JP4009516B2 - 移動通信システム、移動通信方法及び制御局 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、指向性ビーム送受信を適用する基地局(BS: Base Station)と、指向性ビーム送受信を適用しない基地局とが混在するセルラ方式による移動通信システム、移動通信方法、制御局、基地局及び移動局に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、移動通信システムにおいては、複数の基地局をセル状に配置することによりサービスエリアを面的にカバーするセルラシステムが適用されている。このセルラシステムにおいては、さらに1セルを複数のセクタに分割し、セクタ毎に基地局アンテナを設置してサービスエリアを構成するセクタセル構成が用いられる。現在の移動通信サービスでは、図9(a)及び(b)に示すように一般的に3セクタあるいは6セクタ構成が適用されている。
【0003】
上述したような従来の移動通信システムにおいて、他ユーザからの干渉電力を抑圧する技術としては、適応アンテナアレイによる指向性ビーム送受信技術がある。これは複数のアンテナを用いて送受信し、ユーザ毎に各アンテナの入力信号に適当な重み(ウエイト)を付与し、この重みに応じて合成することによりユーザ毎に独立な指向性ビームを用いて指向性送受信し、他ユーザからの干渉電力を低減するものである。
【0004】
例えば、文献”Pilot symbol-assisted decision-directed coherent adaptive array diversity for DS-CDMA mobile radio reverse link,"(S.Tanaka,M.Sawahashi,and F.Adachi: IEICE Trans. Fundamentals, vol. E80-A, pp. 2445-2454, Dec. 1997.)では、DS-CDMA(Direct Sequence Code Division Multiple Access)無線アクセス方式において、パイロットシンボルを用いるコヒーレント適応アンテナアレイダイバーシチ(CAAAD:Coherent Adaptive Antenna Array)受信法が提案されている。
【0005】
また、ユーザ毎にアンテナウエイトを生成してビームフォーミングする替わりに、あらかじめ定義した固定アンテナウエイトの複数のビームを用いて受信し、各ビームの受信信号電力を測定して受信信号電力が最も大きくなるビームのアンテナウエイトを用いて送受信を行うマルチビーム送受信方式もある。
【0006】
マルチビーム受信では、ユーザ毎にアンテナウエイトを生成して指向性受信する場合に比較して、アンテナウエイト生成のための信号処理量を低減できるものの、特にユーザが二つのビームの境界に位置する場合においてはビーム指向性誤差が大きくなるため、干渉低減効果が小さくなってしまう。
【0007】
また、文献”W−CDMA上りリンクにおける適応アンテナアレイダイバーシチ受信とマルチビーム受信の比較、”(中南,田中,井原,佐和橋:電子情報通信学会技術報告,RCS2000-132,pp.29-36,Oct.2000.)では、RACHのようなランダムアクセス信号の受信においては、ランダムアクセス信号の信号長が比較的短いために、前述のユーザ毎にアンテナウエイトを生成する指向性ビーム受信では十分にアンテナウエイトを収束させることができないため、結果としてマルチビーム受信の方が適することが報告されている。
【0008】
また、下りリンクにおいても、文献"Adaptive antenna array transmit diversity in FDD forward link forWCDMA and broadband packet wireless access,"(H.Taoka, S.Tanaka, T.Ihara, and M.Sawahashi;IEEE Wireless Communications,pp.2-10,April 2002.)のように、上りリンクで形成したビームパタンに、無線回路で生じる振幅・位相変動の補償を行った後、指向性ビーム送信を行う適応アンテナアレイ送信法がある。下りリンクにおいて指向性ビーム送信を適用することにより、同一セクタ内の他ユーザ干渉電力および他セル・他セクタからの他ユーザ干渉電力を低減することができ、従って通信容量を増大することができる。
【0009】
下りリンクにおけるチャネル構成は、大別して、各ユーザの個別の情報データを伝送するための個別チャネルと全ユーザに共通の制御データを伝送するための共通チャネルがある。図10(a)及び(b)に、適応アンテナアレイによる指向性ビーム送受信を適用する基地局BSにおける、下りリンクにおける個別チャネルおよび共通チャネルの送信ビームパタンの一例を示す。
【0010】
同図(a)に示すように、各ユーザの個別チャネルを指向性ビーム送信によりビームを絞ったビームパターンBP1及びBP2を通じて送信することにより、ユーザ間の干渉電力を低減することができる。一方、制御情報を伝送するための共通チャネルは、同図(b)に示すように、セクタ内の全てのユーザが受信できるように無指向性ビームにより送信する。
【0011】
【非特許文献1】
S.Tanaka,M.Sawahashi,and F.Adachi: IEICE Trans. Fundamentals, vol. E80-A, pp. 2445-2454, Dec. 1997.
