JP3974957B2 - 2行程機関用気化器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はピストンの摺動に伴うクランク室の圧力変動を利用してクランク室へ混合気を吸入し、クランク室の混合気を加圧してシリンダないし燃焼室へ供給する、クランク室圧縮式の2行程機関に適した気化器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のクランク室圧縮式2行程機関では、クランク室で加圧された混合気を掃気口を経てシリンダへ供給することにより、シリンダに残つている燃焼ガスの掃気を行うものであるので、燃焼ガスの掃気を良好に行おうとすれば、シリンダへ流入した混合気が、燃焼ガスと一緒に排気口を経て大気中へ排出されるという吹抜け現象が発生する。吹抜け現象は排出ガスに含まれる未燃焼成分(炭化水素HC)の量を増加させ、燃料の浪費を招く。
【0003】
吹抜け現象はピストンによる排気口の閉時期を早めることにより抑止できるが、この場合には、シリンダに残留する燃焼ガスが多くなり、不完全燃焼や失火などによる不整燃焼行程が増加し、結局は排出ガスに含まれる炭化水素が増加するだけでなく、機関出力が低下するという欠点がある。
【0004】
そこで、特開平7−139358号公報、特開平7−189704号公報、特開平7−269356号公報などに開示される2行程機関では、掃気通路の掃気口に近接する部分に空気通路を接続し、該空気通路に逆止弁を設け、該空気通路の空気流量を機関の絞り弁操作と連動して調整する調整装置を設けている。上述の2行程機関では、ピストンの上昇時クランク室が負圧になると、気化器で生成された混合気が吸気口を経てクランク室へ吸引され、同時に空気が空気通路から逆止弁を経て掃気通路または掃気口に近接する部分へ吸引される。混合気の爆発によりピストンが下降すると、ピストンの下死点付近で排気口が開き、燃焼ガスが排出される。続いて、掃気口が開き、クランク室の正圧によりまず掃気通路の空気がシリンダへ噴出され、次いでクランク室の混合気がシリンダへ噴出される。この場合に、排気口が開いている間に、掃気口からシリンダへ当初噴出する空気が排気口へ流れ、空気に続いて混合気が排気口へ流れるまでに排気口は閉じる。
【0005】
上述した2行程機関の調整装置では、気化器の吸気路を開閉する絞り弁の軸に第1の腕が結合され、調整装置の蝶弁の軸に結合した第2の腕に、上述の第1の腕がロツドにより連結され、これにより蝶弁は絞り弁と連動して開閉するように構成される。しかし、上述の調整装置では、気化器の絞り弁と調整装置の蝶弁とを連動連結するために、気化器の絞り弁の腕と調整装置の蝶弁の腕とがロツドにより直結されるので、複数の掃気口を有する機関では、掃気口と同数の調整装置とロツドが必要になり、構造が複雑になる。つまり、複数の調整装置を設けることは、調整機構が機関から突出するために全体が大形になり、各調整装置の蝶弁の開度にばらつきが生じ、絞り弁との同調が困難になり、また長期使用の内に同調する開度が変化し、機関の掃気状況が変化する恐れもある。さらに、空気通路から機関へほこりなどが入らないように、各空気通路へ空気清浄器を取り付ける必要があるが、空気通路が独立している構成では、空気清浄器の装着が困難になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上述の問題に鑑み、混合気が機関の掃気口から排気口へ流出する吹抜け現象を防止するために、機関の掃気行程で予め用意した外部の空気だけを掃気口を経てシリンダへ供給するようにした2行程機関用気化器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は機関の掃気口とクランク室とを連通する掃気通路の掃気口に近接する部分に空気通路を接続し、該空気通路に掃気通路への空気の流れを許す逆止弁を設け、空気清浄器と気化器との間に絞り弁に連動して前記空気通路の空気流量を加減する空気制御弁を挟持し、空気清浄器と空気制御弁と気