JP3982666B2 - キャパシタ電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のキャパシタセルを直列接続して1つのモジュールを構成し、複数のキャパシタモジュールを直列接続してなるキャパシタ電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は初期化と満充電検出を独立に行える並列モニタの構成例を示す図、図11は並列モニタの制御回路の構成例を示す図であり、C、C1、C2はキャパシタセル、CMP1、CMP2はコンパレータ、Dはダイオード、Vr1は設定初期化電圧、Vr2は設定満充電電圧、S1はスイッチ、Trはパワートランジスタ、Rsは抵抗を示す。
【0003】
複数の大容量のキャパシタを組み合わせて蓄電装置を構成する際に不可欠な条件として、キャパシタの直列接続時に生ずる、負担電圧の均等化の問題がある。本発明者らはかねてから、電気二重層キャパシタを用い電子回路を組み合わせたECS(Energy Capacitor System)と称する蓄電システムを提案し(例えば岡村廸夫著「電気二重層キャパシタと蓄電システム」日刊工業新聞社1999年3月31日初版第1刷発行 p6〜14、p145〜159参照)、実用に供している。ECSでは、直列接続される個々のキャパシタに電圧監視制御装置としての並列モニタを接続して初期化、満充電の検出を行い、キャパシタの耐電圧の範囲で最大限の充電が可能となるようにしている。
【0004】
蓄電システム(ECS)が工業化の段階に入り、その普及のためにはコストの低減が望まれているが、特に比較的小容量であっても大量生産される応用システムでは製造原価を1円でも安くするため、キャパシタの低価格化とともにECSに必須である並列モニタの低価格化が求められるようになった。最新の並列モニタは、例えば初期化と満充電検出を独立に行えるように初期化用と満充電検出用に2つのコンパレータを有し、初期化損失を低減し、任意の使用状態で少しずつ初期化する手法などを採用している。その構成例を示したのが図10である。この並列モニタでは、スイッチS1をオンにした初期化時に、設定初期化電圧Vr1になると、設定初期化電圧Vr1を検出する初期化用のコンパレータCMP1によりトランジスタTrを制御して充電電流をバイパスし、充電時に設定満充電電圧Vr2になると、設定満充電電圧Vr2を検出する満充電検出用のコンパレータCMP2より満充電信号を充電器に送出する。このような並列モニタに対応して、充電器は、全体の充放電状態における電圧に基づき初期化が必要であればスイッチS1をオンにし、満充電信号を受けて充電を停止させる。
【0005】
並列モニタは、直列に接続された蓄電用大容量キャバシタの単セルCの一個づつに並列に接続されるから、その電位はキャパシタの充電レベルにしたがって個々にずれている。そのため、全体のシステム構成は図11に示すように、それぞれの並列モニタに対してフォトカプラのような直流電圧に対するアイソレータを接続し、それらを介して信号の授受を行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、並列モニタを安価にするには、モノリックICにすることが有効であるが、現状では並列モニタが上記のように高機能化されると、充電制御を行う充電器との間で信号の授受が必要になるので、キャパシタの電圧をカバーするアイソレータが不可欠であり、キャパシタ単セルごとに対応するモニタと二つの特別なアイソレータを必要としていた。このような並列モニタのコストを低減するには、ICのパッケージの数を減らすとともにICのピン数を減らし、アイソレーションを不要にすることができれば効果的である。図11に示す例は、そのために各並列モニタあたり3本のピンで制御用の信号と満充電信号を特別なアイソレータを介してやり取りできるようにしたもので、別途に特許出願(例えば特願平11−9974号)されている。ECSでは、キャパシタ毎に大電力大電流が流れ、充電やキャパシタの状態によって刻々とセル間の電位が変化するので、これまでは図11のような構成が最善と考えられていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するものであって、並列モニタの集積度を上げてコストの低減を図ると共に、特別なアイソレータを不要とするものである。
【0008】
そのために本発明は、複数のキャパシタセルを直列接続して1つのモジュールを構成し、複数のキャパシタモジュールを直列接続してなるキャパシタ電源装置であって、前記各キャパシタセルに対し設定された初期化電圧で充電電流をバイパスする初期化及び満充電電圧で満充電信号を取り出す満充電検出を行う並列モニタを備え、該並列モニタを前記モジュール毎にまとめて集積化したことを特徴とするものである。
