JP3981256B2 - 光半導体素子収納用パッケージ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光半導体素子を収容するための光半導体素子収納用パッケージに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光半導体素子を収容するための光半導体素子収納用パッケージは、一般に鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金等の金属材料からなり、上面中央に光半導体素子が載置される載置部を有する基体と、前記光半導体素子載置部を囲繞するようにして基体上に銀ロウ等のロウ材を介して接合され、側部に貫通孔及び切欠部を有する鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金等の金属材料から成る枠体と、前記枠体の貫通孔もしくは貫通孔周辺の枠体に取着され、内部に光信号が伝達される空間を有する鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属材料から成る筒状の固定部材と、前記筒状の固定部材に融点が200〜400℃の金−錫合金等の低融点ロウ材を介して取着された固定部材の内部を塞ぐ非晶質ガラス等から成る透光性部材と、前記枠体の切欠部に挿着され、酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックス絶縁体に光半導体素子の各電極がボンディングワイヤを介して電気的に接続される配線層を形成したセラミック端子体と、前記枠体の上面に取着され、光半導体素子を気密に封止する蓋部材とから構成されており、基体の光半導体素子載置部に光半導体素子を載置固定させるとともに該光半導体素子の各電極をボンディングワイヤを介してセラミック端子体の配線層に電気的に接続し、しかる後、前記枠体の上面に蓋部材を接合させ、基体と枠体と蓋部材とから成る容器内部に光半導体素子を気密に収容するとともに筒状固定部材に光ファイバー部材を、例えば、YAG溶接等により取着することによって製品としての光半導体装置となる。
【0003】
なお上述の光半導体素子収納用パッケージにおいては、内部に収容される光半導体素子が高周波領域で駆動し、外部ノイズの影響を受け易いものであるため基体及び枠体を金属材料で形成し、容器内部をシールドしておくことによって光半導体素子に外部ノイズが影響しないようにしている。また基体及び枠体はセラミック端子体や光半導体素子等の線熱膨張係数と合わすため一般に鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金等が使用されている。
【0004】
しかしながら、この従来の光半導体素子収納用パッケージにおいては、光半導体素子が載置固定される基体の熱伝導率が20W/m・K程度であり、熱を効率良く伝達することができないことから光半導体素子が作動時に熱を発した際、その熱を基体を介して外部に十分放散させることができず、その結果、光半導体素子は該光半導体素子自身の発する熱で高温となり、熱破壊を起こしたり、特性に熱劣化を招来し、誤動作したりするという欠点を有していた。
【0005】
そこで上記欠点を解消するために基体を熱伝導率が高く、かつ線熱膨張係数がセラミック端子体の線熱膨張係数に近似する銅−タングステン合金や銅−モリブデン合金で形成しておくことが考えられる。
【0006】
かかる銅−タングステン合金や銅−モリブデン合金は一般にタングステン粉末やモリブデン粉末を焼成して焼結多孔体を得、次に前記焼結多孔体の空孔内に溶融させた銅を含浸させることによって製造されており、例えば、タングステンから成る焼結多孔体に銅を含浸させる場合は焼結多孔体が75乃至90重量%、銅が10乃至25重量%の範囲に、モリブデンから成る焼結多孔体に銅を含浸させる場合は焼結多孔体が80乃至90重量%、銅が10乃至20重量%の範囲となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の光半導体素子収納用パッケージにおいては、基体がタングステン粉末やモリブデン粉末を焼成して焼結多孔体を得るとともに該焼結多孔体の空孔内に溶融させた銅を含浸させることによって形成されており熱伝導率が約180W/m・K程度である。
【0008】
そのためこの従来一般に製造されている銅−タングステン合金等を基体として用いた光半導体素子収納用パッケージは鉄−ニッケル−コバルト合金等を基体として用いた光半導体素子収納用パッケージよりも熱放散性に優れているものの近時の発光出力が高く作動時に従来に比し多量の熱を発する光半導体素子を収容した場合、光半導体素子が発する熱を基体を介して外部に完全に放出させることができなくなり、その結果、光半導体素子が該素子自身の発する熱によって高温となり、光半導体素子に熱破壊を招来させたり、特性にばらつきを生じ安定に作動させることができないという欠点を有していた。
【0009】
