以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態による光走査型タッチパネル(以下、本発明装置と言う)の基本構成を示す模式図である。
図1において参照符号10は、パーソナルコンピュータ等の電子機器におけるCRTまたはフラットディスプレイパネル(PDP,LCD,EL等),投射型映像表示装置等の表示画面であり、本発明装置におけるタッチ対象として規定された平面である。なおこの表示画面10は本実施の形態では、横方向92.0cm×縦方向51.8cmで対角105.6cmの表示寸法を有するPDP(プラズマディスプレイ)の表示画面として構成されている。後述するように第1の座標面となるこの長方形の表示画面10の一つの短辺(本実施の形態では右側の辺)の両隅の外側には、発光素子,受光素子,ポリゴンミラー等を含む光学系を内部に有する光送受ユニット1a,1bがそれぞれ設けられている。また、表示画面10の右側の辺を除く3辺、つまり、上下両側の辺及び左側の辺の外側には再帰性反射シート7が設けられている。これらの部品は筐体の前面側に設置されている後述する庇状の遮蔽体51により遮蔽された状態で配置されている。
なお、参照符号70は光遮蔽部材である。この光遮蔽部材70は、両光送受ユニット1a,1b相互間で光が直接入射されないように、具体的には光送受ユニット1aから投射された光が光送受ユニット1bへ入射されないように、また逆に光送受ユニット1bから投射された光が光送受ユニット1aへ入射されないように、両光送受ユニット1a,1bを結ぶ線上に設けられている。またこの光遮蔽部材70は、光の反射率が実用上”0”である物体で、再帰性反射シート7の高さとほぼ同じ程度の高さに構成されている。
また、参照符号Sは遮断物(指示物)としての人の指の断面を示している。
図2は、光送受ユニット1a,1bの内部構成及び光路を示す模式図である。両光送受ユニット1a,1bは、赤外線レーザを出射するレーザダイオードからなる発光素子11a,11bと、発光素子11a,11bからのレーザ光を平行光にするためのコリメータレンズ12a,12bと、再帰性反射シート7からの反射光を受光する受光素子13a,13bと、受光素子13a,13bへ入射される表示画面,照明灯等からの外部光の可視光成分を遮断する可視光カットフィルタ14a,14bと、反射光を受光素子13a,13bに導くためのハーフミラー15a,15bと、発光素子11a,11bからのレーザ光を角的に走査するための本実施の形態では4角形のポリゴンミラー16a,16bと等を有する。
発光素子11a,11bから出射されたレーザ光は、コリメータレンズ12a,12bにて平行光にされてハーフミラー15a,15bを透過した後、ポリゴンミラー16a,16bの回転によって表示画面10と実質的に平行である面内を角的に走査されて再帰性反射シート7に投射される。そして、再帰性反射シート7からの反射光が、ポリゴンミラー16a,16b及びハーフミラー15a,15bにて反射された後、可視光カットフィルタ14a,14bを通ることにより可視光がカットされ、受光素子13a,13bへ入射される。但し、投射光の光路に遮断物(指示物)が存在する場合には投射光が遮断されるため、反射光は受光素子13a,13bへ入射されることはない。なお、ポリゴンミラー16a,16bの回転により、90度以上のレーザ光の角的走査が実現される。
各光送受ユニット1a,1bには、発光素子11a,11bを駆動する発光素子駆動回路2a,2bと、受光素子13a,13bの受光量を電気信号に変換する受光信号検出回路3a,3bと、ポリゴンミラー16a,16bの動作を制御するポリゴン制御回路4とが接続されている。また、参照符号5は指,ペン等の遮断物(指示物)Sの位置,大きさを計測演算すると共に、装置全体の動作を制御するMPUであり、6はMPUでの計測結果等を表示する表示装置である。
このような本発明装置においては、図1に示されているように、たとえば光送受ユニット1bに関して説明すると、光送受ユニット1bからの投射光は、まず光遮蔽部材70により遮蔽される位置から図1上で反時計方向回りに走査され、再帰性反射シート7の先端部分で反射される位置(Ps)に至って走査開始位置になる。そして、遮断物Sの一端の位置(P1)に至るまでは再帰性反射シート7により反射されるが、遮断物Sの他端の位置(P2)に至るまでの間は遮断物Sによって遮断され、その後の走査終了位置(Pe)に至るまでは再帰性反射シート7により反射される。
但し、光送受ユニット1aでは、図1上で時計方向回りに光の走査が行なわれる。ここで、光送受ユニット1aは図1上で時計回り方向に表示画面10の下辺側を走査開始方向とし、逆に光送受ユニット1bは図1上で反時計回り方向に表示画面10の上辺側を走査開始方向とする理由について説明する。
たとえば光送受ユニット1bの場合には、表示画面10の上辺側または左辺側のいずれを走査開始方向としてもよいが、光送受ユニット1bから見た場合、表示画面10の上辺の方が下辺よりも距離的に近いために反射光量が大であること、及び再帰性反射シート7の反射面が表示画面10の上辺ではほぼ直角であるために反射光量が大であることにより、表示画面10の上辺側を走査開始方向としている。換言すれば、光送受ユニット1bの走査開始方向を表示画面10の下辺側とした場合には、表示画面10の下辺の方が上辺よりも距離的に遠いために走査開始時点の反射光量が小さくなり、また再帰性反射シート7の反射面が湾曲しているために反射光量も小さくなる。但し、再帰性反射シート7の湾曲に関しては本質的な問題ではなく、湾曲させないような構成を採ることも勿論可能である。
ところで、上述の図2は両光送受ユニット1a,1bにおける光路及び動作を説明するための模式図であって、本発明装置では両光送受ユニット1a(1b)は実際には図3の模式的平面図,図4の模式的側面図及び図5の模式的斜視図に示されているように構成されている。
光送受ユニット1a(1b)は、筐体10a(10b)内部に半導体レーザ発生装置等の発光素子11a(11b)と、再帰性反射シート7からの反射光を受光する受光素子13a(13b)とを収納しており、上面には発光素子11a(11b)の直上部分にプリズムミラー17a,17bが配置されており、受光素子13a(13b)の直上部分にはハーフミラー15a(15b)が配置されている。更に、筐体10a(10b)の上面のハーフミラー15a(15b)を挟んでプリズムミラー17a(17b)の逆側の部分にはポリゴンミラー16a(16b)が図示しないパルスモータの回転軸に取り付けられている。
なお、図3,図4及び図5では図2に示されているコリメータレンズ12a,12b及び可視光カットフィルタ14a,14bは省略してあり、以下の説明においても省略する。
以上のような光送受ユニット1a(1b)の構成により、発光素子11a(11b)から発光されたレーザ光はプリズムミラー17a(17b)により屈折してハーフミラー15a(15b)を通過してポリゴンミラー16a(16b)で反射し、再帰性反射シート7へ投射される。再帰性反射シート7で反射された光はポリゴンミラー16a(16b)へ戻って反射し、ハーフミラー15a(15b)へ入射し、最後に受光素子13a(13b)に受光される。
ことろで、上述の図3乃至図5において示されているように、本発明装置の光送受ユニット1a(1b)では、発光素子11a(11b)はそれからポリゴンミラー16a(16b)に至る光路が発光素子11a(11b)側で表示画面10の縁辺からより遠ざかるように、また受光素子13a(13b)はそれにポリゴンミラー16a(16b)から至る光路が受光素子13a(13b)側で表示画面10の縁辺からより遠ざかるようにそれぞれ筐体10a(10b)に配置されている。
