JP3986951B2 - 磁気転写用マスター担体および磁気転写方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体に情報を転写するためのパターン状の凹凸を備えた磁気転写用マスター担体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体においては一般に、情報量の増加に伴い、多くの情報を記録する大容量で、安価で、かつ、好ましくは短時間で必要な箇所が読み出せる、いわゆる高速アクセスが可能な媒体が望まれており、この一例として、ハードディスク、ZIP(アイオメガ社)等のフレキシブルディスクからなる高密度磁気記録媒体が知られている。これらの高密度磁気記録媒体は情報記録領域が狭トラックで構成されており、狭いトラック幅を正確に磁気ヘッドにより走査させて高いS/Nで信号を再生するためには、いわゆるトラッキングサーボ技術が大きな役割を担っている。
【0003】
トラック位置決めのためのサーボ信号や、そのトラックのアドレス信号、再生クロック信号等のサーボ情報は、磁気記録媒体の製造時にプリフォーマットとして予め磁気記録媒体に記録する必要があり、現在は専用のサーボ記録装置(サーボトラックライター)を用いてプリフォーマットが行われている。従来のサーボ記録装置によるプリフォーマットは、磁気記録媒体1枚ずつ、磁気ヘッドにより記録する必要があるため、相当の時間がかかり生産効率の点で問題がある。
【0004】
一方、プリフォーマットを正確にかつ効率よく行う方法として、マスター担体に形成されたサーボ情報を担持するパターンを磁気記録媒体へ磁気転写により転写する方法が、例えば特許文献1〜3等において提案されている。
【0005】
磁気転写は、転写すべき情報を担持するマスター担体を磁気ディスク媒体等の磁気記録媒体(スレーブ媒体)と密着させた状態で、転写用磁界を印加することにより、マスター担体の有する情報パターンに対応する磁気パターンをスレーブ媒体に磁気的に転写するもので、マスター担体とスレーブ媒体との相対的な位置を変化させることなく静的に記録を行うことができ、正確なプリフォーマット記録が可能であり、しかも記録に要する時間も極めて短時間であるという利点を有している。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−183623号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平10−40544号公報
【0008】
【特許文献3】
特開平10−269566号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述の特許文献2および3等に開示されている磁気転写に用いられるマスター担体は、スレーブ媒体に転写すべき情報に対応する凹凸パターンを有する基板と、該基板の少なくとも凸部表面に磁性層を備えたものである。磁気転写は、マスター担体とスレーブ媒体とを密着させて行うものであるため、凹凸パターンの凸部上に磁性層を備えてなるマスター担体を用いた場合、多数のスレーブ媒体と密着および剥離を繰り返すうちに、パターン上の磁性層等が一部欠落したり、基板から剥離することがある。
【0010】
磁性層の剥れはスレーブ媒体との密着性の悪化等に繋がり、転写信号の信号品位が低下する。また、磁性層の剥れが多くなるとマスター担体の交換が必要となるが、このマスター担体は高価なものであり、1枚のマスター担体で何枚のスレーブ媒体に転写することができるかが磁気記録媒体の製造コストを抑制するにあたって非常に重要な問題となる。
【0011】
本発明者が、磁性層が剥がれ落ちたマスター担体を観察した結果、凸部パターンの平坦部の端部における剥れが特に大きいことが明らかになった。さらに、マスター担体とスレーブ媒体との密着時の印加圧力をパラメータとし、磁性層の剥れ落ち状況を観測した結果、印加圧力が高くなるにつれて剥れの頻度が増すことが明らかになった。すなわち、磁性層の剥れが力学的な構造の弱さに起因するものである可能性が高いと推測できた。マスター担体の力学的な構造強度を支配するものとしてはパターン上に形成した磁性層厚、基板と磁性層の密着強度等が挙げられる。さらなる検討の結果、凸部パターン側面部の磁性層の膜厚が非常に薄いもしくはない場合に平坦部の端部の剥れが多発すること、すなわち、基板上に形成された磁性層の膜厚分布が構造強度の分布を発生させ、強度的に弱いに部分に力が集中し、磁性層の剥れが生じることが明らかになった。
【0012】
また一方、本発明者の検討により、マスター担体の凸部の側面に形成された磁性層の厚みが、磁気転写により磁気パターンが形成されるスレーブ媒体の再生信号の品質に大きく影響することが明らかになった。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、耐久性が向上した、磁気転写後のスレーブ媒体において良好な転写信号を得ることができる磁気転写用マスター担体および磁気転写方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の磁気転写用マスター担体は、面内磁気記録媒体に転写すべき情報に応じてトラック方向に配列されたパターン状の凹凸を有する基板と、該基板上に前記凹凸に沿って形成された磁性層とを備えてなる磁気転写用マスター担体であって、
前記基板の凸部上面に形成された前記磁性層の厚みda1と、該凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みda2とが、
0.05<da2/da1≦1.3
の関係にあることを特徴とするものである。
【0015】
上記本発明の第1の磁気転写用マスター担体においては、前記凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みda2と、前記パターン状の凹凸の、前記トラック方向に最近接する凸部間の凹部の該トラック方向の長さSとが、0.05<da2/S<0.4の関係にあることが望ましい。
【0016】
