JP3987347B2 - 光偏向素子、光偏向デバイス及び画像表示装置 - Google Patents

光偏向素子、光偏向デバイス及び画像表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気信号によって光の方向を変える光偏向素子、光偏向デバイス及びこれらの光偏向素子又は光偏向デバイスを利用した画像表示装置に関する。
【0002】
【定義】
本明細書において、「光偏向素子」とは、外部からの電気信号により光の光路を偏向、即ち、入射光に対して出射光を平行にシフトさせるか、或る角度を持って回転させるか、或いは、その両者を組合せて光路を切換えることが可能な光学素子を意味する。この説明において、平行シフトによる光偏向に対してそのシフトの大きさを「シフト量」と呼び、回転による光偏向に対してその回転量を「回転角」と呼ぶものとする。「光偏向デバイス」とは、このような光偏向素子を含み、光の光路を偏向させるデバイスを意味する。
【0003】
また、「ピクセルシフト素子」とは、少なくとも画像情報に従って光を制御可能な複数の画素を二次元的に配列した画像表示素子と、画像表示素子を照明する光源と、画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学部材と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎に画像表示素子と光学部材の間の光路を偏向する光偏向手段とを有し、光偏向手段によりサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示させることで、画像表示素子の見掛け上の画素数を増倍して表示する画像表示装置における光偏向手段を意味する。従って、基本的には、上記定義による光偏向素子や光偏向デバイスを光偏向手段として応用することが可能といえる。
【0004】
【従来の技術】
光偏向素子なる光学素子として、従来より、KHPO(KDP),NHPO(ADP),LiNbO,LiTaO,GaAs,CdTeなど第1次電気光学効果(ポッケルス効果)の大きな材料や、KTN,SrTiO,CS,ニトロベンゼン等の第2次電気光学効果の大きな材料を用いた電気光学デバイスや、ガラス、シリカ、TeOなどの材料を用いた音響光学デバイスが知られている(例えば、青木昌治編;「オプトエレクトロニックデバイス」、昭晃堂)。これらは、一般的に、十分大きな光偏向量を得るためには光路長を長く取る必要があり、また、材料が高価であるため用途が制限されている。
【0005】
一方で、液晶材料を用いた光偏向素子なる光学素子も各種提案されており、その数例を挙げると、以下に示すような提案例がある。
【0006】
例えば、特開平6−18940号公報によれば、光空間スイッチの光の損失を低減することを目的に、人工複屈折板からなる光ビームシフタが提案されている。内容的には、2枚のくさび形の透明基板を互いに逆向きに配置し、該透明基板間に液晶層を挟んだ光ビームシフタ、及びマトリクス形偏向制御素子の後面に前記光ビームシフタを接続した光ビームシフタが提案され、併せて、2枚のくさび形の透明基板を互いに逆向きに配置し、該透明基板間にマトリクス駆動が可能で、入射光ビームを半セルシフトする液晶層を挟んだ光ビームシフタを半セルずらして多段接続した光ビームシフタが提案されている。
【0007】
また、特開平9−133904号公報によれば、大きな偏向を得ることが可能で、偏向効率が高く、しかも、偏向角と偏向距離とを任意に設定することができる光偏向スイッチが提案されている。具体的には、2枚の透明基板を所定の間隔で対向配置させ、対向させた面に垂直配向処理を施し、透明基板間にスメクチックA相の強誘電性液晶を封入し、前記透明基板に対して垂直配向させ、スメクチック層と平行に交流電界を印加できるように電極対を配置し、電極対に交流電界を印加する駆動装置を備えた液晶素子である。即ち、スメクチックA相の強誘電性液晶による電傾効果を用い、液晶分子の傾斜による複屈折によって、液晶層に入射する偏光の屈折角と変位する方向を変化できるようにしたものである。
【0008】
前者の特開平6−18940号公報例においては、液晶材料にネマチック液晶を用いているため、応答速度をサブミリ秒にまで速めることは困難であり、高速なスイッチングが必要な用途には用いることはできない。
【0009】
また、後者の特開平9−133904号公報例においては、スメクチックA相の強誘電液晶を用いているが、スメクチックA相は自発分極を持たないため、高速動作は望めない。
【0010】
次に、ピクセルシフト素子に関して従来提案されている技術を数例挙げて説明する。
【0011】
例えば、特許第2939826号公報に示されるように、表示素子に表示された画像を投写光学系によりスクリーン上に拡大投影する投影表示装置において、前記表示素子から前記スクリーンに至る光路の途中に透過光の偏光方向を旋回できる光学素子を少なくとも1個以上と複屈折効果を有する透明素子を少なくとも1個以上を有してなる投影画像をシフトする手段と、前記表示素子の開口率を実効的に低減させ、表示素子の各画素の投影領域が前記スクリーン上で離散的に投影される手段と、を備えた投影表示装置がある。
【0012】
同公報例においては、偏光方向を旋回できる光学素子(旋光素子と呼ぶ)を少なくとも1個以上と複屈折効果を有する透明素子(複屈折素子と呼ぶ)を少なくとも1個以上を有してなる投影画像シフト手段(ピクセルシフト手段)によりピクセルシフトを行っているが、問題点として、旋光素子と複屈折素子とを組合せて使用するため、光量損失が大きいこと、光の波長によりピクセルシフト量が変動し解像度が低下しやすいこと、旋光素子と複屈折素子との光学特性のミスマッチから本来画像が形成されないピクセルシフト外の位置に漏れ光によるゴースト等の光学ノイズが発生しやすいこと、素子化のためのコストが大きいことが挙げられる。特に、複屈折素子に前述したようなKHPO(KDP),NHPO(ADP),LiNbO,LiTaO,GaAs,CdTeなど第1次電気光学効果(ポッケルス効果)の大きな材料を使用した場合、顕著である。
【0013】
また、特開平5−313116号公報に示される投影機においては、制御回路により、画像蓄積回路に蓄積した本来表示すべき画像を市松状に画素選択回路へサンプリングして順次空間光変調器に表示し、投影させ、さらに、制御回路により、この表示に対応させてパネル揺動機構を制御して空間光変調器の隣接画素ピッチ距離を整数分の一ずつ移動させることで、本来表示すべき画像を時間的な合成により再現するようにしている。これにより、空間光変調器の画素の整数倍の分解能で画像を表示可能にするとともに、画素の粗い空間光変調器と簡単な光学系を用いて安価に投影機を構成可能としている。
【0014】
ところが、同公報例においては、画像表示用素子自体を画素ピッチよりも小さい距離だけ高速に揺動させるピクセルシフト方式が記載されており、この方式では、光学系は固定されているので諸収差の発生が少ないが、画像表示素子自体を正確かつ高速に平行移動させる必要があるため、可動部の精度や耐久性が要求され、振動や音が問題となる。
【0015】
さらに、特開平6−324320号公報によれば、LCD等の画像表示装置の画素数を増加させることなく、表示画像の解像度を、見掛け上、向上させるため、縦方向及び横方向に配列された複数個の画素の各々が、表示画素パターンに応じて発光することにより、画像が表示される画像表示装置と、観測者又はスクリーンとの間に、光路をフィールド毎に変更する光学部材を配し、また、フィールド毎に、前記光路の変更に応じて表示位置がずれている状態の表示画素パターンを画像表示装置に表示させるようにしている。ここに、屈折率が異なる部位が、画像情報のフィールド毎に、交互に、画像表示装置と観測者又はスクリーンとの間の光路中に現れるようにすることで、前記光路の変更が行われるものである。
【0016】
同公報例においては、光路を変更する手段として、電気光学素子と複屈折材料の組合わせ機構、レンズシフト機構、バリアングルプリズム、回転ミラー、回転ガラス等が記述されており、上記旋光素子と複屈折素子を組合せてなる方式の他に、ボイスコイル、圧電素子等によりレンズ、反射板、複屈折板等の光学素子を変位(平行移動、傾斜)させ光路を切り替える方式が提案されているが、この方式においては、光学素子を駆動するために構成が複雑となりコストが高くなる。
【0017】
また、特開平10−133135号公報によれば、回転機械要素を不要化でき、全体の小型化、高精度・高分解能化を実現でき、しかも外部からの振動の影響を受け難い光ビーム偏向装置が提案されている。具体的には、光ビームの進行路上に配置される透光性の圧電素子と、この圧電素子の表面に設けられた透明の電極と、圧電素子の光ビーム入射面Aと光ビーム出射面Bとの間の光路長を変化させて光ビームの光軸を偏向させるために電極を介して圧電素子に電圧を印加する電圧印加手段とを備えている。
【0018】
同公報例では、透光性の圧電素子を透明の電極で挟み、電圧を印加することで厚みを変化させて光路をシフトさせる方式が提案されているが、比較的大きな透明圧電素子を必要とし、装置コストがアップする等、前述の特開平6−324320号公報の場合と同様の問題点がある。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術の課題を整理すると、従来のピクセルシフト素子において問題となっているのは
▲1▼ 構成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量損失、ゴースト等の光学ノイズ又は解像度低下
▲2▼ 特に可動部を有する構成の場合の位置精度や耐久性、振動や音の問題
▲3▼ ネマチック液晶などにおける応答速度である。
【0020】
▲3▼の応答速度に関し、画像表示装置におけるピクセルシフトに必要な光偏向の速度は以下のように見積ることができる。画像フィールド(時間tField)を時間的にn分割し、各n個のサブフィールド毎に画像表示素子と光学部材との間の光路を偏向してピクセルシフトのシフト位置をn箇所に定めた場合、1つのサブフィールドの時間tSF
SF=tField/n
で表される。この時間tSFの期間中に光偏向がなされるが、その時間をtshiftとするとこのtshiftの期間は表示が行えないため、この期間に相当する分だけ光利用効率が低下する。
【0021】
光利用効率Eは以下の式で表される。
【0022】
E=(tSF−tshift)/tSF
仮にピクセルシフト位置nがn=4、画像フィールドtFieldが16.7msである場合に、光利用効率Eを90%以上確保するためには、
