JP4002688B2 - 酒類の味評価方法 - Google Patents

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  • Distillation Of Fermentation Liquor, Processing Of Alcohols, Vinegar And Beer (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は酒類の味評価方法に係るものである。特に前記酒類がビール風味の麦芽発泡酒またはその他のビールであり、また特に前記味が濃醇性、キレである評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビール(ビール風味の麦芽発泡酒を含む、以下同じ)の「味」、または「おいしさ」は人間の感覚であり、ビールの味を定めるにあたっては、種々のビールを試作して、試作したビールを被験者に試飲させることで被験者に形成される味覚(より詳しくは、「味」、または「おいしさ」)を、例えば「苦みの強度や残存性」、「渋みの強度や残存性」、さらには「濃醇さ」、「キレ」等の感覚に関する各評価項目毎に評価させる所謂官能評価を行って、ビールの「味」、「おいしさ」を評価することが一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記官能評価は被験者の主観によって結果が左右されるので、官能評価に基づくビールの「味」、「おいしさ」の評価結果に対する信頼性が低いという問題があった。特に、前記評価項目のうち、「濃醇さ」、「キレ」はビールの「おいしさ」にとって極めて重要なファクターでありながら、被験者の主観による前記官能試験に基づく評価法のみ行われてきた。かかる官能試験に基づく評価法によるならば、ビールの「おいしさ」の評価について定量化の精度が不十分であること、個々の被験者の好みや評価基準等の心理的尺度のばらつきが考慮され難いこと等の問題がある。
【0004】
近年の発泡酒市場の拡大等を考えるに、前記「濃醇さ(コク)」、「キレ」が発泡酒を含めたビールの「おいしさ」を評価する上でますます重要な役割を演じるものと思われ、被験者の主観に依存しないより客観的(物質レベルでの測定評価に基づく)な評価法の開発が強く望まれる。本発明は上記事実を考慮して成されたもので、ビールを飲んだ際の人間の感じる味感覚を精度よく定量化することが可能なビールの味評価方法を得ることが目的である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係るビールの味評価方法は、ビール中の特定の成分若しくは複数の成分による特定の脂質膜への吸着の程度(吸着能)を測定し、前記測定した吸着能(吸着量として)を、人が対象とするビールを飲んだ際のビールの「味」または「おいしさ」の官能評価と対応付けて、人が対象とするビールを飲んだ際のビールの「味」または「おいしさ」を定量化して評価するものである。
【0006】
より具体的には、本発明にかかる方法は、特定の酒類中の成分の、特定の脂質膜への吸着能を測定することにより、該酒類の濃醇性、キレを評価するものである。
【0007】
さらに、本発明にかかる方法は、前記酒類が、ビール風味の麦芽発泡酒またはその他のビールであることを特徴とするものである。
【0008】
さらに、本発明にかかる方法は、前記酒類中の成分の脂質膜への吸着能を、水晶発振子をデバイスとした脂質膜センサーを用いて測定することを特徴とするものである。
【0009】
以下、本発明にかかる方法を、発明の実施の形態に即してさらに詳細に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるビールの味評価方法は、(I) ビール中の特定の成分若しくは複数の成分による特定の脂質膜への吸着の程度(吸着能)を測定し、(II)人が対象とするビールを飲んだ際のビールの「味」または「おいしさ」につき官能評価し、さらに、(III)前記(I)で測定した吸着能(吸着量として)を、前記(II)で評価した、人が対象とするビールを飲んだ際のビールの「味」または「おいしさ」の官能評価と対応付けて、人が対象とするビールを飲んだ際のビールの「味」または「おいしさ」を定量化して評価するものである。