【0012】
【非特許文献2】
中南,田中,井原,佐和橋:電子情報通信学会技術報告,RCS2000-132,pp.29-36,Oct.2000.
【0013】
【非特許文献3】
H.Taoka, S.Tanaka, T.Ihara, and M.Sawahashi;IEEE Wireless Communications,pp.2-10,April 2002.
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の基地局送信方法においては、図11に示すように、指向性ビーム送受信を適用する基地局BS1と、指向性ビーム送受信を適用しない基地局BS2とが隣接する場合において、共通チャネルを同一の送信電力で送信し、各BSのサービスエリアA1及びA2の広さはほぼ同程度としていた。
【0015】
ここで、指向性ビーム送受信の方法としては、例えば、上りリンクにおいて適応アンテナアレイ受信により各ユーザ毎にアンテナウエイトを適応的に制御して指向性ビーム受信し、下りリンクにおいては上りアンテナウエイトを用いて指向性ビーム送信する適応アンテナアレイ送受信方法、または上りリンクにおいてあらかじめ固定アンテナウエイトの複数の指向性ビームを用いて受信して受信信号電力の最も大きいビームを選択して指向性ビーム受信し、下りリンクにおいては上り受信で選択したビームを用いて指向性ビーム送信するマルチビーム送受信方法が用いられる。
【0016】
この場合、指向性ビーム送受信を適用する基地局BS1のサービスエリアA1内においては、ビーム形成による干渉抑圧効果により通信容量を増大することができるが、指向性ビーム送受信を適用しない基地局BS2のサービスエリアA2内では通信容量は増大しない。
【0017】
ここで、例えば、通信トラフィックが増大し基地局BS2のトラフィック量が容量限界まで達しているときに基地局BS2エリア内において新規ユーザが発信する場合を考える。この場合は、基地局BS1のトラフィック量が容量限界まで達していない場合においても、基地局BS2では新規のユーザと接続することができない。
【0018】
よって、従来の基地局送信方法では、エリア毎のユーザ分布に偏りがあり、指向性ビーム送受信を適用する基地局BS1の通信トラフィック需要は小さく、指向性ビーム送受信を適用していない基地局BS2の通信トラフィック需要が大きい場合においては、通信容量の制限により指向性ビーム送受信を適用していない基地局BS2における通信トラヒックが制限されてしまうという問題があった。
【0019】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、指向性ビーム送受信を適用する基地局と指向性ビーム送受信を適用しない基地局の双方において効率的にユーザを接続させることのできる移動通信システム、移動通信方法、制御局、基地局及び移動局を提供することをその目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、指向性ビーム送受信を適用する第1の基地局と、指向性ビーム送受信を適用しない第2の基地局とが隣接するエリアにおいて、移動通信を行う際に、第1の基地局のサービスエリアを拡大するか、或いは第2の基地局のサービスエリアを縮小することにより、第1の基地局のサービスエリアを第2の基地局のサービスエリアよりも広く設定する。
【0021】
なお、上記発明においては、指向性ビーム送受信は、各移動局に付与された重みに基づいて各移動局に固有の指向性ビームパターンを生成し、指向性ビームパターンを介して信号の送受信を行う適応アンテナアレイを用いることが好ましい。
【0022】
上記発明においては、第1の基地局のサービスエリアを拡大し、又は第2の基地局のサービスエリアを縮小することにより、第1の基地局のサービスエリアが、第2の基地局のサービスエリア本来のエリアに重畳させることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、指向性ビーム送受信を適用しない基地局のエリア内のユーザの一部を、指向性ビーム送受信を適用する基地局に分散して接続させることができ、指向性ビーム送受信を適用する基地局と指向性ビーム送受信を適用しない基地局の双方において効率的にユーザを接続させることができる。
【0024】
上記発明においては、エリア設定手段が設定したエリアに応じて、各基地局が送信する下り共通チャネルの送信電力を制御し、移動局側において、制御された下り共通チャネルの送信電力に基づく受信品質に応じて、接続すべきエリアを選択することが好ましい。この場合には、下り回線における送信電力を変化させることにより、移動局の接続先の基地局を、基地局や制御局側で制御することができ、上述したサービスエリアの設定を基地局や制御局側で管理することができる。
