JP3994790B2 - 内燃機関の異常箇所検出装置 - Google Patents

内燃機関の異常箇所検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関の異常を検出する技術に関し、より詳しくは、燃料供給系の異常箇所を検出する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関は、自動車や船舶などの輸送機器、あるいは定置式機械などの動力源として広く使用されている。これら内燃機関は、燃料を燃焼させたときに発生する熱エネルギを機械的なエネルギに変換することを動作原理としている。内燃機関を適切に運転して効率よく動力を発生させるためには、空気と燃料とを適切な比率で燃焼させることが重要であり、このため燃焼室内に吸い込まれる空気量に合わせて適切な分量の燃料を正確に供給する必要がある。
【0003】
燃料を必要な分量だけ正確に計量して供給する技術としては、燃料噴射弁を利用する技術が広く使用されている。これは、燃料噴射弁に供給する燃料を燃料ポンプを用いて所定圧力に加圧しておき、所定時間だけ燃料噴射弁を開弁させて燃料を供給する技術である。こうすれば、燃料噴射弁の開弁時間を制御することで燃料供給量を自由に変更することが可能であり、また、燃料噴射弁の開弁時間は正確に制御することができるので、かかる技術を用いれば必要な分量の燃料を充分な精度で内燃機関に供給することができる。
【0004】
もっとも、こうした技術は、燃料が常に適切な圧力で燃料噴射弁に供給されることを前提としている。従って、燃料圧力を正確に制御することができなくなると、例え燃料噴射弁を適切な時間だけ開弁させても、適切な分量の燃料を供給することができず、内燃機関を効率よく運転することができなくなってしまう。そこで、燃料噴射弁に供給される燃料圧力が、設計上の目標圧力と一致しているか否かを検出し、実際の燃料圧力が目標圧力と異なっている場合は警報を発して、内燃機関の整備あるいは修理を促す技術が開示されている(特開平5−272425号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、こうした警報が発せられた場合に、内燃機関の整備あるいは修理を適切に行うことは必ずしも容易なことではないと言う問題がある。なぜならば、燃料噴射弁に加わる燃料圧力が目標圧力と異なっている原因には、燃料ポンプの昇圧不良や、燃料ポンプからの燃料供給通路での燃料漏れなど、種々の原因が考えられ、更に燃料漏れに関しても、漏れが発生している箇所には種々の箇所が考えられるからである。
【0006】
例えば、内燃機関には通常、燃料圧力が異常に高くなったときに開弁して燃料を逃がすことで、燃料圧力を低下させるための安全弁がもうけられている。燃料漏れの原因として、この安全弁が故障して開弁したままになっている可能性や、燃料噴射弁の故障、あるいは燃料供給通路を構成する部品の破損などの種々の可能性が考えられる。燃料の供給に関係する部品を1つずつ付け替えて、正常状態に復帰するか否かを確認していけば、異常の原因を特定して故障した部品のみを交換し、故障を適切に修理することができるが、これら部品のほとんどは、着脱するためには内燃機関の分解を要する場合が多く、部品を1つずつ着脱しながら確認していくことはきわめて困難な作業となる。いきおい、燃料の供給に関連する部品をまとめて交換することとなってしまうので、適切な修理を行うことは、それほど容易なことではない。
【0007】
この発明は従来技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の異常が検出された場合に、内燃機関の整備あるいは修理を、適切にかつ簡便に行うことを可能とする技術の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の異常箇所検出装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ポンプで所定圧力に加圧した燃料を燃料噴射弁から供給することによって運転される内燃機関の、異常箇所を検出する異常箇所検出装置であって、
前記内燃機関の運転条件を、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が異なる複数の運転条件に制御する運転条件制御手段と、
前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を検出する燃料圧力検出手段と、
前記複数の運転条件において前記燃料ポンプで加圧すべき前記所定圧力と、該運転条件で検出された燃料圧力との圧力差を検出する燃料圧力差検出手段と、
前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加すると前記検出した圧力差が小さくなる場合に、前記燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断する燃料漏れ位置検出手段と
を備えることを要旨とする。
【0009】
また、上記の異常箇所検出装置に対応する本発明の異常箇所検出方法は、
燃料ポンプで所定圧力に加圧した燃料を燃料噴射弁から供給することによって運転される内燃機関の、異常箇所を検出する異常箇所検出方法であって、
前記内燃機関の運転条件を、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が異なる複数の運転条件に制御する工程と、
前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を検出する第2の工程と、
前記複数の運転条件において前記燃料ポンプで加圧すべき前記所定圧力と、該運転条件で検出された燃料圧力との圧力差を検出する第3の工程と、
前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加すると前記検出した圧力差が小さくなる場合に、前記燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断する第4の工程と
を備えることを要旨とする。
【0010】
かかる内燃機関の異常箇所検出装置および異常箇所検出方法においては、燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が異なる複数の運転条件で、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を検出し、該運転条件において燃料ポンプで加圧すべき所定圧力との圧力差を検出する。そして、燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加した場合に、該検出した圧力差が小さくなっている場合には、燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断する。
【0011】
燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生すると、燃料噴射弁に供給される燃料圧力は低下する。しかし、燃料が漏れる速度は、燃料圧力が大きく変化しない限りはほぼ一定である。このため、内燃機関が時間あたりに多くの燃料を消費するような運転条件、すなわち燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が多い条件では、燃料漏れによる圧力の低下は相対的に小さくなるものと考えることができる。このことから、燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が異なる複数の運転条件で、燃料噴射弁に供給される燃料圧力と燃料ポンプが供給すべき圧力との圧力差を検出し、燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加すると該検出した圧力差が小さくなる場合には、燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断することができる。
【0012】
燃料噴射弁に供給する燃料の圧力が低下する要因としては、種々の要因が存在しているので、燃料圧力の低下が検出されたとしても、内燃機関を正常な状態に整備あるいは修理することは必ずしも容易ではない。しかし、本発明を適用することで、燃料ポンプの下流側で燃料漏れが発生していることを検出しておけば、内燃機関の整備あるいは修理を容易に且つ適切に行うことが可能となるので好ましい。
【0013】
