7と、誘電体ブロック層7上に形成された半導体ブロック層8とを用いて形成することによって、半導体ブロック層8は、誘電体ブロック層7の開口部7aを介して、p型クラッド層5の上面に接触するので、p型クラッド層5と半導体ブロック層8との接触面積を低減することができる。このため、p型クラッド層5と半導体ブロック層8との格子定数の差に起因して半導体ブロック層8に加わる歪みを緩和することができるので、半導体ブロック層8にクラックや転位などの結晶欠陥が発生するのを抑制することができる。また、p型クラッド層5と半導体ブロック層8との接触面積を低減することができるので、p型クラッド層5と半導体ブロック層8との界面の汚染物に起因した結晶欠陥が発生するのも抑制することができる。さらに、半導体ブロック層8と下層との間に誘電体ブロック層7を介在させることができるので、半導体ブロック層8と、下層の厚みの大きいGaNからなるn型コンタクト層2との格子定数の差に起因して半導体ブロック層8に加わる歪みを緩和することができる。これによっても、半導体ブロック層8にクラックや転位などの結晶欠陥が発生するのを抑制することができる。
この第1実施形態では、上記のように、半導体ブロック層8にクラックや結晶欠陥が発生するのを抑制することができるので、電流ブロック層(半導体ブロック層8)の厚みを大きくすることができ、その結果、横方向の光閉じ込めを安定化することが可能な窒化物系半導体レーザ素子を得ることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、半導体ブロック層8を電流通路部の近傍にのみ形成することによって、半導体ブロック層8の形成領域が小さくなるので、p型クラッド層5と半導体ブロック層8との格子定数の差に起因して半導体ブロック層8に加わる歪みをより緩和することができる。これによっても、半導体ブロック層8にクラックや結晶欠陥が発生するのを抑制することができるので、横方向の光閉じ込めをより安定化することができるとともに、結晶性の良好な半導体ブロック層8を形成することができる。
さらに、第1実施形態では、半導体ブロック層8を電流通路部の近傍にのみ形成することによって、半導体ブロック層8および誘電体ブロック層9からなる電流ブロック層と、p型クラッド層5との間の容量が低減される。これにより、素子をパルス駆動したときのパルスの立ち上がりおよび立ち下がりを早くすることができるので、その結果、高速でのパルス駆動が可能な窒化物系半導体レーザ素子を得ることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、誘電体ブロック層7の厚み(約50nm)が、半導体ブロック層8の厚み(約0.25μm)よりも小さくなるように形成することによって、半導体ブロック層8は、誘電体ブロック層7に比べて熱伝導率が高いため、MQW発光層4で発熱した熱を有効に放熱することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の高温動作時や高出力動作時においても、良好な特性を得ることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、AlwGa1-wNからなる半導体ブロック層8を用いることによって、半導体ブロック層8での光吸収がないため、窒化物系半導体レーザ素子の動作電流を低減することができる。
図2〜図8は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。図1〜図8を参照して、以下に、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、サファイア基板1上に、MOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相堆積法)を用いて、約4μmの膜厚を有するSiドープGaNからなるn型コンタクト層2、および、約1μmの膜厚を有するSiドープAlGaNからなるn型クラッド層3を形成する。そのn型クラッド層3上に、MOCVD法を用いて、3つのInxGa1-xN量子井戸層と、4つのInyGa1-yN量子障壁層とを交互に積層することによって、MQW発光層4を形成する。そして、MQW発光層4上に、MOCVD法を用いて、約0.4μmの膜厚を有するMgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型クラッド層5、および、約0.01μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第1コンタクト層6を順次形成する。
その後、プラズマCVD法を用いて、p型第1コンタクト層6の上面上の全面を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを用いて、図3に示されるような、SiO2からなるマスク層100を形成する。次に、このマスク層100をマスクとして、Cl2からなるエッチングガスを用いて、RIE(反応性イオンエッチング)法などのドライエッチングにより、p型第1コンタクト層6、p型クラッド層5、MQW発光層4、n型クラッド層3およびn型コンタクト層2の所定領域をエッチングする。この後、p型第1コンタクト層6上のマスク層100を除去する。
次に、プラズマCVD法を用いて、p型第1コンタクト層6の上面上の全面を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2膜(図示せず)を形成する。その後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、そのSiO2膜をパターニングすることによって、図4に示されるような、SiO2からなるマスク層101を形成する。
その後、図5に示すように、マスク層101をマスクとして、Cl2からなるエッチングガスを用いて、RIE法などのドライエッチングにより、p型第1コンタクト層6およびp型クラッド層5の一部領域をエッチングする。これにより、p型クラッド層5の凸状部およびp型第1コンタクト層6からなる約1.5μmの幅W1を有する電流通路部(リッジ部)が形成される。その後、マスク層101を除去する。
次に、図6に示すように、プラズマCVD法を用いて、ウェハの上面側のほぼ全面を覆うように、約50nmの膜厚を有するSiN膜からなる誘電体ブロック層7を形成した後、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを用いて、誘電体ブロック層7に開口部7aを形成する。この開口部7aは、電流通路部の近傍に、p型クラッド層5の平坦部の上面上の一部領域が露出されるように形成する。
次に、図7に示すように、MOCVD法を用いて、開口部7aにおいて露出されたp型クラッド層5の上面上に、電流通路部の側部に形成された誘電体ブロック層7を覆うように、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層8を選択成長させる。これにより、電流通路部の側部の近傍に、半導体ブロック層8と電流通路部との合計幅W2が約7.5μmになるように、半導体ブロック層8が形成される。このような半導体ブロック層8は、選択成長させる時間を制御することにより、容易に形成可能である。その後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、電流通路部(p型第1コンタクト層6)上の誘電体ブロック層7を除去する。
次に、図8に示すように、MOCVD法を用いて、誘電体ブロック層7上に、電流通路部(p型第1コンタクト層6)の上面上および半導体ブロック層8を覆うように、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層9を形成する。
最後に、図1に示したように、真空蒸着法を用いて、p型第2コンタクト層9上に、約1nmの膜厚を有するPtと、約3nmの膜厚を有するPdとからなるp側オーミック電極10を形成する。そして、p側オーミック電極10の上面上の一部領域に、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるp側パッド電極11を形成する。また、n型コンタクト層2の上面上の誘電体ブロック層7の一部領域を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて除去する。そして、n型コンタクト層2の露出された表面上に、約10nmの膜厚を有するTiと、約0.1μmの膜厚を有するAlとからなるn側オーミック電極12を形成する。そして、n側オーミック電極12の上面上の一部領域に、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるn側パッド電極13を形成する。このようにして、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が製造される。
第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法では、上記のように、選択成長により半導体ブロック層8を形成することによって、半導体ブロック層8の結晶性を向上させることができる。また、電流通路部の近傍に設けられた開口部7aから選択成長により半導体ブロック層8を形成することによって、電流通路部の近傍にのみ、半導体ブロック層8を形成することができる。これにより、半導体ブロック層8と、p型クラッド層5との格子定数の差に起因して半導体ブロック層8に加わる歪みを緩和することができる。
