JP3979188B2 - 発熱体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、暖房、加熱、乾燥などの熱源として用いることのできる発熱体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の発熱体としては、例えば、特開昭53−143047号公報や図5に記載されるように、絶縁フィルム17を介して熱伝導板18を装着した熱伝導性基板に正抵抗温度特性による自己温度制御機能を有する発熱体材料19及び電極20を塗布、乾燥し、大きな突入電力で急速に昇温すると共に、所定の飽和温度を保ち、均一な温度分布の発熱体を形成するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の正抵抗温度特性発熱体を用いて、例えば、暖房マットのような速熱性で人体接触型の暖房製品を形成する場合、人体が快適に感じる表面温度は40℃近辺であり、表面材による温度低下を10K程度見込んでも、発熱体の発熱温度としては、50℃近辺で十分である。したがって、電源投入時は低抵抗で高電力を発生するが、50℃近辺で抵抗値が急激に増大することによって電力が急激に低下し、自己温度制御性によって50℃を保持できるような正抵抗温度特性を示す発熱体材料が必要となる。このために、発熱体材料としては、低融点の結晶性樹脂を用い、その中に分散された導電性材料が、結晶性樹脂の融点の直下での急激な比容積の増大によって導電性を失い、抵抗値が急激に増大する温度域が上記の50℃近辺となるように調整する必要がある。通常の結晶性樹脂は融点以下でも比容積の増加は得られるが、融点に近い程その増加率が急激に増す性質があるため、融点から離れた温度域では十分な正抵抗温度特性は得られない。上記のような人体接触型の暖房用途の場合、結晶性樹脂の融点としては60℃台が理想的で、このような樹脂を使用すれば、速熱性に優れるとともに、50℃近辺での自己温度制御性に優れた発熱体材料が得られる。結晶性樹脂の融点がこれより高くなると、50℃近辺の抵抗値と電源投入時の抵抗値の比率が小さくなり、50℃近辺の抵抗値を固定した場合、電源投入時の抵抗値が大きくなり、速熱性が損なわれる。また、電源投入時の抵抗値を固定すると、自己制御温度が50℃よりも高温になってしまう。結晶性樹脂の融点が80℃を越えると、速熱性と50℃近辺での自己温度制御性を両立させることは極めて困難になる。以上に示した状況から、上記のような用途では、結晶性樹脂の融点としてはできる限り低融点の方が望ましいと考えられる。
【0004】
一方、具体的に低融点の結晶性樹脂を選定するとなると、結晶性の観点からは、低融点になるほど結晶性が低下し、十分な正抵抗温度特性が得られなく傾向にある。現状で発熱体材料として最も有用とされるオレフィン系樹脂の中で融点が60℃台の材料を選定するとなると、酢酸ビニルの含有量の多いエチレン酢酸ビニル重合体を選定することになる。エチレン酢酸ビニル重合体は酢酸ビニルの含有量に比例して結晶性が低下する傾向があり、融点が60℃台のエチレン酢酸ビニル重合体では十分な正抵抗温度特性が得られない場合が多い。したがって、結晶性の観点からは、融点が高いグレードの方が望ましいと考えられる。
【0005】
また、このような暖房製品がさらされる環境条件を考慮すると、通電による自己発熱の場合は、正抵抗温度特性による自己温度制御性によって上限温度が規制されるので特に問題はないが、例えば、他の高温熱源を有する機器との併用、直射日光を浴びるような環境、倉庫での保管条件や輸送条件、車載用途などを考慮すると、製品としては少なくとも60℃以上、用途によっては80℃以上の温度に耐える性能が要求される。60℃近辺に融点を持つ結晶性樹脂を主成分とする発熱体材料をこのような条件にさらせば、通常、発熱体の変形、抵抗特性の変化、寿命の低下など、好ましくない結果を生ずる。このために、従来の技術では、製品の表面材をさらに厚くしたり、発熱体の装着面積を減らしたりするなどして、熱伝導あるいは熱伝達を妨げることによって、表面温度は40℃近辺であるが、発熱体温度を例えば60℃近辺まで高め、より高融点の結晶性樹脂を使用できるようにする方法。速熱性あるいは自己温度制御性による温度の安定性を犠牲にして、より高融点の結晶性樹脂を使用できるようにする方法等が選択されている。熱伝導を妨げる構成であれば、表面温度の達成は可能であるが、熱伝導を妨げることによって、製品の表面温度の昇温速度が大きく低下する欠点があった。また、発熱体の装着面積を減らして平均表面温度を下げる構成では、飽和時の適切な表面温度は達成できるものの、発熱体と製品表面との間の熱抵抗を増大させることに変わりはなく、製品の昇温速度が大きく低下する欠点があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、正抵抗温度特性を応用することによって、急速に昇温すると共に、所定の表面温度で急速かつ安定に飽和する発熱体を提供することを目的とし、合わせて、結晶性が高く、高温環境に強い高融点の結晶性樹脂を使用できる技術手段を提供するもので、特に、低温域の表面温度を有する正抵抗温度特性発熱体を形成する場合に極めて有用である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明の発熱体は、基板上に形成した一対の電極から電圧が印加されて発熱する抵抗要素を前記基板上に形成してなる発熱体であって、