化器を一体化して機関に取り付けた2行程機関用気化器において、前記機関に前記掃気口が複数設けられ、前記空気制御弁をロータリ絞り弁から構成し、前記ロータリ絞り弁の弁体に前記掃気口と同数の弁通孔を設けると共に、前記空気制御弁に前記弁通孔とそれぞれ対応する同数の出口を設け、各前記出口を独立の空気通路により各前記掃気口へそれぞれ接続したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では気化器と空気清浄器との間に、絞り弁に連動して空気通路の空気量を加減する空気制御弁としてのロータリ絞り弁を設け、空気清浄器と空気制御弁と気化器を一体化して機関に取り付け、ロータリ絞り弁の弁体には掃気口と同数の弁孔を設け、各弁孔を独立の空気通路を経て各掃気口へ接続する。
【0009】
空気清浄器と空気制御弁と気化器とが一体的に機関へ取り付けられるので、気化器の絞り弁と空気制御弁とは1つのロツドにより連結するだけでよく、絞り弁が開くにつれて、混合気が機関のクランク室へ吸入され、空気制御弁を通過した空気は逆止弁を経て空気通路の各掃気口に近接する部分へ供給される。
【0010】
【実施例】
図1は本発明に係る気化器を備えた2行程機関の側面断面図、図2は同機関の平面断面図である。2行程機関Aはクランクケース39の上部にシリンダ32を結合され、シリンダ32に昇降自在に嵌合するピストン34が、クランクケース39に支持されたクランク軸38のクランク腕38aに連接棒42により連結されている。シリンダ32の上端壁には燃焼室32aへ突出する点火栓31が装着される。シリンダ32の周壁にはピストン34の下死点付近で開く排気口35と掃気口33が設けられ、排気口35は排気マフラ44を経て大気に連通し、掃気口33は掃気通路33aを経てクランク室39aへ連通している。吸気口37は気化器B、空気清浄器Dを経て大気へ連通される。
【0011】
気化器Bはクランクケース39の吸気口37に、吸気弁(リード弁)37aを備えた断熱管21を介して取り付けられる。詳しくは、2行程内燃機関のクランクケース39に対し断熱管21を介して、気化器Bと空気制御弁Cと空気清浄器Dとが一体的に、図示してない2本の取付ボルトにより取り付けられる。気化器Bは本体16の吸気路を横切る円筒部に、絞り孔を有する絞り弁15を嵌挿し、絞り弁15の上端の軸部12に絞り弁レバー10を結合される。本体16の下部には膜18により定圧燃料室19と大気室17とが区画される。定圧燃料室19には図示してない燃料槽の燃料が燃料ポンプにより逐次補給され、常時一定圧に保持される。定圧燃料室19から燃料ノズル20が絞り弁15の絞り孔へ突出される。絞り弁15の軸部12から絞り孔へ突出する棒弁14が、燃料ノズル20へ嵌挿され、燃料噴孔の開度を加減するようになつている。絞り弁レバー10をばねの力に抗して回動すると、絞り弁15の開度が増加し、同時に絞り弁レバー10と本体16の上端壁との間に形成したカム機構により、絞り弁15と一緒に棒弁14が上昇し、燃料ノズルの燃料噴孔の開度が増加する。
【0012】
本発明によれば、シリンダ32の壁部に空気吸入路26が形成され、空気吸入路26の一端は掃気通路33aの掃気口33に近接する部分へ連通され、他端は空気通路25、空気制御弁C、吸気路9、空気清浄器Dを経て大気へ連通される。空気吸入路26に空気通路25から掃気口33への空気の流れを許す逆止弁27が設けられる。
【0013】
空気制御弁Cは吸気路9を有するブロツク状の制御弁本体8の上半部に、吸気路9から上方へ延びかつ弁室8a(図3)を横切る、掃気口33と同数の弁通路7を備えられる。空気制御弁Cの空気出口すなわち弁通路7の上端は接続管6を結合される。図3に示すように、制御弁本体8の吸気路9と直交する円筒状の弁室8aに、棒状の弁体5が回転可能に嵌挿される。弁体5は弁室8aを横切る弁通路7と連通可能の弁通孔5aを備えており、弁体5を回転すると弁通路7の面積が変化する。各弁通路7の下端は、吸気路9と交差する通路53へ連通する。通路53の端部は蓋52により閉鎖される。空気制御弁Cの空気出口すなわち接続管6は管からなる空気通路25により、シリンダ32の壁部の空気吸入路26へ接続される。