図9は、本発明の第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。この第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子は、第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子と半導体ブロック層の材料のみが異なる、複素屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。すなわち、この第1実施形態の変形例では、図9に示すように、誘電体ブロック層7の上面上の電流通路部の近傍に、電流通路部の側部を埋め込むように、約0.25μmの膜厚を有するとともに、半導体ブロック層18と電流通路部との合計幅W2が約7.5μmになるように、In0.18Ga0.82Nからなる半導体ブロック層18が形成されている。
この第1実施形態の変形例では、上記のように、電流ブロック層を、誘電体ブロック層7と、誘電体ブロック層7上に形成されたInGaNからなる半導体ブロック層18とを用いて形成することによって、半導体ブロック層18において光を吸収させることにより横方向の光閉じ込めを行うことができる。これにより、AlGaNからなる半導体ブロック層を形成する場合に比べて薄い膜厚の半導体ブロック層18を形成する場合にも、横方向の光閉じ込めを安定化することができる。なお、第1実施形態の変形例のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
なお、上記第1実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法としては、InGaNからなる半導体ブロック層18は、第1実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層8に比べて、低温で成長される。その他の工程は、第1実施形態と同様である。上記のように、InGaNからなる半導体ブロック層18を、第1実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層8に比べて低温で形成することができるので、p型クラッド層5にドープされた不純物(Mg)が、MQW発光層4に拡散するのを防止することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の信頼性を向上させることができる。
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。図10を参照して、この第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子は、実屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。また、上記第1実施形態では、電流通路部(リッジ部)の近傍にのみ半導体ブロック層を形成する例を示したが、この第2実施形態では、p型クラッド層5の上面上のほぼ全面に半導体ブロック層を形成する例を示す。以下、詳細に説明する。
第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造としては、サファイア基板1上に、第1実施形態と同様、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、MQW発光層4が形成されている。MQW発光層4上には、凸部を有するp型クラッド層5およびp型第1コンタクト層6が形成されている。これらのp型クラッド層5の凸部およびp型第1コンタクト層6によって、電流通路部(リッジ部)が構成されている。なお、第2実施形態における各層2〜6の組成および膜厚は、第1実施形態と同様である。
また、電流通路部(リッジ部)の側面と、p型クラッド層5の平坦部と、MQW発光層4、n型クラッド層3およびn型コンタクト層2の側面と、n型コンタクト層2の上面の一部領域とを覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層20が形成されている。ここで、この第2実施形態では、誘電体ブロック層20は、p型クラッド層5の平坦部の上面上に、選択成長のための4つの開口部20aを有するように形成されている。この開口部20aは、リッジ部の近傍領域のみならず、それ以外の領域にも形成されている。
また、p型クラッド層5上に形成された誘電体ブロック層20の上面上のほぼ全面には、電流通路部の側部を覆うように、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層21が形成されている。すなわち、この第2実施形態では、半導体ブロック層21は、リッジ部の近傍のみならず、p型クラッド層5上のほぼ全面に形成されている。半導体ブロック層21は、誘電体ブロック層20に設けられた開口部20aを介して、p型クラッド層5と接触するように形成されている。なお、これらの誘電体ブロック層20および半導体ブロック層21によって、電流ブロック層が構成されている。
そして、電流通路部(リッジ部)および半導体ブロック層21の上面上のほぼ全面には、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層22が形成されている。
p型第2コンタクト層22上には、約1nmの膜厚を有するPtと、約3nmの膜厚を有するPdとからなるp側オーミック電極23が形成されている。p側オーミック電極23の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるp側パッド電極24が形成されている。また、n型コンタクト層2の露出された表面上には、約10nmの膜厚を有するTiと、約0.1μmの膜厚を有するAlとからなるn側オーミック電極25が形成されている。n側オーミック電極25の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるn側パッド電極26が形成されている。
第2実施形態では、上記のように、p型クラッド層5上に形成された誘電体ブロック層20の上面上のほぼ全面に半導体ブロック層21を形成することによって、その半導体ブロック層21上に形成されるp型第2コンタクト層22を平坦化することができる。これにより、窒化物系半導体レーザ素子をサブマウント(ヒートシンク)にリッジ部側からj−down方式で組み立てる際に、電流通路部(リッジ部)に加わる応力を低減することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の信頼性を向上させることができる。
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様、電流ブロック層を、誘電体ブロック層20と、半導体ブロック層21とを用いて形成することによって、半導体ブロック層21は、誘電体ブロック層20の開口部20aを介して、p型クラッド層5の上面に接触するので、p型クラッド層5と半導体ブロック層21との接触面積を低減することができる。このため、p型クラッド層5と半導体ブロック層21との格子定数の差に起因して半導体ブロック層21に加わる歪みを緩和することができるので、半導体ブロック層21にクラックや転位などの結晶欠陥が発生するのを抑制することができる。また、p型クラッド層5と半導体ブロック層21との接触面積を低減することができるので、p型クラッド層5と半導体ブロック層21との界面の汚染物に起因した結晶欠陥が発生するのも抑制することができる。さらに、半導体ブロック層21と下層との間に誘電体ブロック層20を介在させることができるので、半導体ブロック層21と、下層の厚みの大きいGaNからなるn型コンタクト層2との格子定数の差に起因して半導体ブロック層21に加わる歪みを緩和することができる。これによっても、半導体ブロック層21にクラックや転位などの結晶欠陥が発生するのを抑制することができる。
この第2実施形態では、上記のように、半導体ブロック層21にクラックや結晶欠陥が発生するのを抑制することができるので、電流ブロック層(半導体ブロック層21)の厚みを大きくすることができ、その結果、横方向の光閉じ込めを安定化することが可能な窒化物系半導体レーザ素子を得ることができる。
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様、誘電体ブロック層20の厚み(約50nm)が、半導体ブロック層21の厚み(約0.25μm)よりも小さくなるように形成することによって、半導体ブロック層21は、誘電体ブロック層20に比べて熱伝導率が高いため、MQW発光層4で発熱した熱を有効に放熱することができる。その結果、窒化物系半導体発光素子の高温動作時や高出力動作時においても、良好な特性を得ることができる。
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様、AlwGa1-wNからなる半導体ブロック層21を用いることによって、半導体ブロック層21での光吸収がないため、窒化物系半導体発光素子の動作電流を低減することができる。
図11〜図13は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。図10〜図13を参照して、以下に、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、図2〜図5に示した第1実施形態の形成方法と同様の形成方法を用いて、図11に示すように、サファイア基板1上に、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、MQW発光層4、p型クラッド層5およびp型第1コンタクト層6を形成する。次に、プラズマCVD法を用いて、ウェハの上面側のほぼ全面を覆うように、約50nmの膜厚を有するSiN膜からなる誘電体ブロック層20を形成した後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、誘電体ブロック層20に4つの開口部20aを形成する。これらの開口部20aは、p型クラッド層5の平坦部の上面上の一部領域が露出されるように形成する。