このような発光素子11a(11b)及び受光素子13a(13b)の配置は、ポリゴンミラー16a(16b)による走査光がハーフミラー15a(15b)及びプリズムミラー17a(17b)に遮られて表示画面10方向へ十分に走査されないという問題を解決するために採られている。
更に、本発明装置の光送受ユニット1a(1b)では、発光素子11a(11b)はそのレーザ光の発光方向が表示画面10と、換言すればポリゴンミラー16a(16b)による走査面と直交するように筐体10a(10b)内に配置されており、また受光素子13a(13b)もその受光の指向性の方向が表示画面10と、換言すればポリゴンミラー16a(16b)による走査面と直交するように筐体10a(10b)内に配置されている。
このような発光素子11a(11b)及び受光素子13a(13b)の配置は、発光素子11a(11b)をそのレーザ光の発光方向が表示画面10と、換言すればポリゴンミラー16a(16b)による走査面と平行になるように筐体10a(10b)上に配置するよりも、また受光素子13a(13b)をその受光の指向性の方向が表示画面10と、換言すればポリゴンミラー16a(16b)による走査面と平行になるように筐体10a(10b)上に配置するよりも、光送受ユニット1a(1b)を小型化するために効果を奏する。
なお、本発明装置では上述の如く、発光素子11a(11b)はそのレーザ光の発光方向がポリゴンミラー16a(16b)による走査面と直交するように、また受光素子13a(13b)もその受光の指向性の方向がポリゴンミラー16a(16b)による走査面と直交するようにそれぞれ配置されているが、ある程度の角度、たとえば60°等の角度で交差するように配置しても同様の効果が発揮されることは言うまでもない。
ところで、図1に示されているように、再帰性反射シート7は両光送受ユニット1a,1bが配置されている辺を開口部とし、表示画面10を囲むようにして”U”字状に配置されている。更に、参照符号7a,7bにて示されているように、両光送受ユニット1a,1bから再帰性反射シート7への光の投射角度が小さくなる部分、具体的には両光送受ユニット1a,1bが配置されている辺と直交する2辺(図1上では上側の辺と下側の辺)の両光送受ユニット1a,1bから遠い部分には鋸歯状に再帰性反射シートが設置されている。
このような再帰性反射シートの鋸歯状部分7a,7bにより、たとえば光送受ユニット1bからの投射光はPsの位置から再帰性反射シートの鋸歯状部分7bの一端の位置P3まで走査が進むに伴って再帰性反射シート7への入射角度が次第に小さくなるため反射光量もそれに伴って低下する。しかし、再帰性反射シートの鋸歯状部分7bの一端の位置P3から他端の位置P4までの間は再帰性反射シートの鋸歯状部分7bにほぼ直角に入射するので再帰性反射率のそれ以上の低下が回避される。
図6は、MPU5と他の回路との関係を示すブロック図である。ポリゴン制御回路4は、ポリゴンミラー16a,16bを回転させるパルスモータ21と、パルスモータ21を駆動するパルスモータ駆動回路22と、ポリゴンミラー16a,16bの回転角度のエンコード信号を検出するエンコーダ23a,23bとを有する。
MPU5は、発光素子駆動回路2a,2bに駆動制御信号を送り、その駆動制御信号に応じて発光素子駆動回路2a,2bが駆動されて、発光素子11a,11bの発光動作が制御される。受光信号検出回路3a,3bは、受光素子13a,13bでの反射光の受光信号をMPU5へ送る。また、MPU5は、パルスモータ21を駆動するための駆動制御信号をパルスモータ駆動回路22へ送る。エンコーダ23a,23bは、ポリゴンミラー16a,16bの回転角度のエンコード信号を検出して、MPU5へ送る。MPU5は、受光素子13a,13bからの受光信号及びエンコーダ23a,23bからのエンコード信号に基づいて、遮断物(指示物)の位置,大きさを計測し、その計測結果を表示装置6に表示する。なお、表示装置6は表示画面10を兼用することも可能である。
また、MPU5は、計時機能を有する2つのタイマ(第1タイマ24aと第2タイマ24b)、及び、想定される遮断物(指示物)の大きさの情報を記憶しておくための読出し専用メモリ(ROM)25と書き込み可能なメモリ(RAM)26とを内蔵している。
次に、本発明装置による位置検出動作について、その原理を示す図7の模式図を参照して説明する。但し、図7では光送受ユニット1a,1b、再帰性反射シート7,表示画面10以外の構成部材は図示を省略している。また、指示物として指を用いた場合を示している。
MPU5はポリゴン制御回路4を制御することにより、光送受ユニット1a,1b内のポリゴンミラー16a,16bを回転させて、発光素子11a,11bからのレーザ光を角的に走査する。この結果、再帰性反射シート7からの反射光が受光素子13a,13bへ入射する。このようにして受光素子13a,13bへ入射した光の受光量は受光信号検出回路3a,3bの出力である受光信号として得られる。なお、図7において、θ0,φ0は両光送受ユニット1a,1bを結ぶ基準線から再帰性反射シート7の端部までの角度を、θ1,φ1は基準線から遮断物(指示物)の基準線側端部までの角度を、θ2,φ2は基準線から遮断物(指示物)の基準線と逆側端部までの角度をそれぞれ示している。
図8のタイミングチャートに、受光素子13a,13bでの受光信号の波形を示す。走査光の光路に遮断物(指示物)が存在しないときには、再帰性反射シート7からの反射光が受光素子13a,13bへ入射され、その光路に遮断物(指示物)が存在するときには、その反射光が受光素子13a,13bへは入射されない。従って、図7に示されているような状態では,走査角度が0°からθ0までの間では受光素子13aには反射光は入射されず、走査角度がθ0からθ1までの間では受光素子13aに反射光が入射され、走査角度がθ1からθ2までの間では受光素子13aに反射光が入射されない。
同様に、走査角度が0°からφ0までの間では受光素子13bには反射光は入射されず、走査角度がφ0からφ1までの間では受光素子13bに反射光が入射され、走査角度がφ1からφ2までの間では受光素子13bに反射光が入射されない。このような角度は、受光信号の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングから求められる(図8参照)。従って、指示物としての人の指による遮断範囲を、dθ=θ2−θ1,dφ=φ2−φ1として求めることができる。
なお、θ0及びφ0は、両光送受ユニット1a,1bを結ぶ基準線と再帰性反射シート7の端部の位置関係から既知であることは言うまでもない。
次に、このようにして求めた遮断範囲から、指示物(本例では指)の中心位置(指示位置)の座標を求める処理について説明する。まず、三角測量に基づく角度から直交座標への変換を説明する。図9に示すように、光送受ユニット1aの位置を原点O、表示画面10の上辺,左辺をX軸,Y軸に設定し、基準線の長さ(光送受ユニット1a,1b間の距離)をLとする。また、光送受ユニット1bの位置をBとする。表示画面10上の指示物が指示した中心点P(Px,Py)が、光送受ユニット1a,1bからX軸に対してθ,φの角度でそれぞれ位置している場合、点PのX座標Px,Y座標Pyの値は、三角測量の原理により、それぞれ以下の(1),(2)式のように求めることができる。
Px=(tanφ)÷(tanθ+tanφ)×L …(1)
Py=(66nθ・tanφ)÷(tanθ+tanφ)×L …(2)
ところで、遮断物(指)には大きさ(サイズ)があるので、検出した受光信号の立ち上がり/立ち上がりのタイミングでの検出角度を採用した場合、図10に示すように、遮断物(指)Sのエッジ部の4点(図10のP1〜P4)を検出することになる。これらの4点は何れも指示した中心点(図10のPc)とは異なっている。そこで、以下のようにして 中心点Pcの座標(Pcx,Pcy)を求める。Px=Px(θ,φ),Py=Py(θ,φ)とした場合に、Pcx,Pcyは、それぞれ以下の(3),(4)式のように表せる。
