JP3974357B2 - シェアードリンク設定方法、通信システム、エンティティ装置、およびそのコンピュータプログラムならびにその記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信ネットワークに関する。
特に、意味情報の照合に基づきエンティティ間でピア・トゥ・ピア(peer-to-peer)にイベントを交換する通信モデルに基づく意味情報ネットワークにおける、イベントパスの波及方法およびエンティティのアドバタイズメント方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、意味情報ネットワークを説明するために、インターネット上での通信形態およびビジネスモデルの変遷について述べる。図33は、インターネット上でのビジネスモデルの変遷を示す概略図である。
【0003】
米国国防総省が1969年に開始した実験ネットワーク(ARPANET, Advanced Research Projects Agency Network)を礎とするインターネットは、今では我々の生活に欠かせないものになっている。世界中のあらゆるコンピュータを相互接続したインターネットは、いくつかの技術革新を経て、誰もがいつでもどこでも、気軽にネットワーク上の情報にアクセスできるネットワーク環境を我々に提供するようになった。
【0004】
第1世代におけるインターネットでは、「ブローカ(broker)型配信モデル」に基づいた情報配信が一般的であった。このビジネスモデルでは、ブローカとして位置付けられる情報配信者(たとえば、パソコン通信会社)が、情報提供者の情報を集中管理し、必要に応じてユーザに対して情報の配信を行っていた。すなわち、ブローカがユーザと情報提供者を結びつける役割を果たしていた。そのため、ブローカは、膨大な情報を格納するための格納庫(ハードディスクなどのストレージ)、情報を処理するための高性能演算装置(高性能ワークステーションなど)、そしてユーザとの通信帯域の十分な確保などのために、膨大な設備投資が必要だった。
【0005】
これに対し,インターネットの利便性を飛躍的に向上させ,利用者の裾野を拡大させた革新技術が、1992年に発表されたWWW(World Wide Web)である。これがインターネット第2世代への扉を開いた。ユーザはブラウザを介して、世界中のあらゆる情報(コンテンツ)を利用できる一方で、情報提供者はブローカ(情報配信者)を介することなく、自らが情報発信することが可能になった。
WWWでは、個々の情報提供者が情報を超分散管理し、情報同士をハイパーリンクすることにより、情報提供者のみで情報の超分散データベースを構築することができる。これにより、情報配信者を必要としない「情報配信ネットワークの構築」が可能になった。これこそが、インターネットが目指した真の姿であり、WWWが第2世代の革新技術と言われる所以である。本明細書では、WWWのような配信技術によって可能になった新たなビジネスモデルを、「ブローカレス(brokerless)型配信モデル」と呼ぶ。
【0006】
ブローカレス型配信モデルに基づく情報配信、すなわち、情報提供者主導の情報配信が可能になる一方で、世界中に氾濫する情報の中から、ユーザが望む情報を簡単に特定することや、情報提供者に取って情報を配信するに相応しいユーザを特定できることが重要な課題となってきた。残念ながら、WWWはこの課題に対するソリューションを与えてくれなかった。そのため、ポータルサイト、検索サービス、リコメンデーションサービス、ディレクトリサービス、トレーダと呼ばれる新たなブローカが登場してきた。このビジネスモデルを、「ブローカ型探索モデル」と呼ぶ。
ブローカ型探索モデルでは、情報(源)の探索、もしくは、情報の配信先の探索まではブローカを介して行なわれるが、発見された相手との情報配信は、エンド・トゥ・エンド(end-to-end)で、言い換えればピア・トゥ・ピア(peer-to-peer)で、直接的に、すなわちブローカレス型配信モデルに基づいて行われる。
【0007】
従って、1999年1月に発表され話題になったNapster(ナップスター)も、ブローカ型探索モデルに位置付けることができる。余談であるが、本願発明者は、世の中の大多数がNapsterをP2P(peer-to-peer, ブローカレス型配信モデル)として位置付けることに若干の疑念がある。それは、WWWによって初めて提唱されたブローカレス型配信モデルは、ブローカの存在なしに、自らが情報の配信ネットワークを構築できる点にある。しかしながら、Napsterはネットワーク(面)ではなく、単なるポイント(点)に過ぎない。すなわち、NapsterをP2Pと定義した時点で、FTP(ファイル転送プロトコル, File Transfer Protocol)や糸電話を含め、ありとあらゆる通信形態がP2Pとして定義されることになるが、これは、P2Pの本質を全く反映してないものである。なぜなら、通信の起源は、peerとpeerの通信からスタートしているからである。これは、P2P通信方式(P2Pインタラクション方式)と呼ばれる古典的な考え方であり、今、話題のP2Pとは次元の違うものである。現状の他の評論を省みると、このような誤解をした解説が多々見受けられる。これらについての詳細な解説は、以下の文献1〜4を参照。
【0008】
− 星合隆成、久保田稔:”インターネットの新潮流−非ブローカモデル型探索モデルと自律分散技術”, 電学誌, 121巻, 3号, pp.178-184(2000.12受付、2001.3掲載)(文献1)
− 星合隆成:”招待講演:インターネットの新潮流『非ブローカモデル』とその実現技術『SION:意味情報ネットワーク』”, SSE2000-235&IN2000-191, pp.65-72(2000.12受付, 2001.3掲載)(文献2)
− 星合隆成, 柴田弘:”御用聞き型情報提案のための自律分散照合環境アーキテクチャとその性能評価”, 電子情報通信学会論文誌(D-I), Vol.J83-D-I, No.9, pp.1001-1012 (1999.10受付、2000-09掲載)(文献3)
− 星合隆成, “Jnutellaワークショップ招待講演”, 2001.5.22, http://www.jnutella.org/jnudev/jws-052201_2.shtml (文献4)
【0009】
しかしながら、ブローカ型探索モデルでは、ブローカが情報のメタデータを一括管理しているために、ユーザや情報提供者の多用なニーズにリアルタイムに応えることが困難であること、すべてをブローカの運営ポリシーに委ねなければならないこと、ブローカが運営しているシステムがダウンするとすべてのサービスが停止してしまうこと、ユーザや情報提供者のプライバシー保護が困難なことなどから、より自由で、特定のブローカに支配されない新たなビジネスモデルが求められるようになった。すなわち、これまでのビジネスモデルにおいて一般的に用いられてきたブローカ(集中管理者)を排除し、エンティティ間(たとえば、ユーザと情報提供者との間)で、互いに相応しい相手を直接探索・発見することが可能なビジネスモデルが求められるようになった。
【0010】
このような問題認識から、本願発明者が1998年に提唱した新たな概念が、「ブローカレス型探索モデル」である。これは、2000年3月に発表されたGnutella(グヌーテラ)を契機に、世界中で注目されるようになったP2P(Peer-to-Peer)と同じ世界を指向しているものである。また、2001年4月に発表されたJXTAも同様の世界を目指している。P2Pは、WWW以来の革新技術であり、第3世代と呼ばれている。
【0011】
また、余談であるが、本願発明者は、ブローカレス型ポリシーモデルが第4世代になると確信している。ブローカレス型ポリシーモデルとは、各エンティティが有するポリシーをエンティティ間でネゴシエーションすることにより、それらのエンティティで一意のポリシーを決定するためのビジネスモデルであり、その決定に関与する管理者が存在しないものを言う。
【0012】
なお、ブローカ型探索モデルとブローカレス型配信モデルの組み合わせがハイブリッド(Hybrid)P2Pであり、ブローカレス型探索モデルが純(Pure)P2Pであると位置付けることもできる。図34は、P2Pモデルのディメンションを示す概略図である。
【0013】
ブローカレス型探索モデル(P2Pモデル)は、ビジョン・概念・理念であり、これが目指す世界は非常に単純で明快である。具体的には、以下のような世界を構築することを目標としている。
すなわち、第1に、従来、ブローカが担っていた役割を、それぞれのエンティティがボランティアとして分担することにより、特定の運営者、管理者の存在を前提としなくても、様々なネットワークサービスを構築、運営できることである。
また、第2に、ボランティアとして運営に参加している任意のエンティティが、障害や退去などの様々な理由により、運営から脱退しても、ネットワークサービス全体に影響を与えないように、残されたエンティティが自己組織化することによりサービスを継続できることである。
【0014】
次に、意味情報ネットワークを、従来のネットワークとの比較において説明する。
【0015】
従来ネットワークは、図26に示すネットワークモデルにより概念的に表現される。図26において、各端末は、端末アドレス(例えば、ネットワークアドレスとホストアドレス)を自身の識別子としてネットワークに登録する。一方、送信端末は、図27に示す宛先アドレス(送信先の端末アドレス)とデータから構成されるイベント(パケット)をネットワークに送出する。すなわち、従来の情報ネットワークの基本概念は、宛先アドレスに基づいて、イベントを目的地まで正しく配送することにある。
【0016】
このネットワークを用いて、提案型サービス(ユーザ毎にパーソナライズされた情報を提案するパーソナライズ情報提案サービス、および、検索サービスなどのイエローページサービス)を実現する場合を考える。従来は、パーソナライズ情報提案サービスを実現するために、図28に示すような集中型のサーバシステム(ブローカ)を常に介在させる必要がある。同様に、イエローページサービスにおいても、検索サービスと呼ばれるブローカを前提とする必要がある。このようなブローカを介した中央集権的なビジネスモデルを、ブローカモデルと呼ぶ。このブローカモデルでは、ブローカ(仲介者)が情報提供者とユーザを結びつける役割を担う。すなわち、ブローカを介してのみユーザと情報提供者が出会うことが可能である。
【0017】
図29を用いて,上記ブローカモデルの詳細な説明を行なう。図29に示すように、エンドユーザ(図中ではコンシューマ101)、情報提供者(コンテンツプロバイダ102)に加えて、サービスプロバイダ(コンテンツ情報プロバイダ)103の3つのビジネスロールから構成されるビジネスモデルにおいて、サービスプロバイダ103は、情報提供者(コンテンツプロバイダ102)から登録されるコンテンツ情報、及びエンドユーザ(コンシューマ101)から登録されるエンドユーザ嗜好情報を管理するとともに、登録されたコンテンツ情報とエンドユーザ嗜好情報を照合することにより、エンドユーザ(コンシューマ101)に相応しいコンテンツを提案するサービスを提案型サービスとして提供していた。このようなサービスプロバイダがブローカに相当する。
【0018】