【0025】
上記発明においては、各移動局に報知すべき下り共通チャネルの送信電力の報告値を制御し、移動局において、各基地局からの下り共通チャネルの受信品質値と、報知された下り共通チャネル送信電力の報告値とに基づいて、伝搬ロスを算出し、この算出された伝搬ロスに応じて、接続すべきエリアを選択することが好ましい。この場合には、下り回線における報告値を変化させることにより、移動局の接続先の基地局を、基地局や制御局側で制御することができ、上述したサービスエリアの設定を基地局や制御局側で管理することができる。
【0026】
上記発明においては、サービスエリアを設定する際、各基地局におけるトラフィック量と、各基地局の種類とに基づいて、下り共通チャネルの送信電力を制御することが好ましい。この場合には、各基地局のトラフィック量などの通信負荷と、指向性ビーム送受信を適用しているか否かなどの情報を加味して、サービスエリアの設定を行うことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る移動通信システムの構成例を示すブロック図である。
【0028】
同図に示すように、本実施形態に係る移動通信システムは、例えばDS−CDMA方式の移動通信方式によるものであり、移動局MS1〜6と、基地局BS1〜4と、移動局MS1〜MS6及び基地局BS1〜BS4間の無線リンクの接続制御等、移動通信システム全体を制御する無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)1を備えている。
【0029】
無線ネットワーク制御装置1は、各基地局BS1〜BS4の通信処理を管理し、制御する装置であって、複数の基地局BS1〜BS4と有線伝送路により接続されている。具体的に、この無線ネットワーク制御装置1は、図2に示すように、エリア設定手段と、送信電力通知部14とを備えている。
【0030】
エリア設定手段は、指向性ビーム送受信を適用する基地局BS1のサービスエリアA1を拡大するか、又は、指向性ビーム送受信を適用しない基地局BS2のサービスエリアA2を縮小することにより、基地局BS1のサービスエリアA1を基地局BS2のサービスエリアA2よりも広く設定するモジュールであり、本実施形態では、共通チャネル送信電力決定部11と、トラフィック量測定部13と、基地局(BS)情報格納部12とから構成される。
【0031】
基地局情報格納部12は、各基地局BS1〜BS4の通信方式に関する情報を格納するデータベースであり、例えば、各基地局が、指向性ビーム送受信を適用するものであるか、適用しないものであるかを識別するBS種類の情報等を保持する。この基地局情報格納部12は、共通チャネル送信電力決定部11の要求に応じて、各基地局の情報の読み出しを行う。
【0032】
トラフィック量測定部13は、各基地局BS1〜BS4におけるトラフィック量を測定するモジュールであり、本実施形態では、共通チャネル送信電力決定部11の要求に応じて、各基地局のトラフィック量を出力する。
【0033】
共通チャネル送信電力決定部11は、各基地局BS1〜BS4が送信する下り共通チャネルの送信電力を決定するモジュールである。本実施形態において共通チャネル送信電力決定部11は、トラフィック量測定部13が測定した各基地局BS1〜BS4におけるトラフィック量と、基地局情報格納部12に格納された各基地局の種類等に関するBS情報とに基づいて、下り共通チャネルの送信電力を設定する。
【0034】
送信電力通知部14は、共通チャネル送信電力決定部11が決定した送信電力を、該当する基地局BS1〜BS4の送信電力変更部21に通知する通信装置である。なお、本実施形態では、無線ネットワーク制御装置1の送信電力通知部14と、送信電力変更部21とにより送信電力制御手段を構成している。
【0035】
複数の基地局BS1〜BS4は、セルラ構成によりサービスエリアを面的に構成する中継基地局であり、本実施形態では、各移動局MS1〜MS6に付与された重みに基づいて、各移動局MS1〜MS6に固有の指向性ビームパターンを生成し、この指向性ビームパターンを介して信号の送受信を行う適応アンテナアレイ22を備えている。
【0036】
また、各基地局BS1〜BS4は、無線ネットワーク制御装置1の送信電力通知部14から通知された送信電力通知に基づいて、下り共通チャネルの送信電力を変更する送信電力変更部21を備えている。この送信電力変更部21により、適応アンテナアレイ22の送信電力が調節される。