Pcx=Pcx(θ1+dθ/2,φ1+dφ/2) …(3)
Pcy=Pcy(θ1+dθ/2,φ1+dφ/2) …(4)
そこで、(3),(4)式で表されるθ1+dθ/2,φ1+dφ/2を上記(1),(2)式のθ,φとして代入することにより、指示された中心点Pcの座標を求めることができる。
なお、上述した例では、最初に角度の平均値を求め、その角度の平均値を三角測量の変換式(1),(2)に代入して、指示位置である中心点Pcの座標を求めるようにしたが、最初に三角測量の変換式(1),(2)に従って走査角度から4点P1〜P4の直交座標を求め、求めた4点の座標値の平均を算出して、中心点Pcの座標を求めるようにすることも可能である。また、視差、及び、指示位置の見易さを考慮して、指示位置である中心点Pcの座標を決定することも可能である。
ポリゴンミラー16a,16bの回転の走査角速度が一定であれば、その走査角度は回転時間に比例するので、時間を計時することにより走査角度の情報を得ることができる。図11は、受光信号検出回路3aからの受光信号と、ポリゴンミラー16aの走査角度θ及び走査時間Tとの関係を示すタイミングチャートである。ポリゴンミラー16aの走査角速度が一定である場合、その走査角速度をωとすると、走査角度θ及び走査時間Tには、下記(5)式に示すような比例関係が成り立つ。
θ=ω×T …(5)
よって、受光信号の立ち下がり,立ち上がり時の角度θ1,θ2は、それぞれの走査時間t1,t2と下記(6),(7)式の関係が成り立つ。
θ1=ω×t1 …(6)
θ2=ω×t2 …(7)
従って、ポリゴンミラー16a,16bの走査角速度が一定である場合には、時間情報を用いて、指示物(指)の遮断範囲及び座標位置を計測することが可能である。
図12は、反射光が低レベルである時間間隔を、MPU5に内蔵した第1タイマ24a及び第2タイマ24bを用いて測定する際のMPU5でのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。MPU5は受光信号検出回路3a,3bからの受光信号の変化を検知し、そのレベルが低下するとこれらのタイマ24a,24bを起動させて計時動作を開始し、そのレベルが回復するとタイマ24a,24bを停止させて計時動作を終了する。
MPU5はまず、受光信号検出回路3a,3bからの受光信号の変化を調べ(ステップS1)、受光信号検出回路3aからの受光信号に変化が生じたか否かを判断する(ステップS2)。変化が生じていなければ(ステップS2でNO)、ステップS6に処理が進む。変化が生じている場合には(ステップS2でYES)、MPU5はその受光信号のレベルが低いか否かを判断し(ステップS3)、低いときには(ステップS3でYES)第1タイマ24aを起動させ(ステップS4)、高いときには(ステップS3でNO)第1タイマ24aを停止させて(ステップS5)、ステップS6に処理を進める。ステップS6においては、MPU5は受光信号検出回路3bからの受光信号に変化が生じたか否かを判断する。変化が生じていなければ(ステップS6でNO)、処理はリターンする。変化が生じている場合には(ステップS6でYES)、MPU5はその受光信号のレベルが低いか否かを判断し(ステップS7)、低いときには(ステップS7でYES)第2タイマ24bを起動させ(ステップS8)、高いときには(ステップS7でNO)第2タイマ24bを停止させて(ステップS9)、処理はリターンする。
また、本発明装置では、計測した遮断範囲から遮断物(指示物)の断面長を求めることも可能である。図13は、この断面長計測の原理を示す模式図である。図13において、D1,D2はそれぞれ光送受ユニット1a,1bから見た遮断物Sの断面長である。まず、光送受ユニット1a,1bの位置O(0,0),B(L,0)から遮断物Sの中心点Pc(Pcx,Pcy)までの距離OPc(r1),BPc(r2)が、下記(8),(9)式の如く求められる。
OPc=r1=(Pcx2 +Pcy2 )1/2 …(8)
BPc=r2={(L−Pcx)2 +Pcy2 }1/2 …(9)
断面長は距離と遮断角度の正弦値との積で近似できるので、各断面長D1,D2は、下記(10),(11)式に従ってそれぞれ計測可能である。
D1=r1・sindθ
=(Pcx2 +Pcy2 )1/2 ・sindθ …(10)
D2=r2・sindφ
={(L−Pcx)2 +Pcy2 }1/2 ・sindφ …(11)
なお、θ,φ≒0である場合には、sindθ≒dθ≒tandθ,sindφ≒dφ≒tandφとそれぞれ近似できるので、(10),(11)式においてsindθ,sindφの代わりに、dθまたはtandθ,dφまたはtandφとしてもよい。
ところで、1本の指またはペンにて位置指定を行なっている場合に、誤って複数の指,掌または肘が表示画面10にタッチする場合がある。このような場合には、誤検出として処理する必要がある。そこで、本発明では、計測した断面長から遮断物の大きさ情報を求め、求めた大きさ情報に基づいて、その遮断物が何であるかを判定できるようにしている。図14は、遮断物の種類を判定するアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。端的には、実際に算出された遮断物の大きさ情報と予め想定されている複数の遮断物の大きさ情報とが比較されることにより、遮断物の種類が判定される。そして、その遮断物が1本の指またはペン以外のものであると判定された場合には、警告フラグがオンになる。なお、想定されている複数の遮断物の大きさ情報は前述の如く、MPU5に内蔵されたROM25及びRAM26に予め格納されている。
まずMPU5は現在の遮断物の大きさ情報を取得し(ステップS11)、その大きさが10cm以下であるか否かを判断する(ステップS12)。10cmよりも大きい場合には(ステップS12でNO)、MPU5は掌であると判定し(ステップS16)、警告フラグをオンにし(ステップS21)、処理はリターンする。10cm以下であれば(ステップS12でYES)、MPU5はその大きさが5cm以下であるか否かを判断する(ステップS13)。5cmよりも大きい場合には(ステップS13でNO)、MPU5は遮断物が握りこぶしまたは肘であると判定し(ステップS17)、警告フラグをオンにし(ステップS21)、処理はリターンする。5cm以下であれば(ステップS13でYES)、MPU5はその大きさが2cm以下であるか否かを判断する(ステップS14)。2cmよりも大きい場合には(ステップS14でNO)、MPU5は複数の指であると判定し(ステップS18)、警告フラグをオンにし(ステップS21)、処理はリターンする。2cm以下であれば(ステップS14でYES)、MPU5はその大きさが0.5cm以下であるか否かを判断する(ステップS15)。MPU5は、0.5cmよりも大きい場合には(ステップS15でNO)、1本の指であると判定し(ステップS19)、0.5cm以下である場合には(ステップS15でYES)、ペンであると判定し(ステップS20)、処理はリターンする。
このようにして、遮断物の種類が判定され、位置指定を行なう1本の指またはペン以外の遮断物であることが判明すると警告フラグがオンとなってそのフラグ情報がMPU5から表示装置6へ転送される。このフラグ情報が転送されると、MPU5から表示装置6へ送られる検出位置のデータが無効にされると共に、表示装置6の画面に警告マークが表示される。また、判定した種類の結果を表示装置6に表示する構成も可能である。
なお、警告フラグがオンとなった際に、ブザー音が鳴るような構成にしてもよい。また、この際の検出位置のデータの無効化の他の手法として、1本の指またはペン以外の遮断物であると判定された場合には、MPU5から表示装置6へ検出位置のデータを出力しないように制御することも可能である。
(第2の実施の形態)
