(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである:
(1)「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。また、例えば「ny=nz」は、nyとnzが厳密に等しい場合のみならず、nyとnzが実質的に等しい場合も包含する。本明細書において「実質的に等しい」とは、光学補償層付偏光板の全体的な偏光特性に実用上の影響を与えない範囲でnyとnzが異なる場合も包含する趣旨である。同様に、「nx=ny」もまた、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。
(2)「面内位相差Re」は、23℃における波長590nmの光で測定したフィルム(層)面内の位相差値をいう。Reは、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Re=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差Rthは、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rthは、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれ、nx、nzとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
(4)本明細書に記載される用語や記号に付される添え字の「1」、「2」、または「3」は、それぞれ、第1の光学補償層、第2の光学補償層、または第3の光学補償層を表す。
(5)「λ/2板」とは、ある特定の振動方向を有する直線偏光を、当該直線偏光の振動方向とは直交する振動方向を有する直線偏光に変換したり、右円偏光を左円偏光に(または、左円偏光を右円偏光に)変換したりする機能を有するものをいう。λ/2板は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルム(層)の面内の位相差値が約1/2である。
(6)「λ/4板」とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4板は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルム(層)の面内の位相差値が約1/4である。
A.光学補償層付偏光板の全体構成
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による光学補償層付偏光板の概略断面図である。図1(a)に示すように、この光学補償層付偏光板10は、ハードコート層11と偏光子12と第1の光学補償層13と第2の光学補償層14とをこの順に有する。偏光子12と第1の光学補償層13、および、第1の光学補償層13と第2の光学補償層14は、それぞれ任意の適切な粘着剤層または接着剤層(図示せず)を介して積層されている。図1(b)は、本発明の別の好ましい実施形態による光学補償層付偏光板の概略断面図である。図1(b)に示すように、本発明の光学補償層付偏光板10は、必要に応じて、第2の光学補償層14の第1の光学補償層13と反対側に第3の光学補償層16をさらに有し得る。また、必要に応じて偏光子12の少なくとも片面に任意の適切な保護層15が設けられてもよい(図1では偏光子12の両面に保護層15が設けられている)。本発明の光学補償層付偏光板の全体厚みは、好ましくは280〜520μmであり、さらに好ましくは280〜350μmである。
B.ハードコート層
上記ハードコート層11はウレタンアクリレート(A)、ポリオール(メタ)アクリレート(B)、および、水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー(C)を含有する。以下、これら(必要に応じて添加物等を含む)をハードコート層形成材料と記載する場合がある。これらの物質を含有することで、ハードコート層は、優れた硬度を有し、ハードコート層のクラックを防ぎ、かつ、カールを防ぐことができる。この結果、優れた耐擦傷性および耐湿熱性を有することができるので、ガラス等のカバープレートに代替できる。また、ハードコート層はガラス等のカバープレートに比べ著しく薄いので、本発明のハードコート層は、光学補償層付偏光板の薄型化に寄与し、かつ、さらに、液晶表示装置全体の薄型化および軽量化に大きく寄与する。
上記ハードコート層の厚みは目的に応じて適宜設定される。好ましくは15〜50μmであり、さらに好ましくは15〜40μmであり、とりわけ好ましくは15〜30μmであり、特に好ましくは18〜23μmである。ハードコート層は、これらの範囲の厚みを有することで、硬度を一定以上(例えば、鉛筆硬度で4H以上)に有し得るので、優れた耐擦傷性を有することができる。また、ハードコート層のクラックを防ぎ、かつ、カールを防ぐことができる。さらに、ガラスなどのカバープレートに比べて著しく薄いので(例えば1/10以下)、光学補償層付偏光板の薄型化に寄与することができる。
上記鉛筆硬度は、好ましくは4H以上であり、特に好ましくは5H以上である。上限は特に限定されないが8H以下が好ましい。これらの範囲を有することで、優れた耐擦傷性が得られる。
上記ハードコート層の耐擦傷性は目的に応じて適宜設定される。この耐擦傷性は、例えば耐擦傷性試験(詳細は後述)を行い、ハードコート層の試験前後のヘイズ値の差を指針とすることができる。ヘイズ値の差は、好ましくは0〜0.7であり、さらに好ましくは0〜0.5である。これらの範囲を有することで、優れた耐擦傷性を有し、かつ、透明性に優れるなどの実用性に優れたハードコート層を得ることができる。
上記ウレタンアクリレート(A)としては、任意の適切なウレタンアクリレートが採用される。ウレタンアクリレートは、好ましくは(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステル、ポリオール、およびジイソシアネートを含有する。例えば、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルとポリオールから、水酸基を少なくとも1つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを作成し、これをジイソシアネートと反応させることによって製造したウレタンアクリレートが用いられる。これらの成分は、1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、目的に応じて各種添加剤を加えてもよい。本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)」の記載は上記と同様の意味を有する。なお、アクリル酸およびメタクリル酸を併用する場合、それらの混合比は特に限定されず、目的に応じて適宜設定される。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、任意の適切な(メタ)アクリル酸エステルが用いられる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記ポリオールは、水酸基を少なくとも2つ有する化合物である。ポリオールとしては、任意の適切なポリオールが用いられる。例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリジメチロールプロパン、グリセリン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類が挙げられる。
上記ジイソシアネートとしては、任意の適切なジイソシアネートが用いられる。例えば、芳香族、脂肪族または脂環族の各種のジイソシアネート類を使用することができる。具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、およびこれらの水添物が挙げられる。
ウレタンアクリレート(A)の含有量については、目的に応じて適宜設定される。ウレタンアクリレートの含有量は、ハードコート層形成材料の全樹脂成分(A〜Cの樹脂成分および添加樹脂成分の合計)100重量部に対して、好ましくは15〜55重量部であり、さらに好ましくは25〜45重量部である。ウレタンアクリレートの添加量が上記範囲を有することで、硬度と柔軟性のバランスに優れ、ハードコート層のクラックを防ぎ、かつ、カールを防ぐことができる。さらに、保護層または偏光子等との密着性を有し、かつ、所望の耐擦傷性(硬度)を有するハードコート層を得ることができる。
上記ポリオール(メタ)アクリレート(B)としては、任意の適切なポリオール(メタ)アクリレートが採用される。具体例としては、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの成分は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。
ポリオール(メタ)アクリレート(B)は、好ましくはペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとを含む。ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートは、任意の適切な状態で含有される。例えば、これらの共重合体でもよく、混合体であってもよい。また、これらの重合割合や混合割合(含有量)等は目的に応じて適宜設定される。例えば、混合体として用いる場合、ペンタエリスリトールトリアクリレートの含有量はウレタンアクリレート(A)100重量部に対し、好ましくは10〜40重量部であり、さらに好ましくは15〜35重量部であり、特に好ましくは20〜30重量部である。ペンタエリスリトールテトラアクリレートの含有量はウレタンアクリレート(A)100重量部に対し、好ましくは25〜55重量部であり、さらに好ましくは30〜50重量部であり、特に好ましくは35〜45重量部である。これらの範囲を有することで、優れた硬度を有するハードコート層を得ることができる。
