JP3997596B2 - 窒化ケイ素粉末 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造用セラミックスとして使用される窒化ケイ素セラミックスの中で、特に高靭性高信頼性の窒化ケイ素セラミックスの製造用原料として好適な易焼結性の窒化ケイ素粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】
窒化ケイ素セラミックスは、高強度、高靱性、高耐蝕性という優れた特性を有し、1000℃以下の温度で使用される構造部材や機械部品として種々の分野への用途展開が進展している。しかしながら、窒化ケイ素セラミックスの焼結においては、通常Y23、Al23等の酸化物を5〜10重量%程度添加して焼結を行う為に、焼結条件下で成長するSi34粒子の粒径、アスペクト比等により、得られる焼結体の破壊靭性が変化するという難点があった。このような焼結条件による破壊靭性の変動を防止し、焼結条件によらず安定して高い靭性を維持し得る窒化ケイ素セラミックスを製造する為に、Y23、MgO、Al23等の焼結助剤の探索やCr2N、NbB、TaSi2、ZrSi2等の硬質粒子による分散強化の検討と併行して、焼結体製造原料として好適な特性を有する原料粉末の開発が行われている。
【0003】
従来、窒化ケイ素粉末の製法としては、(1)金属ケイ素粉末の直接窒化法、(2)シリカ粉末の還元窒化法、(3)ハロゲン化ケイ素とアンモニアとを反応させるイミド分解法等が知られている。これらの方法で製造された窒化ケイ素粉末は、製造履歴が異なる為か、金属不純物量、酸素含有量、粒径等が同じ値であっても、粉末の焼結性や得られる焼結体の特性に大きな相違がある。一般的には、上記(3)の方法で製造された窒化ケイ素粉末が易焼結性であり、かつ優れた焼結体性能を示すと言われている。
【0004】
粉末特性と焼結性及び焼結体特性に関する研究の進展につれ、焼結性及び焼結体特性の支配因子が解明されてきた結果、上記の製造履歴の影響は絶対的なものではなく、種々の粉末特性の交互作用によるものであることが徐々に分かってきた。この点について以下に説明する。
窒化ケイ素の結晶形態には、α相とβ相の2種類が存在し、β相は酸素を固溶しない純粋な窒化ケイ素であるのに対して、α相は結晶格子内に酸素を固溶することが知られている。窒化ケイ素の焼結においては、昇温過程において焼結助剤と窒化ケイ素粒子表面のシリカとが反応して融液相が生成し、この融液相への窒化ケイ素の溶解と、β相としての再析出により緻密化が進行する。この為、焼結体製造原料としては、α相分率の高い窒化ケイ素粉末が望ましいと言われている。
【0005】
ところが従来法では、粉末X線回折法により結晶相の同定と定量を行ってきた為、アモルファスを含む相組成(β相分率、α相分率及びアモルファス分率)と焼結性及び焼結体特性との相関の解析が十分ではなかった。
特開昭63−147867号公報には、β相含有率2%未満のα−Si34粉末とβ相含有率10%以上のSi34粉末とを混合して、β相含有率を2〜30%の範囲に調整したSi34粉末を使用することにより、Si3492wt%、Al234wt%、Y236wt%という配合組成で、高密度高強度な窒化ケイ素焼結体を製造する方法が開示されている。
しかしながら、使用した原料粉末の中心粒径が0.5μmというやや粗いものであった為、低β相含有率の粉末ではα→β相転移の速度が遅く、総量10wt%の酸化物を添加しても高密度な焼結体は得られていない。
また、特開平2−175662号公報には、α相含有率98%以上、平均粒径0.3〜0.5μmのSi34粉末と焼結助剤とからなる成形体を1600〜1800℃で焼結することによる室温から高温まで高強度な窒化ケイ素質焼結体の製造方法が開示されている。