具体的なサービスとしては、ヤフー(Yahoo)等の検索サービス、トレーディングサービス、エンドユーザの直接的な介在なしにエンドユーザの興味に合致するコンテンツを提案するパーソナライズ情報提案サービスがある。
これらのサービスは、図30に示すように、ネットワーク網109、もしくはコンテンツ流通網110上に存在する個々のサービスプロバイダ103において、それぞれ一体型のサービスシステム(サービスアプリケーション)として実現されていた。
【0019】
これらの形態に起因して、ブローカモデルでは、次の(1)〜(4)のような問題点があった。
【0020】
(1) 情報提供者(コンテンツプロバイダ102)が、第三者を介在せずにエンドユーザ(コンシューマ101)に対してコンテンツ情報をアナウンスする手段が存在しなかったため、情報提供者(コンテンツプロバイダ102)自身がコンテンツ情報を流通させる情報提供者(コンテンツプロバイダ)主導型の御用聞き社会を実現することができなかった。すなわち、コンテンツの提供元である情報提供者(コンテンツプロバイダ102)は、第三者を介在することなく自身のポリシーでコンテンツ情報を流通させることができなかった。
【0021】
(2) サービスプロバイダ103の提案サービスを享受するためには、サービスプロバイダ103の存在、位置、及びアクセス方法を、エンドユーザ(コンシューマ101)が明示的に認識しなければならなかった。
【0022】
(3) 異なるサービスプロバイダ103間で、コンテンツ、コンテンツ情報、エンドユーザ嗜好情報を共有することを容易に実現できなかった。これまでは、個々のサービスプロバイダ103間で事前に取り決めたプロトコルに従って、情報のやり取りを行なうことにより、情報を共有していた。
【0023】
(4) サービスプロバイダ103におけるコンテンツ情報及びエンドユーザ嗜好情報の集中管理に起因して、スケラビリティの高いシステムを構築することが容易ではなかった。これまでは、コンテンツ情報及びエンドユーザ嗜好情報を管理するサーバシステムを複数用意する等の古典的な手法が用いられてきた。
【0024】
ところで、WWW(World Wide Web)、CORBA(Common Object Request Broker Architecture)などの分散処理技術は、異機種分散システム上に分散配置されたコンテンツを居ながらにして簡単に入手できる環境を提供するとともに、誰もが容易にコンテンツ提供者になれることを可能にした。その反面、世界中に氾濫する膨大なコンテンツの中から、エンドユーザが所望するコンテンツを見つけ出すことは容易でなく、そのための実現技術の早期確立が望まれている。
【0025】
このような事情や上記ブローカモデルの問題点に鑑み、情報提供者(コンテンツプロバイダ)が、ブローカの存在を仮定することなく自身のコンテンツに相応しいエンドユーザに対して、本願発明者は、直接コンテンツを提供することが可能な非ブローカモデルを提唱した。
【0026】
非ブローカモデルの実現技術として、Gnutella、SUNによる発明(US Patent 5,870,605:文献5)、NECによる発明(特願平11−328654,特開2000−165449号公報:文献6)がある。
Gnutellaは,P2P(Peer-to-Peer)インタラクションモデルに基づいて、インターネット上に分散する不特定多数のエンティティ(情報)の中から、特定のエンティティを探索・発見するネットワークである。なお、Gnutellaではエンティティのことをサーバントとも呼ぶ。すなわち、個々の情報提供者がメタデータ(メタファイル)を超分散管理し、メタファイル間(メタファイルが格納されているホスト間)に任意のコネクションを設定することにより、情報提供者のみでメタデータに関する超分散データベースを構築する。そして、情報提供者同士が互いに分散協調することにより、ブローカを必要としない、メタデータの検索ネットワークの構築を可能にした。しかしながら、消費者からの検索要求パケットが、コネクションに基づいて全ての情報提供者に対してブロードキャストされる。すなわち、P2P方式のインタラクションを、コネクション情報に基づき、全てのホストに対して繰り返すため、ホスト数や扱うメタデータ種別の増加に比例して、不要なトラフィックが増大し、スケラビリティが極端に低下する問題がある。さらに、スケラビリティのみでなく、相互運用性、情報共有性、拡張性、セキュリティ、プライバシーなどの面においても問題を有している。
【0027】
文献5は,内容ベースのルーティングを行なうネットワークシステムによって、情報提供者(Publisher)とユーザ(Subscriber)が互いに相手に関する知識を有していない状況において,情報の要求と利用をブローカ不在で可能とする方法を示した。しかしながら、不要なイベント転送を抑止するようなルーティングの仕組みを有していないため、スケラビリティに問題がある。さらに、テリトリ間のオントロジ(イベント辞書を変換する仕組みなど)を有していないため、相互運用性、情報共有性、拡張性などの面においても問題を有している。すなわち、文献5では、共通のイベント辞書(event dictionary)を共有するテリトリを規定しているが、テリトリの実現方法や、異なるテリトリ間で情報を共有するための方法が明確化されていない。そのため、テリトリに関しては具体的実現性の記述に乏しい。
【0028】
文献6は、特定の宛先アドレスを有するパケットのみならず、関心領域の指定を含むだけのパケットもルーティングすることが可能な情報ルーティングを提案している。情報ルーティングによって,ブローカを必要としない探索が実現できる。しかしながら、オントロジ体系の一意性やイベントの波及範囲を限定するイベントプレース、ゲートウエイ、セッションという概念がない。そのため、スケラビリティ、セキュリティ、プライバシー、相互運用性、情報共有性、拡張性などの面において問題を有している。
【0029】
このように,従来の非ブローカモデルの実現技術は、大きく分けて以下の4つの課題を有している。
【0030】
第1の課題は、セキュリティとプライバシーの保護の欠如である。
従来の非ブローカモデルの実現技術では、情報を流通させる範囲を限定する機構がない。つまり、イベントの波及先の限定が行なえない。そのために、ネットワークに接続している人であれば誰でも情報を見ることが可能になる。
また、情報の終端点が、エンドユーザの端末となり、外部からこれを参照する場合がある。そのために、外部に公開を望まない情報の載っている端末であっても、ネットワークに接続する場合は、情報を公開する可能性がある。
また、セッションの概念がないため、イベント送受信端末のみでのネットワークの構築はできるが、ネットワークプロバイダとイベント送受信者を分離できない。
【0031】
第2の課題は、相互運用性の欠如である。
意味情報体系(オントロジ体系)が異なる領域を作る場合は、それらの領域を接続する仕組みを有していないため、それらの間でのイベントの共有ができない。
また、必要なイベントのみの転送ができない。
【0032】
第3の課題は、拡張性の欠如である。
つまり、動的な機能の追加・削除が困難である。
また、ネットワーク規模を拡張することが容易でない。
【0033】
第4の課題は、スケラビリティの欠如である。
つまり、イベントの送受信者数の増大に対処できない。
また、意味情報種別(メタデータ種別)の増大に対処できない。
また、不要なイベント転送を抑止できない。
【0034】
そこで、本願発明者は、上述した非ブローカモデル以外の非ブローカモデルの実現技術として意味情報ネットワーク(Semantic Information-Oriented Network: SION)を提案した。なお、本願発明者らによる意味情報ネットワークに関する文献は、以下の文献7〜8である。
− 星合隆成, 柴田弘:"御用聞き型情報提案のための自律分散照合環境アーキテクチャとその性能評価", 電子情報通信学会論文誌(D-I), Vol.J83-D-I, No.9, pp.1001-1012 (2000-09).(文献7)
− 星合隆成、柴田弘、酒井隆道、小柳恵一:”意味情報ネットワークアーキテクチャ: SIONアーキテクチャ”, NTT R&D, Vol.50, No.3, pp.157-164(2001.3).(文献8)
【0035】
上記の文献7〜8で提案されているSIONは、意味情報(メタデータ)に基づいてパケットを配送する自律分散ネットワークであり、ネットワーク上に分散するエンティティの中から、特定のエンティティを動的に探索・発見することができる。SIONの概念を図31に示す。図31と図26とを比較すると明らかなように、SIONは、従来の宛先アドレス(誰に対して送信する)の代わりに、意味情報(どういう人に対して送信する)に基づくメタネットワークである。
【0036】
ここで、意味情報ネットワークの概要を、図32を参照して簡単に説明する。イベント受信者毎のエンティティ22a、22b、22c(実際には端末等)と、イベント送信者毎のエンティティ21a、21b(実際には端末等)は、SION1を介して接続されている。各エンティティ22(a、b、c)は、あらかじめ、受信を希望するイベント(情報)の特性を示す意味情報をフィルタとして各々登録しておく。エンティティ21(a、b)は、イベントを送信することにより、SION1に「刺激」を与える。ここでは、エンティティ21aが刺激を与えたものとする。このイベントは、少なくとも意味情報を含んでいる。SION1は、送信されたイベントの意味情報と、登録された各フィルタを照合する。送信されたイベントの意味情報と登録されたフィルタが合致する場合、フィルタは「発火」し、当該イベントを対応するエンティティ22に送信する。ここでは、エンティティ22bのフィルタが発火したものとする。フィルタが発火すると、対応するエンティティ22bは自律起動し、当該イベントを受信する。これにより、特定のエンティティのみを探索、発見することができる。
【0037】
SIONでは、SIONの構成要素を含めたすべてのエンティティを自律分散協調させることにより、ネットワークが構築される。SIONのネットワーク構成要素には、意味情報スイッチ(SI−SW)、意味情報ルータ(SI−R)、意味情報ゲートウエイ(SI−GW)、イベントプレース、セッションなどがある。
【0038】
SI−SWは、フィルタとして登録された意味情報と、イベントに付与された意味情報を照合し、その結果発火したイベント受信エンティティを起動する。SI−Rは、SI−SW間の経路を選択し、エンティティたる端末から送信されたイベントを他のSI−SWに転送する。イベントプレースは、イベントの波及範囲である。SI−GWは、イベントプレース間でイベントを転送する。セッションはSI−SWとエンティティ間の接続関係である。これらを必要に応じて組み合わせることにより、セキュアーでスケーラブルなP2Pネットワークをボトムアップアプローチで構築することができる。
【0039】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明した意味情報ネットワーク(SION)において、従来は、次のような問題があった。
【0040】
