JP3981845B2 - アクリルゴム組成物および加硫物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工業材料用途として、優れた加工性、最適な加硫速度と充分なスコーチ安定性を同時に満足するアクリルゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とする弾性体であり、一般に耐熱性、耐油性に優れたゴムとして知られている。しかしながら、ゴム分子主鎖に二重結合を有していないため、架橋点となる活性基を有する単量体を共重合させることが従来から行われている。この架橋点を有するアクリルゴムとしては、2−クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル、クロロ酢酸アリル、クロロメチルスチレンなどの反応性ハロゲン含有単量体を共重合させたもの、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有単量体を共重合したもの、あるいはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体を共重合させたものなどが、従来から使用されている。
【0003】
しかしながら、上記架橋点のうち、ハロゲン含有単量体を導入したアクリルゴムは、一般に加硫速度が速くスコーチ安定性に劣るため、加工時に加硫反応が進行し製品の不良が発生する欠点がある。また、上記架橋点のうち、エポキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体を導入したアクリルゴムは、一般に加硫速度が遅く最適な加硫物性を有する加硫物を得るには、加硫後に長時間の熱処理を行わなければならない欠点がある。上記の製品の不良を低減させることと、長時間の熱処理を不要もしくは短縮化を図ることは、工業的に大きな利点となり、このようなアクリルゴムの開発が切望されている。
【0004】
アクリルゴムの加硫をより効果的に行わせる試みは、種々なされており、例えば反応性ハロゲン含有単量体とカルボキシル基含有単量体を併用したアクリルゴムに金属オキシ化合物およびアミノピリジン類を含有するアクリルゴム組成物(特公昭60−36219号公報)や、ハロゲン含有単量体とカルボキシル基含有単量体を併用したアクリルゴムにステアリン酸ナトリウムおよびテトラメチルチウラムジスルフィド類を含有するアクリルゴム組成物(特開昭58−210905号公報)が提案されているが、加硫速度が充分でない欠点を有している。
【0005】
また、反応性ハロゲン含有単量体とカルボキシル基含有単量体を併用したアクリルゴムに有機弱酸またはその誘導体のアルカリ金属塩および第4級ホスホニウム塩を含有するアクリルゴム組成物(特公昭59−501276号公報)や、ハロゲンとカルボキシル硬化部位を有するアクリルゴムに第4級ステアリン酸アンモニウムもしくはホスホニウム塩を含有するアクリルゴム組成物(特開平1−163248号公報)が提案されているが、スコーチ安定性が充分とはいえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、優れた加工性、最適な加硫速度と充分なスコーチ安定性を同時に満足する優れた特性を有し、有機過酸化物で架橋可能なアクリルゴム組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)(a−1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび/または炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキルアクリレート70〜99.95重量%、(a−2)ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1,1−ジメチルプロペニルメタクリレート、1,1−ジメチルプロペニルアクリレート、3,3−ジメチルブテニルメタクリレート、3,3−ジメチルブテニルアクリレート、イタコン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、ビニル1,1−ジメチルプロペニルエーテル、ビニル3,3−ジメチルブテニルエーテル、および1−アクリロイルオキシ−1−フェニルエテンから選ばれた炭素−炭素二重結合を側鎖に導入する単量体0.05〜10重量%、および(a−3)上記(a−1)〜(a−2)成分と共重合可能な架橋点を有しない他の単量体0〜30重量%〔ただし、(a−1)+(a−2)+(a−3)=100重量%〕からなるアクリルゴム(以下「アクリルゴム(A)」ともいう)20〜80重量部、ならびに(B)(b−1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート20〜70重量%、(b−2)炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキルアクリレート30〜80重量%、および(b−3)上記(b−1)〜(b−2)成分と共重合可能な架橋基を有しない他の単量体0〜30重量%〔ただし、(b−1)+(b−2)+(b−3)=100重量%〕からなるアクリルゴム(以下「アクリルゴム(B)」ともいう)80〜20重量部〔ただし、(A)+(B)=100重量部〕を主成分とするアクリルゴム組成物であって、該アクリルゴム(A),(B)成分を別々に重合しブレンドするか、あるいは、アクリルゴム(A)または(B)の一方をシードラテックスとして用い、残りの成分を重合するシード重合によって得られたアクリルゴム組成物を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリルゴム組成物は、架橋点を有するアクリルゴム(A)と、アルコキシアルキル基を有するアクリルゴム(B)とのブレンド系のアクリルゴム組成物である。