本発明の第2の磁気転写用マスター担体は、垂直磁気記録媒体に転写すべき情報に応じてトラック方向に配列されたパターン状の凹凸を有する基板と、該基板上に前記凹凸に沿って形成された磁性層とを備えてなる磁気転写用マスター担体であって、
前記基板の凸部上面に形成された前記磁性層の厚みdb1と、該凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みdb2とが、
0.1<db2/db1≦0.5
の関係にあることを特徴とするものである。
【0017】
上記本発明の第2の磁気転写用マスター担体は、前記凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みdb2と、前記パターン状の凹凸の、前記トラック方向に最近接する凸部間の凹部の該トラック方向の長さSとが、0.05<db2/S<0.4の関係にあることが望ましい。
【0018】
なお、「凸部の側面」とは、該凸部を構成する4つの側面の各側面を指すものであり、各側面に形成された磁性層の厚みがそれぞれ、凸部上面の磁性層の厚みと上記の関係にあるようにする。
【0019】
また、ここで「凹部の該トラック方向の長さS」は、凸部上面を凹部開口に延長してできる面におけるトラック方向の長さで定義するものとする。
【0020】
本発明の第1および第2の磁気転写用マスター担体においては、前記基板の前記凹部表面の前記凸部内への延長面と前記凸部の側面とのなす該凸部内側の角度θが、30度≦θ<80度であることが望ましい。
【0021】
なお、転写すべき情報は、サーボ信号であってもよい。
【0022】
また、前記磁性層は、軟磁性もしくは半硬質磁性であることが望ましい。
【0023】
本発明の第1の磁気転写方法は、面内磁気記録媒体に該面内磁気記録媒体のトラックの一方向の初期直流磁界を印加して該面内磁気記録媒体の磁性層を該トラックの一方向に初期直流磁化させた後、前記面内磁気記録媒体の磁性層と磁気転写用マスター担体の磁性層とを密着させた状態でそれらの磁性層に前記初期直流磁化の方向と逆向きの転写用磁界を印加して磁気転写を行う磁気転写方法であって、
前記磁気転写用マスター担体が、前記面内磁気記録媒体に転写すべき情報に応じたパターン状の凹凸を有する基板と、該基板上に前記凹凸に沿って形成された磁性層とを備えてなり、前記基板の凸部上面に形成された前記磁性層の厚みda1と、該凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みda2とが、
0.05<da2/da1≦1.3
の関係にあるものであることを特徴とする。
【0024】
本発明の第2の磁気転写方法は、垂直磁気記録媒体に該垂直磁気記録媒体のトラック面に垂直な一方向の初期直流磁界を印加して該垂直磁気記録媒体の磁性層を該トラック面に垂直な一方向に初期直流磁化させた後、該垂直磁気記録媒体の磁性層と磁気転写用マスター担体の磁性層とを密着させた状態でそれらの磁性層に前記初期直流磁化の方向と逆向きの転写用磁界を印加して磁気転写を行う磁気転写方法であって、
前記磁気転写用マスター担体が、前記垂直磁気記録媒体に転写すべき情報に応じたパターン状の凹凸を有する基板と、該基板上に前記凹凸に沿って形成された磁性層とを備えてなり、前記基板の凸部上面に形成された前記磁性層の厚みdb1と、該凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みdb2とが、
0.1<db2/db1≦0.5
の関係にあるものであることを特徴とする。
【0025】
【発明の効果】
面内磁気記録媒体への磁気転写に用いられる本発明の第1の磁気転写用マスター担体は、パターン状の凹凸を有する基板上に凹凸に沿って形成された磁性層が、凸部上面での厚みda1と、該凸部の側面での厚みda2とが、0.05<da2/da1≦1.3の関係となるように形成されているため、耐久性が向上し、多数のスレーブ媒体への転写が可能となり、スレーブ媒体への磁気転写時において、スレーブ媒体に良好な磁化パターンを形成することができる。良好な磁化パターンが形成されたスレーブ媒体であれば、高品位の再生信号を得ることができる。
【0026】
すなわち、面内磁気記録媒体に対する磁気転写に用いられる磁気転写用マスター担体において、da2/da1が0.05以下であると、膜剥れが多く発生し、耐久性に劣るものとなる。膜厚を厚くすればするほど磁性層の剥れは少なくなり、耐久性は飛躍的に向上する。しかしながら、da2/da1が1.3より大きいと、磁気転写の磁界印加時に、凸部上面の磁性層からスレーブ媒体側に侵入するべき磁束が凸部側面の磁性層に引き込まれやすくなり、転写磁界強度が低下して良好な信号品位を得られない。
【0027】
本発明の第1の磁気転写用マスター担体について、凸部の側面に形成された磁性層の厚みda2と、前記パターン状の凹凸の、前記トラック方向に最近接する凸部間の凹部の該トラック方向の長さSとが、0.05<da2/S<0.4を満たす関係にあるようにすれば、より転写精度を向上させることができ、より高品位の再生信号を得ることができる。
【0028】
da2/Sが0.05以下の範囲にあると、磁気転写の磁界印加時におけるマスター担体の磁性層に収束される磁束量が少なくなることによる信号品位の低下が懸念される。一方、da2/Sが0.4以上の範囲にあると磁気転写の磁界印加時に、凸部上面の磁性層からスレーブ媒体側に侵入するべき磁束が凸部側面の磁性層に引き込まれやすくなり、転写磁界強度が低下して信号品位の低下が懸念される。
【0029】
垂直磁気記録媒体への磁気転写に用いられる本発明の第2の磁気転写用マスター担体は、パターン状の凹凸を有する基板上に凹凸に沿って形成された磁性層が、凸部上面での厚みdb1と、該凸部の側面での厚みdb2とが、0.1<db2/db1≦0.5の関係となるように形成されているので、耐久性が向上し、多数のスレーブ媒体への転写が可能となり、スレーブ媒体への磁気転写時において、スレーブ媒体に良好な磁化パターンを形成することができる。良好な磁化パターンが形成されたスレーブ媒体であれば、高品位の再生信号を得ることができる。
【0030】
