JP2006202401A - 磁気転写用マスターディスク、磁気記録媒体、及び磁気記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気転写を行う際の、マスターディスクの反りや歪や板厚偏差による影響を排除し、正確な磁化パターンの転写を行う。
【解決手段】外形が円盤状であり、その表面に多数の微細な磁性層パターンが形成されている磁気転写用マスターディスク46において、磁性層パターンの外径サイズd(mm)とディスク厚さt(mm)との関係を、2.04×10-3×d+0.006≦t≦8.15×10-3×d+0.024とする。
【選択図】 図1
【解決手段】外形が円盤状であり、その表面に多数の微細な磁性層パターンが形成されている磁気転写用マスターディスク46において、磁性層パターンの外径サイズd(mm)とディスク厚さt(mm)との関係を、2.04×10-3×d+0.006≦t≦8.15×10-3×d+0.024とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、磁気転写用マスターディスク、磁気記録媒体、及び磁気記録装置に係り、特に、ハードディスク装置等に用いられる磁気ディスクに、フォーマット情報等の磁気情報パターンを転写するのに好適な磁気転写用マスターディスク、該マスターディスクにより磁気転写された磁気記録媒体、及び該磁気記録媒体を備える磁気記録装置に関する。
近年、急速に普及しているハードディスクドライブに使用される磁気ディスク(ハードディスク)は、磁気ディスクメーカーよりドライブメーカーに納入された後、ドライブに組み込まれる前に、フォーマット情報やアドレス情報が書き込まれるのが一般的である。この書き込みは、磁気ヘッドにより行うこともできるが、これらのフォーマット情報やアドレス情報が書き込まれているマスターディスクより一括転写する方法が効率的であり、好ましい。
この磁気転写技術は、マスターディスクと被転写ディスク(スレーブディスク)とを密着させた状態で、片側又は両側に電磁石装置、永久磁石装置等の磁界生成手段を配設して転写用磁界を印加し、マスターディスクの有する情報(たとえばサーボ信号)に対応する磁化パターンの転写を行うものである。
このような磁気転写を確実に行うためには、マスターディスクとスレーブディスクとの密着状態を良好にすることが求められ、このため、従来より各種構成のものが提案されている(たとえば、特許文献1等。)。この特許文献1の提案は、一対のホルダユニットによりマスターディスクを保持し、ロボットハンドにより一対のマスターディスクの間にスレーブディスクを供給した後、スレーブディスクの両面にマスターディスクを圧接させ挟持させながら転写用磁界を印加する装置に関するものである。
特開2004−87099号公報
しかしながら、上記のような磁気転写方法においても、マスターディスクに反りや歪や板厚偏差が存在すると、マスターディスクとスレーブディスクとの密着状態を良好にすることができず、良好な磁気転写を行えないという問題がある。
すなわち、マスターディスクは、表面に微細な凹凸状パターンが形成された原盤の表面形状を電鋳により転写して形成されるのが一般的であるが、電鋳の際に、電流密度分布や膜応力を生じ易く、出来上がったマスターディスクに反りや歪や板厚偏差が存在することが多い。
そのため、これらの欠陥を緩和すべく、マスターディスクの裏面に緩衝材(クッション材)を配したり、マスターディスクの裏面に機械加工を施して、板厚偏差を無くすようにしたり、各種対応策が採られているが、これらの欠陥が完全に解決された訳ではない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、磁気転写を行う際の、マスターディスクの反りや歪や板厚偏差による影響を排除し、正確な磁化パターンの転写が行えるようにした磁気転写用マスターディスク、該マスターディスクにより磁気転写された磁気記録媒体、及び該磁気記録媒体を備える磁気記録装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、外形が円盤状であり、その表面に多数の微細な磁性層パターンが形成されている磁気転写用マスターディスクにおいて、前記磁性層パターンの最外周の外径サイズd(mm)とマスターディスク厚さt(mm)との関係が、2.04×10-3×d+0.006≦t≦8.15×10-3×d+0.024となっていることを特徴とする磁気転写用マスターディスクを提供する。