ここで、アクリルゴム(A)を構成する単量体成分のうち、(a−1)の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレートなどが挙げられ、好ましくは炭素数2〜4のアルキル基を有するエチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートなどである。
また、(a−1)の炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキルアクリレートとしては、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレートなどが挙げられる。
上記(a−1)アルキルアクリレートおよび/またはアルコキシアルキルアクリレートの含有量は、アクリルゴム(A)中に、70〜99.95重量%、好ましくは80〜90重量%である。70重量%未満では、得られるアクリルゴム組成物の耐寒性と耐油性の釣り合いが悪くなり、一方、99.95重量%を超えると、充分な加硫物性が得られなくなり、弾性、強度が悪化する。
【0009】
また、アクリルゴム(A)を構成する(a−2)単量体は、このアクリルゴム(A)に架橋点である炭素−炭素二重結合を側鎖に導入するための単量体である。この(a−2)単量体は、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1,1−ジメチルプロペニルメタクリレート、1,1−ジメチルプロペニルアクリレート、3,3−ジメチルブテニルメタクリレート、3,3−ジメチルブテニルアクリレート、イタコン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、ビニル1,1−ジメチルプロペニルエーテル、ビニル3,3−ジメチルブテニルエーテル、1−アクリロイルオキシ−1−フェニルエテンである。好ましくは、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシジエチルアクリレートが挙げられる。
(a−2)単量体の含有量は、アクリルゴム(A)中に、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。0.05重量%未満では、得られるアクリルゴム組成物は充分な加硫物性が得られなくなり、弾性、強度が悪化する。一方、10重量%を超えると、得られるアクリルゴム組成物のスコーチ安定性が低下し、加工中に硬化し易くなる。
【0010】
さらに、アクリルゴム(A)を構成することのある(a−3)他の単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ハロゲン化スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレートなどの、芳香族、脂環式もしくは脂肪族アルコールのアクリル酸エステル、またはメタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸と低級アルコールとのエステルなどを挙げることができる。これらの(a−3)共重合可能な他の単量体は、必要に応じて用いられる。
(a−3)他の単量体の含有量は、アクリルゴム(A)中に、0〜30重量%である。30重量%を超えると、得られる架橋物が硬くなり好ましくない。
以上の(a−1)〜(a−3)成分は、それぞれ、1種単独で使用すること、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0011】
次に、アクリルゴム(B)を構成する単量体成分のうち、(b−1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートは、アクリルゴム(A)を構成する(a−1)成分中のアルキルアクリレートと同様である。また、(b−2)炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキルアクリレートは、アクリルゴム(A)を構成する(a−1)成分中のアルコキシアルキルアクリレートと同様であるが、好ましくはメトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレートなどのメトキシアルキルアクリレートである。さらに、アクリルゴム(B)を構成することのある(b−3)他の単量体としては、アクリルゴム(A)を構成することのある(a−3)他の単量体と同様である。これらの(b−3)他の単量体は、必要に応じて用いられる。(b−3)共重合可能な他の単量体の含有量は、アクリルゴム(B)中に、0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%である。30重量%を超えると、得られる加硫物が硬くなり好ましくない。以上の(b−1)〜(b−3)成分は、それぞれ、1種単独で使用すること、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0012】
アクリルゴム(A)〜(B)の使用割合は、(A)20〜80重量部、好ましくは30〜70重量部、(B)80〜20重量部、好ましくは70〜30重量部である。アクリルゴム(A)が20重量部未満では、得られるアクリルゴム組成物の充分な加硫速度が得られず、一方、80重量部を超えると、得られるアクリルゴム組成物のスコーチ安定性が低下し、加工中に硬化し易くなる。
【0013】