【0011】
ここで、本発明により評価されるビールには、種々の原料から製造ビールのみみならず、ビール風味の麦芽発泡酒またはその他の種類のビールも含まれる。具体的には、全麦芽使用ビール、副原料使用ビール、黒ビールその他のビール、さらに発泡酒を含むものである。
【0012】
また、本発明により吸着能が測定されるビール中の成分は特に制限されない。また、該成分が単一でも複数の組み合わせでもよい。さらに該成分の化学構造が特に知られている必要はなく、従来公知の種々の成分を適宜選択することが可能である。具体的には、以下説明するセンサーを構成する特定の脂質膜の物理化学的諸性質との組み合わせに基づき、前記官能評価結果との相関が大きいものを選択することが可能である。
【0013】
本発明において使用可能な脂質膜センサーに用いる脂質膜についても特に制限はなく、従来公知の種々の脂質膜が適宜選択可能である。該脂質は、天然物由来であっても、合成脂質であってもよい。さらに、該膜の構造についても特に制限はない。吸着される物質の物理化学的性質(例えば疎水性等)に基づき、好ましい構造を有する脂質成分を選択し、センサー表面に脂質膜を形成することは当業者にとって容易である。
【0014】
本発明において使用可能な脂質膜センサーとしては、従来公知の電位計測型センサー又は水晶発振子をデバイスとしたセンサーが好ましく使用可能である。本発明においては、特に水晶発振子をデバイスとしたセンサーの使用が好ましい。また、必要ならば、両方法の兼用の可能である。
【0015】
水晶発振子をデバイスとした膜センサーは、特定の成分がセンサー表面に形成された脂質膜へ吸着することによる発振振動数の変化を計測するセンサーである。具体的には、前記センサーとしては、公知のものが好ましく使用できる(Y.Okahata and H.Ebato, Anal.Chem. 1991, 63, 203-207)。また、種々のタイプの市販品も好ましく使用できる(例えば、相互薬工(株)より「苦味センサー」として販売されている)。本センサーは、有機化合物が脂質膜に吸着(疎水結合)することで変化する脂質膜の振動数を計測することで吸着量を予測するもので、1ngの膜への吸着で振動数が約1Hz減少するとされている。また、このセンサーは、電位計測型センサーと異なり、水素イオンや水酸イオン等の膜に吸着しない無機化合物(pH)の影響を受けず、脂質膜に吸着した量のみを計測できるものである。
【0016】
本発明において使用可能な官能評価方法についても特に制限はなく、好ましい精度、相関性に基づいて、種々の公知の方法が使用可能である。また、被験者の熟練度の差、被験者の属するグループ間の差等を考慮して、その数、若しくは評価項目の選択が可能となる。
【0017】
具体的には、心理学(精神物理学)の世界での官能評価における感覚尺度として知られているカテゴリースケール、マグニチユードエスティメーション、ラベルドマグニチュードスケールが挙げられる(Green,B.etal., Chemical Senses,18,683(1993))。カテゴリースケールによる評価法においては、言葉(濃醇で丸みがある、濃醇である、濃醇さヤヤ不足、淡白、非常に淡白)を5,4,3,2,1と定義して用いることがあるが、本来この数は数値ではなく(記号と同じようなもの)、得られたデータを数学的に解析する(平均値、標準偏差、相関係数等)には、言葉の代わりに用いた数の間隔が数学的に正しいこと(1.0と2.0、2.0と3.0、3.0と4.0、4.0と5.0の間隔が等間隔であること)を証明する必要がある。また、ラベルドマグニチュードスケールにおいても言葉と強度値を一致させる必要があるためかなりの時間被験者の教育が必要となる。一方、マグニチュードエスティメーションは、言葉の定義がないため、得られた数値をそのまま統計的に処理できもっとも容易に導入できる。ただし、感覚強度を言葉で定義していないため、被験者問の誤差等が大きくなる。
【0018】