次に、図12に示すように、MOCVD法を用いて、開口部20aにおいて露出されたp型クラッド層5の上面上に、電流通路部の側部およびp型クラッド層5の上面上に形成された誘電体ブロック層20を覆うように、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層21を選択成長させる。その後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、電流通路部(p型第1コンタクト層6)上の誘電体ブロック層20を除去する。
次に、図13に示すように、MOCVD法を用いて、電流通路部(p型第1コンタクト層6)および半導体ブロック層21の上・BR>ハ上のほぼ全面に、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層22を形成する。
最後に、図10に示したように、真空蒸着法を用いて、p側オーミック電極23およびp側パッド電極24を順次形成する。また、n型コンタクト層2の上面上の誘電体ブロック層20の一部領域を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて除去する。そして、n型コンタクト層2の露出された表面上に、n側オーミック電極25およびn側パッド電極26を順次形成する。このようにして、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が製造される。
第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法では、上記のように、選択成長により半導体ブロック層21を形成することによって、半導体ブロック層21の結晶性を向上させることができる。
図14は、本発明の第2実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。この第2実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子は、第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子と半導体ブロック層の材料のみが異なる、複素屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。すなわち、この第2実施形態の変形例では、図14に示すように、電流通路部の側部およびp型クラッド層5の上面上に形成された誘電体ブロック層20を覆うように、約0.25μmの膜厚を有するIn0.18Ga0.82Nからなる半導体ブロック層27が形成されている。
第2実施形態の変形例では、上記のように、電流ブロック層を、誘電体ブロック層20と、誘電体ブロック層20上に形成されたInGaNからなる半導体ブロック層27とを用いて形成することによって、半導体ブロック層27において光を吸収させることにより横方向の光閉じ込めを行うことができる。これにより、AlGaNからなる半導体ブロック層を形成する場合に比べて薄い膜厚の半導体ブロック層27を形成する場合にも、横方向の光閉じ込めを安定化することができる。なお、第2実施形態の変形例のその他の効果は、第2実施形態と同様である。
なお、上記第2実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法としては、InGaNからなる半導体ブロック層27は、第2実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層21に比べて低温で成長される。その他の工程は、第2実施形態と同様である。上記のように、InGaNからなる半導体ブロック層27を、第2実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層21に比べて低温で形成することができるので、p型クラッド層5にドープされた不純物(Mg)が、MQW発光層4に拡散するのを防止することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の信頼性を向上させることができる。
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。図15を参照して、この第3実施形態では、実屈折率導波型のセルフアライン型の窒化物系半導体レーザ素子について説明する。
第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造としては、サファイア基板1上に、第1実施形態と同様、n型コンタクト層2、n型クラッド層3およびMQW発光層4が形成されている。MQW発光層4上には、約0.1μmの膜厚を有するMgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型第1クラッド層30が形成されている。なお、p型第1クラッド層30は、本発明の「第1クラッド層」の一例である。また、各層2〜4の組成および膜厚は、第1実施形態と同様である。
p型第1クラッド層30の上面上と、MQW発光層4、n型クラッド層3およびn型コンタクト層2の側面と、n型コンタクト層2の上面の一部領域とを覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層31が形成されている。ここで、この第3実施形態では、誘電体ブロック層31は、4つの開口部31aと、約1.5μmの幅を有する電流通路部となる中央部の開口部31bとを有するように形成されている。この開口部31aは、電流通路部の近傍領域のみならず、それ以外の領域にも形成されている。
また、p型第1クラッド層30の上面上に形成された誘電体ブロック層31上には、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層32が、約1.5μmの幅を有する電流通路部となる開口部を有するように形成されている。すなわち、この第3実施形態では、半導体ブロック層32は、電流通路部の近傍のみならず、p型第1クラッド層30上のほぼ全面に形成されている。半導体ブロック層32は、誘電体ブロック層31に設けられた開口部31aを介して、p型第1クラッド層30と接触するように形成されている。なお、これらの誘電体ブロック層31および半導体ブロック層32によって、電流ブロック層が構成されている。
そして、電流ブロック層(誘電体ブロック層31および半導体ブロック層32)の電流通路部となる開口部31b内のp型第1クラッド層30上、および、半導体ブロック層32上には、約0.3μmの膜厚を有するMgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型第2クラッド層33が形成されている。なお、p型第2クラッド層33は、本発明の「第2クラッド層」の一例である。
また、p型第2クラッド層33の上面上のほぼ全面には、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型コンタクト層34が形成されている。p型コンタクト層34上には、約1nmの膜厚を有するPtと、約3nmの膜厚を有するPdとからなるp側オーミック電極36が形成されている。p側オーミック電極36の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるp側パッド電極37が形成されている。また、n型コンタクト層2の露出された表面上には、約10nmの膜厚を有するTiと、約0.1μmの膜厚を有するAlとからなるn側オーミック電極38が形成されている。n側オーミック電極38の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるn側パッド電極39が形成されている。
また、p側オーミック電極36、p型コンタクト層34、p型第2クラッド層33および半導体ブロック層32の側部と、誘電体ブロック層31上とを覆うように、約0.1μmの膜厚を有するSiNからなる保護膜35が形成されている。
第3実施形態では、上記のように、p型第2クラッド層33を半導体ブロック層32の上面上にまで延びて形成することによって、p型第2クラッド層33の上面上の面積を大きくすることができる。これにより、p型第2クラッド層33とその上に形成されるp型コンタクト層34とのコンタクト抵抗を低減することができる。
また、第3実施形態では、上記のように、結晶性の良好な半導体ブロック層32上に、p型第2クラッド層33を形成することによって、結晶性の良好なp型第2クラッド層33を得ることができる。その結果、p型第2クラッド層33の熱伝導性が向上されるので、窒化物系半導体発光素子の高温動作時や高出力動作時においても、良好な特性を得ることができる。
また、第3実施形態では、上記のように、結晶性の良好な半導体ブロック層32上に、p型第2クラッド層33を形成することによって、結晶性の良好なp型第2クラッド層33を得ることができるので、p型第2クラッド層33のキャリア濃度を高くすることができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の動作電圧を低減することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、第2実施形態と同様である。
図16〜図21は、本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。図15〜図21を参照して、以下に、第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、第1実施形態の形成方法と同様の形成方法を用いて、図16に示すように、サファイア基板1上に、n型コンタクト層2、n型クラッド層3およびMQW発光層4を形成する。なお、各層2〜4の組成および膜厚は、第1実施形態と同様である。そして、MQW発光層4上に、MOCVD法を用いて、約0.1μmの膜厚を有するMgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型第1クラッド層30を形成する。