しかしながら、使用した原料粉末の粉末特性としては、平均粒径とα相含有率以外の記載はなく、これら以外の粉体特性が焼結性及び焼結体特性に及ぼす効果については、全く言及されていない。また、SiO2含有量6モル%未満では、高密度な焼結体が得られていない。
特開平8−12306号公報には、高靭性、高信頼性の窒化ケイ素セラミックスの製造用原料として好適なβ相分率0〜1.8重量%、α相分率93.2〜100重量%、結晶子径0.10μm以下、非晶質分率5.0重量%以下、炭素含有量0.10重量%以下の窒化ケイ素粉末が開示されている。しかしながら、同公報では、加水分解法により非晶質分率を測定した為に、非晶質分率0〜5.0重量%の範囲においてさえ、非晶質分率によって得られる窒化ケイ素セラミックスの強度特性が変化することを見逃している。窒化ケイ素粉末中の非晶質の影響については、更に詳細な解析が必要であり、同公報に開示の窒化ケイ素粉末と本発明とは同一ではない。
【0006】
ところで、Analytical Chemistry第59巻、第23号の2794〜2797ページには、29Si核のマジック角回転核磁気共鳴分光(MAS NMR)法により測定されたSi34粉末のβ相分率、α相分率及びアモルファス分率が記載されている。しかしながら、この文献には焼結体製造原料の必須要件である比表面積と化学組成(酸素含有量、炭素含有量など)については、全く言及されていない。焼結体製造原料としてのSi34粉末には比表面積、粒度分布及び化学組成(酸素含有量、炭素含有量など)に最適値があり、これらの特性が最適値を逸脱した粉末では、相組成(β相分率、α相分率及びアモルファス分率)が制御されていても十分な焼結性及び焼結体特性が発現しない。また、同文献では、ブロッホ・ディケイ法で測定したMAS NMRスペクトルのピーク解析からアモルファス分率を求めている為に、アモルファス分率の測定精度が著しく悪く、±5重量%弱の測定誤差を含んでいた。
【0007】
以上の公知文献では、原料粉末のアモルファス分率が精度良く求められておらず、アモルファス分率と焼結性及び焼結体特性との相関について定量的な解析が行われていなかった。原料粉末の相組成と焼結性及び焼結体特性との相関を解明する上で、高精度なアモルファス分率の測定方法の確立が非常に重要な事項であることはいうまでもないことである。このような事情により、従来技術では、高靭性、高信頼性等の優れた特性を有する窒化ケイ素セラミックスを再現性良く安定的に製造することは困難であった。
本発明の目的は、上記の課題を解決し、高靭性高信頼性の窒化ケイ素セラミックスを再現性良く安定して製造できる窒化ケイ素粉末を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、窒化ケイ素の粉体特性と焼結性及び焼結体特性との関係について種々検討した結果、焼結性及び焼結体特性を支配する因子としては、相組成(β相分率、α相分率及びアモルファス分率)、比表面積、酸素含有量、表面酸素含有量、炭素含有量、粒度分布、凝集度及び結晶子径があり、特に、29Si核の交差分極法MAS NMR分光により測定されたアモルファス分率、α相分率、β相分率、結晶子径、比表面積、及び炭素含有量がそれぞれ特定範囲にある窒化ケイ素粉末が、上記の目的を達成するものであることを知見した。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたもので、29Si核の交差分極法マジック角回転核磁気共鳴分光により測定したアモルファス分率が1.0〜5.0重量%であり、α相分率が80〜99重量%、β相分率が19重量%以下であることを特徴とする窒化ケイ素粉末を提供するものである。また本発明は、これらの粉末特性に加えて、更に、結晶子径が0.1μm以下、比表面積が5〜25m2/g、炭素含有量が0.12重量%以下であることを特徴とする窒化ケイ素粉末を提供するものである。また、本発明は、イミド分解法において、イミドの比表面積を500〜950m /g、軽装密度を0.035〜0.075g/cm に調整し、1400〜1700℃の温度条件下で結晶化させることにより得られた窒化ケイ素粉末を、酸素を4〜30%含有し、残部が不活性ガスからなる雰囲気中でミル処理することを特徴とする前記窒化ケイ素粉末の製造方法に関する。