【0037】
また、移動局MS1〜MS6は、基地局BS1のサービスエリアA1を基地局BS2のサービスエリアA2よりも広くなるように制御された下り共通チャネルの送信電力を受信する受信部33と、受信した下り共通チャネルの送信電力に基づいて受信品質を算定する受信品質算定部31と、算定された受信品質に応じて、接続すべきエリアを選択するエリア選択部32とを備えている。
【0038】
(サービスエリアの設定)
図3は、本実施形態に係るサービスエリアの構成の一例を示す説明図である。なお、本実施形態では、移動局MS1〜MS6における下りリンク共通チャネルの受信品質値に基づいてエリア判定する場合を例として説明する。
【0039】
本実施形態では、制御局のエリア設定手段により、基地局BS1のサービスエリアA1を拡大し、又は基地局BS2のサービスエリアA2を縮小することにより、基地局BS1のサービスエリアA1が、基地局BS2本来のサービスエリアA2’に重畳されている。
【0040】
詳述すると、本実施形態では、基地局BS1のP−CPICHの送信電力を増大することにより、移動局MS1〜MS6の受信品質算定部31によって算定される共通チャネルの受信品質値(RSCPまたはEc/NO)を増大してサービスエリアを拡大している。また基地局BS2のP−CPICHの送信電力を低減することにより移動局MS1〜MS6の受信品質算定部31によって算定される共通チャネルの受信品質値(RSCPまたはEc/NO)を低減してサービスエリアを縮小している。
【0041】
この結果、基地局BS1により基地局BS2のサービスエリアの一部をカバーすることができる。この場合、元の基地局BS2のサービスエリア内のトラフィックの一部を通信容量の大きい基地局BS1により収容することができる。
【0042】
よって、元の基地局BS2のサービスエリア内に生起する新規ユーザについて、基地局BS1の新規サービスエリア内のユーザについては基地局BS1により、また基地局BS2の新規サービスエリア内のユーザについては基地局BS2により収容することが可能となる。
【0043】
なお、各サービスエリアにおける下りリンク共通チャネルの受信品質値としては、例えばP−CPICH(Primary Common PLlot CHannel)の受信信号電力RSCP(Received Signal Code Power)を用いることもできるし、Ec/NO(1チップ当たりの受信信号電力対雑音電力密度比)を用いることもできる。W−CDMA方式では、通信待ち受け時におけるエリア判定方法としてP−CPICHのEc/NOによるエリア判定を用いることができる。
【0044】
(移動通信システムを用いた移動通信方法)
次いで、上述した移動通信システムを用いた移動通信方法について説明する。図4は、本実施形態におけるセルエリア選択のフローチャートの一例を示す図である。
【0045】
まず、無線ネットワーク制御装置1のトラフィック量測定部13において各基地局BS1〜BS4におけるトラフィック量を測定する(S101)。そして、基地局情報格納部12に保持された各基地局BS1〜BS4のBS情報と、トラフィック量測定部13の測定値に基づき、無線ネットワーク制御装置1の共通チャネル送信電力決定部11において各基地局BSのP−CPICHの送信電力を決定する(S102)。
【0046】
無線ネットワーク制御装置1は、送信電力通知部14を通じて、P−CPICHの送信電力値の情報を一定周期で各基地局BS1〜BS4に通知し(S103)、基地局BSでは、送信電力通知部14により、通知された値に基づいて、適応アンテナアレイ22を通じて、P−CPICHを送信する(S104)。
【0047】
移動局MS1〜MS6では、受信品質算定部31により、各基地局BSのP−CPICHの受信品質値(RSCPまたはEc/NO)を算出し、この算出された受信品質値に基づいて、エリア選択部32が、セルエリア選択を行う(S106)。
【0048】
(作用・効果)
このように、時間的に変化するトラフィック量に応じて各基地局BSのP−CPICHの送信電力を適応的に変更してサービスエリアを制御することにより、トラフィック分布が変動する場合においても効率的にユーザを収容することが可能となり、指向性ビーム送受信を適用することによる容量増大の恩恵の一部を隣接する指向性ビーム送受信を適用しない基地局BSにも分配することができ、双方の基地局BSにおいて効率的にユーザを収容することが可能となる。
【0049】
(変更例)