本発明によれば、磁性層パターンの最外周の外径サイズdとマスターディスク厚さtとの関係が適正範囲にあるので、磁気転写を行う際に、マスターディスクが被転写ディスク(スレーブディスク)になじむように変形し、これにより、マスターディスクの反りや歪や板厚偏差による影響が排除され、正確な磁化パターンの転写が行える。
この最外周の外径サイズdとマスターディスク厚さtとの関係は、たとえば外径21.6mm(公称0.85インチ)のスレーブディスク用のマスターディスクでは、マスターディスク厚さtの適正範囲が50〜200μmである。
本発明において、前記磁性層パターンがサーボ情報のパターンを含むことが好ましい。また、本発明において、前記磁性層パターンが反強磁性結合を生じる磁性層パターンであることが好ましい。
このような反強磁性結合を生じる磁性層を有するマスターディスクは、高密度記録が可能であるうえ、熱安定性が高いため、本発明の効果を一層発揮できる。
また、本発明は、前記の磁気転写用マスターディスクの表面に被転写用磁気記録媒体を密着させる密着工程と、磁界生成手段を設け、前記被転写用磁気記録媒体と前記マスターディスクの円周方向に磁界を加え、前記マスターディスクの磁気パターンを前記被転写用磁気記録媒体に転写させる磁気転写工程と、を経て磁気記録されたことを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
このようなマスターディスクであれば、スレーブディスクとの密着状態を良好にでき、欠陥がなく、良好な精度で磁気転写が行え、C/N比の良好な磁気記録媒体(スレーブディスク)が得られる。
また、本発明は、前記の磁気記録媒体を備えたことを特徴とする磁気記録装置を提供する。このような磁気記録媒体を使用すれば、C/N比の良好な磁気記録装置(ハードディスクドライブ等)が得られる。
以上説明したように、本発明によれば、マスターディスクとスレーブディスクとを密着させる際に生じる、マスターディスクの反りや板厚偏差による歪や変形を吸収し、マスターディスクとスレーブディスクとの密着状態を良好にできる。
その結果、欠陥がなく、良好な精度で磁気転写が行え、C/N比の良好な磁気記録媒体(スレーブディスク)が得られる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る磁気転写用マスターディスク、磁気記録媒体、及び磁気記録装置の好ましい実施の形態(第1実施形態)について詳説する。図1は、本発明に係るマスターディスクの平面図である。図2は、マスターディスク46の表面の微細な突起状パターンを示す部分拡大斜視図である。
図1に示されるように、マスターディスク46は円盤状に形成されており、マスターディスク46の径方向中周部分(マスターディスク46の内周部分46dと外周部分46eを除いた部分)には、円周方向に、ハッチングで示されるサーボ領域46bと非サーボ領域46c(非ハッチング部分)とが交互に形成されている。
サーボ領域46bは、磁気パターン(サーボ情報パターン)が形成されている領域であり、非サーボ領域46cは、磁気パターン(サーボ情報パターン)が形成されていない領域である。
このマスターディスク46は、内径を有する円環状(ドーナツ状)であるが、内径を有しない円盤状のものであってもよい。
マスターディスク46において、磁性層パターンであるサーボ領域46bの外径サイズd(mm)とマスターディスク厚さt(mm)との関係は、2.04×10-3×d+0.006≦t≦8.15×10-3×d+0.024となっている。
このように、磁性層パターンの外径サイズdとマスターディスク厚さtとの関係が適正範囲にあるので、磁気転写を行う際に、マスターディスク46がスレーブディスク40(図3及び図5参照)になじむように変形し、これにより、マスターディスク46の反りや歪や板厚偏差による影響が排除され、正確な磁化パターンの転写が行える。
この外径サイズdとマスターディスク厚さtとの関係は、たとえば外径21.6mm(公称0.85インチ)のスレーブディスク用のマスターディスクでは、マスターディスク厚さtの適正範囲が50〜200μmである。