前記抵抗要素は第1の面状抵抗体と、前記第1の面状抵抗体より面積が小さい第2の面状 抵抗体とに細分割されており、かつ、前記第1の面状抵抗体と前記第2の面状抵抗体は交互に配設され、隣接する少なくとも1組毎に直列に電気的に接続されて発熱体全面を形成したものであり、通電開始時点では前記第1の面状抵抗体及び前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が略同一電力密度で共に発熱して高電力の面状熱源となり、その後の温度上昇に伴って少なくとも前記第2の面状抵抗体の抵抗値が増大し、前記第1の面状抵抗体の各抵抗要素よりも前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が高抵抗化し、前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が主に発熱することにより、正抵抗温度特性による小面積の定温熱源であると同時に散在熱源となって低電力で飽和し、少なくとも、前記第2の面状抵抗体が、人体が直接接触した場合に、実用上、温度分布を感じないだけの形状にまで細かく分割されてなり、前記定温熱源の自己制御温度にかかわらず、体感的に快適と感じることのできる低い温度域で飽和するようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、基板上に形成した一対の電極から電圧が印加されて発熱する抵抗要素を前記基板上に形成してなる発熱体であって、前記抵抗要素は第1の面状抵抗体と、前記第1の面状抵抗体より面積が小さい第2の面状抵抗体とに細分割されており、かつ、前記第1の面状抵抗体と前記第2の面状抵抗体は交互に配設され、隣接する少なくとも1組毎に直列に電気的に接続されて発熱体全面を形成したものであり、通電開始時点では前記第1の面状抵抗体及び前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が略同一電力密度で共に発熱して高電力の面状熱源となり、その後の温度上昇に伴って少なくとも前記第2の面状抵抗体の抵抗値が増大し、前記第1の面状抵抗体の各抵抗要素よりも前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が高抵抗化し、前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が主に発熱することにより、正抵抗温度特性による小面積の定温熱源であると同時に散在熱源となって低電力で飽和し、少なくとも、前記第2の面状抵抗体が、人体が直接接触した場合に、実用上、温度分布を感じないだけの形状にまで細かく分割されてなり、前記定温熱源の自己制御温度にかかわらず、体感的に快適と感じることのできる低い温度域で飽和するようにしてなる発熱体である。
【0009】
通電開始時点では、第1及び第2の面状抵抗体の各抵抗要素の抵抗値が共に低い状態にあり、双方の抵抗値が比較的近接している。このために、第1の面状抵抗体及び第2の面状抵抗体の各抵抗要素からなる直列回路において、その抵抗値配分によって電力に差があるものの全ての各抵抗要素は高電力で発熱する。全ての各抵抗要素が発熱することにより、高電力の面状発熱体が形成され、広域発熱による急速加熱を可能にする。温度が上昇するに伴い、第2の面状抵抗体の抵抗値が増大するために、第1の面状抵抗体及び第2の面状抵抗体の各抵抗要素からなる直列回路において、第2の面状抵抗体の各抵抗要素の抵抗値が明らかに高くなり、第2の面状抵抗体の各抵抗要素の電力の配分が高まる。
【0010】
この時、直列回路の抵抗値が増大するために全体の電力は低下し、電力の配分が低下する第1の面状抵抗体の電力は大きく低下するが、第2の面状抵抗体の電力が大きく低下することはなく、第2の面状抵抗体の各抵抗要素部分の温度は上昇を続ける。この結果、第2の面状抵抗体の抵抗値がさらに増大するために、第1の面状抵抗体及び第2の面状抵抗体の各抵抗要素からなる直列回路において、第2の面状抵抗体の各抵抗要素の抵抗値が決定的に高くなり、第2の面状抵抗体の各抵抗要素が主体的に発熱するようになる。この状態は第2の面状抵抗体の正抵抗温度特性による自己温度制御発熱であり、第2の面状抵抗体は、温度の上昇によって、急激な抵抗値増大及び電力低下がもたらされるので、比較的少ない温度上昇で飽和温度に到達する。
【0011】
このように、飽和温度においては、実質的に第2の面状抵抗体のみが発熱し、自己温度制御発熱による定温の熱源が散在する発熱体が形成される。この飽和状態においては、発熱部の温度が多少高くなっても発熱面積が限定されるために平均温度はむしろ低下し、電力をより低下させることができる。したがって、正抵抗温度特性による自己制御温度が高い抵抗体材料であっても低温の発熱体を形成することができる。また、第2の面状抵抗体の各抵抗要素は複数に分割され、散在しているために、発熱体全体としては温度の一様性がくずれることはなく、実用上、支障のない温度分布を形成することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、第1の面状抵抗体および第2の面状抵抗体は共に正抵抗温度特性を有し、温度上昇に伴って抵抗値が増大するが、少なくとも通電開始近傍の温度においては、第1の面状抵抗体の抵抗要素の電力密度と第2の面状抵抗体の抵抗要素の電力密度が略同一であり、一方、飽和温度に至るまでの温度域においては、前記第2の面状抵抗体の抵抗値の増大率が前記第1の面状抵抗体の抵抗値の増大率を上回り、前記第1の面状抵抗体の各抵抗要素よりも前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が高抵抗化するようにしたものである。
