JP3999453B2 - 椅子 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、椅子の構造に関するものであり、具体的には、座り心地を良くした椅子に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
現在、事務などで使用されている椅子の中には、背の上部を後方に向けて反らせるようにしたものが存在している。このような椅子は、着座者の背骨を逆方向に反らせることによってリフレッシュさせることを可能にしたものであり、主に、背もたれ部の上部と下部との間に回転軸を取り付け、この回転軸を中心として、その上部に設けられた背部を後方に傾斜させるように構成している。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のように背もたれ部の上部と下部との間に回転軸を設ける構成であると、背上部を後傾させる回転半径が小さくなり、背上部の上端側が後方に大きく反れてしまう。従って、このように構成した背上部を後傾させると、肩近傍を支えることができないために背上部が存在していない状態と略同じ状態となり、不安定な状態となる。また、背もたれ部の上部と下部との間に回転軸を設けると、その部分が急激に折れ曲がることによって着座者の荷重が集中し、不快感や違和感などを与えるという問題を有していた。
【０００４】
そこで、本発明は上記問題を解決するために、背部を後傾させるような椅子において、座り心地を良くする椅子を提供することを目的とする。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の椅子は上記課題を解決するために、座部の後方に設けられた背部を背上部と背下部とに分け、少なくともリンクの回転により背下部と同一の軸廻りに背上部を後傾させうるようにした椅子であって、当該背上部を異なる半径で背下部に対して相対的に後傾させるための支点を前記リンクにおける着座面の下方に設け、支点を中心として前記背上部を後傾許容させることを特徴とするものである。
【０００６】
このように、座部の下方に背上部を後傾させるための支点を設けるようにしたので、背上部を後傾させる際、背上部を緩やかに後傾させながら後方へ移動させることができ、これによって、背上部の上端側に着座者の肩近傍を接触支持させることができる。
【０００７】
また、着座者の体格や姿勢もしくは好みによっては、背上部の後傾角度が異なる場合が生じる。このような場合は、当該背上部を異なる半径で背下部に対して相対的に後傾させるための支点を前記リンクにおける着座面の下方にさらに設け、軸又は支点のうちいずれか一つを選択させることによって後傾態様を切り替えられるようにすると良い。このように構成すれば、例えば、背上部を大きく後傾させる状態と小さく後傾させる態様を選択することができ、より着座者の好みなどに合わせた椅子にすることができる。
【０００８】
更に、背上部の後傾態様を切り替える場合、座部なども連携して動かせることもできる。このように構成した場合は、座部の動きも含めた態様を選択することができるようになる。
【０００９】
また、背上部と背下部とを分けた椅子において、背下部を所定角度に維持させた状態で背上部を後傾させるようにすれば、着座者の背骨を反らせることができ、これによって、着座者をリフレッシュさせることができるようになる。
【００１０】
なお、背上部を背下部に対して後傾させる場合、背上部と背下部との間の距離が変化することになる。従って、この距離の変化を吸収すべく、背部の身体接触部分に張り部材を取り付けて構成すると良い。このように張り部材を設けることによって、背上部と背下部との間の距離の変化を吸収することができるばかりでなく、背部を全体として滑らかな面にすることができる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図１は、本発明の一実施の形態を示す椅子１の要部を示す斜視図である。この椅子１は、ベース脚２に取り付けられた支基３と、この支基３に設けられたリンク６およびリンク７とを設け、更に、このリンク６およびリンク７に取り付けられた着座部を構成する着座フレーム４と、背上部である背もたれ上部フレーム５５および、背下部である背もたれ下部フレーム５０とから構成される背もたれフレーム５とを設けたものである。また、この背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０との間には布地などで構成された張り部材９を取り付けるとともに、着座フレーム４の上部にも、その表面に着座面４１ａを有する着座クッション４１などを取り付けて構成するようにしている。