0.9<(16.7/4−tshift)/(16.7/4)
tshift<0.42(ms)
となり、光偏向を0.42msで行う必要がある。通常のネマチック液晶は応答速度が数ms以上であるため、ここに示すような高速ピクセルシフトのための光学素子としては使用することはできない。
【0023】
特開平6−18940号公報においては液晶材料にネマチック液晶を用いているため、応答速度をサブミリ秒にまで速めることは困難であり、ピクセルシフトに用いることはできない。一方、キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶ではその応答速度は十分0.42ms以下に設定することが可能である。
【0024】
また、特開平9−133904号公報においてはスメクチックA相の強誘電液晶を用いているが、スメクチックA相は自発分極を持たないため、キラルスメクチックC相に見られるような高速動作はやはり望めない。
【0025】
そこで、本発明は、基本的には、従来の光偏向素子における問題点、即ち、構成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量損失、光学ノイズを改善し、構成が簡単で、小型であり、光量損失、光学ノイズ、解像度低下が少なく、低コスト化を図ることができる光偏向方法、光偏向素子、光偏向デバイス及びこれらを備える画像表示装置を提供することを目的とする。
【0026】
また、本発明は、従来の特に可動部を有する光偏向素子若しくは光偏向デバイスにおける問題点である位置精度の低さや耐久性不良、振動や音の問題を改善することを目的とする。
【0027】
さらには、従来、光路を変える光学素子に用いられていたスメクチックA液晶やネマチック液晶などにおける応答性の鈍さを改善し、高速応答可能な光偏向方法、光偏向素子、光偏向デバイス及びこれらを備える画像表示装置を提供することを目的とする。
【0028】
加えて、上記目的を実現する上で、光の光路を効率的に切換えるように電界を発生させることが可能な上に、光量損失を低減させ得る効果のより大きな光偏向素子を提供する。
【0029】
また、上記目的を実現する上で、電界印加手段により印加する電圧値を低減させて、電源の小型化、低コスト化を図ることができる光偏向素子を提供する。
【0030】
また、上記目的を実現する上で、電界印加手段が発する電界を液晶に効率的に作用させ得る光偏向素子を提供する。
【0031】
また、上記目的を実現する上で、1つの素子で光の光路を3方向以上にわたって効率的に切換え得るように電界を発生させることができ、より小型化、低コスト化を図れる光偏向素子を提供する。
【0032】
また、上記目的を実現する上で、光学ノイズを低減し良好な光シフトを達成できる光偏向デバイスを提供する。
【0033】
また、上記目的を実現する上で、偏向光量を自在に制御することができる光偏向デバイスを提供する。
【0034】
また、上記目的を実現する上で、素子内における光偏向量の場所によるムラを極めて小さくでき、光学ノイズの一層の低減を図れる光偏向素子を提供する。
【0035】
また、上記目的を実現する上で、特に入射光に対して出射光が或る角度を持って回転し光路を切換えることが可能な素子において、その応答性の鈍さを改善できる光偏向素子を提供する。
【0036】
また、従来にあっては、大きなシフト量を得るためには常光と異常光の屈折率差の大きな液晶材料を使用したり液晶膜厚を増やしたりする必要があるものの、現実には、液晶の屈折率差の大きな材料は一般的に屈折率の波長依存性が大きくいわゆる色収差が発生しやすく、液晶膜厚を増やすにしても実質的に良好な均一配向、高速動作を行うためには制限があったことから、上記目的を実現する上で、応答速度を犠牲にせず任意のシフト量を得ることができる光偏向デバイスを提供する。
【0037】
さらに、本発明は、光の利用効率を向上させ、光源の負荷を増加することなく観察者により明るく高品質の画像を表示できるピクセルシフトを利用した画像表示装置を提供することを目的とする。
【0038】
【課題を解決するための手段】
予備発明1の光偏向方法は、透明基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶に、直線偏光の光を入射させ、前記基板面法線方向及び前記直線偏光方向と略直交する方向に電界を発生させることにより前記入射光を前記偏光方向に偏向させて出射させる。
【0039】
従って、キラルスメクチックC相よりなる液晶を利用することにより、従来の光偏向素子における問題点、即ち、構成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量損失、光学ノイズを改善することができる。
【0040】
予備発明2は、予備発明1記載の光偏向方法において、前記電界の向きを切換えることにより、前記偏向方向を切換える。
【0041】
従って、予備発明1記載の発明の作用に加え、偏向方向を切替えることが可能となリ、光学装置に広く応用することが可能となる。また、偏向方向切替えのための可動部を有しないため、従来の特に可動部を有する光偏向素子等における問題点であった位置精度の低さや耐久性不良、振動や音の問題も回避することができる。さらに、従来、光偏向素子に用いられていたスメクチックA液晶やネマチック液晶などにおける応答性の鈍さも改善でき、高速応答が可能となる。加えて、液晶ダイレクタを基板に対してホメオトロピック配向させることにより、低い電界で安定したシフト量、回転角を得ることができ、液晶ダイレクタの動作が基板からの規制力を受けにくく、外部電界方向の調整で光偏向方向の調整が行いやすく光学素子のセッティング余裕度が増し、また、電界方向に対して液晶ダイレクタの配向のとりやすさが均一であるため、偏向方向に対する光強度ムラを発生しにくくすることもできる。
【0042】
予備発明3の光偏向素子は、電界変化に応じて入射光に対する出射光路が変化する光偏向素子であって、透明な一対の基板と、該基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶と、該液晶に電界を作用させる1組以上の電界印加手段と、を備える。
【0043】
従って、極めて簡単な構成でありながら、予備発明1,2の光偏向方法を具現化でき、上記効果を達成することが可能となる。
【0044】
予備発明4は、予備発明3記載の光偏向素子において、前記電界印加手段は、前記基板面法線方向及び光偏向方向と略直交する方向に電界を発生させる電極対である。
【0045】
従って、基板面法線方向及び光偏向方向と略直交する方向に電界を印加するため、電界印加方向を切替えた時の液晶のチルト方向を基板面法線方向から対称な方向に設定できるため、所定の光偏向方向に対して高い位置精度で光偏向を行うことを可能とし、さらに受光部までの光路長が偏向方向によらず一定であるため、受光部における像ボケが発生しない。
【0046】
予備発明5は、予備発明4記載の光偏向素子において、前記電極対は、前記光偏向素子を通る光路を挟む位置に設置した。
【0047】
従って、電極対を光路を挟む位置に設置することで、従来の光偏向素子に比較して光量損失を低減させることができる。
【0048】
予備発明6の光偏向デバイスは、前記液晶の分子長軸方向を平均化した方向として定まる光学軸の方向を、前記電界印加手段による電界の印加により所定の方向に向けた状態で、一方の基板面から他方の基板面に向かって前記光学軸を投影した場合に前記他方の基板面上に投影された前記光学軸の方向が、入射光の偏光方向と同一方向になるように予備発明3,4又は5記載の光偏向素子を設置した。
【0049】
従って、光偏向素子の光学軸と入射光の光偏向方向を一致させているため、光学ノイズ、光量損失を極めて小さく抑えることができる。
【0050】
予備発明7の光偏向デバイスは、前記液晶の自発分極及び電界により定まる液晶分子の配向を前記電界印加手段による電界の印加により所定の方向に揃えた状態で、一方の基板面から他方の基板面に向かって前記液晶分子を投影した場合に前記他方の基板面上に投影された前記液晶分子における長軸方向が、入射光の偏光方向と同一方向になるように予備発明3,4又は5記載の光偏向素子を設置した。
【0051】
従って、光偏向素子の液晶分子の配向が所定方向に揃えられているため、光学ノイズ、光量損失を極めて小さく抑えることができる。
【0052】
予備発明8の光偏向デバイスは、偏向方向の異なる予備発明3,4又は5記載の2つの光偏向素子を直列に配列し、該光偏向素子間に、前段の光偏向素子からの出射光の偏光方向を後段の光偏向素子の偏向方向に揃える偏光方向切換手段を設置した。
【0053】
従って、2つの光偏向素子と偏光方向切換手段とを組合せているので、4方向に光をシフトさせることができる。
【0054】
予備発明9は、予備発明8記載の光偏向デバイスにおいて、記前段の光偏向素子と後段の前記光偏向素子の電界発生方向が直交するように前段の前記光偏向素子と後段の前記光偏向素子を配列し、前記偏光方向切換手段として1/2波長板を設置した。
【0055】
従って、予備発明6記載の2組の光偏向素子と1/2波長板とを組合せているので、例えば上下左右の如く4方向に光をシフトさせることができる。1/2波長板として雲母、水晶を用いた場合は、これらの材料が温度による特性変動が比較的少なく安定しているため、温度変化の大きい環境での使用時に特に有用である。
【0056】
予備発明10の光偏向デバイスは、電界発生方向を直交させた2組の電極対を有する予備発明4又は5記載の光偏向素子と、該光偏向素子に対する入射光の偏光方向を制御する偏光方向制御手段と、を備える。
【0057】
従って、電界発生方向を直交させた2組の電極対を有する予備発明4又は5記載の光偏向素子を用いているので、例えば上下左右の如く4方向に光をシフトさせることができ、特に、1個の光偏向素子を利用すればよいので、予備発明8,9記載の発明の場合に比べて小型、低コスト化、光損失の低減を図ることができる。
【0058】
予備発明11は、予備発明3記載の光偏向素子において、前記電界印加手段は、前記基板間に設けられた1組の電極対である。
【0059】
従って、予備発明3記載の光偏向素子において、光偏向素子の構成要素である電界印加手段に関して、この電界印加手段より発せられる電圧値を低減させることができ、電源の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0060】
予備発明12は、予備発明11記載の光偏向素子において、前記電極対は、交互に入り込むように配設された櫛歯状電極対である。