まず、従来の意味情報ネットワークでは、イベントパス確立のためのイベントパス設定要求は、シェアードリンクで辿れるイベントプレース内のすべての意味情報ルータ(SI−R)および意味情報スイッチ(SI−SW)に波及するため、ネットワークトラフィックが増大するという問題があった。そこで、イベントパス設定要求の転送時や、イベントの転送時に、ネットワークトラフィックを軽減する技術が求められる。
【0041】
また、従来の意味情報ネットワークでは、エンティティが自身の存在を他のエンティティに公開するための方法が確立されてないという問題があった。そこで、ブローカが介在することなく、エンティティが自身の存在を他のエンティティに公開するための技術が求められる。
さらに、エンティティ間のシェアードリンクにより構成されるトポロジにおいて、開トポロジを実現するための技術が求められる。
【0042】
本発明は、上記のような事情を考慮してなされたものであり、意味情報ネットワークのパフォーマンスを改善するための方法を提供することを目的とする。
特に、ネットワークトラフィックを軽減させるためのンティティ間のシェアードリンク設定方法を提供することを目的とする。
【0043】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、シェアードリンク確立情報が記憶された意味情報スイッチを含むエンティティによってイベントプレースが作成される通信システムにおいて、シェアードリンクの確立要求により前記イベントプレース内のエンティティ間でシェアードリンクを設定する方法であって、前記意味情報スイッチは、自身に記憶されたシェアードリンクの確立要求先となる意味情報スイッチとシェアードリンクの確立要求を受付けた意味情報スイッチとを記録したシェアードリンク確立情報を参照し、イベントプレース内の他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行うことを特徴とする。
【0055】
また、本発明の通信システムは、意味情報スイッチを含むエンティティによって構成される通信システムにおいて、シェアードリンクの確立要求により前記エンティティ間でシェアードリンクを設定する通信システムであって、前記意味情報スイッチは、他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行なうことを特徴とするものである。
【0056】
また、本発明のエンティティ装置は、フィルタとして登録された意味情報とイベントに付与された意味情報とを照合し、その結果発火したイベント受信エンティティを起動する意味情報スイッチを備え、意味情報ネットワークの構成要素となるエンティティ装置において、前記意味情報スイッチは、他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行なうことを特徴とするものである。
【0057】
また、本発明のシェアードリンク設定方法は、フィルタとして登録された意味情報とイベントに付与された意味情報とを照合し、その結果発火したイベント受信エンティティを起動する意味情報スイッチを備え、意味情報ネットワークの構成要素となるエンティティ装置におけるシェアードリンクの設定方法であって、前記意味情報スイッチは、他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行なうことを特徴とするものである。
【0058】
また、本発明のコンピュータプログラムは、フィルタとして登録された意味情報とイベントに付与された意味情報とを照合し、その結果発火したイベント受信エンティティを起動する意味情報スイッチを備え、意味情報ネットワークの構成要素となるエンティティ装置にシェアードリンクの設定の処理を実行させるコンピュータプログラムであって、前記意味情報スイッチが他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行なう処理を実行させることを特徴とするものである。
【0059】
また、本発明の記録媒体は、前記の各コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、この発明の一実施形態について説明する。
以下、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、情報携帯端末、携帯電話、ウエアラブルコンピュータなどのあらゆるコンピュータを総称して、「ホスト」と呼ぶ。さらに、SIONソフトウエアを実装したホストを、「SIONエンティティ」あるいは、単に、「エンティティ」と呼ぶ。
【0061】
エンティティは、SIONにおける自律分散の単位であるとともに、SIONソフトウエアを実装したホストをSIONにおける自律的な動作実体として仮想化したものである(図1参照)。また、SIONソフトウエアは、個々のエンティティが自律分散協調を行なうための種々の機構を提供する。
【0062】
ここで、エンティティについて詳細に説明する。エンティティは、図2に示すように主に3つのタイプに分類される。
(1)サービスとして振舞うエンティティ(サービスエンティティ:以下「SE」と呼ぶ)
(2)ネットワーク構成要素として振舞うエンティティ(ネットワークエンティティ:以下「NE」と呼ぶ)
(3)サービス、および、ネットワーク構成要素の両者の観点から振舞うエンティティ(サービス・ネットワークエンティティ:以下「SNE」と呼ぶ)
【0063】
サービスエンティティは、アプリケーションプログラムをエンティティとして仮想化したものである。SION−MT(SION-Management Tool)が提供するプラグイン機構により、一般のアプリケーションプログラムをサービスエンティティとしてエンティティ化することが可能である。なお、SION−MT自身も一つのサービスエンティティである。サービスエンティティは、セッションを介して、SIONにイベントを送信したり、SIONからイベントを受信したりすることが可能である。また、一つのサービスエンティティから、SIONに対して複数のセッションを確立することができる。なお、サービスエンティティは、基本的にネットワークの構築・運営に関与しない。
【0064】
ネットワークエンティティは、SIONを構築するためのエンティティであり、上述したようにSI−SW(意味情報スイッチ)、SI−R(意味情報ルータ)、SI−GW(意味情報ゲートウエイ)、EP(イベントプレース)、セッション、統計情報エンティティ、障害処理エンティティ、Aliveエンティティなどである。本実施形態のSIONでは、このようなネットワーク構成要素を、必要に応じて、必要なものを、必要な数だけエンティティ内に動的に生成可能である。例えば、一つのエンティティ内に、複数のSI−SWを動的に生成可能である。また、同一エンティティ内のSI−SWがそれぞれ異なるEPに属することも可能である。
これらは、バックボーン型P2Pネットワークの構築や、ハイブリッド型P2Pネットワークを構築する際に用いられる。
SNEは、サービスとネットワーク構成要素の両者の観点から振舞うエンティティであり、ピュア(pure)型P2Pネットワークを構築する際に用いられる。これは、個々のSNEが互いに助け合うことにより、ボランティア型のネットワークを構築する形態であり、SNEが分散協調することにより、ネットワークを自己組織化する。
【0065】
なお、ハイブリッド型P2Pネットワークとは、例えばネットワークプロバイダなどの運営者がホスト等にイベントプレースをあらかじめ生成し、個人の端末等のサービスエンティティがセッションによりイベントプレースと接続することにより構成されるネットワークである。また、ピュア型P2Pネットワークとは、個人の送受信端末たるエンティティがシェアードリンクで各々接続されることにより構成されるネットワークであり、このネットワークのうち、イベントを共有する最小単位がイベントプレースである。バックボーン型P2Pネットワークとは、ネットワーク間の接続形態のことであり、例えば、複数の地域のピュア型P2Pネットワークをハイブリッド型P2Pネットワークを経由して接続した状態のネットワークのことをいう。
【0066】
一つのエンティティ内に複数のネットワークエンティティを含む場合のエンティティの内部構成を図24に示す。
この図において、エンティティ制御部は、コントロールパネルからの様々な要求を受け付ける。
コントロールパネルは、アプリケーション、人などのエンティティの所有者に対して、GUI(Graphical User Interface)を提供する。例えば、エンティティにエンティティ名を付与することができる。
ネットワークエンティティファクトリは、NE(ネットワークエンティティ)をエンティティ内に生成する。エンティティ制御部で受けた生成要求に基づいて、ネットワークエンティティファクトリは上述のNEを生成する。
【0067】
図4に、SIONのネットワーク構成例を示す。SIONでは、目的に応じて、エンティティを配置・組み合わせることにより、様々な形態のP2Pネットワークを構築することができる。また、異なる形態のP2Pネットワークをシームレスに連携させることができる。これは、「すべてのエンティティを、『刺激と発火に基づく連鎖反応』という一元的かつ単純な仕組みで自律分散協調させること」、「P2Pネットワーク形態の差異をエンティティの配置問題に帰着させること」などにより達成される。
なお、エンティティは公開プロトコルに基づいて、自身の存在をアドバタイズする。これをアドバタイズメントという。アドバタイズメントには、アドバタイズの発信基地として振舞う「アドバタイズメントベース(オリジンエンティティ、オリジンイベントプレースなど)」を用いる方法や、ブロードキャスト・カスケードによる方法がある。
以下に、個々のネットワークエンティティについて詳述する。
【0068】
<SI−SW(SI-Switch)>
SI−SW(意味情報スイッチ)は、意味情報に基づいて、イベントをスイッチングするスイッチング機構を提供する。SIONでは、このSI−SWを分散ソフトウエアとして実装している。
図5にSI−SWの構成を示す。この図において、イベント受信部51は、イベント送信者からのイベントを受信する。照合部52は、イベント受信部で受信したイベントに付与された意味情報をフィルタと照合する。イベント送信部53は、照合部により発火したイベントを、イベント受信者へ送信する。フィルタ管理部54は、フィルタと、照合の結果発火した場合のイベントの送信先を記憶する。制御要求受付部55は、他のスイッチ、ルータ等から制御要求を受け付ける。制御部56は、制御要求受付部で受け付けた要求に基づいて、フィルタ制御(登録、解除)、セッション制御(登録、解除)、シェアードリンク制御(確立、解除、再確立、情報応答)等を行なう。シェアードリンク設定情報管理部57は、シェアードリンク設定条件(設定相手のSWのID、設定要求/被要求の種別)を記憶する。
【0069】
図6に示すように、SI−SWはセッションを介して、サービスエンティティをスター型で収容する。ここで、セッションとは、SI−SWとサービスエンティティ間のコネクションであり、サービスエンティティは、セッションを介してイベントの送受信を行なうことができる。なお、サービスエンティティは、SI−SWに対してイベントの送受信を行なうエンティティであり、説明の便宜上、サービスエンティティをイベント送信エンティティとイベント受信エンティティとに区別して呼ぶことがある。前者は、SI−SWに対してイベントを送信するエンティティであり、後者は、SI−SWからイベントを受信するエンティティである。サービスエンティティは両者の側面を併せ持つことができる。