マスターディスク厚さtが50μm未満では、ハンドリング性に劣り、取り扱い時に変形が生じ易く、そのためにスレーブディスクとの密着性が劣る。また、再現性も悪い。一方、マスターディスク厚さtが200μm超では、ハンドリング性は良好になるが、曲げ剛性が大きくなり過ぎて、磁気転写時にスレーブディスクとの密着性が劣る。マスターディスク厚さtの最適範囲が存在する原因は明確ではないが、曲げ剛性が半径の3乗に比例することがこのような効果を生み出している可能性が高い。
更に、外径サイズdとマスターディスク厚さtとの関係は、外径48mm(公称1.8インチ)のスレーブディスク用のマスターディスクでは、マスターディスク厚さtの適正範囲が104〜415μmであり、外径65mm(公称2.5インチ)のスレーブディスク用のマスターディスクでは、マスターディスク厚さtの適正範囲が139〜554μmである。
図2は、サーボ領域46bの部分拡大図であり、基板47の片面に磁性層48による微細な突起状パターンが形成された転写情報担持面が形成されており、基板47の反対側の面が不図示の密着手段に保持されるようになっている。この微細な突起状パターンの形成は、後述するフォトファブリケーション法等によりなされる。このマスターディスク46の片面(転写情報担持面)は、スレーブディスク40と密着される面である。
微細な突起状パターンは、平面視で長方形であり、厚さtの磁性層48が形成された状態で、トラック方向(図中の太矢印方向)の長さbと、半径方向の長さlとよりなる。この長さbとlの最適値は、記録密度や記録信号波形等により異なるが、たとえば、長さbを80nmに、長さlを200nmにできる。
この微細な突起状パターンはサーボ信号の場合は、半径方向に長く形成される。この場合、たとえば、半径方向の長さlが30〜200nm、トラック方向(円周方向)の長さが0.02〜1μmであることが好ましい。この範囲で半径方向の方が長いパターンを選ぶことが、サーボ信号の情報を担持するパターンとしては好ましい。
基板27表面の微細な突起状パターンの深さ(突起の高さ)は、30〜800nmの範囲が好ましく、100〜600nmの範囲がより好ましい。
マスターディスク46において、基板47がNi等を主体とした強磁性体の場合には、この基板47のみで磁気転写が可能であり、磁性層48は被覆しなくてもよいが、転写特性のよい磁性層48を設けることにより、より良好な磁気転写が行える。基板47が非磁性体の場合には、磁性層48を設けることが必要である。マスターディスク46の磁性層48は、保磁力Hcが48kA/m(≒600Oe)以下の軟磁性層であることが好ましい。
マスターディスク46の基板47としては、ニッケル、シリコン、石英ガラス等各種組成のガラス、アルミニウム、合金、各種組成のセラミックス、合成樹脂等が使用できる。この基板47表面の凹凸パターンの形成は、フォトファブリケーション法や、フォトファブリケーション法等で形成した原盤によるスタンパー法、等によって行える。
スタンパー法における原盤の形成は、たとえば、以下のように行える。表面が平滑なガラス板(又は石英ガラス板やシリコン板)の上にスピンコート法等によりフォトレジストの層を形成し、プレベーク後に、このガラス板を回転させながら、サーボ信号に対応して変調したレーザー光(又は電子ビーム)を照射し、フォトレジスト層の略全面に所定のパターン、たとえば各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号に相当するパターンを円周上の各フレームに対応する部分に露光する。
その後、フォトレジストの層を現像処理し、露光部分が除去されたフォトレジストの層により形成された凹凸形状を有するガラス原盤を得る。次いで、ガラス原盤の表面の凹凸パターンを基に、この表面にメッキ(電鋳)を施し所定厚さまで形成することにより、表面にポジ状の凹凸パターンを有するNi基板を作成する。そして、この基板をガラス原盤から剥離する。
この基板をそのまま原盤とするか、凹凸パターン上に必要に応じて軟磁性層、保護膜等を被覆して原盤とする。