【0061】
従って、予備発明11記載の光偏向素子において、光偏向素子の構成要素である電界印加手段に関して、この電界印加手段より発せられる電界がより効率的に液晶に作用するため、電圧を低減させることができ、電源の小型化,低コスト化を図ることができる。
【0062】
予備発明13は、予備発明3記載の光偏向素子において、前記電界印加手段は、前記液晶と一対の前記基板との各々の界面付近に形成されて各々の電界発生方向を異ならせた2組の櫛歯状電極対である。
【0063】
従って、予備発明3記載の光偏向素子において、1つの素子で効率的に光の光路を3方向以上に切換えることができる。
【0064】
予備発明14の光偏向デバイスは、予備発明3,4,5,11,12又は13記載の光偏向素子と、この光偏向素子の光入射側に配設されて前記光偏向素子による光偏向方向と入射光の偏光方向とが一致するように前記入射光の偏光方向を制御する偏光方向制御手段と、を備える。
【0065】
従って、或る方向の電界印加により光偏向を受け出射する第1の光路における成分(光量)と、光偏向を受けないか若しくは上記とは異なる方向の電界印加により異なる方向に光偏向を受け出射する第2の光路における成分(光量)との混在を大幅に低減でき、光学ノイズの少ない良好な光シフトを達成することができる。
【0066】
予備発明15の光偏向デバイスは、予備発明3,4,5,11,12又は13記載の光偏向素子と、この光偏向素子の光入射側に配設されて前記光偏向素子による光偏向方向に対して入射光の偏光方向が所定の角度を持つように前記入射光の偏光方向を制御する偏光方向制御手段と、を備える。
【0067】
従って、或る方向の電界印加により光偏向を受け出射する第1の光路における成分(光量)と、光偏向を受けないか若しくは上記とは異なる方向の電界印加により異なる方向に光偏向を受け出射する第2の光路における成分(光量)とを任意の割合で設定することで、偏向光量を自在に制御することができる。
【0068】
請求項1記載の発明の光偏向素子は、電界変化に応じて入射光に対する出射光路が変化する光偏向素子であって、透明な一対の基板と、該基板間に充填されたホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶と、前記基板面法線方向及び光偏向方向と略直交する方向に電界を発生させる電極対による電界印加手段と、を備える。
【0069】
従って、キラルスメクチックC相よりなる液晶を利用しているので、予備発明1、2記載の発明の作用・効果が得られる上に、特にホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相なる液晶を利用しているので、当該素子内における光偏向量の場所によるムラを極めて小さくすることができ、光学ノイズの一層の低減を図ることができる。
【0070】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光偏向素子において、前記電極対は、前記光偏向素子を通る光路を挟む位置に設置した。
【0071】
従って、請求項1記載の光偏向素子において、光偏向素子の構成要素である電界印加手段に関して、電極対を光路を挟む位置に設置することで、従来の光偏向素子に比較して光量損失を低減させることができる。
【0072】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の光偏向素子において、前記電界印加手段は、前記基板間に設けられた1組の電極対である。
【0073】
従って、請求項1記載の光偏向素子において、光偏向素子の構成要素である電界印加手段に関して、この電界印加手段より発せられる電界がより効率的に液晶に作用するため、電圧を低減させることができ、電源の小型化,低コスト化を図ることができる。
【0074】
請求項4記載の発明の光偏向デバイスは、電界変化に応じて入射光に対する出射光路が変化する光偏向素子であって、透明な一対の基板と、該基板間に充填されたホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶と、一対の前記基板と前記液晶との間に形成された電極対による電界印加手段とを備えた光偏向素子を、光の入射方向が前記基板面法線方向と異なるように設置した。
【0075】
従って、キラルスメクチックC相よりなる液晶を利用しているので、予備発明1記載の発明の作用・効果が得られる上に、ホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相なる液晶を利用しているので、請求項1記載の発明と同じく、当該素子内における光偏向量の場所によるムラを極めて小さくすることができ、光学ノイズの一層の低減を図ることができ、さらには、ここで用いる電界印加手段としては、ITO等の透明電極が好ましく、いわゆるベタ膜でも差し支えないため、電極形成が容易であり、電極がパタニングされていないため光の進行に対してモアレ等干渉が発生しにくくなり、外部電極による電界形成方法に比較して、高電圧電源が不要となり、さらに小型化に有利となる。
【0076】
予備発明20の光偏向素子は、電界変化に応じて入射光に対する出射光路が変化する光偏向素子であって、透明な一対の基板と、該基板間に充填されたキラルスメクチックC相よりなる液晶と、1組以上の電界印加手段と、を備え、一対の前記基板は、光偏向方向に対応して一方の基板面が他方の基板面に対して傾斜して対向する。
【0077】
従って、キラルスメクチックC相よりなる液晶を利用しているので、予備発明1,2記載の作用・発明の効果が得られる上に、入射光に対して出射光が所定角度を持って回転し光路を切換えることが可能な素子において、その応答性の鈍さを改善することができる。
【0078】
予備発明21は、予備発明20記載の光偏向素子において、前記電界印加手段は、一対の前記基板と前記液晶との間に形成された電極対である。
【0079】
従って、予備発明20記載の光偏向素子において、所定の光偏向方向に対応して的確に液晶分子の配向状態を切換えることができ、効率的な光偏向を可能にする。
【0080】
予備発明22の光偏向デバイスは、光進行方向上に所定距離を隔てて予備発明20又は21記載の光偏向素子を2組備える。
【0081】
従って、光進行方向上に所定距離を隔てて予備発明20記載の光偏向素子を2組備えるので、応答速度を犠牲にせず、光偏向素子と受光部との距離を適切に選ぶことで任意の偏向量を得ることができる。
【0082】
請求項5記載の発明は、請求項1,2又は3記載の光偏向素子において、前記電極対による電界発生方向及び当該素子に対する温度制御により光偏向位置を制御する光偏向位置制御手段を備える。
【0083】
従って、温度によりチルト角を制御することができ、これによって光偏向量を制御でき、また、位置制御に関しては電界による微調との組合せにより適切な光偏向を達成することができる。
【0084】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の光偏向デバイスにおいて、前記電極対による電界発生方向及び当該素子に対する温度制御により光偏向位置を制御する光偏向位置制御手段を備える。
【0085】
従って、温度によりチルト角を制御することができ、これによって光偏向量を制御でき、また、位置制御に関しては電界による微調との組合せにより適切な光偏向を達成することができる。
【0086】
請求項7記載の発明の画像表示装置は、少なくとも、画像情報に従って光を制御可能な複数の画素を二次元的に配列した画像表示素子と、この画像表示素子を照明する光源と、前記画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学部材と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎に前記画像表示素子と前記光学部材の間の光路を偏向する請求項1,2,3若しくは5記載の光偏向素子又は請求項4若しくは6記載の光偏向デバイスによる光偏向手段と、を備える。
【0087】
従って、光偏向手段によりサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示させることで、画像表示素子の見掛け上の画素数を増倍して表示させる上で、ピクセルシフト素子なる光偏向手段として請求項1,2,3若しくは5記載の光偏向素子又は請求項4若しくは6記載の光偏向デバイスを用いているので、光の利用効率を向上させ、光源の負荷を増加することなく観察者により明るく高品質の画像を提供することができ、特に、請求項5記載の光偏向素子又は請求項6記載の光偏向デバイスを用い、光偏向位置制御を、当該光偏向素子における電極対による電界印加方向及び当該光偏向素子に対する温度制御により行うことで、適切なピクセルシフト量が保持され良好な画像を得ることができる。
【0088】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。図1は本実施の形態の光偏向素子1の原理的構成例を示す断面図である。この光偏向素子1においては、まず、一対の透明な基板2,3が対向配置させて設けられている。そして、少なくとも一方、ここでは基板2側内面には配向膜4が形成されており、この配向膜4と他方の基板3との間にはキラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶なる液晶5が充填されている。
【0089】
このような一対の基板2,3及び液晶5を有する構造体に対して、目的とする光偏向方向に対応させて電極6a,6bによる一対の電極対6が配置され、電源7に接続されている。電極対6は電界印加手段として機能するもので、光路と重ならない位置で当該光偏向素子1の液晶回転軸に対して略垂直方向に電界ベクトルが向くように設置され、基板2,3と一体化させて設けても、分離させて設けても良い。また、液晶5の膜厚を規定するためのスペーサを電極に兼用することも可能である。光偏向による光の進行方向を3方向以上に振りたい場合は、入射光の偏光方向をその偏向方向に対応させて回転させるとともに、電極対6をやはりそれらに対応させ複数設ければよい。
【0090】
入射光は、電極対6より形成される電界の方向によって偏向を受け、第1の出射光若しくは第2の出射光の何れかの光路をとる。
【0091】