【0070】
サービスエンティティは、SION上の分散アプリケーション(SIONを用いてイベントの送受信を行なうアプリケーションプログラム)として位置付けられるものであり、図12に示すFile Exchanger(ファイル交換アプリケーション)、パーソナルTVサービスなどがサービスエンティティとして既に実装されている。
図7にイベント(SIONパケット)の構造を示す。イベントは、制御情報部(CI:Control Information)部、意味情報(SI:Semantic Information)部、データ部から構成される。データ部には、送信データが格納される。送信データとして、テキスト(文書、電話番号、XML(Extensible Markup Language))、バイナリデータ、リファレンス(URL(Uniform Resource Locator), Object Reference)、プロキシ、エージェントなど、様々なデータ、プログラムを格納することができる。
【0071】
一方、意味情報部には、送信データの意味情報(語彙とその値)、および、意味情報の語彙概念(イベントタイプと呼ぶ)が格納される。ここで、意味情報とは、送信データの特性を記述したメタデータであり、図8の意味情報体系(オントロジ体系)に示すように、いずれかのイベントタイプに属する。すなわち、意味情報はイベントタイプのインスタンスであり、イベントタイプは意味情報のテンプレートである。イベントタイプ間には継承関係を定義できる。なお、SION制御用(SIONのネットワークエンティティ用)に一部のイベントタイプ名が予約済みである。参考までに、意味情報体系の例を図9に示す。この図において、”タイトル;イエスタデイ”、”価格;$30”、”アーティスト名;ビートルズ”という意味情報は、”ポピュラー”というイベントタイプに属しており、また”音楽”というイベントタイプにも属している。また、”タイトル;きよしこの夜”、”価格;$20”、”シチュエーション;クリスマス”という意味情報は、”BGM”というイベントタイプに属しており、また”音楽”というイベントタイプにも属している。
【0072】
制御情報部は、SIONの実行制御のために用いられるデータフィールドであり、これのみがSIONのユーザであるサービスエンティティに対して開放されていない。制御情報部には、合致したフィルタの識別子、合致したフィルタの照合得点、同期型統計情報収集フラグ、TTL値(イベントプレース内、イベントプレース間)、ホップ数(イベントプレース内、イベントプレース間)などの様々な制御情報が設定される。
図10に示すように、イベント受信エンティティは、セッションを介して、イベントの取得条件をSI−SWに登録する。これをフィルタと呼ぶ。
フィルタには、取得したいイベントのイベントタイプ、および、意味情報との照合条件(例えば、語彙”Price”が”$20から$40の範囲”のものを取得対象とする)が設定される。なお、当該イベントタイプに定義されているすべての語彙との完全一致、一部の語彙との部分一致、重み付け一致なども、照合条件をフィルタ単位で選択することができる。
【0073】
一つのセッションから、複数のフィルタを登録可能であるが、同一セッションを介して登録されたフィルタ間は”or”関係を有する。すなわち、一つのイベントに対して、一つのセッションは高々1回しか発火しない。
取得したいイベントのイベントタイプにワイルドカードを指定した場合には、すべてのイベントタイプが照合の対象となる。また、意味情報との照合条件に1(論理値が真)が設定された場合には、無条件に意味情報との照合条件が満足されたことを意味する。
【0074】
一方、イベント送信エンティティは、セッションを介して、SI−SWにイベントの送信を行なう。このとき、SI−SWのイベント受信部51はイベントを受信し、照合部52に渡す。照合部52は、イベントの意味情報部とフィルタとを照合する。具体的には、まず、受信したいイベントタイプであるかどうかをチェックし、これを満足した場合には、意味情報と照合条件をチェックする。照合の結果、条件を満足した場合には、合致したフィルタを登録したイベント受信エンティティを起動するととともに、当該イベントを通知する。SIONでは、イベントの送信を”刺激”、フィルタがイベントに合致することを”反応”、合致したフィルタを登録したエンティティを起動しイベント通知することを”発火”と呼ぶ。
なお、発火によるイベント通知のほかに、ルックイン型のイベント通知もサポートする。これは、受信セッション単位にスプールされているイベントをプルで取得する受信モードである。このルックイン型のイベント通知は、図35に示すようなファイアウォールを跨るイベント受信や、SEがアクティブでない場合のイベント受信に有効である。
【0075】
SIONの基本概念は、刺激と発火の連鎖反応により、すべてのエンティティを自律分散協調させることにある。
なお、フィルタに意味情報を登録し、イベントの意味情報部に配布条件(照合条件)を設定することも可能である。SIONでは、このような形態を御用聞き型モデルと呼んでいる。例えば、イベントの意味情報部に、「$20<Price<$30」を設定することができる。一方、本文中で説明したような形態(SI−SWにフィルタを登録し、イベントに意味情報を登録する形態)を御問い合せ型モデルと呼んでいる。
【0076】
<EP(Event Place)>
イベントプレースは以下の目的から考案されたドメインの概念である(図11参照)。なお、シェアードリンク、SI−Rについては後述する。
(1)イベントの転送範囲:刺激と発火に基づく連鎖反応の波及範囲を制限することができる。
(2)イベントルーティングの対象範囲:シェアードリンクにより接続されているSI−SWの集合である。イベントプレース毎に、リンクトポロジやイベントルーティング方式を選択できる。
(3)意味情報体系の一意性が保証される空間:取り扱うイベントタイプの爆発的な増大を抑止する。
【0077】
このような特長を持つイベントプレースの主な利用方法として以下のものが挙げられる。
(1)サブネットの単位(物理的な単位)
例えば、職場のパソコンでSIONのローカルネットワークを構築する場合などに利用する。
(2)サービスの単位(論理的な単位)
一般的にサービス毎に、必要とされる意味情報体系(語彙概念や語彙)が異なるため、例えば、証券情報提供サービス、医療情報サービスなどサービス種別毎にイベントプレースを構築する場合などに利用する。
(3)サービス運営者の単位
同じサービス種別でも、サービス運営者毎に、異なるイベントプレースを構築する場合などに利用する。
【0078】
(4)セキュリティの保証単位
承認されたエンティティのみが、イベントプレースに参加することが許される。すなわち、イベントプレース内のSI−SWにセッションを確立する、もしくは、イベントプレース内のSI−SWに対してシェアードリンクを確立することが許容される。基本的には、イベントプレース間での情報共有は許容されない。
(5)ネットワーク運営・管理者の単位
運営や管理の容易性から、イベントプレースを更に複数のイベントプレースに分割することがある。
(6)負荷分散の単位
負荷分散の観点から、イベントプレースを複数のイベントプレースに分割することがある。
【0079】
(7)セッション確立の制約に伴う物理的な単位
SIONでは、サービスエンティティとSI−SW間のコネクション、およびSI−SW間のコネクション(シェアードリンク)は、セッションにより実現される。セッション自体は論理的な概念であるが、物理的に無線LAN等を用いて実装されている場合には、無線の到達距離によりグループ化の対象が制限される。
(8)グループのグループ化
後述するSI−GWを用いて、イベントプレースを階層的に連携させることにより、親グループ、子グループの関係を持ったクラスタリング構成を構築できる。
【0080】
<SI−GW(SI-Gateway)>
イベントプレースはイベントの転送範囲を制限するためのものであり、基本的には、他イベントプレースとのイベント共有はできない。しかしながら、SI−GW(意味情報ゲートウエイ)を設定することにより、イベントプレース間でのイベント共有が可能になる(図11を参照)。これにより、それぞれの用途や目的に応じて構築されたイベントプレース間の連携(フェデレーション)が可能になる。
図11において、例えば、イベントプレースAからイベントプレースBに対して連携要求を行い、これがイベントプレースBによって承認されたとき、イベントプレースAは、SI−GWA,Bを生成する。なお、連携要求として、片方向、もしくは双方向の連携を指定可能である。
【0081】
SI−GWA,BはイベントプレースBに対してイベント受信用セッションを確立し、一方、自身のイベントプレースに対してイベント送信用セッションを確立する。これにより、イベントプレースBで生起したイベントをイベントプレースAに転送することが可能になる。
SI−GWA,Bは、イベント受信用セッションを介して登録するフィルタ値の設定により、すべてのイベントタイプを転送の対象とする、特定のイベントタイプのみを転送の対象とするなど、きめ細かなファイアウォール制御が可能になる。
【0082】
また、異なる意味情報体系を持つイベントプレース間においてイベント転送を行なう場合には、イベントの意味情報変換が必要になる。
そこで、SI−GWA,Bは、イベントプレースAとイベントプレースB間の意味情報変換テーブルを作成し、当該情報に基づいて意味情報変換を行った後に、イベントプレースAに対して、イベント転送を行なう。イベントプレース間の転送回数(ホップ数)はTTL値により制限される。
上述の考え方に基づいて、他のP2Pネットワークとの相互接続も可能である。SIONでは、このための機構を「S/x−GW」と呼ぶ。例えば、SIONからは、S/G−GWを介して、Gnutellaネットワークが一つのエンティティとして仮想化される。
【0083】
<リファレンスモデル>
SIONはリファレンスモデルの考え方を採用している。最下位層がSIONでありイベントの伝達層である。上位層に対してネットワークインタフェースを提供する。ミドルウエア層がコミュニティネットワークであり、SIONのインテリジェンス層に相当する。最上位層がアプリケーション層(サービスエンティティ)である。
SION-Management TOOL(SION−MT)もサービスエンティティの一つに位置付けられる。これは、SIONのネットワークインタフェースを発行するGUI(Graphical User Interface)ツールであり、サービス固有のロジックは有していない。しかしながら、SION−MTに他のアプリケーションプログラム(サービスロジックを有するアプリケーション)を組み込むことが可能なプラグイン機構を提供している。これにより、ユーザ毎にカスタマイズされたサービスエンティティを構築することが容易に可能になる。
【0084】
<オンライン増減設方式>
ここでは、ネットワークエンティティの増減設方式に関して、特に、SI−SWの増減設の観点から述べる。
<SI−SW増減設の目的>
まず、SIONにおけるSI−SW増減設の目的について述べる。