なお、本実施形態では、無線ネットワーク制御装置1において各基地局BS1〜BS4におけるトラフィック量を測定し、各基地局BS1〜BS4の基地局種類の情報およびトラフィック測定結果に基づいてP−CPICHの送信電力を一定周期で適応的に制御したが、P−CPICHの送信電力の設定は、各基地局BS1〜BS4の種類情報によって予め定められた値に固定的に設定(例えば、指向性ビーム送受信を適用する基地局BS1については、下りリンク共通チャネル送信電力をXdBだけ大きい値に設定)してもよい。
【0050】
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、移動局における各基地局BSからの共通チャネル受信品質値と、報知情報で報知される共通チャネル送信電力の報告値との差によって求まる伝搬ロス値によりエリア判定を行う。
【0051】
(移動通信システムの構成)
この第2実施形態に係る移動通信システムも、上述した第1実施形態と同様に、移動局MS1〜6と、基地局BS1〜4と、移動局MS1〜MS6及び基地局BS1〜BS4間の無線リンクの接続制御等、移動通信システム全体を制御する無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)1とを備えている。
【0052】
無線ネットワーク制御装置1は、本実施形態では、図6に示すように、エリア設定手段と、報告値通知部43とを備えている。エリア設定手段は、本実施形態では、報告値決定部41と、トラフィック量測定部13と、基地局(BS)情報格納部12とから構成される。
【0053】
基地局情報格納部12は、各基地局BS1〜BS4の通信方式に関する情報を格納するデータベースであり、例えば、各基地局が、指向性ビーム送受信を適用するものであるか、適用しないものであるかを識別するBS種類の情報等を保持する。トラフィック量測定部13は、各基地局BS1〜BS4におけるトラフィック量を測定するモジュールである。
【0054】
報告値決定部41は、各移動局MS1〜MS6に報知すべき下り共通チャネルの送信電力の報告値を決定するモジュールであり、本実施形態では、トラフィック量測定部13が測定した各基地局BS1〜BS4におけるトラフィック量と、基地局情報格納部12に格納された各基地局の種類等に関するBS情報とに基づいて、下り共通チャネルの送信電力の報告値を決定する。なお、本実施形態における報告値の決定は、オフセット部42によるオフセット処理に従って行う。このオフセット処理については後述する。
【0055】
報告値通知部43は、報告値決定部41が決定した報告値を、該当する基地局の報知部51を介して移動局MS1〜MS6に報知する通信手段である。
【0056】
複数の基地局BS1〜BS4は、セルラ構成によりサービスエリアを面的に構成する中継基地局であり、本実施形態では、各移動局MS1〜MS6に付与された重みに基づいて、各移動局MS1〜MS6に固有の指向性ビームパターンを生成し、この指向性ビームパターンを介して信号の送受信を行う適応アンテナアレイ22を備えている。なお、本実施形態において、適応アンテナアレイ22の送信電力は、無線ネットワーク制御装置1から通知される固定的な値となっている。
【0057】
また、各基地局BS1〜BS4は、無線ネットワーク制御装置1の送信電力通知部14から通知された報告値を、各移動局MS1〜MS6に報知する報知部51を備えている。
【0058】
また、移動局MS1〜MS6は、報知部51からの報知情報と、適応アンテナアレイ22からの信号を受信する受信部33と、各基地局からの下り共通チャネルの受信品質値と、報知された下り共通チャネル送信電力の報告値とに基づいて、伝搬ロスを算出する伝搬ロス算出部61と、この算出された伝搬ロスに応じて、接続すべきエリアを選択するエリア選択部62とを備える。
【0059】
(サービスエリアの構成)
図7は、本実施形態に係るサービスエリア構成の一例を示す説明図である。本実施形態では、各基地局に送信される報告値を制御することにより、基地局BS1のサービスエリアA1を拡大し、又は基地局BS2のサービスエリアA2を縮小することにより、基地局BS1のサービスエリアA1が、基地局BS2本来のサービスエリアA2’に重畳されている。
【0060】
詳述すると、W−CDMA方式では、通信中におけるハンドオーバのためのエリア判定方法として伝搬ロスを用いるエリア判定が用いられている。移動通信では、基地局から送信した無線信号の移動局における受信電力は、伝搬ロスのために基地局からの距離が増大するにしたがって低減する。よって、移動局は伝搬ロスが小さい基地局を選択することにより、最も伝搬環境のよい基地局に接続する。例として、下りリンク共通チャネルとしてP−CPICHを用いて受信信号品質を測定し、また、報知チャネル(BCH:Broadcast CHannel)を用いて各基地局におけるP−CPICH送信電力の報告値を移動局MSに通知する。
