JP4020209B2 - 中間歯車付き始動電動機 - Google Patents
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Description
また、始動電動機の動作時には、ピニオンおよびクラッチカバーと繋留部材とが相対回転しているため、使用を重ねるに従い、ピニオン鍔部およびクラッチカバーに対する繋留部材の摺動面が摩耗し、繋留部材とクラッチカバーとの間の隙間がさらに大きくなってしまう。このように、中間歯車のガタツキ量が大きくなってしまう。
そして、クラッチカバーと第3摺動面との隙間Δ2を構成する部品は、ピニオン、移動連結体、ワッシャおよびクラッチカバーとなる。一方、第2ピニオン鍔部と第2摺動面との隙間Δ1を構成する部品は、ピニオンと移動連結体となる。そこで、この隙間Δ1は、ピニオンの寸法バラツキおよび移動連結体の厚みのバラツキのみを考慮して設計すればよいので、隙間Δ1を隙間Δ2より小さくすることができる。そして、中間歯車のガタツキ量は、隙間Δ1により決まるので、初期的な中間歯車のガタツキ量を少なく抑えることができる。
さらに、使用を重ね、第2摺動面が第2ピニオン鍔部と摺接して所定量摩耗すると、第3摺動面がクラッチカバーに当接する。この時点で、第2摺動面が第2ピニオン鍔部に当接している状態で、第3摺動面がクラッチカバーに当接するので、移動連結体の摩耗面積が増大し、摩耗速度が緩やかとなり、長期的にも中間歯車のガタツキ量を少なく抑えることができる。
図1はこの発明の実施の形態1に係る中間歯車付き始動電動機を示す部分断面図である。図2はこの発明の実施の形態1に係る中間歯車付き始動電動機に適用される移動連結体の構成を説明する図であり、図2の(a)はその背面図、図2の(b)はその断面図を示している。
図1において、中間歯車付き始動電動機1は、回転力を発生する電動機3、この電動機3の回転を減速して出力する遊星減速装置5、遊星減速装置5の出力軸4に嵌合するオーバーランニングクラッチ6、このオーバーランニングクラッチ6と一体的に出力軸4上を軸方向に摺動移動可能に設けられたピニオン7、出力軸4と軸方向を平行に配設された中間軸8、中間軸8上を軸方向に摺動移動可能に、かつ、回転自在に設けられ、ピニオン7と常時噛み合う中間歯車9、ピニオン7と中間歯車9との軸方向の相対移動を規制する移動連結体10、電動機3への通電を制御するとともに、シフトレバー13を介してオーバーランニングクラッチ6と一体にピニオン7をエンジンのリングギヤ14側へ付勢する電磁スイッチ11等から構成されている。
クラッチアウタ20aとクラッチインナ21とで構成される各楔状空間内には、ローラ22が周方向に移動可能に収納され、さらに各ローラ22を該楔状空間の狭い方向に付勢する押圧ばね(図示せず)が収納されている。また、ワッシャ24がクラッチアウタ20aの開放側に配設され、ローラ22の軸方向の移動が規制されている。さらに、クラッチカバー25がクラッチアウタ20aの開放側からクラッチアウタ20aに外嵌状態に装着され、ワッシャ24をクラッチアウタ20aの開放側に固定している。
また、ストッパ26が出力軸4のフロント側に装着され、クラッチインナ21(ピニオン7)のフロントブラケット2への接触を阻止している。
中間歯車9は、中間軸8上を軸方向に移動可能に、かつ、回転自在に中間軸8に配設され、常時ピニオン7と噛み合わされている。そして、ピニオン7の歯部7aと噛み合わされる歯部9aが中間歯車9のフロント側の部位に設けられ、円筒状のボス部9bが中間歯車9のリヤ側の部位に設けられている。さらに、鍔部9c、9dがボス部9bを挟む軸方向両側の位置から径方向に突設されている。そして、鍔部9c、9dの相対する平面は、軸方向と直交する平坦面に形成されている。また、軸方向と直交する鍔部9cの平坦面の位置が軸方向に関して軸方向と直交する鍔部7cの平坦面の位置と一致したときに、歯部9aがピニオン7の歯部7aと噛み合うようになっている。
キースイッチ(図示せず)を閉じると、電磁スイッチ11に通電され、プランジャ12が磁気吸引される。これにより、プランジャ12は、図1中左方向(リヤ側)に移動する。このプランジャ12の移動に伴って、シフトレバー13が支点部13aを回動中心として図1中反時計回りに回動する。このシフトレバー13の回動により、その一端13bがスペースカラー23をフロント側に押圧する。そこで、オーバーランニングクラッチ6がフロント側に押圧されて、オーバーランニングクラッチ6とピニオン7とが一体となって出力軸4上をフロント側に移動する。このピニオン7の移動力が移動連結体10を介して中間歯車9に伝達され、中間歯車9が中間軸8上をフロント側に移動する。そして、中間歯車9の端面がリングギヤ14の端面に当接した時点で、オーバーランニングクラッチ6、ピニオン7および中間歯車9の移動は止まる。