(1)イベントプレースのトータル処理能力向上の観点から、イベントプレース内のSI−SWを増設し、イベントのフィルタリング処理を負荷分散する。また、その逆の観点から、SI−SWを減設する。
(2)動的に生成されたSI−SWに対して、シェアードリンクを柔軟に確立することにより、フレキシブルでグローバルなネットワークをボトムアップ的に構築する。
【0085】
<増減設の形態>
SIONでは幾つかの増減設形態を提供しているが、ここでは、図13に代表的な形態を示す。
(1)イベントプレースの合成と分離
図13の(a)に示すように、複数のイベントプレースを合成することができる。ここで、イベントプレースの合成とは、イベントの波及範囲を限定する単位であるイベントプレースにおいて、複数のイベントプレースを1つにすることにより、イベントの波及範囲を拡大することをいう。
これは、イベントプレースに属する任意のSI−SW、もしくはイベントプレースに対して、合成要求(シェアードリンクの確立要求)を行なうことにより、イベントプレース間にシェアードリンクが確立され、両者の合成が実現される。なお、合成(シェアードリンク確立)の要求元および要求先は、それぞれ、SI−SWでもイベントプレースでもどちらであってもかまわない。一方、分割する場合には、確立されているシェアードリンクを解除し、それぞれのイベントプレースに分離する。
【0086】
(2)イベントプレースへの参加と退去
図13の(b)に示すように、イベントプレース内のSI−SW、もしくは、イベントプレースに対して参加要求(シェアードリンクの確立要求)を行なうことにより、既存SI−SWとの間にシェアードリンクが確立され、当該イベントプレースに参加することができる。
SI−SWがイベントプレースから退去する場合には、他のSI−SWとのシェアードリンクを解除し、さらに、シェアードリンクの再構築を行い、当該イベントプレースから退去する。このとき、退去したSI−SWの状態は、サスペンド状態へと遷移する。
なお、イベントプレース側からSI−SWに対してシェアードリンクの確立を要求することにより、当該SI−SWをイベントプレース内に取り込むことも可能である。これを吸収という。その逆を***という。
【0087】
(3)SI−SWの増減設
図13の(c)に示すように、イベントプレース内のSI−SW、もしくは、イベントプレースに対して、SI−SWの増設要求を行なうと、指定されたホスト(エンティティ)に指定された数のSI−SWが新たに生成され、既存のSI−SWとの間にシェアードリンクが確立される。一方、イベントプレースにSI−SWの減設要求を行なうと、指定されたSI−SWのシェアードリンクが解除された後、シェアードリンクの再確立が行われ、当該SI−SWが削除される。このとき、SI−SWの状態は、「Non-Existent」に遷移する。
【0088】
(4)イベントプレース間のフェデレーション
図13の(d)に示すように、イベントプレース内のSI−SW、もしくは、イベントプレースに対して、フェデレーション(連携)要求を行なうことにより、SI−GWが生成され、セッションを介して両イベントプレースが連携する。なお、フェデレーションの要求元および要求先は、それぞれ、SI−SWでもイベントプレースでもどちらであってもかまわない。
上記形態におけるSI−SWの状態遷移を図14に示す。SI−SWを生成した時の当該SI−SWの状態は、「サスペンド」状態であるため、いずれかのイベントプレースに属さない限り、当該SI−SWは「アクティブ」にならない。また、シェアードリンクが確立されているSI−SWを削除することはできない。
【0089】
<エンティティの配置とビジネスモデル>
上述したように、ネットワークエンティティの配置の仕方により、ハイブリッド型のビジネスモデルとピュア型のビジネスモデルを構築することができる。
前者は、ネットワークプロバイダもしくはサービスプロバイダが用意するホストに、ネットワークエンティティを予め配置することによりイベントプレースを構築し、ユーザ(イベントの送受信者)はセッションを介して、イベントプレースに参加する形態である。
【0090】
一方、後者は、イベント送受信者の個々のホストにネットワークエンティティを配置し、それぞれにシェアードリンクを確立することにより、ピュアP2Pネットワークを構築する形態である。
SIONを用いることにより、同一のネットワークアーキテクチャ、制御方式で、両者の形態を実現することができる。すなわち、ネットワークエンティティの配置方法の問題に帰着させることができる。また、SI−GWを介して、両者を連携することも可能である。SI−GWの利点は、あるイベントプレースAに着目したとき、当該イベントプレースと連携しているイベントプレースB(SI−GW)が、イベントプレースAの一つのサービスエンティティとして見える点にある。すなわち、一般のサービスエンティティとイベントプレースを同様に扱うことが可能である。この考え方を発展させ、SION/Gnutella−GWを配置することにより、Gnutellaのような他のP2Pネットワークとも簡単に連携することができる。SION(イベントプレース)側から見ると、Gnutellaネットワーク全体がSIONに参加している一つのサービスエンティティとして見える。なお、このようなSX−GW(X=I,G)は、イベントプレース運営者が配置することも可能であるが、SION−MTのプラグイン機構を用いてSX−GWをSION−MTに組み込むことにより、エンドユーザが配置することも可能である。
これにより、シームレスなネットワークをビルドアップに構築することが可能になるとともに、SIONが異なるビジネスモデル(ブローカモデル、他のブローカレスモデル)の接着剤となることができる。
【0091】
<イベントルーティング方式>
シェアードリンク(共有リンク)は、複数の異なるSI−SW間において、双方向のイベント共有を行なうための概念である。例えば、SI−SWは、他のSI−SWに対して、シェアードリンク(Shared Link:SL)の確立要求を行なうことにより、SI−SW間にシェアードリンクを確立することができる。なお、後述するフィルタ値の設定によって、SI−SW間に様々なイベントルーティング方式を動的に選択できる。
図15は、SI−SW2およびSI−SW3がSI−SW1に対して、それぞれシェアードリンクの確立要求を行っている状態を表している。
【0092】
<シェアードリンクの確立>
ここで、図15において、SI−SW2がSI−SW1に対して、シェアードリンクの確立要求から確立までの仕組みを説明する。
図16に示すように、SI−SWとSI−SWとの間にはSI−Rが設置され、SI−Rは、意味情報に基づいて、SI−SW間のイベントルーティング(イベント転送)を行なう。SI−Rの構成を、図17を参照して説明する。
イベント転送部71は、スイッチからイベントを受信し、他のスイッチへ送信する。制御要求受付部72は、他のスイッチ、ルータ等からシェアードリンク制御(確立、解除)、フィルタ登録制御等の制御要求を受け付ける。制御部73は、制御要求受付部で受け付けた制御を行なう。フィルタ登録情報管理部74は、フィルタ登録情報(イベントタイプ毎の登録回数のカウンタ)を記録する。
【0093】
以下、シェアードリンクが確立される動作を説明する。
(1)SI−SW2はSI−SW1に対して、SI−SW2の識別子を含むシェアードリンクの確立要求を発行する。
(2)このとき、図16に示すように、SI−SW1は、SL1,2を確立するために、ネットワークエンティティファクトリによりSI−R1,2を動的に生成するとともに、シェアードリンク設定情報管理部57にSI−SW2がシェアードリンクの確立要求元であることを記憶する。SI−SW1はSI−R1,2に、SI−SW2の識別子を渡す。
【0094】
(3)SI−R1,2の制御部73は、SI−SW2に対して、イベント受信のためのセッションを確立する。さらに、自身が属するSI−SW1に対して、イベント送信のためのセッションを確立する。SI−Rが確立する送受信セッションの組み合わせがシェアードリンクの具体化といえる。
(4)これにより、SL1,2が確立され、例えば、SE4がSI−SW2に対して送出したイベントが、SI−R1,2を介して、SI−SW1へも送出されることになる。
(5)このとき、SI−R1,2はSI−SW2に対して登録するフィルタの設定により、イベントの転送方式を選択できる。イベント転送方式の一例を以下(a)、(b)で説明する。
【0095】
(a)SI−SW2に対して送出されたイベントを、無条件にSI−SW1へと転送する。すなわち、すべてのイベントに対して、SI−R1,2が発火する。これは、SI−R1,2がイベント受信セッションを介して登録するフィルタに対し、受信したいイベントタイプとしてワイルドカードを設定し、照合条件として1(論理値の真)を設定することにより可能になる。これを「無条件ルーティング」と呼ぶ。これは、主に、ブロードキャスト通信に用いられる。
【0096】
(b)SI−SW1に取って必要なイベントのみをSI−SW2からSI−SW1へ転送する(不要なイベント転送を行なわない)。すなわち、特定のイベントに対してのみ、SI−R1,2が発火する。例えば、SE2がSI−SW1に対して登録したフィルタを、SI−R1,2がSI−SW2にフィルタ登録することにより、本方式は実現できる。
なお、(i)SE2がSI−SW1に対して登録したフィルタ値のうち、SI−R1,2がSI−SW2に対して、イベントタイプのみをフィルタ登録する(照合条件は常に真とする)ことにより、イベントタイプのみをSI-SW2において照合し、その結果、SI−R1,2が発火すると、SI−R1,2は当該イベントをSI-SW1へと送出し、意味情報との照合をSI−SW1において行なう形態(語彙概念によるイベントルーティング)と、(ii)SE2がSI−SW1対して登録したイベントタイプと照合条件の両者をSI−R1,2がSI−SW2へフィルタ登録し、SI−SW2において完全なフィルタリングを行なう形態(語彙によるイベントルーティング)に大別される。前者は、主に属性付きマルチキャスト通信に、後者は主にユニキャスト通信、マルチキャスト通信に用いられる。これは、障害処理通知、統計情報通知、アライブ通知、リプライ通知、アドバタイズメント通知などで用いられている。
このようなイベント転送(イベントルーティング)のための経路選択情報(SI−Rがイベント共有のために登録するフィルタの集合を「イベントパス」と呼ぶ。
なお、シェアードリンクとイベントパスを用いたマルチホップ通信(ユニキャスト、ブロードキャスト、マルチキャスト、属性付きマルチキャスト)のほかに、通信先エンティティとの直接通信も可能である。このように、SIONでは、SI−Rが設定するフィルタ値の違いだけで、エンティティ間の連鎖反応の仕方を動的に制御することができる。すなわち、前述した様々な通信モードを実現することができる。このような単純で単一な仕組みもSIONの大きな特徴の一つである。
また、EP(イベントパス)の生成時、もしくは、サービスエンティティからのフィルタ登録時に、イベント転送方式(SI−RによるSI−SWへのフィルタ登録時のフィルタ値)を選択できる。
【0097】
語彙によるイベントルーティング方式では、無駄なイベント転送が全く発生しないが、ルーティングのためのフィルタ登録処理オーバヘッドが膨大になるため、フィルタ登録数に比べてイベント送出数が十分大きい場合に有効な方式である。
