JP3994736B2 - インクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は簡便に高画質の記録が得られる方法として広く普及し、高画質化が進んでいる。
【0003】
インクジェット記録に用いられるインクジェット記録用インクのうち、水溶性染料を含有するインクジェット記録用インクの課題としては画像保存性が挙げられる。特に、水溶性染料を含有するインクジェット記録用インクの場合は、耐光性が悪いという課題を有する。
【0004】
この課題を解決するためには、耐光性に優れた水溶性染料を用いることが考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、耐光性に優れた水溶性染料を用いた場合は、形成されるインクジェット画像ににじみ等が発生してしまうという問題があった。特に高画質化を目的として同一色で色材濃度の異なる2色以上のインクを用いるような場合には、記録媒体に打ち込まれるインクの量も増大し、にじみが発生しやすい。にじみとは、インクジェット記録で形成したインクジェット画像を、長期間保存した際に、湿度、温度等の影響によりインクジェット画像上の色材が拡散し、画像がにじむという現象のことである。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、耐光性に優れ、にじみの発生を抑え品質の高いインクジェット画像を形成することができるインクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクセット及び該インクジェット記録用インク又はインクジェット記録用インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は下記構成によって達成された。
【0008】
(1) 水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用インクにおいて、前記水溶性染料には前記一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれており、前記水溶性有機溶剤の含有率が5〜40質量%であり、前記水溶性有機溶剤に占めるトリプロピレングリコールの比率が25〜100質量%であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【0009】
(2) 水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用インクにおいて、前記水溶性染料には前記一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれており、前記水溶性有機溶剤の含有率が5〜40質量%であり、前記水溶性有機溶剤としてトリプロピレングリコール及びプロピレングリコールを含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【0010】
(3) 前記水溶性有機溶剤に占める前記トリプロピレングリコール及び前記プロピレングリコールの総比率が25〜100質量%であることを特徴とする(2)に記載のインクジェット記録用インク。
【0011】
(4) 前記水溶性有機溶剤に占める前記トリプロピレングリコール及び前記プロピレングリコールの総比率が50〜100質量%であることを特徴とする(2)に記載のインクジェット記録用インク。
【0012】
(5) 前記水溶性有機溶剤に占めるグリセリンの比率が25質量%以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【0013】
(6) 前記水溶性有機溶剤の含有率が5〜20質量%であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
【0014】
(7) 少なくともイエローのインクジェット記録用インク、マゼンタのインクジェット記録用インク、シアンのインクジェット記録用インク、ブラックのインクジェット記録用インクを有するインクジェット記録用インクセットにおいて、前記インクジェット記録用インクは、水溶性色材、水、水溶性有機溶剤を含有するインクであり、前記インクジェット記録用インクの少なくとも一つのインクの水溶性色材には、前記一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれ、前記インクジェット記録用インクの前記水溶性有機溶剤の含有率の平均が5〜40質量%であり、かつ、前記水溶性有機溶剤に占めるトリプロピレングリコールの比率の平均が25〜100質量%であることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
【0015】
(8) 少なくともイエローのインクジェット記録用インク、マゼンタのインクジェット記録用インク、シアンのインクジェット記録用インク、ブラックのインクジェット記録用インクを有するインクジェット記録用インクセットにおいて、前記インクジェット記録用インクは、水溶性色材、水、水溶性有機溶剤を含有するインクであり、前記インクジェット記録用インクの少なくとも一つのインクの水溶性色材には、前記一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれ、前記インクジェット記録用インクの前記水溶性有機溶剤の含有率の平均が5〜40質量%であり、かつ、前記インクジェット記録用インク全てに前記水溶性有機溶剤としてトリプロピレングリコール及びプロピレングリコールを含有することを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
【0016】
(9) 前記水溶性有機溶剤に占める前記トリプロピレングリコール及び前記プロピレングリコールの総比率の平均が25〜100質量%であることを特徴とする(8)に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0017】
(10) 前記インクジェット記録用インクの少なくとも2つのインクの水溶性色材には、一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれることを特徴とする(7)〜(9)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0018】
(11) 前記インクジェット記録用インクの前記水溶性有機溶剤に占めるグリセリンの比率の平均が25質量%以下であることを特徴とする(7)〜(10)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0019】
(12) 前記インクジェット記録用インクの前記水溶性有機溶剤の含有率の平均が5〜20質量%であることを特徴とする(7)〜(11)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0020】
(13) 水溶性バインダーを含有するインク受容層を有する記録媒体にインクで記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク又は(7)〜(12)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0021】
(14) 前記インク受容層は多孔質構造を有することを特徴とする(13)に記載のインクジェット記録方法。
【0022】
(15) 前記記録した記録媒体に定着処理を行うことを特徴とする(13)又は(14)に記載のインクジェット記録方法。
【0023】
(16) 前記記録がオンデマンド方式で行われることを特徴とする(13)〜(15)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0024】
(17) 電気・機械変換方式により前記インクを吐出して記録を行うことを特徴とする(13)〜(16)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0025】
(18) 電気・熱変換方式により前記インクを吐出して記録を行うことを特徴とする(13)〜(17)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、鋭意研究した結果、水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用インクにおいて、前記一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物を水溶性染料として用い、さらに水溶性有機溶剤の含有率を5〜40質量%とし、さらにその水溶性有機溶剤に占めるトリプロピレングリコールの比率を25〜100質量%をとしたインクジェット記録用インクを用いてインクジェット画像を形成すると、形成したインクジェット画像の耐光性が向上し、さらに、にじみが抑えられていることを見出した。
【0027】
さらに本発明者らは、水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用インクにおいて、前記一般式(1)〜(5)で表される化合物を少なくとも1種を水溶性染料として用い、さらに水溶性有機溶剤の含有率を5〜40質量%とし、さらにその水溶性有機溶剤にはトリプロピレングリコール及びプロピレングリコールを含有するインクジェット記録用インクを用いてインクジェット画像を形成すると、形成したインクジェット画像の耐光性が向上し、さらに、にじみが抑えられていることを見出した。
【0028】
前記一般式(1)について説明する。
前記一般式(1)の式中、R1は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としては例えばアルキル基(例えば、炭素数1〜10の直鎖、分岐又は環状アルキル基等)、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えば、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれた原子を有する5又は6員の複素環基等)、アルコキシ基(例えば、炭素数1〜10の直鎖、分岐又は環状アルコキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、炭素数1〜10のアルカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アシルオキシ基(例えば、炭素数1〜10のアルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アシル基(例えば、炭素数1〜10のアルカノイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、無置換カルバモイル基、炭素数1〜10のアルキルカルバモイル基、炭素数2〜20のジアルキルカルバモイル基、炭素数7〜20のN−アルキル−N−フェニルカルバモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基等)、スルホニルアミノ基(例えば、炭素数1〜10のアルカンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、スルファモイル基(例えば、無置換スルファモイル基、炭素数1〜10のアルキルスルファモイル基、炭素数2〜20のジアルキルスルファモイル基、炭素数7〜20のN−アルキル−N−フェニルスルファモイル基等)、ヒドロキシル基、スルホニル基(例えば、炭素数1〜10のアルカンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、アルキルチオ基(例えば、炭素数1〜10のアルキルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、ウレイド基(例えば、無置換ウレイド基、炭素数1〜10のアルキルウレイド基、炭素数2〜20のジアルキルウレイド基、フェニルウレイド基等)、ウレタン基(例えば、炭素数1〜10のアルコキシカルボニルアミノ基等)、シアノ基、スルホン酸基及びその塩、シアノ基、カルボキシル基及びその塩、ニトロ基、アミノ基(例えば、無置換アミノ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、アニリノ基、炭素数7〜20のN−アルキルアニリノ基等)、メルカプト基又はハロゲン原子(例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等)等が挙げられる。R1には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよい。R1としてはスルホン酸基及びその塩、又はカルボキシル基及びその塩が好ましい。