ポリオール(メタ)アクリレート(B)の含有量は、ウレタンアクリレート(A)100重量部に対して、好ましくは70〜180重量部であり、さらに好ましくは100〜150重量部である。ポリオール(メタ)アクリレート(B)の含有量がウレタンアクリレート(A)に対し上記の範囲の重量部を有することで、ハードコート層の硬化収縮が小さく、ハードコート層のカールを防ぎ、かつ、屈曲性の低下を抑制することができる。また、ポリオール(メタ)アクリレート(B)の含有量が上記範囲である場合、耐擦傷性(すなわち、ヘイズ値の差)を、上記の所望の範囲(好ましくは0〜0.7、さらに好ましくは0〜0.5)とすることができるので、ハードコート性、すなわち硬度や耐擦傷性に優れ、かつ、透明性に優れるなど実用に優れたハードコート層を得ることができる。
上記(メタ)アクリルポリマー(C)としては、水酸基を2個以上含むアルキル基を有するものが用いられる。具体的には、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルポリマーや、2−ヒドロキシエチル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルポリマーが挙げられる。
上記(メタ)アクリルポリマー(C)の含有量は、ウレタンアクリレート(A)100重量部に対し、好ましくは25〜110重量部であり、さらに好ましくは45〜85重量部である。(メタ)アクリルポリマーの含有量が上記範囲内である場合、優れた塗工性を有し、かつ、ハードコート層のカールを抑制することができる。
なお、本発明においては、上記(メタ)アクリルポリマー(C)を含有することによりハードコート層の硬化収縮を抑制し、その結果カールの発生を防止するものである。ハードコート層等の製造上の観点からは、カールの発生が30mm以内に抑制されることが好ましい。この範囲内にカールの発生を抑制することにより作業性および生産効率を一層向上させることができる。
上記ハードコート層形成材料は、無機微粒子および/または有機微粒子を有してもよい。上記無機微粒子としては特に限定されず、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等が挙げられる。また、有機微粒子としては特に限定されず、例えば、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、さらにポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等が挙げられる。好ましくはハードコート層を硬化収縮させない微粒子である。
上記微粒子は、粒径および含有量等に応じてハードコート層の見かけの屈折率を調整するので、外光の反射光が虹色の色相を呈する干渉縞と呼ばれる現象を抑制し得る。近年、例えばものがはっきり見えるということを特徴とした特定の波長の発光強度が強い三波長蛍光灯が非常に増加しており、このような微粒子を用いることにより三波長蛍光灯の使用時に顕著に現れる干渉縞を抑制し得る。さらに、ハードコート層に隣接する偏光子等との間で屈折率変化が生じた場合でも、見かけの屈折率を調整することにより、表示品位の劣化を抑制できる。
上記微粒子の形状は特に制限されず、ビーズ状の球形であってもよく、粉末等の不定型のものであってもよい。これら微粒子は1種または2種以上を適宜に選択して用いることができる。該微粒子の平均粒子径は目的に応じて適宜設定される。好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは2〜20μmである。また、微粒子には、必要に応じて超微粒子などを分散、含浸させてもよい。
上記微粒子の含有量は特に限定されず、目的や微粒子の粒径に応じて適宜設定され得る。例えば、防眩効果を付与する場合には、ハードコート層形成材料100重量部に対して好ましくは2〜60重量部である。また、ブロッキング防止性を付与する場合には、ハードコート層形成材料100重量部に対して好ましくは1〜50重量部である。
上記超微粒子は、導電性付与の他に、上記微粒子と同様にハードコート層の見かけの屈折率を調整する機能を有する。超微粒子の粒径は目的に応じて適切な粒径が選択され、好ましくは100nm以下である。超微粒子の下限は特に限定されないが、好ましくは1nm以上である。この超微粒子は、任意の適切な超微粒子が用いられる。好ましくは、上記微粒子と同様の成分(例えば金属酸化物)が用いられる。なお、該超微粒子は単独で用いてもよく、上記微粒子と組み合わせて用いてもよい。また、上記微粒子との配合比などは目的に応じて適宜設定される。
上記ハードコート層形成材料は、好ましくは任意の適切な溶媒を含有し得る。溶媒を有することで、ハードコート層形成材料の塗工性が向上する。該溶媒の濃度は目的に応じて適宜選択される。溶媒100重量部に対し、好ましくはハードコート層形成材料が40〜60重量部であり、さらに好ましくは45〜55重量部である。これらの範囲を有することで、例えば塗工ムラおよび乾燥ムラを抑制することができ、かつ、塗工性に優れる。
上記溶媒の具体例としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸n−ペンチル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ペンチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5,トリオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ペンタノール、シクロヘキサノール、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−オクタノン、3−ヘプタノンが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、酢酸エチルおよび/または酢酸ブチルである。これらの溶媒の含有量は目的に応じて適宜設定される。例えば、酢酸エチルを用いる場合、溶媒全体を100重量部とすると、酢酸エチルは、好ましくは20重量部以上であり、さらに好ましくは25重量部以上であり、特に好ましくは30〜70重量部である。これらの範囲を有することで、溶媒の揮発速度による塗工ムラおよび乾燥ムラを抑制することができる。なお、溶媒とハードコート層形成材料の混合条件は目的に応じて適宜設定される。例えば、温度は目的に応じて適宜設定され、好ましくは常温である。
上記ハードコート層形成材料は、目的に応じて任意の適切なレベリング剤を含有してもよい。このレベリング剤は、好ましくはフッ素系またはシリコーン系のレベリング剤であり、さらに好ましくはシリコーン系のレベリング剤である。シリコーン系のレベリング剤は、例えば、反応性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサンが挙げられる。特に好ましいのは、反応性シリコーンのレベリング剤およびシロキサン系のレベリング剤である。反応性シリコーンのレベリング剤を用いることで、表面に滑り性が付与され、優れた耐擦傷性が持続する。また、シロキサン系のレベリング剤を用いることでハードコート層の成形性が向上する。
上記反応性シリコーンのレベリング剤としては、目的に応じて任意の適切なレベリング剤が用いられる。例えば、シロキサン結合と、アクリレート基およびヒドロキシル基とを有するものが挙げられる。具体例としては、
(1)(ジメチルシロキサン/メチル):(3−アクリロイル−2−ヒドロキシプロポキシプロピルシロキサン/メチル):(2−アクリロイル−3−ヒドロキシプロポキシプロピルシロキサン)=0.8:0.16:0.04のモル比の共重合物、
(2)ジメチルシロキサン:ヒドロキシプロピルシロキサン:6−イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸:脂肪族ポリエステル=6.3:1.0:2.2:1.0のモル比の共重合物、
(3)ジメチルシロキサン:末端がアクリレートのメチルポリエチレングリコールプロピルエーテルシロキサン:末端がヒドロキシル基のメチルポリエチレングリコールプロピルエーテルシロキサン=0.88:0.07:0.05のモル比の共重合物等が挙げられる。なお、これらのレベリング剤に含まれる各成分のモル比は目的に応じて適宜設定され得る。
レベリング剤の配合量は、目的に応じて適宜設定される。ハードコート層形成材料の全樹脂成分100重量部に対して、好ましくは5重量部以下、さらに好ましくは0.01〜5重量部である。
ハードコート層形成材料の硬化手段に紫外線を用いる場合に於いて、上記レベリング剤をハードコート層形成材料に配向しておくと、予備乾燥及び溶媒乾燥時に当該レベリング剤が空気界面にブリードしてくるので、酸素による紫外線硬化型樹脂の硬化阻害を防ぐことができ、最表面に於いても十分な硬度を有するハードコート層を得ることができる。また、シリコーン系のレベリング剤はハードコート層表面へのブリードにより滑り性が付与されるために耐擦傷性を向上することもできる。
上記ハードコート層形成材料は、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、各種添加剤を有してもよい。例えば、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤が挙げられる。これらの添加剤は単独で使用してもよく、また2種類以上併用してもよい。
上記ハードコート層形成材料は、必要に応じて任意の適切な重合開始剤を有してもよい。好ましくは、光重合開始剤である。例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、その他チオキサント系化合物を挙げることができる。