次に、プラズマCVD法を用いて、p型第1クラッド層30の上面上の全面を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを用いて、図17に示されるような、パターニングされたSiO2からなるマスク層100を形成する。次に、このマスク層100をマスクとして、Cl2からなるエッチングガスを用いて、RIE法などのドライエッチングにより、p型第1クラッド層30、MQW発光層4、n型クラッド層3およびn型コンタクト層2の所定領域をエッチングする。その後、p型第1クラッド層30上のマスク層100を除去する。
次に、図18に示すように、プラズマCVD法を用いて、ウェハの上面側のほぼ全面を覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層31を形成した後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、誘電体ブロック層31に4つの開口部31aと、約1.5μmの幅を有する電流通路部となる開口部31bとを形成する。これらの開口部31aおよび31bは、p型第1クラッド層30の上面上の一部領域が露出されるように形成する。
次に、図19に示すように、MOCVD法を用いて、開口部31aおよび31bにおいて露出されたp型第1クラッド層30の上面上のほぼ全面に、誘電体ブロック層31を介して、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層32を選択成長させる。その後、プラズマCVD法を用いて、半導体ブロック層32の上面上の全面を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2膜(図示せず)を形成した後、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを用いて、図19に示されるような、パターニングされたSiO2からなるマスク層102を形成する。
次に、図20に示すように、マスク層102をマスクとして、Cl2からなるエッチングガスを用いて、RIE法などのドライエッチングにより、開口部31b上に形成された半導体ブロック層32をエッチングする。これにより、半導体ブロック層32に、約1.5μmの幅を有する電流通路部となる開口部が形成される。その後、半導体ブロック層32上のマスク層102を除去する。
次に、図21に示すように、電流ブロック層(誘電体ブロック層31および半導体ブロック層32)の開口部内に露出されたp型第1クラッド層30の上面上に、MOCVD法を用いて、MgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型第2クラッド層33を成長させる。これにより、電流ブロック層の開口部内において約1.5μmの幅を有するp型第2クラッド層33がセルフアライン的に形成される。なお、p型第2クラッド層33は、半導体ブロック層32の上面上において、約0.3μmの膜厚を有するように形成されている。そして、p型第2クラッド層33の上面上に、MOCVD法を用いて、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型コンタクト層34を形成する。
最後に、ウェハの上面側のほぼ全面を覆うように、約50nmの膜厚を有するSiN膜(図示せず)を形成する。その後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、図15に示したような形状のSiNからなる保護膜35を形成する。
そして、図15に示したように、真空蒸着法を用いて、p型コンタクト層34上に、p側オーミック電極36およびp側パッド電極37を順次形成する。また、n型コンタクト層2の上面上の誘電体ブロック層31の一部領域を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて除去する。そして、n型コンタクト層2の露出された表面上に、n側オーミック電極38およびn側パッド電極39を順次形成する。このようにして、第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が製造される。
第3実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法では、上記のように、選択成長により半導体ブロック層32を形成することによって、半導体ブロック層32の結晶性を向上させることができる。
図22は、本発明の第3実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。この第3実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子は、第3実施形態の窒化物系半導体レーザ素子と半導体ブロック層の材料のみが異なる、複素屈折率導波型のセルフアライン型の窒化物系半導体レーザ素子である。すなわち、この第3実施形態の変形例では、図22に示すように、誘電体ブロック層31上には、約0.25μmの膜厚を有するIn0.18Ga0.82Nからなる半導体ブロック層42が、約1.5μmの幅を有する電流通路部となる開口部を有するように形成されている。
第3実施形態の変形例では、上記のように、電流ブロック層を、誘電体ブロック層31と、誘電体ブロック層31上に形成されたInGaNからなる半導体ブロック層42とを用いて形成することによって、半導体ブロック層42において光を吸収させることにより横方向の光閉じ込めを行うことができる。これにより、AlGaNからなる半導体ブロック層を形成する場合に比べて薄い膜厚の半導体ブロック層42を形成する場合にも、横方向の光閉じ込めを安定化することができる。なお、第3実施形態の変形例のその他の効果は、第3実施形態と同様である。
なお、上記第3実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法としては、InGaNからなる半導体ブロック層42は、第3実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層32に比べて低温で成長される。その他の工程は、第3実施形態と同様である。上記のように、InGaNからなる半導体ブロック層42を、第3実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層32に比べて低温で形成することができるので、p型第1クラッド層30にドープされた不純物(Mg)が、MQW発光層4に拡散するのを防止することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の信頼性を向上させることができる。
(第4実施形態)
図23は、本発明の第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。図23を参照して、この第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子は、実屈折率導波型のセルフアライン型の窒化物系半導体レーザ素子である。また、上記第3実施形態では、電流通路部の近傍以外の領域にまで半導体ブロック層を形成する例を示したが、この第4実施形態では、電流通路部の近傍にのみ半導体ブロック層を形成する例を示す。以下、詳細に説明する。
第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造としては、サファイア基板1上に、第3実施形態と同様、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、MQW発光層4およびp型第1クラッド層30が形成されている。なお、各層2〜4および30の組成および膜厚は、第3実施形態と同様である。
p型第1クラッド層30の上面上と、MQW発光層4、n型クラッド層3およびn型コンタクト層2の側面と、n型コンタクト層2の上面の一部領域とを覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層50が形成されている。ここで、この第4実施形態では、誘電体ブロック層50は、電流通路部の近傍に、選択成長のための2つの開口部50aと、約1.5μmの幅W1を有する電流通路部となる中央部の開口部50bとを有するように形成されている。
また、誘電体ブロック層50上の電流通路部の近傍には、約0.25μmの膜厚と約7.5μmの幅W2とを有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層51が、約1.5μmの幅を有する電流通路部となる開口部を有するように形成されている。この半導体ブロック層51は、誘電体ブロック層50に設けられた開口部50aを介して、p型第1クラッド層30と接触するように形成されている。なお、これらの誘電体ブロック層50および半導体ブロック層51によって、電流ブロック層が構成されている。
そして、電流ブロック層(誘電体ブロック層50および半導体ブロック層51)の電流通路部となる開口部50b内のp型第1クラッド層30上、半導体ブロック層51上および誘電体ブロック層50上には、約0.3μmの膜厚を有するMgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型第2クラッド層52が形成されている。なお、p型第2クラッド層52は、本発明の「第2クラッド層」の一例である。