【0010】
以下に、本発明の窒化ケイ素粉末について詳述する。
本発明の窒化ケイ素粉末は、29Si核の交差分極法マジック角回転核磁気共鳴分光により測定した アモルファス分率が1.0〜5.0重量%、好ましくは1.5〜4.5重量%、α相分率が80〜99重量%、好ましくは85〜98重量%、β相分率が19重量%以下、好ましくは1.9〜13.5重量%であることを特徴とする窒化ケイ素粉末である。
【0011】
アモルファス窒化ケイ素はα相やβ相などの結晶質窒化ケイ素よりも高活性であり、焼結時における構成原子の物質移動を加速して、迅速な緻密化を実現する。この為、アモルファス分率が1.0重量%未満の低濃度の完全結晶粒子になると、緻密化速度が低下して、焼結性が悪くなる。アモルファス成分が5.0重量%よりも多く存在すると、焼結速度に不均一を生じ、焼結体内部に残留気孔を生ずるばかりでなく、燒結体を構成する柱状粒子のアスペクト比(長軸径/短軸径比)が低下して、焼結体の強度特性を悪化させる原因となる。窒化ケイ素粉末のアモルファス分率は種々の方法によって測定することが可能であるが、特に、29Si核の交差分極法MAS NMR分光により、再現性よく測定することができる。
【0012】
結晶質窒化ケイ素についても、α相の粒子とβ相の粒子とでは、その焼結挙動に異なった寄与を及ぼす。即ち、昇温過程で生成した焼結助剤−シリケート系液相に、α相粒子は迅速に溶解するのに対して、β相粒子の溶解速度は遅いので、α相粒子の方が緻密化に有利である。この為、α分率が80重量%未満になると緻密化速度が低下して、通常の焼結条件では高密度な焼結体が得られなくなる。α分率が99重量%を越えると、アモルファス成分の濃度が低下するので、やはり緻密化速度が低下して、焼結性が悪くなる。
【0013】
窒化ケイ素粉末中のβ相粒子は、結晶子径が0.1μm以下の微粒になると焼結時のα→β相転移を促進する核として作用し、相転移を低温で迅速に進行させる作用があるものと考えられる。これにより緻密化速度は上昇して、高密度な焼結体が得られる。したがって、微量のβ相粒子が存在する方が好ましい。
さらに、β相の割合が19重量%以下であると、β相粒子の析出時に異方的な粒成長が起こり、アスペクト比の高い柱状結晶が多数生成して、破壊靭性が向上する。β相の割合が19重量%を越えると、焼結時のα→β相転移に伴う柱状結晶の成長が抑制され、等軸結晶が増加して、アスペクト比の高い柱状結晶の割合が減少する為に、焼結体の破壊靭性が低下する。
【0014】
また、本発明の窒化ケイ素粉末は、主成分であるα相粒子の結晶子径が0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.08μm、比表面積が5〜25m2/g、好ましくは7〜20m2/g、炭素含有量が0.12重量%以下、好ましくは0.10重量%以下であることが望ましい。
焼結の進行自体は、原料粉末の粒径を小さくして、比表面積を上げるほど促進される。この為、比表面積が5m2/g未満の粉末は緻密化速度が遅く、焼結助剤を大量に添加しない限り高密度な焼結体は得られない。比表面積が25m2/gを越えると成形体の嵩密度が低下し、焼結時の収縮が増大するばかりでなく、焼結収縮が不均一となって、焼結体が変形したり、ミクロクラックが発生するので好ましくない。
原料粉末中の炭素は、焼結時に添加される酸化物助剤と反応して一酸化炭素ガスを発生し、これが残留気孔の発生原因となる為に、0.12重量%以下にする必要がある。
【0015】
また、窒化ケイ素の焼結においては、原料粉末の酸素含有量及び表面酸素含有量が緻密化速度に大きな影響を及ぼす。酸素含有量は0.8〜2.0重量%、好ましくは0.9〜1.8重量%、表面酸素含有量は0.3〜0.8重量%、好ましくは0.4〜0.7重量%であることが望ましい。