また、ガラス原盤にメッキを施して、電鋳により第2の原盤を作成し、この第2の原盤に更にメッキを施して、電鋳によりネガ状凹凸パターンを有する反転原盤を作成してもよい。更に、第2の原盤にメッキを施して電鋳を行うか、低粘度の樹脂を押し付けて硬化させるかした、第3の原盤を作成し、第3の原盤にメッキを施して電鋳を行い、ポジ状凹凸パターンを有する基板を作成してもよい。
基板の材料としては、金属ではNi又はNi合金を使用することができる。この基板を作成するメッキ法としては、無電解メッキ、電鋳、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法等が適用できる。
磁性層48(軟磁性層)の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などにより成膜する。磁性層48の磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)を用いることができる。特に、FeCo、FeCoNiが好ましく用いることができる。磁性層48の厚さtは、50nm〜500nmの範囲が好ましく、100nm〜400nmの範囲が更に好ましい。
なお、磁性層48の上にカーボン膜、特に、ダイヤモンドライクカーボン等の保護膜を設けることが好ましく、保護膜の上に更に潤滑剤層を設けてもよい。この場合、保護膜として厚さが3〜30nmのダイヤモンドライクカーボン膜と潤滑剤層とする構成が好ましい。また、磁性層48と保護膜との間に、Si等の密着強化層を設けてもよい。潤滑剤は、スレーブディスク40との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などの耐久性の劣化を改善する効果を有する。
マスターディスク46として、前記の原盤を用いて樹脂基板を作製し、その表面に磁性層を設けて形成してもよい。樹脂基板の樹脂材料としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン及びポリエステルなどが使用できる。
このうち、耐湿性、寸法安定性及び価格などの点からポリカーボネートが好ましい。成形品にバリがある場合は、これをバーニシュ又は研磨加工により除去する。また、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などを使用して、原盤にスピンコート、バーコート等の塗布によりマスターディスク46を形成してもよい。樹脂基板のパターン突起の高さは、50〜1000nmの範囲が好ましく、100〜500nmの範囲が更に好ましい。
この樹脂基板の表面の微細パターンの上に磁性層48を被覆しマスターディスク46を得る。磁性層48の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜方法、メッキ法などによる成膜方法で行える。
一方、マスターディスク46の形成方法の1種であるフォトファブリケーション法は、以下の手順で行う。先ず、たとえば、平板状の基板の平滑な表面にフォトレジストを塗布し、サーボ信号のパターンに応じたフォトマスクを用いた露光、現像処理により、情報に応じたパターンを形成させる。
次いで、エッチング工程により、パターンに応じて基板のエッチングを行い、磁性層48の厚さに相当する深さの穴を形成する。次いで、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜方法、メッキ法等により、形成した穴に対応した厚さで基板の表面まで磁性材料を成膜する。
次いで、フォトレジストをリフトオフ法で除去し、表面を研磨して、バリがある場合には、これを取り除くとともに、表面を平滑化する。
次に、マスターディスク46の磁性層パターンを被転写用ディスク(スレーブディスク)に転写する磁気転写方法について説明する。図3は、本発明に係るマスターディスク46を使用して磁気転写を実施するための磁気転写装置10の要部斜視図である。
磁気転写装置10において、磁気転写時には、図5(a)に示される後述する初期直流磁化を行った後の、スレーブディスク(被転写用ディスク)40のスレーブ面(磁気記録面)を、マスターディスク46の情報担持面に接触させ、所定の押圧力で密着させることができるようになっている。そして、このスレーブディスク40とマスターディスク46との密着状態で、磁界生成手段30により転写用磁界を印加してサーボ信号等の磁化パターンを転写記録することができるようになっている。
