JP4018589B2 - 反応性シリル基含有ビスイミド化合物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品用の絶縁保護膜形成剤等として有用な、縮合反応により硬化し得る反応性シリル基含有ビスイミド化合物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電子部品等の絶縁保護膜用樹脂として、耐熱性および電気的・機械的特性に優れたポリイミド樹脂が利用されている。保護膜形成に際し、一般にポリイミド樹脂は有機溶媒に不溶であるために、その前駆体であるポリアミック酸の溶液を用い、これを基材に塗布した後、加熱して脱水縮合反応により閉環させて目的とするポリイミド樹脂被膜を形成する方法が採用されている。
【0003】
しかし、このポリアミック酸の溶液を用いる方法においては、ポリアミック酸溶液の粘度が非常に高いため作業性に劣ること、脱水縮合工程において 300℃を超える高温とする必要があること、得られたポリイミド樹脂被膜はニッケル、アルミニウム、シリコン、シリコン酸化膜等の基材に対する接着性に劣ること等の問題があった。
【0004】
基材との接着性の改善については、ポリイミドの原料であるジアミン成分の一部をシロキサンを含有するジアミンで置き換えて得られたポリイミドシロキサン共重合体を用いる方法(特許文献1、特許文献2参照)、また、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸に、アミノ基、酸無水物基等を有するシラン化合物を混合または反応させる方法が提案されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
しかし、前者の方法では、共重合体中のシロキサン含有量の増加によって耐熱性が低下するという問題があり、後者の方法では、加えるシラン量が増加すると溶液の保存安定性を著しく損なうという問題があった。
【0005】
また、ポリイミド被膜の形成に際し、ポリアミック酸を 300℃以上という高温で脱水縮合反応する工程を不必要なものとするために、ポリイミド樹脂自身を溶媒に可溶なものとし、その溶液を用いて基材を被覆し、比較的低温で溶媒を揮発することにより、ポリイミド樹脂被膜を形成する方法も種々提案されている(特許文献6、特許文献7、特許文献8参照)。
しかし、当該方法により得られるポリイミド樹脂被膜は、本質的に耐溶媒性に劣るため、実用上問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特公昭43−27439号公報
【特許文献2】
特公昭59−7213号公報
【特許文献3】
特公昭58−32162号公報
【特許文献4】
特公昭58−32163号公報
【特許文献5】
特公平1−29510号公報
【特許文献6】
特開昭62−18426号公報
【特許文献7】
特公昭52−30319号公報
【特許文献8】
特開昭61−83228号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、縮合反応により硬化してイミド環含有硬化樹脂を与える、新規な反応性シリル基含有ビスイミド化合物およびその製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、第一に、
下記構造式:
【0009】
【化7】
【0010】
(式中、R1は有機基であり、R2およびR3は、各々独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、nは1〜3の整数である)
で示される反応性シリル基含有ビスイミド化合物を提供する。
【0011】
また、本発明は、第二に、
(a)下記構造式(1):
【0012】
【化8】
で示されるアリル基含有酸無水物と、
(b)下記構造式(2):
【0013】
【化9】
H2N−R1−NH2 (2)
(式中、R1は有機基である)
で示される2官能性ジアミン化合物とを反応させて、
(c)下記構造式(3):
【0014】
【化10】
(式中、R1は上記と同じである)
で示されるアリル基含有ビスイミド化合物を得て、
次いで、該アリル基含有ビスイミド化合物と、
(d)下記構造式(4):
【0015】
【化11】
(式中、R2およびR3は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、nは1〜3の整数である
)
で示される有機シラン化合物とを付加反応させることによる、
(e)下記構造式(5):
【0016】
【化12】
(式中、R1、R2、R3およびnは上記と同じである)
で示される反応性シリル基含有ビスイミド化合物の製造方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0018】
反応性シリル基含有ビスイミド化合物
本発明で提供する新規化合物である反応性シリル基含有ビスイミド化合物は、下記構造式で表されるものである。
【0019】
【化13】
【0020】
(式中、R1は有機基であり、R2およびR3は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、nは1〜3の整数である)
該反応性シリル基含有ビスイミド化合物は、その両端に有するケイ素原子に結合した基:-OR3 の縮合反応によりイミド環を有する高分子量の硬化樹脂を形成することができる。なお、R1、R2およびR3の具体例については、下記の製造方法において記載のとおりである。
【0021】
反応性シリル基含有ビスイミド化合物の製造方法
[(a)アリル基含有酸無水物]
本発明で用いるアリル基含有酸無水物は、下記構造式(1):
【0022】
【化14】
で示されるものである。
【0023】
