JP3978721B2 - 心的外傷後ストレス障害の判定法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、精神疾患の1つである、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断およびそのタイプを判定する方法に関する。より詳しくは、唾液中のクロモグラニンAの濃度又は総量を測定することによって、その動態から心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプを判定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ストレスは一般には、ヒト個体の心身に特別の負荷のかかった状態を指し、疲労感、不眠、不快感、焦燥、不安などを生じさせる。ストレスを引き起こす外的因子には、暑さや寒さ、騒音、酸素の欠乏などの、物理的または化学的因子、ならびに飢餓や、ビタミン不足、重労働、妊娠などの生物学的因子、さらには対人関係、職業、生活環境、経済問題などの心理的社会的因子が挙げられるが、中でも近年心理的社会的ストレスが大きな問題となっている。
【0003】
このような心理的社会的ストレスによる精神的疾患として、心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder;PTSD)が知られている。この心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、生命や身体保全に対する重大な脅威となるような突然の衝撃的出来事、例えば自然災害、産業事故、交通事故、犯罪被害、レイプ被害、暴力被害、あるいは幼児期***を経験することによって、それらの出来事が心的外傷(トラウマ)となって生じる、特徴的な精神障害である。その特徴的な症状はトラウマに関連する、再体験(想起)、回避、麻痺、覚醒亢進、過度の驚愕反応、解離などである。
【0004】
ここで、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者にはその症状により大きく3つのタイプがある。
第一は、解離後過剰反応型とよばれるもので、このタイプはトラウマを思い出すなどのストレスを受けたときに、その場は冷静に対処できるものの、その後過剰に後悔したり、その場では感じなかった怒りを後に過剰に感じてしまうという特徴をもつ。
第二は、正常型とよばれるもので、このタイプはストレスを受けると、ストレスを長期間持続させることなく、その場で対処ができるという特徴をもつ。きわめて軽症で、健常な人にも多くみられるタイプである。
第三は、過剰反応型とよばれるもので、普段から緊張を感じ続け、ストレスに対して過剰に反応するタイプである。このタイプはストレスを受けた時点で、即座に反応し、対処もできるがその場が収まってもそのストレスを持続させてしまうという特徴があり、長期間にわたってストレスに対する反応があり、その結果、突然怒りを爆発させる等の形で増大した症状が現れることが多い。
【0005】
これらの3つのタイプは、それぞれ治療方法や対処方法が異なる。解離後過剰反応型の場合はストレスが持続するタイプであるため、抗不安薬などの薬物を使用する場合もある。また、正常型の場合には、カウンセリングで対処できる。さらに、過剰反応型の場合は、カウンセリングや薬物治療の他に作業療法などを組み合わせることが有効である。
PTSDは他の精神障害を合併しやすく、また、その重症度や慢性度、さらに患者の取り巻く環境によっても治療の方針はさまざまであるが、その方針を決める手がかりの一つとして、心的外傷後ストレス障害(PTSD)のうち上記のいずれのタイプに該当するかを予め診断することが望ましい。
【0006】
ところで、近年ではストレスを一定の尺度で測定することによって、ストレスの度合いを客観的に評価し、健康管理に役立てたり、適切なカウンセリングや治療を受ける際に利用しようという試みがなされている。これらの多くはストレス状態により変化する血液や体液中の成分濃度を測定してその値の増減をストレスの指標にするものである。
特開平9−152430号公報では、体液中の分子量約14kDaのタンパク質を測定することにより、精神的なストレス症障害の診断について開示している。
また特開2000−146962公報では血清中のラクトフェリンを測定することによる、妊婦のストレスの診断が開示されている。
しかし、上記特開平9−152430号公報および特開2000−146962公報に示される精神的なストレス性障害の診断方法では、ストレス負荷の存在を診断することは可能であるが、ストレス起因性の障害のタイプの判別、例えば心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプを分類して判別することは示されていない。また、特開2000−146962公報のような血液を使用するストレス測定法は試料採取にあたり、被験者に苦痛を与えることもある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、患者に過大な負担をかけることなく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の適切な治療方針を決定するための手がかりの一つとして、上記心的外傷後ストレス障害(PTSD)を診断し、その該障害の3つのタイプを類別する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状の測定にあたり、ストレスの影響によって増減することが知られている唾液中の物質、クロモグラニンAに着目した。