【0014】
空気制御弁Cの制御弁本体8には吸気路9を挟んで対称な位置にボルト挿通孔54が設けられる。空気制御弁Cは単一のロータリ絞り弁から構成され、弁室8aに嵌挿した弁体5の一端に抜止め用止め輪51を係止し、弁体5の他端にレバー23を結合し、弁体5の外端部に巻き付けた戻しばね22の一端を制御弁本体8に、他端をレバー23にそれぞれ係止される。図2に示すように、気化器Bの絞り弁レバー10と空気制御弁Cのレバー23とは、ロツド13により最短距離で連結される。絞り弁レバー10を開方向へ操作すると、空気制御弁Cも開き、掃気通路33aへの空気量を増加させる。
【0015】
図1に示すように、空気清浄器Dは2分割体からなる箱形のケース2,4を、両者の間にフイルタ3を挟んで結合し、ケース2の取入口2aから吸入された空気は、フイルタ3、ケース4、空気制御弁Cの吸気路9、気化器B、断熱管21、吸気弁37a、吸気口37を経てクランク室39aへ流れる。
【0016】
次に、本発明による2行程機関用気化器の作動について説明する。ピストン34の上昇に伴つてクランク室39aと掃気通路33aが負圧状態になると、逆止弁27が開かれ、大気中の空気が空気吸入路26を経て掃気口33へ吸入される。掃気口33への空気の吸入は、ピストン34が上昇する行程のほぼ全期間に亘り行われるので、掃気口33への空気充填効率が向上し、燃焼ガスを掃気する際に、掃気口33からシリンダ32へ流入する空気の勢いが強くなり、燃焼ガスの掃気性能が向上する。
【0017】
ピストン34が上死点の直前位置へ上昇した状態では、シリンダ32に圧縮された混合気が点火栓31により点火されると、シリンダ32で爆発が生じ、ピストン34が下降する行程へ移る。一方、ピストン34が上死点へ達した時には、混合気が吸気口37からクランク室39aへ充填され、空気が空気吸入路26から掃気通路33aへ充填されている。
【0018】
シリンダ32での混合気の爆発により、ピストン34が下降する時、クランク室39aの混合気が加圧され、同時にクランク室39aの圧力が掃気通路33aを経て掃気口33へ伝わり、掃気口33の空気も加圧される。ピストン34がさらに下降し、排気口35が開き始めると、シリンダ32の燃焼ガスが排気口35、排気マフラ44を経て大気中へ排出される。排気口35が開き始めると続いて掃気口33が開き始め、掃気通路33aに加圧されていた空気が掃気口33を経てシリンダ32へ流入し、シリンダ32に残留している燃焼ガスを排気口35へ押し出す掃気作用を行う。
【0019】
一方、掃気口33が開くのと相前後して、掃気口33に加圧されていた空気がシリンダ32へ流入するのに伴い、クランク室39aの混合気が掃気通路33aを経て掃気口33へ流入し、さらに掃気通路33aを経てシリンダ32へ流入する。上述のように、掃気口33からシリンダ32へ流入する空気と混合気とは、互いに混合されないで、分離された状態で流れる。つまり、排気口35と掃気口33が前後して開き、燃焼ガスの掃気が行われる時、まず空気が掃気口33からシリンダ32へ流入し、次いで混合気が掃気口33からシリンダ32へ流入する。したがつて、燃焼ガスと一緒に排気口35へ排出されるのは、先にシリンダ32へ流入した空気だけであり、空気の後から混合気がシリンダ32へ流入する時には、排気口35が閉じるので、混合気が排気口35を経て大気中へ流出するという吹抜け現象が起こらない。
【0020】
次に、ピストン34が下死点から上昇する行程へ移り、上死点までの上昇過程において、クランク室39aが負圧状態になるので、気化器Bで生成された混合気が吸気口37を経てクランク室39aへ吸入される。同時に、クランク室39aの負圧状態は掃気通路33aを経て空気吸入路26へも伝わるので、空気が空気吸入路26を経て掃気通路33aへ吸入される。したがつて、ピストン34がほぼ上死点へ達した時には、クランク室39aへ混合気が充填され、掃気口33には空気のみが充填された状態になる。
