JP4003206B2 - 熱処理装置および熱処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス基板、半導体基板、プリント基板等の板状被処理物およびその上に形成される絶縁性、導電性あるいはマスク形成用等の膜を加熱、降温する熱処理装置および熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の熱処理装置として、例えば連続炉のように、複数の熱処理ゾーンを備え、被処理物が、第1熱処理ゾーンから最終熱処理ゾーンを経て搬出されるまでの間に被処理物に対して段階的な温度変化(以下、単に熱処理という)をさせるものがある。
【0003】
なお、段階的な温度変化とは、予熱、本加熱のような複数段階加熱の他、加熱、冷却の組み合わせも含むものとする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、リフロー処理を行う際、近年環境保全の観点から、鉛を含まないはんだが用いられている。このようなはんだは酸化しやすいため、酸素濃度を低くする必要があり、N2雰囲気において処理を行うのが一般的である。しかしながら、上記、従来の熱処理装置は、連続炉であるため、被処理物搬入出口から外気が侵入するとともに、N2ガスが搬入出口から外部に漏れるので酸素濃度を低くするためにはN2ガスを炉内に大量に供給する必要があるという問題がある。
【0005】
また、上記熱処理装置においては、被処理物搬送中の振動が避けられない。このため、例えば、上記熱処理装置によって被処理物である基板に膜を焼成するさい、焼成される膜厚さが均一でなくなる、あるいは、はんだバンプを形成するさいにバンプの形状が歪んだり不揃いになったりすることがあるという問題が生じる。
【0006】
その他、熱処理装置内に設けられる搬送装置や両端開口からの熱ロスの問題、熱処理装置の大型化という問題などもある。また、搬送装置による発塵も避けられない。さらに、被処理物によっては搬送に適していない形状のものもある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、不活性ガスの使用量が少なく迅速かつ再現性よく容易に低酸素濃度で熱処理できる熱処理装置を提供することを目的とする。また、被処理物が搬送されることなく、従って被処理物の搬送による上記問題の発生することのない熱処理装置を提供することを目的とする。さらに、熱ロスが小さく小型であり、被処理物の形状によらず熱処理を高い精度で行える熱処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の熱処理装置は、熱処理室内で被処理物を熱処理する熱処理装置であって、熱処理室内を真空引きする真空引手段と、熱処理室の被処理物搬入出口を開閉する扉と、板状被処理物が載置されるとともに載置された被処理物を加熱、冷却する被処理物熱処理板と、熱処理板上の被処理物を輻射加熱する輻射加熱装置とを備え、熱処理板の内部に伸縮性を有する膜状仕切部材によって相互に離隔された流路が設けられ、輻射加熱装置と熱処理板内に異なる温度の熱媒体を流すこととで熱処理板上に載置された被処理物に熱処理を施すことを特徴とするものである。
【0009】
この熱処理装置によれば、熱処理室内に被処理物を搬入した後、扉によって搬入出口を閉じ、熱処理室内を密閉した状態で、真空引を行って処理室内の酸素濃度を低くすることができる。
【0010】
また、被処理物を搬送することなく、熱処理できるので、熱処理中に被処理物が振動することがない。そして、被処理物を搬送している間に熱処理を行うものではないので、被処理物の搬送スペースが必要でなく装置が小型になり、熱ロスが小さくなる。しかも搬送するのに適さない形状の被処理物をも高い精度で熱処理を行える。また、装置が小型であるので熱処理室を形成するために大がかりな耐圧容器や真空排気系を必要とせず、装置を安価にすることができる。
【0011】