こうした異常箇所検出装置および異常箇所検出方法においては、異常箇所を検出するための運転条件として、所定の第1の運転条件と、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が該第1の運転条件よりも多い所定の第2の運転条件とを予め設定しておくこととしてもよい。そして、これら運転条件において、燃料噴射弁に供給された燃料の圧力と、前記燃料ポンプで供給すべき燃料圧力との圧力差を検出し、該第1の運転条件で検出した前記圧力差が所定の閾値より大きく、前記第2の運転条件で検出した圧力差が該閾値よりも小さい場合に、前記燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断することとしてもよい。
【0014】
こうして、異常箇所を検出するための適切な運転条件を、第1の運転条件および第2の運転条件として設定しておけば、正確に且つ簡便に異常箇所を検出することが可能となるので好適である。
【0015】
あるいは、これら第1の運転条件および第2の運転条件で、燃料噴射弁に供給された燃料の圧力と、前記燃料ポンプで供給すべき圧力との圧力差を検出し、いずれの運転条件で検出された圧力差も所定の閾値より大きい場合には、該燃料ポンプで異常が発生していると判断することとしてもよい。
【0016】
前述したように、燃料ポンプの下流側で燃料漏れが発生している場合は、燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加した場合に、燃料噴射弁に供給される燃料圧力と燃料ポンプが供給すべき圧力との圧力差は小さくなると考えることができる。これに対して、燃料ポンプに異常が発生した場合は、適正な量の燃料を吐出できないので、時間あたりの燃料吐出量が多くなっても、燃料噴射弁に供給される燃料圧力と燃料ポンプが供給すべき圧力との圧力差が小さくなることはない。このことから、第1の運転条件および第2の運転条件で、燃料噴射弁に供給された燃料の圧力と、前記燃料ポンプで供給すべき圧力との圧力差を検出し、いずれの運転条件で検出された圧力差も所定の閾値より大きい場合には、該燃料ポンプで異常が発生していると判断することができる。
【0017】
この様にして燃料ポンプの異常を検出すれば、燃料の圧力低下が検出された場合に、内燃機関の整備および修理を適切に且つ簡便に行うことが可能となるので好ましい。
【0018】
こうした異常箇所検出装置においては、前記内燃機関の運転条件を、機関回転速度が異なる複数の運転条件に制御し、これら運転条件において、前記燃料噴射弁に供給された燃料の圧力と、前記燃料ポンプで供給すべき圧力との圧力差を検出することとしてもよい。
【0019】
機関回転速度を増加させれば、燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量を容易に且つ確実に増加させることができ、延いては、異常箇所を簡便に検出することが可能となるので好ましい。
【0020】
内燃機関が、運転条件に応じて、前記燃料噴射弁に供給すべき燃料の圧力たる目標圧力を予め記憶している場合には、上述した異常箇所検出装置は、次のようにして異常箇所を検出することとしても良い。すなわち、該燃料噴射弁に供給された燃料の圧力を複数の運転条件において検出し、該運転条件について記憶されている目標圧力との圧力差を検出する。そして、燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加した場合に、該検出した圧力差が小さくなっている場合には、燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断する。
【0021】
内燃機関の中には、機関性能を向上させるために、燃料噴射弁に供給すべき燃料圧力を、運転条件に応じて予め設定しておいた適切な値を用いているものもある。このような内燃機関に対しては、燃料噴射弁に供給された燃料の圧力を複数の運転条件において検出し、該運転条件について記憶されている目標圧力との圧力差を検出すれば、内燃機関の異常箇所を適切に検出することが可能となるので好ましい。
【0022】
内燃機関が、複数の前記燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁の各々に燃料を分配する燃料分配通路と、前記燃料分配通路内の燃料圧力が所定の許容値を超えると開弁して該燃料分配通路内の燃料を外部に流出させる安全弁とを備えおり、燃料が、該燃料分配通路を介して複数の燃料噴射弁に供給されている場合には、次のようにして異常箇所を検出することとしても良い。すなわち、複数の運転条件において該燃料分配通路内の燃料圧力を検出し、これら運転条件で燃料ポンプが加圧すべき燃料圧力との圧力差を検出する。そして、該燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加すると該検出した圧力差が小さくなる場合に、前記安全弁で燃料漏れが発生していると判断することとしてもよい。
【0023】
内燃機関に複数の燃料噴射弁が設けられている場合には、これら燃料噴射弁に燃料分配通路から燃料を供給することで、燃料系の構成を簡略化させることができ、更に、かかる方式を採用することで、燃料噴射の制御自由度の向上も可能なことが知られている。こうした構成では、燃料分配通路の燃料圧力が許容値を超えることの無いように安全弁を設けられることが多いが、その一方で異物が噛み込むなどして安全弁から燃料が漏れる可能性も生じる。経験上、燃料漏れはかかる安全弁で生じていることが多く、また、安全弁以外の箇所での燃料漏れは、燃料臭や内燃機関の運転状態などから判断可能な場合も多い。従って、複数の運転条件において、該燃料分配通路内の燃料圧力と該燃料ポンプが加圧すべき燃料圧力との圧力差を検出し、該燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加すると該検出した圧力差が小さくなる場合に、前記安全弁で燃料漏れが発生していると判断することとすれば、こうした内燃機関の異常箇所を適切に検出することが可能となるので好ましい。
【0024】
こうした内燃機関が、燃焼室内に前記燃料噴射弁から燃料を直接噴射することによって運転される機関である場合には、上述した異常箇所検出装置を好適に適用することができる。
【0025】
すなわち、燃料噴射弁から燃焼室内に燃料を直接噴射する方式の内燃機関では、燃料系の部品を交換するためには内燃機関自体を分解しなければならない場合が多く、その分だけ、燃料圧力の低下が検出された場合に整備あるは修理することが困難となる。従って、かかる内燃機関に上述した異常箇所検出装置を適用すれば、異常箇所を検出することができるので、内燃機関の整備あるいは修理を簡便に行うことが可能となるので好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、次のような順序に従って、本発明の実施例を説明する。
A.装置構成:
A−1.エンジンの構成:
A−2.高圧ポンプの動作:
A−3.エンジン制御の概要:
B.異常検出時の処理:
C.変形例:
C−1.第1の変形例:
C−2.第2の変形例:
【0027】
A.装置構成:
図1は、本実施例の異常箇所検出装置が適用されるエンジン10の概略構成を示す説明図である。図1では、エンジン10は燃焼室内に燃料を直接噴射する方式の、いわゆる筒内噴射式内燃機関であるものとして説明するが、もちろんこれに限られず、燃料を吸気ポートに噴射する方式の、いわゆるポート噴射式内燃機関に適用することも可能である。以下では、先ずエンジン10の構成について概要を説明した後、かかるエンジン10を適切に制御するための制御について説明する。
【0028】
A−1.エンジンの構成:
内燃機関は、燃焼室内で燃料および空気の混合気を燃焼させ、そのときに発生する燃焼熱を機械的仕事に変換して動力として取り出すことを動作原理としている。図1で中央に「#1」,「#2」,「#3」,「#4」と表示されている円は、それぞれ燃焼室を模式的に示したものである。各燃焼室には、吸入空気を取り入れるための吸気通路100と、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁102と、噴射した燃料に点火するための図示しない点火プラグと、燃焼室内で発生した燃焼ガスを排出するための排気通路104などが接続されている。
【0029】