図15は、本発明装置の第2の実施の形態の基本構成を示す模式図、また図16はこの第2の実施の形態のブロック図である。図15,図16において、図1,図6と同一番号を付した部分は同一の部材を示す。なお、図15においては、発光素子駆動回路2a,2b、受光信号検出回路3a,3b、ポリゴン制御回路4、表示装置6は図示を省略している。
本発明装置の第2の実施の形態では、表示画面10上の検出すべき走査領域に対して、表示画面10に極めて近接させて、光送受ユニット1aについて2個のタイミング検出用の受光素子31a及び32aと、光送受ユニット1bについて2個のタイミング検出用の受光素子31b及び32bとがそれぞれ設けられている。なお、受光素子31a及び32aの受光面はそれぞれ光送受ユニット1a側に、受光素子31b及び32bの受光面はそれぞれ光送受ユニット1b側に向けられている。
また、これらの各受光素子31a,32a,31b,32bの受光量を電気信号に変換する受光信号検出回路33a,34a,33b,34bが備えられている。なお、第2の実施の形態におけるポリゴン制御回路4は、第1の実施の形態のようなエンコーダ23a,23bを有しておらず、パルスモータ21及びパルスモータ駆動回路22から構成されている。
検出すべき走査領域へ入る直前に、光送受ユニット1a,1bからのレーザ光が、走査方向上流側に位置するタイミング検出用の受光素子31a,31bへ入射され、また、検出すべき走査領域から出た直後に、光送受ユニット1a,1bからのレーザ光が、走査方向下流側に位置するタイミング検出用の受光素子32a,32bへ入射される。
このように、第2の実施の形態では、2個1組の受光素子により、位置検出の開始及び終了のタイミングを決定することにより、第1の実施の形態に備えられていたエンコーダ23a,23bが備えられていなくてもレーザ光の走査角度を検知できるようにしている。
図17は、本発明装置の第2の実施の形態の動作を説明するためのタイミングチャートであり、図17(a)は光送受ユニット1aの発光素子11aの発光動作を、図17(b)は走査方向上流側に位置するタイミング検出用の受光素子31aでの受光量を表す受光信号検出回路33aの受光信号を、図17(c)は光送受ユニット1aの受光素子13aでの受光量を表す受光信号検出回路3aの受光信号を、図17(d)は走査方向下流側に位置するタイミング検出用の受光素子32aでの受光量を表す受光信号検出回路34aの受光信号を、図17(e)はMPU5に内蔵したタイマの計時動作をそれぞれ表している。
時点t0は電源をオンにしてポリゴンミラー16aが回転を開始したタイミング、時点t1は発光素子11aの発光動作を開始させたタイミング、時点t2は受光素子31aにてレーザ光を受光し終えたタイミング、時点t3は受光素子32aにてレーザ光を受光し始めたタイミングである。時点t2,時点t3はそれぞれ走査開始,走査終了のタイミングとなり、時点t2から受光素子13aの受光レベルは高くなり、時点t3でそのレベルは低くなる。また、タイマは時点t2でカウントを開始して時点t3でカウントを終了する。なお、時点t4は遮断物(指示物)によって受光素子13aの受光レベルが立ち下がるタイミング、時点t5はレーザ光が遮断範囲を抜けて受光素子13aの受光レベルが立ち上がるタイミングである。
ポリゴンミラー16aの回転が安定した状態で発光素子11aを駆動させ、光送受ユニット1aによって走査されたレーザ光が検出すべき領域に差しかかるタイミングを受光素子31aでの受光タイミング(時点t2)で検出し、その走査レーザ光が検出すべき領域から抜け出るタイミングを受光素子32aでの受光タイミング(時点t3)として検出する。受光素子31a,32aの設置位置は既知であるので、この間で走査レーザ光を遮断する指またはペン等の遮断物(指示物)の位置も計測できる。つまり、図17において、この時点t2と時点t3との間で、受光素子13aの受光レベルが立ち下がるタイミング(時点t4)から次の受光レベルが立ち上がるタイミング(時点t5)までのタイマのカウント値により、遮断領域及び遮断物(指示物)の中心位置を計測できる。
なお、光送受ユニット1b側での処理動作は、上述した光送受ユニット1a側での処理動作と同様であるので、その説明は省略する。
(第3の実施の形態)
図18は、本発明装置の第3の実施の形態の基本構成を示す図である。図18において、図1と同一番号を付した部分は同一の部材を示す。なお、発光素子駆動回路2a,2b、受光信号検出回路3a,3b、ポリゴン制御回路4、MPU5、表示装置6は図示を省略している。
第3の実施の形態では、表示画面10上の検出すべき走査領域に対して、表示画面10に極めて近接させて、光送受ユニット1aについて2個のタイミング検出用の再帰性反射体41a及び42aと、光送受ユニット1bについて2個のタイミング検出用の再帰性反射体41b及び42bとがそれぞれ設けられている。これらの再帰性反射体41a,42a,41b,42bは、再帰性反射シート7と同材質である。
検出すべき走査領域へ入る直前に、光送受ユニット1a,1bからのレーザ光が、走査方向上流側に位置するタイミング検出用の再帰性反射体41a,41bに反射され、その反射光が受光素子13a,13bへ入射され、また、検出すべき走査領域から出た直後に、光送受ユニット1a,1bからのレーザ光が、走査方向下流側に位置するタイミング検出用の再帰性反射体42a,42bに反射され、その反射光が受光素子13a,13bへ入射される。
このように、第3の実施の形態では、2個1組の再帰性反射体により、位置検出の開始及び終了のタイミングを決定することにより、第1の実施の形態でのエンコーダ23a,23bが備えられていない構成であってもレーザ光の走査角度を検知できるようにしている。なおこの際、これらの再帰性反射体41a,41b,42a,42bは光送受ユニット1a,1bに近接して設けられているので、これらからの反射光は、再帰性反射シート7からの反射光に比べて光の減衰が少なく、受光素子13a,13bにおける受光レベルも大きくなる。
図19は、本発明装置の第3の実施の形態のブロック図である。参照符号43は遮断検出用の第1比較器であり、受光素子13aでの受光量を表す受光信号検出回路3aからの受信信号のレベルを第1閾値レベルと比較し、その比較結果を2値の信号でMPU5に出力する。参照符号44は走査開始/終了検出用の第2比較器であり、受光信号検出回路3aからの受信信号のレベルを第1閾値レベルよりも高い第2閾値レベルと比較し、その比較結果を2値の信号でMPU5に出力する。
図20は、本発明装置の第3の実施の形態の動作を説明するためのタイミングチャートであり、図20(a)は受光素子13aでの受光量を表す受光信号検出回路3aからの受信信号、図20(b)は第1比較器43の出力信号、図20(c)は第2比較器44の出力信号をそれぞれ表している。また、破線W1は第1閾値レベルを、破線W2は第2閾値レベルをそれぞれ示す。
時点t0は再帰性反射体41aからの反射光の受光を開始したタイミング、時点t1は再帰性反射体41aからの反射光の受光が終了して再帰性反射シート7からの反射光の受光を開始したタイミング、時点t2は再帰性反射シート7からの反射光の受光が終了して再帰性反射体42aからの反射光の受光を開始したタイミング、時点t3は再帰性反射体42aからの反射光の受光を終了したタイミングである。また、時点t4は遮断物(指示物)によって受光素子13aの受光レベルが立ち下がるタイミング、時点t5は走査レーザ光が遮断範囲を抜けて受光素子13aの受光レベルが立ち上がるタイミングである。時点t1,時点t2はそれぞれ走査開始,走査終了のタイミングとなる。このような各タイミングは、受光信号のレベルと第1閾値レベルW1及び第2閾値レベルW2との比較結果に基づいて検出される。
なお、上述の説明は光送受ユニット1a側での処理動作についてであるが、光送受ユニット1b側での処理動作は、この光送受ユニット1a側での処理動作と同様であるので、その説明は省略する。