次に、スレーブディスク40について説明する。スレーブディスク40は、両面又は片面に磁気記録層が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状磁気記録媒体であり、マスターディスク46に密着させる以前に、グライドヘッド、研磨体などにより表面の微小突起又は付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシィング等)が必要に応じて施される。また、スレーブディスク40には予め初期磁化が施される。この詳細は後述する。
スレーブディスク40としては、ハードディスク、高密度フレキシブルディスク等の円盤状磁気記録媒体が使用できる。スレーブディスク40の磁気記録層には、塗布型磁気記録層、メッキ型磁気記録層、又は金属薄膜型磁気記録層が採用できる。
金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi)を用いることができる。これらは、磁束密度が大きいこと、磁界印加方向と同じ方向(面内記録なら面内方向)の磁気異方性を有していることより、明瞭な転写が行えるため好ましい。
そして磁性材料の下(支持体側)に必要な磁気異方性を付与するために、非磁性の下地層を設けることが好ましい。この下地層には、結晶構造と格子定数を磁性層48に合わすことが必要である。そのためには、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等を用いることが好ましい。
マスターディスク46による磁気転写は、図3に示されるように、スレーブディスク40の片面にマスターディスク46を密着させて片面に逐次転写を行う場合と、スレーブディスク40の両面にそれぞれマスターディスク46、46を密着させて両面で同時転写を行う場合とがある。なお、マスターディスク46には、スレーブディスク40と密着させる前に、付着した塵埃を除去するクリーニング処理が必要に応じて施される。
転写用磁界を印加する磁界生成手段30は、密着手段に保持されたスレーブディスク40及びマスターディスク46の半径方向に延びるギャップ31を有するコア32にコイル33が巻き付けられた電磁石装置34、34が上下両側に配設されてなり、上下で同じ方向にトラック方向と平行な磁力線G(図4参照)を有する転写用磁界を印加できるようになっている。この図4は、転写用磁界の印加方法を示す平面図であり、円周トラック40A、40A…と磁力線G、G…との関係を示す。
磁界印加時には、スレーブディスク40及びマスターディスク46を一体に回転させつつ磁界生成手段30によって転写用磁界を印加し、マスターディスク46の転写情報をスレーブディスク40のスレーブ面に磁気的に転写記録できるように回転手段が設けられている。なお、この構成以外に、磁界生成手段30を回転移動させるように設ける構成も採用できる。
転写用磁界は、スレーブディスク40の保磁力Hcの0.6〜1.3倍の範囲が好ましい。
次に、上記のように構成された磁気転写装置10による磁気転写方法について説明する。
図5は、磁気転写方法の基本工程を示す図である。図5のうち(a)は、磁場を一方向に印加してスレーブディスク40を初期直流磁化する工程を、(b)は、マスターディスク46とスレーブディスク40とを密着して反対方向に磁界を印加する工程を、(c)は、は磁気転写後の状態をそれぞれ示す。また、図6は、図5(b)における磁気転写の状態を説明する斜視図である。なお、各図は模式図であり各部の寸法は実際とは異なる比率で示している。
先ず、図5(a)に示されるように、スレーブディスク40に初期磁界Hiをトラック方向(円周方向)の一方向に印加して予め初期磁化(直流消磁)を行う。この初期磁化の磁界Hiは、スレーブディスク40の保磁力Hc以上であることが好ましく、スレーブディスク40の保磁力Hcの2倍以上であることがより好ましい。
次いで、図5(b)及び図6に示されるように、このスレーブディスク40のスレーブ面(磁気記録面)とマスターディスク46の基板47の微細凹凸パターンに磁性層48が被覆されてなる情報担持面とを密着させ、スレーブディスク40のトラック方向に初期磁界Hiとは逆方向に転写用磁界Hdを印加して磁気転写を行う。