【0009】
前記並列モニタは、各キャパシタの端子間に接続される一対の入力端子と、前記一対の入力端子に接続され端子電圧を検出して初期化電圧を判定しキャパシタの充電電流をバイパスする初期化回路と、前記一対の入力端子に接続され端子電圧を検出して満充電電圧を判定する満充電検出回路と、前記初期化の選択信号を入力し前記満充電信号を取り出す信号端子とを備え、前記信号端子から前記選択信号を入力して前記初期化回路による初期化を行い、前記満充電検出回路により前記満充電電圧を判定して前記満充電信号を前記信号端子から取り出すように構成したことを特徴とし、直列接続されたキャパシタの上下の電位間で縦続接続して信号を授受する信号伝達回路に前記信号端子を接続したことを特徴とし、直列接続されたモジュールの上下の電位間で縦続接続して信号を授受する信号伝達回路に前記信号端子を接続したことを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係るキャパシタ電源装置の実施の形態を説明するための図であり、11〜1n、21〜2nはコンパレータ、C1〜Cnはキャパシタ、Vr11〜Vr1nは設定初期化電圧、Vr21〜Vr2nは設定満充電電圧、Q1〜Qnはパワートランジスタを示す。
【0011】
本発明の実施の形態を説明する前提として、次のように考える。まず、現在用いられているECS用キャパシタは電気二重層を応用したもので、静電容量密度は極めて大きいが耐電圧は2.3〜2.7Vのものがほとんどであるので、並列モニタの実用設定は作動電圧を2〜3Vで考え、そこから満充電電圧の1/4くらいまで放電させ、その間の電力を利用するものとする。
【0012】
図1において、キャパシタC1〜Cnは、直列に接続して1つのモジュールとして構成するものであり、電源装置としては、さらに複数のモジュールを直列接続して構成する。コンパレータ11〜1n、21〜2n、設定初期化電圧Vr11〜Vr1n、設定満充電電圧Vr21〜Vr2n、パワートランジスタQ1〜Qnは、並列モニタを構成するものであり、モジュール単位で集積化し、あるいはパワートランジスタQ1〜Qnを集積回路の外付けにする場合もある。コンパレータ11〜1nは、それぞれ設定初期化電圧Vr11〜Vr1nを検出して充電電流をバイパスするパワートランジスタQ1〜Qnを制御する初期化回路を構成し、コンパレータ21〜2nは、それぞれ設定満充電電圧Vr21〜Vr2nを検出し、満充電信号を取り出す。初期化回路のコンパレータ11〜1nに入力される信号Iniは初期化を選択する信号であり、初期化を実行するか実行しないかを制御する例えばオン/オフ(H/L)の信号である。満充電検出回路から取り出される信号Fulは、充電器に充電を停止するための信号として送出するものであり、例えば各並列モニタが満充電を検出したときにLとなる信号をワイヤードオア接続すると、いずれかのキャパシタが満充電になれば充電器の充電を停止させることができる。
【0013】
図1に示す例では、構成を簡明に示すため、モジュール内の複数個の並列モニタのうち最上部(n)と最下部(1)にあたる各1個分を示している。実際には、この間に、集積度と回路間の耐電圧が許す限りの個数が挿入される。実際の接続で、上のキャパシタCnの−端子とその下に接続されるキャパシタCn−1(図示省略)の+端子は共通で、ICから引き出される線は各キャパシタC1〜Cnに1本である。ICの一番下に接続されるキャパシタC1の−端子と最上部のキャパシタCnの+端子の間の電圧は、常に、その間に直列に接続されるキャパシタC1〜Cnの電圧の合計値となる。
【0014】
OPアンプなどに見られるアナログICの構成上、耐電圧は36V程度であるから、キャパシタの最大電圧が3Vであれば、図1に示す構成で好ましくは6〜8個、最大で10〜12個の収容が可能となる。例えばn番目のユニットについてみると、そのマイナス端子側の電位は、図1の右下の接地点を基準にすると、Cn−1までのキャパシタの合計電圧に伴って上下する。仮にn=10とすれば、前述の条件からこの電圧の変動範囲は10〜30V程度であるので、その条件下での初期化信号Iniの挿入、満充電信号Fulの取り出しは、オープンコレクタあるいは定電流回路などの従来知られた技術で実現可能である。
【0015】
上記のように本発明によれば、複数の、例えば10個(n=10)のキャパシタについて図1に示すモジュールを1個接続し、それを図11と同様にフォトカプラなどの特別なアイソレータを介してシステムにまとめることができるので、ICのパッケージとアイソレータの負担はシステム全体では1/10となり、実装の簡素化も寄与してコストの低減につながる。