上記ハードコート層の形成方法は、任意の適切な方法が採用される。以下に、ハードコート層の代表的な形成例を示すが、この方法に限定されるものではない。ハードコート層を形成するには、ウレタンアクリレート(A)、ポリオール(メタ)アクリレート(B)および水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー(C)(いわゆるハードコート層形成材料)を任意の適切な基材等に塗工し、その後硬化させる。ハードコート層形成材料は、塗工にあたり、溶媒に溶解した溶液として塗工してもよい。ハードコート層形成材料を溶液として塗工した場合には、溶媒の乾燥後に硬化を行うことが好ましい。
ハードコート層形成材料を基材上に塗工する方法としては、任意の適切な方法が採用され、例えば、ファンテンコート、ダイコート、スピンコート、スプレーコート、グラビアコート、ロールコート、バーコート等の塗工法を用いることができる。
ハードコート層形成材料の硬化手段は特に制限されない。好ましくは電離放射線硬化である。例えば、各種活性エネルギーを用いることができ、好ましくは紫外線が用いられる。エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素などの線源が挙げられる。好ましくはメタルハライドランプである。エネルギー線源の照射量等は、目的に応じて適宜選択される。好ましくは、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm2である。照射量が、これらの範囲を有することで、硬化が充分に行われ、ハードコート層が所望の硬度を有することができ、かつ、優れた透明性を有することができる。以上のような工程を経てハードコート層が形成される。
上記ハードコート層は必要に応じて各種表面処理を行ってもよい。表面処理を行うことで、基材、保護層または偏光子等との接着性を向上させることができる。表面処理は目的に応じて任意の適切な方法が採用される。例えば、低圧プラズマ処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理が挙げられる。また、上記ハードコート層は必要に応じて防眩性を有してもよい。防眩性を有する方法は任意の適切な方法が採用される。例えば、上記微粒子を用いることで防眩性を有することができる。
上記ハードコート層は少なくとも一方に反射防止層を有してもよい。光は物体に当たるとその界面での反射、内部での吸収、散乱といった現象を繰り返して物体の背面に透過していく。画像表示装置等にハードコート層を装着した際、画像の視認性を低下させる要因のひとつに空気とハードコート層界面での光の反射が挙げられる。反射防止層は、その表面反射を低減させるものである。ハードコート層表面等で反射する光を抑制することで、例えば、反射型液晶表示装置における表示がより明確になる。該反射防止層は、任意の適切な反射防止層が採用される。また、反射防止層は、単層で用いてもよく、2層以上を積層して用いてもよい。積層方法は、目的に応じて適宜選択される。なお、必要に応じてフッ素基含有のシラン系化合物および/またはフッ素基含有の有機化合物を有してもよい。外部環境からの汚染を防ぐためである。
上記反射防止層の反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、380〜780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450〜650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にする設計を行なうことが一般的に行われている。
反射防止層の厚みは、目的に応じて適宜設定される。例えば、厚みは、86nm〜105nmである。また、反射防止層の屈折率は、使用する組成の屈折率等によっても異なるが、例えば1.2〜1.8である。
反射防止層の形成方法は任意の適切な方法が選択される。例えば、ハードコート層にドライ方式またはウェット方式で任意の適切な反射防止層を形成する材料(以下「反射防止層形成材料」とする)を塗工し、乾燥、硬化する方法が挙げられる。これらの方法を用いることで、反射防止層の厚みが均一になり、優れた反射防止機能を有することができるためである。
上記反射防止層形成材料は、任意の適切な材料が選択される。例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等が挙げられる。また、それぞれの材料は、表面に防汚性を付与するためフッ素基含有化合物を用いてもよい。好ましくは無機成分含有量が多い材料であり、さらに好ましくはゾル−ゲル系材料である。耐擦傷性に優れるからである。なお、ゾル−ゲル系材料は部分縮合して用いることができる。
また、特開2004−167827号公報に記載のエチレングリコール換算による数平均分子量が500〜10000であるシロキサンオリゴマーと、ポリスチレン換算による数平均分子量が5000〜100000である、フルオロアルキル構造およびポリシロキサン構造を有するフッ素化合物とを含有する反射防止層形成材料を用いてもよい。
上記反射防止層形成材料は、必要に応じて任意の適切な超微粒子を有してもよい。該超微粒子の構造は目的に応じて適宜選択され、好ましくは中空を有している。また、該超微粒子の形状は目的に応じて適宜選択され、好ましくは球状である。超微粒子の平均粒子径は目的応じて適宜選択される。好ましくは5〜300nm程度である。この超微粒子は目的に応じて任意の適切な材料が選択され、好ましくは酸化ケイ素が用いられる。なお、必要に応じて超微粒子は、任意の適切なカップリング剤で処理してもよく、反射防止層の膜強度を改善する為に任意の適切な無機のゾルを添加してもよい。
上記反射防止層形成材料は、超微粒子の分散液(例えば、上記の中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の分散液)と任意の適切なマトリクス成分を有してもよい。マトリクス成分とは、ハードコート層の表面に被膜を形成し得る成分をいい、ハードコート層との密着性や硬度、塗工性等の条件に適合する樹脂等から適宜選択して用いられる。また、上記の酸化ケイ素超微粒子等の加水分解性有機ケイ素化合物等をマトリクス成分として用いてもよい。
上記反射防止層形成材料は、任意の適切な方法で調製される。例えば、上記マトリクス成分に上記超微粒子の分散液を混合し、必要に応じて任意の適切な有機溶剤で希釈することで反射防止層形成材料を調製することができる。例えば、上記反射防止層形成材料の、酸化ケイ素超微粒子とマトリクス成分の重量比は、酸化ケイ素超微粒子:マトリクス=1:99〜9:1の範囲が好ましい。このような範囲の重量比を有することで反射防止層の強度が実用性を充足し、かつ、酸化ケイ素超微粒子の添加効果が発現しやすいためである。
反射防止層形成材料より反射防止層を形成する方法は、任意の適切な方法が採用される。例えば、ハードコート層に上記反射防止層形成材料を塗工し、乾燥、硬化させる方法が挙げられる。塗工方法は、目的に応じて適宜選択され得る。
上記反射防止層を形成する反射防止層形成材料などを乾燥および硬化させる温度は、目的に応じて適宜設定される。好ましくは60〜150℃であり、さらに好ましくは70〜130℃である。また、乾燥および硬化時間は目的に応じて適宜設定される。好ましくは1〜30分、さらに好ましくは1〜10分程度である。乾燥および硬化が十分であり、かつ、生産性に優れるためである。また、乾燥および硬化を行う方法は、目的に応じて適宜選択される。
得られた反射防止層にさらに加熱処理を行うことで、より高硬度の反射防止層が得られる。加熱処理の温度は特に制限されず、好ましくは40〜130℃であり、さらに好ましくは50〜100℃である。加熱処理の時間は、目的に応じて適宜設定される。好ましくは1分〜100時間である。耐擦傷性をより向上させるためには10時間以上行うことがより好ましい。加熱は、ホットプレート、オーブン、ベルト炉などによる方法が適宜に採用される。
反射防止層は、好ましくは酸化チタン層と酸化ケイ素層との積層構造を有する。その結果、反射防止機能をより大きく発現させることができ、可視光線の波長領域(380〜780nm)の反射をさらに均一に低減させることができる。
上記ハードコート層は必要に応じて、任意の適切な基材を有してもよい。基材は例えば、ハードコート層形成材料を支持しハードコート層を形成するため、ハードコート層の自己支持性を高めるために用いられる。該基材は、好ましくは可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れ(好ましくはヘイズ値1%以下)、光学的に複屈折の少ないフィルムである。基材は目的に応じて任意の適切な基材が用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。これらのフィルムの厚さは、目的に応じて適宜設定され、好ましくは10〜500μmであり、さらに好ましくは20〜300μmである。なお、基材は後述の保護層が兼用してもよい。
上記基材は目的に応じて適宜処理が施されてもよい。例えば、基材の裏面(ハードコート層の形成面とは反対側の面)に、ハードコート層のカールの発生を防止するための処理を施してもよい。この処理は任意の適切な処理が採用され、例えば、溶剤処理を挙げることができる。この処理は、基材にその裏面側へ丸まろうとする性質を付与することで、ハードコート層が基材面と反対側にカールしようとする力を相殺する。この結果、ハードコート層全体のカールの発生を防止することができる。具体的な処理方法は、基材を溶解させ得る溶剤または膨潤させ得る溶剤を含む組成物を、任意の適切な方法により塗布して行われる。例えば、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーターまたは押し出しコーター等を用いて、基材の裏面にウェット膜厚(乾燥前の膜厚)が好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは5〜30μmとなる様に塗布する。