【0061】
具体的には、図5(a)及び(b)に示すように、オフセット部42において、実際のP−CPICHの送信電力値からオフセット値を減算してP−CPICH送信電力の報告値とすることにより、見かけ上の伝搬ロス値を小さくすることができる。また、オフセット部42において、実際のP−CPICHの送信電力値にオフセット値を加算してP−CPICH送信電力の報告値とすることにより、見かけ上の伝搬ロス値を大きくすることができる。移動局MSでは各基地局BSの伝搬ロスに基づいてセルエリア選択を行う。
【0062】
この結果、基地局BS1により基地局BS2のサービスエリアの一部をカバーすることができる。よって、第1実施形態の場合と同様に、指向性ビーム送受信を適用することによる容量増大の恩恵の一部を隣接する指向性ビーム送受信を適用しない基地局BSにも分配することにより、双方の基地局BSにおいて効率的にユーザを収容することが可能となる。
【0063】
(移動通信システムを用いた移動通信方法)
図8は、第2実施形態におけるセルエリア選択のフローの一例を示す図である。
【0064】
まず、無線ネットワーク制御装置1のトラフィック量測定部13において、各基地局BS1〜BS4におけるトラフィック量を測定する(S201)。そして、各基地局BS1〜BS4の基地局情報とトラフィック量の測定値に基づき、無線ネットワーク制御装置1の報告値決定部41において各基地局BS1〜BS4のP−CPICH送信電力の報告値を決定する(S202)。
【0065】
無線ネットワーク制御装置1は、報告値通知部43により、P−CPICHの送信電力の報告値を一定周期で基地局BS1〜BS4に通知する(S203)。基地局BSでは、予め定められた送信電力でP−CPICHを送信する(S204)とともに、報知部51により、報知チャネルを通じて前述のP−CPICH送信電力の報告値を移動局MS1〜MS6に通知する(S205)。
【0066】
移動局MS1〜MS6では、伝搬ロス算出部61において、P−CPICHのRSCPと、報知チャネルにより通知されたP−CPICH送信電力の報告値との差分により伝搬ロスを算出し(S206)、この算出結果に応じて、エリア選択部62においてセルエリア選択を行う(S207)。
【0067】
(作用・効果)
このように、時間的に変化するトラフィック量に応じて各基地局BSのP−CPICH送信電力の報告値を適応的に変更してサービスエリアを制御することにより、トラフィック分布が変動する場合においても効率的にユーザを収容することが可能となる。
【0068】
(変更例)
なお、本実施形態において、P−CPICH送信電力の報告値の設定は、各基地局BS1〜BS4の種類情報によって予め定めた値に、固定的に設定(例えば、指向性ビーム送受信を適用する基地局BSについては、下りリンク共通チャネル送信電力の報告値をオフセット値YdBだけ小さい値に設定)したが、例えば、無線ネットワーク制御装置1において各基地局BSにおけるトラフィック量を測定し、各基地局BSの基地局BS種類の情報およびトラフィック測定結果に基づいてP−CPICH送信電力の報告値を一定周期で適応的に制御してもよい。
【0069】
例えば、無指向性ビーム送受信を適用しない基地局BS2のトラフィック量が大きい場合には、基地局BS1のP−CPICH送信電力の報告値を実際の値よりも小さい値に設定し、基地局BS2のP−CPICH送信電力の報告値を実際の値よりも大きい値に設定することにより、基地局BS1により基地局BS2のサービスエリアの一部をカバーする。
【0070】
【発明の効果】
本発明の移動通信システム、移動通信方法、制御局、基地局及び移動局によれば、指向性ビーム送受信を適用する基地局のサービスエリアを拡大して、指向性ビーム送受信を適用しない基地局エリア内のユーザの一部を指向性ビーム送受信を適用する基地局に分散して接続させることにより、指向性ビーム送受信を適用する基地局と指向性ビーム送受信を適用しない基地局の双方において効率的にユーザを接続することが可能となる。
【0071】