【0013】
このために、第1の面状抵抗体及び第2の面状抵抗体の各抵抗要素からなる直列回路において、各抵抗要素は全て高電力で発熱する。温度が上昇するに伴い、第1の面状抵抗体及び第2の面状抵抗体の双方の抵抗値が増大するために電力は低下するが、双方の抵抗値が比較的近接していることに変わりはなく、双方の各抵抗要素が全て発熱する状態がこの時点でも継続している。温度がさらに上昇するに伴い、第2の面状抵抗体の抵抗値の増大率が第1の面状抵抗体の抵抗値の増大率を上回り、第1の面状抵抗体の各抵抗要素よりも第2の面状抵抗体の各抵抗要素が明らかに高抵抗化する。この時点で第2の面状抵抗体の各抵抗要素の電力の配分が高まり、その部分の温度は上昇を続ける。
【0014】
その結果、第2の面状抵抗体の抵抗値がさらに増大するために、第1の面状抵抗体及び第2の面状抵抗体の各抵抗要素からなる直列回路において、第2の面状抵抗体の各抵抗要素の抵抗値が決定的に高くなり、第2の面状抵抗体の各抵抗要素が主体的に発熱するようになる。この状態は第2の面状抵抗体の正抵抗温度特性による自己温度制御発熱であり、第2の面状抵抗体は、温度の上昇によって、急激な抵抗値増大及び電力低下がもたらされるので、比較的少ない温度上昇で飽和温度に到達する。
【0015】
このように、飽和温度においては、実質的に第2の面状抵抗体のみが発熱し、自己温度制御発熱による定温の熱源が散在する発熱体が形成される。この飽和状態においては、発熱部の温度が多少高くなっても発熱面積が限定されるために平均温度はむしろ低下し、電力をより低下させることができる。したがって、正抵抗温度特性による自己制御温度が高い抵抗体材料であっても低温の発熱体を形成することができる。また、第2の面状抵抗体の各抵抗要素は複数に分割され、散在しているために、発熱体全体としては温度の一様性がくずれることはなく、実用上、支障のない温度分布を形成することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、第1の面状抵抗体は飽和温度近傍までの温度域では実質的に有効な正抵抗温度特性を示さず、第2の面状抵抗体が実質的に有効な正抵抗温度特性を示すものである。通電開始時点では、第1及び第2の面状抵抗体の各抵抗要素の抵抗値が共に低い状態にあり、双方の抵抗値が比較的近接している。このために、第1の面状抵抗体及び第2の面状抵抗体の各抵抗要素からなる直列回路において、各抵抗要素は全て高電力で発熱する。温度が上昇するに伴い、第1の面状抵抗体の抵抗値は大きく変化しないが、第2の面状抵抗体の抵抗値のみが増大するために第1の面状抵抗体の各抵抗要素よりも第2の面状抵抗体の各抵抗要素が明らかに高抵抗化する。
【0017】
この時点で第2の面状抵抗体の各抵抗要素の電力の配分が高まり、その部分の温度はさらに上昇する。その結果、第2の面状抵抗体の抵抗値がさらに増大するために、第1の面状抵抗体及び第2の面状抵抗体の各抵抗要素からなる直列回路において、第2の面状抵抗体の各抵抗要素の抵抗値が決定的に高くなり、第2の面状抵抗体の各抵抗要素が主体的に発熱するようになる。この状態は第2の面状抵抗体の正抵抗温度特性による自己温度制御発熱であり、第2の面状抵抗体は、温度の上昇によって、急激な抵抗値増大及び電力低下がもたらされるので、比較的少ない温度上昇で飽和温度に到達する。
【0018】
このように、飽和温度においては、実質的に第2の面状抵抗体のみが発熱し、自己温度制御発熱による定温の熱源が散在する発熱体が形成される。この飽和状態においては、発熱部の温度が多少高くなっても発熱面積が限定されるために平均温度はむしろ低下し、電力をより低下させることができる。したがって、正抵抗温度特性による自己制御温度が高い抵抗体材料であっても低温の発熱体を形成することができる。また、第2の面状抵抗体の各抵抗要素は複数に分割され、散在しているために、発熱体全体としては温度の一様性がくずれることはなく、実用上、支障のない温度分布を形成することができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(実施例1)
図1は本発明における実施例1の発熱体の一部を拡大した平面図であり、図2はその全体を示す平面図である。図1及び図2において、1は基板であり、188μm厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いている。2、2’は一対の電極であり、エポキシ樹脂中に銀粉末を分散した導電性銀ペーストを、厚膜印刷によって基板1上に形成している。電極2、2’は主電極3、3’と主電極3、3’から分岐される枝電極4、4’から構成され、一対の枝電極4、4’が交互に対向するように配置されている。また、5は中間電極であり、一対の枝電極4、4’の間に電極2、2’とは独立に基板1上に形成されている。中間電極5は、電極2、2’と同様に導電性銀ペーストを厚膜印刷することによって形成されている。そして、6は第1の面状抵抗体であり、共重合ポリエステル樹脂と高ストラクチャーのカーボンブラックからなるペーストを、厚膜印刷によって枝電極4と中間電極5の間に形成したものである。また、7は第2の面状抵抗体であり、融点92℃のエチレン酢酸ビニル共重合体と低ストラクチャーのカーボンブラックの混練物を、ゴム系のバインダーと高沸点の芳香族系溶剤を用いてペースト化したものを、厚膜印刷によって枝電極4’と中間電極5の間に形成したものである。なお、第1の面状抵抗体6、第2の面状抵抗体7、中間電極5は、それぞれ非発熱部8によって分割されて、各枝電極4、4’間に電気的に並列に形成されている。