後述するように筒内噴射式内燃機関は、吸入空気が圧縮された高圧の燃焼室内に、充分に霧化された状態で燃料を噴射してやることが望ましい。このため、エンジン10には高圧ポンプ150が設けられており、高圧ポンプ150で8MPa〜13MPa程度に加圧した燃料を噴射する。本実施例では高圧ポンプ150は、エンジン10によって駆動されるプランジャ式のポンプを使用しているが、充分な圧力を発生させることができれば異なる方式のポンプを用いることが可能である。また、駆動方式もエンジン10によって駆動されるものに限らず、例えば電動式のポンプを用いることとしてもよい。高圧ポンプ150には、燃料タンク152内の燃料を低圧ポンプ154を用いて汲み上げて供給する。
【0030】
高圧ポンプ150で加圧された燃料は、デリバリパイプ112を介して各燃料噴射弁102に供給される。デリバリパイプ112には燃圧センサ114が設けられており、燃料噴射弁102に供給されている燃料の圧力を検出して、常に適切な圧力となるように燃料圧力を制御することが可能である。燃料圧力の制御については後述する。また、デリバリパイプ112にはリリーフ弁116が設けられており、デリバリパイプ112内の圧力が異常に高くなった場合は、リリーフ弁116が開弁するようになっている。こうしてリリーフ弁116が開弁すれば、デリバリパイプ112内から燃料が流出するので、パイプ内圧力が異常に高くなることを防止することができる。リリーフ弁116から流出した燃料は、リターン通路118を介して燃料タンク152に戻される。高圧ポンプ150はエンジン10の運転条件に応じて適切な分量の燃料を吐出する事により、デリバリパイプ112内の燃料圧力が適切な圧力となるように制御している。高圧ポンプ150の構造および高圧ポンプ150が適切な分量の燃料を吐出するメカニズムについては、後ほど詳しく説明する。高圧ポンプ150には、燃料タンク152から低圧ポンプ154で燃料を汲み上げて、燃料供給通路156を介して供給する。低圧ポンプ154は燃料タンク152内に設けられている。また、低圧ポンプ154から高圧ポンプ150に至る経路には、燃料中の異物を取り除くための燃料フィルタ158が設けられており、異物によって高圧ポンプ150が故障しないようになっている。
【0031】
吸気通路100内には、各燃焼室内に吸入される空気量を調整するためのスロットルバルブ106が設けられている。スロットルアクチュエータ108を駆動してスロットルバルブ106を開いてやると、燃焼室内に吸入する空気量が増加するので、燃料の供給量を増やして機関出力を増加させることが可能となる。逆にスロットルバルブ106を閉じてやれば、燃焼室内に吸入される空気量が減少するので、供給可能な燃料量も減少し、これに伴って機関出力を減少させることが可能となる。あるいは筒内噴射式の内燃機関では、スロットルバルブ106はそのままにしておき、燃料噴射弁102から供給する燃料量だけを減少させて、機関出力を低下させることも可能である。
【0032】
エンジン10は、エンジン制御用コンピュータ(以下、ECU)120によって制御されている。ECU120は、算術論理演算回路を中心としてROM、RAMなどがバスで相互に接続された周知のマイクロコンピュータ(以下、MPU)である。燃焼室に吸入された空気量あるいは要求出力に応じて適切な分量の燃料が噴射されるように、燃料噴射弁102を駆動する処理、あるいはデリバリパイプ112内の燃料圧力が運転条件に応じた適切な圧力となるように、高圧ポンプ150の動作を制御する処理、更にはスロットルアクチュエータ108を駆動してスロットルバルブ106を開閉させる処理などは、ECU120によって行われる。ECU120は、スロットル開度センサ109やクランク角度センサ122、アクセル開度センサ123などから、スロットルバルブ106の開度やクランク角度、アクセル開度などの情報を検出して、これらの処理を行う。その結果、エンジン10を適切に運転することが可能となっている。また、何らかの原因でデリバリパイプ112内の燃料圧力を制御できない事態が生じた場合は、ECU120は警報ランプ175を点灯して、エンジン10の整備・修理を促すようになっている。ECU120が行うエンジン制御の内容については後述する。
【0033】
前述したように、エンジン10は燃料を燃焼室内に直接噴射しているので、高圧ポンプ150を用いて燃料を高い圧力に昇圧してから噴射する必要がある。以下では、図2を参照しながら、この理由を簡単に説明する。
【0034】
図2は、任意の燃焼室の中心でエンジン10の横断面を取って、燃焼室の構造を概念的に示した説明図である。エンジン10の燃焼室は、シリンダブロック140内に設けられた円筒形のシリンダ141と、シリンダ141内を上下に摺動するピストン142と、シリンダブロックの上部に設けられたシリンダヘッド130などによって形成されている。シリンダヘッド130には、吸入空気が流入する吸気バルブ132と、排気ガスが流出する排気バルブ134と、燃料噴射弁102と、点火プラグ136などが設けられている。
【0035】
エンジン10は、次のようにして動作する。先ず、吸気バルブ132が開いてピストン142が降下し始めると、燃焼室内に吸入空気が吸い込まれ、ピストン142が下がりきると吸気バルブ132が閉じる。ピストンが最も下がりきった位置は、特に「下死点」と呼ばれる。吸気バルブ132は、図示しないカム機構によって駆動されている。こうして吸入空気を吸い込んだら、今度はピストン142が上昇して、吸い込んだ空気を圧縮していく。筒内噴射式の内燃機関は、ピストン142が上昇する途中で燃料を噴射する。エンジン10のクランクシャフトの先端には、クランクの回転角度を検出するためのクランク角度センサ122が設けられており(図1参照)、ECU120はクランク角度センサ122の出力からピストン142の位置を検出して、適切なタイミングで燃料を噴射する。図2(a)は、こうして吸入した空気の圧縮途中に燃料を噴射している様子を、概念的に示した説明図である。図中の符番138は、噴射された燃料噴霧を模式的に示したものである。
【0036】
燃料の噴射後もピストン142は上昇していき、ほぼ上がりきった付近で、点火プラグ136で火花を飛ばして燃料と空気の混合気に点火する。ピストン142が最も上がりきった位置は、特に「上死点」と呼ばれる。図2(b)は、点火プラグ136で混合気に点火している様子を概念的に示す説明図である。ピストン142の上面は、噴射した燃料噴霧を点火プラグ136付近に導くためのガイドとなるような特殊な形状となっている。このガイドによって、燃料噴霧を点火プラグ136付近に導いているために、混合気に確実に点火することが可能となっている。燃料と空気の混合気はピストン142によって圧縮されているので、点火プラグ136で点火してやると爆発的に燃焼し、その結果、燃焼室内の圧力が急激に上昇してピストン142を下方に押し下げる。エンジン10は、この力をクランク機構によって回転力に変換して、動力として取り出している。こうして動力を出力しながらピストン142が下死点の位置まで下がりきると、今度は排気バルブ134が開き、次いでピストン142が上昇して燃焼によって生じた排気ガスを排出する。ピストン142が上死点まで上昇して全ての排気ガスを排出したら、排気バルブ134を閉じ、吸気バルブ132を開いて、再び空気を吸入する。
【0037】
このように、筒内噴射式のエンジン10は、ピストン142が上昇して圧縮された空気中に燃料を噴射することになるので、空気の圧力に打ち勝って燃料を噴射するために、燃料を加圧して噴射する必要がある。また、燃料噴射後、ピストン142が上がりきったら直ちに点火することになる。燃料を良好に燃焼させるためには、燃料と空気とが適度に混合している必要があるが、筒内噴射式のエンジン10は、燃料を噴射してから点火するまでに燃料と空気とを混合させるための時間が短いので、これを補うために、できるだけ燃料を細かい噴霧状にして噴射してやることが望ましい。このように燃料をできるだけ細かい噴霧状に微粒化して噴射するためにも、筒内噴射式のエンジン10では、燃料を高い圧力まで加圧して噴射しているのである。
【0038】
A−2.高圧ポンプの動作:
図3は、高圧ポンプ150の構造を概念的に示した説明図である。本実施例では、高圧ポンプ150として、プランジャを摺動させることによって燃料を吐出する方式のいわゆるプランジャ式のポンプを採用している。図示するように高圧ポンプ150は、円筒形のシリンダ160と、シリンダ160内で上下方向に摺動するプランジャ162と、プランジャ162を駆動するカムシャフト164などから構成されており、シリンダ160とプランジャ162との間には、吸入した燃料を圧送する圧送室166が形成されている。また、圧送室166には、ソレノイドバルブ168とチェックバルブ170とが設けられており、圧送室166はソレノイドバルブ168を介して低圧ポンプ154の吐出口に接続され、チェックバルブ170を介してデリバリパイプ112に接続されている。ソレノイドバルブ168の開閉動作は、ECU120によって制御されている。
【0039】