【００１２】
この支基３は、逆三角形状のアルミ部材で構成したものであり、その下側をベース脚２に取り付けるとともに、その先端部分に軸６１を介してリンク６を取り付けたものである。このリンク６は、着座フレーム４の前方両側の軸４０および軸６１とによって回転しながら動くように構成されたものである。また、このリンク６の上端に設けられた軸４０と支基３の中心部分との間にガススプリング９０が設けられており、図示しないレバーによって、このガススプリング９０の固定状態とフリー状態とを切り替えて、背もたれフレーム５の傾きを変えられるようにしている。また、支基３の略中央部分には、トーションバー７２が設けられており、この延長方向にある軸７１にリンク７の一端を固定している。このリンク７は、軸７１から斜め後方に延びる金属部材によって構成されたものであり、このリンク７の他端側を着座フレーム４の後方側近に回転可能に取り付けられている。なお、このリンク７は、トーションバー７２のバネ力によって、着座面４１ａの下方の軸８を椅子１の前方側（Ｂ側）に回転させるようにしている。
【００１３】
また、このリンク７の上端裏面側には、背もたれ上部フレーム５５との間に連結されたガススプリング９１が設けられており、常時このガスの力によって背もたれ上部フレーム５５を前方側（Ｂ側）に押圧するようにしている。また、このガススプリング９１の近傍には、その軸を挟み込んで固定するための機構が設けられており、図示しないレバーの操作によってガススプリング９１をフリー状態と固定状態とに切り替えられるようにしている。
【００１４】
また、この背もたれ上部フレーム５５の内側には、リンク７に設けられた軸７０を介して背もたれ下部フレーム５０が回転可能に取り付けられている。この背もたれ下部フレーム５０は、リンク７の略延長方向上に延びる坐骨対応フレーム５１と、この坐骨対応フレーム５１の上部に設けられた連結部材５３と、この連結部材５３の両端に設けられ略直角上方に延びるように設けられた腰骨対応フレーム５２とによって構成されるものである。さらに、この腰骨対応フレーム５１の先端部分には、椅子１の背後側（Ａ側）に向けて円弧状に湾曲させた湾曲部５２ａを設けて構成しており、また、連結部材５３とその下方に設けられた着座フレーム４の後方フレームとの間にガススプリング９２を取り付けて、所定角度で固定できるようにしている。なお、このガススプリング９２は、本実施の形態では、常時固定状態に保持されているものとして説明する。
【００１５】
一方、軸８に取り付けられている背もたれ上部フレーム５５は、その裏側に設けられたガススプリング９１を固定状態にすることによって、リンク７と一体として軸７１を中心に回転できるようにしたものであり、更に、このガススプリング９１をフリー状態にすることによって、軸８を中心として回転できるようにしたものである。また、この背もたれ上部フレーム５５は、背もたれ下部フレーム５０と同様に、その着座フレーム４の後方で屈曲させて構成するとともに、この屈曲部分から背もたれ下部フレーム５０の後方を通って、着座者の肩近傍に湾曲部５５ａを設けて構成するようにしている。
【００１６】
また、このように設けられた背もたれ上部フレーム５５の湾曲部５５ａおよび背もたれ下部フレーム５０の湾曲部５２ａの上方には、この湾曲部上で撓むことができるようにした片持梁状の弾性片９３（図２参照）が設けられており、更に、この弾性片９３の上部に背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０とを覆う張り部材９を設けるようにしている。
【００１７】
次に、このように構成された椅子１の背もたれ状態を切り替える場合について説明する。まず、背もたれ上部フレーム５５を背もたれ下部フレーム５０と一体としてＡ方向に後傾させ、かつ、着座フレーム４もこれに連動させて後傾させる第一の状態（図３）を説明する。
【００１８】