すなわち、垂直磁気記録媒体に対する磁気転写に用いられる磁気転写用マスター担体においては、磁性層の耐久性のみの観点から考えると、面内磁気記録媒体用の場合と同様にdb2/db1が0.05より大きければよいが、垂直磁気記録媒体への磁気転写の場合、凸部側面部に形成される磁性層に磁束を集中させることで、マスター担体のパターン凸部に対応する磁気記録媒体における磁化反転部の磁界強度を強くすることができ、本発明者の検討によりdb2/db1が0.1以下であると、転写磁界強度を十分に保つことができず、良好な信号品位が得られないことが明らかになり、また一方、db2/db1が0.5より大きくなると、凸部パターンでの磁束密度が減少し、十分な記録特性を達成することができなくなることが明らかになった。
【0031】
従って、本発明の磁気転写用マスター担体によれば、耐久性が向上して寿命が延び、より多くのスレーブ媒体への磁気転写が可能となると共に、磁気転写における転写品位を確保することができる。より多くのスレーブ媒体への磁気転写が可能となることにより、磁気転写におけるコストが削減され、プリフォーマット済みのスレーブ媒体を低価格で提供することができるようになる。
【0032】
本発明の第2の磁気転写用マスター担体について、凸部の側面に形成された磁性層の厚みdb2と、前記パターン状の凹凸の、前記トラック方向に最近接する凸部間の凹部の該トラック方向の長さSとが、0.05<db2/S<0.4を満たす関係にあるようにすれば、より転写精度を向上させることができ、より高品位の再生信号を得ることができる。
【0033】
db2/Sが0.05以下の範囲にあると、磁気転写の磁界印加時におけるマスター担体の磁性層に収束される磁束量が少なくなることによる信号品位の低下が懸念される。一方、db2/Sが0.4以上の範囲にあると磁気転写の磁界印加時に、凸部上面の磁性層への磁束密度が減少することによる記録特性の劣化が懸念される。
【0034】
なお、本発明の第1および第2の磁気転写用マスター担体において、基板の前凹部表面の凸部内への延長面と前記凸部の側面とのなす該凸部内側の角度θが、30度≦θ<80度であれば、耐久性をより向上させることができる。
【0035】
θが小さいほど耐久性が大幅に向上するが、30度より小さくなると、パターン端から発生する転写磁界が分散され、十分な信号品位を確保することができない。一方、信号品位はθが90度に近くなるほどよくなると考えられるが、80度以上であると、パターン平坦部・側面部磁性層間に転写時の圧力履歴が集中し、クラックが発生し、磁性層が剥離しやすくなるということが本発明者らの研究により明らかになった。
【0036】
本発明の磁気転写方法は、上述の本発明の磁気転写用マスター担体を用いて転写を行うものであるので、スレーブ媒体に対して良好な信号の転写を行うことができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0038】
まず、本発明の第1の実施形態による磁気転写用マスター担体として、面内磁気記録媒体に対するプリフォーマットを行うためのマスター担体について説明する。
【0039】
図1は、本実施形態の磁気転写用マスター担体の表面の一部斜視図を示し、図2は、マスター担体の凸部の一部断面図を示すものである。
【0040】
マスター担体3は、後述の図3に示すように円盤状に形成されており、表面にパターン状の凸部31が形成されてなる凹凸パターンを備えた基板3aとその凹凸パターンに沿って形成された軟磁性層3bとを備えてなる。なお、凹部には軟磁性層が形成されていなくてもよい。凹凸パターンはスレーブ媒体である磁気記録媒体に転写すべき情報に応じたものであり、その一部パターンは例えば図1に示すようなものである。図1において、矢印Xは円周方向(トラック方向)、矢印Yは半径方向を示す。
【0041】
図2は、図1に示したマスター担体3のII−II断面図を示す。すなわち、基板3aの凸部31の、該基板3aに垂直かつトラック方向Xに平行な面に沿った断面図である。本発明のマスター担体においては、基板3aの凸部31の上面の軟磁性層の厚みda1と、凸部31の側面31sの軟磁性層の厚みda2(凸部上面と平行面での寸法)とが、0.05<da2/da1≦1.3の関係となるように、軟磁性層3bが形成されている。なお、凸部31の側面として、図2にはトラック方向側面について図示したが、凸部31を形成する4つの側面、すなわちトラック方向側面2面、半径方向Yの側面2面いずれの箇所に設けられている軟磁性層についてもその厚さが、凸部31上面の軟磁性層の厚さとの関係が上記式を満たすように形成されている。
【0042】
マスター担体3は、軟磁性層3bが、凸部上面と側面の層厚みが上記関係となるように形成されていることにより、耐久性を向上させることができると共に、面内磁気記録媒体への良好な再生信号品位を有する磁気パターンの転写が可能となる。
【0043】
なお、本実施形態においてはマスター担体の基板3aの凹凸パターンが、その凹部表面41の凸部31内への延長面41eと凸部31の側面31sとのなす該凸部31内側の角度θが、30度≦θ<80度を満たすように形成されている。
【0044】
さらには、凸部31の側面31sに形成された磁性層の厚みda2は、トラック方向Xに沿って形成された凹凸パターンの最近接の凸部間の凹部のトラック方向Xの長さSとの関係において、0.05<da2/S<0.4の範囲となるように形成されている。ここで「凹部のトラック方向の長さ」は、凸部上面を凹部開口に延長してできる面におけるトラック方向の長さで、該凹部を挟む凸部の上面端部間のトラック方向距離に相当するものである。特に、ここでは長さSを、凸部間の凹部のうち、最も短い長さの凹部についてのもので定義するものであり、本実施形態においては、図2中に示す最近接の凸部間の凹部のトラック方向長さ(凸部上面端部間のトラック方向距離)がSである。現実のパターンにおいては、凹部のトラック方向長さには種々の長さのものが存在するが、そのうち最短のものをSとする。
【0045】