なお、上述した例では、距離の違いによる光減衰の差に応じて、再帰性反射体41a,41b,42a,42bからの反射光と再帰性反射シート7からの反射光とを区別するようにしたが、再帰性反射体41a,42a,41b,42bの反射率を再帰性反射シート7の反射率よりも高く設定しておくようにして、これらの反射光をより明確に区別することも可能である。
このように本発明装置の第3の実施の形態では、受光素子13a,13bでの受光量の変化を調べることにより、走査開始と走査終了とのタイミングの基準信号を生成することができ、検出素子を新たに備える必要なしに、分解能を一定に保つことができる。
(第4の実施の形態)
図21(a)は、本発明装置の第4の実施の形態の基本構成を示す平面図、図21(b)は図21(a)のA−A′線における断面図である。図21において、図1と同一番号を付した部分は同一の部材を示す。なお、発光素子駆動回路2a,2b、受光信号検出回路3a,3b、ポリゴン制御回路4、MPU5、表示装置6は図示を省略している。
第4の実施の形態では、表示画面10の外側に再帰性反射シート7を覆うように、庇状の遮蔽体51を、表示画面10の視野が妨げられない位置まで設けている。これによって、この庇状の遮蔽体51と再帰性反射シート7との間に、指等の遮断物(指示物)が入れない遮断不可能領域Dが形成される。このような構成により、表示画面10の辺縁部を含む如何なる位置に遮断物(指示物)が存在していても、この遮断不可能領域Dからの反射光の受光タイミングを、走査開始/終了の基準タイミングとすることができる。
ところで、図21(b)に参照符号Pで示されているのは光送受ユニット1aから投射されたレーザービームの断面である。ここに示されているように、本発明装置では、光送受ユニット1a,1bから投射されるレーザービームは表示画面10の表面に平行な方向(走査方向)に偏平な、たとえば表示画面10の表面に平行な方向を長軸とする楕円形状の断面を有する。その理由は、再帰性反射シート7の構成にある。
図22(a)は再帰性反射シート7の反射面側の構成を示す模式図である。ここに示されているように、再帰性反射シート7の反射面は多数の球レンズ700が表示画面10の表面と平行な方向、即ちレーザービームの走査方向に配列して構成されており、これらの各球レンズ700は図22(b)に示されているような入射角度と相対反射率との関係を有しているため、両光送受ユニット1a,1bから投射されるレーザービームの走査方向の幅がある程度以上に大きくない場合には有効な反射光量が得られないためである。
但し、再帰性反射シート7の各球レンズ700が十分に小さい場合には逆に、レーザービームの走査方向の幅を小さくして解像度を高くすることも可能である。しかしそのような場合にも、十分な反射光量を得るためにはレーザービームの断面積を大きくする必要があるので、走査方法と直交する方向(表示画面10の表面と直交する方向)の幅を大きくした偏平断面のレーザービームを使用することが望ましい。
図23は、第4の実施の形態における受光素子13aでの受光量を表す受光信号検出回路3aからの受信信号の例を示すタイミングチャートである。
図23(a)は遮断物(指示物)が存在しない場合の受信信号、図23(b)は遮断物(指示物)が表示画面10の辺縁部(図21(a)でC1の領域)に存在する場合の受信信号、図23(c)は遮断物(指示物)が表示画面10の中央部(図21(a)でC2の領域)に存在する場合の受信信号、図23(d)は遮断物(指示物)が表示画面10の辺縁部(図21(a)でC3の領域)に存在する場合の受信信号をそれぞれ表す。表示画面10の辺縁部に遮断物(指示物)が存在する場合においても、受信信号には確実に立ち上がりと立ち下がりとが存在することを示している。なお、受光素子13bを有する光送受ユニット1b側での処理動作は、上述した受光素子13aを有する光送受ユニット1a側での処理動作と同様であるので、その説明は省略する。
また、この第4の実施の形態に示したような庇状の遮蔽体51を設けることにより、再帰性反射シート7からの乱反射光の成分を低減する効果、及び、外乱光の反射光が受光素子13a,13bへ入射することを低減する効果も期待できる。
(第5の実施の形態)
図24は、本発明装置の第5の実施の形態のブロック図である。図24において、図6,図16と同一部分には同一番号を付してその説明を省略する。受光素子13aと受信信号検出回路3aとの間、受光素子13bと受信信号検出回路3bとの間にACカップリング61a,61bを設けている。また、発光素子駆動回路2aと受信信号検出回路3aとの間、発光素子駆動回路2bと受信信号検出回路3bとの間にXOR(排他的論理和)回路62a,62bを設けている。
第5の実施の形態では、受光素子13a,13bで検出する反射光の受光信号をAC結合にするようにしたので、このAC結合によって定常光成分を取り除くため、外乱ノイズに強い構成を実現できる。また、発光パルス信号と反射光の受信信号とのXOR(排他的論理和)をとるようにしたので、遮断範囲のみの受信パルス信号を検出することができ、このパルス信号をカウントして遮断時間を計測することができる。
図25は、第5の実施の形態の動作を説明するためのタイミングチャートであり、図25(a)は走査方向上流側に位置するタイミング検出用の受光素子31aの受光量を表す受光信号検出回路33aの受信信号、図25(b)は走査方向下流側に位置するタイミング検出用の受光素子32aの受光量を表す受光信号検出回路34aの受信信号、図25(c)は発光素子11aの発光パルス信号、図25(d)は受光素子13aの受光量を表す受光信号検出回路3aの受光信号、図25(e)はXOR回路62aの出力信号をそれぞれ表している。
受光信号検出回路33aの受信信号の高レベルに応じて走査開始のタイミングを検出して発光素子11aのパルス駆動を開始し、そのパルス数を計数する。また、受光信号検出回路34aの受信信号の高レベルに応じて走査終了のタイミングを検出して発光素子11aのパルス駆動を停止する。そして、XOR回路62aの出力信号のパルス数を計数することにより、遮断範囲を計測することができる。
例えば、表示画面10が対角40インチ相当である場合、対角線で100cm先での分解能を0.5cm程度とすると、必要な角度分解能は5mradである。ここで、5角形のポリゴンミラーを使用する場合、最大でも144度の走査角度となる。よって、1回の走査あたりの分割数は、下記(12)式のように求まる。
{(π/2)/0.005}×(144/90)=502 …(12)
そして、1秒間に200ポイントずつの検出を行なうための最低周波数は、下記(13)式のように求まる。
502×200=100400(Hz)=100.4(kHz)…(13)
この条件を満足すれば、パルス数と走査角度とが1対1で対応することになり、所望の分解能での角度検出処理を単純化できる。
次に、発光素子11a,11bでのパルス発光の制御について説明する。MPU5から発光素子駆動回路2a,2bへ送る駆動制御信号のパルスの空白時間を制御することにより、発光素子11a,11bからの平均放射エネルギを少なくできる。図26は、パルス発光のタイミング信号を示すタイミングチャートであり、図26(a)に示す例では図26(b)に示す例に比べてパルスの空白時間が長い。また、図27(a),(b)に、図26(a),(b)のそれぞれのパルスパターンにおける走査レーザ光の放射状態を示す。パルス発光の空白時間を広げるようにすれば、デューティ比が下がり、平均放射エネルギを少なくできる。
発光素子11a,11bでのパルス発光の平均放射エネルギを少なくできる他の制御例のタイミングチャートを図28に示す。図28(a)は、標準状態のパルス発光のタイミング信号を示す。図28(b)は、周期は変えずに1回の発光時間を少なくした例を示す。また、図28(c)は、周期は変えずに1回の発光強度を小さくした例を示す。