【0021】
分割されて形成された第1の面状抵抗体6、第2の面状抵抗体7、中間電極5は、それぞれ、幅寸法すなわち電圧印加直交方向寸法が30mmであり、幅3mmの非発熱部8によって分割されている。第1の面状抵抗体6が形成される枝電極4と中間電極5の間の距離すなわち電圧印加方向寸法は15mmである。また、第2の面状抵抗体7が形成される枝電極4’と中間電極5の間の距離、すなわち電圧印加方向寸法は5mmである。第1の面状抵抗体6、第2の面状抵抗体7、中間電極5は、1つの対となる枝電極4、4’間に5個に分割されて隣接され、対となる枝電極4、4’は発熱体全体で20形成されている。第1の面状抵抗体6と第2の面状抵抗体7は中間電極5を介して直列に接続されているが、発熱体全体ではこのような直列回路が100回路形成され、これらが電気的に並列に接続されている。
【0022】
分割されて形成される第1の面状抵抗体6と第2の面状抵抗体7の分割単位での20℃における抵抗値は、250Ω及び250Ωであった。面積抵抗値を算出すると、それぞれ500Ω及び1500Ωとなる。第1の面状抵抗体6と第2の面状抵抗体7からなる直列回路の分割単位での抵抗値は500Ωとなり、発熱体全体では100回路が並列であるから5Ωとなる。ここにDC15Vの電圧を印加すると、電圧印加直後の電力は45Wが得られる。なお、第1の面状抵抗体6は温度が上昇しても抵抗値は実質的に一定であるが、第2の面状抵抗体7は融点92℃の結晶性樹脂中に低ストラクチャーのカーボンブラックを分散しているために温度の上昇とともに抵抗値が増大する特性に優れ、大きな正抵抗温度特性を示す。第2の面状抵抗体7の分割単位での抵抗値は20℃で250Ωであるが、50℃では750Ω、60℃では1750Ωとなる。したがって、分割単位での直列抵抗は20℃で500Ω、50℃で1000Ω、60℃で2000Ωとなる。
【0023】
発熱体が20℃の時にDC15Vを印加すると45Wの電力が得られるが、直列回路における電力の比率は抵抗値に比例するので、第1の面状抵抗体6は22.5W、第2の面状抵抗体7は22.5Wを発熱する。また、この時点で、第1の面状抵抗体6には7.5V、第2の面状抵抗体7には7.5Vが印加されている。発熱体の温度が上昇するにつれ、第2の面状抵抗体7の抵抗値が増大するために直列回路の抵抗値も増大し、全体の電力は低下する。しかしながら、例えば発熱体が50℃の時にDC15Vを印加すると、そのときの電力は22.5Wであるが、第2の面状抵抗体7の抵抗値が明らかに高くなるために、第1の面状抵抗体6の電力5.6Wに対し、第2の面状抵抗体7は16.9Wとなり、電力の不均衡が生じる。この時点で、第1の面状抵抗体6の昇温速度は極めて緩やかになるが、第2の面状抵抗体7はなおも昇温を続けるために、やがて、その抵抗値の差は決定的になる。発熱体が60℃の時にDC15Vを印加すると、そのときの電力は11.2Wであるが、第2の面状抵抗体7の抵抗値が決定的に高くなるために、第1の面状抵抗体6の電力1.4Wに対し、第2の面状抵抗体7は9.8Wとなり、第2の面状抵抗体7が主体的に発熱する状態となる。
【0024】
20℃の室温に発熱体をなじませ、DC15Vを印加して飽和するまで通電してみたところ、通電開始時は第1の面状抵抗体6及び第2の面状抵抗体7の抵抗値が近接しているために両者が発熱し、発熱体は広域で高電力を得て、面全体で急速に昇温することを確認した。また、温度が上昇するにつれ、上記の過程を経て、第2の面状抵抗体7が主体的に発熱する状態になることを確認した。なお、この経過の観察は輻射温度計を用いて行った。最終的に第2の面状抵抗体7は60℃で飽和せずに、なおも昇温を続け、最終的に63℃で飽和した。そのときの発熱体の電力は7.7Wであった。第2の面状抵抗体7は、60℃以上では抵抗値増大率が極めて急峻となり、比較的少ない温度上昇であっても電力が大きく低下するために、発熱と放熱が釣り合うものと考えられる。
【0025】
飽和状態において温度分布を確認したところ、輻射温度計では温度分布が観測されたが、人間が直接座ったりしても温度分布は感じられず、実用上、均一発熱と考えられる。面状抵抗体を細かく分割し、発熱体の面に散在させたために、実用上、均一と見なせる発熱体を形成することができたものと考えられる。
【0026】
(比較例1)
実施例1の比較例として、第1の面状抵抗体6を面積抵抗10Ω/□の抵抗体に置き換えて同様の発熱体を作製した。この抵抗体はフェノール樹脂にグラファイトを多量に分散させたものであり、抵抗特性を測定したところ、第1の面状抵抗体6の抵抗値は実質的に0であり、第2の面状抵抗体7の抵抗特性のみが測定された。この比較例の発熱体にDC15Vを印加して昇温特性を測定した。実施例1と比較すると、通電開始時の電力は90Wに増大したが、飽和時の電力には差異が見られなかった。また、通電開始直後の電力の減衰が極めて速く、初期電力は実施例1の2倍程度あるにもかかわらず、所定時間までの積算電力は逆に低下した。さらに、体感的には速熱性は感じられず、温度データでは飽和までに長い時間を必要とすることが判明した。この原因は通電開始直後の発熱面積が不足すると、熱が面方向に拡散するための時間が必要になり、いくら電力を投入しても速熱性が改善されないという現象によるものと思われる。
【0027】