また、p型第2クラッド層52の上面上のほぼ全面には、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型コンタクト層53が形成されている。p型コンタクト層53上には、約1nmの膜厚を有するPtと、約3nmの膜厚を有するPdとからなるp側オーミック電極55が形成されている。p側オーミック電極55の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるp側パッド電極56が形成されている。また、n型コンタクト層2の露出された表面上には、約10nmの膜厚を有するTiと、約0.1μmの膜厚を有するAlとからなるn側オーミック電極57が形成されている。n側オーミック電極57の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるn側パッド電極58が形成されている。
また、p側オーミック電極55、p型コンタクト層53、p型第2クラッド層52および半導体ブロック層51の側部と、誘電体ブロック層50上とを覆うように、約0.1μmの膜厚を有するSiNからなる保護膜54が形成されている。
第4実施形態では、上記のように、p型第2クラッド層52を半導体ブロック層51の上面上にまで延びて形成することによって、p型第2クラッド層52の上面上の面積を大きくすることができる。これにより、p型第2クラッド層52とその上に形成されるp型コンタクト層53とのコンタクト抵抗を低減することができる。
また、第4実施形態では、上記のように、結晶性の良好な半導体ブロック層51上に、p型第2クラッド層52を形成することによって、結晶性の良好なp型第2クラッド層52を得ることができる。その結果、p型第2クラッド層52の熱伝導性が向上されるので、窒化物系半導体発光素子の高温動作時や高出力動作時においても、良好な特性を得ることができる。
また、第4実施形態では、上記のように、結晶性の良好な半導体ブロック層51上に、p型第2クラッド層52を形成することによって、結晶性の良好なp型第2クラッド層52を得ることができるので、p型第2クラッド層52のキャリア濃度を高くすることができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の動作電圧を低減することができる。なお、第4実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
図24〜図27は、本発明の第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。図23〜図27を参照して、以下に、第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、第1実施形態の形成方法と同様の形成方法を用いて、図24に示すように、サファイア基板1上に、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、MQW発光層4およびp型第1クラッド層30を形成する。なお、各層2〜4および30の組成および膜厚は、第3実施形態と同様である。
次に、図24に示すように、プラズマCVD法を用いて、ウェハの上面側のほぼ全面を覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層50を形成した後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、2つの開口部50aを形成する。これらの開口部50aは、p型第1クラッド層30の上面上の一部領域が露出されるように形成する。
次に、図25に示すように、MOCVD法を用いて、開口部50aにおいて露出されたp型第1クラッド層30の上面上に、誘電体ブロック層50を覆うように、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層51を選択成長させる。この半導体ブロック層51は、約1.5μmの幅W1を有する電流通路部となる開口部を有するとともに、電流通路部と半導体ブロック層51との合計幅W2が約7.5μmになるように、電流通路部の近傍にのみ形成する。このような半導体ブロック層51は、選択成長させる時間を制御することにより、容易に形成可能である。
その後、プラズマCVD法を用いて、ウェハの上面上の全面を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2膜(図示せず)を形成する。そして、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを用いて、SiO2膜および誘電体ブロック層50をパターニングする。これにより、図26に示すように、電流通路部となる開口部を有するSiO2からなるマスク層103下に、約1.5μmの幅W1を有する電流通路部となる開口部50bを有する誘電体ブロック層50が形成される。
次に、図27に示すように、電流ブロック層(誘電体ブロック層50および半導体ブロック層51)の開口部内に露出されたp型第1クラッド層30の上面上に、MOCVD法を用いて、MgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型第2クラッド層52を成長させる。これにより、電流ブロック層の開口部内において約1.5μmの幅W1を有するp型第2クラッド層52がセルフアライン的に形成される。なお、p型第2クラッド層52は、半導体ブロック層51の上面上において、約0.3μmの膜厚を有するように形成されている。そして、p型第2クラッド層52の上面上に、MOCVD法を用いて、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型コンタクト層53を形成する。
最後に、ウェハの上面側のほぼ全面を覆うように、約50nmの膜厚を有するSiN膜(図示せず)を形成する。その後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、図23に示したような形状のSiNからなる保護膜54を形成する。
そして、図23に示したように、真空蒸着法を用いて、p型コンタクト層53上に、p側オーミック電極55およびp側パッド電極56を順次形成する。また、n型コンタクト層2の上面上の誘電体ブロック層50の一部領域を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて除去する。そして、n型コンタクト層2の露出された表面上に、n側オーミック電極57およびn側パッド電極58を順次形成する。このようにして、第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が製造される。
第4実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法では、上記のように、選択成長により半導体ブロック層51を形成することによって、半導体ブロック層51の結晶性を向上させることができる。
図28は、本発明の第4実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。この第4実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子は、第4実施形態の窒化物系半導体レーザ素子と半導体ブロック層の材料のみが異なる、複素屈折率導波型のセルフアライン型の窒化物系半導体レーザ素子である。すなわち、この第4実施形態の変形例では、図28に示すように、p型第1クラッド層30の上面上に形成された誘電体ブロック層50上には、約0.25μmの膜厚と約3μmの幅とを有するIn0.18Ga0.82Nからなる半導体ブロック層59が、約1.5μmの幅W1を有する電流通路部となる開口部を有するように、約7.5μmの幅W2で形成されている。
第4実施形態の変形例では、上記のように、電流ブロック層を、誘電体ブロック層50と、誘電体ブロック層50上に形成されたInGaNからなる半導体ブロック層59とを用いて形成することによって、半導体ブロック層59において光を吸収させることにより横方向の光閉じ込めを行うことができる。これにより、AlGaNからなる半導体ブロック層を形成する場合に比べて薄い膜厚の半導体ブロック層59を形成する場合にも、横方向の光閉じ込めを安定化することができる。
なお、上記第4実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法としては、InGaNからなる半導体ブロック層59は、第4実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層51に比べて低い温度で成長される。その他の工程は、第4実施形態と同様である。上記のように、InGaNからなる半導体ブロック層59を、第4実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層51に比べて低温で形成することができるので、p型第1クラッド層30にドープされた不純物(Mg)が、MQW発光層4に拡散するのを防止することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の信頼性を向上させることができる。
(第5実施形態)
図29は、本発明の第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。図29を参照して、この第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子は、実屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。また、上記第1〜第4実施形態では、誘電体ブロック層の開口部内のp型クラッド層と接触するように半導体ブロック層を形成する例を示したが、この第5実施形態では、電流通路部の側面において、p型クラッド層と接触するように半導体ブロック層を形成する例を示す。以下、詳細に説明する。