本発明に用いられるアクリルゴム(A)、(B)は、ラジカル重合開始剤の存在下に、上記単量体混合物を、通常の乳化重合、懸濁重合、バルク重合あるいは溶液重合するとによって製造することができる。このなかで、アクリルゴム(A)、(B)成分量の制御および応力緩和値の制御の点から、乳化重合法が好適に採用される。ここで、乳化重合によりアクリルゴムを製造する場合の乳化剤としては、陰イオンまたは非イオン界面活性剤を単独あるいは混合物として、さらに種々の分散剤を用いることができる。これらの乳化剤としては、例えばアルキルサルフェート、アルキルアリールサルホネート、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル塩、高級脂肪酸の塩、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。
【0014】
重合反応は、温度−100℃〜+200℃、好ましくは0〜+60℃の条件下で行うことができる。重合を開始させるためのラジカル開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルで代表されるアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過硫酸塩、有機過酸化物−硫酸鉄の組み合わせで代表されるレドックス系触媒などが挙げられる。これらのラジカル開始剤は、単量体混合物に対して、通常、0.01〜2重量部用いられる。また、分子量調節剤は、必要に応じて用いられるが、その具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジスルフィドなどが挙げられる。
【0015】
重合反応は、所定の重合転化率に達したのち、N,N−ジエチルヒドロキシアミンなどの反応停止剤を添加して重合反応を停止させ、次いで得られたラテックス中の未反応単量体を水蒸気蒸留などで取り除き、フェノール類、アミン類などの老化防止剤を添加し、通常の凝固方法、例えば硫酸アルミニウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液などの金属塩水溶液と混合してラテックスを凝固させたのち、乾燥させることによって、アクリルゴムを得ることができる。
【0016】
上記乳化重合法によりアクリルゴム(組成物)を製造するうえで、アクリルゴム(A)、(B)成分を別々に重合しブレンドする方法と、アクリルゴム(A)または(B)の一方をシードラテックスとして用い、残りの成分を重合するシード重合法を選択することができる。このなかで、工業的生産性の点から、シード重合法が好適に用いられる。好ましいシード重合法としては、乳化重合を複数の段階に分けて連続的に行う方法(多段重合法)が挙げられる。すなわち、第1段目としてアクリルゴム(A)または(B)の一方の単量体成分を添加し重合を開始し単量体成分の重合度(重合転化率)が所定の割合に達したのち、第2段目として他方の単量体成分および必要な添加剤などを添加し、重合を連続的に行うことで、アクリルゴム(組成物)を製造することができる。もちろん、第1段目および/または第2段目において、単量体成分および必要に応じては添加剤などを複数回に分けて添加することも可能である。
【0017】
一方、懸濁重合法によりアクリルゴムを製造するには、ポリビニルアルコールの酸化物などを分散剤として加え、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイルなどの油溶性ラジカル開始剤を用いて重合を行い、重合終了後、水を除去することによりアクリルゴム(組成物)を得ることができる。
また、溶液重合法によりアクリルゴム(組成物)を製造する場合にも、一般的に知られている方法を採用することができる。なお、重合方式は、連続式、回分式のいずれも可能である。
【0018】
本発明のアクリルゴム組成物は、必要に応じて、各種の配合剤を添加し、2本ロール、バンバリーミキサーなどの通常の混合機を用いて混合することにより調製される。配合剤のうち、充填剤としては、カーボンブラックのほか、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、炭酸マグネシウムなどの白色充填剤などを挙げることができる。また、配合剤のうち、分散剤としては、例えば高級脂肪酸およびその金属塩、またはアミド塩、可塑剤としては、例えばフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、ポリエーテルエステル、軟化剤としては、例えば潤滑油、プロセスオイル、ヒマシ油、老化防止剤としては、4,4−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのアミン類、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのイミダゾール類、そのほか顔料、加硫成分、難燃剤、発泡剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、滑剤などを任意に配合することができる。
【0019】
このようにして得られる本発明のアクリルゴム組成物は、通常の加硫ゴム製造条件によって、成形、加硫を行い、加硫物とすることができる。すなわち、加硫条件は、成形後、150〜200℃で、加圧または無圧下において、必要時間、加硫を行い加硫物とすることができる。
【0020】
本発明のアクリルゴム組成物を用いて加硫物を得るには、この組成物に、有機過酸化物とビスマレイミド化合物を配合することが好ましい。
上記有機過酸化物の配合量は、アクリルゴム組成物100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。0.1重量部未満では、加硫密度が低く、機械的強度、低圧縮永久歪みが劣り一方、10重量部を超えると、加硫密度が高くなりすぎ、高度が高くなり好ましくない。
また、上記ビスマレイミド化合物の配合量は、アクリルゴム組成物100重量部に対し、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。0.2重量部未満では、加硫物の一般物性および圧縮永久歪みの点で満足されず、良好な加硫物性および圧縮永久歪みの点で満足されず、良好な加硫物性が得難く、一方、10重量部を超えると、加硫物の強度や伸びなどの一般物性が損なわれる。