本発明は上記知見に基づき案出されたもので、その目的は発光出力が高く作動時に多量の熱を発する光半導体素子を常に適温に保持し、光半導体素子を長期間にわたり安定に機能させることができる光半導体素子収納用パッケージを提案することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上面に光半導体素子が載置される載置部を有する基体と、前記基体上に光半導体素子載置部を囲繞するようにして取着され、側部に貫通孔および切欠部を有する鉄−ニッケル−コバルト合金もしくは鉄−ニッケル合金から成る枠体と、前記貫通孔もしくは貫通孔周辺の枠体に取着され、光ファイバー部材が接合される固定部材と、前記切欠部に挿着され、セラミックス絶縁体に光半導体素子の各電極が接続される配線層が形成されているセラミック端子体と、前記枠体の上面に取着され、光半導体素子を気密に封止する蓋部材とから成る光半導体素子収納用パッケージであって、前記基体は65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とから成り、溶融させた前記銅に前記炭化珪素粉末を分散混入させたものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の光半導体素子収納用パッケージによれば、基体を65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とで、溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させて形成し、熱伝導率を270W/m・K以上の高いものとなしたことから、基体上に載置される光半導体素子が作動時に多量の熱を発したとしてもその熱は基体の光半導体素子載置部平面方向に素早く広がらせるとともに基体の厚さ方向を良好に伝搬させて外部に効率よく確実に放散させることができ、これによって光半導体素子は常に適温となり、光半導体素子を長期間にわたり安定かつ正常に作動させることが可能となる。
【0012】
また本発明の光半導体素子収納用パッケージによれば、基体を65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とで、溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させて形成し、その線熱膨張係数を鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金から成る枠体あるいは酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミック焼結体等のセラミックス絶縁体から成るセラミック端子体の線熱膨張係数(6ppm/℃乃至8ppm/℃:室温〜800℃)に近似するものとなしたことから、基体上に枠体やセラミック端子体を取着させる際や光半導体素子が作動した際等において基体と枠体やセラミック端子体に熱が作用したとしても基体と枠体やセラミック端子体との間には両者の線熱膨張係数の相違に起因する大きな熱応力が発生することはなく、これによって光半導体素子を収容する空所の気密封止が常に完全となり、光半導体素子を安定かつ正常に作動させることが可能となる。また、65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とから成る基体は、炭化珪素粉末の表面に酸化物膜を被着させておくことにより、炭化珪素粉末と銅との密着強度が大きく向上して基体としての信頼性が大幅に向上する。また、基体は溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させて形成したものであることから、基体のヤング率が銅のヤング率に依存する100GPa程度の軟質なものとなり、その結果、基体上に光半導体素子を載置させた後、基体と光半導体素子に熱が作用して両者間に熱応力が発生したとしても、その熱応力は基体を若干変形させることによって効率よく吸収され、光半導体素子が基体より剥離したり、光半導体素子に割れやクラックを発生したりすることがなく、光半導体素子を常に正常かつ安定に作動させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の光半導体素子収納用パッケージの一実施例を示し、図1において、1は基体、2は枠体、3は蓋部材である。この基体1と枠体2と蓋部材3とにより内部に光半導体素子4を気密に収容する容器5が構成される。
【0014】
前記基体1はその上面に光半導体素子4が載置される載置部1aを有しており、該載置部1aには光半導体素子4が取着されている。
【0015】
前記基体1は光半導体素子4を支持する支持部材として作用するとともに光半導体素子4が作動時に発する熱を良好に吸収し、かつ大気中に効率よく放散させて光半導体素子4を常に適温とする作用をなす。
【0016】
なお前記基体1は表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と銅とから成り、溶融させた銅に平均粒径5μm程度の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末を分散混入させることによって、製作されている。
【0017】
また前記基体1の上面外周部には該基体1の上面に設けた光半導体素子4が載置される載置部1aを囲繞するようにして枠体2がロウ材等の接着剤を介して取着されており、該枠体2の内側に光半導体素子4を収容するための空所が形成されている。
【0018】
前記枠体2は鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金で形成されており、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金等のインゴット(塊)をプレス加工により枠状とすることによって形成され、基体1への取着は基体1上面と枠体2の下面とを銀ロウ材を介しロウ付けすることによって行われている。
【0019】