【0016】
なおICを作る上の便宜とチップ面積、発熱などの処理からバイパス用のパワートランジスタQ1〜Qnを外部に出して、トランジスタ・アレイなどとする方が得策な場合もあり、バイパス用のパワートランジスタQ1〜Qnを外部に引き出して別置きにすることも一つの方法である。
【0017】
図2は各モジュールとの初期化信号及び満充電信号の授受を行う信号伝達回路の構成例を示す図であり、Q11〜Q1n、Q21〜Q2nはトランジスタ、G11〜G1n電流源、R11〜R1n、R21〜R2n、R31〜R3nは抵抗、sig1〜signは信号端子を示す。
【0018】
図1に示した構成では、キャパシタ・モジュールの中の最上部のキャパシタCnの+端子は、そのさらに上に繋がれるキャパシタの−端子と同電位になる。したがって、モジュールの中で上から下まで電位間で信号を授受できるようにしておけば、それを直列にした全システムの上から下まで格別のアイソレータを置かずに初期化信号と満充電信号をやり取りすることもできる。この考え方に基づいた制御回路の構成例を示したのが図2である。
【0019】
図2において、module−1〜nは、直列接続されたキャパシタの上下の電位間で縦続接続して信号を授受する信号伝達回路であり、電流モードのアイソレータである。module−1で示した回路を最下段のキャパシタC1に対応させ、その上に積み重ねるキャパシタも同様にし、module−nで示した回路を最上段のn番目のキャパシタCnに対応させる。そして、端子sig1をキャパシタC1のIni及びFulの信号端子に、端子signをキャパシタCnのIni及びFulの信号端子にそれぞれ接続して、cont Iniに初期化の選択信号を入力し、detから満充電信号を取り出す。
【0020】
図2に示す制御回路による初期化の選択及び満充電信号の取り出しは以下のようにして行われる。まず、初期化の制御は、cont IniをHレベルからLレベルに下げて与える。トランジスタQ11〜Q1n、Q21〜Q2nにおいて、cont IniによりトランジスタQ11のベースをHレベルにすると、トランジスタQ11〜Q1nがオンになり、トランジスタQ21〜Q2nがオフになるので、端子sig1〜sign、detはすべてHレベルになる。cont IniによりトランジスタQ11のベースをHレベルからLレベルに下げると、トランジスタQ11〜Q1nとトランジスタQ21〜Q2nのオン、オフが反転するので、端子sig1〜sign、detはすべてLレベルになる。この端子sig1〜signのLレベルの信号によりそれぞれのキャパシタC1〜Cnの並列モニタを初期化モードに選択する。初期化モードが選択されると、各キャパシタC1〜Cnの並列モニタは設定初期化電圧で初期化を実行する。
【0021】
満充電信号を取り出しは、初期化モードが選択されていない状態、つまりcont IniをHレベルにし、端子sig1〜signの信号をHレベルにした状態で、各キャパシタのすべての並列モニタで論理ORをとり、その結果を図2の右上の最上部のmodule−nの信号端子detから取り出す。つまり、各キャパシタのいずれかが満充電になり、対応する端子sig1〜signがMレベルに落ちると、それより後段の端子sig1〜signもMレベルに落ちるので、信号端子detがMレベルになるのを監視することで、全直列接続キャバシタのいずれかで満充電信号Fを発していることが検知できる。
【0022】
通常の利用形態では、信号cont IniをLにしている最中、つまり初期化モードの最中に、同時に満充電信号Fの発生を検出する必要はないから、上記のような動作で充分である。したがって、上記のように信号端子sig1を初期化の選択信号を入力する端子として、その信号cont IniがLのとき初期化を実行し、cont IniがHのとき信号端子detを満充電信号Fの取り出し端子として、HからMになったとき満充電を検出することができる。
【0023】
図3は3ピン構成の並列モニタの構成例を示す図であり、Mは並列モニタ、C1はキャパシタ、Q1〜Q4はトランジスタ、X1、X2はシャントレギュレータ、D1はダイオード、QPは光トランジスタ、DPは発光ダイオード、R1〜R12、RCは抵抗、P1〜P3は接続ピンを示す。
【0024】