【0098】
一方、語彙概念によるルーティング方式は、前述の2方式の折衷案的な位置付けにある。すなわち、フィルタ登録数とイベント送出数が同程度の場合、もしくは、フィルタ登録数とイベント送出数の比率を予測できないような利用形態において有効である。
これらの仕組みにより、意味情報に基づく、イベントのマルチホップおよびマルチキャストが実現される。
【0099】
(6)上述した(2)から(5)の手順は、シェアードリンクの確立要求元であるSI−SW2においても同様に行われる。すなわち、SI−SW2は、SI−SW1を確立要求先として記憶するとともに、SL2,1を確立するために、SI−R(SI−R2,1)を動的に生成し、以降の処理を同様に行なう。これにより、SI−SW1とSI−SW2の間に、双方向のシェアードリンクが確立され、イベントを互いに共有することが可能になる。なお、フィルタの登録を行なわないことにより、片方向のシェアードリンクを論理的に確立することができる。
【0100】
(7)TTL値により、イベントの転送回数、すなわち、SI−SW間のホップ数を制限できる。これらによりSI−SW間のマルチホップを実現できる。
これまでの説明から明らかなように、SI−Rは、イベント送信とイベント受信の両者の側面を持つエンティティであり、一般のサービスアプリケーションであるサービスエンティティと本質的な違いはない。SIONでは、SI−RのようなSIONの制御に用いられるエンティティを、サービスエンティティと特に区別して、ネットワークエンティティと呼ぶ。SIONにおいては、サービスエンティティ、ネットワークエンティティのすべてのエンティティを共通のエンティティとして扱い、さらに、イベント送出とイベント受信、すなわち刺激と発火の連鎖反応という単純かつ一貫性のある共通ロジックに従って自律動作させることにより、すべてのエンティティが自律分散協調可能な超分散・超疎結合アーキテクチャを提供する。
【0101】
たとえば、図18において、SE3がSI−SW2に対してフィルタを登録した場合を考える。このとき、SI−R2,1はSI−SW2からの通知を受けて、SE3が登録したフィルタを、受信セッションを介してSI−SW1に登録する。同様に、SI−R1,3は当該フィルタを、受信セッションを介してSI−SW3に登録する。このようにSI−Rが登録したフィルタがシェアードリンクに基づいて、伝言ゲームのように順次隣接するSI−Rに波及することにより、イベントパスが確立される。これを「イベントパスの設定要求」と呼ぶ。なお、この設定要求はイベントプレース内のすべてのSI−Rに対して波及するが、TTL値により波及範囲を制限することができる。
【0102】
つまり、本実施形態によるイベントパスの波及方法は、エンティティ間でのシェアードリンクに基づいて、通信システム内のエンティティへのイベントパスの設定を順次波及させていく方法であって、前記イベントパスの設定の要求に含まれるTTL値によって、前記エンティティ間での波及範囲を制限することを特徴とするものである。
【0103】
具体的には、例えば、本実施形態においてエンティティ(装置)では、意味情報ネットワーク内に、エンティティ装置間のシェアードリンクに基づいてフィルタのエンティティ装置への登録を順次波及させていくイベントパスの設定の要求があるとき、意味情報ルータが、前記要求に含まれるTTL値と当該要求の発生元のエンティティ装置から前記シェアードリンクを辿った段階数とを比較し、当該段階数が前記TTL値以下である場合に限り、シェアードリンクに基づいて隣接する前記意味情報スイッチにフィルタを登録するようにする。
【0104】
また、別の具体例としては、波及していく毎に前記要求に含まれるTTL値を減じてゆき、TTL値が0より大きい場合に前記意味情報スイッチにフィルタを登録するようにする。
【0105】
この波及範囲の制限について、図19を用いて簡単に説明する。ここでは説明の便宜上、語彙概念ルーティングのためのイベントパス確立を前提としている。また、各エンティティは、同じ語彙概念をアドバタイズするものとする。図19の(a)において、エンティティ2(厳密には、エンティティ2に属するSI−R)がイベントパスの設定要求を開始している。ここでは、TTL値を2としたため、エンティティ1、エンティティ3、そしてエンティティ4に対してのみイベントパスの設定要求が波及し、その結果、図19の(b)に示すようにイベントパスが確立される。同様に、エンティティ11がイベントパスの設定要求を開始することにより、エンティティ10、およびエンティティ9に対してイベントパスが確立される。そのため、エンティティ2とエンティティ11の間では、イベントの共有が行われない。
【0106】
しかしながら、図19の(b)に示すように、エンティティ5がイベントパスの設定要求を開始することにより、エンティティ4、エンティティ5、エンティティ6、エンティティ7、そしてエンティティ9に対してイベントパスが確立される。結果的に、図19の(c)に示すように、エンティティ8を除く、イベントプレース内のすべてのエンティティに対してイベントパスが確立される。
【0107】
このように、当該語彙概念が当該イベントプレースにおいて、使用頻度の高いもの(評判が高い、流行しているもの)であるならば、最終的に、イベントプレース内にイベントパスの確立が行き渡ることになります。その逆で、あまり流行していない語彙概念は、いずれ淘汰されることになる。なお、図19におけるイベントパス上の数字は、その多重度を示している。
【0108】
分散オブジェクト技術の観点から、イベントパスを以下のように解釈することもできる。世界中に超分散しているエンティティは、エンティティ間でなんらかの「相関関係」を有している。相関関係を与えるものとしては、エンティティの名前、グループ名、属性(位置、興味、評判、流行、サービス)など様々なプロパティがある。エンティティは、相関関係に基づいて、エンティティ間の結びつきを持ち、分散協調する。SIONでは、この相関関係を語彙概念と語彙により表現し、イベントパスとして管理する。また、相関関係の強弱が、語彙概念の汎化・特化、イベントパスの多重度などに相当する。
【0109】
すなわち、SIONでは、イベントパスにより、エンティティ間の相関関係を動的に制御・管理している。これこそが、フィルタによる連鎖反応の制御である。そのため、エンティティは固定的なエンティティ識別子を有していない。たとえば、IP(Internet Protocol)アドレスは、位置に基づいたエンティティの固定的な識別子である。SIONでは、これの代わりに、エンティティのプロパティ、イベントプレースのプロパティなどを語彙概念・語彙として記述したものをエンティティ識別子として用いる。エンティティは、これらをフィルタとしてSI−SWに登録することにより、エンティティのプロパティ(エンティティ識別子)を宣言するとともに、自身のプロパティをシェアードリンクに基づいてアドバタイズする。これがイベントパスの波及に相当し、これにより、イベントパスが確立される。
【0110】
以上述べたように、連鎖反応の波及範囲を制限することにより、ネットワークトラフィック(イベントパス設定要求の転送回数)を軽減することができる。また、それにもかかわらず、流行している語彙概念や、評判の高い語彙概念に対するイベントパスに対しては、イベントプレース内の全てのエンティティに対して、そのイベントパスを確立することができる。
【0111】
<シェアードリンクの解除と再確立>
特定のSI−SWを退去、減設させる場合には、当該SI−SW間において確立されているシェアードリンクを解除し、さらにシェアードリンクの再確立を行なわなければならない。以下に、その概要を紹介する。
図20において、シェアードリンク確立要求の先頭数字は、それらの要求順序を示している。まず、SI−SW2からSI−SW1へシェアードリンクの確立要求を行なう。次にSI−SW3からSI−SW2へシェアードリンクの確立要求を行なう。最後に、SI−SW4からSI−SW2へシェアードリンクの確立要求を行なう。なお、各SI−SWはシェアードリンクの確立要求を、他のSI−SW各々に対し高々1回しかできないが、無制限に確立要求を受け付けることが可能なリンクトポロジに基づいてシェアードリンクの確立を行なう。これにより、シェアードリンクにより結合されたエンティティ間にループが発生しないことが保証される。すなわち、単純な方法で開トポロジを実現できる。
【0112】
この確立要求が成功したとき、前述した手順で各SI−SW間にシェアードリンクが確立される。このとき、例えば、SI−SW2は、自身が確立要求を行ったSI−SW(SI−SW1)と、自身への確立を受け付けたSI−SW(SI−SW3,SI−SW4)のリストをシェアードリンク設定情報管理部57に保持している。
この状況において、例えば、SI−SW2の退去、減設などが求められる場合、SI−SW2に対してシェアードリンクの解除要求を発行し、シェアードリンクの解除後に新たなシェアードリンクの確立が必要になる。以下に手順を示す。なお、ここでは説明の便宜上、SI−SW1の各部はその末尾にa(例えば制御部56a)、SI−SW2の各部はその末尾にb(例えば制御部56b)、SI−SW3の各部はその末尾にc(例えば制御部56c)、SI−SW4の各部はその末尾にd(例えば制御部56d)と記載して説明する。
【0113】
(1)SI−SW2に対してシェアードリンクの解除要求が通知される。SI−SW2の制御要求受付部55bは、その要求を受信し、制御部56bに制御させる。
(2)SI−SW2の制御部56bは、自身のシェアードリンクを解除する旨を、1ホップのSI−SW(SI−SW1,SI−SW3,SI−SW4)に対して通知する。これは、イベントのTTL値を1にしてイベント送出を行なうことにより可能になる。なお、このとき、自身へのシェアードリンク確立を受け付けたSI−SW(SI−SW3,SI−SW4)に対しては、自身に代わるシェアードリンクの確立要求先、すなわち自身が確立要求を行ったSI−SW1を教える。なお、自身が確立要求を行なったエンティティが存在しない場合には、自身への確立要求元エンティティの中から任意のエンティティを選択して、これを自身に代わるシェアードリンクの確立要求先とする。その後、SI−SW2の制御部56bは、自身が確立したシェアードリンク(SL2,1,SL2,3,SL2,4)を解除するために、その旨をSI−R2,1,SI-R2,3,SI-R2,4(ただし、これらのSI−Rは図示されていない)に通知する。これらのSI−Rの各制御部73は、これを契機に他のSI−SWとのセッションを解除する。
【0114】
(3)一方、SI−SW3,SI−SW4の制御部56c,56dは、自身がSI−SW2に対して確立していたシェアードリンク(SL3,2,SL4,2)をすべて解除し、新たなSI−SW(SI−SW1)に対してシェアードリンクの確立要求を行い、シェアードリンクを再確立する。なお、SI−SW1の制御部56aは、SL1,2を解除し、SI−SW3,SI−SW4からの確立要求を待つ。
【0115】