クロモグラニンA(CgA)は、可溶性の酸性タンパク質であるクロモグラニン類の一種であり、クロム親和性細胞中に見出すことができる。またクロモグラニンAはカテコールアミンおよびペプチドホルモンを分泌する様々なニューロンおよびパラニューロン中の分泌腺細胞中にも貯蔵されており、内臓への刺激に応答してアドレナリンおよびノルアドレナリンと共に放出される。さらに、激しい運動が血漿中のクロモグラニンA濃度を増加させることも知られている。
クロモグラニンAが生体中で果たす機能の詳細については未だ不明であるけれども、本発明者等は、ストレス負荷前後における唾液中のクロモグラニンA濃度または総量の変化が、被験者の心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプと相関があり、特定の類型を示すことを利用して診断に使用できることを見出した。
そこで、この知見に基づいて本発明者らは鋭意検討し、従来、画一的な判断が難しかった心的外傷後ストレス障害の各タイプの分類を容易にできる方法として本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は被験者の唾液中のクロモグラニンA濃度をストレス負荷前1回以上、ストレス負荷後に2回以上測定し、ストレス負荷後の唾液中のクロモグラニンA濃度の増減から心的外傷後ストレス障害(PTSD)を診断する方法に関する。
さらに本発明は、被験者の唾液中のクロモグラニンA濃度の測定をストレス負荷前に1回以上、ストレス負荷後に2回以上測定し、該濃度の変化を、
1)ストレス負荷後、クロモグラニンAの濃度の極小値が観察される類型
2)ストレス負荷後、クロモグラニンAの濃度の極大値が観察される類型
3)ストレス負荷後、クロモグラニンAの濃度の単調増加が観察される類型
に類別することからなる心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプを判定する方法に関する。
また本発明は上記クロモグラニンAの濃度をクロモグラニンの総量に代えて判定する方法にも関する。具体的には、
被験者の唾液中のクロモグラニンA総量をストレス負荷前1回以上、ストレス負荷後に2回以上測定し、ストレス負荷後の唾液中のクロモグラニンA総量の増減から心的外傷後ストレス障害(PTSD)を診断する方法であり、また、被験者の唾液中のクロモグラニンA総量の測定をストレス負荷前に1回以上、ストレス負荷後に2回以上測定し、該総量の変化を、
1)ストレス負荷後、クロモグラニンAの総量の極小値が観察される類型
2)ストレス負荷後、クロモグラニンAの総量の極大値が観察される類型
3)ストレス負荷後、クロモグラニンAの総量の単調増加が観察される類型
に類別することからなる心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプを判定する方法である。
上記被験者の唾液中のクロモグラニンA濃度または総量の測定は、予め決められた時間の範囲内で測定すべきであり、標準的にはストレス負荷前30分以内に1回以上、ストレス負荷後30分以内に2回以上測定することが望ましい。もっとも好ましくはストレス負荷前30分以内に1回以上、ストレス負荷直後とその後30分以内に1回以上測定するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプの判定方法は、被験者にストレス負荷を与えたときの唾液中のクロモグラニンA濃度または総量の変化に基づく。そのため診断の際には被験者にストレスを負荷する必要があるが、まず、被験者にとって、心的障害を受ける対象を診断する必要がある。これは被験者にストレス負荷を与えてストレス負荷前のクロモグラニンAの濃度または総量に対する負荷後の該濃度または総量の増減の程度により診断する。
ストレスの負荷の方法は様々な方法が採用でき、特に限定されないが、心的障害の原因となっている過去の事象を被験者に思い出させることが用いられる。例えばそれに関連する写真を見せる、心的障害の原因となるものについて話をさせる、あるいは苦手意識のある行為を体験してもらう等の方法がある。該期間としては、被験者に対する負担等を考慮して1分間程度とすることが好ましい。
【0011】
本発明では、ストレス負荷前好ましくは30分以内に1回以上測定し、次いでストレス負荷後好ましくは30分以内に2回以上測定し、クロモグラニンAの濃度または総量の変化を観察し、その増減によって、心的外傷後ストレス障害を類別する。そして具体的には、上記の各3つのクロモグラニンAの濃度または総量の変化の類型により心的外傷後ストレス障害を類別する。