第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造としては、サファイア基板1上に、第1実施形態と同様、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、MQW発光層4が形成されている。MQW発光層4上には、凸部を有するp型クラッド層5およびp型第1コンタクト層6が形成されている。これらのp型クラッド層5の凸部およびp型第1コンタクト層6によって、電流通路部(リッジ部)が構成されている。なお、第5実施形態における各層2〜6の組成および膜厚は、第1実施形態と同様である。
また、p型クラッド層5の平坦部と、MQW発光層4、n型クラッド層3およびn型コンタクト層2の側面と、n型コンタクト層2の上面の一部領域とを覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層60が形成されている。
p型クラッド層5上に形成された誘電体ブロック層60の上面上のほぼ全面には、電流通路部の側面を覆うように、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層61が形成されている。なお、これらの誘電体ブロック層60および半導体ブロック層61によって、電流ブロック層が構成されている。
また、電流通路部(リッジ部)および半導体ブロック層61の上面上のほぼ全面には、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層62が形成されている。
p型第2コンタクト層62上には、約1nmの膜厚を有するPtと、約3nmの膜厚を有するPdとからなるp側オーミック電極63が形成されている。p側オーミック電極63の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるp側パッド電極64が形成されている。また、n型コンタクト層2の露出された表面上には、約10nmの膜厚を有するTiと、約0.1μmの膜厚を有するAlとからなるn側オーミック電極65が形成されている。n側オーミック電極65の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるn側パッド電極66が形成されている。
第5実施形態では、上記のように、半導体ブロック層61を、電流通路部(リッジ部)の側面と接触するように形成することによって、半導体ブロック層61とp型クラッド層5との接触部分を電流通路部(リッジ部)の側面のみに低減することができる。これにより、半導体ブロック層61に加わる歪みをより緩和することができる。
図30〜図32は、本発明の第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。なお、第5実施形態における各層2〜6の形成プロセスは、図2〜図5に示した第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法と同様である。図29〜図32を参照して、以下に、第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、第1実施形態の形成方法と同様の形成方法を用いて、図30に示すように、サファイア基板1上に、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、MQW発光層4、p型クラッド層5およびp型第1コンタクト層6を形成する。次に、プラズマCVD法を用いて、ウェハの上面側のほぼ全面を覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層60を形成する。その後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、電流通路部の側面上の誘電体ブロック層60を除去する。
次に、図31に示すように、MOCVD法を用いて、露出された電流通路部(リッジ部)の側面から、p型クラッド層5の上面上に形成された誘電体ブロック層60を覆うように、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層61を選択成長させる。
その後、図32に示すように、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、電流通路部(p型第1コンタクト層6)上の誘電体ブロック層60を除去する。そして、電流通路部(p型第1コンタクト層6)および半導体ブロック層61の上面上のほぼ全面に、MOCVD法を用いて、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層62を形成する。
最後に、図29に示したように、真空蒸着法を用いて、p型第2コンタクト層62上に、p側オーミック電極63およびp側パッド電極64を順次形成する。また、n型コンタクト層2の上面上の誘電体ブロック層60の一部領域を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて除去する。そして、n型コンタクト層2の露出された表面上に、n側オーミック電極65およびn側パッド電極66を順次形成する。このようにして、第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が製造される。
第5実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法では、上記のように、選択成長により半導体ブロック層61を形成することによって、半導体ブロック層61の結晶性を向上させることができる。
図33は、本発明の第5実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。この第5実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子は、第5実施形態の窒化物系半導体レーザ素子と半導体ブロック層の材料のみが異なる、複素屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。すなわち、この第5実施形態の変形例では、図33に示すように、p型クラッド層5上に形成された誘電体ブロック層60の上面上のほぼ全面に、電流通路部の側面を覆うように、約0.25μmの膜厚を有するIn0.18Ga0.82Nからなる半導体ブロック層67が形成されている。
第5実施形態の変形例では、上記のように、電流ブロック層を、誘電体ブロック層60と、誘電体ブロック層60上に形成されたInGaNからなる半導体ブロック層67とを用いて形成することによって、半導体ブロック層67において光を吸収させることにより横方向の光閉じ込めを行うことができる。これにより、AlGaNからなる半導体ブロック層を形成する場合に比べて薄い膜厚の半導体ブロック層67を形成する場合にも、横方向の光閉じ込めを安定化することができる。なお、第5実施形態の変形例のその他の効果は、第5実施形態と同様である。
なお、上記第5実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法としては、InGaNからなる半導体ブロック層67は、第5実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層61に比べて低い温度で成長される。その他の工程は、第5実施形態と同様である。上記のように、InGaNからなる半導体ブロック層67を、第5実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層61に比べて低温で形成することができるので、p型クラッド層5にドープされた不純物(Mg)が、MQW発光層4に拡散するのを防止することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の信頼性を向上させることができる。
(第6実施形態)
図34は、本発明の第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。図34を参照して、この第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子は、実屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。また、上記第5実施形態では、電流通路部の近傍以外の領域にまで半導体ブロック層を形成する例を示したが、この第6実施形態では、電流通路部の近傍にのみ半導体ブロック層を形成する例を示す。以下、詳細に説明する。
第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造としては、サファイア基板1上に、第5実施形態と同様、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、MQW発光層4が形成されている。MQW発光層4上には、凸部を有するp型クラッド層5およびp型第1コンタクト層6が形成されている。これらのp型クラッド層5の凸部およびp型第1コンタクト層6によって、約1.5μmの幅W1を有する電流通路部(リッジ部)が構成されている。なお、第6実施形態における各層2〜6の組成および膜厚は、第1実施形態と同様である。
また、p型クラッド層5の平坦部と、MQW発光層4、n型クラッド層3およびn型コンタクト層2の側面と、n型コンタクト層2の上面の一部領域とを覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層70が形成されている。
誘電体ブロック層70の上面上の電流通路部(リッジ部)の近傍には、電流通路部の側面を覆うように、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層71が形成されている。半導体ブロック層71は、半導体ブロック層71と電流通路部との合計幅W2が約7.5μmになるように、電流通路部の近傍にのみ形成されている。なお、これらの誘電体ブロック層70および半導体ブロック層71によって、電流ブロック層が構成されている。