なお、被験者間の誤差については、繰り返し行うことにより、正規分布に近づけ、統計学的処理を行うことが好ましい(例えば以下の実施例では、各ビール4回の繰り返し評価値の平均値を取ったが、標準備差は0.5以下であった)。さらに繰り返し実験回数を増やすことで、より信頼性の高い評価値が得られる。
【0019】
本発明においては、ビール中の特定の成分若しくは複数の成分による特定の脂質膜への吸着の程度(吸着能)と、人が対象とするビールを飲んだ際のビールの「味」または「おいしさ」の官能評価(例えば濃醇さ、キレ)との対応付ける方法においても特に制限はなく、複数のファクター間の相関性を評価する方法であれば適用可能である。具体的には通常公知種々の統計学的取り扱いが可能である。
【0020】
本発明にかかる方法により評価可能となるビール等の「味」または「おいしさ」についての評価項目は特に限定されない。具体的には「濃醇性(コク)」、「キレ」を評価するものである。ここで、一般の食品における濃醇性(コク)に対する概念は、雑味から、喉越しのインパクト、広がり、味の深み、(複雑さ、まろやかさ)、持続性、厚み、濃厚感、重み、まったり、こってりまでが連続的な広がりをもつもので、これを引き起こす要因として酸味と苦味、うま味、甘味、脂っこさ、とろみ(粘度)が、それぞれ雑味、複雑さ、まろやかさ、こってり・まったりと深い関係を持つことが示されている。一方、キレは構造要因を十分に解析されたわけではないが主にビール業界が用いている官能評価項目である(山口静子、日本味と匂い学会誌、4、515(1997);橋本直樹、New Food Industry Vol.35, No.1 (1993))。
【0021】
また、本発明にかかる方法による評価は必ずしも飲んだ一定の時間後のビール等の「味」または「おいしさ」評価するだけでなく、飲んだ直後から飲んだ後一定の時間が経過した場合の経時的(過渡的)な「味」または「おいしさ」の変化をも評価可能とするものである。
【0022】
さらに、本発明にかかる方法を用いることにより、前記官能評価を、複数の被験者、或いは複数種の対象とするビール等について行って、ビール等の「味」、「おいしさ」の心理的尺度が類似している被験者のデータ毎、又はビール中の特定の成分若しくは複数の成分による特定の脂質膜への吸着の程度(吸着能)が類似しているデータ毎にグループ分けすることも可能である。この場合各グループ毎にビール等の「味」、「おいしさ」の心理的尺度を行うことにより、高い精度で定量化することも可能となる。
また、本発明にかかる方法を用いて、ビール、発泡酒、国内外ブランド、全麦芽ビール、副原料使用ビール、黒ビール等様々なタイプを混合して官能評価するのみならず、同一タイプ、同一ブランドの工場間差等の官能評価も可能となる。
【0023】
さらに、本発明にかかる方法を用いることにより、濃醇さとキレがどのようにビールの味と関係があるのかを知ることが可能となる。すなわち、ビールの濃醇さ、キレを客観的に評価するために、脂質膜への吸着性が一つの指標となり得る。
【0024】
また、特定の脂質膜(例えばより生体膜に近い脂質膜)センサーを用いることで、特定の各成分がビールの味、テクチヤーに与える役割をより詳細に明らかにすることも可能となる。
【0025】
また、濃醇さ、キレの機構をより詳細に検討するために、脂質膜への吸着性のみではなく、一旦脂質膜に吸着したビール中成分の脱着性に関しても検討することが可能となる。
【0026】
また、本発明による方法により、ビールの脂質膜への吸着性と他の評価項目である苦味の残存性との相関性を評価することが可能となる。従って、苦味の受容機構(疎水結合の関与)の解明と、ビールの苦味質(苦味の残存性)評価に使用し得る。
【0027】
以下、本発明を実施例に即してより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されることはない。
【0028】
【実施例】
(実施例1)官能評価方法:
「濃醇さ」、「キレ」はビールのおいしさにとって極めて重要なファクターであるビールの「濃醇さ」、「キレ」について統計処理可能な官能評価方法を以下のようにして確立した。すなわち、味的側面からビールの濃醇さ、キレを評価するため、通常の試飲に加えて、味的側面から濃醇さ、キレを評価するためノーズクリップ(水泳用鼻栓)を用いた試飲を平行して行った(山本等、J.Brew.Soc.Japan.Vol.85,No.5, p.341-344(1990))。評価項目は、「濃醇さ」、「キレ」および、それらと関係があると思われる「苦味(強度、残存性)」、「渋味(強度、残存性)」とした。