ここで、液晶5に関して説明する。「スメクチック液晶」は液晶分子の長軸方向を層状に配列してなる液晶分子である。このような液晶に関し、上記層の法線方向(層法線方向)と液晶分子の長軸方向とが一致している液晶を「スメクチックA相」、法線方向と一致していない液晶を「キラルスメクチックC相」と呼んでいる。キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶5は、一般的に外部電界が働かない状態において各層毎に液晶ダイレクタ方向が螺旋的に回転しているいわゆる螺旋構造をとり、キラルスメクチックC相反強誘電液晶は各層毎に液晶ダイレクタが対向する方向を向く。これらのキラルスメクチックC相よりなる液晶は、不斉炭素を分子構造に有し、これによって自発分極しているため、この自発分極Psと外部電界Eにより定まる方向に液晶分子が再配列することで光学特性が制御される。なお、本実施の形態等では、液晶5として強誘電液晶を例に採り光偏向素子1の説明を行うが、反強誘電液晶の場合にも同様に使用することができる。
【0092】
キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶の構造は、主鎖、スペーサ、骨格、結合部、キラル部などよりなる。主鎖構造としてはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリオキシエチレンなどが利用可能である。スペーサは分子回転を担う骨格、結合部、キラル部を主鎖と結合させるためのものであり、適当な長さのメチレン鎖等が選ばれる。また、カイラル部とビフェニル構造など剛直な骨格とを結合する結合部には−COO−結合等が選ばれる。
【0093】
本実施の形態の光偏向素子1においては、キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶5は配向膜4により基板2,3面に垂直に分子螺旋回転の回転軸が向いており、いわゆるホメオトロピック配向をなす。このようなホメオトロピック配向のための配向法としては、従来より行われている方法を適用することができる。即ち、▲1▼ずり応力法、▲2▼磁場配向法、▲3▼温度勾配法、▲4▼SiO斜法蒸着法、▲5▼光配向法等が挙げられる(例えば、竹添、福田「強誘電性液晶の構造と物性」コロナ社、p235参照)。
【0094】
本実施の形態の光偏向素子1の特徴の1つは、ITO膜等による電極パターンを素子内に形成する必要がないため、これによる光損失がない点と、素子の光が透過する部分の層構成が簡単で製造コストが抑制できる点にある。また、キラルスメクチックC相はスメクチックA相やネマチック液晶に比較して極めて高速な応答性を有しており、サブmsでのスイッチングが可能である点も特徴である。特に、電界方向に対して液晶ダイレクタ方向が一義的に決定されるため、スメクチックA相よりなる液晶に比べダイレクタ方向の制御が容易であり、扱いやすい。
【0095】
ホメオロトピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶5は、ホモジニアス配向(液晶ダイレクタが基板面に平行に配向している状態)をとる場合に比べて、液晶ダイレクタの動作が基板2,3からの規制力を受けにくく、外部電界方向の調整で光偏向方向の制御が行いやすく、必要電界が低いという利点を有する。また、液晶ダイレクタがホモジニアス配向している場合、電界方向だけでなく基板面に液晶ダイレクタが強く依存するため、光偏向素子の設置についてより位置精度が求められることになる。逆に、本実施の形態のようなホメオロトピック配向の場合は、光偏向に対して光偏向素子1のセッティング余裕度が増す。これらの特徴を活かす上で、厳密に螺旋軸を基板面に垂直に向ける必要はなく、或る程度傾いていても差し支えない。例えば、螺旋構造をなす側面の一部が基板2,3に垂直であって螺旋軸そのものは基板法線方向から傾いている状態であっても、液晶ダイレクタが基板2,3からの規制力を受けずに2つの方向を向くことが可能であればよい。
【0096】
無電界下のキラルスメクチックC相の液晶層に対して層法線方向から偏光顕微鏡によるコノスコープ像を観察すると、十字像が中央部に位置しており、一軸性光学軸を有していることが確認できる。ここで、図2にキラルスメクチックC相の液晶分子配列のモデル(電界による螺旋構造変化のモデル)を示す。チルト角θを有する分子層が互いズレながら重なって螺旋構造を形成している。電界E=0では図2(a)のように左右対称な螺旋構造によって液晶ダイレクタ方向は空間的に平均化される。液晶層の平均化された光学軸は層法線方向を向いており、この光学軸に平行な入射光に対しては光学的に等方的である。次に、液晶層の水平方向に比較的小さな電界0<E<Esを印加すると、自発分極Psへの電界Eの作用で液晶分子に回転モーメントが生じるために図2(b)のように螺旋構造が歪んで非対称となり、平均的な光学軸が一方向に傾く。この時、電界強度の増加と共に歪みが大きくなって平均的な光学軸の傾斜角も大きくなる。これは、コノスコープ像の十字像の位置が移動することから確認できる。さらに電界強度を増加させると、ある閾値電界Es以上で図2(c)のように螺旋構造が消失して光学的に略一軸性となる。この時の光学軸の傾斜角は液晶ダイレクタのチルト角θと等しくなる。さらに電界を増加させてもチルト角θは変化せず、光学軸の傾斜角も一定となる。
【0097】
次に、本実施の形態の光偏向素子1の動作原理について図3及び図4を参照して説明する。図3は、図1に示した構成に関して液晶配向を模式的に示したものである。ただし、図1では電界が上下方向に印加されるように描いているが、図3では便宜上紙面表裏方向に印加されるように描いており、電界は紙面表裏方向に発生するものとする。また、電界方向は目的とする光の偏向方向に対応して電源7により切換えられる。図3における電極6a,6bは、上述したように基板2,3と一体化してもまた分離して設けてもよい。
【0098】
また、当該光偏向素子1に対する入射光は直線偏光であり、その偏光方向は図3中上下の矢印に示す通り上下方向であって(以後、同様に偏光方向については上下或いは左右の矢印で入射光に重ねて示す)、その偏光方向に電界方向が直交するように電極6a,6bは対向配置される。また、液晶5の膜厚を規定するためのスペーサを電極に兼用することも可能である。何れの場合においても、電極6a,6bからの漏洩電界が当該光偏向素子1周辺の機器に悪影響を及ぼさないように電磁シールドを設けるのが好ましい。
【0099】
図3においてXYZ直交座標系を図示する通りにとったとき、液晶5内のXZ断面において図3に示す通り液晶ダイレクタ8は、その電界方向によって第1の配向状態又は第2の配向状態の何れかの状態(図4(b)参照)をとって分布する。θは液晶回転軸からの液晶ダイレクタ8のチルト角であり、以後、単に「チルト角」と呼ぶ。液晶5の自発分極Psが正でありY軸正方向(紙面上向き)に電界Eがかかっているものとすると、液晶ダイレクタ8は液晶回転軸が略基板垂直方向であるためXZ面内にある。液晶5の長軸方向の屈折率をne、短軸方向の屈折率をnoとすると、入射光として、偏光方向をY軸方向に持つ直線偏光を選びX軸正方向に入射光が進むとき、光は液晶5内で常光として屈折率noを受け直進し、図4(a)中のa方向に進む。即ち、光偏向は受けない。
【0100】
一方、偏光方向がZ軸方向である直線偏光が入射するとき、入射方向の屈折率は液晶ダイレクタ8の方向及び屈折率no,neの両者から求められる。より詳しくは、屈折率no,neを主軸に持つ屈折率楕円体において楕円体中心を通過する光の方向との関係から求められるが、ここでは詳細は省略する。光は屈折率no,ne及び液晶ダイレクタ8の方向(チルト角θ)に対応した偏向を受け、図4(a)中のb(第1の配向状態の場合)に示す方向にシフトする。
【0101】
今、液晶5の厚み(ギャップ)をdとするときシフト量Sは以下の式で表される(例えば、「結晶光学」応用物理学会、光学懇話会編、p198参照)。
【0102】
S=[(1/no)2−(1/ne)2]sin(2θ・d)÷[2((1/ne)2sin2θ+(1/no)2cos2θ)] ………式1
また、電界方向を反転させた時、液晶ダイレクタ8は図4においてX軸を中心とした線対称の配置(第2の配向状態)を取り、偏光方向がZ軸方向である直線偏光の進行方向は図4(a)中のb′に示す通りとなる。
【0103】
従って、この直線偏光に対して液晶5に作用させる電界方向を制御することで、bとb′との2位置、即ち、2S分の光偏向が可能となる。
【0104】
液晶5の材料の代表的物性値(no=1.6,ne=1.8)に対して得られる光偏向量について光偏向量Sを計算した結果を図5に示す。θ=45°付近が最も光偏向量が大きい。仮に、液晶ダイレクタ8のチルト角θが22.5°のとき、2S=5(μm)の偏向量を得るためには、ここに示される通り液晶の厚みを32μm厚に設定すれば良い。また、ホメオトロピック配向強誘電液晶において、約700V/cmの電界に対して0.1msの応答速度が報告されており(Ozaki 他、J.J.Appl.Physics、Vol.30、No.9B、pp2366-2368(1991)参照)、サブmsオーダの十分高速な応答速度が得られる。
【0105】
また、キラルスメクチックC相よりなる液晶においては、チルト角θは温度Tにより変化し、相転移点をTcとすると、θ∝(T−Tc)βなる関係がある。βは材料により異なるが0.5程度の値をとる。この特性を利用した温度制御で光偏向量を制御することも可能である。
【0106】
例えば、仮にチルト角θとして上記の22.5°を設定し、これに対応する温度をTθ=22.5°とすれば、T>Tθ=22.5°ではθ<22.5°であり、T<Tθ=22.5°ではθ>22.5°であるため、温度によりチルト角θを制御でき、これによって光偏向量を制御できることとなる。また、位置制御に関しては、電界による微調を同様に行うことができ、温度、電界或いはその両者の組合せにより適切な光偏向を達成できる。
【0107】
以上は、電界強度がEs以上で螺旋構造が解けてチルト角θが光学軸の傾斜角に等しい場合について説明したが、電界強度がEs以下の場合には、上記θを液晶ダイレクタ方向を平均化した光学軸の傾斜角として扱えば良い。
【0108】
液晶5の温度制御としては、当該光偏向素子1の温度をモニタし設定温度との差を低減するための加熱源若しくは冷却源等を作動するようフィードバックをかければよい。また、温度をモニタする変わりに光偏向位置をモニタし正規位置との差を低減するように上記加熱/冷却源を作動させるようにしてもよい。
【0109】
加熱源としては光偏向素子1外部に加熱源を設けてもよいが、小型化のためには後述する実施の形態の如く、光偏向素子1内部に抵抗線を形成し、これに電流を流すことで得られるジュール熱を利用するのが好ましい。冷却源としてはペルチェ素子等が好適に用いられる。