上記溶剤は、目的に応じて任意の適切な溶剤が用いられる。例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノールが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。溶剤の混合比(重量比)は、目的に応じて適宜設定される。例えば、基材を溶解させ得る溶剤および/または膨潤させ得る溶剤(A)と基材を溶解させない溶剤(B)を混合する場合、好ましくは、(A):(B)=10:0〜1:9である。
上記溶剤処理と同じ目的で、基材の裏面(ハードコート層の形成面とは反対側の面)に、透明樹脂層を設けてもよい。上記透明樹脂層は、目的に応じた任意の適切な樹脂層が採用される。例えば、熱可塑性樹脂、放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、その他の反応型樹脂を主成分とする層が挙げられる。好ましくは熱可塑性樹脂を主成分とする層である。さらに好ましくはジアセチルセルロース等を用いたセルロース系樹脂層である。
C.偏光子
上記偏光子12としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
D.保護層
図1に示すように、必要に応じて上記偏光子12の少なくとも片面に任意の適切な保護層15が設けられてもよい(図1では偏光子12の両面に保護層15が設けられている)。該保護層は1層でもよく、2層以上であってもよい。保護層は、目的に応じて任意の適切な保護層が用いられる。例えば、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムが採用される。また、必要に応じてハードコート層のカールを防ぎ得る処理等が施されてもよい。
上記フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。上記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であり得る。TAC、ポリイミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ガラス質系ポリマーが好ましく、TACがさらに好ましい。
上記保護層を偏光子に積層する方法は、目的に応じて適宜選択される。例えば、粘着剤層を用いてもよく、接着剤層を用いてもよい。粘着剤層には後述するとおり、目的に応じて任意の適切な粘着剤が用いられる。接着剤層には目的に応じて任意の適切な接着剤が用いられる。接着剤層の具体例としては、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものが挙げられる。
上記保護層は、透明で、色付きが無いことが好ましい。具体的には、厚み方向の位相差値が、好ましくは−90nm〜+90nmであり、さらに好ましくは−80nm〜+80nmであり、最も好ましくは−70nm〜+70nmである。
上記フィルムの厚みとしては、上記の好ましい厚み方向の位相差が得られる限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。具体的には、保護層の厚みは、好ましくは5mm以下であり、さらに好ましくは1〜500μmであり、とりわけ好ましくは20〜300μmであり、特に好ましくは30〜150μmである。
偏光子12とハードコート層11の間に設けられる保護層には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等が施され得る。より具体的には、保護層に(TAC)フィルムを用いる場合、表面処理として好ましく用いられるアルカリ鹸化処理を挙げることができる。好ましくは(TAC)フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、水洗して乾燥するサイクルで行う表面処理である。該アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液等が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1N〜3.0Nであることが好ましく、0.5N〜2.0Nであることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、25℃〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜70℃がさらに好ましい。その後、水洗処理、乾燥処理を行い、表面処理を施したトリアセチルセルロースを得ることができる。
なお、上記ハードコート層の基材と同様の役割を保護層が有してもよい。この場合、基材を省略することができるので、可視光の光線透過率に優れ、透明性に優れ、かつ、光学的に複屈折の少ない光学補償層付偏光板を得ることができる。さらに、光学補償層付偏光板の薄型化に寄与することができ、かつ、製造工程数を省略することができるので、生産効率を向上させることができる。
E.第1の光学補償層
上記第1の光学補償層13は、図2に示すようにその遅相軸Bが偏光子12の吸収軸Aに対して交差(具体的には角度αを規定)して配置される。この角度αは、偏光子12の吸収軸Aに対して反時計回りに好ましくは10〜30°であり、より好ましくは12〜27°であり、さらに好ましくは14〜25°である。
上記第1の光学補償層13は、λ/2板として機能し得る。第1の光学補償層がλ/2板として機能することにより、λ/4板として機能する第2の光学補償層の波長分散特性(特に、位相差がλ/4を外れる波長範囲)について、位相差が適切に調節され得る。このような第1の光学補償層の面内位相差Re1は、好ましくは200〜300nmであり、より好ましくは220〜280nmであり、さらに好ましくは230〜270nmである。また、上記第1の光学補償層13は、nx1>ny1=nz1の屈折率分布を有する。さらに、厚み方向の位相差Rth1は、好ましくは200〜300nmであり、より好ましくは220〜280nmであり、さらに好ましくは230〜270nmである。
上記第1の光学補償層の厚みは、λ/2板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは30〜70μmであり、さらに好ましくは30〜60μmであり、特に好ましくは30〜50μmである。
上記第1の光学補償層13は、光弾性係数の絶対値が好ましくは2.0×10−11m2/N以下、より好ましくは2.0×10−13〜1.0×10−11、さらに好ましくは1.0×10−12〜1.0×10−11の樹脂を含み得る。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、加熱時の収縮応力が発生した場合に位相差変化が生じにくい。したがって、このような光弾性係数の絶対値を有する樹脂を用いて第1の光学補償層を形成することにより、得られる画像表示装置の熱ムラが良好に防止され得る。
上記のような光弾性係数を満足し得る樹脂の代表例としては、環状オレフィン系樹脂およびセルロース系樹脂が挙げられる。環状オレフィン系樹脂が特に好ましい。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
上記ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物が挙げられる。
上記環状オレフィン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量(Mn)が好ましくは25,000〜200,000、さらに好ましくは30,000〜100,000、最も好ましくは40,000〜80,000である。数平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性がよいものができる。
上記環状オレフィン系樹脂がノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加して得られるものである場合には、水素添加率は、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは99%以上である。このような範囲であれば、耐熱劣化性および耐光劣化性などに優れる。
上記環状オレフィン系樹脂(例えば、ノルボルネン系樹脂)は、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
上記セルロース系樹脂としては、任意の適切なセルロース系樹脂(代表的には、セルロースと酸とのエステル)が採用され得る。好ましくは、セルロースと脂肪酸とのエステルである。このようなセルロース系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース:TAC)、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネート等が挙げられる。セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース:TAC)が特に好ましい。低複屈折性であり、かつ、高透過率だからである。TACは、多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。
TACの市販品の具体例としては、富士写真フィルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−50」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」、コニカミノルタ社製の商品名「KCシリーズ」、ロンザジャパン社製の商品名「三酢酸セルロース80μmシリーズ」等が挙げられる。これらの中でも、「TD−80U」が好ましい。透過率および耐久性に優れるからである。「TD−80U」は、特にTFTタイプの液晶表示装置において優れた適合性を有する。