また、本発明の熱処理方法は、熱処理室内において、伸縮性を有する膜状仕切部材によって相互に離隔された流路が内部に形成された被処理物熱処理板に載置された被処理物に対して熱処理を行う方法であって、熱処理室内を真空引きする工程と、熱処理室内に所定のガスを導入する工程と、一方の流路に流れる第1熱媒体により被処理物を温度変化させる行程と、輻射加熱装置によって被処理物を温度変化させる行程と、さらに、他方の流路へ第2熱媒体を流して被処理物を温度変化させる行程を備えているものである。
【0012】
この方法においても上記と同様の効果が得られる。
【0013】
上記熱処理装置は、雰囲気ガスなどを供給するガス供給手段および処理室内のガスを外部に排出するガス排出手段を備えているのが通常である。
【0014】
そして、ガス供給手段およびガス排出手段により形成される気流によって処理室内部の、例えばフラックス蒸気などの不要物が処理室外部に排出される。
【0015】
加熱は、熱処理板および輻射加熱装置によって行われ、また、被処理物を熱処理板によって下方から冷却して降温させることができるので、被処理物に熱風および冷風を吹き付ける必要がなく、膜やバンプの形状が歪んだり不揃いになったりすることがない。また、降温時には、被処理物側から上側に向かって膜やはんだが固まるので、ボイド等の欠陥が生成することがない。
【0016】
熱処理板としては内部が中空であり、この中空部分に1または2以上の板状仕切部材が、仕切部材に対して垂直な方向に移動自在に設けられて熱処理板内に2つ以上の流路が形成されており、一つの流路に熱媒体が流されたときに、板状仕切部材が移動して残りの流路が閉じられるものがある。
【0017】
また、他の熱処理板として内部が中空であり、この中空部分に1または2以上の膜状仕切部材が設けられ、熱処理板内に2つ以上の流路が形成され、一つの流路に熱媒体が流されたときに、膜状仕切部材が変形して他の流路が閉じられるものなどがある。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1に示された第1の実施形態の熱処理装置は、断熱壁によって形成された熱処理室(1)と、熱処理室(1)内に上下に間隔をおいて配され、熱処理室(1)内を複数、例えば、3つの熱処理空間(1a)に気密に分割している隔壁(8)と、隔壁(8)に取り付けられた遮熱板(2)と、各熱処理空間(1a)に1つ設けられた水平状被処理物熱処理板(4)と、各熱処理板(4)の上側に配されたガス供給兼輻射加熱装置(3)と、処理室(1)の前壁に上下に間隔をおいて形成された複数の被処理物搬入出口を開閉する複数の扉(5)と、処理室(1)の後壁を貫通して処理室(1)内の熱処理板(4)の周囲に開口した複数の真空引兼ガス排出管(6)とを備えている。そして、被処理物熱処理板(4)上に被処理物である基板(被処理物)(P)が配されている。なお、図示は省略したが熱処理装置の前方には公知の被処理物搬入出装置が配されており、この搬入出装置によって被処理物(P)が搬入出される。また、各熱処理空間(1a)はそれぞれ独立して熱処理を行えるようになっている。
【0020】
ガス供給兼輻射加熱装置(3)は、赤外線や遠赤外線を放射する棒状ランプや棒状ヒータなどが複数並べて収められたハウジングと、ハウジングを貫通した冷却媒体流路(3a)とを備えている。流路(3a)はバルブ(B9)(B10)を介して図示しない冷却媒体供給源に接続されている。さらに、ハウジングには図示しないガス供給管が接続されていると共に、ハウジングの下面には内部に収められた棒状ランプなどを避けて、複数のガス供給用開口があけられ、この開口からガスが供給されるようになっている。用いるガスは目的によって異なるが、通常N2や不活性ガス等が雰囲気ガスとして用いられる。
【0021】
中空熱処理板(4)内には膜状仕切部材(10)が設けられている。膜状仕切部材(10)は、伸縮性を有し、図2に実線で示したように周端が熱処理板(4)の周壁内面の高さの中央に固定されて熱処理板(4)を上下に2分割している。なお、膜状仕切部材(10)の状態は熱処理板(4)内の第1、第2熱媒体の量により変化する。
【0022】
