JP3990782B2 - 合わせガラスの中間膜形成用樹脂組成物、合わせガラス用中間膜及び合わせガラス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合わせガラス、特に自動車あるいは航空機のフロントガラスやサイドガラス又は建築物の窓ガラス等に用いられる合わせガラス、合わせガラスの中間膜、及び合わせガラスの中間膜の形成に好適に利用される樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車、航空機のフロントガラスやサイドガラスあるいは建築物の窓ガラス等には、従来から合わせガラスが広く使用されている。合わせガラスは、通常2枚のガラス板の間に樹脂膜(中間膜)が挟持された構成を有し、衝撃等に対して高い安全性を有することから、上記のように安全ガラスとして使用されている。即ち、合わせガラスは、外部から衝撃が加えられた場合に、ガラスの部分は破損するが、ガラス板間の中間膜は容易に破損されず、従って、破損したガラスは中間膜に貼着されたままで、ガラスの破片が周囲に飛散することはほとんどない。
【0003】
合わせガラスが、上記のような安全ガラスとしての機能を発揮するには、ガラス板と中間膜の接着力をある範囲に調整することが必要である。即ち、ガラス板と中間膜との接着力が小さい場合は、外部からの衝撃により破損したガラス板が中間膜から剥がれて飛散し易く、一方接着力が大きい場合はガラス板と中間膜が衝撃と同時に共に破損して飛散する傾向にある。
【0004】
従って、合わせガラスの中間膜は、上記機能を有し、さらにガラスの透明性を低下させないように、それ自身も高い透明性が要求される。このような合わせガラスの中間膜としては、ポリビニルアセタールと可塑剤を主成分とする膜が代表的であるが、上記特性を高いレベルで満足する中間膜は、まだ得られていない。
【0005】
さらに、ポリビニルアセタールと可塑剤を主成分とする中間膜は、ポリビニルアセタールが熱可塑性樹脂のため、下記のような点に問題がある。即ち、(1)軟化し易いため、ガラス板と貼り合わせた後に、熱によりガラス板がずれたり気泡が発生し易い、(2)高湿度雰囲気下で長期間放置すると、水分による樹脂の膨潤のため力学的強度や耐候性の低下が起こり易い、(3)耐衝撃性が温度に依存して変化し易く、特に室温を超えた高温領域では耐貫通性(飛来物等の合わせガラスの貫通し易さ)の低下が起こり易い、等の問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ガラス板との適度な接着力を有すると共に、耐湿性、透明性に優れ、かつ広い温度範囲で優れた耐貫通性を示す中間膜を有する合わせガラスを提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、ガラス板との適度な接着力を有ると共に、耐湿性、透明性に優れ、かつ広い温度範囲で優れた上記特性及び耐貫通性を示す合わせガラスの中間膜を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の目的は、上記の合わせガラスの中間膜形成用樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ガラス板との適度な接着力を有すると共に、耐湿性、透明性に優れ、かつ広い温度範囲で優れた耐貫通性を示す合わせガラスの中間膜を得るために検討を重ねてきた。その結果、可塑化されたポリビニルアセタール樹脂系に、有機過酸化物を導入することにより、接着力、透明性、耐湿性のみならず、耐貫通性の温度依存性も改善されることが分かり本発明に到達したものである。この理由は、明らかではないが、次のように推定される。透明性の向上は、導入された有機過酸化物と発色の原因となる不純物(重合触媒等)と反応して無着色物質に変化するため、また接着力の改善、耐貫通性の温度依存性の改善は、有機過酸化物の導入によりポリビニルアセタール樹脂に何らかの架橋構造が形成されるため、あるいは硬化が促進されるためと考えれる。
【0010】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び有機過酸化物を含む合わせガラスの中間膜形成用樹脂組成物;この樹脂組成物から形成された合わせガラス用中間膜;及びこの中間膜が、ガラス板とガラス板もしくはプラスチックシートとの間に挟持されてなる合わせガラスにある。
【0011】
上記樹脂組成物において、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び有機過酸化物の重量比が、100:20〜50:0.1〜10の範囲(樹脂:可塑剤:過酸化物)にあることが好ましい。また、上記樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、シランカップリング剤を0.01〜5重量部含むことが好ましい。さらに、上記樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、アクリロキシ基(アクリロイルオキシ基)含有化合物、メタクリロキシ基(メタクリロイルオキシ基)含有化合物及びエポキシ基含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を0.5〜80重量部含むことが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の合わせガラスの中間膜形成用樹脂組成物は、主成分としてポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び有機過酸化物を含んでいる。