【0021】
本発明の加硫剤として用いる有機過酸化物としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。好ましくは、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼンである。
【0022】
また、これらの有機過酸化物とともに用いられるビスマレイミド化合物としては、例えばN,N′−m−フェニレンビスマレイミド、N,N′−p−フェニレンビスマレイミド、N,N′−p−フェニレン(1−メチル)ビスマレイミド、N,N′−2,7−ナフテンビスマレイミド、N,N′−m−ナフテンビスマレイミド、N,N′−m−フェニレン−4−メチルビスマレイミド、N,N′−m−フェニレン(4−エチル)ビスマレイミドなどが挙げられる。これらのなかで、N,N′−m−フェニレンビスマレイミドが好ましい。また、一般に用いられる加硫助剤としての他のモノマー類、ポリマー類などを併用することもできる。
【0023】
このようにして得られるアクリルゴム加硫物は、工業用途としてロール、ホースなど、自動車用途としてシール、パッキング、ホースなどに用いることができる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。なお、実施例中、部および%は、特に断らない限り、重量基準である。また、実施例中、アクリルゴムおよび加硫物の諸特性の測定は、次の方法に拠った。
【0025】
アクリルゴムの性質
ムーニー粘度および応力緩和;モンサント社製、2000Eにより、ASTMD1646−94に準じて測定した。
配合物の性質
加工性;バンバリーミキサー混練り時のBIT(ブラックインコーポレーションタイム)、およびロール加工時の粘着性、配合物の押し出し試験(押し出し長さおよびダイスウエル)で評価した。BITが短く、ロール加工時の粘着が少なく、押し出し試験における押し出し長さが大きく、ダイスウエルが小さいほど、加工性に優れる。
ムーニースコーチ;モンサント社製、2000Eにより測定した。
加硫速度;日本合成ゴム(株)製、JSRキュラストメーター III型により測定した。
加硫物の性質
引張および引き裂き試験;JIS K6273に準じて測定した。
圧縮永久歪み;JIS K6273に準じて測定した。
【0026】
実施例1〜10、比較例1〜4
アクリルゴムの合成
アクリルゴムa−1〔(B)成分〕〜a−2〔(A)成分〕は、単量体混合物(組成および比率は表1に記載)100部、ラウリル硫酸ナトリウム4部、p−メンタンハイドロパーオキサイド0.25部、硫酸第1鉄0.01部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.025部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.04部、およびt−ドデシルメルカプタン(部数は表1に記載)を、チッ素置換したオートクレーブに仕込み、反応温度30℃で単量体混合物の転化率が100%に達するまで反応させた。このようにして得られたゴムラテックスを、0.25%塩化カルシウム水溶液に加えて凝固させ、凝固物を充分に水洗して、約90℃で3時間乾燥させた。得られたアクリルゴムのムーニー粘度を測定した。
【0027】
アクリルゴムb−1〜b−10は、2段重合法により合成した。すなわち、第1段目の単量体混合物(組成および比率は表1〜2に記載)50部、ラウリル硫酸ナトリウム4部、p−メンタンハイドロパーオキサイド0.25部、硫酸第1鉄0.01部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.025部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.04部、およびt−ドデシルメルカプタン(部数は表1〜2に記載)を、チッ素置換したオートクレーブに仕込み、反応温度30℃で単量体混合物の転化率が100%に達するまで反応させたのち、第2段目の単量体混合物(組成および比率は表1〜2に記載)50部、p−メンタンハイドロパーオキサイド0.125部、硫酸第1鉄0.005部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.0125部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.02部、およびt−ドデシルメルカプタン(部数は表1〜2に記載)を、チッ素置換したオートクレーブに仕込み、反応温度30℃で単量体混合物の転化率が100%に達するまで反応させた。
このようにして得られたゴムラテックスを、0.25%塩化カルシウム水溶液に加えて凝固させ、凝固物を充分に水洗して、約90℃で3時間乾燥させた。
得られたアクリルゴムのムーニー粘度を測定した。
【0028】
アクリルゴム組成物の調製
得られたアクリルゴム100部に、FEFカーボンブラック60部、ステアリン酸1部、4,4−(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン〔大内新興化学工業(株)製、ノクラックCD〕2部を、1.7リットルのバンバリーミキサーで混合し、アクリルゴム組成物(Aコンパウンド)を調製した。
なお、バンバリーミキサーの運転条件は、設定温度100℃、回転数80rpm、練り時間BIT後1分(ただし、BITが9分を超えた場合は、最大10分)とした。
さらに、Aコンパウンドに、表3記載の加硫剤および添加剤を、10インチロールを使用して配合し、アクリルゴム組成物(Bコンパウンド)を調製した。