熱処理板(4)の最下部に第1熱媒体導入管(11)と第1熱媒体導出管(12)とがそれぞれ接続されている。熱処理板(4)の最上部には第2熱媒体導入管(13)と第2熱媒体導出管(14)とがそれぞれ接続されている。なお、各管(11)(12)(13)(14)にはバルブ(B5)(B6)(B7)(B8)が設けられている。また、熱媒体導入管(11)(13)および熱媒体導出管(12)(14)はそれぞれ第1、第2熱媒体供給源に接続され、後に述べる様に熱処理板(4)内を流れた熱媒体を回収して再利用するようになっている。
【0023】
図2には、熱処理板(4)内に等量の第1、第2熱媒体が入っている状態が示されているが、膜状仕切部材(10)の状態は熱処理板(4)内の第1、第2熱媒体の量により変化する。なお、図示は省略したが、各熱媒体貯留槽と熱処理板(4)とを結ぶ配管部分は、断熱材により覆われて保温されている。
【0024】
真空引兼ガス排出管(6)は、熱処理室(1)の外部で分岐し、一方がバルブ(B1)を介して真空引ポンプに、他方がバルブ(B2)を介して排気管に接続されている。
【0025】
この熱処理装置を例えば、半導体ウェハ上に多数のはんだバンプを形成する工程ではんだリフロー装置として用いる場合について以下に述べるが、この熱処理装置によって他の熱処理を行うことも可能である。また、熱処理板(4)上にボール状のはんだ(B)が載せられた被処理物(P)を載置し、熱処理後に取り出す手順は公知のものであるので、以下、1つの熱処理空間(1a)内の熱処理板(4)上に載置された被処理物(P)にはんだリフローを施す手順について詳細に説明する。なお、独立に運転される他の空間(1a)についても同様の手順で熱処理が行われる。
【0026】
まず、被処理物(P)が熱処理空間(1a)内の熱処理板(4)に載置された後、扉(5)が閉じられて熱処理空間(1a)が密封される。そして、予め閉じられていたバルブ(B1)(B2)のうち、バルブ(B1)が開かれて真空引ポンプによって熱処理空間(1a)内が真空引きされる。熱処理空間(1a)内が、真空引きされてバルブ(B1)が閉じられた後、熱処理空間(1a)内にN2ガスが供給される。
【0027】
ついでバルブ(B5)(B7)が閉じられ、かつバルブ(B6)(B8)が開かれた状態からバルブ(B5)が開かれ、第1熱媒体導入管(11)から第1熱媒体が熱処理板(4)内に流れ込み、図2に二点鎖線で示したように、膜状仕切部材(10)が上方へと膨らむ。そして、膜状仕切部材(10)は、周壁内面の上半分、上壁内面に沿う形状となり、熱処理板(4)内が第1熱媒体によって満たされる。これによって被処理物(P)を予熱する。この後、バルブ(B5)を閉じ、輻射加熱装置(3)により被処理物(P)を本加熱する。リフロー時には、図2中に二点鎖線で示したようにガス供給兼輻射加熱装置(3)によって上方中央部分から予熱されたN2ガスが供給される。このさい、バルブ(B1)は既に閉じられており、バルブ(B2)が開かれて熱処理板(4)の側方周囲の真空引兼ガス排出管(6)からガスが排出される。そして、図2中に実線で示すように、リフロー時に発生したフラックス蒸気は、ガスの気流に乗って熱処理板(4)の側方周囲のガス排出管(6)からガスとともに排出されるので熱処理空間(1a)内は常にクリーンに保たれる。なお、図2中には輻射加熱装置(3)からの輻射熱の流れが破線で示されている。
【0028】
つぎに、輻射加熱をやめ、同時にバルブ(B7)を開く。そして、第2熱媒体が熱処理板(4)内に流れ込む。このさい、既にバルブ(B5)は閉じられ、熱処理板(4)内の第1熱媒体には圧力がかかっていないので、第2熱媒体が熱処理板(4)内に流れ込むにつれて第1熱媒体が熱処理板(4)の外部へと押しやられ、膜状仕切部材(10)は下方へと膨らむ。そして、膜状仕切部材(10)は、周壁内面の下半分、下壁内面に沿う形状となり、熱処理板(4)内が第2熱媒体によって満たされる。このようにして被処理物(P)が所定温度に降温される。
【0029】
なお、輻射加熱装置(3)を冷却することにより被処理物(P)の冷却をいっそう早めることができる。さらに、次の処理の初期条件を一定にできるので処理の再現性を高めることができ、均一な処理を高いスループットで行うことができる。また、この熱処理装置は、真空パージ式であるため、被処理物(P)の処理に要するサイクルタイムが短くなる。