前記枠体2はその側部に貫通孔2aが設けてあり、該貫通孔2aの内壁面には筒状の固定部材6が取着され、更に筒状の固定部材6の内側の一端には、例えば、透光性部材7が取着されている。
【0020】
前記枠体2の側部に形成されている貫通孔2aは固定部材6を枠体2に取着するための取着孔として作用し、枠体2の側部に従来周知のドリル孔あけ加工を施すことによって所定形状に形成される。
【0021】
前記枠体2の貫通孔2aに取着されている固定部材6は光ファイバー部材8を枠体2に固定する際の下地固定部材として作用するとともに光半導体素子4が励起した光を光ファイバー部材8に伝達させる作用をなし、その内側の一端には、例えば、透光性部材7が取着され、また外側の一端には光ファイバー部材8が取着される。
【0022】
前記筒状の固定部材6は鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金等の金属材料からなり、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金等のインゴット(塊)をプレス加工により筒状とすることによって形成されている。
【0023】
更に前記固定部材6はその内側の一端に、例えば、透光性部材7が取着されており、該透光性部材7は固定部材6の内部空間を塞ぎ、基体1と枠体2と蓋部材3とからなる容器5の気密封止を保持させるとともに固定部材6の内部空間を伝達する光半導体素子4の励起した光をそのまま固定部材6に取着した光ファイバー部材8に伝達させる作用をなす。
【0024】
前記透光性部材7は例えば、酸化珪素、酸化鉛を主成分とした鉛系及びホウ酸、ケイ砂を主成分としたホウケイ酸系の非晶質ガラスで形成されており、該非晶質ガラスは結晶軸が存在しないことから光半導体素子4の励起する光を透光性部材7を通過させて光ファイバー部材8に授受させる場合、光半導体素子4の励起した光は透光性部材7で複屈折を起こすことはなくそのまま光ファイバー部材8に授受されることとなり、その結果、光半導体素子4が励起した光の光ファイバー部材8への授受が高効率となって光信号の伝送効率を高いものとなすことができる。
【0025】
なお、前記透光性部材7の固定部材6への取着は、例えば、透光性部材7の外周部に予め金属層を被着させておき、該金属層と固定部材6とを金−錫合金等のロウ材を介しロウ付けすることによって行われる。
【0026】
更に前記枠体2はその側部に切欠部2bが形成されており、該切欠部2bにはセラミック端子体9が挿着されている。
【0027】
前記セラミック端子体9はセラミックス絶縁体10と複数個の配線層11とから成り、配線層11を枠体2に対し電気的絶縁をもって枠体2の内側から外側にかけて配設する作用をなし、セラミックス絶縁体10の側面に予め金属層を被着させておくとともに該金属層を枠体2の切欠部2b内壁面に銀ロウ等のロウ材を介し取着することによって枠体2の切欠部2bに挿着される。
【0028】
前記セラミック端子体9のセラミックス絶縁体10は酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミック焼結体等から成り、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合には酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤を添加混合して泥漿状となすとともに該泥漿物を従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、次に前記セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施し、所定形状となすとともに必要に応じて複数枚を積層して成形体となし、しかる後、これを1600℃の温度で焼成することによって製作される。
【0029】
また前記セラミック端子体9には枠体2の内側から外側にかけて導出する複数個の配線層11が埋設されており、該配線層11の枠体2の内側に位置する領域には光半導体素子4の各電極がボンディングワイヤ12を介して電気的に接続され、また枠体2の外側に位置する領域には外部電気回路と接続される外部リード端子13が銀ロウ等のロウ材を介してロウ付け取着されている。
【0030】
前記配線層11は光半導体素子4の各電極を外部電気回路に接続する際の導電路として作用し、タングステン、モリブデン、マンガン、銅、銀等の金属粉末により形成されている。
【0031】
前記配線層11はタングステン、モリブデン、マンガン、銅、銀等の金属粉末に適当な有機バインダー、溶剤等を添加混合して得られた金属ペーストをセラミックス絶縁体10となるセラミックグリーンシートに予め従来周知のスクリーン印刷法等の印刷法を用いることにより所定パターンに印刷塗布しておくことによってセラミックス絶縁体10に形成される。
【0032】
なお前記配線層11はその露出する表面にニッケル、金等の耐蝕性に優れ、かつロウ材との濡れ性に優れる金属を1μm〜20μmの厚みにメッキ法により被着させておくと、配線層11の酸化腐蝕を有効に防止することができるとともに配線層11への外部リード端子13のロウ付けを強固となすことができる。従って、前記配線層11はその露出する表面にニッケル、金等の耐蝕性に優れ、かつロウ材との濡れ性に優れる金属を1μm〜20μmの厚みに被着させておくことが好ましい。
【0033】
また前記配線層11には外部リード端子13が銀ロウ等のロウ材を介してロウ付け取着されており、該外部リード端子13は容器5内部に収容する光半導体素子4の各電極を外部電気回路に電気的に接続する作用をなし、外部リード端子13を外部電気回路に接続することによって容器5内部に収容される光半導体素子4は配線層11および外部リード端子13を介して外部電気回路に電気的に接続されることとなる。