(4)なお、SI−SWの退去や減設などの正当な手順を踏んだシェアードリンクの解除要求ばかりでなく、SI−SWの障害、電源断、セッション(通信路)の障害などに起因して、シェアードリンクを再確立しなければならないケースがある。しかしながら、このようなケースにおいては、シェアードリンクの再確立時に必要となる代わりのSI−SWを教授できない可能性がある。SIONでは、このような状況に対応するために、各SI−SWはnホップ(nは任意)のイベントを送出することにより、代わりの確立要求先SI−SWの把握を行っている。なお、SIONでは、TTL値と、イベントの意味情報中に含まれるホップ属性とを用いることにより、更にきめこまかなホップ制御が可能である。代表的なホップ属性には以下のものがある。
(i)シェアードリンクの確立要求を行っているSI−SWのみをホップ対象とする。
(ii)シェアードリンクの確立要求を受け付けているSI−SWのみをホップ対象とする。
(iii)すべてのSI−SWをホップ対象とする。
【0116】
例えば、(i)のホップ属性を指定した場合の、イベントの流れを図21の破線で示している。図21において、各SI−SWに付記して示している「(i/j)」は各SI−SWにおいて記憶している、シェアードリンクの確立情報である。iはSI−SWがシェアードリンクの確立要求を行った先のSI−SWを示しており、一方、jはSI−SWがシェアードリンクの確立要求を受け付けたSI−SWを示している。例えば、SI−SW3に付記した「(2/5,6)」は、SI−SW3がSI−SW2に対して確立要求を行い、SI−SW5およびSI−SW6から確立要求を受け付けていることを表している。各エンティティがこのようなシェアードリンクの確立情報を保持することにより、例えば、エンティティ3が他のエンティティに対して更なるシェアードリンクの確立要求を行なった場合、その要求をエラーとして拒絶することができる。この状況において、SI−SW6が2ホップで(i)のホップ属性を持つイベントを送出し、SI−SW2から返却イベントを受信することにより、SI−SW2の存在を知ることが可能になり、これがSI−SW3障害時の代替となる。
【0117】
<イベントパスの管理方法>
図22は、片方向のシェアードリンクにおいて、サービスエンティティがフィルタを登録したときに、SI-Rが設定するイベントパス(イベントルーティング情報)がどのように更新・管理されるかを示したものである。
図22の(b)は、図22の(a)のネットワーク構成において、イベントタイプ「BGM」に対し、SEがフィルタを登録・解除する時のSI−Rのカウンタ値変遷例を示したものである。
【0118】
図22の(b)において、「SEi+」は、サービスエンティティiが、取得するイベントのイベントタイプとしてBGMをフィルタ登録したことを意味している。一方、「SEi-」は、サービスエンティティがフィルタを解除したことを意味している。また、表中の数字は、SI−Rのフィルタ登録情報管理部74が保持しているイベントパス管理のためのカウンタ値であり、SI−RがSI−SWに対して、イベントパス設定のためのフィルタ登録を行っている回数を示している。このような管理は、イベントタイプ毎に行われる。但し、SI−RからSI−SWに対する実際のフィルタ登録は、カウンタ値が0から1へインクリメントされたときのみ行われるように制御部73で制御される。SI−Rは、例えば、1から2へ遷移する場合には、フィルタ登録は行なわずに、フィルタ登録が要求された旨のみをフィルタ登録情報管理部74のカウンタで記憶している。同様に、サービスエンティティがフィルタ解除を行った場合には、イベントパスの更新のために、カウンタをデクリメントするが、SI−RからSI−SWに対する実際のフィルタ解除は、カウンタ値が0になったときに始めて行われる。これにより、イベントパスの設定要求や解除要求が、順次、自律的に波及(伝播)していく回数を必要最低限に抑止することが可能になり、イベントパス制御のオーバヘッドを低減することができる。
【0119】
なお、説明を簡略化するために、片方向のシェアードリンクのみを説明に用いたが、実際には、双方向のシェアードリンクにおいて同様のイベントパス管理が行われる。
以下に、簡単に図22の(b)を説明する。
(1)初期値において、イベントタイプ「BGM」に対するイベントパスは確立されていないことを示している。
(2)SE3がフィルタを登録することにより、イベントパスの設定要求が順次、自律的に波及し、その結果、SI−R3,2がSI−SW2にフィルタを登録し、同様に、SI−R2,1とSI−R2,4がそれぞれSI−SWにフィルタ登録することによりイベントパスが設定される。このとき、該当のSI−Rはそれぞれカウンタをインクリメントする。
(3)さらに、SE5がフィルタを登録すると、SI−R5,3を介して、イベントパスの設定要求がSI−R3,2に対して波及するが、SI−R3,2は、既にイベントタイプBGMに関するイベントを転送するためのフィルタを登録済み(カウンタ値が1)であるため、カウンタを単に2にインクリメントするだけで、更なるフィルタ登録は行なわない。そのため、SI−R2,1とSI−R2,4に対して、イベントパスの設定要求が波及しないため、両者のカウンタには変更が生じない。
(4)同様の考え方で、図22の(b)に示すように、表中のカウンタ値が更新される。
【0120】
次に、図3および図23〜図25を参照しながら、エンティティのアドバタイズメント(公開)の目的と仕組みを説明する。SIONにおけるエンティティのアドバタイズメントには、エンティティエントリポイントのアドバタイズメント(観点1)とエンティティプロパティのアドバタイズメント(観点2)との2つの観点がある。
【0121】
<観点1 −エンティティエントリポイントのアドバタイズメント>
エンティティは、自身がネットワークの構成要素となるために、ベースイベントプレースにJoin(参加)する。すなわち、ベースイベントプレース内の任意のエンティティとの間にシェアードリンクを確立する。これにより、シェアードリンクで接続されたエンティティグループが自己形成される。ベースイベントプレースは、エンティティに取って、最適なイベントプレースを芋づる式に探索(ディスカバリ)するためのベース(起点)となるイベントプレースである。つまり、ベースイベントプレースがSIONへの入り口となる。そのため、ベースイベントプレース内のエンティティは、ベースイベントプレースへのJoinを希望するエンティティのために、シェアードリンクの確立先となる自身のエントリポイントをアドバタイズする。
【0122】
<観点2 − エンティティプロパティのアドバタイズメント>
シェアードリンクで接続されているエンティティグループにおいて、自身のプロパティをアドバタイズすることができる。これが前述したイベントパスに相当する。
【0123】
図23は、アドバタイズメント方式を示す概略図である。以下に、図23を参照しながら、エンティティが自己組織化されるまでの流れを説明する。なお、エンティティは、図3に示した状態遷移図に従って状態遷移する。
【0124】
(1)まず、SIONソフトウエアのインストールが行われる。この時点でのエンティティの状態は、「Non-Existent」である(図3を参照)。
【0125】
(2)SIONソフトウエアを実行することにより、「Non-Existent」状態から「Suspend(サスペンド)」状態に遷移する(図3を参照)。このとき、エンティティ内に、エンティティ制御部、ネットワークエンティティファクトリ、コントロールパネルなどの内部モジュールが生成される(図24を参照)。この状態のエンティティは、SIONからその存在が認知されていない。
【0126】
(3)「Suspend」状態のエンティティは、SIONの構成要素としてネットワークに参加するための、エントリポイントを探索する。具体的には、ブロードキャストにより、近傍の「Active(アクティブ)」状態にあるエンティティを探索する。ブロードキャストの方法は、実装に依存する。たとえば、無線ネットワークで実装されている場合には、無線の到達範囲すべてのエンティティが探索の対象となる。また、たとえば、IPネットワークで実装されている場合には、IPブロードキャストを行なうことになる。
図23では、ブロードキャストによる探索により、エンティティ1が発見されたことを表している。なお、ブロードキャストにより、近傍のエンティティを発見できない場合には、Well-Knownのベースエンティティを利用することもできる。
【0127】
(4)発見されたエンティティ1にJoinすることにより、当該エンティティ(説明の便宜上、以降、エンティティYと呼ぶ)とエンティティ1との間にシェアードリンクが確立される。これにより、エンティティYは、ベースイベントプレース内のネットワーク構成要素として自己組織化される(図25を参照)。このとき、エンティティYは、「Suspend」状態から「Active」状態へと遷移する(図3を参照)。
このようなエンティティの集合(ネットワークに参加するための、エントリポイントの集合)を「ベースイベントプレース」と呼ぶ。ベースイベントプレースは、エンティティYに取って、最適なイベントプレースを芋づる式に探索するためのベースとなるイベントプレースである。
【0128】
「Active」状態のエンティティは自身の存在(エンティティプロパティ)をアドバタイズ(公開)することができる。エンティティプロパティには、エンティティ名、ニックネーム、グループ名、属性などがあります。たとえば、エンティティ3は、エンティティ3が参加しているイベントプレース(イベントプレースα)をエンティティプロパティの属性として公開することができる。また、エンティティプロパティの記述言語としては、XMLなどがある。これを、エンティティ内の意味情報スイッチにフィルタとして登録することにより、エンティティプロパティがシェアードリンクに基づいて他のエンティティに波及する。基本的には、イベントプレース内のすべてのエンティティに対して波及するが、TTL値によって波及範囲を制限することもできる。なお、エンティティプロパティにおける、エンティティ名はマルチホップ型ユニキャスト通信時の識別子として、属性はマルチホップ型属性付きマルチキャスト通信時の識別子として用いられる。
【0129】
(5)ベースイベントプレースに参加したエンティティYは、「自身が参加したいイベントプレース」を探索するためのイベント(ディスカバリ)を送出することにより、「自身のニーズに合致するエンティティプロパティ」を公開しているエンティティを発見する。ここでは、その結果、エンティティ3が発見されたものとする。また、エンティティ3は、既にイベントプレースαに参加しているものとする。
【0130】
(6)エンティティ3に対してJoinすることにより、エンティティYはイベントプレースαに参加することができる。これにより、イベントプレースαの存在を知ることができる。
【0131】
(7)さらに、エンティティYが、イベントプレースαにおいて、同様の探索のためのイベントを送出することにより、自身のニーズに合致する新たなエンティティを発見することができる。たとえば、ここでは、エンティティ12が発見されたものとする。これは、ベースイベントプレースにおいて発見することができなかったエンティティ12を、エンティティ3を介して発見できるということを意味している。このような操作を繰り返すことにより、自身のニーズに合致したイベントプレースに、次第にたどり着くことが可能となる。
【0132】