マスター担体3の基板3aとしては、ニッケル、シリコン、石英板、ガラス、アルミニウム、セラミックス、合成樹脂等が用いられる。また、軟磁性層3bの磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)を用いることができ、特に好ましいのはFeCo、FeCoNiである。なお、基板上に配される磁性層としては、軟磁性を例に挙げたが、半硬質磁性であってもよい。軟磁性もしくは半硬質磁性等の保磁力の小さい磁性層を用いることにより、より良好な転写を行うことができる。さらには、基板上に配される磁性層は、基板の飽和磁化よりも高い飽和磁化値を有するものであることが好ましい。
【0046】
マスター担体3のパターン状凸部(凹凸パターン)の形成は、スタンパー法、フォトリソグラフィー法等を用いて行うことができる。
【0047】
まず、表面が平滑なガラス板(または石英板)の上にスピンコート等でフォトレジストを形成し、このガラス板を回転させながらサーボ信号に対応して変調したレーザー光(または電子ビーム)を照射し、フォトレジスト全面に所定のパターン、例えば各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号に相当するパターンを円周上の各フレームに対応する部分に露光し、その後、フォトレジストを現像処理し、露光部分を除去しフォトレジストによる凹凸形状を有する原盤を得る。次に、原盤の表面の凹凸パターンをもとに、この表面にメッキ(電鋳)を施し、ポジ状凹凸パターンを有するNi基板を作製し、原盤から剥離する。この基板をそのままマスター担体とするか、または凹凸パターン上に必要に応じて軟磁性層、保護膜を被覆してマスター担体とする。
【0048】
また、前記原盤にメッキを施して第2の原盤を作製し、この第2の原盤を使用してメッキを行い、ネガ状凹凸パターンを有する基板を作製してもよい。さらに、第2の原盤にメッキを行うか樹脂液を押し付けて硬化を行って第3の原盤を作製し、第3の原盤にメッキを行い、ポジ状凹凸パターンを有する基板を作製してもよい。
【0049】
一方、前記ガラス板にフォトレジストによるパターンを形成した後、エッチングしてガラス板に穴を形成し、フォトレジストを除去した原盤を得て、以下前記と同様に基板を形成するようにしてもよい。
【0050】
金属による基板の材料としては、前述の通り、NiもしくはNi合金等を使用することができ、この基板を作製する前記メッキとしては、無電解メッキ、電鋳、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法が適用できる。基板の凸部高さ(凹凸パターンの深さ)は、50〜800nmの範囲が好ましく、より好ましくは80〜600nmである。この凹凸パターンがサンプルサーボ信号である場合は、円周方向よりも半径方向に長い矩形状の凸部が形成される。具体的には、半径方向の長さは0.05〜20μm、円周方向は0.05〜5μmが好ましく、この範囲で半径方向の方が長い形状となる値を選ぶことがサーボ信号の情報を担持するパターンとして好ましい。
【0051】
基板の凹凸パターン上への軟磁性層3bの形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などを用いて行う。軟磁性層の厚み(凸部上面の磁性層の厚み)は、50〜500nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは80〜300nmである。なお、既述の通り、基板の凸部上の軟磁性層の厚みda1と凸部側面の軟磁性層の厚みda2とが、0.05<da2/da1≦1.3の関係となるように形成する。なお、スパッタリングを用いて磁性層を形成する場合、da1、da2の関係を制御するためには、コリメータを用いたスパッタ方法を用いること、あるいは、スパッタ投入電力を調整して、基板に到達するスパッタ粒子のモビリティを低減することが有効である。当然ながら、コリメータを用いると同時に、スパッタ投入電力を調整してda1、da2の関係を制御してもよい。
【0052】
なお、この凸部表面の軟磁性層の上に5〜30nmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の保護膜を設けることが好ましく、さらに潤滑剤層を設けても良い。また、軟磁性層と保護膜の間に、Si等の密着強化層を設けてもよい。潤滑剤を設けることにより、スレーブ媒体との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などを抑制し、耐久性をより向上させることができる。
【0053】
次に、本発明の磁気転写用マスター担体を用いてスレーブ媒体へ情報を転写する磁気転写方法の実施形態について説明する。
【0054】
図3は、スレーブ媒体2とマスター担体3、4とを示す斜視図である。スレーブ媒体は、例えば、両面または片面に磁気記録層が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状磁気記録媒体である。また、本実施形態においては、円盤状の基板2aの両面にそれぞれ面内磁気記録層2b,2cが形成されたものを示している。
【0055】
また、マスター担体3は上記実施形態に示したものであり、スレーブ媒体2の下側記録層2b用の凹凸パターンが形成されている。また、マスター担体4は、マスター担体3と同様の層構成からなる、スレーブ媒体2の上側記録層2c用の凹凸パターンが形成されたものである。
【0056】
図3では、磁気記録媒体2とマスター担体3,4が互いに離間した状態を示しているが、実際の磁気転写は、磁気記録媒体2の記録再生面とマスター担体3,4の軟磁性層3b、4bとを密着させて、あるいは近接して対面させた状態で行う。
【0057】
図4は、面内磁気記録媒体への磁気転写の基本工程を説明するための図であり、図4(a)は磁界を一方向に印加してスレーブ媒体を初期直流磁化する工程、(b)はマスター担体とスレーブ媒体とを密着させて初期直流磁界とは略反対方向に磁界を印加する工程、(c)は磁気転写後のスレーブ媒体の記録再生面の状態をそれぞれ示す図である。なお、図4においてスレーブ媒体2についてはその下面記録層2b側のみを示している。
【0058】