この出力軸4の回転に伴ってピニオン7が回転し、同時に中間歯車9が回転する。そして、中間歯車9のリングギヤ14に対する当接位置が噛み合い可能な位置までずれると、電磁スイッチ11内のレバーばねの蓄勢力が放勢されてオーバーランニングクラッチ6およびピニオン7がフロント側に押し出される。このピニオン7のフロント側への移動力が、移動連結体10を介して中間歯車9に伝達され、中間歯車9がフロント側に移動され、中間歯車9がリングギヤ14に噛み合う。この時、ピニオン7がストッパ26に当接して、フロントブラケット2との衝突が回避される。これにより、出力軸4の回転トルクがリングギヤ14に伝達され、エンジンが駆動される。
比較例では、ピニオン7Aは、鍔部7dが省略されている点を除いて、ピニオン7と同様に構成されている。移動連結体10Aは、軸方向に所定の厚みを有する略直方体形状に形成された樹脂成型体であり、第1嵌合凹部10aと第2嵌合凹部10bとが、開口部を外方に向けて離間して形成されている。この移動連結体10Aの表面はピニオン7Aおよび中間歯車9の鍔部7c、9cと係合する第1摺動面10cを構成している。また、第1嵌合凹部10aのリヤ側外周縁部は、オーバーランニングクラッチ6のクラッチカバー25と係合する第3摺動面10eを構成している。さらに、第2嵌合凹部10bのリヤ側外周縁部は、中間歯車9の鍔部9dと係合する第4摺動面10fを構成している。この移動連結体10Aは、第2摺動面が省略されている点を除いて、移動連結体10と同様に構成されている。
この移動連結体10Aは、歯部7a,9aが噛み合った状態で、第1嵌合凹部10aをピニオン7のボス部7bに嵌着させ、かつ、第2嵌合凹部10bを中間歯車9のボス部9bに嵌着させて、取り付けられている。そして、移動連結体10Aは、ピニオン7Aの鍔部7cとクラッチカバー25のフロント側端面とに係合して、ピニオン7Aの軸方向の移動を規制している。
なお、比較例の他の構成は、中間歯車付き始動電動機1と同様に構成されている。
そこで、当該隙間を構成する各部品の寸法精度のバラツキを考慮し、最悪の場合でも隙間が形成されるように構成する必要がある。
当該隙間を構成する部品としては、ピニオン7A、移動連結体10A、ワッシャ24およびクラッチカバー25がある。そして、ピニオン7Aおよび移動連結体10Aの寸法精度に加え、ワッシャ24およびクラッチカバー25の厚み精度、さらにはワッシャ24およびクラッチカバー25の平面度を考慮する必要があり、比較的大きな隙間を形成しておくことになる。従って、中間歯車9のガタツキ量は、初期状態から大きなものとなってしまう。さらに、使用を重ね、移動結合体10Aが摩耗すれば、中間歯車9のガタツキ量はさらに大きなものとなってしまう。
Δ0min=Δ0−(δ1+δ2+δ3+δ4+δ5+δ6)>0
を満足しなければならない。
つまり、Δ0>(δ1+δ2+δ3+δ4+δ5+δ6)を満足しなければならない。
なお、Δ0はクラッチカバーのフロント側端面と移動結合体との隙間であり、δ1は移動結合体の厚みバラツキであり、δ2はピニオンの寸法バラツキであり、δ3はワッシャの寸法バラツキであり、δ4はワッシャの平面度バラツキであり、δ5はクラッチカバーの寸法バラツキであり、δ6はクラッチカバーの平面度バラツキである。
そして、第2摺動面10dと鍔部7dとの隙間Δ1を構成する部品は、ピニオン7と移動連結体10とである。そこで、第2摺動面10dと鍔部7dとの隙間Δ1が、最悪の場合でも存在するように構成するには、Δ1min=Δ1−(δ1+δ2)>0とすればよい。即ち、Δ1>(δ1+δ2)とすればよい。
また、第3摺動面10eと鍔部7dとの隙間Δ2を構成する部品は、ピニオン7、移動連結体10、ワッシャ24およびクラッチカバー25である。そこで、第3摺動面10eと鍔部7dとの隙間Δ2が、最悪の場合でも存在するように構成するには、Δ2min=Δ2−(δ1+δ2+δ3+δ4+δ5+δ6)>0とすればよい。即ち、Δ2>(δ1+δ2+δ3+δ4+δ5+δ6)とすればよい。なお、隙間Δ1<隙間Δ2=隙間Δ0である。
従って、実施の形態1では、中間歯車9のガタツキ量は、隙間Δ1により規制され、比較例に比べ、初期的に小さくすることができる。
また、この状態では、第2摺動面10dが鍔部7dと係合し、かつ、第3摺動面10eがクラッチカバー25のフロント側端面と係合している。そこで、比較例に比べて、移動結合体10の摩耗面積が大きくなるので、摩耗速度が比較例に比べ緩やかとなる。このことにより、長期使用においても、中間歯車9のガタツキ量を少なく抑えることができる。