上記第1の光学補償層13は、上記環状オレフィン系樹脂または上記セルロース系樹脂から形成されたフィルムを延伸することにより得られる。環状オレフィン系樹脂またはセルロース系樹脂からフィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、注型(キャスティング)法等が挙げられる。押出成形法または注型(キャスティング)法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、第1の光学補償層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。なお、上記環状オレフィン系樹脂または上記セルロース系樹脂から形成された多くのフィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
上記フィルムの延伸倍率は、第1の光学補償層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸温度等に応じて変化し得る。具体的には、延伸倍率は、好ましくは1.1〜3.0倍、さらに好ましくは1.2〜2.5倍であり、特に好ましくは1.3〜2.4倍である。このような倍率で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る面内位相差を有する第1の光学補償層が得られ得る。
上記フィルムの延伸温度は、第1の光学補償層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくは130〜150℃、さらに好ましくは135〜145℃、最も好ましくは137〜143℃である。このような温度で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る面内位相差を有する第1の光学補償層が得られ得る。
図1を参照すると、第1の光学補償層13は、偏光子12(または保護層15)と第2の光学補償層14との間に配置される。第1の光学補償層を配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記第1の光学補償層13は、その両側に粘着剤層(図示せず)を設け、偏光子12(図1の場合は保護層15)および第2の光学補償層14に接着させる。各層の隙間をこのように粘着剤層で満たすことによって、画像表示装置に組み込んだ際に、各層の光学軸の関係がずれることを防止したり、各層同士が擦れて傷ついたりすることを防ぐことができる。また、層間の界面反射を少なくし、画像表示装置に用いた際にコントラストを高くすることもできる。なお、用いる粘着剤層は同一でもよく、それぞれ異なってもよい。
上記粘着剤層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜設定され得る。具体的には、粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜500μm、さらに好ましくは5μm〜200μm、最も好ましくは10μm〜100μmである。
上記粘着剤層を形成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。具体例としては、溶剤型粘着剤、非水系エマルジョン型粘着剤、水系粘着剤、ホットメルト粘着剤等が挙げられる。アクリル系ポリマーをベースポリマーとする溶剤型粘着剤が好ましく用いられる。偏光子および第1の光学補償層に対して適切な粘着特性(ぬれ性、凝集性および接着性)を示し、かつ、光学透明性、耐候性および耐熱性に優れるからである。また、目的に応じて適切な添加剤を有してもよい。例えば、天然物や合成物の樹脂類、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、無機粉末などの充填剤、着色剤、酸化防止剤、光拡散性を有する微粒子などが挙げられる。
粘着剤層の形成は、任意の適切な方法で形成される。例えば、トルエンや酢酸エチルなどの任意の適切な溶剤を単独または混合し溶媒を作製する。この溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解または分散させ10〜40重量部程度の粘着剤溶液を調整し、それを流延や塗工することで第1の光学補償層などに直接形成する方法、または転写する方法が挙げられる。
F.第2の光学補償層
上記第2の光学補償層14は、図2に示すようにその遅相軸Cが偏光子12の吸収軸Aに対して交差(具体的には角度βを規定)して配置されている。角度βは、偏光子12の吸収軸Aに対して反時計回りに好ましくは65〜95°であり、より好ましくは70〜93°であり、さらに好ましくは72〜92°である。
上記第2の光学補償層14は、λ/4板として機能し得る。本発明によれば、λ/4板として機能する第2の光学補償層の波長分散特性を、上記λ/2板として機能する第1の光学補償層の光学特性によって補正することによって、広い波長範囲での円偏光機能を発揮することができる。1つの実施形態においては、上記第2の光学補償層14は、nx2>ny2=nz2の屈折率分布を有する、いわゆるポジティブAプレートであり得る。また、別の実施形態においては、上記第2の光学補償層14は、nx2>ny2>nz2の屈折率分布を有する、二軸性位相差フィルムであり得る。第2の光学補償層14として、λ/4板として機能し、nx2>ny2>nz2の屈折率分布を有する二軸性位相差フィルムを用いることにより、一軸性の位相差フィルムであるλ/4板の機能とnx=ny>nzの屈折率分布を有する、いわゆるネガティブCプレートの機能とを一層で付与し得る。その結果、例えば、VAモードの液晶セルの液晶層の複屈折を有効に補償しつつ、光学補償層付偏光板全体の薄型化に大きく寄与し得る。
F−1.ポジティブAプレートである第2の光学補償層
ポジティブAプレートである第2の光学補償層の面内位相差Re2は、好ましくは90〜160nmであり、より好ましくは100〜150nmであり、さらに好ましくは110〜140nmである。さらに、厚み方向の位相差Rth2は、好ましくは90〜160nmであり、より好ましくは100〜150nmであり、さらに好ましくは110〜140nmである。
上記第2の光学補償層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは20〜60μmであり、さらに好ましくは30〜50μmであり、特に好ましくは、30〜45μmである。
上記第2の光学補償層は、光弾性係数の絶対値が好ましくは2.0×10−11m2/N以下、より好ましくは2.0×10−13〜1.0×10−11、さらに好ましくは1.0×10−12〜1.0×10−11の樹脂を含み得る。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、加熱時の収縮応力が発生した場合に位相差変化が生じにくい。したがって、このような光弾性係数の絶対値を有する樹脂を用いて第2の光学補償層を形成することにより、第1の光学補償層の効果とも相俟って、得られる画像表示装置の熱ムラが良好に防止され得る。
上記のような光弾性係数を満足し得る樹脂の代表例としては、環状オレフィン系樹脂およびセルロース系樹脂が挙げられる。環状オレフィン系樹脂およびセルロース系樹脂の詳細については、上記で説明したとおりである。
第2の光学補償層14の面内位相差Re2は、上記の環状オレフィン系樹脂フィルムおよびセルロース系樹脂フィルムの延伸倍率および延伸温度を変化させることにより制御され得る。延伸倍率は、第2の光学補償層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸温度等に応じて変化し得る。具体的には、延伸倍率は、好ましくは1.05〜2.05倍、さらに好ましくは1.05〜2倍、最も好ましくは1.2〜1.7倍である。このような倍率で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る面内位相差を有する第2の光学補償層が得られ得る。
延伸温度は、第2の光学補償層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくは130〜150℃、さらに好ましくは135〜145℃、最も好ましくは137〜143℃である。このような温度で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る面内位相差を有する第2の光学補償層が得られ得る。
F−2.二軸性位相差フィルムである第2の光学補償層
二軸性位相差フィルムである第2の光学補償層の面内位相差Re2は、好ましくは90〜160nmであり、より好ましくは100〜150nmであり、さらに好ましくは110〜140nmである。また、厚み方向の位相差Rth2は、好ましくは100〜300nmであり、より好ましくは120〜280nmであり、さらに好ましくは140〜260nmである。
上記第2の光学補償層のNz係数は、好ましくは1.2〜1.9、より好ましくは1.3〜1.9、さらに好ましくは1.4〜1.8、特に好ましくは1.4〜1.7である。Nz係数が上記範囲内にある場合、視野角特性が向上され得る。なお、Nz係数は、以下の式(1)によって求められる。
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) (1)
上記第2の光学補償層は、光弾性係数の絶対値が好ましくは2.0×10−11m2/N以下、より好ましくは2.0×10−13〜1.0×10−11、さらに好ましくは1.0×10−12〜1.0×10−11の樹脂を含み得る。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、加熱時の収縮応力が発生した場合に位相差変化が生じにくい。したがって、このような光弾性係数の絶対値を有する樹脂を用いて第2の光学補償層を形成することにより、第1の光学補償層の効果とも相俟って、得られる画像表示装置の熱ムラが良好に防止され得る。