アリル基は、上記式(1)中のシクロペンテン環骨格の炭素原子に結合した水素原子のいずれと置換されていてもよい。また、該アリル基含有酸無水物は、1種単独でも、前記アリル基の置換位置が異なる2種以上の異性体の組み合わせであっても差し支えない。
【0024】
[(b)2官能性ジアミン化合物]
上記アリル基含有酸無水物との反応に供する2官能性ジアミン化合物は、下記構造式(2)で示されるものである。
【0025】
【化15】
H2N−R1−NH2 (2)
(式中、R1は有機基である)
ここで、上記有機基は1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
該有機基の具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0026】
【化16】
(式中、mは0〜200の整数である)
【0027】
【化17】
【0028】
【化18】
【0029】
【化19】
【0030】
【化20】
【0031】
また、他のジアミン化合物としては、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエ−テル、2,2'-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4-ビス(m-アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェニルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(m-アミノフェニルチオ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-メチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-クロロ-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[3-メチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[3-クロロ-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[3,5-ジメチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-メチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-クロロ-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]パ−フルオロプロパン等の芳香環含有ジアミンが挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
また、下記構造式(6)で示されるジアミン化合物も挙げられる。
【0032】
【化21】
【0033】
ここで、上記式中、R4は、上記[化16]〜[化20]に例示した基および上記「他のジアミン化合物」として例示した芳香環含有ジアミンからアミノ基を除いた芳香環含有ジアミン残基より成る群から選ばれる1種または2種以上の2価の基であり、pは0〜100の整数であり、Xは芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する芳香環を含む4価の有機基である。なお、前記Xは1種単独でも2種以上の組み合わせでもよい。
前記Xの具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0034】
【化22】
更に、下記に示されるケイ素含有ジアミン類も使用することができる。
【0035】
【化23】
なお、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0036】
上記の中でも、本発明において好適に使用される2官能性ジアミン化合物は、下記ジアミンの1種または2種以上の組み合わせである。
【0037】
【化24】
【0038】
【化25】
【0039】
【化26】
【0040】
【化27】
【0041】
[(c)アリル基含有ビスイミド化合物]
テトラカルボン酸とジアミン化合物からポリアミック酸を調製し、次いで閉環させてポリイミドを得る周知の合成方法と同様にして、上記アリル基含有酸無水物と上記2官能性ジアミン化合物とを有機溶媒中で反応させて、下記構造式:
【0042】
【化28】
(式中、R1は上記と同じである)
で表される中間体を得て、引き続き、この中間体を加熱条件下で脱水縮合して閉環させることにより、下記構造式(3):
【0043】
【化29】
で示されるアリル基含有ビスイミド化合物を得ることができる。
【0044】
[(d)有機ケイ素化合物]
上記アリル基含有ビスイミド化合物との付加反応に供する有機シラン化合物は、ケイ素原子に結合した水素原子を1個有する下記構造式(4)で示されるものである。
【0045】
【化30】
(式中、R2およびR3は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の1価炭化水素基であり、nは1〜3の整数である)
【0046】
上記R2、R3として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル、3-クロロプロピル基、3-フルオロクロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられ、これらの中でも、脂肪族不飽和結合を有しないものが好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基およびエチル基が特に好ましい。
該化合物の具体例としては、例えば、下記化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0047】