以下、高圧ポンプ150が、カムシャフト164によってプランジャ162を上下に摺動させながら、適切なタイミングでソレノイドバルブ168を駆動することによって、所定量の燃料を加圧してデリバリパイプ112に吐出する動作について説明する。初めはプランジャ162が上がりきった位置にあるものとする。プランジャ162が上がりきった状態では、図3に示すように、ソレノイドバルブ168は閉弁状態となっていて、低圧ポンプ154側から圧送室166内に燃料が流入することはない。次いで、カムシャフト164を回転させながら、ソレノイドバルブ168を開弁状態とする。ソレノイドバルブ168は、電力の供給を停止すれば、内蔵したスプリング169の力によって自動的に開弁状態となる。こうしてソレノイドバルブ168を開弁させた状態でプランジャ162を下降させると、燃料が低圧ポンプ154側から圧送室166内に流入する。この様子を、図4を参照しながら説明する。
【0040】
図4は、高圧ポンプ150が、カムシャフト164の回転に合わせてソレノイドバルブ168を適切なタイミングで開閉させることにより、所定量の燃料を加圧して吐出する動作を示した説明図である。図4には、プランジャ162のリフト量およびソレノイドバルブ168の開閉状態が、時間の経過とともに変化していく様子を示すタイムチャートと、それぞれのタイミングでの高圧ポンプ150の動作状態を示す概念図とが示されている。プランジャ162が上がりきった位置(図3参照)から下降し始めると、ソレノイドバルブ168は開弁状態となっているので、低圧ポンプ154側から圧送室166内に燃料が吸入される。圧送室166とデリバリパイプ112との間にはチェックバルブ170が設けられているので、プランジャ162が下降中にデリバリパイプ112側から圧送室166内に燃料が逆流することはない。このように、プランジャ162が下降中で、ソレノイドバルブ168が開弁している状態を「状態A」と呼ぶことにする。タイムチャートの上側の、状態Aに対応する位置には、状態Aにおいて燃料が圧送室166に吸入される様子を概念的に示している。
【0041】
プランジャ162は、一番下まで下がりきると反転して上昇し始める。このように、ソレノイドバルブ168が開いたまま、プランジャ162が上昇している状態を「状態B」と呼ぶことにする。状態Bでは、プランジャ162の上昇に伴って圧送室166の容積は次第に小さくなっていくが、デリバリパイプ112側への通路はチェックバルブ170に内蔵されたスプリング172よって閉塞されている。このため、圧送室166内の燃料は、状態Bでは低圧ポンプ154側に逆流することになる。タイムチャートの上側の、状態Bに対応する位置には、状態Bにおいて圧送室166から低圧ポンプ側に燃料が逆流している様子を概念的に示している。
【0042】
ソレノイドバルブ168は、プランジャ162の上昇中の適切なタイミングで閉弁状態に切り変わる。このように、ソレノイドバルブ168を閉弁した状態でプランジャ162が上昇していく状態を「状態C」と呼ぶことにする。状態Cでは、プランジャ162の上昇に伴って圧送室166の容積は小さくなって行くが、ソレノイドバルブ168は閉弁状態となっているので、もはや燃料は低圧ポンプ154側に逆流することはできない。このため、圧送室166内の圧力は速やかに上昇し、チェックバルブ170を押し開いてデリバリパイプ112側に流出する。状態Cでは、こうしてプランジャ162の上昇に伴って圧送室166からデリバリパイプ112に燃料が圧送される。タイムチャートの上側の、状態Cに対応する位置には、状態Cにおいて、開弁したチェックバルブ170を経由して加圧された燃料がデリバリパイプ112に吐出される様子を概念的に示している。
【0043】
プランジャ162が一番上まで上がりきったら、プランジャ162が下降に転じると同時にソレノイドバルブ168を再び開弁させて、状態Aとする。こうして高圧ポンプ150は、状態Aないし状態Cの3つの状態を繰り返しながら、低圧ポンプ154側から燃料を吸い込んで、デリバリパイプ112側に圧送する。その結果、プランジャ162が状態Cの期間に押し退けた体積に相当する分量の燃料が、デリバリパイプ112に供給されることになる。
【0044】
以上の説明から明らかなように、燃料の圧送量は、プランジャ162の上昇中にソレノイドバルブ168を閉弁させるタイミングによって決定される。すなわち、プランジャ162が上昇してもソレノイドバルブ168が閉弁していなければ燃料は逆流してしまい、デリバリパイプ112側に圧送されることはない。従って、ソレノイドバルブ168を早めに閉弁するほど燃料の圧送量が増加することになる。
【0045】
図1を用いて説明したように、デリバリパイプ112には燃圧センサ114が設けられており、ECU120はデリバリパイプ112内の燃料圧力を絶えず監視している。そして、デリバリパイプ112内の燃料圧力が目標圧力より低い場合は、圧送室166に設けたソレノイドバルブ168の閉弁時期を早めてやる。こうすれば、高圧ポンプ150から吐出される燃料が増加するので、デリバリパイプ112内の燃料圧力を増加させることができる。逆に、デリバリパイプ112内の燃料圧力が目標圧力よりも高い場合はソレノイドバルブ168の閉弁時期を遅くする。こうすれば、高圧ポンプ150の燃料吐出量が減少するので、デリバリパイプ112内の燃料圧力を減少させることができる。
【0046】
A−3.エンジン制御の概要:
図5は、エンジン10の制御を行うECU120の機能を概念的に示した説明図である。ECU120は、エンジンの運転条件を検出し、これに応じて、点火プラグ136、燃料噴射弁102、高圧ポンプ150、スロットルアクチュエータ108などを駆動することによって、エンジン10が適切に運転されるよう制御している。また、エンジン10に異常が発生した場合には、ECU120のMPUに専用の異常箇所検出コントローラ200を接続してECU120を介してエンジン10の動作を制御しながら所定のデータを収集することにより、異常箇所を判定することも可能となっている。異常箇所検出コントローラ200を用いて異常箇所を特定する様子については後述する。
【0047】
ECU120はエンジン運転条件として、アクセル開度、クランク角度、デリバリパイプ112内の燃料圧力などの情報や、スロットル開度、エンジン冷却水の温度、吸入空気温度などの各種情報を検出する。ここで、アクセル開度はアクセル開度センサ123によって、クランク角度はクランク角度センサ122によって、デリバリパイプ112内の燃料圧力は燃圧センサ114によって、スロットル開度はスロットル開度センサ109によって、それぞれ検出することができる。また、エンジン冷却水の温度や、吸入空気温度なども、それぞれ図示しない水温センサや吸気温センサによって検出する。以下では、ECU120が、これらの検出値に基づいてエンジン10を制御する様子について簡単に説明する。
【0048】
各種センサで検出された検出値は、ECU120に内蔵された入力インターフェース回路を介してMPUに入力される。MPUは、エンジンを制御するための主なパラメータとして、「要求トルク」および「エンジン回転速度」を使用する。要求トルクとは、エンジン10が出力するよう要求されているトルクである。要求トルクは、次の理由からアクセル開度に基づいて算出することができる。エンジン10の操作者は、エンジン10の出力しているトルクが不足していると感じるとアクセルを開き、逆にトルクが多すぎると感じるとアクセルを閉じる操作を行う。従って、アクセルの開度は操作者がエンジン10に要求しているトルクを代表していると考えることができ、このことから、アクセル開度に基づいて要求トルクを算出することができるのである。また、エンジン回転速度はクランク角度センサ122の出力から求めることができる。
【0049】
図2を参照して前述したように、エンジン10を適切に運転するためには、ピストン142の動きに合わせて、適切なタイミングで適切な量の燃料を噴射し、適切なタイミングで点火してやる必要がある。燃料の噴射時期および噴射量は、予め適切な値が実験的に求められて、エンジン回転速度および要求トルクをパラメータとするマップに設定されている。同様に、点火プラグ136から火花を飛ばすタイミングも、予め適切な値が実験的に求められて、エンジン回転速度および要求トルクをパラメータとするマップに設定されている。これらマップは、MPUに内蔵されたROMに記憶されており、MPUは、算出したエンジン回転速度および要求トルクに応じた適切な燃料噴射タイミングおよび燃料噴射量、点火タイミングを、これらマップを参照することによって算出する。次いで、クランク角度センサ122によって検出したピストン142の動きの同期して、適切なタイミングで燃料噴射弁102および点火プラグ136を駆動することにより、適切なタイミングで適切な量の燃料を噴射するとともに、適切なタイミングで火花を飛ばして燃焼室内の燃料を燃焼させる。