【0013】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の一部又は全部をアルデヒド(例、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド)と縮合させて得られる熱可塑性樹脂である。従って、ポリビニルアセタール樹脂は、通常ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルアセタール単位(あるいはビニルホルマール単位、ビニルブチラール単位)を有する。ビニルホルマール単位を主成分とするものはポリビニルホルマール、ビニルアセターマール単位を主成分とするものはポリビニルアセタール、そしてビニルブチラーール単位を主成分とするものはポリビニルブチラールと一般に呼ばれるが、単一組成の樹脂はほとんどない。
【0014】
本発明では、ビニルブチラール単位を主成分とするポリビニルアセタール樹脂(一般にポリビニルブチラールと称されるもの)が好ましく、その組成としては、ビニルブチラール単位が50〜70モル%、ビニルアルコール単位が15〜50モル%そして酢酸ビニル単位が20モル%以下(特に0.5〜20モル%)の範囲が好ましい。ビニルブチラール単位が上記範囲未満の場合は、可塑剤との相溶性が低下し、上記範囲を超える場合は耐貫通性が悪化する。酢酸ビニル単位が上記範囲を超えた場合、透明性が低下する。
【0015】
また、上記樹脂の重合度は600〜2000の範囲が好ましい。重合度が600未満の場合は膜の強度が低下し、耐衝撃性が充分ではない。重合度が2000を超えた場合は、粘度が高すぎるため加工性が低下し、中間膜形成の作業が困難となる。
【0016】
上記樹脂組成物に含まれる可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール100重量部に対して20〜50重量部の範囲が好ましい。
【0017】
本発明の上記樹脂組成物は、中間膜のガラスと接着性調整剤として有機過酸化物を含有している。有機過酸化物を含有する樹脂組成物は、加熱により硬化性が向上しているので、得られる中間膜の膜強度も向上する。
【0018】
有機過酸化物としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましい。
【0019】
有機過酸化物の例としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3−ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロロヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、コハク酸パーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレーオ及び2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドを挙げることができる。有機過酸化物は一種使用してもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。有機過酸化物の含有量は、ポリビニルアセタール100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲が好ましい。
【0020】
本発明の中間膜形成用の樹脂組成物は、中間膜の種々の物性(機械的強度、接着性、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整、特に機械的強度の改良のため、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物を含んでいることが好ましい。
【0021】
アクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
【0022】
アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。
【0023】
多官能化合物としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等に複数のアクリル酸あるいはメタクリル酸をエステル化したエステルも挙げることができる。
【0024】
エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール・エチレンオキシド5モル付加体のグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0025】
上記化合物は、単独で使用しても、二種以上組み合わせて使用しても良い。上記化合物の含有量は、ポリビニルアセタール100重量部に対して0.5〜80重量部の範囲が好ましく、特に0.5〜70重量部の範囲が好ましい。80重量部を超えると、組成物の調整等の作業性や成膜性が悪化することがある。
【0026】
本発明の中間膜形成用の樹脂組成物は、さらに接着性を向上させるためにシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤の例としては、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0027】