【0029】
R2は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R2には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよい。R2としては水素原子、アルキル基又はアルコキシル基が好ましい。
【0030】
mは1〜5の整数を表す。
nは1〜4の整数を表す。
【0031】
Jはカルボニル基又は前記一般式(6)で表される基を表す。一般式(6)の式中、R3は置換可能な置換基を表し、例えば水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキルアミノ基(例えば、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜10のアルカノールアミノ基、炭素数2〜20のアルカノールアミノ基等)、モルホリノ基、ピペラジノ基等を表し、水酸基、フッ素原子、塩素原子、エタノールアミノ基、ジエタノールアミノ基、モルホリノ基が好ましい。
【0032】
本発明では、前記一般式(1)で表される化合物の中でも特に下記に示す化合物を用いるのが好ましく、これにより形成されるインクジェット画像の耐光性を一段と向上させることができ、インクジェット画像の品質を高めることができる。
【0033】
【化8】
【0034】
前記一般式(2)について説明する。
前記一般式(2)の式中、R4は、水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R6は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R4には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよい。R4としてはスルホン酸基及びその塩、又はカルボキシル基及びその塩が好ましい。
【0035】
R5は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R5には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよい。R5としてはスルホン酸基及びその塩、又はカルボキシル基及びその塩が好ましい。
【0036】
gは1〜5の整数を表す。
hは1〜5の整数を表す。
【0037】
本発明では、前記一般式(2)で表される化合物の中でも特に下記に示す化合物を用いるのが好ましく、これにより形成されるインクジェット画像の耐光性を一段と向上させることができ、インクジェット画像の品質を高めることができる。
【0038】
【化9】
【0039】
前記一般式(3)について説明する。
前記一般式(3)の式中、R6は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R6には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよい。R6としては水素原子が好ましい。
【0040】
R7は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R7には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよい。R7としてはスルホン酸基及びその塩、又はカルボキシル基及びその塩が好ましい。
【0041】
R8は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R8としては水素原子及びフェニルカルボキシル基が好ましい。
【0042】
R9は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R9としては水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0043】
R10は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R10には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよい。R10としては水素原子及びアリールオキシ基が好ましい。
【0044】
pは1〜4の整数を表す。
qは1〜5の整数を表す。
【0045】
本発明では、前記一般式(3)で表される化合物の中でも特に下記に示す化合物を用いるのが好ましく、これにより形成されるインクジェット画像の耐光性を一段と向上させることができ、インクジェット画像の品質を高めることができる。
【0046】
【化10】
【0047】
前記一般式(4)について説明する。
前記一般式(4)の式中、R11は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R11には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよい。R11としては水素原子が好ましい。
【0048】
Xはフェニル基又はナフチル基を表し、置換可能な置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルキルチオ基、アリールチオ基、メルカプト基、スルホニル基、スルホン酸基及びその塩、カルボキシル基及びその塩、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、ウレタン基、オキサミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等)で置換されていてもよく、スルホン酸基及びその塩又はカルボキシル基及びその塩で置換されていることが好ましい。
【0049】
Yは水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンを表す。
【0050】
rは1〜4の整数を表す。
sは1又は2の整数を表す。
【0051】
r+s=5である。
Zは置換可能な置換基を表し、カルボニル基、スルホニル基又は前記一般式(7)で表される基を表し、前記一般式(7)で表される基が好ましい。
【0052】
一般式(7)の式中、W1、W2は異なっていてもよいハロゲン原子、アミノ基、水酸基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を表し、ハロゲン原子、水酸基又はアルキルアミノ基が好ましい。
【0053】
本発明では、前記一般式(4)で表される化合物の中でも特に下記に示す化合物を用いるのが好ましく、これにより形成されるインクジェット画像の耐光性を一段と向上させることができ、インクジェット画像の品質を高めることができる。
【0054】
【化11】
【0055】
【化12】
【0056】
前記一般式(5)について説明する。
前記一般式(5)の式中、R12は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R12には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよい。R12としてはスルホン酸基及びその塩、又はカルボキシル基及びその塩が好ましい。
【0057】
R13は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R13には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよく、スルホン酸基及びその塩、カルボキシル基及びその塩が好ましい。R13としてはアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。
【0058】
R14は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としてはR1で説明した置換可能な置換基が挙げられる。R14には更に、置換するベンゼン環上の隣接した2つ以上の炭素と共に、ベンゼン環との縮合環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環等)を形成し、さらに置換可能な置換基で置換されていてもよく、スルホン酸基及びその塩、カルボキシル基及びその塩が好ましい。R14としてはスルホン酸基及びその塩、カルボキシル基及びその塩が好ましい。
【0059】
R15は水素原子又は置換可能な置換基を表し、置換可能な置換基としては例えばアルキル基(例えば、炭素数1〜10の直鎖、分岐又は環状アルキル基等)、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えば、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれた原子を有する5又は6員の複素環基等)アシル基(例えば、炭素数1〜10のアルカノイル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(例えば、炭素数1〜10のアルカンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)等が挙げられる。R15としては水素原子、アシル基が好ましい。
【0060】
tは1〜5の整数を表す。
uは1〜4の整数を表す。
【0061】
wは1〜5の整数を表す。
本発明では、前記一般式(5)で表される化合物の中でも特に下記に示す化合物を用いるのが好ましく、これにより形成されるインクジェット画像の耐光性を一段と向上させることができ、インクジェット画像の品質を高めることができる。
【0062】
【化13】
【0063】
本発明でいう水溶性銅フタロシアニン化合物とは、水溶性基を含む銅フタロシアニン化合物であり、水溶性基はフタロシアニン骨格に直接結合していても良く、ジョイントを介して結合していても良く、複数の水溶性基を有していても良い。また、水溶性基以外の置換基を有していても良い。水溶性基の具体例としてはスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、水酸基、エチレンオキサイド基などが挙げられる。好ましい水溶性基としてはスルホン酸基、又はカルボン酸基が挙げられ、特に好ましくはスルホン酸基である。
【0064】
水溶性銅フタロシアニン化合物の具体例としては、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー199等が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
本発明のインクジェット記録用インクは、水溶性有機溶剤に占めるトリプロピレングリコールの比率が50〜100%であることが好ましい。これにより、一段とにじみを抑えることができる。
【0066】
本発明のインクジェット記録用インクは、水溶性有機溶剤中のトリプロピレングリコールとプロピレングリコールの総比率が25〜100質量%であることが好ましく、更に好ましくは、50〜100質量%であり、これにより一段とにじみを抑えることができる。
【0067】