上記第2の光学補償層を形成する材料としては、F−1項に記載のポジティブAプレートである第2の光学補償層を形成する材料と同じものを使用し得る。
上記第2の光学補償層の面内位相差および厚み方向位相差は、上記材料からなるフィルムの延伸倍率および延伸温度を変化させることにより制御され得る。延伸倍率および延伸温度は、第2の光学補償層に所望される面内位相差値、厚み方向位相差および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み等に応じて変化し得る。
延伸方法としては、好ましくは固定端二軸延伸または逐次二軸延伸法が採用され得る。固定端二軸延伸の1つの実施形態においては、好ましくは135〜165℃、より好ましくは140〜160℃の延伸温度で、好ましくは2.8〜3.2倍、より好ましくは2.9〜3.1倍の延伸倍率で延伸が行われ得る。逐次二軸延伸の1つの実施形態においては、好ましくは130〜150℃、より好ましくは135〜145℃、さらに好ましくは137〜143℃の延伸温度で、例えば1.17〜1.57倍、好ましくは1.22〜1.52倍、さらに好ましくは1.27〜1.5倍の延伸倍率で横延伸が行われ得、次いで、横延伸による収縮を相殺するように縦延伸が行われ得る。このような延伸方法により、本発明の効果を適切に発揮し得る面内位相差および厚み方向位相差を有する第2の光学補償層が得られ得る。
図1を参照すると、第2の光学補償層14は、第1の光学補償層13の偏光子12と反対側に配置される。第2の光学補償層を配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記第2の光学補償層14は、その第1の光学補償層13側に粘着剤層(図示せず)を設け、第1の光学補償層13を貼り付ける。なお、粘着剤層の詳細については、上記で説明したとおりである。なお、本発明の光学補償層付偏光板は、例えば、上記第2の光学補償層がnx2>ny2=nz2の屈折率分布を有するλ/4板である場合、該第2の光学補償層の第1の光学補償層と反対側に、nx3=ny3>nz3の屈折率分布を有する第3の光学補償層をさらに有し得る。第3の光学補償層については、後述のとおりである。
G.第3の光学補償層
第3の光学補償層は、nx3=ny3>nz3の屈折率分布を有する、いわゆるネガティブCプレートである。第3の光学補償層がこのような屈折率分布を有することにより、nx2>ny2=nz2の屈折率分布を有し、λ/4板として機能する第2の光学補償層の効果と相俟って、特にVAモードの液晶セルの液晶層の複屈折性を良好に補償することができる。
上記のように、本明細書においては「nx=ny」は、nxとnyとが厳密に等しい場合のみならず、実質的に等しい場合も包含するので、第3の光学補償層は面内位相差を有し得、また、遅相軸を有し得る。ネガティブCプレートとして実用的に許容可能な面内位相差Re3は、好ましくは0〜20nmであり、より好ましくは0〜10nmであり、さらに好ましくは0〜5nmである。
上記第3の光学補償層は、上記のような特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料で形成され得る。第3の光学補償層の具体例の1つとしては、コレステリック配向固化層が挙げられる。「コレステリック配向固化層」とは、当該層の構成分子がらせん構造をとり、そのらせん軸が面方向にほぼ垂直に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。したがって、「コレステリック配向固化層」は、液晶化合物(好ましくはネマチック液晶化合物)がコレステリック液晶相を呈している場合のみならず、非液晶化合物がコレステリック液晶相のような擬似的構造を有する場合を包含する。例えば、「コレステリック配向固化層」は、液晶材料が液晶相を示す状態でカイラル剤によってねじりを付与してコレステリック構造(らせん構造)に配向させ、その状態で重合処理または架橋処理を施すことにより、当該液晶材料の配向(コレステリック構造)を固定することによって形成され得る。
コレステリック配向固化層の具体例としては、特開2003−287623号に記載のコレステリック配向固化層が挙げられる。
コレステリック配向固化層の厚み方向の位相差Rth3は、好ましくは90〜270nm、さらに好ましくは110〜250nmである。
コレステリック配向固化層の厚みは、上記所望の光学特性が得られる限り、任意の適切な値に設定され得る。上記第3の光学補償層がコレステリック配向固化層である場合、その厚みは、好ましくは1〜5μm、さらに好ましくは1.8〜4.1μmである。後述するとおり、コレステリック配向固化層は、接着剤層(厚み:2〜6μm)を介して第2の光学補償層に貼り付けられ得ることから、光学補償層付偏光板の薄型化に大きく貢献し得る。
上記第3の光学補償層の別の具体例としては、非液晶性材料から形成されるフィルムが挙げられる。非液晶性材料は、好ましくは、非液晶性ポリマーである。このような非液晶性材料は、液晶性材料とは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx=ny>nzという光学的一軸性を示すフィルムを形成し得る。非液晶性材料としては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
上記ポリイミドの具体例および当該第3の光学補償層の形成方法の具体例としては、特開2006−98849号に記載のポリマーおよび光学補償フィルムの製造方法が挙げられる。
第3の光学補償層が上記非液晶材料で形成されたフィルムである場合、その厚み方向の位相差Rth3は、好ましくは220〜320nm、さらに好ましくは240〜300nmである。
第3の光学補償層が上記非液晶材料で形成されたフィルムである場合、その厚みは、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜4μmである。
上記第3の光学補償層のさらに別の具体例としては、ノルボルネン系樹脂等を含有する高分子フィルムが挙げられる。ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムとしては、上記E項で記載したノルボルネン系樹脂(例えば、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオネア」)等で形成された高分子フィルムを使用することができる。このような高分子フィルムを、例えば二軸延伸することにより、所望の光学特性を有する第3の光学補償層が得られ得る。
第3の光学補償層がノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムである場合、その厚み方向の位相差Rth3は、好ましくは160〜290nm、さらに好ましくは180〜270nmである。
第3の光学補償層がノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムである場合、その厚みは、好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜50μmである。
上記高分子フィルムを、例えば、逐次二軸延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る面内位相差および厚み方向位相差を有する第3の光学補償層が得られ得る。逐次二軸延伸の1つの実施形態においては、好ましくは155〜195℃、より好ましくは165〜185℃の延伸温度で、好ましくは1.17〜1.37倍、より好ましくは1.22〜1.32倍の延伸倍率で縦延伸が行われ得、次いで、好ましくは1.27〜1.47倍、より好ましくは1.32〜1.42倍の延伸倍率で横延伸が行われ得る。
上記第3の光学補償層のさらに別の具体例としては、上記コレステリック配向固化層とトリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂等を含有する高分子フィルム層とを有する積層体が挙げられる。セルロース系樹脂を含有する高分子フィルム層としては、上記E項で記載した高分子フィルム(例えば、富士写真フィルム社製の商品名「TD−80U」)等を使用することができる。
第3の光学補償層が上記積層体である場合、その厚み方向の位相差Rth3は、好ましくは120〜320nm、さらに好ましくは140〜300nmである。
第3の光学補償層が上記積層体である場合、その厚みは、好ましくは15〜80μm、さらに好ましくは35〜60μmである。
コレステリック配向固化層と高分子フィルム層との積層方法は、任意の適切な方法を採用し得る。具体的には、例えば、高分子フィルム上に、液晶材料とカイラル剤とを含む液晶組成物を塗布し、該フィルム上で液晶材料をコレステリック構造に配向させ、その配向を固定することにより積層体が形成され得る。また、例えば、高分子フィルム層に上記コレステリック配向固化層を転写する方法、予め基材上に形成されたコレステリック配向固化層と高分子フィルム層とを接着剤層(代表的には、イソシアネート系接着剤層)を介して貼り合わせる方法が挙げられる。当該接着剤層の厚みは、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜6μmである。
図1(b)を参照すると、第3の光学補償層16は、第2の光学補償層14の第1の光学補償層13と反対側に配置される。第3の光学補償層を配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。例えば、第3の光学補償層がコレステリック配向固化層から形成されている場合は、厚みが2〜6μmのイソシアネート系接着剤層(図示せず)を介して第2の光学補償層に貼り付けることができる。また、例えば、第3の光学補償層が樹脂フィルムで形成されている場合は、第2の光学補償層の配置方法と同様の手段を用いることができる。