図4(a)に示すように、予めスレーブ媒体2にトラック方向の一方向の初期直流磁界Hinを印加して磁気記録層2bの磁化を初期直流磁化させておく。その後、図4(b)に示すように、このスレーブ媒体2の記録層2b側の面とマスター担体3の凸部表面の軟磁性層3b側の面とを密着させ、スレーブ媒体2のトラック方向に前記初期直流磁界Hinとは逆方向の転写用磁界Hduを印加して磁気転写を行う。その結果、図4(c)に示すように、スレーブ媒体2の磁気記録層2bにはマスター担体3の凹凸パターンに応じた情報(例えばサーボ信号)が磁気的に転写記録される。ここでは、スレーブ媒体2の下側記録層2bへの下側マスター担体3による磁気転写について説明したが、磁気記録媒体2の上側記録再生面2c(図3参照)についても上側マスター担体4と密着させて同様に磁気転写を行う。なお、磁気記録媒体2の上下記録再生面2b、2cへの磁気転写は同時になされてもよいし、片面ずつ順次なされてもよい。
【0059】
また、マスター担体3の凹凸パターンが図4のポジパターンと逆の凹凸形状のネガパターンの場合であっても、初期磁界Hinの方向および転写用磁界Hduの方向を上記と逆方向にすることによって同様の情報を磁気的に転写記録することができる。なお、初期直流磁界および転写用磁界は、スレーブ媒体の保磁力、マスター担体およびスレーブ媒体の比透磁率等を勘案して定められた値を採用する必要がある。
【0060】
次に、本発明の第2実施形態による磁気転写用マスター担体として、垂直磁気記録媒体に対するプリフォーマットを行うためのマスター担体について説明する。
【0061】
図5は、垂直磁気記録媒体用のマスター担体13についての基板13aの凸部32の、該基板13aに垂直かつトラック方向Xに平行な面に沿った断面図である。本発明のマスター担体においては、基板13aの凸部32の上面の軟磁性層の厚みdb1と、凸部32の側面32sの軟磁性層の厚みdb2(凸部上面と平行面での寸法)とが、0.1<db2/db1≦0.5の関係となるように、軟磁性層13bが形成されている。なお、凸部32を構成する4つの側面のいずれについてもそれぞれの軟磁性層13bの厚みが、凸部32の上面の軟磁性層13bの厚みに対して上記式の関係を満たすように形成されている。作製方法は、上記の面内磁気記録媒体用のマスター担体の場合と同様である。
【0062】
マスター担体13は、軟磁性層13bが、凸部上面と側面の層厚みが上記関係となるように形成されていることにより、耐久性を向上させることができると共に、垂直磁気記録媒体への良好な再生信号品位を有する磁気パターンの転写が可能となる。
【0063】
なお、本実施形態においてはマスター担体の基板13aの凹凸パターンが、その凹部表面42の凸部32内への延長面42eと凸部32の側面32sとのなす該凸部31内側の角度θが、30度≦θ<80度を満たすように形成されている。
【0064】
さらには、凸部32の側面32sに形成された磁性層の厚みdb2は、トラック方向Xに沿って形成された凹凸パターンの最近接の凸部間の凹部のトラック方向Xの長さSとの関係において、0.05<db2/S<0.4の範囲となるように形成されている。ここで「凹部のトラック方向の長さ」は、凸部上面を凹部開口に延長してできる面におけるトラック方向の長さで、該凹部を挟む凸部の上面端部間のトラック方向距離に相当するものである。特に、ここでは長さSを、凸部間の凹部のうち、最も短い長さの凹部についてのもので定義するものであり、本実施形態においては、図5中に示す最近接の凸部間の凹部のトラック方向長さ(凸部上面端部間のトラック方向距離)がSである。現実のパターンにおいては、凹部のトラック方向長さには種々の長さのものが存在するが、そのうち最短のものをSとする。
【0065】
図6は、この磁気転写の基本工程を説明するための図であり、図6(a)は磁界を一方向に印加してスレーブ媒体を初期直流磁化する工程、(b)はマスター担体とスレーブ媒体とを密着して初期直流磁界とは反対方向に磁界を印加する工程、(c)は磁気転写後の状態をそれぞれ示す図である。なお、図6においてスレーブ媒体2についてはその下面記録層12b側のみを示している。
【0066】
図6(a)に示すように、予めスレーブ媒体12に初期直流磁界Hinをトラック面に垂直な一方向に印加して磁気記録層12bの磁化を初期直流磁化させておく。その後、図6(b)に示すように、このスレーブ媒体12の記録層12b側の面とマスター担体13の凸部表面の軟磁性層13b側の面とを密着させ、スレーブ媒体12のトラック面に垂直な方向に前記初期直流磁界Hinとは逆方向の転写用磁界Hduを印加して磁気転写を行う。その結果、図6(c)に示すように、スレーブ媒体12の磁気記録層12bにはマスター担体13の凸部パターンに応じた情報(例えばサーボ信号)が磁気的に転写記録される。ここでは、スレーブ媒体12の下側記録層12bへの下側マスター担体13による磁気転写について説明したが、第1の実施形態の場合と同様に、スレーブ媒体12の上側記録層についても上側マスター担体と密着させて下側記録層と同様にして、該下側記録層と同時に磁気転写を行う。
【0067】
また、マスター担体13の凹凸パターンが図6のポジパターンと逆の凹凸形状のネガパターンの場合であっても、初期磁界Hinの方向および転写用磁界Hduの方向を上記と逆方向にすることによって同様の情報を磁気的に転写記録することができる。なお、初期直流磁界および転写用磁界は、スレーブ媒体の保磁力、マスター担体およびスレーブ媒体の比透磁率等を勘案して定められた値を採用する必要がある。
【0068】
なお、第1および第2の実施形態において、スレーブ媒体2、12としては、ハードディスク、高密度フレキシブルディスクなどの円盤状磁気記録媒体が使用され、その磁気記録層としては、塗布型磁気記録層あるいは金属薄膜型磁気記録層が形成されているものを用いる。なお、面内磁気記録媒体2は、磁気記録層がトラック方向に対して平行な方向に磁化容易軸を有する磁気異方性を備えているものであり、一方、垂直磁気記録媒体12は、磁気記録層がトラック面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有する磁気異方性を備えているものである。
【0069】