本発明のインクジェット記録用インクは、水溶性有機溶剤の含有率が5〜20質量%であることが好ましく、これにより一段とにじみを抑えることができる。
【0068】
本発明のインクジェット記録用インクは、水溶性有機溶剤に占めるグリセリンの比率が25質量%以下であることが好まく、水溶性有機溶剤中にグリセリンが含有されないことが最も好ましい。これにより一層にじみを抑えることができる。
【0069】
本発明における水溶性有機溶剤とは、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)等が挙げられる。
【0070】
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる水溶性有機溶剤は、ノズルの目詰まりをより抑えるために高沸点のものであることが好ましい。
【0071】
本発明のインクジェット記録用インクセットに用いることのできる色材としては水溶性色材である水溶性染料と、さらに顔料が挙げられる。本発明のインクジェット記録用インクで、水溶性染料として用いることができるものには、例えば、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができ、本発明はこれらを併用して用いることができる。水溶性染料の具体的化合物を以下に示す。ただし、これら例示した化合物に限定されるものではない。
【0072】
〔C.I.アシッドイエロー〕
1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246
〔C.I.アシッドオレンジ〕
3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168
〔C.I.アシッドレッド〕
1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415
〔C.I.アシッドバイオレット〕
17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126
〔C.I.アシッドブルー〕
1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350
〔C.I.アシッドグリーン〕
9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109
〔C.I.アシッドブラウン〕
2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413
〔C.I.アシッドブラック〕
1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222
〔C.I.ダイレクトイエロー〕
8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、79,86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153
〔C.I.ダイレクトオレンジ〕
6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118
〔C.I.ダイレクトレッド〕
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254
〔C.I.ダイレクトバイオレット〕
9、35、51、66、94、95
〔C.I.ダイレクトブルー〕
1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291
〔C.I.ダイレクトグリーン〕
26、28、59、80、85
〔C.I.ダイレクトブラウン〕
44、106、115、195、209、210、222、223
〔C.I.ダイレクトブラック〕
17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169
〔C.I.ベイシックイエロー〕
1、2、11、13、15、19、21、28、29、32、36、40、41、45、51、63、67、70、73、91
〔C.I.ベイシックオレンジ〕
2、21、22
〔C.I.ベイシックレッド〕
1、2、12、13、14、15、18、23、24、27、29、35、36、39、46、51、52、69、70、73、82、109
〔C.I.ベイシックバイオレット〕
1、3、7、10、11、15、16、21、27、39
〔C.I.ベイシックブルー〕
1、3、7、9、21、22、26、41、45、47、52、54、65、69、75、77、92、100、105、117、124、129、147、151
〔C.I.ベイシックグリーン〕
1、4
〔C.I.ベイシックブラウン〕
1
〔C.I.リアクティブイエロー〕
2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176
〔C.I.リアクティブオレンジ〕
1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107
〔C.I.リアクティブレッド〕
2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235
〔C.I.リアクティブバイオレット〕
1、2、4、5、6、22、23、33、36、38
〔C.I.リアクティブブルー〕
2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236
〔C.I.リアクティブグリーン〕
8、12、15、19、21
〔C.I.リアクティブブラウン〕
2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46
〔C.I.リアクティブブラック〕
5、8、13、14、31、34、39
〔C.I.フードブラック〕
1、2
本発明で用いることのできる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0073】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0074】
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0075】
グリーン又はシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0076】
ブラック用の顔料としては、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7、ケッチェンブラックEC、デンカブラックHS−100、アセチレンブラック等)がある。
【0077】
本発明においては、一般式(1)〜(5)で表される水溶性染料は、単独又は複数の他の水溶性染料と併用されていてもよい。
【0078】
本発明のインクジェット記録用インクは、水溶性染料の含有量を0.1〜20質量%の範囲で選択することができ、インクジェット画像で写真画像を形成するには、水溶性染料の含有量を各々変化させた、いわゆる濃淡インクを調製して用いるのが好ましい。また、必要に応じて、赤、緑、青等の特色インクを用いることも色再現上好ましい。
【0079】
本発明におけるインクジェット記録用インクセットは、少なくともイエローのインクジェット記録用インク、マゼンタのインクジェット記録用インク、シアンのインクジェット記録用インク、ブラックのインクジェット記録用インクを有するインクジェット記録用インクセットであり、いわゆるカラーのインクジェットプリントに一般的に用いられている複数のインクをセットにしたインクセットのことを指す。
【0080】
本発明者らは、インクジェット記録用インクセットの各インクジェット記録用インクを、水溶性色材、水、水溶性有機溶剤を含有するインクとし、これらのインクジェット記録用インクの少なくとも一つのインクの水溶性色材には、一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれており、さらに、インクジェット記録用インクセットの有するインクジェット記録用インクの水溶性有機溶剤の含有率の平均が5〜40質量%であり、さらに、各インク中の水溶性有機溶剤に占めるトリプロピレングリコールの比率の平均が25〜100質量%であるインクジェット記録用インクセットを用いてインクジェット画像を形成すると、形成したインクジェット画像の耐光性が向上し、さらに、混色のにじみが抑えられていることを見出した。
【0081】
また本発明者らは、インクジェット記録用インクセットの各インクジェット記録用インクを、水溶性色材、水、水溶性有機溶剤を含有するインクとし、これらのインクジェット記録用インクの少なくとも一つのインクの水溶性色材には、一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれており、さらに、インクジェット記録用インクセットの有するインクジェット記録用インクの水溶性有機溶剤の含有率の平均が5〜40質量%であり、さらに、水溶性有機溶剤としてトリプロピレングリコール及びプロピレングリコールを含有するインクジェット記録用インクセットを用いてインクジェット画像を形成すると、形成したインクジェット画像の耐光性が向上し、さらに、混色のにじみが抑えられていることを見出した。
【0082】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、インクジェット記録用インクセットの有するインクジェット記録用インクの少なくとも2つに、一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれていると、形成されるインクジェット画像の耐光性をさらに向上させ、混色のにじみをさらに抑えることができるので好ましい。より好ましくは、インクジェット記録用インクセットの有するインクジェット記録用インク全てに一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれていることである。ただし、このときに、インクジェット記録用インクセットは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクとなるように一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物がそれぞれの色に対応したインクに含有されていることはいうまでもない。
【0083】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、各インクに含有される水溶性有機溶剤に占めるトリプロピレングリコールの比率の平均が50〜100%であることが好ましい。これにより、一段とにじみを抑えることができる。
【0084】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、各インクに含有される水溶性有機溶剤中のトリプロピレングリコールとプロピレングリコールの総比率の平均が25〜100質量%であることが好ましく、更に好ましくは、50〜100質量%であり、これにより一段とにじみを抑えることができる。
【0085】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、各インクの水溶性有機溶剤の含有率の平均が5〜20質量%であることが好ましく、これにより一段とにじみを抑えることができる。
【0086】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、各インクに含有される水溶性有機溶剤に占めるグリセリンの比率が25質量%以下であることが好まく、水溶性有機溶剤中にグリセリンが含有されないことが最も好ましい。これにより一層にじみを抑えることができる。
【0087】
本発明のインクジェット記録方法は、水溶性バインダーを含有するインク受容層を有する記録媒体に、本発明のインクジェット記録用インク、又は本発明のインクジェット記録用インクセットを用いて記録するインクジェット記録方法であり、この記録方法で形成されるインクジェット画像は、耐光性に優れ、にじみが抑えられている。