まず、背もたれ下部フレーム５０と着座フレーム４とを立位にした状態（図２）（すなわち、着座していない状態でガススプリング９０をフリーにした状態）から背もたれフレーム５全体を後傾させる第一の状態（図３）にする場合、ガススプリング９１を固定するとともにガススプリング９０をフリー状態にする。これによって、背もたれ上部フレーム５５は、リンク７と一体となって軸７１を中心に大きく回転できるようになり、更に、ガススプリング９０がフリー状態となることによって、支基３・リンク６・着座フレーム４・リンク７による４点リンク機構によって、着座フレーム４を後方に傾斜させるように連動する。また、背もたれ下部フレーム５０も、リンク７の回転に伴って後傾して、全体として着座フレーム４と背もたれフレーム５がシンクロするようになる。
【００１９】
また、背もたれ下部フレーム５０と着座フレーム４とを立位にした状態（図２）から背もたれ上部フレーム５５を小さく後傾させる第二の状態（図４）にする場合、ガススプリング９１をフリー状態にするとともに、着座フレーム４の下方に設けられたガススプリング９０を固定状態にする。これによって、着座フレーム４と背もたれ下部フレーム５０が固定され、背もたれ上部フレーム５５のみが軸８を中心としてＡ側に回転できるようになる。この場合、背もたれ上部フレーム５５の上端位置と背もたれ下部フレーム５０の上端位置の距離が変化することになる。しかし、この距離の変化を張り部材９および弾性片９３の撓みによって吸収し、全体として滑らかな背もたれ部分を構成するようになる。
【００２０】
このように、本実施の形態によれば、背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０とに分け、少なくとも背もたれ上部フレーム５５を後傾させうる椅子１において、背もたれ上部フレーム５５を、異なる回転半径で後傾させるための軸７１と軸８を着座面４１ａの下方に設け、これらの軸７１・軸８を切り替えることによって複数種類の後傾態様（図３、図４）を選びうるようにしたので、背上部を後傾させる際に、背上部を緩やかに後傾させながら後方へ移動させることができ、これによって、背上部の上端側に着座者の肩近傍を安定させることができる。また、背もたれ上部フレーム５５の後傾態様を複数選択できるようにしたので、着座者の好みに適した椅子にすることもできる。この場合、本実施の形態では、背もたれ下部フレーム５０を所定角度に維持させた状態で背もたれ上部フレーム５５を後傾させるようにしたので、着座者の背骨を反らせることができ、これによって、着座者をリフレッシュさせることができるようになる。
【００２１】
更に、背もたれフレーム５を全体として後傾させる場合に、着座フレーム４も連動させて後傾させるようにしたので、背もたれフレーム５全体を後傾させた場合に、臀部のズレを防止することができ、より座り心地を良くすることができる。
【００２２】
また、このような椅子１において、背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０との間に、撓みを許容する弾性片９３を取り付け、更に、この弾性片９３上に張り部材９を設けるようにしたので、背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０との相対距離が変化した場合であっても、弾性片９３と張り部材９の撓みによって、この距離の変化を吸収することができる。
【００２３】
なお、本実施の形態においては、背もたれ下部フレーム５０を背もたれ上部フレーム５５の内側に設けるようにしたが、これを逆に設けるようにしても良い。また、背もたれ上部フレーム５５の回転軸を、ガススプリング９１の固定状態・フリー状態の切り替えによって変えるようにしたが、これに限らず、背もたれ上部フレームとリンク７との連結を切り替えられるものであれば、どのような構成を採用しても良い。
【００２４】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【００２５】
すなわち本発明の椅子は、座部の後方に設けられた背部を背上部と背下部とに分け、少なくとも背上部を後傾させうるようにした椅子において、当該背上部を後傾させるための支点を着座面の下方に設け、当該支点を中心として前記背上部を後傾許容させるようにしたので、背上部を後傾させる際、背上部を緩やかに後傾させながら後方へ移動させることができ、これによって、背上部の上端側に着座者の肩近傍を接触支持させることができる。
【００２６】
また、別の発明では、背上部を異なる半径で後傾させるための支点を着座面の下方に複数設け、当該複数の支点のうちいずれか一つを選択させることによって、当該選択された支点を中心として前記背上部を後傾許容させるようにしたので、例えば、背上部を大きく後傾させる状態と小さく後傾させる態様を選択することができ、より着座者の好みなどに合わせた椅子にすることができる。