【0110】
本発明の第二の実施の形態を図6及び図7に基づいて説明する。前述した実施の形態の場合と同一又は相当する部分は同一符号を用いて示し、説明も省略する(以降の各実施の形態でも順次同様とする)。
【0111】
図6は、偏向方向が互いに所定角(φ2)傾いた方向に設置された図3に示す2つの光偏向素子1A,1Bが直列に配列され、該光偏向素子1A,1B間に、前段の光偏向素子1Aからの出射光の偏光方向を後段の光偏向素子1Bの偏向方向に揃える偏光方向切換手段9'を備えた構成の光偏向デバイス10である。
【0112】
このような光偏向デバイス10によれば、光偏向素子1Aにおいて上下方向(Z軸方向)に2位置光シフトが行われ、光偏向素子1Bにおいて光偏向素子1Aのシフト方向からφ2なす角度方向に2位置の光シフトが行われるため、デバイス全体としては合計4位置に光をシフトさせることが可能となる。
【0113】
この光偏向デバイス10に入射する光は図6に示す通り、Z軸方向に偏光方向を有しており、光進行方向に対して前段側の光偏向素子1Aにおいて上下方向(Z軸方向)に偏向を受けた後、偏光方向切換手段9'によって偏光方向をφ1(=φ2)回転させて後段の光偏向素子1Bに入射し、光偏向素子1Aのシフト方向からφ2なす角度方向に2位置のシフトを受ける。
【0114】
偏光方向切換手段9'としては、ファラデー回転素子やツイスト構造を有する液晶素子などを用いることができ、偏光方向回転角φ1は前記φ2と略一致するよう設定される。特にツイスト構造を有する液晶素子は、波長による偏光方向回転角のバラツキを比較的小さく設定可能であるため、多波長よりなる光を扱う場合に好適である。
【0115】
また、ツイスト構造を有する液晶素子としては、いわゆる低分子ツイストネマティック液晶を、前記φのツイスト角が得られるように互いに配向処理を施した一対の透明基板中に充填した構造をなす素子、或いは、は高分子によりツイスト構造を形成した液晶素子等が用いられる。高分子によりツイスト構造を形成した液晶素子においては一対の透明基板を用いることなく、例えばベースフィルム上に直接液晶を構成することができるため、厚みを抑えることが可能となり、省スペース化の観点から好ましい。
【0116】
図7は、偏向方向が互いに直交した方向に設置された図3に示す2つの光偏向素子1A,1Bが直列に配列され、該光偏向素子1A,1B間に、前段の光偏向素子1Aからの出射光の偏光方向を後段の光偏向素子1Bの偏向方向に揃える偏光方向切換手段としての1/2波長板9を備えた構成の光偏向デバイス10である。
【0117】
このような光偏向デバイス10によれば、光偏向素子1Aにおいて上下方向(Z軸方向)に2位置、光偏向素子1Bにおいて左右方向(Y軸方向)に2位置の光シフトが行われるため、デバイス全体としては合計4位置に光をシフトさせることが可能となる。
【0118】
この場合、図7における偏光方向切換手段9として、雲母、水晶等の複屈折性材料により形成される1/2波長板を使用することも可能である。これらの材料は温度による特性変動が比較的少なく、温度変化の大きい環境での使用時に特に有用である。
【0119】
この光偏向デバイス10に入射する光は図7に示す通り、Z軸方向に偏光方向を有しており、光進行方向に対して前段側の光偏向素子1Aにおいて上下方向(Z軸方向)に偏向を受けた後、1/2波長板9によって偏光方向を90°回転させてY軸方向の偏光方向とすることで、後段の光偏向素子1Bで左右方向(Y軸方向)の偏向を受ける。
【0120】
本発明の第三の実施の形態を図8に基づいて説明する。本実施の形態では、前述の光偏向素子1に関して、電極対6の他に、この電極対6とは直交する方向に電界を作用させる電極11a,11bによる電極対11を電界印加手段として付加した構成とされている。電極11a,11b間には電源12が接続されている。即ち、電極対6,11が液晶5に対して上下左右方向に設けられている。このような電極対6,11を備える光偏向素子1の入射側に入射光の偏光方向を制御する偏光方向制御手段13が設けられ、これらの光偏向素子1と偏光方向制御手段13とにより光偏向デバイス14が構成されている。
【0121】
このような構成において、光偏向位置を図6及び図7に示した場合と同様に、4点にとる場合は、偏光方向制御手段13による偏光方向の設定方向を対応する上下左右2方向に設定することになり、この場合、例えば、偏光方向制御手段13としては強誘電液晶材料等で構成することができる。また、電極11a,11bによる電極対11は電極対6と直交する方向に限らず所望の偏向方向に対応した角度で設置することも可能である。また、多方向に設定することも可能であり、これらの場合は偏光方向制御手段として任意に角度設定することが可能なファラデー回転素子等により構成することができる。何れの場合においても、光偏向素子1における光偏向方向と入射光の偏光方向とが一致するように偏光方向を制御することで、光学ノイズを低減し良好な光シフトを達成することができる。
【0122】
本実施の形態の光偏向デバイス14の構成によれば、図6及び図7に示した構成の光偏向デバイス10と比較して、光偏向素子1を唯1つ使用することで同様の機能を出せるため、システムの小型化、低コスト化、光損失の低減に効果がある。ただし、光偏向位置が2位置だけでよければ当然ながら図8における電極対は一対のみ設ければよい(結局、図3に示したような構成)。
【0123】
偏光方向制御手段13は後述する実施の形態の通り、液晶パネルに形成された画像を投影する画像表示装置内においては、液晶パネルの偏光方向を画面毎に回転させることで省くことができる。
【0124】
ところで、図7及び図8のような構成における入射光偏光方向と液晶ダイレクタとの組合せに対する光偏向位置を表1に示す。ただし、諸特性は第一の実施の形態で示したものを用いている。また、図7の構成の場合では、直列に配置した2つの光偏向素子1A,1Bのうち、入射光側に配置される光偏向素子1Aにおいて、表1中の1,3の偏向を、出射光側に配置される光偏向素子1Bにおいて2,4の偏向を各々形成するものとする。
【0125】
【表1】
Figure 0003987347
【0126】
本発明の第四の実施の形態を図9に基づいて説明する。本実施の形態は、例えば、第一の実施の形態で示したような光偏向素子1の入射側に光偏向素子1による光偏向方向に対して入射光の偏光方向が所定の角度を持つように入射光の偏光方向を制御する偏光方向制御手段15を付加して光偏向デバイス16を構成することにより、偏向光量を自在に制御できるようにしたものである。
【0127】
本実施の形態における偏光方向制御手段15は、偏光板をメカニカルに回転機構により回転させる構成とかファラデー回転素子等により構成され、光偏向素子1に入射する偏光方向の角度を任意に設定可能である。仮に、Z軸からの入射光の偏光方向の角度(チルト角)をθとすると、入射光Poに対して、図9のY軸方向の電界印加により光偏向を受けて出射する第1の出射光の成分(光量)Pは入射光のZ軸方向ベクトル成分と一致し、P=Pcosθ、光偏向を受けない第2の出射光の成分(光量)Pは入射光のY軸方向ベクトル成分と一致し、P=Psinθとなる(ただし、光の減衰、散乱等は無視するものとする)。即ち、角度θを適宜設定することで任意の割合で光量を振り分けすることができる。また、出射光の成分(光量)P,Pを必要に応じて測定することで、入射光の偏光方向が得られ、これを基に偏光方向制御手段15による偏向方向の角度θを設定し直す等の処理も可能である。
【0128】
なお、本実施の形態では、図1及び図3に示したような構成の光偏向素子1との組合せ例で説明したが、後述するような電極対構造を持つ光偏向素子との組合せ例であってもよい。
【0129】
本発明の第五の実施の形態を図10に基づいて説明する。本実施の形態は、前述したように、キラルスメクチックC相よりなる液晶においては、チルト角θは温度Tにより変化する点に着目し、例えば、第一の実施の形態中の図4に示したような光偏向素子1の内部に加熱源となる電気抵抗材料17を設けたものである。この電気抵抗材料17には駆動電流を制御する温度制御手段18が接続されており、前述した電極対6による電界発生方向の制御とこの電気抵抗材料17による当該光偏向素子1、特に液晶5に対する温度制御により光偏向素子1による偏向位置を制御するための光偏向位置制御手段が構成されている。
【0130】
ここに、電気抵抗材料17としては可視光域で透明で適当な電気抵抗を有し、さらに耐熱性(室温〜70℃程度)に優れる材料が好ましい。具体的には、ITOが用いられており、基板2と配向膜4との間に形成されている。
【0131】
温度制御手段18により、サーミスタ等の温度センサ(図示せず)により当該光偏向素子1の温度をモニタして設定温度との差を低減するようにITO(電気抵抗材料17)への駆動電流を流すことでジュール熱発生によって温度制御がなされる。設定温度は当該光偏向素子1の周囲の環境温度以上で、かつ、適切な角度θが得られる範囲が望ましい。通常は、40〜70℃程度の範囲に設定するのがよい。
【0132】
従って、本実施の形態によれば、温度によりチルト角θを制御でき、これによって光偏向量を制御でき、また、位置制御に関しては、電界による微調を同様に行うことができ、温度、電界或いはその両者の組合せにより適切な光偏向を達成することができる。
【0133】
なお、本実施の形態では、ホメオロトピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶5を有する構成の光偏向素子1への適用例として説明したが、後述するようなホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶を有する構成の光偏向素子の場合にも同様に適用できる。
【0134】
本発明の第六の実施の形態を図11に基づいて説明する。本実施の形態の光偏向素子21は、ホメオロトピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶5を含む構成において、電界印加手段としての電極対の配置・構成を前述の場合と異ならせたものである。即ち、第一の実施の形態等にあっては、光路と重ならない位置に電極対6を設け、素子外部から電界を与えているのに対して、本実施の形態では、電界発生用の電極22a,22bによる電極対22を対向する基板2,3間の液晶5中に設けている点が特徴である。
【0135】