【0050】
図2を用いて前述したように、筒内噴射式のエンジン10では、燃焼室内に直接に燃料を噴射しており、噴射した燃料は直ちに点火されることになる。このため、燃料噴射弁102は、単に適切なタイミングで適切な量の燃料を噴射するだけでなく、点火プラグの近傍にしかも、できるだけ均一に分散した状態で燃料噴霧を形成する役割も担っている。このため、筒内噴射式のエンジン10に用いられる燃料噴射弁102には種々の工夫が施されているが、燃料の噴射圧力もエンジンの運転条件に応じて最適化されている。ECU120のMPUに内蔵されたROMの中には、エンジン回転速度および要求トルクに対して最適な燃料噴射圧力がマップとして予め記憶されている。図6は、エンジン回転速度および要求トルクをパラメータとするマップに最適な燃料噴射圧力が記憶されている様子を概念的に示した説明図である。
【0051】
ECU120のMPUは、燃圧センサ114からデリバリパイプ112内の燃料圧力を検出すると、この燃料圧力がマップに記憶されている最適な燃料圧力と一致しているか否かを判断し、デリバリパイプ112内の燃料圧力が最適圧力となるよう高圧ポンプを制御する。すなわち、燃圧センサ114で検出した燃料圧力が最適な圧力よりも低い場合は、高圧ポンプ150のソレノイドバルブ168の閉弁時期を早め、逆に、検出した燃料圧力が最適圧力よりも高い場合は、ソレノイドバルブ168の閉弁時期を遅らせてやる。図4を用いて前述したように、プランジャ162の上昇中にソレノイドバルブ168が閉弁するタイミングを早めてやれば、高圧ポンプ150の燃料吐出量が増加するのでデリバリパイプ112内の燃料圧力を高くすることができる。逆に、プランジャ162の上昇中にソレノイドバルブ168が閉弁するタイミングを遅くしてやれば、燃料吐出量が減少するのでデリバリパイプ112内の燃料圧力を低くすることができる。このように、ECU120は、燃圧センサ114で検出した燃料圧力が最適な圧力となるように高圧ポンプ150の吐出量を制御している。
【0052】
しかし、何らかの原因でデリバリパイプ112内の燃料圧力が低下し、スロットルバルブ138の閉弁時期をプランジャ162が下がりきったタイミングまで早めてもデリバリパイプ112内の燃料圧力を目標圧力まで上昇させることができない場合は、ECU120は警報ランプ175を点灯してエンジン10に異常が発生し、エンジン10の操作者にもはや正常な運転が困難なことを報知するようになっている。
【0053】
B.異常検出時の処理:
警報ランプ175が点灯した場合、デリバリパイプ112内の燃料圧力が低下した原因には種々の原因が考えられる。例えば、高圧ポンプ150が故障して、ECU120の制御通りの燃料を吐出できなくなっていたり、小さな異物が噛み込むなどしてリリーフ弁116が完全には閉弁できずに、リリーフ弁116から燃料が漏れていたりと、種々の要因が考えられる。そこで、警報ランプ175が点灯した場合はエンジン10の整備あるいは修理に先立ち、以下に説明するようにして、異常箇所を検出する処理を行う。
【0054】
図7は、燃料の圧力を目標値に制御することができず警報ランプ175が点灯した場合に、エンジン10の修理に先立って異常の発生原因を検出するために行う処理の流れを示すフローチャートである。かかる処理は、図5に示したように専用の異常箇所検出コントローラ200をECU120に接続して、コントローラからECU120の機能を用いて間接的にエンジン10を制御することによって行われる。以下、図7のフローチャートに従って説明する。
【0055】
異常箇所検出処理を開始すると、先ず初めに異常箇所検出コントローラ200は、エンジン10の運転条件をアイドル運転に設定する(ステップS100)。かかる設定は、エンジン10をアイドル条件で運転するよう、異常箇所検出コントローラ200からECU120のMPUに対してコマンドを送信することによって行う。異常箇所検出コントローラ200からコマンドを受け取ると、ECU120は図5を用いて前述したように、エンジンの各種運転条件を検出しながら、燃料噴射弁102や点火プラグ136、高圧ポンプ150などを制御することにより、エンジン10をアイドル条件で運転する。
【0056】
次いで、異常箇所検出コントローラ200は、アイドル条件で運転中のデリバリパイプ112内の燃料圧力Pr1と、アイドル運転条件での燃料の目標圧力Pt1とを取得する(ステップS102)。ここで、デリバリパイプ112内の実際の燃料圧力Pr1とは燃圧センサ114によって検出された燃料の圧力であり、アイドル運転条件での目標圧力Pt1とは、図6を用いて説明したECU120のROMにマップとして記憶されている圧力である。ECU120は、エンジン10の制御のためにこれらの値を使用しており、異常箇所検出コントローラ200はECU120のMPUからこれらの値を取得する。
【0057】
次いで、アイドル運転条件における実際の燃料圧力Pr1と目標圧力Pt1との大小関係を判断する(ステップS104)。そして、実際の燃料圧力Pr1が目標圧力Pt1に達していない場合は(ステップS104:yes)、異常の発生を示すFLAGの値を「ON」に設定し(ステップS106)、そうでない場合は異常の発生を示すFLAGの値を「OFF」に設定する(ステップS108)。
【0058】
こうしてアイドル運転条件での異常の有無を検出したら、異常箇所検出コントローラ200は、今度は、エンジン10の回転速度を所定の回転速度(ここでは、5000rpm)に設定する(ステップS110)。かかる運転条件の設定も、異常箇所検出コントローラ200からECU120に対してコマンドを送信することによって行う。ECU120のMPUはコマンドを受け取ると、エンジンの各種運転条件を検出しながら、燃料噴射弁102や点火プラグ136、高圧ポンプ150などを制御することにより、エンジン10が回転速度5000rpmで運転されるように制御する。
【0059】
次いで、異常箇所検出コントローラ200は、エンジン10が回転速度5000rpmで運転されている時のデリバリパイプ112内の燃料圧力Pr2と、燃料の目標圧力Pt2とを取得する(ステップS112)。これらの値は、ECU120から異常箇所検出コントローラ200に送信される。
【0060】
こうして異常箇所検出コントローラ200は、エンジン回転速度5000rpmにおける実際の燃料圧力Pr2と目標圧力Pt2とを取得すると、これらの大小関係を判断する(ステップS114)。そして、実際の燃料圧力Pr2が目標圧力Pt2に達していない場合は(ステップS114:yes)、高圧ポンプ150に異常が発生していると判断する(ステップS116)。燃料圧力Pr2が目標圧力Pt2に達していなければ、高圧ポンプ150に異常が発生していると判断することができる理由については後述する。高圧ポンプ150に異常が発生していると判断された場合は、異常箇所検出コントローラ200は、異常箇所が高圧ポンプ150であることを示すランプを点灯させる。
【0061】
エンジン回転速度5000rpmにおける実際の燃料圧力Pr2と目標圧力Pt2とを比較して、実燃圧Pr2が目標圧力Pt2に達していると判断された場合は(ステップS114:no)、FLAGが「ON」に設定されているか否かを判断する(ステップS118)。前述の説明から明らかなように、FLAGはアイドル運転条件において異常が検出されたか否かを記憶している変数である。このことから、ステップS118でFLAGが「ON」と判断された場合は(ステップS118:yes)、アイドル条件では異常が検出されたが、エンジン回転速度5000rpmの運転条件では異常が検出されなかったことを示している。このことから、ステップS118でFLAGが「ON」と判断された場合は、エンジン回転速度が低い場合は、デリバリパイプ112内の燃料圧力は目標圧力に達しないが、エンジン回転速度が高くなると目標圧力に達することになる。次の理由から、このような現象は、高圧ポンプ150に異常が発生したのではなく燃料通路のどこかで燃料が漏れていることによる現象と考えられる。
【0062】
今、燃料通路のどこかで燃料漏れが発生しているものとする。燃料漏れは、リリーフ弁116に異物が噛み込んで、リリーフ弁116が完全には閉まらなくなった場合や、あるいはデリバリパイプ112などの亀裂発生、更には燃料噴射弁102の異物噛み込みなどによって生じ得る。デリバリパイプ112内などの燃料圧力は、エンジン10の運転条件によって多少は変動するものの大きく変動することはないから、リリーフ弁116や通路の亀裂などからは、ほぼ一定の流量で燃料が流出するものと考えられる。こうした燃料漏れによる燃料圧力の低下度合いは、高圧ポンプ150からの燃料吐出量に対する燃料漏れ量の比率によって異なってくる。すなわち、燃料の漏れ量がある流量であったとしても、高圧ポンプ150の吐出量が少ない場合は、デリバリパイプ112内の燃料圧力は大きく低下する。これに対して、高圧ポンプ150からの吐出量が多い場合は漏れ量の割合が小さくなるのでデリバリパイプ112内の圧力低下は小さくなると考えられる。