酸素含有量が0.8重量%未満になると、昇温過程において生成する焼結助剤−シリケート系液相の量が不足し、また粘度も高くなるので、緻密化が阻害される。酸素含有量が2.0重量%を越えると、得られる焼結体の機械的性質が悪化する。特に、破壊靭性の低下と高温強度の低下が顕著である。
窒化ケイ素の緻密化においては表面酸素が重要な役割を果たす。表面酸素含有量が0.3重量未満になると、焼結過程初期における焼結助剤−シリケート系液相の生成量が不足する為、粒界気孔が成長して、高密度な焼結体が得られない。表面酸素含有量が0.8重量%を越えると、得られる焼結体の機械的性質が低下する。特に、破壊靭性の低下が顕著である。
【0016】
本発明の窒化ケイ素粉末におけるアモルファス分率は29Si核の交差分極法MAS NMR分光により測定した。即ち、29Si核MAS NMR測定については Journal of American Ceramic Society第79巻、第2号(1996年)の513〜517ページに記載の交差分極(クロス・ポーラリゼーション)法で実施した。測定においては、内部標準としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム塩(TSP)を、サンプルに10重量%添加した。測定精度を高める為に、コンタクト時間2ミリ秒、サイクル時間4秒という条件で、8000回以上の積算を行った。
アモルファスSi34の交差分極 MAS NMRスペクトルは線幅の広い1本のピークであり、−43ppm付近に観測された。
【0017】
特開平8−12306号公報に記載の加水分解法によるアモルファス分率と本発明の交差分極MAS NMR法によるアモルファス分率とを比較すると、加水分解法による測定値で0.1〜0.5重量%のものが、本発明の測定法では1.0〜5.0重量%に対応し、より高精度な測定が可能である。
従来行われてきた測定法では、アモルファス分率を精度良く算出することが困難であった為、アモルファス分率が1.0〜5.0重量%の窒化ケイ素粉末を再現性良く製造するという試みが行われていなかった。本発明では、交差分極法MAS NMR分光により少量のアモルファス分率の定量精度を向上させることができ、アモルファス分率を制御した窒化ケイ素粉末を製造することが可能となった。
【0018】
本発明の窒化ケイ素粉末におけるβ相分率及びα相分率は、回折角(2θ)15〜80゜の範囲を0.02゜刻みでステップスキャンした粉末X線回折パターンのリートベルト解析〔 Journal of Materials Science第19巻の3115〜3120ページ(F.Izumi、M.Mitomo and Y.Bando著、1984年出版)参照〕により求めた値である。リートベルト解析によれば、従来の粉末X線回折法よりも高精度に、構成結晶相の存在割合を定量することができる。
【0019】
また、本発明の窒化ケイ素粉末の結晶子径は、同様に、回折角(2θ)15〜80゜の粉末X線回折ピークの半値幅を高精度に算出し、下記〔数1〕のシェラーの式より求めた結晶子径を平均したものである。
尚、回折ピークの半値幅の算出においては、回折装置の光学系による線幅を補正する必要がある。この補正には、NIST(米国 National Institute of Standads and Technology)より配布されている標準シリコン粉末を使用した。
【0020】
【数1】
Figure 0003997596
hkl :結晶子径(nm)
λ:測定X線波長(nm)
β:回折角のひろがり(ラジアン)
θ:回折角のブラッグ角
K:定数〔βが半値幅(FWHM)の場合は0.94〕
【0021】
本発明の窒化ケイ素粉末における酸素含有量はLECO法により測定し、表面酸素含有量は日本セラミックス協会誌第101巻、第12号(1993年出版)の1419〜1422頁に記載の化学分析法により測定した。酸素含有量と表面酸素含有量との差が内部酸素含有量となる。