H.その他の構成要素
本発明の光学補償層付偏光板は、さらに他の光学層を備えていてもよい。このような他の光学層としては、目的や画像表示装置の種類に応じて任意の適切な光学層が採用され得る。具体例としては、液晶フィルム、光散乱フィルム、回折フィルム、さらに別の光学補償層(位相差フィルム)等が挙げられる。
本発明の光学補償層付偏光板は、少なくとも一方に最外層として粘着剤層または接着剤層をさらに有し得る。このように最外層として粘着剤層または接着剤層を有することにより、例えば、他の部材(例えば、液晶セル)との積層が容易になり、偏光板が他の部材から剥離するのを防止できる。上記粘着剤層の材料としては、任意の適切な材料が採用され得る。粘着剤の具体例としては、上記に記載のものが挙げられる。上記接着剤層の材料としては、任意の適切な材料が採用され得る。接着剤層の具体例としては、上記に記載のものが挙げられる。
好ましくは、吸湿性や耐熱性に優れる材料が用いられる。吸湿による発泡や剥離、熱膨張差等による光学特性の低下、液晶セルの反り等を防止できるからである。
実用的には、上記粘着剤層または接着剤層の表面は、偏光板が実際に使用されるまでの間、任意の適切なセパレータによってカバーされ、汚染が防止され得る。セパレータは、例えば、任意の適切なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを設ける方法等によって形成され得る。
本発明の光学補償層付偏光板における各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤による処理等によって、紫外線吸収能を付与したものであってもよい。
I.光学補償層付偏光板の製造方法
本発明の光学補償層付偏光板は、上記各層を上記のような接着剤層または粘着剤層を介して積層することにより作製され得る。積層手段としては、各層の光軸がなす角度(上記角度αおよびβ)が上記の範囲となる限りにおいて任意の適切な手段が採用され得る。例えば、偏光子、第1の光学補償層および第2の光学補償層を、また、第3の光学補償層を配置する場合はさらに第3の光学補償層を所定の大きさに打ち抜き、上記角度αおよびβが所望の範囲となるように方向を合わせて、粘着剤または接着剤を介してそれらを積層することができる。このような特定の位置関係で特定の2つの光学補償層を積層することにより、TNモード、ECBモード、またはVAモード(特に、反射型または半透過型)の液晶表示装置の黒表示における光漏れが顕著に防止され得る。なお、第3の光学補償層16は、基本的には遅相軸が発現しないので、偏光子12の吸収軸に対する精密な位置合わせは必要とされない。
J.光学補償層付偏光板の用途
本発明の光学補償層付偏光板は、各種画像表示装置(例えば、液晶表示装置、自発光型表示装置)に好適に使用され得る。適用可能な画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)が挙げられる。本発明の光学補償層付偏光板を液晶表示装置に用いる場合には、例えば、黒表示における光漏れ防止および視野角補償に有用である。本発明の光学補償層付偏光板は、TNモード、ECBモード、またはVAモードの液晶表示装置に好適に用いられ、反射型、透過型および半透過型のTNモード、ECBモード、あるいはVAモードの液晶表示装置に特に好適に用いられる。また、本発明の光学補償層付偏光板をELディスプレイに用いる場合には、例えば、電極反射防止に有用である。
本発明の画像表示装置の一例として、液晶表示装置について説明する。液晶表示装置の駆動モードとしては、任意の適切な駆動モードが採用される。好ましくはTN、ECB、もしくはVAモードのセルである。TNモードは、例えばTN(ねじれネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型が挙げられる。TNモードは、応答速度が速く、ノートPCの液晶や、低価格な液晶モニターに多く用いられている。ECBモード(電界制御複屈折効果型)は、カラーフィルターを用いずに、着色した表示を示す。VAモードは、液晶テレビ、携帯電話等に幅広く採用されている。また、液晶表示装置は反射型であってもよく、半透過型であってもよい。本発明の光学補償層付偏光板は、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。例えば、第3の光学補償層を有する光学補償層付偏光板を液晶セルの視認側とバックライト側の両側に配置する場合、第3の光学補償層としては、好ましくは、その厚み方向の位相差値が液晶セルの片側にのみ配置する場合の第3の光学補償層の厚み方向の位相差値の約半分であるものを用いる。
図3は、本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。ここでは、TN方式で反射型の液晶表示装置用液晶パネルを説明する。液晶パネル100は、液晶セル20と、液晶セル20の上側に配置された位相差板30と、位相差板30の上側に配置された偏光板10とを備える。位相差板30としては、目的および液晶セルの配向モードに応じて任意の適切な位相差板が採用され得る。目的および液晶セルの配向モードによっては、位相差板30は省略され得る。上記偏光板10は、本発明の光学補償層付偏光板である。偏光板10として、本発明の光学補償層付偏光板を用いる場合にも、位相差板30は省略され得る。液晶セル20は、一対のガラス基板21、21’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層22とを有する。下基板21’の液晶層22側には、反射電極23が設けられている。上基板21には、カラーフィルター(図示せず)が設けられている。基板21、21’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー24によって制御されている。
例えば、TN方式の場合には、このような液晶表示装置100は、電圧無印加時には液晶層22の液晶分子が、偏光軸を90度ずらすような状態で配列している。そのような状態においては、偏光板10によって一方向の光のみが透過した入射光は、液晶分子によって90度ねじられ、そのまま反射電極23で反射される。光は、再び液晶層22で液晶分子によって90度ねじられ偏光板10から出射される。したがって、電圧無印加時には、液晶表示装置100は白表示を行う(ノーマリホワイト方式)。一方、このような液晶表示装置100に電圧を印加すると、液晶層12内の液晶分子の配列が変化する。その結果、反射電極23で反射した光は偏光板10で吸収されるので黒表示となる。このような表示の切り替えを、アクティブ素子を用いて画素ごとに行うことにより、画像が形成される。
本発明の液晶パネルおよび液晶表示装置等が用いられる用途は、特に制限はない。例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機などのOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、液晶テレビ、電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター、医療用モニターなどの介護・医療機器などの各種用途に用いることができる。
特に好ましくは、本発明の液晶パネルおよび液晶表示装置等は携帯機器、車載用機器などのモバイル製品などに好ましく用いられる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)厚みの測定
(株)ミツトヨ製のマイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。透明なフィルム基材にハードコート層を設けたハードコートフィルムの厚みを測定し、基材の厚みを差し引くことでハードコート層の膜厚を算出した。
(2)鉛筆硬度の測定
ハードコート層の基材側をガラス板上に載せ、ハードコート層表面について、JIS K−5400記載の鉛筆硬度試験に従い(但し、荷重500g)試験を実施した。
(3)耐擦傷性の測定
ハードコート層の耐擦傷性の強弱に対する値は、以下の試験内容にて行った。まず、ハードコート層を150mm×50mmの大きさに切断し試料を作製した。この試料をガラス板に載せ、初期のヘイズ値を求めた。次いで、直径25mmの円柱の平滑な断面に、スチールウール#0000を均一に取り付け、荷重1.5kgにて試料表面を毎秒約100mmの速度で200往復および1000往復した後に、試験後のハードコート層のヘイズ値を上記方法より求めた。試験後のヘイズ値から初期のヘイズ値を差し引いた値を耐擦傷性の指標とした。この指標は、表面に傷が生じ易いハードコート層ほど高くなる。
(4)位相差値の測定
光学補償層の屈折率の測定は、nx、ny、nzの各屈折率を自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製、自動複屈折計KOBRA−31PEWの楕円偏光板測定モード、λ=590nm)により測定した。
(5)耐湿熱性の評価
加湿下における位相差値の測定は、光学補償層付偏光板を幅25mm、長さ100mmの大きさに切断した試料を作製し、ガラス板に空気および異物などが混入しないように貼り合わせ、王子計測機器株式会社製、自動複屈折計KOBRA31PRW(楕円偏光板測定モード)を用い、位相差を測定した。60℃95%RHの条件下に500時間置いた後、位相差値を測定した。加湿前後の位相差の変化量を耐湿熱性の指標とした。
(実施例1)
(ハードコート層の作製)