次に、発光素子11a,11bでのパルス発光の開始タイミングをずらせる制御例について、図29のタイミングチャートを参照して説明する。例えば、最初のレーザ光走査では図29(a)に示すようなタイミングで走査を行ない、次のレーザ光走査では、図29(b)に示すように周期は同じであるが開始タイミングを前回よりもTd分だけ遅らせたタイミングで走査を行なう。図30に、図29(a),(b)のそれぞれのパルスパターンにおける走査レーザ光の放射状態を合成して示す。時間的にTd分だけずらせているので、ポリゴンミラーの走査角速度をωとした場合に、dθ=ω・Tdだけずれた走査角度を実現できる。このようなタイミングずれを設定することにより、レーザ光走査がまばらになった場合にも、遮断物(指示物)を検出できない領域をなくして高い検出精度を保つことができる。
次に、走査パルスの周波数を、遮断物(指示物)の存在の有無に応じてダイナミックに変化させる制御例について説明する。一定時間内に遮断物(指示物)の存在を検出しないうちは、発光時間を一定に保ちつつ走査パルスの周波数を1/2に低下させる。一方、遮断物(指示物)を検出すると、発光時間を一定に保ちつつ走査パルスの周波数を2倍に上げる。このような制御を繰り返すことにより、遮断物(指示物)の有無に応じて、発光のデューティ比を1/2倍または2倍ずつ変化させていく。但し、走査パルスの最小周波数は最低分解能8cm相当の6.25kHz、その最大周波数は最低分解能0.25cm相当の200kHzとして、これらの最小周波数及び最大周波数を超えることがないようにしている。
図31は、このような走査パルスの周波数制御のアルゴリズムを示すフローチャートである。まず、一定時間内に遮断物(指示物)を検出したか否かを判断する(ステップS31)。検出した場合には(ステップS31でYES)、発光時間を一定に保ったまま現在の走査パルスの周波数を2倍にして(ステップS32)、ステップS34に処理が進む。一方、検出しなかった場合には(ステップS31でNO)、発光時間を一定に保ったまま現在の走査パルスの周波数を1/2倍にして(ステップS33)、ステップS34に処理が進む。変更後の周波数が6.25kHzよりも小さいか否かを判断する(ステップS34)。6.25kHzよりも小さい場合には(ステップS34でYES)、周波数を6.25kHzに設定して(ステップS36)、リターンする。6.25kHz以上である場合には(ステップS34でNO)、変更後の周波数が200kHzよりも大きいか否かを判断する(ステップS35)。200kHzよりも大きい場合には(ステップS35でYES)、周波数を200kHzに設定して(ステップS37)、リターンする。200kHz以下である場合には(ステップS35でNO)、そのままリターンする。
以上のような発光素子11a,11bでのパルス発光の制御を行なうことによって、本発明装置では、必要に応じた検出分解能を達成できると共に、低消費電力化を実現できる。
ところで、上述の各実施例において共通の構成であるが、両光送受ユニット1a,1bは表示画面10の短辺に沿って、且つある程度距離を置いて配置されている。以下にそれらの理由について説明する。
三角測量においては一般的には測量の基準線が長ければ長いほど、精度は向上することが知られている。しかし、測量対象が極めて遠い場合または逆に極めて近い場合には誤差が大きいことも事実である。測量対象が極めて遠い場合には基準線を長くすることにより精度が向上するが、測量対象が極めて近い場合には基準線を逆に短くすることにより精度が向上する。本発明装置では、このような三角測量の欠点に鑑み、両光送受ユニット1a,1bを結ぶ基準線を表示画面10の辺からある程度離すこと、また表示画面10以上の遠方の測量を行なう必要はないので、近い部分の測量精度を向上させる目的で表示画面10の短辺に沿って両光送受ユニット1a,1bを配置している。
ところで、両光送受ユニット1a,1bを結ぶ基準線と表示画面10の一辺(本発明装置では表示画面10の短辺)との間の距離dは下記(14)式を満足するように設定する。
dθ≦4δd(1/(L2 +2δL)) ・・・(14)
但し、dθ:測定精度(ビームの拡がり角度)
δ:検出精度(本発明装置では5mm)
L:基準線長(両光送受ユニット間の距離)
式(14)をdに関して変形すると下記(15)式が求まる。
d≧dθ×L2 /4δ ・・・(15)
本発明装置では、検出精度δは5mm程度、基準線長Lは500mm程度、測定精度dθは受光信号のAD変換のクロックで決定されるが2.5ミリラジアン程度になり、結果的にはdは10mm程度が適正な値となる。但し、この値は表示画面10の大きさ、ビームの拡がり角度、換言すればどの程度の測定精度を要求するか等に依存することは言うまでもない。
前述のように本発明装置においては、両光送受ユニット1a,1bから遠く且つ再帰性反射シート7への投射光の入射角度が小さくなる部分には鋸歯状部分7a,7bを設けて反射効率の向上を図っている。しかし、両光送受ユニット1a,1bから再帰性反射シート7までは距離が一定でないこと、及び上述のような再帰性反射シート7に鋸歯状部分7a,7bが存在すること、更に湾曲部分も存在すること等の理由により、両受光素子13a,13bの受光量は一定にはならない。しかし、両受光素子13a,13bでの受光量は可能な限り一定であることがその後の信号処理においても望ましいし、消費電力削減の見地からも好ましい。
このような観点から、受光素子13a,13bへ入力される受光量を一定するための構成について説明する。
図32は、受光素子13a(13b)による受光量を一定に制御するために、発光素子11a(11b)による発光強度を制御する構成例を示すブロック図である。具体的には、発光素子11a(11b)による発光強度を、反射光量が多い走査角においては小さくし、反射光量が少ない走査角においては大きくする。
図32において、受光素子13a(13b)で受光された反射光はその光量に応じた信号が受光信号検出回路3a(3b)によりデジタル信号に変換されてMPU5へ入力される。MPU5は、この受光信号検出回路3a(3b)から入力されたデジタル信号の値を予め定められている閾値と比較し、受光信号検出回路3a(3b)から入力されたデジタル信号の値が閾値よりも大である場合には発光素子11a(11b)からの発光強度を低下させる制御信号CSを、逆に受光信号検出回路3a(3b)から入力されたデジタル信号の値が閾値よりも小である場合には発光素子11a(11b)からの発光強度を増大させる制御信号CSを出力する。
上述のMPU5から出力される制御信号CSは勿論デジタル信号であるので、これを電流変換回路51a(51b)によりアナログの駆動信号DCに変換して安定電流回路52a(52b)に供給して安定化し、発光素子11a(11b)を発光させる。なお、電流変換回路51a(51b)及び安定電流回路52a(52b)により発光素子11a(11b)の駆動回路50a(50b)が構成される。
以上のようなMPU5による制御により、受光素子13a(13b)での受光量が所定値になるように常時発光素子11a(11b)からの発光強度が制御される。
図33は発光素子11a(11b)の発光強度を制御する他の構成例を示すブロック図である。この構成例では、MPU5から制御信号CSを出力して駆動回路50a(50b)を制御し、発光素子11a(11b)の発光強度を制御することは同様である。しかし、上述の構成例では受光信号検出回路3a(3b)での受光量をモニタしてフィードバック制御しているのに対して、この構成例ではポリゴンミラー16a(16b)の回転角同期信号発生回路49a(49b)が発生する回転角同期信号ASに対応して発光素子11a(11b)の発光強度を制御する。