実施例1では、通電開始時には、第1の面状抵抗体6と第2の面状抵抗体7の双方を発熱させるようにしているために発熱面積が広く、熱が面方向に拡散するための時間が不要となる。このことから速熱性の面では特に有利となると考えられる。また、正抵抗温度特性を有する面状抵抗体は多くの電力を投入すると、急速に温度が上がるが、それだけ急速に電力が低下する特性があり、面状の熱源の場合、できる限り広い面積に展開させないと速熱性の面では逆効果となる。実施例1では、通電開始時には、正抵抗温度特性のない第1の面状抵抗体6を発熱させようにしているために、投入電力を高めても急速に電力が低下することはなく、速熱性の面では特に有利になると考えられる。
【0028】
(比較例2)
実施例1の別の比較例として、全面が第2の面状抵抗体によって構成される発熱体を作製した。抵抗値が実施例1と同一になるように、中間電極を廃止し、各枝電極間の距離を14mmとし、対となる枝電極を発熱体全体で28形成し、20℃の抵抗値が5Ωとなるようにした。この発熱体の抵抗値は20℃で5Ω、50℃で15Ω、60℃では35Ωとなった。この比較例の発熱体にDC15Vを印加したところ、実施例1に比較して、通電開始時の電力は45Wで同一であったが、飽和時の電力は13Wであり、明らかに大きくなった。飽和時の温度を測定したところ、発熱体の温度は極めて均一であり、実施例1よりも低い53℃で飽和していた。しかしながら、発熱体の平均温度としては実施例1よりは明らかに高く、直接座ってみても熱く感じられる温度であった。なお、速熱性は非常に優れ、飽和温度及び飽和電力が大きい以外、明確な欠点はなかった。
【0029】
(比較例3)
実施例1の別の比較例として、全面が別の面状抵抗体によって構成される発熱体を作製した。実施例1では、第2の面状抵抗体には融点92℃のエチレン酢酸ビニル共重合体を使用したが、より低温で大きな正抵抗温度特性が得られるように、融点74℃のエチレン酢酸ビニル共重合体を用いて抵抗体を作製した。面積抵抗値が高くなったために、各枝電極間の距離を10mmとし、対となる枝電極を発熱体全体で37形成し、20℃の抵抗値が5Ωとなるようにした。この発熱体の抵抗値は20℃で5Ω、50℃で23Ω、60℃では65Ωとなった。この比較例の発熱体にDC15Vを印加して昇温特性を測定した。実施例1に比較すると、通電開始時の電力は45Wで同一であり、飽和時の電力も7Wと、ほぼ同一の電力で飽和した。速熱性や温度分布には何ら遜色なく、飽和時の体感温度も低く感じられた。ただし、この発熱体を80℃の雰囲気に曝した後に抵抗値を測定すると、抵抗値変化率が+50%を超え、熱サイクルによってさらに抵抗値が増大する傾向が見られた。
【0030】
この発熱体は非常に正抵抗温度特性に優れているために、それ自身では80℃を超える温度まで発熱することは有り得ないが、使用環境や保存環境を考えると少なくとも80℃までは安定に使用できることが望ましい。結晶性樹脂をその融点以上の温度まで曝すことは、特に、抵抗値の安定性を考慮すると、避けるべきであるという結果となった。
【0031】
以上、実施例1に示したように、本発明の発熱体は通電開始時には広域で高電力を発生し、速熱性に優れている。また、体感的に快適と感じることのできる低い温度域で飽和させることができる。しかも、通常の使用条件で考えられる80℃までの環境温度に曝されても抵抗特性の安定性を保つことができるものであり、極めて有用であると考えられる。
【0032】
なお、実施例1では、第1の面状抵抗体6と第2の面状抵抗体7の分割単位での20℃における抵抗値は、250Ω及び250Ωで同一であったが、この発熱体の抵抗値を室温−20℃で測定した結果、それぞれ250Ω及び150Ωになり、第1の面状抵抗体6の方が高抵抗となっていることが判明した。−20℃の環境下で通電したところ、通電開始直後は56Wの電力が得られ、その近辺での電力がしばらく持続してから、電力が低下する現象が見られた。このように、正抵抗温度特性を実質的に示さない抵抗体の方を高抵抗値に設定することにより、正抵抗温度特性を示す抵抗体の電力をかなり低く抑えることができる。この状態であれば、正抵抗温度特性を示す抵抗体の温度がなかなか上がらないために、通電開始時の電力をしばらく持続することができる。この発熱体は体感試験でも極めて優れた速熱性を発揮することを確認できた。また、通電開始時の電力を必要以上に高めることなく、限られた電力で速熱性を確保できることも確認できた。実施例1の発熱体は、第1の面状抵抗体6の方が高抵抗となる0℃以下の低温域では、通電開始時の電力をしばらく持続するが、20℃では殆ど持続しないことも判明した。速熱性を確保したい場合には、第1の面状抵抗体6の方が高抵抗となるようにすることがより好ましいと言える。
【0033】
また、実施例1では、第1の面状抵抗体6は450mm2、第2の面状抵抗体7は150mm2の面積の比率で形成したが、第1の面状抵抗体6は通電開始直後の発熱面積を拡大し、高電力を発熱体の全面で発生させ、十分な速熱性を発揮するのが目的であるから、可能な限り面積が大きい方が望ましい。一方、第2の面状抵抗体7は飽和時の発熱面積を制限し、飽和時の電力を抑制するのが目的であるから、可能な限り面積が小さい方が望ましい。したがって、少なくとも、第1の面状抵抗体6の展開面積は、第2の面状抵抗体7の展開面積よりも大きくすることが望ましく、その比率が大きいほど、第1の面状抵抗体の広域発熱の機能を十分に発揮することができる。
【0034】