図3(A)において、キャパシタC1は、電力を貯蔵するために直列に多数接続される例えば電気二重層キャパシタである。並列モニタMは、接続ピンP1、P2を入力端子としてキャパシタC1の端子間に並列に接続し、接続ピンP3を信号端子として初期化モードの選択と満充電信号の取り出しを行う、3ピンの接続ピンP1〜P3を有し、キャパシタC1の初期化時には初期化電圧に達すると所定の充電電流をバイパスし、満充電に達すると満充電信号を取り出すものである。並列モニタMは、初期化時に所定の充電電圧を検出して充電電流をバイパスする初期化回路と満充電電圧を検出して満充電信号を取り出す回路とを有し、初期化時には、所定の充電電流をバイパスすることにより、早く初期化電圧に達したキャパシタの充電を遅らせ、初期化電圧に達するのが遅いキャパシタとのバラツキをなくすようにする。したがって、初期化電圧は、満充電電圧以下の電圧に設定する。
【0025】
並列モニタMにおいて、初期化回路は、トランジスタQ1〜Q3、シャントレギュレータX1、抵抗R1〜R4により構成し、トランジスタQ3がオンのとき、つまり接続ピンP3がLレベルのときに初期化を実行する。初期化を実行する場合には、抵抗R3とR4からなる分圧回路とシャントレギュレータX1により端子電圧の検出、判定を行い、初期化動作でトランジスタQ1により充電電流をバイパスする。シャントレギュレータX1は、抵抗R3とR4からなる分圧回路を制御入力に接続してコンパレータとして動作し、トランジスタQ3がオンになってバイアスがかかっているときにキャパシタC1の端子電圧が所定の電圧(初期化電圧Vini )に達するとオンになる回路(例えばTI社製のTL431、NEC社製のC1944など)である。このシャントレギュレータX1がオンになると、トランジスタQ1、Q2をオンにして抵抗R1により決まる電流でキャパシタC1の充電電流をバイパスする。
【0026】
満充電信号を取り出す回路は、シャントレギュレータX2、抵抗R5〜R7により構成し、抵抗R6とR7からなる分圧回路とシャントレギュレータX2により端子電圧の検出、判定を行い、接続ピンP3よりMレベルとなる満充電信号を取り出す。つまり、接続ピンP3をHレベル(高インピーダンス回路)にして初期化の実行を解除し、Mレベルに下がったときの信号を満充電信号とする。シャントレギュレータX2は、抵抗R6とR7からなる分圧回路を制御入力に接続してコンパレータとして動作し、キャパシタC1の端子電圧が所定の電圧(満充電電圧Vful )に達するとオンになる回路(例えばTI社製のTL431、NEC社製のC1944など)である。
【0027】
上記のように構成した並列モニタを用いた場合、モジュールのキャパシタC1の並列モニタでは、信号端子P3を図2のmodule−1の信号端子sig1に接続し、信号端子P1、P2を図2のmodule−1の上下の電源ラインに接続する。したがって、図2及び図3(A)に示す回路を組み合わせてモジュール毎に集積化することができる。この場合、n個のキャパシタC1〜CnからなるモジュールのICに対し、キャパシタC1〜Cnの直列接続点及び両端、信号端子sig1、detとの接続を行えばよい。つまり、接続端子は、各モジュールのICの接続端子は、n+3となる。
【0028】
シャントレギュレータX1、X2では、分圧回路から検出されるキャパシタの端子電圧について初期化電圧や満充電電圧の判定を行っているので、それらは基準電圧を発生するツエナーダイオードとコンパレータに置き換えることもできる。また、初期化モードの選択状態において、充電電流をバイパスする初期化動作に入った場合に、接続ピンP3の信号レベルを変化させるようにし、その変化に基づき充電器側で初期化動作の開始を検知できるようにしてもよいので、接続ピンP3の信号レベルを2ステートで使用してもよいし、3ステートで使用してもよい。
【0029】
フォトカプラを用いた回路の構成例を示したのが図3(B)であり、光トランジスタQPは、接続ピンP3に接続して接続ピンP1との間をオン/オフするものであり、初期化モードの選択時に光指令信号を受信してオンに制御される。光ダイオードDPは、接続ピンP3に接続し抵抗R11、R5を通して満充電信号の電流を供給するものであり、満充電時に光信号を送出する。トランジスタQ4、抵抗R8〜R10は、選択回路を構成し、接続ピンP3の信号レベルがH(接続ピンP1と短絡)になると、トランジスタQ4がオフになって初期化回路のトランジスタQ3をオンにする。また、接続ピンP3が接続ピンP1との間で高インピーダンス回路になると、トランジスタQ4がオンになって初期化回路のトランジスタQ3をオフにするので、接続ピンP3の信号レベルは、信号送出回路のシャントレギュレータX2のオン/オフに応じて変化する。光トランジスタQPは、オンにすることにより接続ピンP3の信号レベルをH(トランジスタQ4のエミッタ電位)にし、オフにすることにより接続ピンP3とP1との間に抵抗R11と発光ダイオードDPを挿入接続する。したがって、この場合の接続ピンP3は、Mレベルから光トランジスタQPに光が入るとHレベルになるので初期化が実行され、光トランジスタQPに光が入っていないと満充電に達したときLレベルとなり光ダイオードDPがオンとなって発光する。