【0088】
本発明に用いられる記録媒体のインク受容層は空隙をする空隙型受像層と空隙を有しないいわゆる膨潤型受像層が含まれる。膨潤型受像層の場合はインク受容層は吸水性樹脂からなり、吸水性樹脂はインク溶媒と染料を樹脂の分子の間に取りこんで吸収する。このようなインク受容層は画像の褪色に対しては色素が空気に直接触れないため、空隙型より有利である点で好ましい。
【0089】
吸水性樹脂とは、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の親水性ポリマーが挙げられる。これらの親水性ポリマーは、2種以上併用することも可能である。
【0090】
本発明で好ましく用いられる親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。
【0091】
インク受容層は親水性バインダーのほかに硬化剤、界面活性剤、を含有することが好ましい。またブロッキング防止のため、マット剤などのフィラーを空隙を生じない程度に添加することができる。
【0092】
一方、本発明に係る空隙型インク受容層を用いた場合はカラーブリーディングをより改善できる点で好ましい。
【0093】
本発明に用いられる記録媒体の空隙型インク受容層は、主に微粒子と親水性バインダーから形成されるのが好ましい。
【0094】
本発明で用いることのできる微粒子としては、無機微粒子や有機微粒子を用いることができるが、特には、高光沢で、かつ高発色濃度が得られ、更に微粒子が容易に得やすいことから無機微粒子が好ましい。そのような無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。上記無機微粒子は、一次粒子のまま用いても、また、二次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0095】
本発明においては、インクジェット記録媒体で高品位なプリントを得る観点から、無機微粒子として、アルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカもしくは気相法により合成された微粒子シリカが好ましい。
【0096】
このうち、擬ベーマイトのアルミナ水和物は高湿度環境下でのプリント画像の滲み防止の点で好ましい。この擬ベーマイトの代表例としては特開平7−89221号公報の実施例に記載されたアルミナ水和物Aが挙げられる。このアルミナ水和物Aは、まず米国特許明細書第4,242,271号に記載された方法でアルミニウムアルコキサイドを製造し、米国特許明細書第4,202,870号に記載された方法で前記アルミニウムアルコキサイドを加水分解して、オーブンで30℃、2時間熟成してアルミナのコロイダルゾルが得られる。このアルミナ水和物Aは無定形で、平板状であって、BET比表面積76g/m、BET細孔容積0.57ml/gである。
【0097】
このような擬ベーマイトが高いインク受容性を有する理由は、その細孔半径と細孔径分布が、インク受容に非常に適した範囲にあるという事実にあると考えられる。擬ベーマイトの細孔径分布は、2つ以上の極大を有する。比較的大きい細孔で、インク中の溶媒成分を吸収し、比較的小さい細孔でインク中の染料を吸着する。擬ベーマイトの細孔径分布の極大の一つは細孔半径10nm以下が好ましく、より好ましくは1〜6nmである。他の極大は細孔半径10〜20nmの範囲が好ましい。
【0098】
そして、本発明において前記無機微粒子の中で最も好ましいのは、気相法で合成された微粒子シリカである。カラーブリード、光沢、画像濃度、およびコストの点で好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がAlで修飾されたものであっても良い。表面がAlで修飾された気相法シリカのAl含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
【0099】
上記無機微粒子の粒径は、いかなる粒径のものも用いることができるが、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。1μm以下であれば、光沢性や発色性がより良好であり、そのため、特には、0.2μm以下が好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、無機微粒子の製造上の観点から、概ね0.003μm以上、特に0.005μm以上が好ましい。
【0100】
上記無機微粒子の平均粒径は、空隙型インク受容層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0101】
また、微粒子の分散度は、光沢性や発色性の観点から0.5以下が好ましい。0.5以下であれば、光沢やプリント時の発色性がより良好である。特に、0.3以下が好ましい。ここで、微粒子の分散度とは、上記平均粒径を求めるのと同様に電子顕微鏡で空隙型インク受容層の微粒子を観察し、その粒径に標準偏差を平均粒径で割った値で表す。
【0102】
上記微粒子は、一次粒子のままで、あるいは二次粒子もしくはそれ以上の高次凝集粒子で多孔質皮膜中に存在していても良いが、上記の平均粒径は、電子顕微鏡で観察したときに空隙型インク受容層中で独立の粒子を形成しているものの粒径を言う。
【0103】
上記微粒子の水溶性塗布液における含有量は、5〜40質量%であり、特に7〜30質量%が好ましい。
【0104】
空隙型インク受容層に含有される水溶性バインダーとしては、特に制限はなく、従来公知の水溶性バインダーを用いることができ、例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等を用いることができるが、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0105】
ポリビニルアルコールは、無機微粒子との相互作用を有しており、無機微粒子に対する保持力が特に高く、更に、吸湿性の湿度依存性が比較的小さなポリマーであり、塗布乾燥時の収縮応力が比較的小さいため、本発明の課題である塗布乾燥時のひび割れに対する適性が優れる。本発明で好ましく用いられるポリビリルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0106】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜5000のものが好ましく用いられる。ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0107】
カチオン変成ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0108】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0109】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0110】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなどの2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め、無機微粒子分散液に重合度が1000以下のポリビニルアルコールを無機微粒子に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい粘度上昇が無く好ましい。
【0111】
空隙型インク受容層の水溶性バインダーに対する微粒子の比率は、質量比で2〜20倍であることが好ましい。質量比が2倍未満である場合には、空隙型インク受容層の空隙率が低下し、充分な空隙容量が得にくくなるだけでなく、過剰の水溶性バインダーがインクジェット記録時に膨潤して空隙を塞ぎ、インク吸収速度を低下させる要因となる。一方、この比率が20倍を越える場合には、空隙型インク受容層を厚膜で塗布した際に、ひび割れが生じやすくなり好ましくない。特に好ましい水溶性バインダーに対する微粒子の比率は、2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0112】
上記の気相法シリカを用いた空隙型インク受容層において、ジルコニウム原子やアルミニウム原子を分子内に含む化合物を添加すると、カラーブリードや滲みが向上する点で好ましい。
【0113】
本発明で用いる記録媒体に用いることのできるジルコニウム原子を分子内に有する化合物には酸化ジルコニウムは含まず、その具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えばカリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えばリチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニル、シュウジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナート)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)クロロジルコニウム等が挙げられる。
【0114】
これらの化合物の中でも、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましく、特に炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニルが最も好ましい。
【0115】
本発明で用いることのできる分子内にアルミニウム原子を含む化合物には酸化アルミニウムは含まず、その具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
【0116】
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。
【0117】
前記化合物は、インクジェット記録用紙1m2当たり、通常0.05〜25mmol、好ましくは0.25〜10mmol、特に好ましくは0.5〜5mmolの範囲で用いられる。
【0118】
シリカを用いた空隙型インク受容層において、シランカップリング剤を添加するとカラーブリードを低減する効果があり好ましい。
【0119】
シランカップリング剤としては、第四級アンモニウム塩とジまたはトリアルコキシシラニル基とを有する化合物が好ましい。好ましいシランカップリング剤の例としては、(イ)3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、(ロ)N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、(ハ)3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド及び(ニ)イミダゾール基を有するシランカップリング剤等を挙げることができる。これらの化学式を下記に示す。
【0120】
【化14】
【0121】
上記シランカップリング剤の硬化は、複数のアルコキシシラニル基が水(空気中の水分で可能)の存在下にシラノール基に変化し、シランカップリング剤同士が、(好ましくは加熱により)シラノール基間の縮合反応により結合して、架橋構造を形成することにより行われる。
【0122】
これらのカチオン性物質は、透明多孔質層塗布液に添加するとシリカ等の無機微粒子の表面のアニオン電荷と相互作用して凝集を生じる虞があるが、架橋剤塗布液中に含有させる場合、その問題がなく、有効量を添加して透明多孔質層の膜質の向上に効果を挙げることができる。カチオン性物質の添加量としては、0.01〜3.6g/m2であることが好ましく、0.05〜2g/m2程度であることがさらに好ましい。
【0123】