さらに、粒度分布も粉末の焼結性及び焼結体特性に影響を及ぼす重要な因子である。レーザー回折法により測定した重量基準の粒度分布より求めた二次粒子のメジアン平均径D2と一次粒子の平均粒径D1との比である凝集度指標D2/D1が1.5〜5.0の範囲にあることが望ましい。凝集度指標が1.5よりも小さいと焼結性が阻害され、逆に5.0よりも大きいと焼結体の組織が不均一となり、残留ポア、マイクロクラック等が生成して、所望の高強度高信頼性を実現することができない。尚、一次粒子の平均粒径は、工業材料誌第38巻第12号第114頁に記載されているように、TEM写真より二次粒子を構成している一次粒子を二次元的に透明シートにトレースし、画像解析装置により処理して求めたものである。
【0022】
次に、本発明の窒化ケイ素粉末を製造する方法について説明する。
本発明の窒化ケイ素粉末は、金属ケイ素粉末の直接窒化法、シリカ粉末の還元窒化法、イミド分解法等、種々の方法で製造することができるが、結晶相の割合、内部酸素量、二次粒子径、一次粒子径、比表面積等の粉末特性を任意に調整できるイミド分解法が最も適している。イミド分解法では、例えば、イミドの比表面積を500〜950m2/g、軽装密度を0.035〜0.075g/cm3に調整し、1400〜1700℃の温度条件下で結晶化させることにより製造することができる。
本発明においては、前記の焼成により得られた結晶質窒化ケイ素粉末を、酸素を4〜30%含有し、残部が不活性ガスからなる雰囲気中でミル処理する。雰囲気ガスとしては、酸素を4〜30%含有し、残部が窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスからなる雰囲気であればよく、例えば、空気雰囲気が好ましく用いられる。ミル処理方法としては、特に制限はなく、通常用いられるミル処理装置、例えば、振動ミル、アトライター等が用いられる。このミル処理により焼成時に起こった粒子間の融着や凝集を壊すことができるばかりでなく、粒子表面のアモルファス層の厚さも増加させることができる。
【0023】
金属ケイ素粉末の直接窒化法では、例えば、α相分率70%以上及び比表面積10m2/g以上の窒化ケイ素粉末を比表面積10m2/g以上及び酸素含有量2.0重量%以下の金属ケイ素粉末に5〜20重量%添加混合し、混合物を、水素ガスと窒素ガスとの混合雰囲気下あるいはアンモニアガスと窒素ガスとの混合雰囲気下、昇温速度10〜50℃/hで1400〜1600℃まで昇温することにより、本発明の窒化ケイ素粉末を製造することができる。生成粉末の結晶相を制御する為には、特に、雰囲気中の水素分圧と、原料の金属ケイ素粉末の仕込量及び充填密度に注意を払う必要がある。生成粉末は粉砕処理した後、必要に応じて、酸処理することにより、粒度調整と不純物除去を行い、所望の粉末を得る。
【0024】
本発明の窒化ケイ素粉末は、従来の窒化ケイ素粉末の場合と同様な方法、例えば、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム等の焼結助剤と混合し、混合物を所定の形状に成形した後、焼結することにより、窒化ケイ素セラミックス(焼結体)を製造することができる。上記成形圧力は、0.5〜10ton /cm2程度とすれば良く、また上記焼結条件は、焼結温度1500〜2000℃、雰囲気圧力0.5〜100気圧、焼結時間1〜10時間程度とすれば良い。
【0025】
本発明の窒化ケイ素粉末を用いて製造された、窒化ケイ素セラミックス(焼結体)は、特に破壊靭性が高く、高強度高ワイブル係数であることから、本発明の窒化ケイ素粉末は、1300℃以下の温度で使用されるターボローター、エンジンバルブ、ディーゼルエンジン副燃焼室等の熱機関用部品や機械部品として用いられる窒化ケイ素セラミックスの製造用原料として、特に好適なものである。