【0030】
第1、第2熱媒体は使用温度によって適宜選択すればよい。加熱時間および降温時間も適宜選択すればよい。降温ははんだが流動しなくなった後であれば冷風によって行ってもよい
また、熱処理板(4)は熱伝導性のよい材料製であることが好ましい。具体的には、アルミニウム製や銅製などがよい。
【0031】
本発明の熱処理装置は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、適宜変更自在である。例えば、各バルブの開閉のタイミングと輻射加熱装置のオン、オフのタイミングとは、必ずしも上記のようには限定されず、目的により逐次最適なタイミングの組み合わせを選択すればよい。また、ガス供給管、ガス排出管の構成や熱処理板の構成も上記に限定されないことはもちろんである。例えば、ガス供給管が輻射加熱装置とは別に設けられていてもよいし、複数系統のガス供給管が設けられていてもよい。また、真空引管はガス排出管と共通としてもよいし、ガス排出管と別に設けてもよい。
【0032】
さらに、第1と第2の熱媒体の流路を入れ替えてもよい。また輻射加熱装置により加熱した後に、2段階に降温することもできる。従って本発明の装置は、第1熱媒体および第2熱媒体の温度を適宜選択することによって被処理物を段階的に加熱することや加熱および冷却を組み合わせた熱処理を行うことができる。
【0033】
すなわち、上記の様に2段階加熱の後に降温するだけでなく、例えば3段階に加熱することもできる。特に内部を多分割された熱処理板においては、熱媒体が混ざること無く多段階の熱処理ができる。さらには、熱処理装置は、はんだリフローのみならず、各種基板および基板表面に形成された各種の膜の熱処理にも利用できる。
【0034】
なお、熱処理板内の流路は2つ以上であればよく、上記実施形態のように流路が2つのものには限定されない。また、実施形態で熱処理空間の数を3としたのは説明の便宜のためであってそれ以外の理由はない。なお、熱処理板によって行われる熱処理は熱媒体の温度によって定められるものであり、加熱、降温のいずれをも行うことができる。また、このように熱処理空間を上下に複数設ければ複数の被処理物を一度に処理できかつ設置面積の少ない熱処理装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態における熱処理装置の断面図である。
【図2】同熱処理装置の熱処理板周辺部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
(1) 熱処理室
(3) ガス供給兼輻射加熱装置
(4) 熱処理板
(5) 扉
(6) 真空引兼ガス排出管(真空引手段)
(P) 被処理物(基板)
Claims (2)
- 熱処理室内で被処理物を熱処理する熱処理装置であって、熱処理室内を真空引きする真空引手段と、熱処理室の被処理物搬入出口を開閉する扉と、板状被処理物が載置されるとともに載置された被処理物を加熱、冷却する被処理物熱処理板と、熱処理板上の被処理物を輻射加熱する輻射加熱装置とを備え、熱処理板の内部に伸縮性を有する膜状仕切部材によって相互に離隔された流路が設けられ、輻射加熱装置と熱処理板内に異なる温度の熱媒体を流すこととで熱処理板上に載置された被処理物に熱処理を施すことを特徴とする熱処理装置。
- 熱処理室内において、伸縮性を有する膜状仕切部材によって相互に離隔された流路が内部に形成された被処理物熱処理板に載置された被処理物に対して熱処理を行う方法であって、熱処理室内を真空引きする工程と、熱処理室内に所定のガスを導入する工程と、一方の流路に流れる第1熱媒体により被処理物を温度変化させる行程と、輻射加熱装置によって被処理物を温度変化させる行程と、さらに、他方の流路へ第2熱媒体を流して被処理物を温度変化させる行程を備えていることを特徴とする熱処理方法。
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