具体的には、MPU5は、図34のタイミングチャートに示されているように、回転角同期信号発生回路49a(49b)が発生する回転角同期信号ASを読み込み、光送受ユニット1a,1bから遠い部分を走査する角度である期間には発光素子11a(11b)での発光強度を大きくするような制御信号CSを出力し、光送受ユニット1a,1bから近い部分を走査する角度である期間には発光素子11a(11b)での発光強度を小さくするような制御信号CSを出力する。このようなMPU5による制御により、受光素子13a(13b)での受光量がほぼ一定値になるように発光素子11a(11b)からの発光強度が制御される。
上述のような発光素子11a(11b)の発光強度を制御する構成に変えて、受光素子13a(13b)での受光量を増幅する構成も可能である。図35はそのような場合の構成例を示すブロック図である。
この構成例では、受光素子13a(13b)による受光量の信号(アナログ信号)をアンプ53a(53b)により増幅して受光信号検出回路3a(3b)に与えるように構成されている。なお、アンプ53a(53b)の増幅率はMPU5から制御信号CS1を与えることにより制御可能である。また、MPU5には回転角同期信号発生回路49a(49b)が出力する回転角同期信号ASも与えられている。
このような構成では、上述の図34に示されている構成と同様に、MPU5は、回転角同期信号発生回路49a(49b)が発生する回転角同期信号ASを読み込み、光送受ユニット1a,1bから遠い部分を走査する角度である期間にはアンプ53a(53b)での増幅率を大きくするような制御信号CS1を出力し、光送受ユニット1a,1bから近い部分を走査する角度である期間にはアンプ53a(53b)での増幅率を小さくするような制御信号CS1を出力する。このようなMPU5による制御により、受光信号検出回路3a(3b)へ入力される受光信号のレベルがほぼ一定値になる。
ところで、上述の図33及び図35に示されている構成例では、図34に示されているような比較的単純なパターンを使用して発光素子11a(11b)の発光強度またはアンプ53a(53b)の増幅率を制御している。しかし、表示画面10上に遮断物Sが無い状態での受光素子13a(13b)による実際の反射光量をモニタしてそのポリゴンミラー16a(16b)の回転角との対応をパターン化して予め記憶しておき、爾後はこの記憶されたパターンと受光素子13a(13b)での実際の受光量とを比較し、差分の情報を得ることにより遮断物Sの検出を行なうようにしてもよい。
図36はそのような構成例を示すブロック図である。図36において、受光素子13a(13b)での受光量は受光信号検出回路3a(3b)によりデジタル信号に変換される。MPU5はこの受光信号検出回路3a(3b)による変換結果を回転角同期信号発生回路49a(49b)が発生する回転角同期信号ASに同期して受光量パターンメモリ54に記憶させる。この受光量パターンメモリ54は図6に示されているRAM26を使用してもよい。
このような構成では、回転角同期信号発生回路49a(49b)が発生する回転角同期信号ASを基準として受光素子13a(13b)での1走査の間の受光量のデジタルデータが受光量パターンとして得られ、それが受光量パターンメモリ54に記憶される。従って、たとえば本発明装置の電源が投入された場合等の表示画面10上に遮断物Sが無い状態における受光量パターンを受光量パターンメモリ54に記憶しておき、爾後の受光素子13a(13b)での受光量を受光信号検出回路3a(3b)でデジタル化したデータと比較して差分を検出することにより、遮断物Sの存在を検出することが可能になる。
更に、図37に示されているような構成を採ることも可能である。この構成例では、上述同様に、たとえば本発明装置の電源が投入された場合等の表示画面10上に遮断物Sが無い状態における受光量パターンを受光量パターンメモリ54に記憶しておく。そして、爾後の受光素子13a(13b)での受光量を比較器55a(55b)に与えると共に、MPU5は受光量パターンメモリ54に記憶されている受光量パターンのデータをA/Dコンバータ56a(56b)によりアナログ信号に変換して比較器55a(55b)に与える。この結果、比較器55a(55b)では、受光素子13a(13b)からの受光信号と受光量パターンメモリ54から読み出された受光量パターンのデータをアナログ信号に変換した信号とが比較され、その差分がMPU5へ入力される。
従って、MPU5は比較器55a(55b)から与えられる差分の信号に従って遮断物Sの存在を検出することが可能になる。
ところで、本発明装置では前述のように再帰性反射シート7からの反射光量が少ない走査角度が存在するが、上述のような発光素子11a,11bの発光強度を制御する手法を採ることによりその解決が可能である。しかし、安全性の問題から発光素子11a,11bの発光強度を上げられない場合もある。そこで、以下では発光素子11a,11bの発光強度を通常の状態とその約半分に低下させた状態とに切り換える場合について説明する。
また、前述の図2に示されているように、本発明装置では光送受ユニット1a(又は1b)において、発光素子11a(又は11b)から投射されたレーザービームはポリゴンミラー16a(又は16b)で反射されて受光素子13a(又は13b)に直接入力されるタイミングが存在する。これを利用することにより、走査開始の検出に特別な手段が不要になるので、コストダウンが可能になる。
具体的には、直接受光素子13a(13b)へ入射する走査光は光強度が高いので、比較レベルの違う2 つ以上の比較手段を用意して受光素子13a(13b)の出力を比較し、比較的高レベルの比較手段の比較結果出力を走査開始信号として利用する。走査光が遮断された時間を計測するためには、走査開始信号を時間計測の開始トリガとする時間計測手段を設ける。または、受光素子13a(13b)の出力を比較的低レベルの比較手段の比較結果出力に応じて時間計測を開始する。
走査速度の変動が誤差の原因となるため、その解消は重要な課題である。走査速度変動の影響を無くすためには、走査開始信号のインターバルを計測する手段を設け、計測したインターバルを基準として走査光の遮断時間を補正することにより誤差を解消する。
以下、具体的に説明する。図38に発光素子11a(11b)の駆動回路50a(50b)の構成を示すブロック図を示す。駆動回路50a(50b)は高レベル駆動のドライバ50H,低レベル駆動のドライバ50L及びスイッチ50Sから構成されている。MPU5からON/OFF信号が両ドライバ50H,50Lに与えられ、発光強度切り換え信号SSがスイッチ50Sに与えられる。このような構成により、発光素子11a(11b)の駆動電流のオン/オフと発光強度の2段階の切り換えとが制御される。なお、この図38に示されている構成は公知の回路にて構成することができる。
図39に発光強度切り替えによるマージンの増加(S/Nの向上)の例を説明するための波形図を示す。図39(a)は発光素子11a(11b)の発光強度の切り換えを行なわずに常時同一発光強度で走査を行なった場合の受光素子13a(13b)での受信信号のレベルを、図39(b)は発光素子11a(11b)の発光強度の切り換えを上述の構成により2段階で行なって走査を行なった場合の受光素子13a(13b)での受信信号のレベルをそれぞれ示している。
発光強度を切り換えない図39(a)に示されている場合は再帰性反射体からの反射光量が次第に低下し、やがて上昇する。ここで、ほぼ中央部において大きくレベルが低下している部分が遮断物Sに起因する波形である。ここで注意すべきは、遮断物Sにより受光素子13a(13b)での受光信号レベルが低下しているが、その”0”レベルに対するマージンM1は極めて小さい(S/Nが悪い)ことである。