【0026】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
実施例1〜14及び比較例1〜4
下記の製造方法(イミド分解法)及び下記〔表1〕に示す製造条件により、窒化ケイ素粉末をそれぞれ製造した。得られた窒化ケイ素粉末の粉末特性を、下記〔表2〕に示す。
〔窒化ケイ素粉末の製造方法〕
0℃に冷却された直径30cm、高さ45cmの縦型反応槽内の空気を窒素ガスで置換した後、所定量の液体アンモニア及びトルエンを仕込んだ。反応槽では、上層の液体アンモニアと下層のトルエンとに分離した。予め調製した四塩化ケイ素20〜35重量%、残部トルエンよりなる溶液を、導管を通じて、ゆっくり撹拌されている下層に供給した。トルエン溶液の供給と共に、上下層の界面近傍に白色の反応生成物が析出した。
反応終了後、反応液を濾過層に移送し、生成物を濾別して、液体アンモニアで四回バッチ洗浄し、精製シリコンジイミドを得た。
【0027】
反応の際の四塩化ケイ素と液体アンモニアとの比率(体積基準)を1/50〜2/50の範囲で変化させることにより、比表面積500〜950m2/gのシリコンジイミドを合成した。なお、前記の反応の初期段階には、液体アンモニアは大過剰に存在するが、反応の進行によりアンモニアが消費されるため、液体アンモニアも連続的に反応槽へ供給することになる。そして、定常状態において反応槽内へ供給する四塩化ケイ素と液体アンモニアとの体積比率を1/50〜2/50の範囲で変化させることにより、比表面積500〜950m2/gのシリコンジイミドを合成した。
また、生成シリコンジイミドを乾燥する際の乾燥時間と撹拌回転数を変えることにより、シリコンジイミドの軽装密度を0.035〜0.075g/cm3の範囲で変化させた。
【0028】
生成したシリコンジイミドを、下記〔表1〕に記載した酸素濃度を有する窒素ガスを流通させながら1000℃で加熱分解させて、非晶質窒化ケイ素粉末を得た。次いで、得られた非晶質窒化ケイ素粉末を振動ミルにて摩砕処理した後、電気炉にて、窒素雰囲気下、〔表1〕に記載の条件(昇温速度、最高温度及び同温度での保持時間、炉内CO濃度)で加熱、焼成して、灰白色の窒化ケイ素粉末を得た。
尚、炉内のCO濃度は、流通させる窒素ガスの純度(酸素濃度、露点)と流量により調整した。
この結晶質窒化ケイ素粉末を振動ミルに投入し、水分含有量0.02%、酸素含有量10%、残部が不活性ガスよりなる雰囲気下、振幅8mmで所定の時間、ミル処理を行った。
得られた窒化ケイ素粉末の走査型電子顕微鏡による観察では、0.05〜0.5μmの等軸的な粒状粒子のみが認められた。また、窒化ケイ素粉末の塩素含有量は、いづれの場合にも50ppm以下であった。
BET1点法により窒化ケイ素粉末の比表面積を、 LECO法(燃焼−赤外吸収法)により炭素含有量を測定した。
【0029】
〔標準窒化ケイ素サンプルの調製〕
実施例1で得られた1000℃仮焼のアモルファスSi34粉末を、再度 窒素雰囲気中1100℃で2時間焼成することにより、29Si MAS NMR測定用の標準アモルファスSi34サンプルを、同様に、同実施例で得られた1500℃焼成のα-Si34粉末を、再度 窒素雰囲気中1750℃で2時間焼成することにより、29Si MAS NMR測定用の標準α-Si34サンプルを調製した。
【0030】
〔交差分極法MAS NMR測定〕
標準アモルファスSi34に内部標準としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム塩(TSP)を10重量%添加し、コンタクト時間2ミリ秒、サイクル時間4秒という条件で、29Si核交差分極法MAS NMRスペクトルを測定し、アモルファスSi34とTSPの吸収ピークの積分強度比を求めた。同様に、実施例1〜14及び比較例1〜4で得られた粉末サンプルにTSPを10重量%添加して、交差分極法MAS NMRスペクトルを測定し、アモルファスSi34とTSPの吸収ピークの積分強度比を求めた。