スレーブディスク40とマスターディスク46とを密着させる際、従来のマスターディスクでは、マスターディスクに反りや板厚偏差による歪や変形を生じていると、スレーブディスク40とマスターディスクとの密着性を確保するのが困難である。
すなわち、マスターディスクの厚さが大きいと、剛性が高く、マスターディスクがスレーブディスクの形状に倣うことが困難であり、局所的にスレーブディスク40とマスターディスクとの密着性が確保されず、その結果、転写不良による信号抜けや、PES(Positive Error Signal )劣化が発生する。
これに対し、本発明のマスターディスク46によれば、ディスクの厚さtが適正であるので、マスターディスク46の反りや板厚偏差による歪や変形があっても、マスターディスク46とスレーブディスク40との密着状態を良好にできる。
磁気転写の結果、図5(c)に示されるように、スレーブディスク40のスレーブ面(トラック)にはマスターディスク46の情報担持面の磁性層48の密着凸部と凹部空間との形成パターンに応じた磁化パターンが転写記録される。
なお、マスターディスク46の基板47の凹凸パターンが、図5のポジパターンと逆の凹凸形状のネガパターンの場合であっても、初期磁界Hiの方向及び転写用磁界Hdの方向をこれと逆方向にすることによって、同様の磁化パターンが転写記録できる。
磁気転写されたスレーブディスク40は、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)に組み込んで好適に使用できる。これに使用されるハードディスクドライブとしては、各ドライブメーカーより販売されている公知の各種装置を使用すればよい。
以上、本発明に係る磁気転写用マスターディスク、磁気記録媒体、及び磁気記録装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本実施形態において、マスターディスク46の裏面の加工は行っていないが、マスターディスク46の裏面に機械加工等を施して、板厚偏差を無くすようにする態様も採用できる。
また、既述したように、マスターディスク46は、内径を有する円環状(ドーナツ状)のものであるが、内径を有しない円盤状のものであってもよい。
更に、上記実施形態においては、スレーブディスク40(密着したマスターディスク46も)を連続回転させながら、磁界生成手段30によりスレーブディスク40に磁気転写を行っているが、スレーブディスク40及びマスターディスク46への磁界印加を円周方向に1周以上行った後に、磁界強度を所定値まで減少させ、その後にスレーブディスク40及びマスターディスク46の回転を停止させる構成も採用できる。
このように、円周方向に1周分の転写後に、磁界強度を所定値まで漸減させ、しかる後に回転を停止させるのであれば、転写精度が受ける影響は非常に少なくなり、再生信号のC/N比は良好になる。
以下に説明する条件で、各種外径サイズd及び各種板厚tの組み合わせのマスターディスク46を作製し、磁界生成手段30を使用してスレーブディスク40に磁気転写を行い、各条件における転写後のスレーブディスク40の再生信号のモジュレーションを評価した。
マスターディスク46は、Niスタンパー法により作製した。このマスターディスク46は、図2に示されるような微細な突起状パターンのサイズとして、トラック方向の長さbが100nmで、半径方向の長さlが200nmのものを図7の表に示される位置(ビット形成半径)に形成したものである。
真空成膜装置を使用して、室温下で1.33×10-5Pa(10-7Torr)まで減圧した後に、アルゴンガスを導入して0.4Pa(3×10-3Torr)とした条件下で、Ni基盤上に厚さ200nmのFeCo膜(軟磁性層)を形成し、マスターディスク46とした。このマスターディスク46の保磁力Hcは8kA/m(100Oe)、磁束密度Msは2.2T(22000Gauss)であった。
スレーブディスク40は、薄膜のガラスハードディスクとした。真空成膜装置を使用して、室温下で1.33×10-5Pa(10-7Torr)まで減圧した後に、アルゴンガスを導入して0.4Pa(3×10-3Torr)とした条件下で、ガラス板を200℃に加熱し、CrTi60nm、CoCrPt25nm、磁束密度Msが5.7T(4500Gauss)、保磁力Hcが199kA/m(2500Oe)の各種外径サイズのハードディスクを作製した。