【0063】
前述したように、エンジン10を制御するECU120は、デリバリパイプ112内の燃料圧力が目標圧力に達しない場合、高圧ポンプ150を制御してソレノイドバルブ168の閉弁時期を早め、これによって燃料吐出量を増やしてデリバリパイプ112内の圧力を上昇させようとする。しかし、アイドル運転条件ではエンジン回転速度が低いので、ソレノイドバルブ168の閉弁時期を最大限に早めて1回あたりの燃料吐出量を増加させても時間あたりの吐出回数が少ないので、高圧ポンプ150が単位時間あたりに吐出する燃料量はさほど増加させることはできない。この結果、燃料漏れの影響が大きく現れることになる。すなわち、エンジン回転速度が低い場合は、ECU120がデリバリパイプ112内の燃料圧力を制御しようとしても、制御可能量を越えて燃料漏れの影響が現れ、その結果、デリバリパイプ112内の燃料圧力が目標圧力まで上昇しないという現象が生じる。
【0064】
これに対して、エンジン回転速度が高くなれば、単位時間あたりに高圧ポンプ150が燃料を吐出する回数が多くなるので、燃料漏れ量に対してポンプの吐出量を充分に増加させることができる。この結果、燃料漏れの影響を小さくすることができる。
【0065】
このように、高圧ポンプ150は正常に動作しているにも関わらず燃料漏れが発生しているため、デリバリパイプ112内の燃料圧力が低下している場合は、エンジン回転速度を増加させるほど燃料圧力が目標圧力に近づく傾向を示す。これに対して高圧ポンプ150に異常が発生している場合は、デリバリパイプ112内の燃料圧力は、エンジン回転速度に関わらず目標圧力に達しないものと考えられる。このことから、エンジン回転速度が高い条件で計測したデリバリパイプ112内の圧力が目標圧力に達しない場合、すなわち図7のステップS114でyesと判断された場合は、高圧ポンプ150に故障が発生していると判断することができるのである。
【0066】
以上の説明から明らかなように、リリーフ弁116や、燃料噴射弁102、あるいはデリバリパイプ112で燃料漏れが発生した場合、エンジン回転速度が低い場合にはデリバリパイプ112内の燃料圧力は目標圧力に達しないが、エンジン回転速度を増加させるに従って、デリバリパイプ112内の圧力が増加して、目標圧力に達する傾向を示すことになる。このことから、図7のステップS118においてFLAGが「ON」と判断された場合、すなわち、エンジン回転速度が低い場合は、デリバリパイプ112内の燃料圧力は目標圧力に達しないが、エンジン回転速度が高くなると目標圧力に達した場合は、燃料通路のどこかで燃料が漏れていると判断して、異常箇所検出コントローラ200は、異常発生理由が高圧ポンプ150の異常ではなく、燃料漏れであることを示すランプを点灯させる。
【0067】
また、図7のステップS118において、FLAGの設定が「ON」では無いと判断された場合は(ステップS118:no)、アイドル運転条件に於いても、エンジン回転速度5000rpmの条件に於いても、いずれもデリバリパイプ112内の燃料圧力は目標圧力に達していると考えられるので、異常箇所は検出されなかったことを示すランプを点灯させる(ステップS122)。こうして、「高圧ポンプ故障」、「燃料漏れ」、「異常なし」のいずれかのランプを点灯させたら、異常箇所検出コントローラ200は図7に示した異常箇所検出処理を終了する。
【0068】
以上に説明した異常箇所検出処理に於いては、デリバリパイプ112内の燃料圧力が目標圧力に達しない原因が、高圧ポンプ150の故障によるものか、あるいはリリーフ弁116や燃料噴射弁102などでの燃料漏れによるものかを判断することができる。このため、エンジン10の運転中に警報ランプ175が点灯した場合、エンジン10の整備・修理に先立って、以上に説明した異常箇所検出処理を行えば、異常が発生した部品のみを修理あるいは交換すればよい。従って、エンジン10の整備あるいは修理を、迅速に且つ適切に行うことが可能となる。
【0069】
特に、高圧ポンプ150やデリバリパイプ112、あるいは燃料噴射弁102など、燃料を供給するための部品は、これら部品の交換にエンジンの分解を要するものが多く、しかも高額な部品が多いので、エンジン10の整備・修理に先立って予め異常部品を絞り込むことができることにより、整備の工数あるいは費用の点でも大きなメリットを得ることができる。
【0070】
尚、以上の説明に於いては、エンジン運転条件としては、アイドル条件とエンジン回転速度5000rpmの条件とを採用したが、もちろん、これらの条件に限定されるものではなく、エンジン回転速度の異なる2つの条件を採用しても構わない。
【0071】
また、上述した説明に於いては、デリバリパイプ112内の燃料圧力を検出するエンジン運転条件は2つの条件であるものとした。もちろん、エンジン回転速度の異なる何点かの運転条件でデリバリパイプ112内の燃料圧力を検出してもよい。こうすれば、エンジン回転速度が上昇するに従って、デリバリパイプ112内の燃料圧力が目標圧力に次第に近づいていく様子も検出することができる。このため、デリバリパイプ112内の燃料圧力の低下が、高圧ポンプ150の故障によるものであるか、燃料漏れによるものであるかをより正確に判断することが可能となるので好ましい。
【0072】
C.変形例:
上述した異常箇所検出処理には種々の変形例が存在する。以下では、これら変形例について簡単に説明する。
【0073】
C−1.第1の変形例:
上述した実施例においては、デリバリパイプ112内の燃料圧力の低下が、高圧ポンプ150の故障によるものか、燃料漏れによるものかについては判断可能なものの、燃料漏れの発生箇所については検出していなかった。燃料漏れの発生箇所の主のものは、リリーフ弁116と燃料噴射弁102とが挙げられる。異常箇所検出処理において燃料漏れが検出された場合に、漏れの発生箇所がリリーフ弁116か燃料噴射弁102のいずれであるかを検出することも可能である。以下、こうした第1の変形例について説明する。
【0074】
図8は、第1の変形例の異常箇所検出処理の流れを示すフローチャートである。第1の変形例の異常箇所検出処理は、図7を用いて前述した処理に対して、エンジン回転速度が5000rpmに達したか否かを検出し、エンジン回転速度が5000rpmに達しない場合は燃料噴射弁102で燃料漏れが発生しているものと判断している点が異なっている。以下では、かかる相違点を中心として、第1の変形例の異常箇所検出処理について簡単に説明する。
【0075】
第1の変形例の異常箇所検出処理においても、図7を用いて説明した処理と同様に、先ず初めに、エンジン10の運転条件をアイドル運転に設定して(ステップS200)、アイドル条件で運転中のデリバリパイプ112内の燃料圧力Pr1と、アイドル運転条件での燃料の目標圧力Pt1とを取得する(ステップS202)。次いで、検出した実際の燃料圧力Pr1と目標圧力Pt1との大小関係を判断し(ステップS204)、実際の燃料圧力Pr1が目標圧力Pt1に達していない場合はFLAGの値を「ON」に設定し(ステップS206)、そうでない場合はFLAGの値を「OFF」に設定する(ステップS208)。
【0076】
こうしてアイドル運転条件での異常の有無を検出したら、異常箇所検出コントローラ200は、今度は、エンジン10の回転速度を5000rpmに設定し(ステップS210)、デリバリパイプ112内の燃料圧力Pr2と、燃料の目標圧力Pt2とを取得する(ステップS212)。次いで、エンジン回転速度5000rpmにおける実際の燃料圧力Pr2と目標圧力Pt2との大小関係を判断し(ステップS214)、実際の燃料圧力Pr2が目標圧力Pt2に達していない場合は(ステップS214:yes)、高圧ポンプ150に異常が発生していると判断する(ステップS216)。
【0077】
エンジン回転速度5000rpmにおける実際の燃料圧力Pr2が目標圧力Pt2に達していると判断された場合は(ステップS214:no)、FLAGが「ON」に設定されているか否かを判断し(ステップS218)、FLAGに「ON」が設定されていなければ、異常箇所は検出されなかったことを示すランプを点灯させる(ステップS226)。これに対して、FLAGに「ON」が設定されている場合は、燃料漏れが発生していると考えられる。そこで、エンジン10の回転速度のデータをECU120から取得して、実際の回転速度が5000rpmに達っしているか否かを判断する(ステップS220)。