ウレタンアクリレート(以下、A成分)としてペンタエリスリトール系アクリレートと水添キシレンジイソシアネートから成るウレタンアクリレート100部と;ポリオール(メタ)アクリレート(以下、B成分)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、B1成分)49部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、B2成分)41部、およびペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、B3成分)24部と;水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー(以下、C成分)として2−ヒドロキシエチル基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルポリマー59部を加えた。次いで、これらの全樹脂成分に対し重合開始剤(イルガキュア184)3部と、反応性レベリング剤0.5部とを混合し、ハードコート層形成材料の固形分を作製した。酢酸ブチルと酢酸エチルの混合割合(重量比)が46:54(溶媒全体100重量部に対し酢酸エチル54重量部)の混合溶媒により上記固形分濃度が50%となる様に希釈して、ハードコート層形成材料を調製した。なお、上記反応性レベリング剤は、ジメチルシロキサン:ヒドロキシプロピルシロキサン:6−イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸:脂肪族ポリエステル=6.3:1.0:2.2:1.0のモル比で共重合させた共重合物である。
上記ハードコート層形成材料を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製、厚さ80μm、屈折率:1.48)上に、バーコーターを用いて塗工し、100℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、メタルハライドランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化処理してハードコート層を形成した。得られたハードコート層の厚みは20μm、鉛筆硬度は4Hであった。さらに、得られたハードコート層の耐擦傷性試験の測定前後の表面観察結果を比較例1の結果と併せて図4に示す。
(偏光子の作製)
市販のポリビニルアルコール(PVA)フィルム(クラレ社製、VF−PS)を、ヨウ素を含む水溶液中で染色した後、ホウ酸を含む水溶液中で速比の異なるロール間にて約6倍に一軸延伸して長尺の偏光子(厚さ30μm)を得た。PVA系接着剤を用いて、この偏光子の片面に保護層として市販のTACフィルム(富士写真フィルム社製、厚さ80μm)を貼り合わせた。この偏光子を縦20cm×横30cmに打ち抜いた。このとき、偏光子の吸収軸が縦方向となるようにした。
(第1の光学補償層の作製)
長尺のノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製:商品名Zeonoa:厚み40μm:光弾性係数3.10×10−12m2/N)を140℃で2.25倍に一軸延伸することによって、長尺の第1の光学補償層用フィルムを作製した。このフィルムの厚みは35μm、面内位相差Re1は260nmであった。このフィルムを縦20cm×横30cmに打ち抜いた。このとき、遅相軸が縦方向となるようにした。
(第2の光学補償層の作製)
長尺のノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製:商品名Zeonoa:厚み40μm:光弾性係数3.10×10−12m2/N)を140℃で1.52倍に一軸延伸することによって、長尺の第2の光学補償層用フィルムを作製した。このフィルムの厚みは35μm、面内位相差Re2は140nmであった。このフィルムを縦20cm×横30cmに打ち抜いた。
(光学補償層付偏光板の作製)
上記で得られたハードコート層、偏光子、第1の光学補償層および第2の光学補償層をこの順に積層した。ここで、第1の光学補償層および第2の光学補償層の遅相軸が、それぞれ、偏光子の吸収軸に対して反時計回りに15°、75°となるように積層した。ハードコート層の基材(TACフィルム;最終的には保護層となる)側を、PVA系接着剤を用いて偏光子に積層した。偏光子のハードコート層が積層されていない側と第1の光学補償層、および、第1の光学補償層と第2の光学補償層は、アクリル系粘着剤(厚み20μm)を用いて積層した。最後に、縦4.0cm×横5.3cmに打ち抜き、図1(a)に示すような光学補償層付偏光板を得た。
得られた光学補償層付偏光板の耐湿熱試験結果を、比較例1の結果と併せて下記図5に示す。
(実施例2)
A成分としてペンタエリスリトール系アクリレートとイソホロンジイソシアネートから成るウレタンアクリレート(以下、A1成分)100重量部と、B成分としてB1成分59重量部、B2成分37重量部及びB3成分15重量部と、C成分として2−ヒドロキシエチル基及び2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルポリマー26重量部と、全樹脂成分に対し重合開始剤(イルガキュア184)2重量部を用いて実施例1と同様にしてハードコート層を作製した。得られたハードコート層の厚みは20μm、鉛筆硬度は4Hであった。このハードコート層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学補償層付偏光板を作製した。
(実施例3)
A成分としてA1成分100重量部と、B成分としてB1成分38重量部、B2成分40重量部及びB3成分16重量部と、C成分として2−ヒドロキシエチル基及び2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルポリマー30重量部と、全樹脂成分に対し重合開始剤(イルガキュア184を1重量部と、2,4,6−トリメチルベンゾインフェニルホスフィンオキシドを2.5重量部配合したもの)3.5重量部とを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコート層を作製した。得られたハードコート層の厚みは20μm、鉛筆硬度は4Hであった。このハードコート層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学補償層付偏光板を作製した。
(比較例1)
日本製紙製、ウレタン−アクリル系ハードコート材料(従来の液晶表示装置用ハードコート材料)をトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製、厚さ80μm、屈折率:1.48)上に、バーコーターを用いて厚みが5mmとなるように塗布し、100℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、メタルハライドランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。ハードコート層の厚みは5μm、鉛筆硬度は3Hであった。さらに、得られたハードコート層の耐擦傷性試験の測定前後の表面観察結果を実施例1の結果と併せて図4に示す。
上記ハードコート層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学補償層付偏光板を作製した。得られた光学補償層付偏光板の耐熱湿試験結果を、実施例1の結果と併せて下記図5に示す。
(比較例2)
厚みが20μmとなるように塗布したこと以外は、比較例1と同様にして、ハードコート層を作製した。その結果、ハードコート層のカールが大きく、実用上使用できなかった。
(実施例4)
テトラアルコキシシラン54部、フルオロアルキル構造およびポリシロキサン構造を有するシランカップリング剤23部、アクリル基を有するシランカップリング剤で表面処理を行い疎水化した直径60nmの中空で球状の酸化ケイ素超微粒子23部をイソプロピルアルコール/酢酸ブチル/メチルイソブチルケトン(54/14/32(重量部))の混合溶媒中に分散させ、固形濃度を2.0重量%に調製し、反射防止層形成材料を得た。
得られた反射防止層形成材料を実施例1で得られたハードコート層(隣接するTACフィルムと反対側の面)に塗工した。塗工はダイコーターを用い、反射防止層の厚みが100nmとなるように塗工した。120℃で3分加熱し、乾燥および硬化を行い、反射防止層(屈折率1.38)を形成した。このような反射防止層が形成されたハードコート層を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学補償層付偏光板を作製した。
(実施例5)
第2の光学補償層として、ノルボルネン系樹脂フィルム(JSR社製:商品名Arton:厚み100μm:光弾性係数5.00×10−12m2/N)を150℃で3倍に固定端二軸延伸(長手方向固定、幅方向に3倍延伸)することによって得た二軸性位相差フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして光学補償層付偏光板を作製した。用いた二軸性位相差フィルムの厚みは50μm、面内位相差Re2は140nm、厚み方向位相差Rth2は170nmであった。
〔評価〕
図4に示す結果から、実施例1では比較例1に比べて耐擦傷試験における傷の入り方が顕著に小さい。このことから、本発明の光学補償層付偏光板は、従来の光学補償層付偏光板に比べて耐擦傷性が格段に優れていることが分かる。また、図5に示す結果より、実施例1では、500時間経過後の位相差変化量が0.5(nm)程度であるのに対し、比較例1の位相差変化量は1.3(nm)程度である。位相差変化量が約1(nm)より大きいと、実用上表示特性の低下が認識される。本発明の光学補償層付偏光板は位相差変化量が1(nm)より小さいので、高温高湿下の使用においても表示特性の低下が認識されないような耐湿熱性を有している。これは、本発明に用いられるハードコート層の特性に起因すると考えられる。