そして本発明は、上記ストレス負荷前後の唾液中のクロモグラニンA濃度または総量の変化の類型が、上記の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の3つのタイプ、解離後過剰反応型、正常型および過剰反応型と関連づけが可能であるという知見に基づくものである。
そして、解離後過剰反応型は上記1)のストレス負荷後、クロモグラニンAの濃度または総量の極小値が観察される類型、すなわち、唾液中のクロモグラニンAの濃度または総量はストレス負荷前からストレス負荷後にかけて値が減少しそして極小値を示し、その後は値が増加するのが観察される場合が該当する。
また、正常型は上記2)のストレス負荷後、クロモグラニンAの濃度または総量の極大値が観察される類型、すなわち、唾液中のクロモグラニンAの濃度または総量はストレス負荷前からストレス負荷後にかけて値が増加しそして極大値を示し、その後は値が減少するのが観察される場合が該当する。
さらに、過剰反応型は上記3)のストレス負荷後、クロモグラニンAの濃度または総量の単調増加が観察される類型、すなわち唾液中のクロモグラニンAの濃度または総量はストレス負荷前からストレス負荷後にかけて値が単調増加するのが観察される場合が該当する。
このように、得られた類型から被験者の心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプを特定し、それにより適当な治療の指針を選択する目安とすることができる。
【0012】
なお、唾液中のクロモグラニンAの濃度または総量のデータは、極小値や極大値の出現を確認するため、最低ストレス負荷前に1データ、負荷後に2データ必要である。これらのデータは連続測定するなどより多くのデータをプロットしてもよい。あるいは、より多くのデータを平均してデータの代表値を算出し、データとして使用できる。
【0013】
本発明におけるクロモグラニンA濃度または総量の測定方法は、特に限定されないが、例えば特開平11−153598号公報に記載のELISA法、RIA法、ラテックス法などの免疫法が一般的な方法である。その概略は以下の通りである。
すなわち、ヒトCgAのアミノ酸配列のうちの一部、具体的には344〜374残基に相当する以下のアミノ酸配列(I)
EEEED NRDSS MKLSF RARAY
GFRGP GPQLR R (I)
を有するペプチドを抗原としてヒトを除く温血動物に免疫し、産出したヒトCgAに特異的な反応を有する抗体を用いたイムノアッセイからなる。この方法により、ヒトの組織、血液、尿、骨髄液、唾液等の中に存在するCgAおよびその関連ペプチドを有効に測定および検出することができる。
【0014】
さらにこの方法に基づき、測定プレート、抗原、抗体、試薬等の前処理および調剤方法を最適化した以下の要素:
a)抗IgG抗体を固定化した複数のウェルを有する測定プレートと、
b)アミノ酸配列(I)
EEEED NRDSS MKLSF RARAY
GFRGP GPQLR R (I)
を有するペプチドを緩衝液に溶解し、そして凍結乾燥して得られる標準抗原と、
c)アミノ酸配列(I)のN末端側にビオチニル基および二つのグリシン残基が結合したアミノ酸配列を有するペプチドを緩衝液に溶解し、そして凍結乾燥して得られるビオチン標識抗原と、
d)前記アミノ酸配列(I)を有するペプチドを温血動物に免疫して得られる抗血清からIgG抗体を精製し、該IgG抗体画分を緩衝液に溶解し、そして凍結乾燥して得られる特異抗体と、
e)ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼを緩衝液に溶解し、そしてペルオキシダーゼ共役安定保存液で希釈して得られるストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ溶液と、
f)発色剤と、
g)反応停止液と、
h)緩衝液
からなる測定キットを用いたクロモグラニンAの測定は、操作が簡単かつ高感度であり、また測定キットの長期間保存も可能であることから非常に好ましい。
【0015】
被験者からの唾液検体の採取は、例えばサリベット(ザールステット社製)を用いて行う。実際には、先ずサリベットから滅菌済みの円筒スポンジを取り出し、被験者に該スポンジを約45秒程度噛ませ、その後、円筒スポンジをサリベット本体に戻し遠心分離を行うことによって0.5〜1.5mLの唾液検体を得ることができる。このような検体採取法は、検体採取に際し被験者に採血のような負担をかけないので、非常に好ましい。
【0016】
【実施例】
以下の実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
実施例1:
1)クロモグラニンA(以下CaAとも記載する)の測定
以下のようにして測定に用いる各要素を調製した。
a)測定プレートの調製