【００２７】
更に、別の発明では、背上部を異なる半径で後傾させるための支点を着座面の下方に複数設け、当該複数の支点を切り替えることによって、背上部と背下部とを座部と連動させて後傾許容させる態様と、背上部を背下部に対して後傾させる後傾態様とを選択できるようにしたので、座部も含めて着座者の好みの態様に適した形体を選択することができるようになる。
【００２８】
また、別の発明では、背下部を所定角度に維持させた状態で背上部を後傾させるようにしたので、着座者の背骨を反らせることができ、これによって、着座者をリフレッシュさせることができるようになる。
【００２９】
また、このような発明において、背上部と背下部との間に張り部材を設けるようにしたので、背上部と背下部との間の距離の変化を吸収することができるばかりでなく、背部を全体として滑らかな面にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施の形態を示す椅子の要部斜視図。
【図２】同実施の形態を示す椅子の立位状態を示す側面図。
【図３】同実施の形態を示す椅子の第一の状態を示す側面図。
【図４】同実施の形態を示す椅子の第二の状態を示す側面図。
【符号の説明】
１・・・椅子
４・・・座部（着座フレーム）
５・・・背部（背もたれフレーム）
８・・・支点（軸）
４１ａ・・・着座面
５０・・・背上部（背もたれ下部フレーム）
５５・・・背下部（背もたれ上部フレーム）
７１・・・支点（軸）
【発明の属する技術分野】
本発明は、椅子の構造に関するものであり、具体的には、座り心地を良くした椅子に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
現在、事務などで使用されている椅子の中には、背の上部を後方に向けて反らせるようにしたものが存在している。このような椅子は、着座者の背骨を逆方向に反らせることによってリフレッシュさせることを可能にしたものであり、主に、背もたれ部の上部と下部との間に回転軸を取り付け、この回転軸を中心として、その上部に設けられた背部を後方に傾斜させるように構成している。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のように背もたれ部の上部と下部との間に回転軸を設ける構成であると、背上部を後傾させる回転半径が小さくなり、背上部の上端側が後方に大きく反れてしまう。従って、このように構成した背上部を後傾させると、肩近傍を支えることができないために背上部が存在していない状態と略同じ状態となり、不安定な状態となる。また、背もたれ部の上部と下部との間に回転軸を設けると、その部分が急激に折れ曲がることによって着座者の荷重が集中し、不快感や違和感などを与えるという問題を有していた。
【０００４】
そこで、本発明は上記問題を解決するために、背部を後傾させるような椅子において、座り心地を良くする椅子を提供することを目的とする。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の椅子は上記課題を解決するために、座部の後方に設けられた背部を背上部と背下部とに分け、少なくともリンクの回転により背下部と同一の軸廻りに背上部を後傾させうるようにした椅子であって、当該背上部を異なる半径で背下部に対して相対的に後傾させるための支点を前記リンクにおける着座面の下方に設け、支点を中心として前記背上部を後傾許容させることを特徴とするものである。
【０００６】
このように、座部の下方に背上部を後傾させるための支点を設けるようにしたので、背上部を後傾させる際、背上部を緩やかに後傾させながら後方へ移動させることができ、これによって、背上部の上端側に着座者の肩近傍を接触支持させることができる。
【０００７】
また、着座者の体格や姿勢もしくは好みによっては、背上部の後傾角度が異なる場合が生じる。このような場合は、当該背上部を異なる半径で背下部に対して相対的に後傾させるための支点を前記リンクにおける着座面の下方にさらに設け、軸又は支点のうちいずれか一つを選択させることによって後傾態様を切り替えられるようにすると良い。このように構成すれば、例えば、背上部を大きく後傾させる状態と小さく後傾させる態様を選択することができ、より着座者の好みなどに合わせた椅子にすることができる。
【０００８】