また、トラフィック量に応じて適応的にサービスエリアを制御することにより、トラフィック分布が変動する場合においても効率的にユーザを接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態における移動通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る無線ネットワーク制御装置、基地局、移動局の構成例を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態における、サービスエリア構成の一例を示す説明図である。
【図4】第1実施形態に係る移動通信方法の手順を示すフローチャート図である。
【図5】第2実施形態における伝搬ロスの一例を示すグラフ図である。
【図6】第2実施形態に係る無線ネットワーク制御装置、基地局、移動局の構成例を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態におけるサービスエリア構成の一例を示す説明図である。
【図8】第2実施形態に係る移動通信方法の手順を示すフローチャート図である。
【図9】従来技術におけるセクタセル構成を示す説明図である。
【図10】従来技術における下りリンクにおける送信ビームパタンの一例を示す図であり、(a)は、個別チャネルの場合であり、(b)は、共通チャネルの場合である。
【図11】従来のサービスエリア構成の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
A1,A2…サービスエリア
BS1〜BS4…基地局
MS1〜MS6…移動局
1…無線ネットワーク制御装置
11…共通チャネル送信電力決定部
12…基地局情報格納部
13…トラフィック量測定部
14…送信電力通知部
21…送信電力変更部
22…適応アンテナアレイ
31…受信品質算定部
32…エリア選択部
33…受信部
41…報告値決定部
42…オフセット部
43…報告値通知部
51…報知部
61…伝搬ロス算出部
62…エリア選択部
Claims (18)
- 指向性ビーム送受信を適用する第1の基地局と、
前記第1の基地局と隣接し、前記指向性ビーム送受信を適用しない第2の基地局と、
前記第2の基地局のトラフィック量に応じて、前記第1の基地局のサービスエリアを前記第1の基地局の本来のサービスエリアよりも拡大することによって、前記第1の基地局のサービスエリアを前記第2の基地局のサービスエリアよりも広く設定するエリア設定手段とを有しており、
前記指向性ビーム送受信は、各移動局に付与された重みに基づいて各移動局に固有の指向性ビームパターンを生成し、該指向性ビームパターンを介して信号の送受信を行う適応アンテナアレイを用いることを特徴とする移動通信システム。 - 前記エリア設定手段は、前記第2の基地局のトラフィック量に応じて、前記第2の基地局のサービスエリアを前記第2の基地局の本来のサービスエリアよりも縮小することを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
- 前記エリア設定手段は、前記第1の基地局のサービスエリアを前記第2の基地局の本来のサービスエリアに重畳させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動通信システム。
- 前記エリア設定手段が設定したエリアに応じて、各基地局が送信する下り共通チャネルの送信電力を制御する送信電力制御手段と、
前記下り共通チャネルの送信電力に基づく受信品質に応じて、接続すべきエリアを選択するエリア選択部とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移動通信システム。 - 前記エリア設定手段が設定したエリアに応じて、各移動局に報知すべき下り共通チャネルの送信電力の報告値を制御する報告値制御手段と、
各基地局からの下り共通チャネルの受信品質値と、報知された前記下り共通チャネル送信電力の報告値とに基づいて、伝搬ロスを算出し、この算出された伝搬ロスに応じて、接続すべきエリアを選択するエリア選択部とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移動通信システム。 - 各基地局におけるトラフィック量を測定するトラフィック量測定手段と、
各基地局の通信方式に関する情報を格納する基地局情報格納部と
を備え、
前記エリア設定部は、各基地局におけるトラフィック量と、各基地局の種類とに基づいて、前記下り共通チャネルの送信電力又は報告値を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の移動通信システム。 - 指向性ビーム送受信を適用する第1の基地局と、前記指向性ビーム送受信を適用しない第2の基地局とが隣接するエリアにおける移動通信方法であって、