【0029】
上の評価方法により、国内外15ブランド(350mL)種類のビール、発泡酒(発泡酒としてA、B、C、D、E;全麦芽ビールとしてF、G、H;副原料使用ビールとしてI、J、K、L,M;黒ビール、その他としてN、O)について官能評価した。図1には、実施例で使用した官能評価用マグニチュードエスティメーションを示した。また、図2には、実施例で使用した官能評価シートを示した。濃醇さ、キレに加え、濃醇さ、キレに影響を与えると考えられる苦味強度、苦味の持続性、渋味強度、渋味の持続性も評価した。評価は、0〜5.0をマグニチュードエスティメーションで評価した。
【0030】
パネルは10名とした。表1に示すように、今回用いたビールの苦味強度評価値はビール中イソフムロン含量との間に高い相関を示しており、パネル能力が十分なレベルに達していることを確認した。また、統計解析方法として、平均値、標準偏差値、相関係数を求めた(以下同じ)。
Figure 0004002688
一回の官能評価で6種類のビールを評価した。まずノーズクリップ法で6種類のビールを評価した後、ノーズクリップをはずして通常法で同じビール6種類を評価した。データの統計解析は、表計算プログラム(マイクロソフト社製、エクセル、バージョン7.0)を用いた。
結果を表2に示したが、各ビールのノーズクリップ法による評価(味、テクスチヤーのみの評価)と通常法による評価(香りも含めた評価)との間には、今回行った全ての評価項目において高い相関が得られた。
(表2)各種ビール、発泡酒の官能評価におけるノーズクリップ法と通常法との関係
----------------------------------------------
キレ 0.921**
能醇さ 0.972**
苦味強度 0.979**
苦味残存性 0.985**
渋味強度 0.932**
渋味残存性 0.933**
----------------------------------------------
** p<0.01 n=15
一回の試飲において同時に2つの評価方法で試飲したため、各パネルの評価中の心理がある程度影響を及ぼしている可能性はあるが、濃醇さ、キレ評価に味的要因からの寄与が働いていることが推察された。
【0031】
今回用いた各ビールの濃醇さ、キレ、苦味強度、苦味の残存性、渋味強度、渋味の残存性の関係について検討した結果を表3、表4、および図3(a)、(b)に示した。表3、表4から、濃醇さとキレとは、ノーズクリップ法、通常法共に負の相関を示すことが示された。また、濃醇さは、苦味強度、苦味の残存性、渋味強度、渋味の残存性と正の相関を示した(図3)。
【0032】
この結果から、これらの味がビールの味に深み(複雑さ)、広がり、厚み等を与え濃醇さの評価を高める1つの要因となっていることが推察された。
【0033】
一方、キレはこれらの官能評価値と負の相関を示した。この結果から、今回用いたビールに関しては、濃醇さとキレが両立していないことが推察された。
(表3)各種ビールのノーズクリップ官能評価におけるキレ、濃醇さに及ぼす要因
n=15 キレ 濃醇さ
----------------------------------------------------
キレ 1.000 -
濃醇さ -0.910** 1.000
苦味強度 -0.829** 0.953**
苦味残存性 -0.836** 0.935**
渋味強度 -0.914** 0.973**
渋味残存性 -0.914** 0.947**
-----------------------------------------------------
** p<0.01
(表4)各種ビールの通常官能評価におけるキレ、濃醇さに及ぼす要因
n=15 キレ 濃醇さ
---------------------------------------------------------
キレ 1.000 -