また、実施例1では、第1の面状抵抗体6は30mm×15mmの長方形、第2の面状抵抗体7は30mm×5mmの細い長方形であったが、第1の面状抵抗体6は通電開始直後の発熱面積を確保するのが目的であるから、正方形に近い面形状が望ましい。また、第2の面状抵抗体7は飽和時の発熱面積を制限するのが目的であるから、縦横比の大きな細長い形状が望ましい。さらに、第2の面状抵抗体7は細長い形状とすることによって、その抵抗要素からの放熱熱抵抗が高まるので、発熱体表面あるいは被加熱体へ伝達される熱量が局部的に集中しなくなる。この現象は特に体感温度として感じられるものであって、そのように熱源を散在させた発熱体は、実質的に温度が一様となる。このことから、第2の面状抵抗体7は少なくとも第1の面状抵抗体6よりも細長い形状、すなわち、線状に近い形状にすることが望ましい。さらに好ましくは、点状に近い形状にすることが望ましい。
【0035】
このような観点から、第2の面状抵抗体の各抵抗要素の電圧印加方向寸法を、第1の面状抵抗体の各抵抗要素の電圧印加方向寸法よりも小さくすることが望ましい。また、別の観点からであるが、第2の面状抵抗体は大きな正抵抗温度特性を付与するために高い面積抵抗値となる傾向にある。電圧印加方向寸法を小さくすると抵抗値を下げやすくなり、直列回路を組む第1の面状抵抗体の方により大きな電圧及び電力を配分することが可能になる。さらに、正抵抗温度特性を有する面状発熱体は、熱拡散が不十分な条件では、電圧集中を伴う局部発熱現象を生じる可能性があるが、電圧印加方向寸法を小さくすれば熱拡散が格段に改善されるため、このような現象を防止できる。
【0036】
また、実施例1では、第1の面状抵抗体6は30mm×15mm、第2の面状抵抗体7は30mm×5mmであって、同一の電圧印加直交方向寸法を有していたが、それぞれの抵抗体の電力密度を調整するためには電圧印加直交方向寸法を変更することが望ましい。実施例1ではそれぞれの抵抗体の面積抵抗値が500Ω/□、1500Ω/□であり、抵抗値は250Ω、250Ω、電圧は7.5V、7.5V、電力は22.5W、22.5W、電力密度は500W/m2、1500W/m2であって、特に、電力密度のバランスは必ずしも最適値ではなかった。電力密度は発熱体の昇温能力であるために、通電開始直後の電力密度は一様であることが望ましい。しかしながら、実施例1のように、正抵抗温度特性が必要な場合には、材料組成によって制約があり、最適な面積抵抗値が得られない場合が多い。また、各抵抗要素の電圧印加方向寸法については、発熱面積、電圧集中、発熱間隔等の制約があり、自由に設定できない。
【0037】
この電圧印加方向寸法と電圧が決まってしまえば、電力密度は面積抵抗値に依存して決定されてしまう。しかし、直列回路の場合、電圧印加直交方向寸法を変えることによって、電力密度を調整できる特徴がある。面積抵抗値が高い抵抗体は電圧印加直交方向寸法を大きく、面積抵抗値が低い抵抗体は電圧印加直交方向寸法を小さくすることによって電力密度を近づけることができる。実施例1の第1の面状抵抗体6及び第2の面状抵抗体7寸法をそれぞれ20mm×15mm、30mm×5mmとするだけで、電力密度は720W/m2、960W/m2となる。電圧印加直交方向寸法を変更することによって、必要に応じて電力密度を調整することができる。なお、電圧印加直交方向寸法の異なる抵抗体を電気的に接続する場合、中間電極は極めて有効である。
【0038】
また、実施例1では、第1の面状抵抗体6は正抵抗温度特性を全く示さない抵抗体材料を使用していたが、第1の面状抵抗体6の抵抗体を融点130℃の高密度ポリエチレンを用いた材料に変更することによって有用な発熱体が形成できる。高密度ポリエチレンを用いた抵抗体は80℃以上で有効な正抵抗温度特性を示すが、80℃以下の温度域では実質的に正抵抗温度特性を示さない。したがって、実施例1の第1の面状抵抗体6を高密度ポリエチレンを用いた抵抗体に置き換えても、実施例1と全く同様の発熱特性を得ることができる。しかしながら、何らかの原因で発熱体が80℃以上に過熱した場合、この抵抗体の抵抗値が急激に増大して、それ以上の過熱を防止することができる。
【0039】
(実施例2)
図3は本発明における実施例2の発熱体の一部を拡大した平面図であり、図4はその全体を示す平面図である。図3及び図4において、9は基板であり、188μm厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いている。10、10’は一対の電極であり、エポキシ樹脂中に銀粉末を分散した導電性銀ペーストを、厚膜印刷によって基板1上に形成している。電極10、10’は主電極11、11’と主電極11、11’から分岐される枝電極12、12’から構成され、一対の枝電極12、12’が交互に対向するように配置されている。また、13は中間電極であり、一対の枝電極12、12’の間に電極10、10’とは独立に基板9上に形成されている。中間電極13は、電極10、10’と同様に導電性銀ペーストを厚膜印刷することによって形成されている。そして、14は第1の面状抵抗体であり、融点92℃のエチレン酢酸ビニル共重合体と高ストラクチャーのカーボンブラックからなるの混練物を、ゴム系のバインダーと高沸点の芳香族系溶剤を用いてペースト化したものを、厚膜印刷によって枝電極12と中間電極13の間に形成したものである。また、15は第2の面状抵抗体であり、融点92℃のエチレン酢酸ビニル共重合体と低ストラクチャーのカーボンブラックの混練物を、ゴム系のバインダーと高沸点の芳香族系溶剤を用いてペースト化したものを、厚膜印刷によって枝電極12’と中間電極13の間に形成したものである。なお、第1の面状抵抗体14、第2の面状抵抗体15、中間電極13は、それぞれ非発熱部16によって分割されて、各枝電極12、12’間に電気的に並列に形成されている。
【0040】