【0034】
前記外部リード端子13は鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金等の金属材料から成り、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属から成るインゴット(塊)に圧延加工法や打ち抜き加工法等、従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に形成される。
【0035】
更に前記枠体2はその上面に、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金等の金属材料から成る蓋部材3が接合され、これによって基体1と枠体2と蓋部材3とからなる容器5の内部に光半導体素子4が気密に封止されることとなる。
【0036】
前記蓋部材3の枠体2上面への接合は、例えば、シームウェルド法等の溶接によって行われる。
【0037】
本発明の光半導体素子収納用パッケージにおいては、前記基体1を65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とで、溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させて形成しておくことが重要である。
【0038】
前記基体1を65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とで、溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させて形成したことから、基体1の熱伝導率が270W/m・K以上の高いものとなり、その結果、基体1上に載置される半導体素子4が作動時に多量の熱を発したとしてもその熱は基体1の載置部1aの平面方向に素早く広がらせるとともに基体1の厚さ方向を良好に伝搬させて外部に効率よく確実に放散させることができ、これによって光半導体素子4は常に適温となり、光半導体素子4を長期間にわたり安定かつ正常に作動させることが可能となる。
【0039】
また上述の65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とから成り、溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させたものである基体1は、その線熱膨張係数が鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金から成る枠体2あるいは酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミック焼結体等のセラミックス絶縁体10から成るセラミック端子体9の線熱膨張係数(6ppm/℃乃至8ppm/℃:室温〜800℃)に近似するものとなり、その結果、基体1上に枠体2やセラミック端子体9等を取着させる際や光半導体素子4が作動した際等において基体1と枠体2とセラミック端子体9に熱が作用したとしても基体1と枠体2とセラミック端子体9との間には両者の線熱膨張係数の差に起因する大きな熱応力が発生することはなく、これによって光半導体素子4を収容する容器5の気密封止が常に完全となり、光半導体素子4を安定かつ正常に作動させることが可能となる。
【0040】
なお前記基体1は表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末の量が65重量%未満となると、言い換えれば銅の量が35重量%を超えると、基体1の線熱膨張係数が枠体2の線熱膨張係数に対して大きく相違することとなり、その結果、基体1に枠体2を強固に取着させておくことができなくなってしまい、また表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末の量が80重量%を超えると、言い換えれば銅の量が20重量%未満となると基体1の熱伝導率が大きく劣化し、光半導体素子4が作動時に多量の熱を発した場合、その熱を基体1を介して外部に完全に放散させることができなくなり、その結果、光半導体素子4を高温として光半導体素子4に熱破壊を招来させたり、特性にばらつきが生じ安定に作動させることができなくなってしまう。従って、前記基体1は表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末の量が65乃至80重量%の範囲に、銅の量が20乃至35重量%の範囲に特定される。
【0041】
また前記65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と、20乃至35重量%の銅とから成る基体1は炭化珪素粉末の表面に酸化物膜、例えばSiO2等の膜を0.05μm乃至1μm程度の厚みに被着させておくことにより、炭化珪素粉末と銅との密着強度が大きく向上して基体1としての信頼性が大幅に向上する。従って前記基体1は表面に酸化物膜を0.05μm乃至1μmの厚みに被着させた炭化珪素粉末と銅とで形成しておくことが必要である。
【0042】
前記炭化珪素粉末の表面に酸化物膜を被着させる方法としては、例えば、炭化珪素粉末を大気中で約1200℃の温度で加熱することによって行われる。
【0043】