前記第2の基地局のトラフィック量に応じて、前記第1の基地局のサービスエリアを前記第1の基地局の本来のサービスエリアよりも拡大することによって、前記第1の基地局のサービスエリアを前記第2の基地局のサービスエリアよりも広く設定するステップAを有し、
前記指向性ビーム送受信は、各移動局に付与された重みに基づいて各移動局に固有の指向性ビームパターンを生成し、該指向性ビームパターンを介して信号の送受信を行う適応アンテナアレイを用いることを特徴とする移動通信方法。 - 前記ステップAでは、前記第2の基地局のトラフィック量に応じて、前記第2の基地局のサービスエリアを前記第2の基地局の本来のサービスエリアよりも縮小することを特徴とする請求項7に記載の移動通信方法。
- 前記ステップAでは、前記第1の基地局のサービスエリアを前記第2の基地局の本来のサービスエリアに重畳させることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の移動通信方法。
- 前記ステップAで設定したエリアに応じて、各基地局が送信する下り共通チャネルの送信電力を制御し、
移動局側において、制御された前記下り共通チャネルの送信電力に基づく受信品質に応じて、接続すべきエリアを選択することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の移動通信方法。 - 各移動局に報知すべき下り共通チャネルの送信電力の報告値を制御し、
移動局において、各基地局からの下り共通チャネルの受信品質値と、報知された前記下り共通チャネル送信電力の報告値とに基づいて、伝搬ロスを算出し、この算出された伝搬ロスに応じて、接続すべきエリアを選択することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の移動通信方法。 - 前記ステップAでは、各基地局におけるトラフィック量と、各基地局の種類とに基づいて、前記下り共通チャネルの送信電力を制御することを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の移動通信方法。
- 指向性ビーム送受信を適用する第1の基地局と、前記第1の基地局に隣接しており、前記指向性ビーム送受信を適用しない第2の基地局とに接続された制御局であって、
前記第2の基地局のトラフィック量に応じて、前記第1の基地局のサービスエリアを前記第1の基地局の本来のサービスエリアよりも拡大することによって、前記第1の基地局のサービスエリアを前記第2の基地局のサービスエリアよりも広く設定するエリア設定手段とを有しており、
前記指向性ビーム送受信は、各移動局に付与された重みに基づいて各移動局に固有の指向性ビームパターンを生成し、該指向性ビームパターンを介して信号の送受信を行う適応アンテナアレイを用いることを特徴とする制御局。 - 前記エリア設定手段は、前記第2の基地局のトラフィック量に応じて、前記第2の基地局のサービスエリアを前記第2の基地局の本来のサービスエリアよりも縮小することを特徴とする請求項13に記載の制御局。
- 前記エリア設定手段は、前記第1の基地局のサービスエリアを前記第2の基地局の本来のサービスエリアに重畳させることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の制御局。
- 各基地局が送信する下り共通チャネルの送信電力を決定する送信電力決定部と、
前記送信電力決定部が決定した送信電力を、該当する基地局に通知する送信電力通知部とを有することを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の制御局。 - 各移動局に報知すべき下り共通チャネルの送信電力の報告値を決定する報告値決定部と、
前記報告値決定部が決定した報告値を、該当する基地局を介して移動局に報知する報告値通知部とを有することを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の制御局。 - 各基地局におけるトラフィック量を測定するトラフィック量測定部と、
各基地局の通信方式に関する情報を格納する基地局情報格納部とを備え、
前記エリア設定部は、各基地局におけるトラフィック量と、各基地局の種類とに基づいて、前記下り共通チャネルの送信電力を設定することを特徴とする請求項13乃至17のいずれかに記載の制御局。
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