そして、p型クラッド層5の平坦部上の誘電体ブロック層70上には、電流通路部(リッジ部)の上面および半導体ブロック層71を覆うように、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層72が形成されている。
p型第2コンタクト層72上には、約1nmの膜厚を有するPtと、約3nmの膜厚を有するPdとからなるp側オーミック電極73が形成されている。p側オーミック電極73の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるp側パッド電極74が形成されている。また、n型コンタクト層2の露出された表面上には、約10nmの膜厚を有するTiと、約0.1μmの膜厚を有するAlとからなるn側オーミック電極75が形成されている。n側オーミック電極75の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるn側パッド電極76が形成されている。
第6実施形態では、上記のように、半導体ブロック層71を、電流通路部(p型クラッド層5およびp型第1コンタクト層6)の側面と接触するように形成することによって、半導体ブロック層71とp型クラッド層5との接触部分を電流通路部(リッジ部)の側面のみに低減することができる。これにより、半導体ブロック層71に加わる歪みをより緩和することができる。さらに、半導体ブロック層71を電流通路部の近傍にのみ形成することによって、半導体ブロック層71および誘電体ブロック層70からなる電流ブロック層と、p型クラッド層5との間の容量が低減される。これにより、素子をパルス駆動したときのパルスの立ち上がりおよび立ち下がりを早くすることができるので、その結果、高速でのパルス駆動が可能な窒化物系半導体レーザ素子を得ることができる。なお、第6実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
図35および図36は、本発明の第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。図34〜図36を参照して、以下に、第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、図2〜図5に示した第1実施形態の形成方法と同様の形成方法を用いて、図35に示すように、サファイア基板1上に、n型コンタクト層2、n型クラッド層3、MQW発光層4、p型クラッド層5およびp型第1コンタクト層6を・BR>`成する。次に、プラズマCVD法を用いて、ウェハの上面側のほぼ全面を覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層70を形成する。その後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、電流通路部の側面上の誘電体ブロック層70を除去する。
そして、露出された電流通路部(リッジ部)の側面から、誘電体ブロック層70の上面上の電流通路部の近傍に、MOCVD法を用いて、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層71を選択成長させる。この場合、半導体ブロック層71は、半導体ブロック層71と電流通路部との合計幅W2が約7.5μmになるように、電流通路部の近傍にのみ形成する。このような半導体ブロック層71は、選択成長させる時間を制御することにより、容易に形成可能である。
その後、図36に示すように、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、電流通路部(p型第1コンタクト層6)上の誘電体ブロック層70を除去する。そして、誘電体ブロック層70上に、MOCVD法を用いて、電流通路部(p型第1コンタクト層6)の上面上および半導体ブロック層71を覆うように、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層72を形成する。
最後に、図34に示したように、真空蒸着法を用いて、p型第2コンタクト層72上に、p側オーミック電極73およびp側パッド電極74を順次形成する。また、n型コンタクト層2の上面上の誘電体ブロック層70の一部領域を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて除去する。そして、n型コンタクト層2の露出された表面上に、n側オーミック電極75およびn側パッド電極76を順次形成する。このようにして、第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が製造される。
第6実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法では、上記のように、選択成長により半導体ブロック層71を形成することによって、半導体ブロック層71の結晶性を向上させることができる。
図37は、本発明の第6実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。この第6実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子は、第6実施形態の窒化物系半導体レーザ素子と半導体ブロック層の材料のみが異なる、複素屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。すなわち、この第6実施形態の変形例では、図37に示すように、誘電体ブロック層70の上面上の電流通路部の近傍に、電流通路部の側面を覆うように、約0.25μmの膜厚と約7.5μmの幅W2とを有するIn0.18Ga0.82Nからなる半導体ブロック層77が形成されている。
この第6実施形態の変形例では、上記のように、電流ブロック層を、誘電体ブロック層70と、誘電体ブロック層70上に形成されたInGaNからなる半導体ブロック層77とを用いて形成することによって、半導体ブロック層77において光を吸収させることにより横方向の光閉じ込めを行うことができる。これにより、AlGaNからなる半導体ブロック層を形成する場合に比べて薄い膜厚の半導体ブロック層77を形成する場合にも、横方向の光閉じ込めを安定化することができる。なお、第6実施形態の変形例のその他の効果は、第6実施形態と同様である。
なお、上記第6実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法としては、InGaNからなる半導体ブロック層77は、第6実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層71に比べて低温で成長される。その他の工程は、第6実施形態と同様である。上記のように、InGaNからなる半導体ブロック層77を、第6実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層71に比べて低温で形成することができるので、p型クラッド層5にドープされた不純物(Mg)が、MQW発光層4に拡散するのを防止することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の信頼性を向上させることができる。
(第7実施形態)
図38は、本発明の第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。図38を参照して、この第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子は、実屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。また、上記第1〜第6実施形態では、サファイア基板を用いた例を示したが、この第7実施形態では、導電性を有するGaN基板を用いた例を示す。以下、詳細に説明する。
第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造としては、GaN基板81上に、約4μmの膜厚を有するSiドープGaNからなるn型コンタクト層82、約1μmの膜厚を有するSiドープAlGaNからなるn型クラッド層83、および、InGaNの多重量子井戸構造を有するMQW発光層84が形成されている。このMQW発光層84は、約8nmの厚みを有する3つのInxGa1-xN量子井戸層と、約16nmの厚みを有する4つのInyGa1-yN量子障壁層とが交互に積層された構造を有する。このMQW発光層84において、x>yであり、本実施形態では、x=0.13およびy=0.05を満たすように形成されている。なお、MQW発光層84は、本発明の「発光層」の一例である。
MQW発光層84上には、約1.5μmの幅を有する凸部を有するMgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型クラッド層85が形成されている。このp型クラッド層85の凸部の膜厚は、約0.4μmであり、凸部以外の平坦部の膜厚は、約0.1μmである。p型クラッド層85の凸部の上面上には、約1.5μmの幅と約0.01μmの膜厚とを有するMgドープGaNからなるp型第1コンタクト層86が形成されている。これらのp型クラッド層85の凸部およびp型第1コンタクト層86によって、約1.5μmの幅W1を有する電流通路部(リッジ部)が構成されている。なお、p型クラッド層85は、本発明の「クラッド層」の一例である。
また、電流通路部(リッジ部)の側面と、p型クラッド層85の平坦部の上面上とを覆うように、約50nmの膜厚を有するSiNからなる誘電体ブロック層87が形成されている。この誘電体ブロック層87は、p型クラッド層85の平坦部の上面上の、電流通路部の近傍に開口部87aを有するように形成されている。