分割されて形成された第1の面状抵抗体14、第2の面状抵抗体15、中間電極13は、それぞれ、幅寸法すなわち電圧印加直交方向寸法が30mmであり、幅3mmの非発熱部16によって分割されている。第1の面状抵抗体14が形成される枝電極12と中間電極13の間の距離すなわち電圧印加方向寸法は8mmである。また、第2の面状抵抗体15が形成される枝電極12’と中間電極13の間の距離、すなわち電圧印加方向寸法は3mmである。第1の面状抵抗体14、第2の面状抵抗体15、中間電極13は、1つの対となる枝電極12、12’間に5個に分割されて隣接され、対となる枝電極12、12’は発熱体全体で34形成されている。第1の面状抵抗体14と第2の面状抵抗体15は中間電極13を介して直列に接続されているが、発熱体全体ではこのような直列回路が170回路形成され、これらが電気的に並列に接続されている。
【0041】
分割されて形成される第1の面状抵抗体14と第2の面状抵抗体15の分割単位での20℃における抵抗値は、620Ω及び230Ωであった。面積抵抗値を算出すると、それぞれ2320Ω及び2320Ωで同一となる。なお、第2の面状抵抗体15の抵抗体構成材料は実施例1と同じであるが、印刷膜厚を薄くすることによって面積抵抗値を高め、第1の面状抵抗体14の面積抵抗値と同一となるようにしたものである。第1の面状抵抗体14と第2の面状抵抗体15からなる直列回路の分割単位での抵抗値は850Ωとなり、発熱体全体では170回路が並列であるから5Ωとなる。ここにDC15Vの電圧を印加すると、電圧印加直後の電力は45Wが得られる。なお、第1の面状抵抗体14は融点92℃の結晶性樹脂を用いているために温度の上昇とともに抵抗値が増大する特性を示すが、高ストラクチャーのカーボンブラックを用いているために導電パスが安定で、正抵抗温度係数は全般に余り大きくなく、特に高温域での温度係数が控え目になる傾向にある。第2の面状抵抗体15は、融点92℃の結晶性樹脂中に低ストラクチャーのカーボンブラックを分散しているために導電パスの変化幅が大きく、温度の上昇とともに抵抗値が増大する特性に優れ、大きな正抵抗温度係数を示す。
【0042】
第1の面状抵抗体14の分割単位での抵抗値は20℃で620Ωであるが、50℃では990Ω、60℃では1550Ωとなる。第2の面状抵抗体15の分割単位での抵抗値は20℃で230Ωであるが、50℃では690Ω、60℃では1610Ωとなる。したがって、分割単位での直列抵抗は20℃で850Ω、50℃で1680Ω、60℃で3160Ωとなる。
【0043】
発熱体が20℃の時にDC15Vを印加すると45Wの電力が得られるが、直列回路における電力の比率は抵抗値に比例するので、第1の面状抵抗体14は32.8W、第2の面状抵抗体15は12.2Wを発熱する。また、この時点で、第1の面状抵抗体14には10.9V、第2の面状抵抗体15には4.1Vが印加されている。第1の面状抵抗体14の発熱量が大きく、バランスが崩れているように思われるが、この時点での電力密度は共に800W/m2であり、昇温能力の均衡がとれている。発熱体の温度が上昇するにつれ、第1の面状抵抗体及び第2の面状抵抗体の抵抗値が増大するために直列回路の抵抗値も増大し、全体の電力は低下する。しかしながら、例えば発熱体が50℃の時にDC15Vを印加すると、そのときの発熱体の電力は22.8Wが得られるが、第1の面状抵抗体14と第2の面状抵抗体15の電力はそれぞれ13.4W、9.4Wとなる。実施例1と比較すると、この時点での第1の面状抵抗体14の電力が大きく、全ての面状抵抗体が実質的に発熱状態にあると言える。また、電力密度はそれぞれ330W/m2、610W/m2となり、昇温能力の均衡が崩れ始めていて、第2の面状抵抗体15の昇温能力の方が勝っている。この時点で、第1の面状抵抗体14の昇温速度は緩やかになるが停止はしない。
【0044】
しかし、第2の面状抵抗体15の方が昇温速度は大きいために、そのまま通電を続けると、第2の面状抵抗体15の方が高温となり、明確な抵抗値の差が生じる。第1の面状抵抗体14及び第2の面状抵抗体15が60℃の時にDC15Vを印加すると、そのときの電力は12.1Wであるが、第2の面状抵抗体15の抵抗値の増大率が高いために、第1の面状抵抗体14の電力5.9Wに対し、第2の面状抵抗体15は6.2Wとほとんど同一になる。また、電力密度はそれぞれ150W/m2、410W/m2となり、昇温能力は不均衡となり、そのまま通電を続けると、即座に第2の面状抵抗体15の方が高温となり、高抵抗となって主体的に発熱するようになる。
【0045】
20℃の室温に発熱体をなじませ、DC15Vを印加して飽和するまで通電させてみたところ、通電開始時は第1の面状抵抗体14及び第2の面状抵抗体15の抵抗値が近接しているために両者が発熱し、電力密度が同一であり、均一な発熱分布が得られることを確認した。また、広域で高電力が発生するために、面全体で急速に昇温することを確認した。また、温度が上昇するにつれ、徐々に第2の面状抵抗体15の発熱の比率が高まり、その後、実施例1と同様に面状抵抗体15が主体的に発熱するようになることを確認した。最終的に第2の面状抵抗体15は60℃で飽和せずに、なおも昇温を続け、最終的に62℃で飽和した。そのときの電力は7Wであった。第2の面状抵抗体15は、60℃以上では抵抗値増大率が極めて急峻となり、比較的少ない温度上昇であっても電力が大きく低下するために、発熱と放熱が釣り合い、飽和するものと考えられる。なお、実施例2の発熱体は実施例1に比べると、第1の面状抵抗体14の電力の低下速度が遅く、積算電力も大きくなることを確認した。実施例2の構成は最終的には低電力で飽和するが、一旦、発熱体全体の温度が50℃近辺まで上がる時期があり、体感実験では、速熱感を強く感じるものであった。飽和状態において温度分布を確認したところ、輻射温度計では温度分布が観測されたが、人間が直接座ったりしても温度分布は全く感じられず、実用上、均一発熱と考えられる。