【0078】
図2を用いて説明したように、エンジン10においては燃料噴射弁102は燃焼室内で燃料と空気との混合気を形成する役割も果たしている。このため、仮に燃料噴射弁102に異物が噛み込むなどして噴射弁で燃料漏れが生じていると、エンジン10は燃料を適切に燃焼させることができなくなり、エンジンを正常の運転することができなくなる。エンジンの整備に熟練すれば、エンジンが正常に運転されていないことは目視によっても容易に判断することができるが、エンジン運転条件を高回転速度の条件に設定すれば、エンジン回転速度が設定した回転速度まで上昇しないので、異常箇所検出コントローラによっても容易に検出することができる。そこで、ステップS220では、エンジン回転速度が5000rpmに達しているか否かを判断して、5000rpmに達していなければ(ステップS220:no)、燃料漏れの箇所は燃料噴射弁102であると判断して、燃料噴射弁で漏れが生じていることを示すランプを点灯する(ステップS222)。また、エンジン回転速度が5000rpmに達っしている場合は、燃料漏れの箇所は燃料噴射弁102ではなく、おそれくリリーフ弁116などであると判断して、燃料噴射弁102以外の箇所で漏れが発生していることを示すランプを点灯する。こうして、いずれかのランプを点灯したら、第1の変形例の異常箇所検出処理を終了する。
【0079】
以上の説明した第1の変形例の異常箇所検出処理に於いては、デリバリパイプ112内の燃料圧力が目標圧力に達しないことが検出された場合に、燃料漏れが生じている箇所が燃料噴射弁102か否かについても判断することができる。燃料漏れの箇所は、ほとんどの場合、燃料噴射弁102かリリーフ弁116のいずれかであるので、第1の変形例の異常箇所検出処理によれば、エンジン10の整備・修理に先立って、燃料漏れが発生している箇所も事実上、判断することが可能となるので好ましい。
【0080】
C−2.第2の変形例:
以上に説明した各種実施例では、エンジン回転速度の異なる複数の条件で、デリバリパイプ112内の燃料圧力を検出した。しかし、デリバリパイプ112内の燃料圧力を検出する条件は、必ずしもエンジン回転速度の異なる条件には限られず、高圧ポンプ150が時間あたりに吐出する燃料量の異なる条件とすることができる。以下では、こうした第2の変形例の異常箇所検出処理について説明する。
【0081】
図9は、第2の変形例の異常箇所検出処理の流れを示すフローチャートである。第2の変形例の異常箇所検出処理は、ECU120の燃料圧力のフィードバック制御、すなわちデリバリパイプ112内の燃料圧力が目標圧力となるように高圧ポンプ150を制御する処理を行わない点が大きく異なっている。以下では、図9に従って、第2の変形例の異常箇所検出処理について説明する。
【0082】
第2の変形例の異常箇所検出処理においては、異常箇所検出コントローラ200は先ず初めに、エンジン10を第1の運転条件で運転するよう、ECU120に対してコマンドを送信する(ステップS300)。ここで、第1の運転条件としては、エンジン10の高圧ポンプ150の時間あたりの燃料吐出量の小さな条件(例えば、アイドル運転のような低負荷運転条件など)が異常箇所検出コントローラ200に予め設定されている。異常箇所検出コントローラ200からコマンドを受け取ると、ECU120は図5を用いて前述したように、エンジンの各種運転条件を検出しながら、燃料噴射弁102や点火プラグ136などを制御することにより、エンジン10を第1の運転条件で運転する。但し、第2の変形例の異常箇所検出処理に於いては、デリバリパイプ112内の燃料圧力のフィードバック制御は、異常箇所検出コントローラ200からのコマンドによって禁止されており、高圧ポンプ150のソレノイドバルブ168の閉弁時期は、第1の運転条件に対応して設定されている所定値に固定された状態で運転される。
【0083】
次いで、異常箇所検出コントローラ200は、第1の運転条件で運転中のデリバリパイプ112内の燃料圧力Pr1と、第1の運転条件での燃料の目標圧力Pt1とを取得する(ステップS302)。そして、これら圧力の差が、所定値ε以内に納まっているか否かを判断し(ステップS304)、圧力の差が所定値εよりも大きい場合は(ステップS304:no)、異常の発生を示すFLAGの値を「ON」に設定し(ステップS306)、そうでない場合はFLAGの値を「OFF」に設定する(ステップS308)。
【0084】
こうして第1の運転条件での異常の有無を検出したら、異常箇所検出コントローラ200は、今度は、エンジン10を所定の第2の運転条件に設定する(ステップS310)。異常箇所検出コントローラ200には、第2の運転条件として、第1の運転条件よりも、高圧ポンプ150の時間あたりの燃料吐出量の大きな条件(例えばエンジン回転速度の高い条件、あるいは高負荷の運転条件)が予め設定されている。かかる運転条件の設定も、異常箇所検出コントローラ200からECU120に対してコマンドを送信することによって行う。ECU120のMPUはコマンドを受け取ると、エンジンの各種運転条件を検出しながら、燃料噴射弁102や点火プラグ136などを制御することにより、エンジン10を第2の運転条件で運転する。
【0085】
次いで、異常箇所検出コントローラ200は、第2の運転条件で運転している時のデリバリパイプ112内の燃料圧力Pr2と、第2の運転条件での燃料の目標圧力Pt2とを取得する(ステップS312)。これらの値は、ECU120によって検出され、異常箇所検出コントローラ200に送信される。その後、第2の運転条件における目標圧力Pt2と、実際の燃料圧力Pr2との偏差が所定値εより大きいか否かを判断する(ステップS314)。そして、検出した燃料圧力Pr2が目標圧力Pt2よりも所定値ε以上小さい場合は、高圧ポンプ150に異常が発生していると判断する(ステップS316)。逆に、燃料圧力Pr2と目標圧力Pt2との偏差が所定値εより小さくなっている場合は、FLAGが「ON」に設定されているか否かを判断する(ステップS318)。そして、FLAGが「ON」に設定されていれば燃料漏れが発生していると判断して燃料漏れが生じていることを示すランプを点灯する。また、FLAGが「ON」に設定されていない場合は、異常な箇所は検出されなかったことを示すランプを点灯させて、第2実施例の変形例の異常箇所検出処理を終了する。
【0086】
以上に説明した第2の変形例の異常箇所検出処理においては、デリバリパイプ112内の燃料圧力をフィードバックさせることなく、高圧ポンプ150が時間あたりに吐出する燃料量の異なる条件でデリバリパイプ112内の燃料圧力を検出し、この検出結果に基づいて、異常箇所を検出することができる。時間あたりに吐出する燃料量の異なる条件としては、エンジン回転数を変更する場合に限らず、エンジン負荷を増加させたり、これらを組み合わせた条件とすることもできる。このように、エンジン10の整備・修理時に種々の運転条件を選択することができるので、異常箇所をより簡便に検出することが可能となる。また、燃料圧力のフィードバックを行わないこととしているので、燃料漏れや高圧ポンプの異常による燃料圧力の低下を、より顕著に検出することが可能であり、その分だけ故障発生箇所を容易に検出することが可能となる。
【0087】
以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。
【0088】
例えば、上述した各種実施例では、いずれも筒内噴射式の内燃機関の適用した場合について説明したが、筒内噴射式の内燃機関に限らず、デリバリパイプを介して燃料噴射弁から燃料を噴射する方式の各種内燃機関に適用することができる。例えば、ポート噴射式のガソリンエンジンや、いわゆるコモンレール方式のディーゼルエンジンにも同様に適用することができる。
【0089】
また、以上の説明においては、エンジンに異常が検出された場合に、ECU120を専用のコントローラに接続して異常箇所を検出するものとして説明したが、これに限らず、ECU120自体が異常箇所を検出することとしても良い。
【0090】
更には、ECU120がエンジン10の通常の制御を行いながら、燃料噴射弁に供給される燃料圧力を監視することにより、異常箇所を検出することとしてもよい。すなわち、例えば、異常箇所を検出するための複数の運転条件を予め設定しておき、エンジン10がかかる運転条件で運転されると燃料の圧力差を検出する。こうして検出した圧力差に基づいて、異常箇所を検出することとしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の異常箇所検出装置が適用される筒内噴射式内燃機関の構成概要を示す説明図である。