【0030】
次に、充電制御について説明する。図4は緩和充電機能を有するキャパシタの充電器の実施の形態を示す図、図5は初期化がずれている場合と初期化が満充電電圧で完全に行われた状態の例を説明するための図である。図中、1はスイッチングコンバータ、2は出力制御回路、3は出力電圧サンプルホールド回路、4は出力電流検出回路、5は出力電圧検出回路、6は電流目標値、7は電圧目標値、8は初期化制御回路を示す。
【0031】
図4において、スイッチングコンバータ1は、入力電源を制御信号に基づきスイッチングして出力電流が一定に、あるいは出力電圧が一定になるように、所望の出力に調整するものであり、その調整されたスイッチングコンバータ1の出力電流を検出するのが出力電流検出回路4、出力電圧を検出するのが出力電圧検出回路5である。出力電圧サンプルホールド回路3は、例えばAD(アナログーデジタル)変換部とデータラッチ部とDA(デジタルーアナログ)変換部とを有し、サンプル信号Fにより出力電圧検出回路5の検出電圧をAD変換して、出力されたデジタルデータをラッチで固定し、そのデータをDA変換して得られたアナログ電圧を出力制御回路2の電圧目標値7として使うものである。出力制御回路2は、電流目標値6又は電圧目標値7と出力電流検出回路4又は出力電圧検出回路5の検出値を比較してスイッチングコンバータ1をスイッチングを制御するものであり、サンプル信号Fにより定電流充電モードから緩和充電モードに切り換える。定電流充電モードでは、出力電流検出回路4の検出値を電流目標値6と比較してスイッチングコンバータ1の出力を定電流に制御し、緩和充電モードでは、出力電圧検出回路5の検出値を電流目標値7と比較してスイッチングコンバータ1の出力を定電圧に制御する。初期化制御回路8は、ホールドした出力電圧に基づき初期化が必要か否かを判定し、初期化モードを選択するcont Iniを出力するものである。満充電信号Fulは、スイッチングコンバータ1の出力を充電器の出力として直列接続され各モジュールを充電し、いずれかのモジュールが満充電になったのを検出するするためサンプリングするものである。最も早く電圧が上昇するモジュールが満充電電圧に達した時点で、それまでの定電流充電からその電圧で定電圧充電に切り換わる。
【0032】
複数のキャパシタを直列に接続した蓄電装置を充電するとき、各キャパシタの端子電圧は、図5(A)に示すように初期電圧の高いキャパシタがあれば早く上昇し、また、初期電圧が低くても静電容量が他より小さなキャパシタがあれば、その端子電圧も早く上昇する。これらの中でいずれかのキャパシタが満充電に達したとき充電を停止するとtの状態となる。しかし、並列モニタにより初期化が満充電電圧で完全に行われると、図5(B)に示すように満充電電圧を中心にして充放電カーブを描く。
【0033】
図6は初期化機能を有するキャパシタ蓄電装置の充放電カーブの例を示す図である。キャパシタCA 、CB が全放電あるいは電圧ゼロで初期化された状態から一定電流で充電(定電流充電)を開始すると、初期化モードが選択されていない状態、つまり初期化モードの選択信号Vini inがオフの状態では、充電電流のバイパス回路が動作しないので、図6の左端に示すA、Bのように容量の差に応じた傾斜で電圧が上昇する。そして、直列に接続されているキャパシタCA 、CB の1つ、例えば容量の小さい方のキャパシタCA がt1で満充電電圧Vful に達すると、充電器がこれを満充電信号Vful out で検出し定電流充電を停止させる。その後、キャパシタCA の端子電圧がキャパシタ内部の自己充電や自己放電などによって満充電電圧Vful を割り込むと、再度充電が開始されるので、t1以降は一定電圧に維持される緩和充電の状態が続く。
【0034】
次に、時間t2で放電してキャパシタCA 、CB に蓄積した電力を利用し、時間t3で次の充電サイクルに入る。このとき初期化モードを選択すると、充電が始まるt3からいずれかのキャパシタの端子電圧が満充電電圧Vful に達するまで初期化モードの選択信号Vini inをオンにしておけば、その期間が初期化ペリオドとなる。そして、充電が進んでキャパシタの端子電圧が上昇すると、まず、キャパシタCA の端子電圧が初期化電圧Vini に達するt4でキャパシタCA のバイパス回路がオンになり、さらに遅れてt5でキャパシタCB のバイパス回路もオンになる。
【0035】
バイパス回路がオンになると、それらに流れる電流だけキャパシタの端子電圧の上昇が遅くなる。全充電電流をバイパスしてしまうと、端子電圧は初期化電圧Vini より上昇しないが、充電電流を、例えば半分バイパスする程度に抵抗R1の値を選定しておくと、電圧の上昇するスピードは半分になって端子電圧はなお上昇を続ける。