【0021】
本発明によれば上述のように、排気口35を開いた後の掃気作用は、先にシリンダ32へ流入した空気によって燃焼ガスが押し出されるので、燃焼ガスの掃気が確実になり、機関の出力向上に大きく寄与できる。しかも、排出ガスに含まれる未燃焼成分である炭化水素の量が低減され、燃料の無駄がなくなる。
【0022】
図1には携帯作業機に多用される膜型気化器を示したが、本発明はこの種の気化器に限定されるものではない。
【0023】
【発明の効果】
本発明は上述のように、機関の掃気口とクランク室とを連通する掃気通路の掃気口に近接する部分に空気通路を接続し、該空気通路に掃気通路への空気の流れを許す逆止弁を設け、空気清浄器と気化器との間に絞り弁に連動して前記空気通路の空気流量を加減する空気制御弁を挟持し、空気清浄器と空気制御弁と気化器を一体化して機関に取り付けた2行程機関用気化器において、前記空気制御弁をロータリ絞り弁から構成したものであるから、気化器や空気清浄器に従来品をそのまま利用でき、空気清浄器と気化器との間に制御弁本体を挟むことにより、これらが一体的にコンパクトに機関に取り付けられ、1つの空気清浄器が気化器と空気制御弁の両方へ流れる空気の清浄化に役立つ。
【0024】
気化器の絞り弁と空気制御弁を1本のロツドにより最短距離で連結でき、長期間使用しても、絞り弁と空気制御弁の同調が変化することはない。
【0025】
空気制御弁と各掃気口の空気取入口を独立の通路により接続できるので、必要に応じて各接続通路の長さを変更できる。
【0026】
空気制御弁はロータリ絞り弁からなるので、製作が容易であり、制御弁本体が大形にならない。
【0027】
空気制御弁に多数の弁孔を設けても、同調や連結のための特別の構成を必要としない。
【0028】
空気制御弁の弁体は制御弁本体の吸気路よりも上流に配置されるので、気化器からの吹出し燃料などが空気制御弁を経て掃気口へ供給されることがなく、掃気行程で排気口へ排出される排出ガスの炭化水素量を増加させることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る気化器を備えた2行程機関の側面断面図である。
【図2】同機関の平面断面図である。
【図3】図2の線2A−2Aによる空気制御弁の正面断面図である。
【符号の説明】
A:機関本体 B:気化器 C:空気制御弁 D:空気清浄器 2:ケース 2a:取入口 3:フイルタ4:ケース 5:弁体 5a:弁通孔 6:接続管 7:弁通路 8:本体 8a:弁室 9:吸気路 10:絞り弁レバー 12:軸部 13:ロツド 14:棒弁 15:絞り弁 16:気化器本体 17:大気室 18:膜 19:定圧燃料室 20:燃料ノズル 21:断熱管 22:戻しばね 23:レバー 25:空気通路 26:空気流入路 27:逆止弁 31:点火栓 32:シリンダ 32a:燃焼室 33:掃気口 33a:掃気通路 34:ピストン 35:排気口 37:吸気口 37a:吸気弁 38:クランク軸 38a:腕 39:クランクケース 39a:クランク室 42:連接棒 44:排気マフラ 51:止め輪 52:蓋 53:通路 54:ボルト挿通孔
Claims (1)
- 機関の掃気口とクランク室とを連通する掃気通路の掃気口に近接する部分に空気通路を接続し、該空気通路に掃気通路への空気の流れを許す逆止弁を設け、空気清浄器と気化器との間に絞り弁に連動して前記空気通路の空気流量を加減する空気制御弁を挟持し、空気清浄器と空気制御弁と気化器を一体化して機関に取り付けた2行程機関用気化器において、
前記機関に前記掃気口が複数設けられ、
前記空気制御弁をロータリ絞り弁から構成し、前記ロータリ絞り弁の弁体に前記掃気口と同数の弁通孔を設けると共に、前記空気制御弁に前記弁通孔とそれぞれ対応する同数の出口を設け、各前記出口を独立の空気通路により各前記掃気口へそれぞれ接続したことを特徴とする、2行程機関用気化器。
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