各測定試料のアモルファスSi34とTSPとの積分強度比を標準アモルファスのTSPに対する積分強度比と比較することにより、アモルファス分率を決定した。
【0031】
〔X線回折測定〕
ターゲットが銅の管球とグラファイトモノクロメーターを使用し、定時ステップ走査法により、得られた窒化ケイ素粉末の粉末X線回折パターンを測定した。回折角(2θ)15〜80゜の範囲を0.02゜刻みでステップスキャンし、リートベルト解析によりα分率とβ分率を求めた。
【0032】
【表1】
Figure 0003997596
【0033】
【表2】
Figure 0003997596
【0034】
使用試験例
実施例1〜14及び比較例1〜4で得られた窒化ケイ素粉末を原料に用いて、下記の製造方法によりそれぞれの焼結体を作製した。
〔焼結体の製造方法〕
窒化ケイ素粉末にY235重量%、Al232重量%及びHfO20.5重量%を添加し、ボールミルにて湿式混合した後、2ton/cm2の圧力でラバープレス成形してグリーン成形体を作製した。この成形体を窒化ケイ素製ルツボに充填し、電気炉にて、1気圧の窒素ガス雰囲気中、昇温速度100℃/hで昇温し、1760℃で4時間保持して、窒化ケイ素質焼結体を得た。
【0035】
得られた焼結体の嵩密度はアルキメデス法で測定した。焼結体よりJIS R1601に準拠した3×4×40mm相当の抗折試験片を切り出し、JIS R 1601に準拠して、外スパン30mm、内スパン10mm、クロスヘッドスピード0.5mm/minの条件で四点曲げ試験を行った。室温における曲げ強度は40本の平均値である。高温での曲げ試験は、窒素雰囲気中で試験片を1300℃に10分間保持した後、8本以上の試験片について強度測定を行い、平均値を算出した。また、破壊靭性値はJIS R 1607規定のSEPB法で測定した。
到達密度、曲げ強度(室温強度、室温強度のワイブル係数及び高温強度)、及び破壊靭性値の測定結果を下記〔表3〕に示す。
【0036】
【表3】
Figure 0003997596
【0037】
【発明の効果】
本発明の窒化ケイ素粉末は、高靭性高信頼性の窒化ケイ素セラミックスを再現性良く安定して製造できる。

Claims (5)

  1. 29Si核の交差分極法マジック角回転核磁気共鳴分光により測定したアモルファス分率が1.0〜5.0重量%であり、α相分率が80〜99重量%、β相分率が19重量%以下であることを特徴とする窒化ケイ素粉末。
  2. 29Si核の交差分極法マジック角回転核磁気共鳴分光により測定したアモルファス分率が1.5〜4.5重量%であり、α相分率が85〜98重量%、β相分率が1.9〜13.5重量%であって、結晶子径が0.1μm以下、比表面積が5〜25m /g、炭素含有量が0.12重量%以下であることを特徴とする窒化ケイ素粉末。
  3. 酸素含有量が0.8〜2.0重量%、表面酸素含有量が0.3〜0.8重量%である請求項1または2記載の窒化ケイ素粉末。
  4. 二次粒子のメジアン平均径Dと一次粒子の平均粒径Dとの比である凝集度指標D/Dが1.5〜5.0の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の窒化ケイ素粉末。
  5. イミド分解法において、イミドの比表面積を500〜950m /g、軽装密度を0.035〜0.075g/cm に調整し、1400〜1700℃の温度条件下で結晶化させることにより得られた窒化ケイ素粉末を、酸素を4〜30%含有し、残部が不活性ガスからなる雰囲気中でミル処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の窒化ケイ素粉末の製造方法。
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