【化31】
上記の中でも、本発明において好適に使用される有機シラン化合物は、トリメトキシシラン:HS i( OCH 3 ) 3 である。
【0048】
[(e)反応性シリル基含有ビスイミド化合物]
上記アリル基含有ビスイミド化合物と、上記ケイ素原子に結合した水素原子を1個有する有機シラン化合物とを、常法により、白金系触媒の存在下に反応させることにより、(アリル基中の)ビニル基(CH2=CH-)とケイ素原子に結合した水素原子(SiH)とがヒドロシリル化反応により付加し、付加反応生成物である下記構造式(5):
【0049】
【化32】
(式中、R1、R2、R3およびnは上記と同じである)
で示される本発明の反応性シリル基含有ビスイミド化合物を得ることができる。ヒドロシリル化反応自体は、当該技術分野において周知であり、白金系触媒の使用量、反応条件等についても、通常のとおりで差し支えない。
【0050】
上記構造式(5)で示される本発明の反応性シリル基含有ビスイミド化合物の具体例としては、下記化合物が例示される。
【0051】
【化33】
【0052】
【化34】
【0053】
【化35】
【0054】
【化36】
【0055】
【化37】
【0056】
【化38】
【0057】
【化39】
【0058】
【化40】
【0059】
【化41】
【0060】
なお、上記ヒドロシリル化反応において、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH)は、専ら(アリル基中の)ビニル基(CH2=CH-)に付加するが、アリル基含有ビスイミド化合物中のシクロペンテン環内の炭素-炭素二重結合(-CH=CH-)に対しても若干付加反応が生じる場合もある。本発明の反応性シリル基含有ビスイミド化合物に、前記環内炭素-炭素二重結合への付加反応生成物が含まれる場合であっても、そのまま絶縁保護膜形成剤等として使用することができるので何ら支障はない。
【0061】
本発明の反応性シリル基含有ビスイミド化合物は、2個以上の該化合物の末端のケイ素原子に結合した基:OR3(中でもアルコキシ基、特には、メトキシ基)が縮合することにより、硬化物を与えることができる。また、前記縮合反応は室温で進行することから、作業性に優れた硬化性樹脂組成物が得られる。
上記の反応性シリル基含有ビスイミド化合物の中でも、特に室温硬化性が良好で好適に使用される化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0062】
【化42】
【0063】
【化43】
【0064】
【化44】
【0065】
また、本発明の反応性シリル基含有ビスイミド化合物は、必要に応じて、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の溶媒可溶型有機樹脂と混合して、各種基材に対する接着性が改良された樹脂組成物として使用することも可能である。更に、無溶媒型のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等へ添加して、これら無溶媒型樹脂の各種基材に対する接着性付与剤(接着助剤)としても使用可能である。
【0066】
従って、本発明の反応性シリル基含有ビスイミド化合物を含む硬化性樹脂組成物は、各種方法により各種基材、例えば半導体装置、具体的には半導体素子表面のパーシベーション膜、保護膜、ダイオード、トランジスタ等の接合部のジャンクション保護膜、VLSIのα線シールド膜、層間絶縁膜、イオン注入マスクなどの他、プリントサーキットボードのコンフォーマルコート、液晶表示素子の配向膜、ガラスファイバーの保護膜、太陽電池の表面保護膜などの幅広い範囲にわたり利用することができる。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0068】
〔実施例1〕
(1)撹拌器、温度計および窒素置換装置を具備したフラスコ内に、(b1)1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン 24.85g(0.1モル)、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン 80gおよびシクロヘキサノン 100gを仕込み、攪拌しながら、(a)無水アリルナジック酸(下記構造式:
【0069】
【化45】
で表される化合物と、下記構造式:
【0070】
【化46】
で表される化合物とを、合計で約 80モル%含有する異性体混合物)(商品名:ANAH、丸善石油化学(株)製)40.8g(0.2モル)を徐々に滴下した。滴下終了後、更に室温で 10時間撹拌し、次に、前記フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、キシレン 30gを加え、反応系を 160℃に昇温して、その温度を2時間保持した。更に、温度を 175℃まで昇温させて、その温度を4時間保持した。この反応によって生成した水分の量は 3.5gであった。
上記操作によって得られた赤褐色反応溶液を室温まで冷却後、減圧下でストリップして溶媒を除去した。
【0071】
次いで、得られた反応生成物にメチルイソブチルケトン 600gを加えて溶解した後、水(600ml)を加えて攪拌して、水洗した。その後、水相を分離して、水相の導電率を測定した。該水洗操作を、水洗後の水相の導電率が 10μS/cm以下になるまで繰り返し実施した。その後、メチルイソブチルケトン溶液から共沸脱水により水分を除去し、得られた反応溶液をメタノール中に投じて、固体生成物を析出させた後、溶媒を除去し、赤褐色の反応生成物 59gを得た。これを、ビスイミド化合物(BI-1)とする。
【0072】