なお、金属薄膜型磁気記録層を備えた磁気記録媒体の場合、磁性材料として、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi、Co/Pd等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi)を用いることができる。磁性層としては、磁束密度が大きいこと、面内記録なら面内方向、垂直記録なら垂直方向の磁気異方性を有することが、明瞭な転写を行えるため好ましい。好ましい磁性層厚は10nm以上、500nm以下であり、さらに好ましくは20nm以上、200nm以下である。
【0070】
また、磁性層の下(基板側)には、該磁性層に必要な磁気異方性を持たせるために非磁性の下地層を設けることが好ましい。下地層としては、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru、Pd等を用いることができるが、結晶構造および格子定数が、その上に設けられる磁性層の結晶構造および格子定数と一致するものを選択する必要がある。好ましい非磁性層の厚みは、10nm以上、150nm以下であり、さらに好ましくは20nm以上、80nm以下である。
【0071】
さらに、垂直磁気記録媒体の場合には、磁性層の垂直磁化状態を安定化させ、記録再生時の感度を向上させるために非磁性の下地層の下に軟磁性の裏打ち層を設けてもよい。この裏打ち層としては、NiFe、CoCr、FeTaC、FeAlSi等を用いることができる。好ましい裏打ち層の厚みは、50nm以上、2000nm以下であり、さらに好ましくは80nm以上、400nm以下である。
【0072】
【実施例】
次に、本発明の磁気転写用マスター担体の実施例および比較例を用いて磁気転写を行い、転写信号の品位およびマスター担体の耐久性について評価を行った結果を説明する。評価方法は次の通りである。
【0073】
<信号品位評価方法>
電磁変換特性測定装置(協同電子製SS-60)を用いてスレーブ媒体の転写信号の評価を行った。ヘッドには、再生ヘッドギャップ:0.12μm、再生トラック幅0.41μm、記録ヘッドギャップ0.2μm、記録トラック幅0.67μmであるGMRヘッドを使用した。読み込み信号をスペクトロアナライザーで周波数分解し、1次信号のピーク強度(C)と外挿した媒体ノイズ(N)の差(C/N)を測定した。従来行われている方法である同ヘッドによる信号記録を行い、該信号を再生して得られたC/N値を0dBとし、この値に対する、磁気転写により形成記録された信号からの再生信号の相対値(ΔC/N)を求め、ΔC/Nが−1.5dBより大きければ良好(○)、−3.0〜−1.5dBであれば可(△)、−3.0未満であれば不良(×)と評価した。
【0074】
<耐久性評価方法>
マスター担体とスレーブ媒体とを接触圧力0.49MPa(5.0kgf/cm2)とし、1000回接触・剥離を繰り返した後、マスター担体表面を、微分干渉型顕微鏡で480倍の拡大率でランダムに500視野観測し、この500視野中に凸部上面および凸部側面の磁性層の摩耗・亀裂箇所が2箇所以下であれば、良好な磁気転写が可能な状態(○)、3箇所〜5箇所であれば磁気転写が可能な状態(△)、6箇所以上であれば磁気転写精度が不良となる状態(×)と評価した。
【0075】
次に、実施例および比較例として使用したマスター担体について説明する。
【0076】
各実施例および比較例のマスター担体の基板としては、スタンパー作製法を用いて作製したNi基板を用いた。具体的には、円盤中心から半径方向20〜40mmの範囲に、トラック幅1.0μm、トラックピッチ1.1μm、最内周である半径方向20mm位置でビット長が0.2μmである凹凸パターン信号が、凸部高さ0.2μmで形成されたNi基板を用いた。
【0077】
このNi基板上に軟磁性層FeCo30at%層を25℃で形成した。スパッタによる軟磁性層形成時のArスパッタ圧は、1.44×10-1Pa(1.08mTorr)とし、投入電力は2.80W/cm2とした。
【0078】
面内磁気記録媒体用のマスター担体として実施例1〜11および比較例1、2を作製し、垂直磁気記録媒体用のマスター担体として実施例12〜22および比較例3、4を作製した。
【0079】
まず、面内磁気記録媒体用のマスター担体の実施例と比較例およびその評価について説明する。実施例1〜11および比較例1、2は、面内磁気記録媒体用のマスター担体であり、それぞれ凸部上面の磁性層厚da1と側面の磁性層厚da2との比da2/da1、最近接凸部間の凹部のトラック方向長さSと側面の磁性層厚da2との比da2/S、側面の傾きθの少なくとも一つが異なるように作製されたものである。
【0080】
実施例1のマスター担体は、基板の凹凸パターンが、凸部の側面と、凹部表面の前記凸部内への延長面とのなす、該凸部内側の角度θが45度となるように形成され、該基板上に、磁性層が、凸部上面の磁性層厚da1と側面の磁性層厚da2との比da2/da1が0.5、凸部間の距離Sと側面の磁性層厚da2との比da2/Sが0.2となるように形成されている。
【0081】
実施例2のマスター担体は、da2/da1が0.06であること以外は実施例1と同じである。
【0082】
実施例3のマスター担体は、da2/da1が1.3であること以外は実施例1と同じである。
【0083】
実施例4のマスター担体は、da2/Sが0.09であること以外は実施例1と同じである。
【0084】
実施例5のマスター担体は、da2/Sが0.35であること以外は実施例1と同じである。
【0085】
実施例6のマスター担体は、da2/Sが0.04であること以外は実施例1と同じである。
【0086】
実施例7のマスター担体は、da2/Sが0.42であること以外は実施例1と同じである。
【0087】
実施例8のマスター担体は、基板の凸部側面の角度θが35度であること以外は実施例1と同じである。
【0088】
実施例9のマスター担体は、基板の凸部側面の角度θが75度であること以外は実施例1と同じである。
【0089】
実施例10のマスター担体は、基板の凸部側面の角度θが25度であること以外は実施例1と同じである。