【0036】
このようにt4で初期化電圧Vini に達したキャパシタCA と、遅れてt5で初期化電圧Vini に達したキャパシタCB では、バイパス回路の動作している時間、つまりバイパスされている電気量はキャパシタCA の方が大きい。その結果、t1とt6における電圧を比較すると明らかなようにそれまで低かったキャパシタCB の満充電時(充電停止時)の端子電圧が増大してキャパシタCA の端子電圧に近づくことになる。
【0037】
この方法には、2つの設計条件が伴う。第1は満充電電圧Vful と初期化電圧Vini との間隔であるが、満充電電圧Vful は、キャパシタの耐電圧で決まるので、初期化電圧Vini の値が条件になるといってもよい。初期化電圧Vini の値を高くすると、キャパシタのバイパス回路がオンになっている時間が短いので、1充電あたりのズレの補償量が小さくなる。逆に、初期化電圧Vini の値を低くすると、キャパシタのバイパス回路がオンになっている時間が延びるので、同じバイパス電流でもキャパシタの電圧を平均化する量は増える。ただし、初期化電圧Vini の値を低くすると、バイパスされる電力量は増えるため、バイパス回路での発熱が大きくなり、初期化損失は増大する。
【0038】
第2の条件は、バイパス電流値、つまり充電電流をバイパスする割合である。初期化電圧Vini の値を高くして、バイパス電流を大きくすると、充電カーブの頂上付近だけで大量のバイパス電流が流れ、充電電流をバイパスする時間は短くなるが、初期化される蓄電量が電圧の二乗に比例して増加するため初期化損失が増大し、しかもバイパス回路がそれだけの電流値に耐える設計を必要とする。
【0039】
したがって、満充電電圧Vful と初期化電圧Vini との間隔、バイパス電流値は、例えばキャパシタのバラツキの大きさ、発熱の程度に応じてバイパス回路を動作させる時間をどの程度に制限するか、初期化モードをどの程度の時間や充電回数で解除させるかなどを勘案して任意に設定することができることは勿論である。また、先に述べたように初期化モードを選択(初期化の起動)し解除(初期化の停止)する条件も任意に設定することができる。
【0040】
初期化の起動は、例えば初期化を行うべき条件にあるとき(初期化実行条件)、充電終了時のキャパシタの合計電圧Vout が基準値Vroより低下したとき(初期化必要条件)などである。初期化実行条件は、例えばハイブリッド電気自動車であれば、走り出す前、つまり運転開始時、電力貯蔵であれば、夏においては午後のピークを迎える前、つまり午前中など、用途に応じた要求、運転予測に基づき設定される。
【0041】
初期化の停止は、例えば初期化を中止すべき条件(初期化中止条件)にあるとき、初期化がなされたとき(初期化終了条件)などである。初期化中止条件は、例えばハイブリッド電気自動車の場合、回生制動中など用途に応じた要求、運転予測に基づき設定される。初期化終了条件は、例えば初期化を開始してから一定時間経過したとき、初期化を開始してから各キャパシタの合計電圧Vout が一定値上昇したとき、各キャパシタの合計電圧Vout が所定値に達したとき、並列モニタの放熱板の温度が上昇したときなどである。これらの条件を使い分けることにより、充電停止に至らず延々と長時間におよび初期化動作が継続するのを防ぐことができる。
【0042】
次に、初期化モードの選択/解除の動作を説明する。図7は初期化モードの選択/解除を行う回路の例を示す図、図8は初期化モードの解除信号を発生する回路の例を示す図、図9は充電の途中で初期化モードが解除される動作の例を説明するための図である。図中、11、16はサンプルホールド回路、12、19はコンパレータ、13、15はオアゲート、14は初期化選択/解除回路、17は減算回路、18は加算回路を示す。
【0043】
図7において、サンプルホールド回路11は、充電の停止信号Sをトリガとして各キャパシタの合計電圧Vout をサンプルホールドするものであり、コンパレータ12は、サンプルホールドした各キャパシタの合計電圧Vout を基準値Vroと比較するものである。オアゲート13は、初期化実行条件に基づき発せられる初期化指令か、各キャパシタの合計電圧Vout が基準値Vroより低いときのオアゲート13の出力信号により初期化選択信号を出力するものである。初期化選択/解除回路14は、オアゲート13の出力信号である初期化選択信号により初期化モードの選択信号Vini inをオンにして初期化モードを選択し、初期化中止条件や初期化終了条件に基づき発生される初期化解除信号により初期化モードの選択信号Vini inをオフにして初期化モードを解除するものである。
【0044】