本発明に用いることのできる記録媒体に用いられる支持体としては、吸水性支持体(例えば、紙など)や非吸水性支持体を用いることができるが、より高品位なプリントが得られる観点から、非吸水性支持体が好ましい。
【0124】
吸水性支持体では、単に高品位なプリントが得にくいだけでなく、オーバーコートした各添加剤成分が、塗布後に紙中に拡散して、添加剤本来の効果を損なう結果となる。
【0125】
好ましく用いられる非吸水性支持体としては、例えば、ポリエステル系フィルム、ジアセテート系フィルム、トリアテセート系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルム、セロハン、セルロイド等の材料からなる透明または不透明のフィルム、あるいは基紙の両面をポリオレフィン樹脂被覆層で被覆した樹脂被覆紙、いわゆるRCペーパー等が用いられる。
【0126】
上記空隙型インク受容層を形成する水溶性塗布液中には、各種の添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、カチオン性媒染剤、架橋剤、界面活性剤(カチオン、ノニオン、アニオン、両性)、白地色調調整剤、蛍光増白剤、防黴剤、粘度調整剤、低沸点有機溶媒、高沸点有機溶媒、ラテックスエマルジョン、退色防止剤、紫外線吸収剤、多価金属化合物(水溶性もしくは非水溶性)、マット剤、シリコンオイル等が挙げられるが、中でもカチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。
【0127】
カチオン媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基および第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、長期保存での変色や耐光性の劣化が少ないことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。
【0128】
好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0129】
また、水溶性バインダーの架橋剤を含有させることも特に好ましい。架橋剤により、空隙型インク受容層の耐水性が改善され、また、インクジェット記録時に水溶性バインダーの膨潤が抑制されるためにインク吸収速度が向上する。
【0130】
架橋剤としては、従来公知の架橋剤を使用することができ、無機系架橋剤(例えば、クロム化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、ホウ酸類など)や有機系架橋剤(例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、N−メチロール系架橋剤、アクリロイル系架橋剤、ビニルスルホン系架橋剤、活性ハロゲン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エチレンイミノ系架橋剤等)等を使用することができる。
【0131】
これらの架橋剤は、水溶性バインダーに対して、概ね1〜50質量%であり、好ましくは2〜40質量%である。
【0132】
水溶性バインダーがポリビニルアルコール類であり、微粒子がシリカである場合、架橋剤としては、ホウ酸類やジルコニウム化合物などの無機系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が、特に好ましい。
【0133】
本発明に用いることができる記録媒体の作製において用いることのできる塗布方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0134】
本発明に用いることができる記録媒体の空隙型インク受容層は、単層であっても多層であっても良く、多層構成の場合には、全ての層を同時に塗布することが、製造コスト低減の観点から好ましい。
【0135】
本発明のインクジェット記録方法は、オンデマンド方式が好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体にインクで記録を行った後に定着処理することが好ましい。
【0136】
本発明において定着方法とは、(1)空隙型インク受容層の表面に熱可塑性微粒子を含有する記録媒体にインクジェットで記録後、加熱することにより表面の空隙を塞ぐ方法、(2)記録媒体にインクジェットで記録後、熱転写によりインク受容層表面に透明な保護層(オーバーコート層)を設ける方法、(3)記録媒体にインクジェットで記録後、インク受容層表面に塗布により樹脂層を設ける方法等が挙げられる。何れの方法においても滲みをより抑制するためには記録後加熱などにより溶媒をできるだけ蒸発させた後定着をすることが好ましい。
【0137】
(1)(2)(3)について以下に詳述する。
(1)の空隙型インク受容層の表面に熱可塑性微粒子を含有する記録媒体はその表層が無機顔料及び熱可塑性微粒子を含有することが好ましい。記録媒体は画像記録後の加熱処理の有無で、耐光性、あるいは耐水性が向上する。
【0138】
定着処理で用いることのできる熱可塑性微粒子としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられる。中でも、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、SBRラテックスが好ましい。また、熱可塑性微粒子は、モノマー組成及び粒径、重合度が違う複数の重合体を混合して用いても良い。
【0139】
熱可塑性微粒子を選択するに際しては、インク受容性、加熱及び加圧による定着後の画像の光沢性、画像堅牢性及び離型性を考慮すべきである。
【0140】
熱可塑性微粒子径としては好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。さらに好ましくは、0.1〜1μmである。
【0141】
また、熱可塑性微粒子の選択の基準としては、ガラス転移点(Tg)が挙げられる。Tgが塗布乾燥温度より低い場合は、例えば、記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するため、熱可塑性微粒子による空隙が消失してしまう。装置上の負荷及び支持体の熱安定性等の点から熱可塑性微粒子の好ましいTgは50〜150℃である。
【0142】
また、最低造膜温度(MFT)としては、50〜150℃のものが好ましい。
熱可塑性微粒子は、環境適性の観点からは水系に分散されたものが好ましく、特に、乳化重合により得られた水系ラテックスが好ましい。この際、ノニオン系分散剤を乳化剤として用いて乳化重合したタイプは、好ましく用いることができる形態である。また、用いる熱可塑性微粒子は、臭気および安全性の観点から、残存するモノマー成分が少ない方が好ましく、重合体の固形分に対して3質量%以下が好ましく、さらに1質量%以下が好ましい、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0143】
無機顔料および熱可塑性微粒子を含む表層は、固形分量として、特に制限は無いが、2g/m2〜50g/m2の範囲が好ましく、3g/m2〜30g/m2の範囲が、より好ましい。
【0144】
本発明インクジェット記録方法に用いられる記録媒体は、表層に含有される熱可塑性微粒子の固形分量としては、0.5g/m2〜15g/m2の範囲が好ましく、1g/m2〜7g/m2の範囲が特に好ましい。熱可塑性微粒子の固形分量が少なすぎると、充分な皮膜が形成されず、顔料を充分に皮膜中に分散することができない。このため、画質、光沢、耐光性が充分に向上しない。また、熱可塑性微粒子の固形分量が多すぎると、短時間の加熱工程で熱可塑性微粒子を完全に皮膜化できず、微粒子のまま残り不透明性がありかえって画質が低下する。また、インク吸収速度も低下させてしまい境界にじみが発生し問題となる。
【0145】
無機顔料および熱可塑性微粒子を含む表層用塗布液は、無機顔料および熱可塑性微粒子を同時に分散しても良いし、各々分散調製したものを、塗布液調製時に混合する方法でもよい。
【0146】
本発明のインクジェット記録方法の好ましい形態は、画像記録後の加熱処理により、表層に含まれる熱可塑性微粒子を、溶融、皮膜化することである。短時間で必要な熱量を付与するためには、できる限り高温の熱源を用いて加熱することが望ましいが、過度に高温にすると支持体の破損、激しいカール発生、あるいは、画像表面の荒れ、ローラー汚染が生じることがあり、100〜200℃の範囲が好ましく、100〜150℃の範囲がさらに好ましい。
【0147】
加熱方法は、プリンターに内蔵された加熱器で行っても、別の加熱器で行っても良い。ローラーまたはベルトの表面は、汚染を防ぐためにフッ素樹脂コートまたはシリコーン樹脂コートされてることが好ましい。その時に、耐熱シリコンを被覆したシリコンゴムローラーまたはベルトを用いることが好ましい。
【0148】
(2)の熱転写により透明保護層を形成する方法は空隙型インク受容層でも膨潤型インク受容層でも適用できる。
【0149】
このような定着を行うためには、インクジェット記録後のインク受理層の全面あるいは一部に、耐熱性フィルムに熱可塑性樹脂を主成分とするオーバーコート樹脂を塗布したオーバーコート転写シートを重ね合わせ、耐熱性フィルム側から加熱してオーバーコート樹脂を記録後のインク受理層上に耐熱性フィルムの表面形状を保持しながら熱転写し、熱転写後に耐熱性フィルムを剥離することにより製造することができる。
【0150】
本発明に用いられるオーバーコート樹脂層を形成する樹脂(オーバーコート樹脂)は、熱可塑性樹脂あるいは熱融解性樹脂であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン/塩ビ共重合樹脂、エチレン酢ビコポリマー、クマロン樹脂、ケトン樹脂、ポリ酢酸ビニル、フェノキシ樹脂、ブタジエン樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、メタクリル樹脂、およびこれらの樹脂の誘導体などが挙げられるがその中でも比較的融点が低く、耐薬品性の良いポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂を主成分とすることが好ましい。さらにオーバーコート樹脂の形状は、好ましくは1種またはそれ以上のビニル単量体からエマルジョン重合により製造したスラリー状のプラスチックピグメント、あるいはその乾燥物、または固形のプラスチックを各種手段により粉砕した微粉末や微粒子状に成形した粉末であることが好ましい。これは、転写オーバーコート層の形成時に、オーバーコート樹脂層が平坦すぎると、画像形成を行ったインク受理層に密着した時に、気泡が入りやすく、かつ気泡の逃げ場所がないため、均一な転写オーバーコート層を形成しにくいためである。これらのオーバーコート樹脂を形成する樹脂微粒子の大きさとしては、通常直径0.01〜30μmであることが被膜化の上で好ましい。オーバーコート樹脂層が有機溶液で溶解され、耐熱性フィルムに塗布されているような場合では、オーバーコート樹脂層表面を凹凸化、マット化しておくことが好ましい。
【0151】
また、オーバーコート樹脂の融点は165℃以下であることが、インクジェット記録画像の熱ニジミ防止の点から好ましい。転写オーバーコート層の厚みは1〜10μmであることが好ましい。転写オーバーコート層の厚みがこの範囲より小さいと、インク受理層を均一にカバーすることが困難となり、耐薬品や耐候性に問題が生じやすいし、この範囲より厚いとカールや画質を低下させるギラツキが生じる場合がある。
【0152】