96ウェルプレート(MaxiSorp Nunc社製)の各ウェルに0.01Mリン酸緩衝液で200倍に希釈したヤギ抗ウサギIgG抗体(ICN/CAPPEL社製)を100μLずつ分注した。25℃で20時間静置した後、上清を捨て、蒸留水で4倍に希釈したブロッキング剤(商品名:ブロックエース、大日本製薬株式会社製)を各ウェルに350μLずつ分注した。4℃で2日間静置した後、上清を捨て、3%スクロース含有緩衝液を各ウェルに200μLずつ分注した。4℃で2日間静置した後、上清を捨て、プレートを転倒させて3日間乾燥させた。
b)標準抗原溶液の調製
ヒトCgAの344〜374残基に相当するアミノ酸配列(前記アミノ酸配列(I))を有するペプチドを合成し、該合成ペプチドをリン酸緩衝液に溶解して4μmol/mLの溶液を調製し、該溶液を25μLずつ分注して凍結乾燥した。凍結乾燥後、0.5%のウシ血清アルブミン、0.025MのEDTAおよび0.15MのNaClを含有する0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)1mLに再溶解した。
c)ビオチン標識抗原溶液の調製
ヒトCgAの344〜374残基に相当するアミノ酸配列(前記アミノ酸配列(I))のN末端側にビオチニル基および二つのグリシン残基が結合したアミノ酸配列を有するペプチドを合成し、該合成ペプチドをリン酸緩衝液に溶解して30ng/mLの溶液を調製し、該溶液を1mLずつ分注して凍結乾燥した。凍結乾燥後、蒸留水6mLに再溶解した。
d)特異抗体溶液の調製
ヒトCgAの344〜374残基に相当するアミノ酸配列(前記アミノ酸配列(I))を有するペプチドを合成し、該合成ペプチドを抗原としてウサギに免疫して得られた血清(ウサギ抗ヒトCgA(344〜374)血清RY76、株式会社矢内原研究所製)を、staphylococcus aureus由来のプロテインAを結合させた多孔性セルロースゲル(商品名:プロテインA−セルロファイン、チッソ株式会社製)を充填したカラムに通して精製し、IgG抗体をセルロースゲルに吸着させた。次いで該カラムに0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.0)を通し、IgG抗体を溶離させ、得られたIgG抗体画分を限外濾過により濃縮して精製前と等量とし、その後リン酸緩衝液で4倍に希釈した。得られたIgG抗体画分を3mLずつ分注して凍結乾燥し、凍結乾燥後、蒸留水12mLに再溶解した。
e)ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ溶液の調製
ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Oncogene社製)を1mLのリン酸緩衝液に溶解させ、さらにペルオキシダーゼ共役安定保存液(商品名:Guardian、Pierce社製)で5,000倍に希釈した。
f)発色剤の調製
0.015%の過酸化水素水を含む0.1Mリン酸ナトリウム−クエン酸緩衝液13mLに、10mgのo−フェニレンジアミンを溶解した。
g)反応停止液の調製
反応停止液として2N硫酸を調製した。
【0017】
2)検体採取
唾液採取具:サリベット(ザールステット社製)を用い、被験者A(男性43歳)、被験者B(女性36歳)、被験者C(女性61歳)、被験者D(男性57歳)よりなる4人の被験者にサリベットの円筒スポンジを噛ませて唾液を採取してストレス負荷前の唾液とした。その後、被験者に心的障害の原因となっていると考えられる過去の事象を1分間思い出させストレス負荷をかけた。ストレス負荷直後、同様に唾液採取具の綿を噛ませ、被験者の唾液を採取してストレス負荷直後の唾液とし、さらに20分後にも同様に被験者の唾液を採取してストレス負荷20分後の唾液とした。各唾液を3,000rpmで5分間遠心分離(遠心機10A:クボタ社製)して測定検体とした。クロモグラニンAの測定前に、各測定検体の体積をメスシリンダーで計量し、クロモグラニンAの濃度をその体積と乗ずることにより唾液中のクロモグラニンAの総量とした。
【0018】
3)クロモグラニンAの測定
3.1)希釈標準抗原溶液の調製
標準抗原溶液b)0.1mLと標準抗原溶液b)の調製に用いた0.01Mリン酸緩衝液0.2mLとを混合し、33.33pmol/mLの希釈標準抗原溶液を得た。さらにこの溶液について同様の3倍希釈の操作を6回行い、11.11、3.70、1.23、0.41、0.14および0.05pmol/mLの希釈標準抗原溶液を得た。また0pmol/mLの希釈標準抗原溶液として、該0.01Mリン酸緩衝液をそのまま用いた。
3.2)抗体反応
測定プレートa)を0.05%のTween20および0.9%のNaClを含有する生理食塩水で3回洗浄した。洗浄後、測定プレートの各ウェルに、標準抗原溶液b)の調製に用いた0.01Mリン酸緩衝液50μL、希釈標準抗原溶液25μLまたは測定検体25μL、ビオチン標識抗原溶液c)50μL、および特異抗体溶液d)100μLを順に分注し、25℃で一晩(16〜20時間)静置した。
3.3)定量
