JP3987151B2 - ホットメルト接着剤 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は撥水処理された布地や基材に、接着体を 130℃以下の低温で容易に接着させることのできるホットメルト接着剤に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
ネームや図柄を表示する場合、所定形状にカットしたマーキング用積層シートをホットメルト接着剤面と布地面を貼り合せて熱プレスするだけで強固に接着できる接着方式が多用され、特に釣り関係、スポーツ関係衣料で活用されている。
しかしながら、従来、シリコン・フッ素系の撥水剤で撥水処理された布地や基材に対し十分な接着力を有し、しかも130 ℃以下で接着させることができるホットメルト接着剤まだ存在しなかった。撥水処理された布地や基材に接着するホットメルト接着剤もあるにはあるが、接着温度が 130℃より高くしてプレスする必要があり、このような高温では布地・基材が劣化するおそれがある。また、接着力を向上させようとすると、接着域の撥水剤を削り落としたり、溶剤で拭き取らなければならず、結果的に布地・基材が汚染されたり、接着力にバラッキが生じる問題があった。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
このようにシリコン、フッ素系の撥水剤で撥水処理された布地等の表面撥水性の被着体に低温で容易に接着体を接着することができるホットメルト接着剤は開発されてなかった。
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであって、その目的は、前記撥水性を有する被着体に、130 ℃以下の低温で容易に接着体を接着することができるホットメルト接着剤を提供することである。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
上記課題の解決のため、ポリエステル系ホットメルトベースにグリセリン変性ロジンマレイン酸エステルを配合して得られた、溶融粘度(125℃) が１×10² 〜５×10³Pa ・ s のホットメルト接着剤の使用によってそれが可能となった。
また、上記ホットメルト接着剤には、グリセリン変性ロジンマレイン酸エステルを５〜30重量％含有させることによって上記撥水処理した被着体とマーキングシート接着体とを容易に接着することができた。
【発明の実施の形態】
本発明でポリエステル系ホットメルトベースは、飽和熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とするもので、例えばポリエチレンテレフタレート(PET) やポリブチレンテレフタレート(PBT) を主成分とするもの等が含まれる。これらは、混合や塗布作業のやり易さのため、溶媒 (例えばMEK/トルエン混合溶媒）に溶解させ、上記ホットメルト固形分が20〜40重量％含有された溶液として用いる。
【０００５】
また、グリセリン変性ロジンマレイン酸エステルは、上記ホットメルトベースに対し粘着性と溶融流動性を付与するためのものである。一般に粘着性を付与するためには、通常、ロジン又はその誘導体、テルペン系やピネン系樹脂が用いられるが、本発明においては、ポリエステル系ホットメルトベースとの相溶性が良く、粘着性と溶融流動性(125℃) が同時に付与できるため、グリセリン変性ロジンマレイン酸エステルを用いることが不可欠である。
グリセリン変性ロジンマレイン酸エステルの含有率を５重量％より少なくすると、溶融流動性が悪くなり、撥水処理された基布の織目跡に接着剤が侵入せず、接着力が小さくなり、25重量％より多くなると、溶融流動し過ぎ、しみ出し汚れを引き起こし、接着剤層が薄くなり過ぎ、接着力が小さくなるので、５〜25重量％、好ましくは８〜23重量％が適当である。
【０００６】
本発明で得られるホットメルト接着剤の溶融粘度の温度を特に125 ℃に特定しているのは、スポーツ用衣料の布地やPET シート等の被着体に接着物をホットメルト接着剤を溶融させて接着する場合が多く、この接着温度が 130℃以上では、被着体を劣化させる傾向があり、125 ℃では劣化が生じ難いことによっている。
125 ℃の溶融粘度を１×10² 〜５×10³Pa・s の範囲に特定することにより、撥水性を有する被着体の表面凹凸へ溶融接着剤が侵入し、かつ必要な接着剤層の厚み（通常40〜80μm)が確保できることとなり、目的とする接着力（１Ｎ／mm以上) が得られる。