濃醇さ -0.927** 1.000
苦味強度 -0.840** 0.951**
苦味残存性 -0.850** 0.955**
渋味強度 -0.820** 0.906**
渋味残存性 -0.811** 0.895**
---------------------------------------------------------
** p<0.01
(実施例2)脂質膜への吸着:
ビール中の成分の生体膜への吸着能(吸着量)を評価するため、水晶発振子をデバイスとした脂質膜センサーを用いてビールの脂質膜への吸着性(疎水結合性)計測(ビールの脂質膜への吸着性測定条件)を行った。
【0034】
すなわち、室温(25〜27℃)で、蒸留水96mLを入れた容器(官能評価用グラスを用いた)に、脱気したビール4mLを添加し、添加直後からの脂質膜へのビール成分の吸着量を水晶発振子による振動数の変化量として計測した。ここで、添加30秒間の振動数の増加量を各ビールの疎水膜への吸着能とした。測定したビール、発泡酒は、国内外15ブランド(350mL)(発泡酒としてA、B、C、D、E;全麦芽ビールとしてF、G、H;副原料使用ビールとしてI、J、K、L,M;黒ビール、その他としてN、O)を用いた。脂質膜への吸着性計測には、水晶発振子をデバイスとした脂質膜センサー(相互薬工(株)製、SF-105W)を用いた。
【0035】
通常のビール温度は5〜10℃、口腔内は35〜37℃であり、実際にビールを飲んだ際の温度変化を考慮に入れた計測条件を設定するのは困難であること、また、前記センサーは温度変化に敏感であることを考慮し、計測中の測定溶液の温度変化は避ける目的で、水槽中に計測容器を入れて実験室にて計測した(温度24℃〜27℃(室温とする))。実際、図4から、本センサーは計測温度が高いほどよりビール成分がより多く吸着することがわかる。
【0036】
ビールの添加量については、蒸留水にビールを終濃度として1.0〜4.0%添加して振動数の変化を測定したところ、4%以上で再現性の良い振動数の上昇カーブが得られた。これ以上の添加は、添加直後の振動数が大きく乱れ、また、センサー膜の寿命短縮の可能性も認められた。
【0037】
ビール添加の方法としては、図5で測定装置の概略が示されるように、蒸留水96mlにセンサーを挿入し、30秒間振動数の安定を確認した後、5ml用ピペットマンを用いて、脱気したビール4.0mlを添加した。得られた振動数の変化はパーソナルコンピューターを用いて、添加30秒前から添加後4分まで計測した。
【0038】
図6(a)および(b)に、ビール添加直後から10秒、20秒、30秒、40秒後の振動数の増加量を各ビール5回繰り返し計測した平均値のプロットを示した。図に 示されていないが、脂質膜への吸着の初速度を測定した場合、ビール添加直後に振動数の乱れが見られ、添加直後から20秒間は良好な再現性が得られなかった。従って、添加後30秒間の振動数の変化(減少)の平均値(5×5回)をそのビールの脂質膜への吸着能とした。表5に得られた結果をまとめた。
Figure 0004002688
この結果から、国内ビール、発泡酒においては、発泡酒<副原料使用ビール<全麦芽ビールの順に、麦芽使用比率に比例して脂質膜への吸着能が増大することが明らかとなった。また、全麦芽ビール、副原料使用ビール、発泡酒のそれぞれの群では、各ビール問の差が誤差範囲内となるものが見られた。
【0039】
さらに、濃醇さ、キレ機構を検討するため、一旦脂質膜に吸着したビール中成分の脱着性について検討した。図7には3種類のビール(C、J、H)の脱着性を振動数の経時変化として計測した結果を示す。
(実施例3)脂質膜への吸着と官能評価との対応付け:
(実施例1)で得られたビールの濃醇さ、キレに対する官能評価結果と、(実施例2)で得られたビールの脂質膜への吸着能との対応を検討した。
【0040】
ビール、発泡酒は、以下の国内外15ブランド(350mL)(発泡酒としてA、B、C、D、E;全麦芽ビールとしてF、G、H;副原料使用ビールとしてI、J、K、L,M;黒ビール、その他としてN、O)を用いた。官能評価の結果は、(実施例1)で得られた結果を用いた。脂質膜への吸着能は、(実施例2)で得られた結果を用いた。データの統計解析は、マイクロソフト社 エクセル(バージョン7.0)を用いた。得られた結果を表6にまとめた。