更に、背上部の後傾態様を切り替える場合、座部なども連携して動かせることもできる。このように構成した場合は、座部の動きも含めた態様を選択することができるようになる。
【０００９】
また、背上部と背下部とを分けた椅子において、背下部を所定角度に維持させた状態で背上部を後傾させるようにすれば、着座者の背骨を反らせることができ、これによって、着座者をリフレッシュさせることができるようになる。
【００１０】
なお、背上部を背下部に対して後傾させる場合、背上部と背下部との間の距離が変化することになる。従って、この距離の変化を吸収すべく、背部の身体接触部分に張り部材を取り付けて構成すると良い。このように張り部材を設けることによって、背上部と背下部との間の距離の変化を吸収することができるばかりでなく、背部を全体として滑らかな面にすることができる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図１は、本発明の一実施の形態を示す椅子１の要部を示す斜視図である。この椅子１は、ベース脚２に取り付けられた支基３と、この支基３に設けられたリンク６およびリンク７とを設け、更に、このリンク６およびリンク７に取り付けられた着座部を構成する着座フレーム４と、背上部である背もたれ上部フレーム５５および、背下部である背もたれ下部フレーム５０とから構成される背もたれフレーム５とを設けたものである。また、この背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０との間には布地などで構成された張り部材９を取り付けるとともに、着座フレーム４の上部にも、その表面に着座面４１ａを有する着座クッション４１などを取り付けて構成するようにしている。
【００１２】
この支基３は、逆三角形状のアルミ部材で構成したものであり、その下側をベース脚２に取り付けるとともに、その先端部分に軸６１を介してリンク６を取り付けたものである。このリンク６は、着座フレーム４の前方両側の軸４０および軸６１とによって回転しながら動くように構成されたものである。また、このリンク６の上端に設けられた軸４０と支基３の中心部分との間にガススプリング９０が設けられており、図示しないレバーによって、このガススプリング９０の固定状態とフリー状態とを切り替えて、背もたれフレーム５の傾きを変えられるようにしている。また、支基３の略中央部分には、トーションバー７２が設けられており、この延長方向にある軸７１にリンク７の一端を固定している。このリンク７は、軸７１から斜め後方に延びる金属部材によって構成されたものであり、このリンク７の他端側を着座フレーム４の後方側近に回転可能に取り付けられている。なお、このリンク７は、トーションバー７２のバネ力によって、着座面４１ａの下方の軸８を椅子１の前方側（Ｂ側）に回転させるようにしている。
【００１３】
また、このリンク７の上端裏面側には、背もたれ上部フレーム５５との間に連結されたガススプリング９１が設けられており、常時このガスの力によって背もたれ上部フレーム５５を前方側（Ｂ側）に押圧するようにしている。また、このガススプリング９１の近傍には、その軸を挟み込んで固定するための機構が設けられており、図示しないレバーの操作によってガススプリング９１をフリー状態と固定状態とに切り替えられるようにしている。
【００１４】
また、この背もたれ上部フレーム５５の内側には、リンク７に設けられた軸７０を介して背もたれ下部フレーム５０が回転可能に取り付けられている。この背もたれ下部フレーム５０は、リンク７の略延長方向上に延びる坐骨対応フレーム５１と、この坐骨対応フレーム５１の上部に設けられた連結部材５３と、この連結部材５３の両端に設けられ略直角上方に延びるように設けられた腰骨対応フレーム５２とによって構成されるものである。さらに、この腰骨対応フレーム５１の先端部分には、椅子１の背後側（Ａ側）に向けて円弧状に湾曲させた湾曲部５２ａを設けて構成しており、また、連結部材５３とその下方に設けられた着座フレーム４の後方フレームとの間にガススプリング９２を取り付けて、所定角度で固定できるようにしている。なお、このガススプリング９２は、本実施の形態では、常時固定状態に保持されているものとして説明する。
【００１５】