転写オーバーコート層を得るには、耐熱性フィルムにオーバーコート樹脂層を塗布したオーバーコート転写シートを用いることにより効率良く得ることができる。耐熱性フィルムはある程度の耐熱性、少なくともオーバーコート樹脂の軟化点よりも高い温度の耐熱性を有するシートであることが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム(TPX)、アルミ箔などの金属箔、あるいはアルミ蒸着フィルム、アルミ箔貼り合わせフィルムなどが好ましい。これらのシートには、さらにセラミック微粒子、耐熱性樹脂などにより耐熱処理を施すことも可能である。耐熱性フィルムの厚みは熱伝導を良くするためにできるだけ薄いことが好ましく、3〜50μm程度である。この厚みより薄いと取扱いが困難で、転写オーバーコート層を形成する段階でシワや気泡が入りやすい。この厚みより厚いと熱伝導性が悪化するばかりか、転写時にインク受理層との密着性が悪くなり、転写オーバーコート層の表面が不均一になりやすい。耐熱性フィルム側から加熱する手段としては、加熱ローラーが好ましい。
【0153】
(3)の塗布により樹脂層を形成する方法としては溶融した樹脂を塗布するウエットラミまたは水系樹脂微粒子分散体を塗布する方法が好ましい。
【0154】
ウエットラミに用いられる樹脂としてはポリエチレン、塩ビ、ポリプロピレン等が有る。一方、水系樹脂微粒子分散体に用いられる樹脂微粒子としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられる。中でも、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、SBRラテックスが好ましい。
【0155】
本発明のインクジェット記録方法は、電気・機械変換方式によりインクを吐出することで記録を行うことが好ましい。電気・機械変換方式には、例えば圧電素子を用いた電気・機械変換方式が挙げられる。圧電素子としては例えば、ピエゾ素子が挙げられる。
【0156】
本発明のインクジェット記録方法は、電気・熱変換方式によりインクを吐出することで記録を行うのも好ましい。電気・熱変換方式には、例えば、発熱素子を用いた電気・熱変換方式が挙げられる。
【0157】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0158】
実施例1
[記録媒体1の作製]
〔シリカ分散液D1、D2の調製〕
予め均一に分散されている1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製:A200)を25%、水溶性蛍光増白剤UVITEXNFW LIQUID(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を0.3%含むシリカ分散液B1(pH=2.3、エタノール1質量%含有)の400Lを、カチオン性ポリマーP−1を12%、n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有する水溶液C1(pH=2.5、サンノブコ社製の消泡剤SN381を2g含有)の110Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。次いで、ホウ酸とほう砂の1:1質量比の混合水溶液A1(各々3%の濃度)の54Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0159】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D1を得た。
【0160】
一方、上記シリカ分散液B1の400Lを、カチオン性ポリマーP−2を12%、n−プロパノール10%およびエタノールを2%含有する水溶液C2(pH=2.5)の120Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加し、次いで、上記混合水溶液A1の52Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0161】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D2を得た。
【0162】
上記シリカ分散液D1、D2を、30μmの濾過精度を有するアドバンテック東洋社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。
【0163】
〔オイル分散液の調製〕
ジイソデシルフタレート20kgと酸化防止剤(AO−1)20kgとを45kgの酢酸エチルに加熱溶解し、酸処理ゼラチン8kg、カチオン性ポリマーP−1を2.9kgおよびサポニン10.5kgとを含有するゼラチン水溶液210Lと55℃で混合し、高圧ホモジナイザーで乳化分散した後、全量を純水で300Lに仕上げて、オイル分散液を調製した。
【0164】
【化15】
【0165】
〔塗布液の調製〕
上記調製した各分散液を使用して、以下に記載の各添加剤を順次混合して、塗布液を調製した。なお、各添加量は塗布液1L当たりの量で表示した。
【0166】
(第1層用塗布液:最下層)
シリカ分散液D1 580ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)
6.5%水溶液 290ml
オイル分散液 30ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製 AE803) 42ml
エタノール 8.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げる
(第2層用塗布液)
シリカ分散液D1 600ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)
6.5%水溶液 270ml
オイル分散液 20ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製:AE803) 22ml
エタノール 8ml
純水で全量を1000mlに仕上げる
(第3層用塗布液)
シリカ分散液D2 630ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)
6.5%水溶液 270ml
オイル分散液 10ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製 AE803) 5ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げる
(第4層用塗布液:最上層)
シリカ分散液D2 660ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)
6.5%水溶液 250ml
ベタイン型界面活性剤−1の4%水溶液 3ml
サポニンの25%水溶液 2ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げる
【0167】
【化16】
【0168】
上記の様にして調製した各塗布液を、20μmの濾過精度を持つアドバンテック東洋社製のTCPD−30フィルターで濾過した後、TCPD−10フィルターで濾過した。
【0169】
〔記録媒体の塗布〕
次に、上記の各塗布液を下記に記載の湿潤膜厚となるよう、40℃で両面にポリエチレンを被覆した紙支持体上に、スライドホッパー型コーターを用いて4層同時塗布した。
【0170】
〈湿潤膜厚〉
第1層:42μm
第2層:39μm
第3層:44μm
第4層:38μm
なお、上記紙支持体は、幅が約1.5m、長さが約4000mのロール状に巻かれた下記の支持体を用いた。
【0171】
使用した紙支持体は、含水率が8%で、坪量が170gの写真用原紙表面を、アナターゼ型酸化チタンを6%含有するポリエチレンを厚さ35μmで押し出し溶融塗布し、裏面には厚さ40μmのポリエチレンを押し出し溶融塗布した。表面側は、コロナ放電した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA235)を記録媒体1m2当たり0.05gになるように下引き層を塗布し、裏面側にはコロナ放電加工した後、Tgが約80℃のスチレン・アクリル酸エステル系ラテックスバインダー約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)0.1gおよび約2μmのシリカ0.1gをマット剤として含有するバック層を塗布した。
【0172】
インク受容層用塗布液の塗布後の乾燥は、5℃に保った冷却ゾーンを15秒間通過させて膜面の温度を13℃にまで低下させたあと、複数設けた乾燥ゾーンの温度を適宜設定して乾燥を行った後、ロール状に巻き取って比較の記録媒体1を得た。記録媒体1の中心線平均表面粗さ(Ra値A)を後述の方法で測定した結果、0.21μmであった。
[イエローインク1の作製]
下記成分を混合、十分に撹拌した後、細孔径0.45μmメンブランフィルターを用いてろ過してイエローインク1を作製した。
【0173】
C.I.ダイレクトイエロー132 2.5質量%
トリプロピレングリコール 5.0質量%
プロピレングリコール 10.0質量%
2−プロパノール 2.0質量%
オルフィンE1010(日信化学株式会社製) 1.0質量%
イオン交換水 79.5質量%
[マゼンタインク1の作製]
上記イエローインク1の作製において、水溶性染料をC.I.ダイレクトイエロー132の代わりに前記化合物M−1及び前記化合物M−4の等量混合物を用いた以外はイエローインク1の作製と同様にして、マゼンタインク1を作製した。
[シアンインク1の作製]
上記イエローインク1の作製において、水溶性染料をC.I.ダイレクトイエロー132の代わりにC.I.ダイレクトブルー199を用いた以外はイエローインク1の作製と同様にして、シアンインク1を作製した。
[ブラックインク1の作製]
上記イエローインク1の作製において、水溶性染料をC.I.ダイレクトイエロー132の代わりにC.I.フードブラック2を用いた以外はイエローインク1の作製と同様にして、ブラックインク1を作製した。
[インクセット1〜8の作製]
上記、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1、ブラックインク1を一つのユニットとしたインクセット1を作製した。さらに、インクセット1のイエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1、ブラックインク1各々のインク中に含有される水溶性染料の含有量、さらに、インク中に含有される水溶性有機溶剤の種類及び量を表1に示すように変更してインクセット2〜8を作製した。
【0174】
【表1】
【0175】
[画像記録試料1〜8の作製]
ノズル直径23μm、駆動周波数10kHz、1色あたりのノズル数128、同色ノズル密度90dpi(以下、dpiとは2.54cmあたりのドットの数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型インクジェットプリンタにインクセット1をセットし、さらに記録媒体として記録媒体1をセットして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各単色、及び2〜4色重ね印字した10cm×10cmのべた画像である画像記録試料1を作製した。同様に、インクセット1をインクセット2〜8に変えて画像記録試料2〜8を作製した。
[画像記録試料1〜8のにじみ評価]
画像形成試料1〜8について下記のにじみ評価を行った。結果を表2に示す。
〈にじみ評価〉
画像記録試料を30℃相対湿度80%の環境下に2日放置した後、印字部と非印字部の境界を観察、以下の目視評価基準によりにじみを評価した。
◎:4色重ね印字部でも印字部と非印字部の境界が明瞭
○:単色印字部では印字部と非印字部の境界が明瞭だが、重ね印字部では若干にじみが観測される
×:単色印字部でもにじみが観測される
【0176】
【表2】
【0177】
さらにインクセット1〜8についてノズル下記の目詰まり評価を行った。
[ノズル目詰まり評価]
上記インクセット1をセットしたプリンターで印字を行い、各ノズルよりインクの吐出を確認した後、ヘッドにキャップをしない状態で25℃30%の環境下に3日間放置した。放置後再度吐出を行い、全ノズルの吐出が可能となるまでに要したクリーニング動作(吸引操作)を以下の基準により評価した。同様に、インクセット1をインクセット2〜8に変えて以下の基準により評価を行った。結果を表3に示す。