より具体的には、これらの電極22a,22bは何れも櫛歯状電極として形成され、目的とする偏向方向に直交するZ軸方向においてこれらの櫛歯状電極22a,22bが交互に位置するように互いに入り込ませた配置とされている。これらの櫛歯状電極22a,22b間には電源(ここでは、図示せず)により電圧が印加されるように構成されている。この場合、電界方向は櫛歯状電極22a,22bの位置関係によって図中+Z軸方向又は−Z軸方向をとり、これに対応して光偏向素子21による出射光は同一素子内で2方向をとる(図11(a))。一定方向のみ取り出すのであれば、例えば、片側成分に相当する部分に対して遮光処理等を施せばよい。
【0136】
第一の実施の形態で示した構成の光偏向素子1の場合にはZ軸方向に外部電界を付与することで液晶ダイレクタの方向を制御するが、本実施の形態の光偏向素子21の場合には、素子内部で電界制御が可能である点に特長がある。この結果、電極22a,22b間距離が短くなるため必要電圧は極めて少なく、例えば、外部電極6a,6bにおける電極間距離を20mmとし、本実施の形態のような内部電極22a,22bの電極間距離を0.2mmとすれば同等の電界強度を得るのに1/1000の電圧を付与すればよいものである。このため、外部電界を形成するために必要となる高電圧電源7が不要となり、さらに小型化に有利となる。
【0137】
縦電界(図11(a)(b)においてはZ 軸方向)が発生できる構造であれば、本構成以外のものであっても問題ない。即ち、図11において櫛歯状電極22a,22bは、各々端部が接続され等電位になるよう構成されているが、櫛歯状電極の構造としては本構成に限ったものでなく、端部を切り離した構成若しくは高抵抗材料を介在させた構成などにしてもよく、これらの場合各電極の電位を独立に設定することが可能である。例えば、Z方向の電極配列順に電極電位を増加或いは低下させるように構成することも可能であり、この場合、上記のような+Z方向と−Z方向の電界を混在させることなく一方向に電界を向かせることが可能となるため、遮光処理等を施す必要がなくなり有用である。
【0138】
本発明の第七の実施の形態を図12に基づいて説明する。本実施の形態の光偏向素子23は基本的には前述の光偏向素子21に準ずるものであり、ホメオロトピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶5を含む構成において電界発生用の電界印加手段としての電極対を素子内部に設けるものであるが、2組の電極対24,25を設けるようにしたものである。電極対24は櫛歯状電極24a,24bよりなるもので、これらの櫛歯状電極24a,24bは基板2と液晶5との界面(より具体的には、基板2と配向膜4との界面)において横電界(図においてはY軸方向)を発生させ得るように互いに入り込ませた配置で形成されている。一方、電極対25は櫛歯状電極25a,25bよりなるもので、これらの櫛歯状電極25a,25bは液晶5と基板3との界面において縦電界(図においてはZ軸方向)を発生させ得るように互いに入り込ませた配置で形成されている。即ち、電極対24,25による電界発生方向は直交するように設定されている。何れの電極対24,25に関しても各々電源(ここでは、図示せず)により電圧が印加されるように構成されている。
【0139】
このような構成において、動作的には光偏向素子21の場合と同様であるが、2組の電極対24,25を有するので、これらの電極対24,25による電界印加タイミングを適宜制御することにより、上下左右の4方向を基本とする多方向の光偏向が可能となる。
【0140】
本発明の第八の実施の形態を図13に基づいて説明する。本実施の形態の光偏向素子31は、基本的には光偏向素子1等に準ずる構成のものであり、液晶としてキラルスメクチックC相よりなる液晶を用いているが、ホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶32を用いる点で異なる(電極対6等については図示を省略している)。
【0141】
ここに、ホメオトロピック配向における場合と同様にY軸方向、即ち、紙面表裏方向に外部電界を付与することで、ホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶32ではその液晶ダイレクタ8の方向がその電界印加方向によって、第1の配向状態又は第2の配向状態をとるように制御される。この構成においては、液晶配向のために配向膜4にラビング処理を行い、ラビング方向に依存した向きに液晶ダイレクタ8の方向が強く規制される。このため、電界方向とともに基板2,3の向きが光偏向特性に強く寄与し、基板2,3配置に対する位置精度を上げる必要がある反面、仮に電界勾配が発生している場合、ホメオトロピック配向では光偏向が電界勾配に伴い面内位置で変化してしまいやすいのに対して、この場所による差を低減させ得る効果がある。
【0142】
このような構成の光偏向素子31において、入射光としてZ軸方向が偏光方向である直線偏光を用い、液晶32の配向状態に依存して出射光がa方向(第1の配向状態)或いはb方向(第2の配向状態)をとることで、光路のシフトが可能となる。
【0143】
本発明の第九の実施の形態を図14に基づいて説明する。本実施の形態の光偏向素子33は、基本的にはホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶32を用いる光偏向素子31に準ずる構成のものである。ここに、液晶32の両側にはこの液晶32を充填させて電界印加手段として機能する一対の透明ベタ電極34a,34bによる電極対34が電界印加手段として形成されている。この電極対34により、ホモジニアス配向している液晶ダイレクタ8に直交する方向、即ち、液晶ダイレクタ8の自発分極方向に電界が印加される構成とされている。さらには、液晶面(従って、基板面)が光の入射方向に対して傾きΦをなすように基板2,3の対向面が傾斜状態に設定されている。
【0144】
図14(a)中のA−A′断面図を示す図14(b)のように、液晶ダイレクタ8は電極34a,34bからの電界方向に対応して2方向に配向される(第1の配向状態及び第2の配向状態)。
【0145】
このような構成の光偏向素子33においては、液晶32の配向を図14(b)に示す通り略直交する方向に規制することで、入射光を効率良く偏向させることが可能となる。即ち、図14において入射光の直線偏光方向がZ軸方向になるよう入射光を操作してこの光偏向素子33に入射させたとき、液晶ダイレクタ8がY軸方向を向く(第1の配向状態)ように電極対34によって電界を印加することで入射光は常光として振る舞い、そのまま偏向することなく通過する。一方、電界印加方向を反転させ液晶ダイレクタ8がそれと直交する方向を向くようにしたとき、直線偏光は異常光として振る舞い、前述した式1で示される偏向を受ける。
【0146】
液晶32の配向を直交する方向に規制するために、両基板2,3の表面に形成される配向膜に対して液晶配向に対応する方向にラビング処理を行っており、ラビング方向に依存した向きに液晶ダイレクタ8の方向が強く規制される。
【0147】
本実施の形態の光偏向素子33の構成の特徴は、透明電極34a,34bがベタ膜でよいため形成が容易であること、パタニングされていないため光の進行に対してモアレパタン等の干渉が発生しにくいこと、電極6a,6bのような外部電極による電界形成方法に比較して高電圧電源が不要となり、さらに、小型化に有利となる点等が挙げられる。
【0148】
なお、本実施の形態では、液晶としてホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶32を用いたが、前述したホメオロトピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶5を用いる構成の場合にも同様に適用できる。
【0149】
本発明の第十の実施の形態を図15ないし図17に基づいて説明する。本実施の形態の光偏向素子34は、基本的にはホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶32を用いる光偏向素子31,33に準ずる構成のものであるが、液晶32に接する両界面は互いに或る所定角度ψ1(≠0)傾斜した関係をなす。ホモジニアス配向している液晶32は、この液晶両界面付近に形成された透明電極(図示せず)により図14の場合と同様の配向制御がなされる。傾斜角ψ1を保持した状態でギャップを所望の範囲に収めるために図15に示す通り傾斜部35を或る間隔で鋸歯状に形成してもよい。形成方法としては、ガラス基板をエッチングするか透明プラスチック材料を射出成形等により加工してもよい。何れの形成法においても、鋸歯のエッジ35eに相当する個所は液晶配向の乱れが生じやすいので、この部分を光が通過しないように入射光を操作するのが望ましい。
【0150】
このような構成の光偏向素子34の特徴は、入射光に対する出射光が液晶ダイレクタ8の制御によって、回転移動可能な点である。従って、当該光偏向素子34と受光部との距離を適切に選ぶことで所望の偏向量を得ることができる。
【0151】
また、例えば図16に示すようにこのような2つの光偏向素子34A,34Bを光進行方向上に配設させて光偏向デバイス36を構成し、液晶32から液晶32までの距離を適切に選ぶことで入射光と出射光を平行に保ったまま必要な偏向量を得ることができる。これによって、偏向量を外部から簡単に調整することができ、利便性に優れた光偏向デバイス36を構成することができる。また、光偏向量が一定であれば、図17に示すように厚さLの中間基板37を介して1つの光偏向素子38内に2層の液晶32a,32bを設けてもよい。
【0152】
図17に示すような光偏向素子38の構成における光の進行方向を求める場合、厳密には前述の通り、入射光進行方向に対する液晶ダイレクタ8の方向及び屈折率no,neの両者から屈折率楕円体を基に各方向における屈折率が求められ、それを基に光の進行方向が求められるが、ここでは簡単に液晶32の配向状態によって屈折率noと屈折率neとが切り替わるものとして、スネルの法則に従って光の進行方向、即ち、回転角を求める。
【0153】
今、液晶32の長軸方向の屈折率をne=1.8、短軸方向の屈折率をno=1.6とし、光進行方向に対して液晶32の手前側界面35の法線方向が光進行方向となす角ψが3°、後方側界面40の法線が入射光方向となす角が0°となるよう基板2を配置する。また、液晶32と接する光学部材は屈折率noのものを選ぶ。スネルの法則によって手前側液晶界面39での界面法線方向からの回転角ψ2