本発明のホットメルト接着剤の使用の形態を図面で説明すると、１は本発明のホットメルト接着剤で、接着剤３を介して着色シート４を接着したマーキングシート基材２の一面に配置し、接着体（マーキングシート）７を形成しておく。この接着体７を、撥水処理５した基布６の被着体８に接着するようにする。
【０００７】
【実施例】
【実施例１】
PET 系ポリエステル樹脂を主成分とするホットメルトベースをMEK/トルエン（混合比 2/8) の混合溶媒に溶かしたもの (東洋紡社製バイロン55SS：固形分含量30重量％) に対し、グリセリン変性ロジンマレイン酸エステル (石川貿易社製FF・301)を含有率が9.1重量％ (ホットメルトベース100重量部に対し10重量部）になる量加え、均一に混合後、厚さ 100μm のPET 製シート (接着体) 上に塗布し、乾燥させて厚さ60μm のホットメルト接着剤層を形成した。
このホットメルト接着剤層の125 ℃における溶融粘度 (回転粘度による) は、8.68×102Pa・s であった。
このホットメルト接着剤層を有するPET 製シートを、フッ素樹脂にて撥水処理された被着体の布地の上に、ホットメルト接着剤面を布地の撥水処理面に当接させて置き、熱プレスで温度125 ℃、圧力500g/cm2で20秒間を２回押圧して接着させた。
１時間放置冷却後、得られた布地とPET 製シートの積層体の接着力を90度剥離にて測定したところ、1.1N/mm であった。
【０００８】
【実施例２】
PBT 系ポリエステルを主成分とするホットメルトベースをトルエンに溶かしたもの (綜研化学社製 SK ダイン5340) にし、グリセリン変性ロジンマレイン酸エステル (石川貿易社製FF-301) の配合量を、含有率が23.1重量％（ホットメルトベース100重量部に対し30重量部）になる量にした以外は、実施例１と同様にしてホットメルト接着剤及び積層体を得、得られたものの溶融粘度及び接着力を測定した。
溶融粘度は5.22×10²Pa・s 、接着力は1.0N/mm であった。
【０００９】
【比較例１】
ホットメルト接着剤として、高溶融粘度のPET 系ポリエステル樹脂を主成分とするホットメルトベースをMEK/トルエン混合溶媒に溶かしたもの (東洋紡社製バイロン20SS：固形分含量30重量％) を用いた以外は実施例２と同様にしてホットメルト接着剤及び積層体を得、得られたものの溶融粘度及び接着力を測定した。
溶融粘度は、1.48×10⁴Pa・s 、接着力は0.1N/mm であった。
【００１０】
【比較例２】
グリセリン変性ロジンマレイン酸エステル（石川貿易社製FF・301)配合量を、含有率が33.3重量％（ホットメルトベース100重量部に対し50重量部）になる量にした以外は実施例１と同様にしてホットメルト接着剤及び接着積層体を得た。得られたものの溶融粘度及び接着力を測定した。溶融粘度は8.68×10²Pa ・ s 、接着力は0.6N/mm であった。
テスト結果を表１に示す。
【００１１】
【表１】
【００１２】
【発明の効果】
本発明のホットメルト接着剤は、以上説明したように接着時の流動性が良いため、シリコン又はフッ素系の撥水剤で撥水処理された布地や基材の表面に低温で容易に接着するという顕著な効果があるので、スポーツ衣料等のマーキングシート用接着剤として特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のホットメルト接着剤断面図
【符号の説明】
１：ホットメルト接着剤
２：マーキングシート基材
３：接着剤
４：着色シート
５：撥水処理面
６：基布
７：接着体（マーキングシート）
８：被着体

Claims (2)

1. シリコン系あるいはフッ素系の撥水剤で撥水処理された撥水性を有する被着体である布地に接着体であるマーキングシートを接着するホットメルト接着剤であって、ポリエステル系ホットメルトベースにグリセリン変性ロジンマレイン酸エステルを配合してなり、且つ、125 ℃における溶融粘度が１×10² 〜５×10³Pa ・ s であることを特徴とするホットメルト接着剤。
2. グリセリン変性ロジンマレイン酸エステルの含有率が５〜25重量％である請求項１記載のホットメルト接着剤。

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