○:クリーニング動作3回以内で全ノズル吐出
×:クリーニング動作4回以上で全ノズル吐出
【0178】
【表3】
【0179】
表2、3の結果より、本発明のインクジェット記録用インクは、ノズル目詰まりが抑えられていることが分かった。さらに本発明のインクジェット記録用インクを用いて作製した画像記録試料はにじみが抑えられていることが分かった。特に画像記録試料1、4はにじみが抑えられていることが分かった。また、本発明のインクジェット記録用インクを用いて作製した画像記録試料は画像のブロンジングも無く、耐光性も良好であった。
【0180】
実施例2
[記録媒体2の作製]
記録媒体1の作製において、第4層用塗布液の代わりに、第4用塗布液を純水で仕上げる前に更に13.1mmolの酢酸ジルコニル(分子量215)の20%水溶液を徐々に添加し、0.01mmolの硝酸ジルコニルの水溶液を添加し、最後に液全体の体積が1000mlになるように純水を加えて半透明状の塗布液を用いた以外は、記録媒体1の作製と同様にして記録媒体2を作製した。
[記録媒体3の作製]
記録媒体1の作製において、第4層用塗布液の代わりに、第4塗布液を純水で仕上げる前に塩基性ポリ水酸化アルミニウム(理研グリーン株製のピュラケムWT)3gを加え、最後に液全体の体積が1000mlになるように純水を加えた塗布液を用いた以外は、記録媒体1の作製と同様にして記録媒体3を作製した。
[記録媒体4の作製]
記録媒体1のインク受容層表面に下記オーバーコート液を20g/m2塗布後、乾燥して記録媒体4を作製した。
(オーバーコート液)
棚砂1部に水97.8部、界面活性剤(大日本インキ化学工業製、F−144D)0.2部およびカチオン性シランカップリング剤として信越化学工業製POLON−MF−50 1部を添加、撹拌しオーバーコート液を得た。
[画像記録試料の作製及び評価]
実施例1において、記録媒体1を記録媒体2〜4に変える以外は実施例1と同様にして画像記録試料を作製し、にじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクを用いて記録した画像記録試料はにじみが抑えられており問題はなかった。
【0181】
実施例3
実施例1において、プリンタをキヤノン製インクジェットプリンターBJ S700とし、記録媒体1をピクトリコ社製ピクトリコプロとし、マゼンタインク1の水溶性染料である前記化合物M−1及び前記化合物M−4の等量混合物の代わりに前記化合物M−1及び前記化合物M−9の等量混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、ノズル目詰まりの評価、さらに画像記録試料を形成してにじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクは、ノズル目詰まりが抑えれており、さらに、画像記録試料のにじみも抑えられていることが分かった。さらに、長時間の連続出射を行ってもコゲーション(ヘッドの焦げ付き)の発生は見られなかった。
【0182】
実施例4
実施例1において、プリンタをヒューレットパッカード社製インクジェットプリンターhp pc1160とし、記録媒体1をヒューレットパッカード社製耐光プレミアムフォト用紙(厚手)とした以外は実施例1と同様にして、ノズル目詰まりの評価、さらに画像記録試料を形成してにじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクは、ノズル目詰まりが抑えられており、さらに、画像記録試料のにじみも抑えられていることが分かった。
【0183】
実施例5
実施例1において、プリンタをセイコーエプソン社製インクジェットプリンターCL−750とし、記録媒体1をセイコーエプソン社製フォトプリント紙2とした以外は実施例1と同様にして、ノズル目詰まりの評価、さらに画像記録試料を形成してにじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクは、ノズル目詰まりが抑えれており、さらに、画像記録試料のにじみも抑えられていることが分かった。
【0184】
実施例6
実施例1で作製したマゼンタインク1及びシアンインク1の全染料濃度をそれぞれ0.5質量%にした淡マゼンタインク1及び淡シアンインク1をそれぞれ作製し、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1、ブラックインク1、淡マゼンタインク1、淡シアンインク1からなるインクセット9を作製し、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−890C及びキヤノン社製インクジェットプリンターBJ F900にセットした。さらに、記録媒体としてコニカ製Photolike QPフォト光沢紙厚手DXを用いて画像記録試料を作製してにじみ評価を行ったが、にじみの発生がほとんどないことが分かった。
【0185】
実施例7
[記録媒体5の作製]
記録媒体1の作製において、第4層用塗布液の代わりに、第4層用塗布液と下記熱可塑性微粒子分散液の混合液(熱可塑性微粒子:無機顔料の固形分質量比が45:55となるように混合した後、粘度が45mPa・sとなるよう純水で希釈)を用いた以外は、記録媒体1の作製と同様にして記録媒体5を作製した。
【0186】
(熱可塑性微粒子分散液)
ノニオン系界面活性剤を乳化剤として乳化重合したスチレン−アクリル系ラテックスポリマー(Tg78℃、平均粒径250nm、固形分濃度40%)を、6%硝酸水溶液でpH4.7に調整し、これを熱可塑性微粒子分散液とした。
[画像記録試料の作製及びにじみ評価]
実施例1において、記録媒体1を記録媒体5とし、さらに画像記録後の記録媒体5を、シリコーン(KS−830E;信越化学工業製)を塗布したニッケルベルト(加熱ローラーの温度:120℃)により加熱加圧した以外は、実施例1と同様にして、画像記録試料を形成してにじみの評価を行った。本発明のインクジェット記録用インクを用いて形成した画像記録試料はにじみが抑えられていることが分かった。
【0187】
実施例8
[画像記録試料1′〜8′の作製]
実施例1において作製した画像記録試料1〜8のインク受容層と下記オーバーコート転写シートのオーバーコート樹脂層面を重ね合わせて加熱加圧装置を通過させ、オーバーコート樹脂を受像シート上に転写し、耐熱性フィルムを剥離して光沢オーバーコート層表面を有する画像記録試料1′〜8′を作製した。
【0188】
(オーバーコート転写シート)
12μmの厚みの平滑表面を有するポリエチレングリコールテレフタレートフィルム(ダイヤホイル製E150)を耐熱性フィルムとして、熱可塑性のオーバーコート樹脂層としてケミパール(三井石油化学製、ポリエチレン水性ディスパージョン)20部(固形分質量)、ポリビニルアルコール系接着剤7部(固形分質量)、水40部からなる塗液を5g/m2(固形分質量)となるように塗布、乾燥して作製した。
[画像記録試料1′〜8′のにじみ評価]
得られた画像形成試料についてにじみ評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクを用いて形成した画像記録試料はにじみが抑えられていることが分かった。これは、画像記録試料の画像上にラミネート処理するといったにじみの発生しやすい処理を行うような場合でも、本発明のインクジェット記録用インクを用いることにより、にじみの発生を抑えることができることを示している。
【0189】
実施例9
[イエローインクa〜d、マゼンタインクa〜d、シアンインクa〜d、ブラックインクa〜dの作製]
下記成分を混合、十分に撹拌した後、細孔径0.45μmメンブランフィルターを用いてろ過してイエローインク(Yインク)aを作製した。
【0190】
C.I.ダイレクトイエロー132 2.5質量%
トリプロピレングリコール 5.0質量%
プロピレングリコール 10.0質量%
2−プロパノール 2.0質量%
オルフィンE1010(日信化学株式会社製) 1.0質量%
イオン交換水 79.5質量%
上記Yインクaの水溶性染料(C.I.ダイレクトイエロー132)、さらに、水溶性有機溶剤(トリプロピレングリコール、プロピレングリコール、2−プロパノール)の種類及び量を表4に示すように変更して、イエローインク(Yインク)b〜d、マゼンタインク(Mインク)a〜d、シアンインク(Cインク)a〜d、ブラックインク(Kインク)a〜dを作製した。
【0191】
【化17】
【0192】
【化18】
【0193】
【化19】
【0194】
【化20】
【0195】
【表4】
【0196】
[画像記録試料Ya〜Yd、画像記録試料Ma〜Md、画像記録試料Ca〜Cd、画像記録試料Ka〜Kdの作製]
ノズル直径23μm、駆動周波数10kHz、1色あたりのノズル数128、同色ノズル密度90dpi(以下、dpiとは2.54cmあたりのドットの数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型インクジェットプリンタにYインクaをセットし、さらに記録媒体として記録媒体1をセットして、10cm×10cmのべた画像である画像記録試料Yaを作製した。さらにYインクaをYインクb〜d、Mインクa〜d、Cインクa〜d、Kインクa〜dに変えて、画像記録試料Yb〜Yd、画像記録試料Ma〜Md、画像記録試料Ca〜Cd、画像記録試料Ka〜Kdをそれぞれ作製した。
【0197】
[画像記録試料Ya〜Yd、画像記録試料Ma〜Md、画像記録試料Ca〜Cd、画像記録試料Ka〜Kdの評価]
作製した画像記録試料Ya〜Yd、画像記録試料Ma〜Md、画像記録試料Ca〜Cd、画像記録試料Ka〜Kdについて下記の評価を行った。結果を表5に示す。
〈耐光性評価〉
得られた各試料の画像をXeフェードメーター(7万lux)にて48時間曝射したときの画像サンプル及び未曝射の画像サンプルのそれぞれについてX−rite938 Spectrodensitometer(測定条件C光源)、イエローインクの場合はイエロー濃度、マゼンタインクの場合はマゼンタ濃度、シアンインクの場合はシアン濃度、ブラックインクの場合はビジブル濃度を測定し、下記評価基準により耐光性を評価した。
【0198】
残存率(%)=(曝射試料の反射濃度)÷(未曝射試料の反射濃度)
◎:残存率が80%以上
○:残存率が50%以上80%未満
×:残存率が50%以下
〈にじみ評価〉
得られた各試料の画像を30℃相対湿度80%の環境下に10日放置した後、印字部と非印字部の境界を観察、以下の目視評価基準によりにじみを評価した。
◎:印字部と非印字部の境界が明瞭
△:印字部と非印字部の境界が若干ぼやける
×:印字部と非印字部の境界が明らかににじむ
【0199】
【表5】
【0200】
表5の結果より、本発明のインクジェット記録用インクを用いて作製した画像記録試料は、耐光性に優れており、さらに、にじみが抑えられていることが分かった。
【0201】
実施例10
[インクセットa〜fの作製]
表6に示す組み合わせで、インクセットa〜fを作製した。
【0202】
【表6】
【0203】
[画像記録試料a〜fの作製]
ノズル直径23μm、駆動周波数10kHz、1色あたりのノズル数128、同色ノズル密度90dpi(以下、dpiとは2.54cmあたりのドットの数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型インクジェットプリンタにインクセットaをセットし、さらに記録媒体として記録媒体1をセットして、各インクにより10cm×10cmのべた画像である画像記録試料aを作製した。さらにインクセットaをインクセットb〜fに変えて、画像記録試料b〜fをそれぞれ作製した。
【0204】
[画像記録試料a〜fの評価]
作製した画像記録試料a〜fについて下記の評価を行った。結果を表7に示す。
【0205】
〈耐光性バランス評価〉
◎:イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックいずれにおいても残存率80%以上
○:イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのうち1色が残存率80%以下
×:イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのうち2色以上が残存率80%以下、あるいはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのうち1色以上が残存率50%以下
〈混色にじみ評価〉
得られた各試料の画像を30℃相対湿度80%の環境下に10日放置した後、印字部と非印字部の境界を観察、以下の目視評価基準によりにじみを評価した。
◎:4色重ね印字部でも全くにじみが無い
○:4色重ね印字部では若干にじむが3色以下ではにじまない
△:3色重ね印字部ではにじむが2色以下にじまない
×:2色重ね印字部でもにじみが観測される
【0206】
【表7】
【0207】
表7の結果より、本発明のインクセットを用いて作製した画像記録試料は、耐光性バランスに優れており、さらに、混色にじみが抑えられていることが分かった。
【0208】
実施例11
実施例9において、記録媒体1を記録媒体2〜4に変える以外は実施例9と同様にして画像記録試料をそれぞれ作製し、耐光性、にじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクを用いて記録した画像記録試料は耐光性に優れ、にじみが抑えられてることが分かった。
【0209】
実施例12
実施例10において、記録媒体1を記録媒体2〜4に変える以外は実施例10と同様にして画像記録試料をそれぞれ作製し、耐光性バランス、混色にじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクセットを用いて記録した画像記録試料は耐光性バランスに優れ、混色にじみが抑えられてることが分かった。
【0210】
実施例13
実施例10において、プリンタをキヤノン製インクジェットプリンターBJ S700とし、記録媒体1をピクトリコ社製ピクトリコプロとした以外は実施例10と同様にして、耐光性バランス、混色にじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクセットを用いて記録した画像記録試料は耐光性バランスに優れ、混色にじみが抑えられてることが分かった。さらに、長時間の連続出射を行ってもコゲーション(ヘッドの焦げ付き)の発生は見られなかった。
【0211】
実施例14
実施例10において、プリンタをヒューレットパッカード社製インクジェットプリンターhp pc1160とし、記録媒体1をヒューレットパッカード社製耐光プレミアムフォト用紙(厚手)とした以外は実施例1と同様にして、耐光性バランス、混色にじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクセットを用いて記録した画像記録試料は耐光性バランスに優れ、混色にじみが抑えられてることが分かった。
【0212】
実施例15
実施例10において、プリンタをセイコーエプソン社製インクジェットプリンターCL−750とし、記録媒体1をセイコーエプソン社製フォトプリント紙2とした以外は実施例1と同様にして、耐光性バランス、混色にじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクセットを用いて記録した画像記録試料は耐光性バランスに優れ、混色にじみが抑えられてることが分かった。
【0213】
実施例16
実施例9で作製したMインクa、Cインクaの全染料濃度をそれぞれ0.5質量%にした淡Mインクa、淡Cインクaを作製し、Yインクa、Mインクa、Cインクa、Kインクa、淡Mインクa、淡Cインクaからなるインクセットa′を作製し、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−890C及びキヤノン社製インクジェットプリンターBJ F900にセットした。さらに、記録媒体としてコニカ製Photolike QPフォト光沢紙厚手DXを用いて画像記録試料を作製して耐光性バランス、混色にじみの評価を行ったが、耐光性バランスに優れ、混色にじみが抑えられてることが分かった。
【0214】
実施例17
実施例10において、記録媒体1を記録媒体5とし、さらに画像記録後の記録媒体5を、シリコーン(KS−830E;信越化学工業製)を塗布したニッケルベルト(加熱ローラーの温度:120℃)により加熱加圧した以外は、実施例10と同様にして、画像記録試料を作製して耐光性バランス、混色にじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクを用いて記録した画像記録試料は耐光性バランスに優れ、混色にじみが抑えられてることが分かった。
【0215】
さらに、インクセットa′を用いて同様にして画像記録試料を作製し、耐光性バランス、混色にじみの評価を行ったが、耐光性バランスに優れ、混色にじみが抑えられてることが分かった。
【0216】
実施例18
[画像記録試料a′〜f′の作製]
実施例10において作製した画像記録試料a〜fのインク受容層と前記オーバーコート転写シートのオーバーコート樹脂層面を重ね合わせて加熱加圧装置を通過させ、オーバーコート樹脂を受像シート上に転写し、耐熱性フィルムを剥離して光沢オーバーコート層表面を有する画像記録試料a′〜f′を作製した。
[画像記録試料a′〜f′の評価]
作製した画像形成試料a′〜f′について耐光性バランス、混色にじみの評価を行ったが、本発明のインクジェット記録用インクセットを用いて記録した画像記録試料は耐光性バランスに優れ、混色にじみが抑えられてることが分かった。これは、画像記録試料の画像上にラミネート処理するといった混色にじみの発生しやすい処理を行うような場合でも、本発明のインクジェット記録用インクセットを用いることにより、混色にじみの発生を抑えることができることを示している。さらに、ラミネート処理により、耐光性バランスが一段と優れたことを示している。
【0217】
【発明の効果】
本発明によって、耐光性に優れ、にじみの発生を抑え品質の高いインクジェット画像を形成することができるインクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクセット及び該インクジェット記録用インク又はインクジェット記録用インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することができた。
Claims (18)
- 水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用インクにおいて、前記水溶性染料には下記一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれており、前記水溶性有機溶剤の含有率が5〜40質量%であり、前記水溶性有機溶剤に占めるトリプロピレングリコールの比率が25〜100質量%であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
- 水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用インクにおいて、前記水溶性染料には下記一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれており、前記水溶性有機溶剤の含有率が5〜40質量%であり、前記水溶性有機溶剤としてトリプロピレングリコール及びプロピレングリコールを含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
- 前記水溶性有機溶剤に占める前記トリプロピレングリコール及び前記プロピレングリコールの総比率が25〜100質量%であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記水溶性有機溶剤に占める前記トリプロピレングリコール及び前記プロピレングリコールの総比率が50〜100質量%であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記水溶性有機溶剤に占めるグリセリンの比率が25質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記水溶性有機溶剤の含有率が5〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク。
- 少なくともイエローのインクジェット記録用インク、マゼンタのインクジェット記録用インク、シアンのインクジェット記録用インク、ブラックのインクジェット記録用インクを有するインクジェット記録用インクセットにおいて、前記インクジェット記録用インクは、請求項1に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
- 少なくともイエローのインクジェット記録用インク、マゼンタのインクジェット記録用インク、シアンのインクジェット記録用インク、ブラックのインクジェット記録用インクを有するインクジェット記録用インクセットにおいて、前記インクジェット記録用インクは、請求項2に記載のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
- 前記水溶性有機溶剤に占める前記トリプロピレングリコール及び前記プロピレングリコールの総比率の平均が25〜100質量%であることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録用インクセット。
- 前記インクジェット記録用インクの少なくとも2つのインクの水溶性色材には、一般式(1)〜(5)で表される化合物の少なくとも1種又は水溶性銅フタロシアニン化合物が含まれることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
- 前記インクジェット記録用インクの前記水溶性有機溶剤に占めるグリセリンの比率の平均が25質量%以下であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
- 前記インクジェット記録用インクの前記水溶性有機溶剤の含有率の平均が5〜20質量%であることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
- 水溶性バインダーを含有するインク受容層を有する記録媒体にインクで記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク又は請求項7〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットであることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 前記インク受容層は多孔質構造を有することを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録した記録媒体に定着処理を行うことを特徴とする請求項13又は14に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録がオンデマンド方式で行われることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 電気・機械変換方式により前記インクを吐出して記録を行うことを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 電気・熱変換方式により前記インクを吐出して記録を行うことを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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