一方、実施の形態1のものでは、中間歯車のガタツキ量が、初期的に、比較例より小さいことが分かる。これは、第2摺動面10dに係合する鍔部7dをピニオン7に設けたことによる効果と推考される。
また、第3摺動面10eとクラッチカバー25のフロント側端面との当接開始以降、中間歯車のガタツキ量の増加割合が低下することが分かる。これは、移動結合体10の摩耗面積が大きくなることによる効果と推考される。
ここで、始動電動機1がエンジンルーム内に設置されることから、移動連結体10には所定の強度を有するとともに、150℃以上の耐熱性が要求されることから、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂が用いられる。また、ナイロンは、耐熱性に加え、耐摩耗性にも優れていることから、移動連結体の材料として好ましい。
さらに、カーボン繊維およびポリテトラフルオロエチレン(PTEF)の少なくとも一方からなる低摩擦係数を有する潤滑材を添加した樹脂、例えばナイロンを用いて移動連結体を成型してもよい。この場合、移動連結体の潤滑性が高められるので、移動連結体とピニオン、クラッチカバーおよび中間歯車との間の摩擦が低減される。これにより、移動連結体の摩耗が低減され、中間歯車のガタツキ量が低減される。
図6はこの発明の実施の形態2に係る中間歯車付き始動電動機に適用される移動連結体の構成を説明する図であり、図6の(a)はその背面図、図6の(b)はその断面図を示している。
なお、他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
このように、この実施の形態2によれば、上記実施の形態1の効果に加え、新たな部品を追加することなく、簡易な構成で、誤組み付けを確実に防止できる安価な移動結合体10Bを得ることができる。
Claims (4)
- 電動機と、
上記電動機により回転力が付与される出力軸と、
上記出力軸にスプライン結合されたクラッチアウタ、このクラッチアウタの内側に配設されたクラッチインナ、該クラッチアウタと該クラッチインナとの間に配設されて、該クラッチアウタの回転力を該クラッチインナに伝達するローラ、該クラッチアウタの開放側に装着されて該ローラの軸方向の移動を規制するワッシャおよび該クラッチアウタに外嵌状態に装着されて該ワッシャを該クラッチアウタの開放側端面に固着するクラッチカバーを有するオーバーランニングクラッチと、
上記クラッチインナと一体に上記出力軸上を軸方向に移動可能に、かつ、回転自在に設けられたピニオンと、
上記出力軸と平行に配設された中間軸と、
上記ピニオンと噛み合って上記中間軸に回転自在に支持され、かつ、該中間軸上を軸方向に移動可能に配設された中間歯車と、
上記ピニオンに設けられた円筒状のピニオンボス部および上記中間歯車に設けられた円筒状の中間歯車ボス部に対し、それぞれ相対回転可能に係合するとともに、該ピニオンと該中間歯車との軸方向の相対移動を規制する移動連結体と、を有し、
エンジン始動時に、上記移動連結体を介して上記中間歯車を上記ピニオンとともに軸方向のフロント側に移動させてリングギヤに噛み合わせて該エンジンを始動させ、
エンジン始動後、上記移動連結体を介して上記中間歯車を上記ピニオンとともに軸方向のリヤ側に移動させて上記リングギヤとの噛み合いを解除させる中間歯車付き始動電動機において、
上記ピニオンは、上記ピニオンボス部のフロント側に径方向に突設された第1ピニオン鍔部と、上記ピニオンボス部を挟んで上記第1ピニオン鍔部と相対して径方向に突設された第2ピニオン鍔部と、を有し、
上記移動連結体は、上記ピニオンボス部および上記中間歯車ボス部に嵌合する第1および第2嵌合凹部と、上記第1ピニオン鍔部に当接して上記ピニオンのリヤ側への移動を規制する第1摺動面と、上記第2ピニオン鍔部に当接して上記ピニオンのフロント側への移動を規制する第2摺動面と、上記クラッチカバーに当接して上記ピニオンのフロント側への移動を規制する第3摺動面と、を有していることを特徴とする中間歯車付き始動電動機。 - 上記移動連結体は、樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の始動電動機。
- 上記移動連結体は、カーボン繊維およびポリテトラフルオロエチレンの少なくとも一方からなる潤滑材が添加された樹脂で作製されていることを特徴とする請求項2記載の始動電動機。
- 上記移動連結体は、誤組み付け防止用の突起が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の始動電動機。
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