一方、軸８に取り付けられている背もたれ上部フレーム５５は、その裏側に設けられたガススプリング９１を固定状態にすることによって、リンク７と一体として軸７１を中心に回転できるようにしたものであり、更に、このガススプリング９１をフリー状態にすることによって、軸８を中心として回転できるようにしたものである。また、この背もたれ上部フレーム５５は、背もたれ下部フレーム５０と同様に、その着座フレーム４の後方で屈曲させて構成するとともに、この屈曲部分から背もたれ下部フレーム５０の後方を通って、着座者の肩近傍に湾曲部５５ａを設けて構成するようにしている。
【００１６】
また、このように設けられた背もたれ上部フレーム５５の湾曲部５５ａおよび背もたれ下部フレーム５０の湾曲部５２ａの上方には、この湾曲部上で撓むことができるようにした片持梁状の弾性片９３（図２参照）が設けられており、更に、この弾性片９３の上部に背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０とを覆う張り部材９を設けるようにしている。
【００１７】
次に、このように構成された椅子１の背もたれ状態を切り替える場合について説明する。まず、背もたれ上部フレーム５５を背もたれ下部フレーム５０と一体としてＡ方向に後傾させ、かつ、着座フレーム４もこれに連動させて後傾させる第一の状態（図３）を説明する。
【００１８】
まず、背もたれ下部フレーム５０と着座フレーム４とを立位にした状態（図２）（すなわち、着座していない状態でガススプリング９０をフリーにした状態）から背もたれフレーム５全体を後傾させる第一の状態（図３）にする場合、ガススプリング９１を固定するとともにガススプリング９０をフリー状態にする。これによって、背もたれ上部フレーム５５は、リンク７と一体となって軸７１を中心に大きく回転できるようになり、更に、ガススプリング９０がフリー状態となることによって、支基３・リンク６・着座フレーム４・リンク７による４点リンク機構によって、着座フレーム４を後方に傾斜させるように連動する。また、背もたれ下部フレーム５０も、リンク７の回転に伴って後傾して、全体として着座フレーム４と背もたれフレーム５がシンクロするようになる。
【００１９】
また、背もたれ下部フレーム５０と着座フレーム４とを立位にした状態（図２）から背もたれ上部フレーム５５を小さく後傾させる第二の状態（図４）にする場合、ガススプリング９１をフリー状態にするとともに、着座フレーム４の下方に設けられたガススプリング９０を固定状態にする。これによって、着座フレーム４と背もたれ下部フレーム５０が固定され、背もたれ上部フレーム５５のみが軸８を中心としてＡ側に回転できるようになる。この場合、背もたれ上部フレーム５５の上端位置と背もたれ下部フレーム５０の上端位置の距離が変化することになる。しかし、この距離の変化を張り部材９および弾性片９３の撓みによって吸収し、全体として滑らかな背もたれ部分を構成するようになる。
【００２０】
このように、本実施の形態によれば、背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０とに分け、少なくとも背もたれ上部フレーム５５を後傾させうる椅子１において、背もたれ上部フレーム５５を、異なる回転半径で後傾させるための軸７１と軸８を着座面４１ａの下方に設け、これらの軸７１・軸８を切り替えることによって複数種類の後傾態様（図３、図４）を選びうるようにしたので、背上部を後傾させる際に、背上部を緩やかに後傾させながら後方へ移動させることができ、これによって、背上部の上端側に着座者の肩近傍を安定させることができる。また、背もたれ上部フレーム５５の後傾態様を複数選択できるようにしたので、着座者の好みに適した椅子にすることもできる。この場合、本実施の形態では、背もたれ下部フレーム５０を所定角度に維持させた状態で背もたれ上部フレーム５５を後傾させるようにしたので、着座者の背骨を反らせることができ、これによって、着座者をリフレッシュさせることができるようになる。
【００２１】
更に、背もたれフレーム５を全体として後傾させる場合に、着座フレーム４も連動させて後傾させるようにしたので、背もたれフレーム５全体を後傾させた場合に、臀部のズレを防止することができ、より座り心地を良くすることができる。
【００２２】
また、このような椅子１において、背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０との間に、撓みを許容する弾性片９３を取り付け、更に、この弾性片９３上に張り部材９を設けるようにしたので、背もたれ上部フレーム５５と背もたれ下部フレーム５０との相対距離が変化した場合であっても、弾性片９３と張り部材９の撓みによって、この距離の変化を吸収することができる。