このビスイミド化合物(BI-1)の赤外吸収スペクトルを、図1に示す。前記赤外吸収スペクトルから、イミド結合に由来する吸収が 1768 cm-1に、また、ビニル基に由来する吸収が 1641 cm-1に、それぞれ観測された。
ビスイミド化合物(BI-1)のNMRスペクトルを、図3に示す。前記NMRスペクトルから、ビニル基に由来するピ−クが 5.0 ppmに観測された。
これらの分析結果に基づき、ビスイミド化合物(BI-1)は、下記構造式で表される化合物(分子量:621)であることが、確認された。
【0073】
【化47】
【0074】
(2)上記ビスイミド化合物(BI-1)59g(0.095モル)をメチルイソブチルケトン 600gに再度溶解し、昇温させて共沸脱水を行った。この溶液に塩化白金酸 0.2gを加え、還流温度でトリメトキシシラン 26g(0.22モル)を滴下した。還流温度で6時間撹拌を続けた後、得られた反応溶液から過剰のトリメトキシシランを常圧蒸留により除去することにより、反応生成物溶液 164.4g(不揮発分 50%)を得た。これから、溶媒を除去して反応生成物 82.2gを得た。これを、メトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)とする。
【0075】
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)の赤外吸収スペクトルを、図2に示す。図1と対比すると、SiO結合に由来する吸収が 1086 cm-1に観測され、ビニル基に由来する吸収( 1641 cm-1)が消失していることが観測された。また、メトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)のNMRスペクトルを、図4に示す。図3と対比すると、ビニル基に由来するピーク( 5.0 ppm)が消失していることが観測された。
【0076】
これらの分析結果に基づき、メトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)は、下記構造式で表される化合物(分子量:865)であることが、確認された。
【0077】
【化48】
【0078】
〔実施例2〕
(1)実施例1(1)に記載の(b1)に代えて、(b2) 4,4'-ジアミノジフェニルメタン19.83g(0.1モル)を用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-2)48.5gを得た。
【0079】
【化49】
このビスイミド化合物(BI-2)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0080】
(2)実施例1(2)に記載のビスイミド化合物(BI-1)に代えて、上記ビスイミド化合物(BI-2)48.5g(0.085モル)を用いること、およびトリメトキシシランを 24.9g(0.20モル)用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-2MS)69.2g(0.085モル)を得た。
【0081】
【化50】
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-2MS)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0082】
〔実施例3〕
(1)実施例1(1)に記載の(b1)に代えて、(b3)下記構造式で示されるジアミン化合物:
【0083】
【化51】
28.62g(0.1モル)を用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-3)52.7gを得た。
【0084】
【化52】
このビスイミド化合物(BI-3)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0085】
(2)実施例1(2)に記載のビスイミド化合物(BI-1)に代えて、上記ビスイミド化合物(BI-3)52.7g(0.08モル)を用いること、およびトリメトキシシランを 23.4g(0.19モル)用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-3MS)72.2g(0.08モル)を得た。
【0086】
【化53】
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-3MS)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0087】
〔実施例4〕
(1)実施例1(1)に記載の(b1)に代えて、(b4)下記構造式で示されるジアミン化合物:
【0088】
【化54】
31.0g(0.1モル)を用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-4)56.6gを得た。
【0089】
【化55】
【0090】
このビスイミド化合物(BI-4)の赤外吸収スペクトルを、図5に示す。前記赤外吸収スペクトルから、イミド結合に由来する吸収が観測された。
ビスイミド化合物(BI-4)のNMRスペクトルを、図7に示す。前記NMRスペクトルから、ビニル基に由来するピ−クが 5.0 ppmに観測された。
【0091】
(2)実施例1(2)に記載のビスイミド化合物(BI-1)に代えて、上記ビスイミド化合物(BI-4)56.6g(0.083モル)を用いること、およびトリメトキシシランを 24g(0.2モル)用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-4MS)76.8g(0.083モル)を得た。
【0092】
【化56】
【0093】