【図2】筒内噴射式内燃機関においては、燃料を高圧に加圧した状態で噴射する必要がある理由を示す説明図である。
【図3】筒内噴射式内燃機関に搭載された高圧ポンプの構造を概念的に示した説明図である。
【図4】筒内噴射式内燃機関に搭載された高圧ポンプが、燃料を加圧して吐出する動作を概念的に示した説明図である。
【図5】本実施例の異常箇所検出コントローラを内燃機関の制御装置に接続している様子を概念的に示した説明図である。
【図6】燃料噴射弁に供給すべき燃料圧力が、内燃機関の運転条件に応じて記憶されている様子を概念的に示した説明図である。
【図7】本実施例の異常箇所検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】第1の変形例の異常箇所検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第2の変形例の異常箇所検出処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…エンジン
100…吸気通路
102…燃料噴射弁
104…排気通路
106…スロットルバルブ
108…スロットルアクチュエータ
109…スロットル開度センサ
112…デリバリパイプ
114…燃圧センサ
116…リリーフ弁
118…リターン通路
120…ECU
122…クランク角度センサ
123…アクセル開度センサ
130…シリンダヘッド
132…吸気バルブ
134…排気バルブ
136…点火プラグ
138…スロットルバルブ
138…符番
140…シリンダブロック
141…シリンダ
142…ピストン
150…高圧ポンプ
152…燃料タンク
154…低圧ポンプ
156…燃料供給通路
158…燃料フィルタ
160…シリンダ
162…プランジャ
164…カムシャフト
166…圧送室
168…ソレノイドバルブ
169…スプリング
170…チェックバルブ
172…スプリング
175…警報ランプ
200…異常箇所検出コントローラ
Pr1…燃料圧力
Pr2…燃料圧力
Pt1…目標圧力
Pt2…目標圧力

Claims (10)

  1. 燃料ポンプで所定圧力に加圧した燃料を燃料噴射弁から供給することによって運転される内燃機関の、異常箇所を検出する異常箇所検出装置であって、
    前記内燃機関の運転条件を、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が異なる複数の運転条件に制御する運転条件制御手段と、
    前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を検出する燃料圧力検出手段と、
    前記複数の運転条件において前記燃料ポンプで加圧すべき前記所定圧力と、該運転条件で検出された燃料圧力との圧力差を検出する燃料圧力差検出手段と、
    前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加すると前記検出した圧力差が小さくなる場合に、前記燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断する燃料漏れ位置検出手段と
    を備える異常箇所検出装置。
  2. 請求項1記載の異常箇所検出装置であって、
    前記運転条件制御手段は、前記内燃機関の運転条件を所定の第1の運転条件と、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が該第1の運転条件よりも多い所定の第2の運転条件とに制御する手段であり、
    前記燃料漏れ位置検出手段は、前記第1の運転条件で検出した前記圧力差が所定の閾値より大きく、前記第2の運転条件で検出した圧力差が該閾値よりも小さい場合に、前記燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断する手段である異常箇所検出装置。
  3. 請求項1記載の異常箇所検出装置であって、
    前記運転条件制御手段は、前記内燃機関の運転条件を所定の第1の運転条件と、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が該第1の運転条件よりも多い所定の第2の運転条件とに制御する手段であり、
    前記燃料漏れ位置検出手段は、前記第1の運転条件で検出した前記圧力差と、前記第2の運転条件で検出した圧力差とが、いずれも所定の閾値よりも大きい場合に、前記燃料ポンプで異常が発生していると判断する手段である異常箇所検出装置。
  4. 請求項1記載の異常箇所検出装置であって、
    前記運転条件制御手段は、前記内燃機関の運転条件を、機関回転速度が異なる複数の運転条件に制御する手段である異常箇所検出装置。
  5. 請求項1記載の異常箇所検出装置であって、
    前記内燃機関は、運転条件に応じて、前記燃料噴射弁に供給すべき燃料の圧力たる目標圧力を予め記憶している目標圧力記憶手段を備えており、
    前記燃料圧力差検出手段は、前記複数の運転条件で検出された燃料の圧力と、該検出を行った運転条件について記憶されている前記目標圧力との圧力差を検出する手段である異常箇所検出装置。
  6. 請求項1記載の異常箇所検出装置であって、
    前記内燃機関は、
    複数の前記燃料噴射弁と、
    前記燃料噴射弁の各々に燃料を分配する燃料分配通路と、
    前記燃料分配通路内の燃料圧力が所定の許容値を超えると開弁して、該燃料分配通路内の燃料を外部に流出させる安全弁と
    を備えており、
    前記燃料ポンプは、前記燃料分配通路を介して前記複数の燃料噴射弁に燃料を供給するポンプであり、
    前記燃料圧力検出手段は、前記燃料分配通路内の燃料圧力を検出する手段であり、
    前記燃料漏れ位置検出手段は、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加すると前記検出した圧力差が小さくなる場合に、前記安全弁で燃料漏れが発生していると判断する手段である異常箇所検出装置。
  7. 前記内燃機関は、燃焼室内に前記燃料噴射弁から燃料を直接噴射することによって運転される機関である請求項6記載の異常箇所検出装置。
  8. 燃料ポンプで所定圧力に加圧した燃料を燃料噴射弁から供給することによって運転される内燃機関の、異常箇所を検出する異常箇所検出方法であって、
    前記内燃機関の運転条件を、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が異なる複数の運転条件に制御する第1の工程と、
    前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を検出する第2の工程と、
    前記複数の運転条件において前記燃料ポンプで加圧すべき前記所定圧力と、該運転条件で検出された燃料圧力との圧力差を検出する第3の工程と、
    前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が増加すると前記検出した圧力差が小さくなる場合に、前記燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断する第4の工程と
    を備える異常箇所検出方法。
  9. 請求項8記載の異常箇所検出方法であって、
    前記第1の工程は、前記内燃機関の運転条件を所定の第1の運転条件と、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が該第1の運転条件よりも多い所定の第2の運転条件とに制御する工程であり、
    前記第4の工程は、前記第1の運転条件で検出した前記圧力差が所定の閾値より大きく、前記第2の運転条件で検出した圧力差が該閾値よりも小さい場合に、前記燃料ポンプより下流側で燃料漏れが発生していると判断する工程である異常箇所検出方法。
  10. 請求項8記載の異常箇所検出方法であって、
    前記第1の工程は、前記内燃機関の運転条件を所定の第1の運転条件と、前記燃料ポンプの時間あたりの燃料吐出量が該第1の運転条件よりも多い所定の第2の運転条件とに制御する工程であり、
    前記第4の工程は、前記第1の運転条件で検出した前記圧力差と、前記第2の運転条件で検出した圧力差とが、いずれも所定の閾値よりも大きい場合に、前記燃料ポンプで異常が発生していると判断する工程である異常箇所検出方法。
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