初期化終了条件に基づき初期化解除信号を発生する回路として、例えば初期化を開始してから各キャパシタの合計電圧Vout が一定値上昇したときを条件とする回路の例を示したのが図8である。図8に示す回路では、オアゲート15により、各キャパシタの初期化用のコンパレータ4のいずれかが作動を開始したときに初期化開始信号を出力し、サンプルホールド回路16により、その初期化開始時の各キャパシタの合計電圧Vout をサンプルホールドする。そして、減算回路17により、初期化開始時の各キャパシタの合計電圧Vout と各キャパシタが初期化電圧Vini であると仮定したときの電圧Vini ×mとの差を求め、加算回路18により、この差に初期化開始時の各キャパシタの合計電圧Vout を加算する。そして、コンパレータ19により加算回路18の加算値まで各キャパシタの合計電圧Vout が初期化開始後に上昇すると初期化解除信号を出力する。
【0045】
上記のように初期化開始時の各キャパシタの合計電圧Vout に応じて初期化解除信号を発生する電圧上昇値を決定すると、図9の▲1▼に示すように電圧のバラツキが大きい場合には初期化開始時の▲1▼から初期化解除信号が発生するポイントPまで初期化動作の継続する時間が長くなる。しかし、このような初期化を繰り返すことにより、図9の▲4▼と▲5▼の間で示すように電圧のバラツキが小さくなってくると、初期解除信号が発生するポイントPまで初期化動作の継続する時間が短くなる。つまり、電圧のパラツキに応じて初期化動作の継続する時間を自動的に調節することができる。この場合、バイパス電流を変えると、初期化動作後の電圧上昇勾配が変わるので、その勾配の変化に応じて時間が変わる。
【0046】
上記のように1回で完全に初期化された状態にならなくても、何サイクルもの間に少しずつ上記初期化機能を使うことにより、特別な初期化のサイクルや時間を用意する必要がなく、例えばハイブリッド電気自動車で言えば運転者に気づかれずに初期化することが可能となる。元来、キャパシタのバラツキは、漏れ電流の固体差などにより長時間かけて次第に発生するものであるので、それを修正するための初期化も用途によっては、上記のような緩慢な手法で十分であり、むしろ合理的な方法といえよう。
【0047】
また、図8において、コンパレータ19を省くと共に加算回路18に変えてタイマーを用い、減算回路17の出力に応じて時間を設定し、そのタイムオーバーで初期化解除信号を発生させても同様に、電圧のパラツキに応じて初期化動作の継続する時間を自動的に調節することができる。また、図8において、減算回路17を省き加算回路18でサンプルホールド回路16にサンプルホールドした初期化開始時の各キャパシタの合計電圧Vout に一定値を加算すると、初期化解除信号を発生させるまでの上昇電圧を一定にすることができ、同様に初期化動作の継続する時間を一定にすることができる。
【0048】
いずれにせよ本発明によれば、キャパシタ・モジュールについて各1個設けた集積型並列モニタのICに2ピンを増すだけで直列に接続したすべてのキャパシタに設けた並列モニタに対し、信号の授受を行うことが可能となる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。以上の説明から明らかなように、上記実施の形態によれば、本発明の使われ方は大別して次の二つになる。
(a)複数のキャパシタセルをまとめたモジュール毎にICを設け、それにフォトカプラなどのアイソレータを外付けして外部の充電制御(CMS)などと接続する。
(b)複数のキャパシタセルをまとめたモジュール毎にICを設け、それに図2に示した電流モードアイソレータを介して、複数のモジュールを外部の充電制御(CMS)などに直列接続する。
この両者の折衷案や、(b)の電流モードアイソレータを別のICとしたり、個別の部品で製造することも、経済性は低下するが、可能ではある。なお、この場合でもモジュール内の並列モニタ間は、図2に示した電流モードアイソレータではなく他のトランジスタ回路を介して接続するように構成してもよいし、直接接続し論理回路を設けて信号を論理処理するように構成してもよい。
【0050】
したがって、本願により提供する手法は2つに別れる。その一つは数個のキャパシタセルを受け持つ集積型並列モニタを作る方法、第二はそれを特別なアイソレータなしで、少ないピン数で接続する方法である。以上の記述ではn個のキャパシタセルを直列にしたキャパシタ・モジュールをm個直列にして構成した蓄電システムがモデルとなる。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、複数のキャパシタセルを直列接続して1つのモジュールを構成し、複数のキャパシタモジュールを直列接続してなるキャパシタ電源装置であって、各キャパシタセルに対し設定された初期化電圧で充電電流をバイパスする初期化及び満充電電圧で満充電信号を取り出す満充電検出を行う並列モニタを備え、該並列モニタをモジュール毎にまとめて集積化したので、コストを低減すると共に、特別なアイソレータ不要で直接接続を可能とする集積化並列モニタを提供することができる。