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-4MS)の赤外吸収スペクトルを、図6に示す。図5と対比すると、SiO結合に由来する吸収が 1087 cm-1に観測された。また、メトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-4MS)のNMRスペクトルを、図8に示す。図7と対比すると、ビニル基に由来するピーク( 5.0 ppm)が消失していることが観測された。
【0094】
〔実施例5〕
(1)実施例1(1)に記載の(b1)に代えて、(b5)下記構造式で示されるジアミン化合物:
【0095】
【化57】
25.4g(0.1モル)を用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-5)52.2gを得た。
【0096】
【化58】
【0097】
このビスイミド化合物(BI-5)の赤外吸収スペクトルを、図9に示す。前記赤外吸収スペクトルから、イミド結合に由来する吸収が観測された。
このビスイミド化合物(BI-5)のNMRスペクトルを、図11に示す。前記NMRスペクトルから、ビニル基に由来するピ−クが 5.0 ppmに観測された。
【0098】
(2)実施例1(2)に記載のビスイミド化合物(BI-1)に代えて、上記ビスイミド化合物(BI-5)52.2g(0.081モル)を用いること、およびトリメトキシシランを 24g(0.2モル)用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-5MS)72g(0.081モル)を得た。
【0099】
【化59】
【0100】
メトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-5MS)の赤外吸収スペクトルを、図10に示す。図9と対比すると、SiO結合に由来する吸収が 1087 cm-1に観測された。また、メトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-5MS)のNMRスペクトルを、図12に示す。図11と対比すると、ビニル基に由来するピーク( 5.0 ppm)が消失していることが観測された。
【0101】
〔実施例6〕
(1)実施例1(1)に記載の(b1)に代えて、(b6)下記構造式で示されるジアミン化合物:
【0102】
【化60】
41.0g(0.1モル)を用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-6)65.7gを得た。
【0103】
【化61】
このビスイミド化合物(BI-6)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0104】
(2)実施例1(2)に記載のビスイミド化合物(BI-1)に代えて、上記ビスイミド化合物(BI-6)65.7g(0.084モル)を用いること、およびトリメトキシシランを 24g(0.2モル)用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-6MS)86.1g(0.084モル)を得た。
【0105】
【化62】
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-6MS)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0106】
〔実施例7〕
(1)実施例1(1)に記載の(b1)に代えて、(b7)下記構造式で示されるジアミン化合物:
【0107】
【化63】
36.8g(0.1モル)を用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-7)65.1gを得た。
【0108】
【化64】
このビスイミド化合物(BI-7)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0109】
(2)実施例1(2)に記載のビスイミド化合物(BI-1)に代えて、上記ビスイミド化合物(BI-7)65.1g(0.088モル)を用いること、およびトリメトキシシランを 25.7g(0.21モル)用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-7MS)86.6g(0.088モル)を得た。
【0110】
【化65】
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-7MS)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0111】
〔実施例8〕
(1)実施例1(1)に記載の(b1)に代えて、(b8)下記構造式で示されるジアミン化合物:
【0112】
【化66】
90.5g(0.1モル)を用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するビスイミド化合物(BI-8)102.2gを得た。
【0113】
【化67】
このビスイミド化合物(BI-8)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0114】
(2)実施例1(2)に記載のビスイミド化合物(BI-1)に代えて、上記ビスイミド化合物(BI-8)102.2g(0.08モル)を用いること、およびトリメトキシシランを 23g(0.19モル)用いること以外は、実施例1と同様にして、下記構造式を有するメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-8MS)121.7g(0.08モル)を得た。
【0115】
【化68】
このメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-8MS)の赤外線吸収スペクトルおよびNMRの観測結果は、実施例1に記載の観測結果と同様であった。
【0116】
[応用例1]
実施例1で得られたメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)の 50%MIBK(メチルイソブチルケトン)溶液 10gに、触媒としてテトラ-n-ブトキシチタン(テトラ-n-ブチルチタネート)0.15g、MIBK 15gを加えて硬化性樹脂組成物を調整した。得られた樹脂溶液を2〜3μmの厚さでガラス板に塗布して、48時間室温に放置して硬化させた。得られた硬化被膜について、次のとおりにして接着性および耐溶剤性を評価した。
【0117】
<接着性>
カッターを用いて硬化被膜を貫通する 100個の1mm×1mmの大きさのマス目を切り、その上にセロファンテープを貼り付けた。その後、セロファンテープを剥がして、ガラス板に残っているマス目の数を数えた。その結果、残存マス目の数は 100個であり(即ち、剥離しているマス目がない)硬化被膜の接着性は良好であった。
【0118】
<耐溶剤性>
硬化被膜に、2〜3滴のアセトンを滴下して、30分間後に被膜表面の変化を観察した。その結果、被膜表面には何らの変化がなく、硬化被膜の耐溶剤性は良好であった。
【0119】
[応用例2]
上記メトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)の 80%MIBK溶液 10gに、触媒としてテトラ-n-ブトキシチタン(テトラ-n-ブチルチタネート)0.24g、MIBK 15gを加えて硬化性樹脂組成物を調整した。
10mm×5mmのAlくし形電極を作成し、その電極表面上に、上記硬化性樹脂組成物を平均50μmの厚さに塗布し、次いで、24時間室温に放置して硬化させた。 同様にして計 200個のテストパッケージを作製した。
【0120】
このテストパッケージに、40℃、80%RHの雰囲気中で、直流電圧 5.5Vを印加して、144時間放置し、電極の腐食状態を観察した。その結果、200個のテストパッケージのうち、電極の腐食が生じているか、または、電極表面からの硬化被膜の剥離が生じている不良品の個数は0個であり、硬化被膜の電極保護膜としての信頼性は良好であった。
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、アリル基含有酸無水物と2官能性ジアミン化合物と原料とすることにより、アリル基含有ビスイミド化合物を得て、更にケイ素原子に結合した水素原子を含有する有機シラン化合物を付加させることにより、新規化合物である反応性シリル基含有ビスイミド化合物を容易に得ることができる。
【0122】
前記反応性シリル基含有ビスイミド化合物は縮合反応により硬化してイミド環を有する硬化樹脂を与えることができる。また、前記反応性シリル基含有ビスイミド化合物を用いて、作業性に優れた室温硬化性樹脂組成物を得ることができる。この室温硬化性樹脂組成物は、耐熱性、機械的強度、電気的特性に優れた硬化被膜を基材上に形成することができ、この硬化被膜は基材との接着性のみならず耐溶媒性にも優れているため、例えば電子部品等の保護膜として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたビスイミド化合物(BI-1)の赤外吸収スペクトルである。
【図2】実施例1で得られたメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)の赤外吸収スペクトルである。
【図3】実施例1で得られたビスイミド化合物(BI-1)のNMRスペクトルである。
【図4】実施例1で得られたメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-1MS)のNMRスペクトルである。
【図5】実施例4で得られたビスイミド化合物(BI-4)の赤外吸収スペクトルである。
【図6】実施例4で得られたメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-4MS)の赤外吸収スペクトルである。
【図7】実施例4で得られたビスイミド化合物(BI-4)のNMRスペクトルである。
【図8】実施例4で得られたメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-4MS)のNMRスペクトルである。
【図9】実施例5で得られたビスイミド化合物(BI-5)の赤外吸収スペクトルである。
【図10】実施例5で得られたメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-5MS)の赤外吸収スペクトルである。
【図11】実施例5で得られたビスイミド化合物(BI-5)のNMRスペクトルである。
【図12】実施例5で得られたメトキシシリル基含有ビスイミド化合物(BI-5MS)のNMRスペクトルである。
Claims (4)
- 下記構造式:
で示される反応性シリル基含有ビスイミド化合物。 - (a)下記構造式(1):
(b)下記構造式(2):
【化20】
H2N−R1−NH2 (2)
(式中、R1は請求項1に定義した通りである)
で示される2官能性ジアミン化合物とを反応させて、
(c)下記構造式(3):
で示されるアリル基含有ビスイミド化合物を得て、
次いで、該アリル基含有ビスイミド化合物と、
(d)下記構造式(4):
で示される有機シラン化合物とを付加反応させることによる、
(e)下記構造式(5):
(式中、R1、R2、R3およびnは上記と同じである)
で示される反応性シリル基含有ビスイミド化合物の製造方法。
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