【００２３】
なお、本実施の形態においては、背もたれ下部フレーム５０を背もたれ上部フレーム５５の内側に設けるようにしたが、これを逆に設けるようにしても良い。また、背もたれ上部フレーム５５の回転軸を、ガススプリング９１の固定状態・フリー状態の切り替えによって変えるようにしたが、これに限らず、背もたれ上部フレームとリンク７との連結を切り替えられるものであれば、どのような構成を採用しても良い。
【００２４】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【００２５】
すなわち本発明の椅子は、座部の後方に設けられた背部を背上部と背下部とに分け、少なくとも背上部を後傾させうるようにした椅子において、当該背上部を後傾させるための支点を着座面の下方に設け、当該支点を中心として前記背上部を後傾許容させるようにしたので、背上部を後傾させる際、背上部を緩やかに後傾させながら後方へ移動させることができ、これによって、背上部の上端側に着座者の肩近傍を接触支持させることができる。
【００２６】
また、別の発明では、背上部を異なる半径で後傾させるための支点を着座面の下方に複数設け、当該複数の支点のうちいずれか一つを選択させることによって、当該選択された支点を中心として前記背上部を後傾許容させるようにしたので、例えば、背上部を大きく後傾させる状態と小さく後傾させる態様を選択することができ、より着座者の好みなどに合わせた椅子にすることができる。
【００２７】
更に、別の発明では、背上部を異なる半径で後傾させるための支点を着座面の下方に複数設け、当該複数の支点を切り替えることによって、背上部と背下部とを座部と連動させて後傾許容させる態様と、背上部を背下部に対して後傾させる後傾態様とを選択できるようにしたので、座部も含めて着座者の好みの態様に適した形体を選択することができるようになる。
【００２８】
また、別の発明では、背下部を所定角度に維持させた状態で背上部を後傾させるようにしたので、着座者の背骨を反らせることができ、これによって、着座者をリフレッシュさせることができるようになる。
【００２９】
また、このような発明において、背上部と背下部との間に張り部材を設けるようにしたので、背上部と背下部との間の距離の変化を吸収することができるばかりでなく、背部を全体として滑らかな面にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施の形態を示す椅子の要部斜視図。
【図２】同実施の形態を示す椅子の立位状態を示す側面図。
【図３】同実施の形態を示す椅子の第一の状態を示す側面図。
【図４】同実施の形態を示す椅子の第二の状態を示す側面図。
【符号の説明】
１・・・椅子
４・・・座部（着座フレーム）
５・・・背部（背もたれフレーム）
８・・・支点（軸）
４１ａ・・・着座面
５０・・・背上部（背もたれ下部フレーム）
５５・・・背下部（背もたれ上部フレーム）
７１・・・支点（軸）
Claims (4)
- 座部の後方に設けられた背部を背上部と背下部とに分け、少なくともリンクの回転により背下部と同一の軸廻りに背上部を後傾させうるようにした椅子であって、当該背上部を異なる半径で背下部に対して相対的に後傾させるための支点を前記リンクにおける着座面の下方に設け、支点を中心として前記背上部を後傾許容させることを特徴とする椅子。
- 座部の後方に設けられた背部を背上部と背下部とに分け、少なくともリンクの回転により背下部と同一の軸廻りに背上部を後傾させうるようにした椅子であって、当該背上部を異なる半径で背下部に対して相対的に後傾させるための支点を前記リンクにおける着座面の下方にさらに設け、当該軸又は支点のうちいずれか一つを選択させることによって、当該軸又は支点を中心として前記背上部を後傾許容させることを特徴とする椅子。
- 座部の後方に設けられた背部を背上部と背下部とに分け、少なくともリンクの回転により背下部と同一の軸廻りに背上部を後傾させうるようにした椅子であって、当該背上部を異なる半径で背下部に対して相対的に後傾させるための支点を前記リンクにおける着座面の下方に設け、前記背下部を所定角度に維持させて、前記背上部を前記支点を中心として後傾許容させることを特徴とする椅子。
- 前記背上部と背下部との間に張り部材を設けて背部を構成したことを特徴とする請求項１から３の何れかに記載の椅子。
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