【0052】
また、並列モニタは、各キャパシタの端子間に接続される一対の入力端子と、一対の入力端子に接続され端子電圧を検出して初期化電圧を判定しキャパシタの充電電流をバイパスする初期化回路と、一対の入力端子に接続され端子電圧を検出して満充電電圧を判定する満充電検出回路と、初期化の選択信号を入力し満充電信号を取り出す信号端子とを備え、信号端子から選択信号を入力して初期化回路による初期化を行い、満充電検出回路により満充電電圧を判定して満充電信号を信号端子から取り出すように構成したので、信号端子により充電器から初期化モードの選択信号を入力し、満充電信号を取り出すことで、充電器から初期化及び充電制御を行うことができ、キャパシタに並列に接続する制御回路として3ピンのパワーICの並列モニタを実現することができる。しかも、初期化モードの選択信号を入力し、満充電信号を取り出す信号の授受を、フォトカップラを介して行うことにより、蓄電装置を構成する各キャパシタに接続される高圧側の並列モニタと制御信号ラインとをアイソレーションする必要がなくなるので、回路や配線、さらには周囲の回路の構成を簡素化することができる。
【0053】
ECSがハイブリッド電気自動車などに応用され大量生産の段階に入って、1円でも安くと言われる現在、本発明によれば大量に生産した場合、並列モニタ部分の価格は、モジュール単位で集積化することにより1/2程度に低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るキャパシタ電源装置の実施の形態を説明するための図である。
【図2】 各モジュールとの初期化信号及び満充電信号の授受を行う信号伝達回路の構成例を示す図である。
【図3】 3ピン構成の並列モニタの構成例を示す図である。
【図4】 緩和充電機能を有するキャパシタの充電器の実施の形態を示す図である。
【図5】 初期化がずれている場合と初期化が満充電電圧で完全に行われた状態の例を説明するための図である。
【図6】 初期化機能を有するキャパシタ蓄電装置の充放電カーブの例を示す図である。
【図7】 初期化モードの選択/解除を行う回路の例を示す図である。
【図8】 初期化モードの解除信号を発生する回路の例を示す図である。
【図9】 充電の途中で初期化モードが解除される動作の例を説明するための図である。
【図10】 初期化と満充電検出を独立に行える並列モニタの構成例を示す図である。
【図11】 並列モニタの制御回路の構成例を示す図である。
【符号の説明】
11〜1n、21〜2n…コンパレータ、C1〜Cn…キャパシタ、Vr11〜Vr1n…設定初期化電圧、Vr21〜Vr2n…設定満充電電圧、Q1〜Qn…パワートランジスタ
Claims (4)
- 複数のキャパシタセルを直列接続して1つのモジュールを構成し、複数のキャパシタモジュールを直列接続してなるキャパシタ電源装置であって、前記各キャパシタセルに対し初期化の選択信号に基づき設定された初期化電圧で充電電流をバイパスする初期化及び満充電電圧で満充電信号を取り出す満充電検出を行う並列モニタを備え、該並列モニタを前記モジュール毎にまとめて集積化したことを特徴とするキャパシタ電源装置。
- 前記並列モニタは、
各キャパシタの端子間に接続される一対の入力端子と、
前記一対の入力端子に接続され端子電圧を検出して初期化電圧を判定しキャパシタの充電電流をバイパスする初期化回路と、
前記一対の入力端子に接続され端子電圧を検出して満充電電圧を判定する満充電検出回路と、
前記初期化の選択信号を入力し前記満充電信号を取り出す信号端子と
を備え、前記信号端子から前記選択信号を入力して前記初期化回路による初期化を行い、前記満充電検出回路により前記満充電電圧を判定して前記満充電信号を前記信号端子から取り出すように構成したことを特徴とする請求項1記載のキャパシタ蓄電装置。 - 直列接続されたキャパシタの上下の電位間で縦続接続して信号を授受する信号伝達回路に前記信号端子を接続したことを特徴とする請求項2記載のキャパシタ蓄電装置。
- 直列接続されたモジュールの上下の電位間で縦続接続して信号を授受する信号伝達回路に前記信号端子を接続したことを特徴とする請求項2記載のキャパシタ蓄電装置。
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