上記シランカップリング剤は、単独で使用しても、二種以上組み合わせて使用しても良い。上記化合物の含有量は、ポリビニルアセタール100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲が好ましい。
【0028】
本発明の合わせガラスは、上記樹脂組成物を用いてガラス板間に中間膜を形成することにより得られる。この合わせガラスの製造方法は、従来のポリビニルブチラールの中間膜を有する合わせガラスの製造方法と同様に行うことができる(例、特開平5−186250号公報)。
【0029】
本発明の合わせガラスの中間膜は、例えば、通常の押出成形、カレンダー成形等によりシート状物を得る方法により製造することができる。また、上記樹脂組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得ることもできる。
【0030】
本発明の合わせガラスは、上記シート状の中間膜を用いて、例えば、その中間膜の両面にガラス板を貼り付け、このサンドイッチ構造の積層体を脱気したのち、加熱下に押圧することにより得ることができる。
【0031】
中間膜の厚みは、薄すぎると得られる合わせガラスの耐貫通強度が低下し、厚すぎると透明性が低下するため、0.2〜1.6mmの範囲が好ましく、特に0.3〜1.3mmの範囲が好ましい。
【0032】
合わせガラスのガラス板表面には、金属及び/又は金属酸化物からなる透明の導電層を設けても良い。
【0033】
【実施例】
[実施例1〜3及び比較例1]
<中間膜の作製>
表1に示す材料をロールミルに供給し、95℃で溶融混錬し、樹脂組成物を調製した。
【0034】
【表1】
【0035】
上記で得られた樹脂組成物を、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムの間に挟んで、120℃、5分の条件でプレス成形し、放冷後、得られた中間膜をフィルムより剥離して、厚み0.8mmの中間膜を得た。
【0036】
<合わせガラスの作製>
予め洗浄乾燥しておいた2枚の3mm厚のフロートガラス板の間に、上記中間膜を挟み、これをゴム袋に入れて真空脱気し、約80℃の温度で予備圧着する。次いで、この予備圧着ガラスをオートクレーブの中に入れ、圧力5kg/cm2、150℃の条件で30分間加圧処理を行った。
【0037】
上記のようにして、実施例1〜3及び比較例1の合わせガラスを得た。いずれの合わせガラスも着色が少なく、光学的ゆがみの少ないものであった。
【0038】
[合わせガラスの評価]
(1)ヘイズ(%)
JIS−R3212に記載の方法に従って測定した。その際、ヘイズメータ(スガ試験機(株)製)を用いた。
(2)透過率(%)
上記(1)と同様に測定した。
(3)YI値
カラーコンピュータ(スガ試験機(株)製)を用いて測定した。
(4)接着力(kgf)
【0039】
得られた合わせガラスを25mm幅の短冊状に裁断し180゜ピーリング試験と同様にして引張試験機にて、100mm/分の引張速度で剥離強度を測定した。
【0040】
上記で得られた結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物から形成される中間膜をガラス板間に挟持してなる合わせガラスは、ガラス板との適度な接着力を有すると共に、耐湿性、透明性に優れ、かつ広い温度範囲で優れた耐貫通性を示す。これは、可塑化されたポリビニルアセタール樹脂系に、有機過酸化物を導入することにより、中間膜の着色が減少し、また有機過酸化物を導入によりポリビニルアセタール樹脂の硬化が促進され接着力の改善、耐貫通性の温度依存性の改善の効果が得られるためと、考えられる。
【0043】
特に、シランカップリング剤、アクリロキシ基等含有化合物をさらに可塑化されたポリビニルアセタール樹脂系に導入することにより、架橋が行われるため、より一層、接着力、耐貫通性の温度依存性が改善される。
Claims (6)
- ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び有機過酸化物を含む合わせガラスの中間膜形成用樹脂組成物。
- ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及び有機過酸化物の重量比が、100:20〜50:0.1〜10の範囲にある請求項1に記載の樹脂組成物。
- さらに、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、シランカップリング剤を0.01〜5重量部含む請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- さらに、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及びエポキシ基含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を0.5〜80重量部含む請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物から形成された合わせガラス用中間膜。
- 請求項5に記載の中間膜が、ガラス板とガラス板もしくはプラスチックシートとの間に挟持されてなる合わせガラス。
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