磁気転写は、図3に示される構成及び図5に示されるフローで行った。先ず、ピーク磁界強度がスレーブディスク40の表面において、スレーブディスク40の保磁力Hcの2倍の398kA/m(5000Oe)となるように、リング型ヘッド電磁石装置34を配置して、スレーブディスク40の初期直流磁化を行った。
次に、初期直流磁化したスレーブディスク40とマスターディスク46とを密着させて、ピーク磁界強度がスレーブディスク40の表面において207kA/m(2600Oe)となるように、電磁石装置34の電流を調整して配置した。
このとき、密着状態のスレーブディスク40とマスターディスク46とを移動させて、電磁石装置34により、初期直流磁化とは逆向きに転写磁界を印加して磁気転写を行った。なお、スレーブディスク40とマスターディスク46との密着は、ゴム板を挟んでアルミニウム板上から加圧した。
電磁変換特性測定装置(協同電子社製SS−60)によりスレーブディスク40の転写信号の評価を行った。ヘッドには、再生ヘッドギャップが0.24μm、再生トラック幅が1.9μm、記録ヘッドギャップが0.4μm、記録トラック幅が2.4μmであるMRヘッドを使用した。転写後の再生信号の1周分のモジュレーション(VMAX −VMIN )/(VMAX +VMIN )を測定した。
実施例の条件を図7の表に、実施例の結果を図8のグラフに示す。図7の表のディスク厚さtは、マスターディスク46の直径サイズに応じたサイズの「下限」、「上限」、「中」、「過厚」、及び「過薄」の5種類の分類されている。
図8のグラフの横軸は、マスターディスク46の直径(mm)であり、縦軸は、マスターディスク46のディスク厚さt(mm)である。このグラフにおいて、各点の右脇の数値が各サイズのマスターディスク46により磁気転写されたスレーブディスク40を測定した結果(モジュレーション(VMAX −VMIN )/(VMAX +VMIN ))である。
本発明で規定する最適範囲のモジュレーション(VMAX −VMIN )/(VMAX +VMIN )は、いずれも良好な値を示しており、これ以外の範囲のモジュレーション(VMAX −VMIN )/(VMAX +VMIN )は、いずれも劣っていることが読み取れる。これにより、本発明の効果が確認できた。
なお、本発明の範囲にある上記のスレーブディスク40を、ドライブメーカより販売されている磁気記録装置(ハードディスクドライブ)に組み込んで(既存のハードディスクと置き換えて)特性を評価したところ、良好なトラッキング特性が得られた。
10…磁気転写装置、22、24、26…磁界生成手段、30…磁界生成手段、31…ギャップ、32…コア、33…コイル、34…電磁石装置、40…スレーブディスク(被転写用ディスク)、45…長スリット、46…マスターディスク、46b…サーボ領域、46c…非サーボ領域、47…基板、48…磁性層、49…短スリット
Claims (5)
- 外形が円盤状であり、その表面に多数の微細な磁性層パターンが形成されている磁気転写用マスターディスクにおいて、
前記磁性層パターンの最外周の外径サイズd(mm)とマスターディスク厚さt(mm)との関係が、
2.04×10-3×d+0.006≦t≦8.15×10-3×d+0.024
となっていることを特徴とする磁気転写用マスターディスク。 - 前記磁性層パターンがサーボ情報のパターンを含む請求項1に記載の磁気転写用マスターディスク。
- 前記磁性層パターンが反強磁性結合を生じる磁性層パターンである請求項1又は2に記載の磁気転写用マスターディスク。
- 前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気転写用マスターディスクの表面に被転写用磁気記録媒体を密着させる密着工程と、
磁界生成手段を設け、前記被転写用磁気記録媒体と前記マスターディスクの円周方向に磁界を加え、前記マスターディスクの磁気パターンを前記被転写用磁気記録媒体に転写させる磁気転写工程と、
を経て磁気記録されたことを特徴とする磁気記録媒体。 - 前記請求項4に記載の磁気記録媒体を備えたことを特徴とする磁気記録装置。
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