一方、発光強度を切り換える図39(b)に示されている場合は再帰性反射体からの反射光量が次第に低下し、やがて上昇すること自体は同様であるが、反射光量が最も低下する部分までのL1で示されている区間は低レベル駆動のドライバ50Lによる走査が行なわれ、反射光量が最も低下するHで示されている区間は高レベル駆動のドライバ50Hによる走査が行なわれ、その後のL2で示されている区間は低レベル駆動のドライバ50Lによる走査が行なわれる。従って、Hで示されている反射光量が最も低下するが高レベル駆動のドライバ50Hによる走査が行なわれる区間に遮断物Sが存在する場合には、高レベル駆動のドライバ50Hの走査による高い受光信号レベルにおいて図39(a)とほぼ同程度のレベルの低下が生じる。しかしここで注意すべきは、図39(b)では、遮断物Sにより受光信号レベルの低下の際の”0”レベルに対するマージン2は図39(a)の場合に比してかなり大きい(S/Nが良い)ことである。
図40に受光信号検出回路3a(3b)の構成例のブロック図を示す。受光素子13a(13b)からの受光信号は受光信号検出回路3a(3b)のアンプ57で増幅された後に二つのコンパレータ58H,58Lに与えられる。これらのコンパレータ58H,58Lは比較基準が異なる。コンパレータ58Hは比較的高い基準電圧VHを有し、その出力は走査開始信号SSSとしてMPU5に与えられる。一方、コンパレータ58Lは比較的低い基準電圧VLを有し、その出力は光走査遮断検出信号SCSとしてMPU5に与えられる。
前述のように、また図2に示されているように、本発明装置では光送受ユニット1a,1bの配置はそれぞれの走査光が走査開始時に再帰性反射シート7を経由せずに直接自身の受光素子13a,13bへ入射するタイミングが存在する。従って、図41(a)の受光信号レベルのタイミングチャートに示すように、ポリゴンミラー16a,16bを回転させて光走査する場合、走査光がポリゴンミラー16a,16bで反射して直接受光素子13a,13bへ入射した場合の反射光量は発光素子11a,11bからの投射光量のほぼ80%である。
これに対して、同じく図41(a)に示されているように、再帰性反射シート7で一旦反射した後に受光素子13a,13bへ入射した場合の投射光量は発光素子11a,11bからの投射光量のほぼ30%である。このような観点から、コンパレータ58Hの基準電圧VLを発光素子11a,11bからの投射光量の80%と30%との中間に設定すれば、図41(a)に示されているような閾値THが設定されることになるので、閾値THよりも高いレベルの部分を検出することにより、図41(b)に示されているように、発光素子11a,11bからの投射光のポリゴンミラー16a,16bでの直接の反射光を走査開始信号として得ることが可能になる。
図42に1つの光走査遮断時間計測系の時間設定・時間計測部の構成例のブロック図を示す。この例では、3つの時間測定用のタイマ(第1測定タイマ59a,第2測定タイマ59b,第3測定タイマ59c)と2つの時間設定用タイマ(第1設定タイマ59d,第2設定タイマ59d)が備えられており、それぞれに対してMPU5により測定時間の読み出し、時間設定等の制御が行われる。
走査開始信号SSSは第1測定タイマ59aへ入力され、走査開始信号SSSのインターバル時間を測定する。光走査遮断検出信号SCSは第2測定タイマ59b及び第3測定タイマ59cへ入力され、非遮断時間と遮断時間とを測定する。第1設定タイマ59d及び第2設定タイマ59eの出力は前述の図38に示されているように駆動回路50a(50b)に与えられて発光強度切り換え信号SSとなる。
図43は、1回の光走査のタイミングについての時間の関係を示すタイミングチャートである。なお、原理的にはtx(x=1,2…)を使用して本発明装置による種々の測定が行なわれるが、tx' またはtx''で代用することも可能である。
(1)走査開始周期(測定:t1)
ポリゴンミラー16a,16bの、換言すればそれらを回転させているモーターの回転変動を補正するために、1回の光走査の周期が測定される。但し、t1,t1' またはt1'' の内のいずれかを測定できればよい。
t1:走査開始信号SSSのLレベルの時間
t1' :走査開始信号SSSの1周期の時間
t1'':走査光が再帰性反射シート7での反射の開始から終了までの時間
(2)遮断物Sの位置(測定:t2)
光走査開始から遮断物Sの位置までの時間。但し、t2またはt2' の内のいずれかを測定できればよい。
t2:走査光が再帰性反射シート7で反射を開始してから遮断物Sの位置までの時間
t2' :走査開始信号SSSから遮断物Sの位置までの時間
(3)遮断物Sの幅(測定:t3)
遮断物Sの幅の時間。
t3:走査光が遮断物Sにより遮光されている時間
t3' :走査光が再帰性反射シート7で反射を開始してから遮断物Sによる遮光終了ま での時間
t3'':走査開始信号SSSから遮断物Sによる遮光終了までの時間
(4)レーザーパワーアップ(出力:t4)
走査開始から走査光のパワー(発光強度)をハイレベルに上げるまでの時間
t4:走査開始信号SSSをトリガとして測定を開始
t4' :走査光の再帰性反射シート7による反射の開始をトリガとして測定を開始
(5)レーザーパワーダウン(出力:t5)
走査光のパワー(発光強度)をハイレベルに上げてからローレベルに下げるまでの時間 t5:t4終了時をトリガとして測定を開始
t5' :走査光の再帰性反射シート7による反射の開始をトリガとして測定を開始
t5'':走査開始信号SSSをトリガとして測定を開始
ポリゴンミラー16a,16bの回転変動に関しては以下に示す方法で補正を行なう。
(1)走査開始から遮断物Sの検出までの時間
t2(t2' )/t1(t1' ort1'')×k(定数)
(2)遮断物Sの幅の時間
t3((t3' −t2)or(t3''−t2' ))
/t1(t1' ort1'') × k(定数)
以上のようにして本発明装置では、走査開始を検出する特別な検出手段を使用することなしに、種々の時間情報を得ることが可能であり、これらから遮断物Sによる遮断位置,大きさ等を求めることが可能になる。
以上に詳述したように本発明の光走査型タッチパネルによれば、指示物によって生じる走査光の遮断範囲を計測するようにしたので、指示物の大きさ(サイズ)を考慮した正しい指示位置を精度良く検出でき、指示物の種類を判定することにより所定の指示物ではない物体による誤検出を防止できると共に、発光手段及び受光手段の配置が、発光手段をその発光方向が光走査手段による走査面と交差するように、また受光手段もその受光の指向性の方向が光走査手段による走査面と交差するように共に考慮されているため、光送受手段を小型化することが、ひいては光走査型タッチパネルそのものを小型化することが可能になる。
また本発明の光走査型タッチパネルによれば、指示物によって生じる走査光の遮断範囲を計測するようにしたので、指示物の大きさ(サイズ)を考慮した正しい指示位置を精度良く検出でき、指示物の種類を判定することにより所定の指示物ではない物体による誤検出を防止できると共に、発光手段及び受光手段の配置が、発光手段をそれが発光する光の光走査手段への経路が発光手段側に近い部分において、また受光手段もそれが受光する光の指向性の方向が受光手段側に近い部分において、共にタッチ対象として規定されている平面の縁から遠ざかるように考慮されているため、光送受手段を小型化することが、ひいては光走査型タッチパネルそのものを小型化することが可能になる。
また、本発明の光走査型タッチパネルによれば、発光手段及び受光手段の配置が、光走査手段による走査光が発光手段及び受光手段に付随する構成要素に遮られないように考慮されているため、光走査手段による走査光が走査領域方向へ十分に走査される。
更に、本発明の光走査型タッチパネルによれば、タッチ対象として規定されている平面が長方形の表示画面であり、2組の光送受手段が表示画面のいずれかの短辺に沿って配置されているため、この短辺に沿って配置されている2組の光送受手段の間を基準線とする三角測量の原理に基づく指示物の検出精度が向上する。