次に、Bコンパウンドを予備成形したのち、表4〜6に示す加硫条件に従って熱盤プレスによる加硫を行い、アクリルゴム組成物(加硫物)を調製した。
【0029】
Aコンパウンドについては、排出時のまとまり、ロール加工時の粘着の有無を評価した。得られた結果を表4〜6に示す。
また、Bコンパウンドについては、ムーニースコーチタイム(ムーニー粘度最低値+5の値になるまでに要する時間であり、加工安全性および貯蔵安定性の目安となる)、加硫速度〔キュラストメーターにより170℃で測定。t′c (10℃)およびt′c (90)は加硫が終息したトルク値から最低トルク値を引いた値に対する10%、90%に達する時間であり、t′c (10℃)は加硫が始まるまでの目安であり、t′c (90)は加硫が終わるまでの目安となる〕、押し出し加工性(50mm押し出し機、ガーベダイ使用。80℃、20rpmで運転し、押し出し長さおよびダイスウエルを測定)を評価した。結果を表4〜6に示す。
また、加硫物については、加硫物性(常態物性試験、引き裂き試験、永久歪み試験)を評価した。結果を表4〜6に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
*1)4,4−(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン〔大内新興化学工業(株)製〕
*2)1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの40%希釈品〔日本化薬アクゾ(株)製〕
*3;N,N′−m−フェニレンジマレイミド〔大内新興化学工業(株)製〕
*4)N−ニトロソジフェニルアミン〔精工化学(株)製〕
*5)アンモニウムベンゾエート〔大内新興化学工業(株)製〕
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
*1)モンサント社製、2000E使用
*2)JSRキュラストメーター III型使用
表4〜5から明らかなように、実施例1〜10に係わる本発明の組成物によれば、加工性に優れ、最適な加硫速度と充分なスコーチ安定性を同時に満足する優れた物性を有するアクリルゴム組成物が得られることが分かる。
これに対し、比較例1〜2に係わる組成物は、アクリルゴム中の(A)成分と(B)成分の比率が本発明の範囲を逸脱しているため、比較例1では、押し出し加工性が劣り物性も不充分であり、また比較例2は、物性は優れているが、加硫速度が極端に速まり、その結果、押し出し性が悪化している。
また、比較例3は、アクリルゴム中の架橋点が塩素系であるため、加硫速度が極端に速くなり、充分なスコーチ安定性を保つことができない。
さらに、比較例4は、アクリルゴム中の架橋点がエポキシ系であるため、加硫速度が極端に遅く、一次加硫のみでは充分な物性が発現できない。
【0038】
【発明の効果】
本発明のアクリルゴム組成物によれば、優れた加工性、最適な加硫速度と充分なスコーチ安定性を同時に満足する加硫ゴムが得られる。
このような加硫ゴムは、工業用途としてロール、ホースなど、自動車用途としてシール、パッキング、ホースなどに好適に用いることができる。
Claims (4)
- (A)(a−1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび/または炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキルアクリレート70〜99.95重量%、(a−2)ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1,1−ジメチルプロペニルメタクリレート、1,1−ジメチルプロペニルアクリレート、3,3−ジメチルブテニルメタクリレート、3,3−ジメチルブテニルアクリレート、イタコン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、ビニル1,1−ジメチルプロペニルエーテル、ビニル3,3−ジメチルブテニルエーテル、および1−アクリロイルオキシ−1−フェニルエテンから選ばれた炭素−炭素二重結合を側鎖に導入する単量体0.05〜10重量%、および(a−3)上記(a−1)〜(a−2)成分と共重合可能な架橋点を有しない他の単量体0〜30重量%〔ただし、(a−1)+(a−2)+(a−3)=100重量%〕からなるアクリルゴム20〜80重量部、ならびに
(B)(b−1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート20〜70重量%、(b−2)炭素数2〜4のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキルアクリレート30〜80重量%、および(b−3)上記(b−1)〜(b−2)成分と共重合可能な架橋基を有しない他の単量体0〜30重量%〔ただし、(b−1)+(b−2)+(b−3)=100重量%〕からなるアクリルゴム80〜20重量部〔ただし、(A)+(B)=100重量部〕を主成分とするアクリルゴム組成物であって、該アクリルゴム(A),(B)成分を別々に重合しブレンドするか、あるいは、アクリルゴム(A)または(B)の一方をシードラテックスとして用い、残りの成分を重合するシード重合によって得られたアクリルゴム組成物。 - (a−2)炭素−炭素二重結合を側鎖に導入する単量体がビニルメタクリレート、アリルメタクリレートおよびジシクロペンテニルオキシジエチルアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のアクリルゴム組成物。
- 請求項1または2に記載のアクリルゴム組成物を成形、加硫して得られる加硫物。
- アクリルゴム組成物に有機過酸化物とビスマレイミド化合物を配合してなる請求項3記載の加硫物。
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