抗体反応の終了後、測定プレートを前記生理食塩水で3回洗浄し、次いでストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ溶液e)100μLを各ウェルに分注し、室温で2時間プレート振盪機を用いて混和した。その後、測定プレートa)を前記生理食塩水で4回洗浄し、発色剤f)100μLを各ウェルに分注し、室温で30分間静置した。30分経過後、反応停止液g)100μLを各ウェルに分注した。こうして処理した測定プレートについてプレートリーダーにより波長492nmでの吸光度を測定した。希釈標準抗原溶液についての測定値より検量線を作成し、そして該検量線に基づいて測定検体中のヒト・クロモグラニンAの量を定量した。
【0019】
(結果)
(1)唾液中のクロモグラニンA濃度の変化
表1に唾液中のクロモグラニンA濃度の変化を、図1にそれを視覚化したグラフを示す。
【表1】
Figure 0003978721
表1の数値の変化から、被験者Aはストレスに過剰に反応する過剰反応型、B,Cは解離後過剰反応型と判定した。Dは正常型と判定した。この数値の変化は図1に示すようにグラフ化すると明瞭である。
臨床試問の結果、被験者Aは親近者の交通事故を目撃したことが、Bは父親による幼少期の***が,Cは母親による幼少期の***が、Dは、人前で失禁したことが、それぞれストレスの原因になっていた。
【0020】
(2)唾液中のクロモグラニンA総量
表2に唾液中のクロモグラニンA総量の変化を、図2にそれを視覚化したグラフを示す。
【表2】
Figure 0003978721
それぞれの被験者における唾液中のクロモグラニンA総量もクロモグラニンA濃度と同様の変化の類型を示した。すなわち、表2の数値の変化からも、被験者Aはストレスに過剰に反応する過剰反応型、B,Cは解離後過剰反応型と判定でき、Dは正常型と判定できる。
【0021】
【発明の効果】
以上に示したように、本発明によれば、ストレス負荷前後の唾液中のクロモグラニンAの濃度または総量の増減によって、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断が可能であり、さらに、ストレス負荷前後の唾液中のクロモグラニンAの濃度または総量の動態の類型を分類することによって、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の各タイプを画一的に判断できる。このため、被験者の心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプを容易に知ることができるので、治療の際、そのタイプによって異なる治療方針を適切に選択するための目安とすることができる。さらに、本発明の方法は血液に比べて試料採取のより容易な唾液を使用するため、被験者に過大な負担をかけることのない点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】表1に示す唾液中のクロモグラニンA濃度の変化を示すグラフである。
【図2】表2に示す唾液中のクロモグラニンA総量の変化を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 被験者の唾液中のクロモグラニンA濃度をストレス負荷前に1回以上、ストレス負荷後2回以上測定し、該濃度の増減から心的外傷後ストレス障害(PTSD)を診断する方法。
  2. 被験者の唾液中のクロモグラニンA濃度をストレス負荷前に1回以上、ストレス負荷後に2回以上測定し、該濃度の変化を、
    1)ストレス負荷後、クロモグラニンAの濃度の極小値が観察される類型
    2)ストレス負荷後、クロモグラニンAの濃度の極大値が観察される類型
    3)ストレス負荷後、クロモグラニンAの濃度の単調増加が観察される類型
    に類別することからなる心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプを判定する方法。
  3. 被験者の唾液中のクロモグラニンA総量をストレス負荷前に1回以上、ストレス負荷後に2回以上測定し、該総量の増減から心的外傷後ストレス障害(PTSD)を診断する方法。
  4. 被験者の唾液中のクロモグラニンA総量をストレス負荷前に1回以上、ストレス負荷後に2回以上測定し、該総量の変化を、
    1)ストレス負荷後、クロモグラニンAの総量の極小値が観察される類型
    2)ストレス負荷後、クロモグラニンAの総量の極大値が観察される類型
    3)ストレス負荷後、クロモグラニンAの総量の単調増加が観察される類型
    に類別することからなる心的外傷後ストレス障害(PTSD)のタイプを判定する方法。
  5. 被験者の唾液中のクロモグラニンA濃度をストレス負荷前30分以内に1回以上、ストレス負荷後30分以内に2回以上測定することからなる請求項2記載の方法。
  6. 被験者の唾液中のクロモグラニンA総量をストレス負荷前30分以内に1回以上、ストレス負荷後30分以内に2回以上測定することからなる請求項4記載の方法。
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