【0090】
実施例11のマスター担体は、基板の凸部側面の角度θが85度であること以外は実施例1と同じである。
【0091】
比較例1のマスター担体は、da2/da1が0.04であること以外は実施例1と同じである。
【0092】
比較例2のマスター担体は、da2/da1が1.5であること以外は実施例1と同じである。
【0093】
実施例1〜11および比較例1、2の磁気転写用マスター担体のスレーブ媒体としては、飽和磁化Ms:5.7T(4500Gauss)、保磁力Hc:199kA/m(2500Oe)の3.5インチ型の円盤状の面内磁気記録媒体を用いた。この面内磁気記録媒体は、真空成膜装置(芝浦メカトロニクス:S-50Sスパッタ装置)において、室温にて1.33×10-5Pa(1×10-4mTorr)まで減圧した後に、アルゴンを導入して0.4Pa(3.0mTorr)とした条件下で、ガラス板を200℃に加熱し、CrTiを30nm、CoCrPtを30nm順次積層して作製した。
【0094】
実施例1〜11および比較例1、2のマスター担体を用いて上述のスレーブ媒体に対する面内磁気記録媒体用の磁気転写を行い、既述の信号品位評価および耐久性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
表1に示すとおり、実施例1〜11のように、本発明のマスター担体の条件である0.05<da2/da1≦1.3を満たすものは、信号品位および耐久性についていずれも可以上の評価が得られ、一方、上記範囲を満たさない比較例1および2は、信号品位、耐久性のいずれかにおいて不良との評価となった。また、実施例1〜11において、0.05<da2/da1≦1.3、0.05<da2/S<0.4および30度≦θ<80度の3つの条件を同時に満たす実施例1〜5、8および9は信号品位、耐久性とも良好の評価が得られ、最も好ましいことが明らかになった。0.05<da2/S<0.4のみ満たさない実施例6、7は信号品位が可、30度≦θ<80度のみ満たさない実施例10、11は、信号品位、耐久性のいずれか一方で可の評価であった。
【0096】
次に、垂直磁気記録媒体用のマスター担体およびその評価について説明する。実施例12〜22および比較例3、4は、垂直磁気記録媒体用のマスター担体であり、それぞれ凸部上面の磁性層厚db1と側面の磁性層厚db2との比db2/db1、最近接凸部間の凹部のトラック方向長さSと側面の磁性層厚db2との比db2/S、側面の傾きθの少なくとも一つが異なるように作製されたものである。
【0097】
実施例12のマスター担体は、実施例1と同一形状であるが、垂直磁気記録媒体用であり、基板の凹凸パターンが、凸部の側面と、凹部表面の前記凸部内への延長面とのなす、該凸部内側の角度θが45度となるように形成され、該基板上に、磁性層が、凸部上面の磁性層厚db1と側面の磁性層厚db2との比db2/db1が0.11、凸部間の距離Sと側面の磁性層厚db2との比がdb2/Sが0.2となるように形成されている。
【0098】
実施例13のマスター担体は、db2/db1が0.3であること以外は実施例12と同じである。
【0099】
実施例14のマスター担体は、db2/db1が0.49であること以外は実施例12と同じである。
【0100】
実施例15のマスター担体は、db2/Sが0.09であること以外は実施例12と同じである。
【0101】
実施例16のマスター担体は、db2/Sが0.35であること以外は実施例12と同じである。
【0102】
実施例17のマスター担体は、db2/Sが0.04であること以外は実施例12と同じである。
【0103】
実施例18のマスター担体は、db2/Sが0.42であること以外は実施例12と同じである。
【0104】
実施例19のマスター担体は、基板の凸部側面の角度θが35度であること以外は実施例12と同じである。
【0105】
実施例20のマスター担体は、基板の凸部側面の角度θが75度であること以外は実施例12と同じである。
【0106】
実施例21のマスター担体は、基板の凸部側面の角度θが25度であること以外は実施例12と同じである。
【0107】
実施例22のマスター担体は、基板の凸部側面の角度θが85度であること以外は実施例12と同じである。
【0108】
比較例3のマスター担体は、db2/db1が0.1であること以外は実施例12と同じである。
【0109】
比較例4のマスター担体は、db2/db1が0.7であること以外は実施例12と同じである。
【0110】
実施例12〜22および比較例3、4の磁気転写用マスター担体のスレーブ媒体としては、飽和磁化Ms:5.7T(4500Gauss)、保磁力Hc:199kA/m(2500Oe)の3.5インチ型の円盤状の垂直磁気記録媒体を用いた。この垂直磁気記録媒体は、真空成膜装置(芝浦メカトロニクス:S-50Sスパッタ装置)において、室温にて1.33×10-5Pa(1×10-4mTorr)まで減圧した後に、アルゴンを導入して0.4Pa(3.0mTorr)とした条件下で、ガラス板を200℃に加熱し、NiFeを100nm、CrTiを30nm、CoCrPtを30nm順次積層して作製した。
【0111】
実施例12〜22および比較例3、4のマスター担体を用いて上述のスレーブ媒体に対する垂直磁気記録媒体用の磁気転写を行い、既述の信号品位評価および耐久性の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0112】
【表2】
表2に示すとおり、実施例12〜22のように、本発明のマスター担体の条件である0.1<db2/db1≦0.5を満たすものは、信号品位および耐久性についていずれも可以上の評価が得られ、一方、上記範囲を満たさない比較例1および2は、信号品位、耐久性のいずれかにおいて不良との評価となった。また、実施例12〜22において、0.1<db2/db1≦0.5、0.05<db2/S<0.4および30度≦θ<80度の3つの条件を同時に満たす実施例12〜16、19および20は信号品位、耐久性とも良好の評価が得られ、最も好ましいことが明らかになった。0.05<db2/S<0.4のみ満たさない実施例17、18は信号品位が可、30度≦θ<80度のみ満たさない実施例21、22は、信号品位、耐久性のいずれか一方で可の評価であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気転写用マスター担体の表面の一部斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る磁気転写用マスター担体の一部断面図