sinψ2=(no/ne)sinψ1 より、
ψ2=2.67(°)
また、液晶32を挟んだ対向基板2,3に入射する光線の対向基板の法線方向からの回転角ψ3
Figure 0003987347
対向基板2,3に入射した光線の基板37内での回転角ψ4
sinψ4=(ne/no)sinψ3 より、
ψ4=0.37(°)
となる。今、中間基板37の厚みをLとすると、シフト量5μmを得るために必要な厚みLは
L・tanψ=5.0(μm)より、
L=0.763(mm)
である。
【0154】
本発明の第十一の実施の形態を図18に基づいて説明する。本実施の形態は、画像表示装置41への適用例を示す。図18において、42はLEDランプを2次元アレイ状に配列した光源であり、この光源42からスクリーン43に向けて発せられる光の進行方向には拡散板44、コンデンサレンズ45、画像表示素子としての透過型液晶パネル46、画像パターンを観察するための光学部材としての投射レンズ47が順に配設されている。48は光源42に対する光源ドライブ部、49は透過型液晶パネル46に対するドライブ部である。
【0155】
ここに、透過型液晶パネル46と投射レンズ47との間の光路上にはピクセルシフト素子として機能する光偏向手段50が介在されており、ドライブ部51に接続されている。このような光偏向手段50として、前述したような光偏向素子1,21,23,31,32,33,34或いは光偏向デバイス10,14,16,36,38等が用いられている。
【0156】
光源ドライブ部48で制御されて光源42から放出された照明光は、拡散板44により均一化された照明光となり、コンデンサレンズ45により液晶ドライブ部49で照明光源と同期して制御されて透過型液晶パネル46をクリティカル照明する。この透過型液晶パネル46で空間光変調された照明光は、画像光として光偏向手段50に入射し、この光偏向手段50によって画像光が画素の配列方向に任意の距離だけシフトされる。この光は投射レンズ47で拡大されスクリーン43上に投射される。
【0157】
ここに、光偏向手段50により画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示させることで、透過型液晶パネル46の見掛け上の画素数を増倍して表示する。このように光偏向手段50によるシフト量は透過型液晶パネル46の画素の配列方向に対して2倍の画像増倍を行うことから、画素ピッチの1/2に設定される。シフト量に応じて透過型液晶パネル46を駆動する画像信号をシフト量分だけ補正することで、見掛け上高精細な画像を表示することができる。この際、光偏向手段50として、前述した各実施の形態のような光偏向素子或いは光偏向デバイスを用いているので、光の利用効率を向上させ、光源の負荷を増加することなく観察者により明るく高品質の画像を提供できる。特に、図10に示したような光偏向素子1を用い、光偏向位置制御を、当該光偏向素子1における電極対6による電界印加方向及び当該光偏向素子1に対する温度制御により行うことで、適切なピクセルシフト量が保持され良好な画像を得ることができる。
【0158】
ちなみに、従来の画像表示装置に組み込まれるピクセルシフト素子用の光偏向手段の例(特開平6−324320号公報提案例)を示す。この光偏向手段としての光学素子は水平垂直方向に各2位置、合計4位置の光シフトを行うための素子であり(2次元の4点絵素ずらし)、強誘電液晶等よりなる結晶位相変調素子と電気光学素子等よりなる複屈折媒体との組合せが水平・垂直方向用に各2組で構成される。従来のこの光学素子を用いた画像表示装置では、この光学素子が
▲1▼ 結晶位相変調素子と複屈折媒体との組合せで光偏向を達成しているため、この界面での光損失がある
▲2▼ 同様に、界面での光散乱によりコントラストが低下しやすい
▲3▼ 複屈折媒体用の電気光学素子が高価であるためコストが高い
などの問題のため、必ずしも得られる画像品質が良好なものではなく、装置コストも大幅に増加する傾向にあった。
【0159】
この点、本実施の形態の光偏向手段50のような構成の場合、各実施の形態で前述した通り、これらの要因を排除できるため、画像品質が良好であり、コスト的にも有利となる。
【0160】
なお、画像表示装置41としては画像表示素子に透過型液晶パネル46を用いるタイプに限らず、例えば、図19に示すように反射型液晶パネル52を用いるタイプにも同様に適用できる。この場合、図16に示した画像表示装置41に比較して偏光ビームスプリッタ(PBS)53が付加され、照明系からの光はPBS53により反射型液晶パネル52側に折り返され、光偏向手段50を介して反射型液晶パネル52に照射される。この反射型液晶パネル52に入射した照明光は、反射型液晶パネルによって反射されながら画像に対応した空間変調を受け画像光として出射する。その後、光偏向手段50に入射し、この光偏向手段50によって画像光が画素の配列方向に所定距離だけシフトされる。その後の経路は図18に示した画像表示装置の場合と同様である。
【0161】
本発明の第十二の実施の形態を図20に基づいて説明する。本実施の形態は、画像表示装置41において、図10に示したように加熱源となる電気抵抗材料17を含む光偏向素子1による光偏向手段50に対して光路を妨げない位置に温度センサ54を付加した構成としたものである。温度センサ54にはサーミスタが用いられているが、熱電対等であっても、温度モニタできるものであれば使用可能である。この温度センサ54からの温度情報は光偏向手段50に対するドライブ部51に送られ、設定温度との差を検知する。この差に応じて光偏向素子1内に設けられたITOよりなる電気抵抗材料17に通電され、電流印加によるジュール熱の発生によって設定温度との差を低減させるように構成したものである。
【0162】
設定温度は、光偏向素子1(光偏向手段50)周囲の環境温度以上で、かつ、適切なチルト角θが得られる範囲が望ましい。通常は、40〜70℃程度の範囲に設定するのがよい。
【0163】
光偏向位置制御を、光偏向素子1における電極対6による電界印加方向及び光偏向素子1に対する温度制御により行うことで、適切なピクセルシフト量が保持され良好な画像を得ることができる。
【0164】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の光偏向方法によれば、キラルスメクチックC相よりなる液晶を利用するようにしたので、従来の光偏向素子における問題点、即ち、構成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量損失、光学ノイズを改善することができる。
【0165】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、偏向方向を切替えることが可能となリ、光学装置に広く応用することが可能となる。また、偏向方向切替えのための可動部を有しないため、従来の特に可動部を有する光偏向素子等における問題点であった位置精度の低さや耐久性不良、振動や音の問題も回避することができる。さらに、従来、光偏向素子に用いられていたスメクチックA液晶やネマチック液晶などにおける応答性の鈍さも改善でき、高速応答が可能となる。加えて、液晶ダイレクタを基板に対してホメオトロピック配向させることにより、低い電界で安定したシフト量、回転角を得ることができ、液晶ダイレクタの動作が基板からの規制力を受けにくく、外部電界方向の調整で光偏向方向の調整が行いやすく光学素子のセッティング余裕度が増し、また、電界方向に対して液晶ダイレクタの配向のとりやすさが均一であるため、偏向方向に対する光強度ムラを発生しにくくすることもできる。
【0166】
請求項3記載の発明の光偏向素子によれば、極めて簡単な構成でありながら、請求項1,2の光偏向方法を具現化でき、上記効果を達成することが可能となる。
【0167】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の光偏向素子において、基板面法線方向及び光偏向方向と略直交する方向に電界を印加するため、電界印加方向を切替えた時の液晶のチルト方向を基板面法線方向から対称な方向に設定できるため、所定の光偏向方向に対して高い位置精度で光偏向を行うことを可能とし、さらに受光部までの光路長が偏向方向によらず一定であるため、受光部における像ボケが発生しない。
【0168】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の光偏向素子において、電極対を光路を挟む位置に設置することで、従来の光偏向素子に比較して光量損失を低減させることができる。
【0169】
請求項6記載の発明の光偏向デバイスによれば、光偏向素子の光学軸と入射光の光偏向方向を一致させているため、光学ノイズ、光量損失を極めて小さく抑えることができる。
【0170】
請求項7記載の発明の光偏向デバイスによれば、光偏向素子の液晶分子の配向が所定方向に揃えられているため、光学ノイズ、光量損失を極めて小さく抑えることができる。
【0171】
請求項8記載の発明の光偏向デバイスによれば、2つの光偏向素子と偏光方向切換手段とを組合せているので、4方向に光をシフトさせることができる。
【0172】
請求項9記載の発明によれば、請求項8記載の光偏向デバイスにおいて、請求項6記載の2組の光偏向素子と1/2波長板とを組合せているので、例えば上下左右の如く4方向に光をシフトさせることができ、特に、1/2波長板として雲母、水晶を用いた場合は、これらの材料が温度による特性変動が比較的少なく安定しているため、温度変化の大きい環境での使用時に特に有用である。
【0173】
請求項10記載の発明の光偏向デバイスによれば、電界発生方向を直交させた2組の電極対を有する請求項4又は5記載の光偏向素子を用いているので、例えば上下左右の如く4方向に光をシフトさせることができ、特に、1個の光偏向素子を利用すればよいので、請求項8,9記載の発明の場合に比べて小型、低コスト化、光損失の低減を図ることができる。
【0174】
請求項11記載の発明によれば、請求項3記載の光偏向素子において、光偏向素子の構成要素である電界印加手段に関して、この電界印加手段より発せられる電圧値を低減させることができ、電源の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0175】
請求項12記載の発明によれば、請求項11記載の光偏向素子において、光偏向素子の構成要素である電界印加手段に関して、この電界印加手段より発せられる電界がより効率的に液晶に作用するため、電圧を低減させることができ、電源の小型化,低コスト化を図ることができる。