更に、前記基体1は溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させて形成したことから、基体1のヤング率が銅のヤング率に依存する100GPa程度の軟質なものとなり、その結果、基体1上に光半導体素子4を載置させた後、基体1と光半導体素子4に熱が作用して両者間に熱応力が発生したとしても、その熱応力は基体1を若干変形させることによって効率よく吸収され、光半導体素子4が基体1より剥離したり、光半導体素子4に割れやクラックを発生したりすることがなく、光半導体素子4を常に正常かつ安定に作動させることができる。
【0044】
かくして上述の光半導体素子収納用パッケージによれば、基体1の光半導体素子載置部1a上に光半導体素子4を固定するとともに該光半導体素子4の各電極をボンディングワイヤ12を介して所定の配線層11に接続させ、次に枠体2の上面に蓋部材3を接合させ、基体1と枠体2と蓋部材3とから成る容器5内部に光半導体素子4を収容し、最後に枠体2に取着させた筒状の固定部材6に光ファイバー部材8を取着させることによって最終製品としての光半導体装置となる。
【0045】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0046】
【発明の効果】
本発明の光半導体素子収納用パッケージによれば、基体を65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とで、溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させて形成し、熱伝導率を270W/m・K以上の高いものとなしたことから、基体上に載置される光半導体素子が作動時に多量の熱を発したとしてもその熱は基体の光半導体素子載置部平面方向に素早く広がらせるとともに基体の厚さ方向を良好に伝搬させて外部に効率よく確実に放散させることができ、これによって光半導体素子は常に適温となり、光半導体素子を長期間にわたり安定かつ正常に作動させることが可能となる。
【0047】
また本発明の光半導体素子収納用パッケージによれば、基体を65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とで、溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させて形成し、その線熱膨張係数を鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金から成る枠体あるいは酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミック焼結体等のセラミックス絶縁体から成るセラミック端子体の線熱膨張係数(6ppm/℃乃至8ppm/℃:室温〜800℃)に近似するものとなしたことから、基体上に枠体やセラミック端子体を取着させる際や光半導体素子が作動した際等において基体と枠体やセラミック端子体に熱が作用したとしても基体と枠体やセラミック端子体との間には両者の線熱膨張係数の相違に起因する大きな熱応力が発生することはなく、これによって光半導体素子を収容する空所の気密封止が常に完全となり、光半導体素子を安定かつ正常に作動させることが可能となる。また、65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とから成る基体は、炭化珪素粉末の表面に酸化物膜を被着させておくことにより、炭化珪素粉末と銅との密着強度が大きく向上して基体としての信頼性が大幅に向上する。また、基体は溶融させた銅に炭化珪素粉末を分散混入させて形成したものであることから、基体のヤング率が銅のヤング率に依存する100GPa程度の軟質なものとなり、その結果、基体上に光半導体素子を載置させた後、基体と光半導体素子に熱が作用して両者間に熱応力が発生したとしても、その熱応力は基体を若干変形させることによって効率よく吸収され、光半導体素子が基体より剥離したり、光半導体素子に割れやクラックを発生したりすることがなく、光半導体素子を常に正常かつ安定に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光半導体素子収納用パッケージの一実施例を示す断面図である。
【図2】図1に示す光半導体素子収納用パッケージの平面図である。
【符号の説明】
1・・・・・基体
1a・・・・載置部
2・・・・・枠体
2a・・・・貫通孔
2b・・・・切欠部
3・・・・・蓋部材
4・・・・・光半導体素子
5・・・・・容器
6・・・・・固定部材
7・・・・・透光性部材
8・・・・・光ファイバー部材
9・・・・・セラミック端子体
10・・・・セラミックス絶縁体
Claims (1)
- 上面に光半導体素子が載置される載置部を有する基体と、前記基体上に光半導体素子載置部を囲繞するようにして取着され、側部に貫通孔および切欠部を有する鉄−ニッケル−コバルト合金もしくは鉄−ニッケル合金から成る枠体と、前記貫通孔もしくは貫通孔周辺の枠体に取着され、光ファイバー部材が接合される固定部材と、前記切欠部に挿着され、セラミックス絶縁体に光半導体素子の各電極が接続される配線層が形成されているセラミック端子体と、前記枠体の上面に取着され、光半導体素子を気密に封止する蓋部材とから成る光半導体素子収納用パッケージであって、前記基体は65乃至80重量%の表面に酸化物膜を被着した炭化珪素粉末と20乃至35重量%の銅とから成り、溶融させた前記銅に前記炭化珪素粉末を分散混入させたものであることを特徴とする光半導体素子収納用パッケージ。
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