Figure 0004002688
図8(a)、(b)の結果から、ノーズクリップ法、通常法共に、ビールの脂質膜への吸着能は、濃醇さと正の相関を有することが示された。また、図9(a)、(b)の結果から、ノーズクリップ法、通常法共に、ビールの脂質膜への吸着能は、キレと負の相関を有することが示された。
【0041】
同様に、表6より、ノーズクリップ法、通常法共に、ビールの脂質膜への吸着能は苦味強度、および苦味の残存性と正の相関を有することが示された。また、同様に、ノーズクリップ法、通常法共に、ビールの脂質膜への吸着能は渋味強度、および渋味の残存性と正の相関を有することが示された。
【0042】
以上得られた結果からビールのキレが悪くなったり、濃醇さが増大するのは、ビール中成分が口腔内(舌、喉等)の生体膜に付着することで味刺激(鼓索神経系刺激等)や、触刺激(三叉神経系刺激)が持続、増大する結果であることが推察される。すなわち、ビールの濃醇さ、キレを客観的に評価するために、脂質膜への吸着性が一つの指標となりうることが明らかとなった。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は酒類、特にビール中の特定の成分若しくは複数の成分による特定の脂質膜への吸着の程度(吸着能)を測定し、前記測定した吸着能(吸着量として)を、人が対象とする酒類、特にビールを飲んだ際の酒類、特にビールの「味」または「おいしさ」の官能評価と対応付けて、人が対象とする酒類、特にビールを飲んだ際のビールの「味」または「おいしさ」を定量化して評価するようにしたので、人が酒類、特にビールを飲んだ際に、その酒類、特にビールの味(特に濃醇さ、キレ)を客観的に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で使用した官能評価用マグニチュードエスティメーションを示す図である。
【図2】実施例1で使用した官能評価シートを示す図である。
【図3】 (a)は各種ビール、発泡酒のノーズクリップ法を用いた場合の官能評価におけるキレと濃醇さとの関係を示す図である。(b)は各種ビール、発泡酒の通常法を用いた場合の官能評価におけるキレと濃醇さとの関係を示す図である。
【図4】ビールの脂質膜への吸着カーブの温度依存性を示す図である。(a)は25.5℃での結果を、また、(b)は35℃での結果を示す。ここで正の振動数変化(ΔF(Hz)値)が大きい程(縦軸の上方向)、振動数(Hz)がより減少することを表す。
【図5】実施例2で用いた本発明にかかる方法を実施した装置を示す図である。
【図6】ビールの脂質膜への吸着性を示す図である。ここで(a)は、A、I、C、J,Mによるデータを示す。また、(b)は、O、I、D、J、Mによるデータを示す。ここで正の振動数変化(ΔF(Hz)値)が大きい程(縦軸の上方向)、振動数(Hz)がより減少することを表す。
【図7】ビールの脂質膜への吸着、脱着カーブを示す図である。ここで正の振動数変化(ΔF(Hz)値)が大きい程(縦軸の上方向)、振動数(Hz)がより減少することを表す。
【図8】各種ビール、発泡酒の脂質膜への吸着能と官能評価による濃醇さとの関係を示す図である。ここで(a)はノーズクリップ法を用いた場合の結果を示し、(b)は通常法を用いた場合の結果を示す。
【図9】各種ビール、発泡酒の脂質膜への吸着能と官能評価によるキレさとの関係を示す図である。ここで(a)はノーズクリップ法を用いた場合の結果を示し、(b)は通常法を用いた場合の結果を示す。

Claims (1)

  1. 酒類の脂質膜への吸着能を測定することにより、該酒類の濃醇性および/又はキレを評価する方法であって、
    ビール風味の麦芽発泡酒又はビールを対象として、それぞれの酒類中の成分の脂質膜への吸着量を測定し、前記吸着量が多い方の酒類を濃醇性の強い酒類であると評価し、前記吸着量が少ない方の酒類がキレの強い酒類であると評価する、方法。
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