上で説明したここで示したアドバタイズメント方式は、以下の効果を与える。第1に、エンティティの公開情報を管理するブローカ(管理者)が存在しないため、耐障害性の強い自己組織化ネットワークを構築することができる。また、膨大な数の公開情報(エンティティプロパティ)をブローカで管理することは現実的ではないが、本方式ではそのような管理は必要とならない。
【0133】
第2に、エンティティに取って相応しいイベントプレースを、芋づる式に絞り込むことができるので、効率的に所望のイベントプレースを探索することができる。たとえば、連鎖反応の波及範囲(ディスカバリーイベントのホップ数、および、エンティティプロパティのためのイベントパス設定要求の波及範囲)がTTL値で制限されたとしても、エンティティ3経由でエンティティ12を発見し、その結果、エンティティ12が同時に属している別のイベントプレース(イベントプレースβ)を発見することができる。なお、連鎖反応の波及範囲を制限することにより、ネットワークトラフィック(イベントの転送回数、イベントパス設定要求の転送回数)を軽減することができる。
【0134】
次に、本実施形態を実現するハードウェア構成について説明する。
図5、図17におけるシェアードリンク設定情報管理部57、フィルタ登録情報管理部74は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等の読み出しのみが可能な記憶媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されるもとのする。
【0135】
また、この図24、図5、図17における各部は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、この図24、図5、図17における各部はメモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、図24、図5、図17における各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0136】
また、図24、図5、図17における各部の機能の一部またはすべてを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりその機能を実現させてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0137】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0138】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0139】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシェアードリンク設定方法によれば、エンティティのシェアードリンク確立要求の回数を高々1回にすることにより、開トポロジを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態において、エンティティの概要を説明する図である。
【図2】 同実施形態において、エンティティのタイプ(種類)を説明する図である。
【図3】 同実施形態において、エンティティの状態遷移を説明する図である。
【図4】 同実施形態において、意味情報スイッチ、エンティティ、セッションの構成を説明する図である。
【図5】 同実施形態において、意味情報スイッチの構成を説明する図である。
【図6】 同実施形態において、意味情報ネットワークの構成例を示す図である。
【図7】 同実施形態において、イベントの構成を説明する図である。
【図8】 同実施形態において、意味情報体系(オントロジ体系)の概要を説明する図である。
【図9】同実施形態において、意味情報体系(オントロジ体系)の一例である。
【図10】 同実施形態において、イベント取得条件の登録を説明する図である。
【図11】 同実施形態において、イベントプレースの概要を説明する図である。
【図12】 同実施形態において、リファレンスモデルの考え方を説明する図である。
【図13】 同実施形態において、ネットワークエンティティの増減形態を説明する図である。
【図14】 同実施形態において、意味情報スイッチの状態遷移を説明する図である。
【図15】 同実施形態において、意味情報スイッチがシェアードリンクの確立要求を行なう状態を説明する図である。
【図16】 同実施形態において、意味情報スイッチがシェアードリンクを確立する動作を説明する図である。
【図17】 同実施形態において、意味情報ルータの構成を説明する図である。
【図18】 同実施形態において、意味情報スイッチがシェアードリンクを確立する動作を説明する図である。
【図19】 同実施形態におけるイベントパスの確立およびイベントパスの融合の過程を説明する図である。
【図20】 同実施形態において、意味情報スイッチがシェアードリンクを解除、再確立する動作を説明する図である。
【図21】 同実施形態において、ホップ属性を持つイベントの流れを説明する図である。
【図22】 同実施形態において、任意のサービスエンティティがフィルタを登録した時、意味情報ルータにおいてどのようにイベントパスを管理、更新するかを説明する図である。
【図23】 同実施形態において、エンティティがアドバタイズメントを行ってイベントプレースに参加(join)するまでの過程を説明する図である。
【図24】 同実施形態におけるエンティティ内部のモジュール構成を説明する図である。
【図25】 同実施形態により、エンティティが発見(discovery)と参加(join)の動作を経てイベントプレース内のネットワーク構成要素として自己組織化される過程を説明する図である。
【図26】 従来技術によるネットワークを説明する図である。
【図27】 従来技術によるネットワークにおけるイベント(パケット)の構成を説明する図である。
【図28】 従来技術によるネットワークを用いてパーソナライズ情報提案サービスを実現するためのネットワーク構成を説明する図である。
【図29】 従来技術によるブローカモデルを説明するための図である。
【図30】 従来技術により、ブローカモデルの実現方法を説明する図である。
【図31】 意味情報ネットワークの概念を説明する図である(従来技術)。
【図32】 意味情報ネットワークにおいて、イベントを共有する概念を説明する図である(従来技術)。
【図33】 従来からのビジネスモデルの変遷を示す概略図である。
【図34】 P2P(peer-to-peer)モデルのディメンションを示す概略図である。
【図35】 本発明の一実施形態において、SI−GWを用いたファイアウォールを跨るフェデレーションを説明する図である。
【符号の説明】
1:意味情報ネットワーク(SION)、2:エンティティ、21(a、b):エンティティ、22(a、b、c):エンティティ、51:イベント受信部、52:照合部、53:イベント送信部、54:フィルタ管理部、55:制御要求受付部、56:制御部、57:シェアードリンク設定情報管理部、71:イベント転送部、72:制御要求受付部、73:制御部、74:フィルタ登録情報管理部

Claims (6)

  1. シェアードリンク確立情報が記憶されたる意味情報スイッチを含むエンティティによってイベントプレースが作成される通信システムにおいて、シェアードリンク確立要求により前記イベントプレースを作成したエンティティ及び前記イベントプレースに参加するエンティティ間でシェアードリンクを設定する方法であって、
    前記意味情報スイッチは、自身に記憶されたシェアードリンクの確立要求先となる意味情報スイッチとシェアードリンクの確立要求を受付けた意味情報スイッチとを記録したシェアードリンク確立情報を参照し、イベントプレース内の他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行うことを特徴とするシェアードリンク設定方法。
  2. シェアードリンク確立情報が記憶された意味情報スイッチを含むエンティティによってイベントプレースが作成される通信システムにおいて、シェアードリンク確立要求により前記イベントプレースを作成したエンティティ及び前記イベントプレースに参加するエンティティ間でシェアードリンクを設定する通信システムであって、
    前記意味情報スイッチは、自身に記憶されたシェアードリンクの確立要求先となる意味情報スイッチとシェアードリンクの確立要求を受付けた意味情報スイッチとを記録したシェアードリンク確立情報を参照し、イベントプレース内の他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行うことを特徴とする通信システム。
  3. フィルタとして登録された意味情報とイベントに付与された意味情報とを照合し、その結果発火したイベント受信エンティティを起動する意味情報スイッチを備え、あるエンティティによってイベントプレースが作成された意味情報ネットワークの構成要素となるシェアードリンク確立情報が記憶されたエンティティ装置において、
    前記意味情報スイッチは、自身に記憶されたシェアードリンクの確立要求先となる意味情報スイッチとシェアードリンクの確立要求を受付けた意味情報スイッチとを記録したシェアードリンク確立情報を参照し、イベントプレース内の他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行うことを特徴とするエンティティ装置。
  4. フィルタとして登録された意味情報とイベントに付与された意味情報とを照合し、その結果発火したイベント受信エンティティを起動する意味情報スイッチを備え、あるエンティティによってイベントプレースが作成された意味情報ネットワークの構成要素となるシェアードリンク確立情報が記憶されたエンティティ装置におけるシェアードリンクの設定方法であって、
    前記意味情報スイッチは、自身に記憶されたシェアードリンクの確立要求先となる意味情報スイッチとシェアードリンクの確立要求を受付けた意味情報スイッチとを記録したシェアードリンク確立情報を参照し、イベントプレース内の他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行うことを特徴とするシェアードリンク設定方法。
  5. フィルタとして登録された意味情報とイベントに付与された意味情報とを照合し、その結果発火したイベント受信エンティティを起動する意味情報スイッチを備え、あるエンティティによってイベントプレースが作成された意味情報ネットワークの構成要素となるシェアードリンク確立情報が記憶されたエンティティ装置にシェアードリンクの設定の処理を実行させるコンピュータプログラムであって、
    前記意味情報スイッチが自身に記憶されたシェアードリンクの確立要求先となる意味情報スイッチとシェアードリンクの確立要求を受付けた意味情報スイッチとを記録したシェアードリンク確立情報を参照し、イベントプレース内の他のエンティティに対してシェアードリンクの確立要求を高々1回行う処理を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
  6. 請求項5に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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