【0176】
請求項13記載の発明によれば、請求項3記載の光偏向素子において、1つの素子で効率的に光の光路を3方向以上に切換えることができる。
【0177】
請求項14記載の発明の光偏向デバイスによれば、或る方向の電界印加により光偏向を受け出射する第1の光路における成分(光量)と、光偏向を受けないか若しくは上記とは異なる方向の電界印加により異なる方向に光偏向を受け出射する第2の光路における成分(光量)との混在を大幅に低減でき、光学ノイズの少ない良好な光シフトを達成することができる。
【0178】
請求項15記載の発明の光偏向デバイスによれば、或る方向の電界印加により光偏向を受け出射する第1の光路における成分(光量)と、光偏向を受けないか若しくは上記とは異なる方向の電界印加により異なる方向に光偏向を受け出射する第2の光路における成分(光量)とを任意の割合で設定することで、偏向光量を自在に制御することができる。
【0179】
請求項16記載の発明の光偏向素子によれば、キラルスメクチックC相よりなる液晶を利用しているので、請求項1、2記載の発明の作用・効果が得られる上に、特にホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相なる液晶を利用しているので、当該素子内における光偏向量の場所によるムラを極めて小さくすることができ、光学ノイズの一層の低減を図ることができる。
【0180】
請求項17記載の発明によれば、請求項16記載の光偏向素子において、光偏向素子の構成要素である電界印加手段に関して、電極対を光路を挟む位置に設置することで、従来の光偏向素子に比較して光量損失を低減させることができる。
【0181】
請求項18記載の発明によれば、請求項16記載の光偏向素子において、光偏向素子の構成要素である電界印加手段に関して、この電界印加手段より発せられる電界がより効率的に液晶に作用するため、電圧を低減させることができ、電源の小型化,低コスト化を図ることができる。
【0182】
請求項19記載の発明の光偏向デバイスによれば、キラルスメクチックC相よりなる液晶を利用しているので、請求項1記載の発明の効果が得られる上に、ホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相なる液晶を利用しているので、請求項16記載の発明と同じく、当該素子内における光偏向量の場所によるムラを極めて小さくすることができ、光学ノイズの一層の低減を図ることができ、さらには、ここで用いる電界印加手段としては、ITO等の透明電極が好ましく、いわゆるベタ膜でも差し支えないため、電極形成が容易であり、電極がパタニングされていないため光の進行に対してモアレ等干渉が発生しにくくなり、外部電極による電界形成方法に比較して、高電圧電源が不要となり、さらに小型化に有利となる。
【0183】
請求項20記載の発明の光偏向素子によれば、キラルスメクチックC相よりなる液晶を利用しているので、請求項1,2記載の発明の効果が得られる上に、入射光に対して出射光が所定角度を持って回転し光路を切換えることが可能な素子において、その応答性の鈍さを改善することができる。
【0184】
請求項21記載の発明によれば、請求項20記載の光偏向素子において、所定の光偏向方向に対応して的確に液晶分子の配向状態を切換えることができ、効率的な光偏向を可能にすることができる。
【0185】
請求項22記載の発明の光偏向デバイスによれば、光進行方向上に所定距離を隔てて請求項20記載の光偏向素子を2組備えるので、応答速度を犠牲にせず、光偏向素子と受光部との距離を適切に選ぶことで任意の偏向量を得ることができる。
【0186】
請求項23記載の発明によれば、請求項4,5,16,17,18,20又は21記載の光偏向素子において、温度によりチルト角を制御することができ、これによって光偏向量を制御でき、また、位置制御に関しては電界による微調との組合せにより適切な光偏向を達成することができる。
【0187】
請求項24記載の発明によれば、請求項6,7又は19記載の光偏向デバイスにおいて、温度によりチルト角を制御することができ、これによって光偏向量を制御でき、また、位置制御に関しては電界による微調との組合せにより適切な光偏向を達成することができる。
【0188】
請求項25記載の発明の画像表示装置によれば、光偏向手段によりサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示させることで、画像表示素子の見掛け上の画素数を増倍して表示させる上で、ピクセルシフト素子なる光偏向手段として請求項3,4,5,11,12,13,16,17,18,20,21又は23記載の光偏向素子又は請求項6,7,8,9,10,14,19,22又は24記載の光偏向デバイスを用いているので、光の利用効率を向上させ、光源の負荷を増加することなく観察者により明るく高品質の画像を提供することができ、特に、請求項23記載の光偏向素子又は請求項24記載の光偏向デバイスを用い、光偏向位置制御を、当該光偏向素子における電極対による電界印加方向及び当該光偏向素子に対する温度制御により行うことで、適切なピクセルシフト量が保持され良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態の光偏向素子の原理的構成例を示す断面図である。
【図2】その液晶分子の電界強度による分布をモデル化して示す概略図である。
【図3】その液晶配向を模式的に示す光偏向素子の動作原理を説明するための斜視図である。
【図4】液晶ダイレクタと光偏向との関係を示し、(a)は断面構造図、(b)は液晶ダイレクタの配向状態の説明図である。
【図5】液晶膜厚と液晶配向角に対する光軸シフト量との関係を示す特性図である。
【図6】本発明の第二の実施の形態の光偏向デバイスを光偏向素子の模式的な液晶配向を併せて示す概略斜視図である。
【図7】本発明の第二の実施の形態の光偏向デバイスを光偏向素子の模式的な液晶配向を併せて示す概略斜視図である。
【図8】 本発明の第三の実施の形態の光偏向デバイスを光偏向素子の模式的な液晶配向を併せて示す概略斜視図である。
【図9】本発明の第四の実施の形態の光偏向デバイスを光偏向素子の模式的な液晶配向を併せて示す概略斜視図である。
【図10】本発明の第五の実施の形態の光偏向素子の原理的構成例を示す断面図である。
【図11】本発明の第六の実施の形態の光偏向素子の原理的構成例を示し、(a)はXZ面による断面図、(b)はYZ面による断面図である。
【図12】本発明の第七実施の形態の光偏向素子の原理的構成例を示し、(a)はXZ面による断面図、(b)はYZ面による断面図である。
【図13】本発明の第八の実施の形態の光偏向素子の原理的構成例を示す断面図である。
【図14】本発明の第九の実施の形態の光偏向素子の原理的構成例を示し、(a)はXZ面による断面図、(b)は(a)におけるA´−A線断面図である。
【図15】本発明の第十の実施の形態の光偏向素子の部分拡大図を併せて示す原理的構成例の断面図である。
【図16】その光偏向素子を用いた光偏向デバイスの構成例を示す断面図である。
【図17】その変形例を示す断面図である。
【図18】本発明の第十一の実施の形態の画像表示装置の構成例を示す概略側面図である。
【図19】その変形例を示す概略側面図である。
【図20】本発明の第十二の実施の形態の画像表示装置の構成例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
1,1A,1B 光偏向素子
2,3 基板
5 ホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶
6 電極対、電界印加手段
9,9′ 偏光方向切換手段
10 光偏向デバイス
11 電極対、電界印加手段
13 偏光方向制御手段
14 光偏光デバイス
15 偏光方向制御手段
16 光偏向デバイス
21 光偏向素子
22 電極対、電界印加手段
22a,22b 櫛歯状電極
23 光偏向素子
24 櫛歯状電極対
25 櫛歯状電極対、電界印加手段
31 光偏向素子
32 ホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶
33 光偏向素子
34 電極対、電界印加手段
36 光偏向デバイス
38 光偏向素子
42 光源
46 画像表示素子
47 光学部材
50 光偏向手段

Claims (7)

  1. 電界変化に応じて入射光に対する出射光路が変化する光偏向素子であって、透明な一対の基板と、該基板間に充填されたホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶と、前記基板面法線方向及び光偏向方向と略直交する方向に電界を発生させる電極対による電界印加手段と、を備える光偏向素子。
  2. 前記電極対は、前記光偏向素子を通る光路を挟む位置に設置した請求項1記載の光偏向素子。
  3. 前記電界印加手段は、前記基板間に設けられた1組の電極対である請求項1記載の光偏向素子。
  4. 電界変化に応じて入射光に対する出射光路が変化する光偏向素子であって、透明な一対の基板と、該基板間に充填されたホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる液晶と、一対の前記基板と前記液晶との間に形成された電極対による電界印加手段とを備えた光偏向素子を、光の入射方向が前記基板面法線方向と異なるように設置した光偏向デバイス。
  5. 前記電極対による電界発生方向及び当該素子に対する温度制御により光偏向位置を制御する光偏向位置制御手段を備える請求項1,2又は3記載の光偏向素子。
  6. 前記電極対による電界発生方向及び当該素子に対する温度制御により光偏向位置を制御する光偏向位置制御手段を備える請求項4記載の光偏向デバイス。
  7. 少なくとも、画像情報に従って光を制御可能な複数の画素を二次元的に配列した画像表示素子と、この画像表示素子を照明する光源と、前記画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学部材と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎に前記画像表示素子と前記光学部材の間の光路を偏向する請求項1,2,3若しくは5記載の光偏向素子、又は請求項4若しくは6記載の光偏向デバイスによる光偏向手段と、を備える画像表示装置。
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