誘電体ブロック層87の上面上の電流通路部(リッジ部)の近傍には、電流通路部の側部を埋め込むように、約0.25μmの膜厚と約7.5μmの幅W2とを有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層88が形成されている。半導体ブロック層88は、半導体ブロック層88と電流通路部との合計幅W2が約7.5μmになるように、電流通路部の近傍にのみ形成されている。また、半導体ブロック層88は、誘電体ブロック層87に設けられた開口部87aを介して、p型クラッド層85と接触するように形成されている。なお、これらの誘電体ブロック層87および半導体ブロック層88によって、電流ブロック層が構成されている。
そして、誘電体ブロック層87上には、電流通路部(p型第1コンタクト層86)の上面上および半導体ブロック層88を覆うように、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層89が形成されている。
p型第2コンタクト層89上には、約1nmの膜厚を有するPtと、約3nmの膜厚を有するPdとからなるp側オーミック電極90が形成されている。p側オーミック電極90の上面上の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるp側パッド電極91が形成されている。また、導電性を有するGaN基板81の裏面には、約10nmの膜厚を有するTiと、約0.1μmの膜厚を有するAlとからなるn側オーミック電極92が形成されている。n側オーミック電極92の裏面の一部領域には、約0.1μmの膜厚を有するNiと、約3μmの膜厚を有するAuとからなるn側パッド電極93が形成されている。
第7実施形態では、上記のように、導電性を有するGaN基板81上に、誘電体ブロック層87および半導体ブロック層88からなる電流ブロック層を形成する場合にも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
図39〜図43は、本発明の第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。図38〜図43を参照して、以下に、第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、図39に示すように、GaN基板81上に、MOCVD法を用いて、約4μmの膜厚を有するSiドープGaNからなるn型コンタクト層82、約1μmの膜厚を有するSiドープAlGaNからなるn型クラッド層83およびMQW発光層84を形成する。そして、MQW発光層84上に、約0.4μmの膜厚を有するMgドープAlvGa1-vN(Al組成:v=0.08)からなるp型クラッド層85、および、約0.01μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第1コンタクト層86を順次形成する。その後、プラズマCVD法を用いて、p型第1コンタクト層86の上面上の全面を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2膜(図示せず)を形成する。その後、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、そのSiO2膜をパターニングすることによって、図39に示されるような、SiO2からなるマスク層104を形成する。
その後、図40に示すように、マスク層104をマスクとして、Cl2からなるエッチングガスを用いて、RIE法などのドライエッチングにより、p型第1コンタクト層86およびp型クラッド層85の一部領域をエッチングする。これにより、p型クラッド層85の凸状部およびp型第1コンタクト層86からなる約1.5μmの幅W1を有する電流通路部(リッジ部)が形成される。その後、マスク層104を除去する。
次に、図41に示すように、プラズマCVD法を用いて、ウェハの上面側のほぼ全面を覆うように、約50nmの膜厚を有するSiN膜からなる誘電体ブロック層87を形成した後、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを用いて、誘電体ブロック層87に開口部87aを形成する。この開口部87aは、電流通路部の近傍に、p型クラッド層85の平坦部の上面上の一部領域が露出されるように形成する。
次に、図42に示すように、MOCVD法を用いて、開口部87aにおいて露出されたp型クラッド層85の上面上に、電流通路部の側部に形成された誘電体ブロック層87を覆うように、電流通路部の近傍に、約0.25μmの膜厚を有するAlwGa1-wN(Al組成:w=0.15)からなる半導体ブロック層88を選択成長させる。この半導体ブロック層88は、半導体ブロック層88と電流通路部との合計幅W2が約7.5μmになるように、電流通路部の近傍にのみ形成する。このような半導体ブロック層88は、選択成長させる時間を制御することにより、容易に形成可能である。その後、図43に示すように、フォトリソグラフィー技術と、CF4をエッチングガスとしたドライエッチングまたはHF系のエッチャントを用いるウェットエッチングとを用いて、電流通路部(p型第1コンタクト層86)上の誘電体ブロック層87を除去する。
次に、MOCVD法を用いて、誘電体ブロック層87上に、MOCVD法を用いて、電流通路部(p型第1コンタクト層86)の上面上および半導体ブロック層88を覆うように、約0.07μmの膜厚を有するMgドープGaNからなるp型第2コンタクト層89を形成する。
最後に、図38に示したように、真空蒸着法を用いて、p型第2コンタクト層89上に、p側オーミック電極90およびp側パッド電極91を順次形成する。また、導電性を有するGaN基板81の裏面に、n側オーミック電極92およびn側パッド電極93を順次形成する。このようにして、第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が製造される。
第7実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造方法では、上記のように、選択成長により半導体ブロック層88を形成することによって、半導体ブロック層88の結晶性を向上させることができる。また、電流通路部の近傍に設けられた開口部87aから選択成長により半導体ブロック層88を形成することによって、電流通路部の近傍にのみ、半導体ブロック層88を形成することができる。これにより、半導体ブロック層88と、p型クラッド層85との格子定数の差に起因して半導体ブロック層88に加わる歪みを緩和することができる。
図44は、本発明の第7実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子を示した斜視図である。この第7実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子は、第7実施形態の窒化物系半導体レーザ素子と半導体ブロック層の材料のみが異なる、複素屈折率導波型のリッジ型のレーザ素子である。すなわち、この第7実施形態の変形例では、図44に示すように、電流通路部(リッジ部)の側部およびp型クラッド層85の上面上に形成された誘電体ブロック層87を覆うように、約0.25μmの膜厚と約7.5μmの幅W2とを有するIn0.18Ga0.82Nからなる半導体ブロック層98が形成されている。
この第7実施形態の変形例では、上記のように、電流ブロック層を、誘電体ブロック層87と、誘電体ブロック層87上に形成されたInGaNからなる半導体ブロック層98とを用いて形成することによって、半導体ブロック層98において光を吸収させることにより横方向の光閉じ込めを行うことができる。これにより、AlGaNからなる半導体ブロック層を形成する場合に比べて薄い膜厚の半導体ブロック層98を形成する場合にも、横方向の光閉じ込めを安定化することができる。なお、第7実施形態の変形例のその他の効果は、第7実施形態と同様である。
なお、上記第7実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法としては、InGaNからなる半導体ブロック層98は、第7実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層88に比べて低温で成長される。その他の工程は、第7実施形態と同様である。上記のように、InGaNからなる半導体ブロック層98を、第7実施形態のAlGaNからなる半導体ブロック層88に比べて低温で形成することができるので、p型クラッド層85にドープされた不純物(Mg)が、MQW発光層84に拡散するのを防止することができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の信頼性を向上させることができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第7実施形態では、誘電体ブロック層をの材料として、SiNを用いたが、本発明はこれに限らず、ZrNまたはTiNなどの他の窒化物や、または、SiO2、ZrO2またはTiO2などの酸化物などの材料を用いてもよい。
また、上記第1〜第7実施形態では、誘電体ブロック層を約50nmの膜厚を有するように形成したが、本発明はこれに限らず、誘電体ブロック層を約250nm以内の膜厚を有するように形成してもよい。たとえば、誘電体ブロック層を約250nmの膜厚を有するように形成する場合には、膜厚を大きくすることによって、窒化物系半導体レーザ素子の温度特性がやや低下するため、高温時の動作電流がやや増加する。
また、上記第4実施形態では、半導体ブロック層51を、電流通路部となる開口部を有するように成長したが、本発明はこれに限らず、半導体ブロック層51を、p型第1クラッド層30の上面上の電流通路部となる領域に一旦形成した後、RIE法などを用いて、半導体ブロック層51の電流通路部となる部分を除去しても良い。
以上のように、本発明によれば、横方向の光閉じ込めを安定化することが可能な窒化物系半導体発光素子を提供することができる。