【0046】
実施例1よりも面状抵抗体を細かく分割し、発熱体の面に散在させたために、実用上、均一と見なせる発熱体を形成することができたものと考えられる。
【0047】
以上、実施例2に示したように、本発明の発熱体は通電開始時のみならずある程度温度が上昇する時点まで、広域で高電力を発生させることできるもので、特に速熱性に優れている。また、体感的に快適と感じることのできる低い温度域で飽和させることができる。しかも、通常の使用条件で考えられる80℃までの環境温度に曝されても抵抗特性の安定性を保つことができるものであり、極めて有用であると考えられる。
【0048】
以上、実施例に基づいて説明を加えたが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、特に抵抗体材料に関しては以下に示す材料が選択できる。抵抗体の抵抗温度特性を設定するための調整ポイントは、結晶性樹脂の融点及びカーボンブラックのストラクチャーだけではなく、結晶性樹脂では、結晶化度、分子量分布、官能基、分子構造等があり、カーボンブラックでは、比表面積、粒子径、官能基等がある。これらの観点から多彩な材料が使用可能である。本実施例では、結晶性樹脂にエチレン酢酸ビニル共重合体及び高密度ポリエチレンを示したが、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、エチレンエチルアクリレート、アイオノマなどのオレフィン系の結晶性樹脂でも同様の作用と効果がある。さらに、ポリ弗化ビニリデン、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコン樹脂など、オレフィン系以外の結晶性樹脂でも同様の作用と効果がある。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、発熱体は、通電開始時には、電気的に直列に接続された第1の面状抵抗体と第2の面状発熱体が広い面積で共に高電力で発熱し、飽和時には正抵抗温度特性を有する第2の面状発熱体のみが発熱するようにしてなるものである。通電開始時には、発熱体の広い面積で高電力の発熱が得られるために、特に、速熱性に優れている。また、高電力で急速に昇温するにもかかわらず、体感的にも快適と感じられる低温度域で飽和させることが可能である。しかも、この発熱体は、飽和温度は低いが、高温の環境温度に曝されても抵抗特性の安定性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1の発熱体の構造を示す平面図
【図2】 本発明の実施例1の発熱体の構造を示す平面図
【図3】 本発明の実施例2の発熱体の構造を示す平面図
【図4】 本発明の実施例2の発熱体の構造を示す平面図
【図5】 従来の発熱体の構造を示す外観図
【符号の説明】
1、9 基板
2、2’、10、10’ 電極
3、3’、11、11’ 主電極
4、4’、12、12’ 枝電極
5、13 中間電極
6、14 第1の面状抵抗体
7、15 第2の面状抵抗体
8、16 非発熱部
Claims (3)
- 基板上に形成した一対の電極から電圧が印加されて発熱する抵抗要素を前記基板上に形成してなる発熱体であって、
前記抵抗要素は第1の面状抵抗体と、前記第1の面状抵抗体より面積が小さい第2の面状抵抗体とに細分割されており、かつ、前記第1の面状抵抗体と前記第2の面状抵抗体は交互に配設され、隣接する少なくとも1組毎に直列に電気的に接続されて発熱体全面を形成したものであり、
通電開始時点では前記第1の面状抵抗体及び前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が略同一電力密度で共に発熱して高電力の面状熱源となり、
その後の温度上昇に伴って少なくとも前記第2の面状抵抗体の抵抗値が増大し、前記第1の面状抵抗体の各抵抗要素よりも前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が高抵抗化し、前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が主に発熱することにより、正抵抗温度特性による小面積の定温熱源であると同時に散在熱源となって低電力で飽和し、
少なくとも、前記第2の面状抵抗体が、人体が直接接触した場合に、実用上、温度分布を感じないだけの形状にまで細かく分割されてなり、前記定温熱源の自己制御温度にかかわらず、体感的に快適と感じることのできる低い温度域で飽和する発熱体。 - 第1の面状抵抗体および第2の面状抵抗体は共に正抵抗温度特性を有し、温度上昇に伴って抵抗値が増大するが、少なくとも通電開始近傍の温度においては、第1の面状抵抗体の抵抗要素の電力密度と第2の面状抵抗体の抵抗要素の電力密度が略同一であり、一方、飽和温度に至るまでの温度域においては、前記第2の面状抵抗体の抵抗値の増大率が前記第1の面状抵抗体の抵抗値の増大率を上回り、前記第1の面状抵抗体の各抵抗要素よりも前記第2の面状抵抗体の各抵抗要素が高抵抗化する請求項1に記載の発熱体。
- 第1の面状抵抗体は飽和温度近傍までの温度域では実質的に有効な正抵抗温度特性を示さず、第2の面状抵抗体が実質的に有効な正抵抗温度特性を示す請求項1または2に記載の発熱体。
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