【図3】スレーブ媒体とマスター担体とを示す斜視図
【図4】面内磁気記録媒体への磁気転写方法の基本工程を示す図
【図5】本発明の第2の実施形態に係る磁気転写用マスター担体の一部断面図
【図6】垂直磁気記録媒体への磁気転写方法の基本工程を示す図
【符号の説明】
2 スレーブ媒体(面内磁気記録媒体)
2a スレーブ媒体の基板
2b,2c 磁性層(磁気記録層)
3,4 マスター担体
3a,4a マスター担体の基板
3b,4b 軟磁性層
12 スレーブ媒体(垂直磁気記録媒体)
12a スレーブ媒体の基板
12b 磁性層(磁気記録層)
13 マスター担体
13a マスター担体の基板
13b 軟磁性層
31 マスター担体3の基板の凸部
32 マスター担体13の基板の凸部
Claims (12)
- 面内磁気記録媒体に転写すべき情報に応じてトラック方向に配列されたパターン状の凹凸を有する基板と、該基板上に前記凹凸に沿って形成された磁性層とを備えてなる磁気転写用マスター担体であって、
前記基板の凸部上面に形成された前記磁性層の厚みda1と、該凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みda2とが、
0.05<da2/da1≦1.3
の関係にあることを特徴とする面内磁気記録媒体への磁気転写用マスター担体。 - 前記凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みda2と、前記パターン状の凹凸の、前記トラック方向に最近接する凸部間の凹部の該トラック方向の長さSとが、
0.05<da2/S<0.4
の関係にあることを特徴とする請求項1記載の磁気転写用マスター担体。 - 前記基板の前記凹部表面の前記凸部内への延長面と前記凸部の側面とのなす該凸部内側の角度θが、
30度≦θ<80度
であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気転写用マスター担体。 - 前記転写すべき情報が、サーボ信号であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の磁気転写用マスター担体。
- 前記磁性層が、軟磁性もしくは半硬質磁性であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の磁気転写用マスター担体。
- 垂直磁気記録媒体に転写すべき情報に応じてトラック方向に配列されたパターン状の凹凸を有する基板と、該基板上に前記凹凸に沿って形成された磁性層とを備えてなる磁気転写用マスター担体であって、
前記基板の凸部上面に形成された前記磁性層の厚みdb1と、該凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みdb2とが、
0.1<db2/db1≦0.5
の関係にあることを特徴とする垂直磁気記録媒体への磁気転写用マスター担体。 - 前記凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みdb2と、前記パターン状の凹凸の、前記トラック方向に最近接する凸部間の凹部の該トラック方向の長さSとが、
0.05<db2/S<0.4
の関係にあることを特徴とする請求項6記載の磁気転写用マスター担体。 - 前記基板の前記凹部表面の前記凸部内への延長面と前記凸部の側面とのなす該凸部内側の角度θが、
30度≦θ<80度
であることを特徴とする請求項6または7記載の磁気転写用マスター担体。 - 前記転写すべき情報が、サーボ信号であることを特徴とする請求項6から8いずれか1項記載の磁気転写用マスター担体。
- 前記磁性層が、軟磁性もしくは半硬質磁性であることを特徴とする請求項6から9いずれか1項記載の磁気転写用マスター担体。
- 面内磁気記録媒体に該面内磁気記録媒体のトラックの一方向の初期直流磁界を印加して該面内磁気記録媒体の磁性層を該トラックの一方向に初期直流磁化させた後、前記面内磁気記録媒体の磁性層と磁気転写用マスター担体の磁性層とを密着させた状態でそれらの磁性層に前記初期直流磁化の方向と逆向きの転写用磁界を印加して磁気転写を行う磁気転写方法であって、
前記磁気転写用マスター担体が、前記面内磁気記録媒体に転写すべき情報に応じたパターン状の凹凸を有する基板と、該基板上に前記凹凸に沿って形成された磁性層とを備えてなり、前記基板の凸部上面に形成された前記磁性層の厚みda1と、該凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みda2とが、
0.05<da2/da1≦1.3
の関係にあるものであることを特徴とする面内磁気記録媒体への磁気転写方法。 - 垂直磁気記録媒体に該垂直磁気記録媒体のトラック面に垂直な一方向の初期直流磁界を印加して該垂直磁気記録媒体の磁性層を該トラック面に垂直な一方向に初期直流磁化させた後、該垂直磁気記録媒体の磁性層と磁気転写用マスター担体の磁性層とを密着させた状態でそれらの磁性層に前記初期直流磁化の方向と逆向きの転写用磁界を印加して磁気転写を行う磁気転写方法であって、
前記磁気転写用マスター担体が、前記垂直磁気記録媒体に転写すべき情報に応じたパターン状の凹凸を有する基板と、該基板上に前記凹凸に沿って形成された磁性層とを備えてなり、前記基板の凸部上面に形成された前記磁性層の厚みdb1と、該凸部の側面に形成された前記磁性層の凸部上面と平行面での厚みdb2とが、
0.1<db2/db1≦0.5
の関係にあるものであることを特徴とする垂直磁気記録媒体への磁気転写方法。
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