JP3971989B2 - 重合禁止剤の回収方法及びアクリル酸の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル酸の製造プロセス中の精製工程で使用される重合禁止剤を回収する方法、及びこの方法を含むアクリル酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル酸は、プロピレン等の接触気相酸化により得られたアクリル酸含有ガスは、捕集塔によりアクリル酸水溶液として捕集され、水及び軽沸分を蒸留で分離した後、精留塔を用いた精留により留出液として得ることができる。
【0003】
通常、捕集工程以降の全ての工程で、アクリル酸の重合を防止するため、重合禁止剤が添加される。一般に使用される重合禁止剤は、例えば、p−ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、フェノチアジン、アルキルカルバミン酸銅などの銅化合物、マンガン化合物等があるが、その沸点は何れもアクリル酸より高く、精留塔の缶出液に濃縮される。
【0004】
前記重合禁止剤は、缶出液中に含まれるアクリル酸の多量体を熱分解により回収した後、残分の高沸点化合物と共に廃棄されるのが普通である。しかし、近年、精留塔の缶出液中に含まれる重合重合剤を、アクリル酸の製造コストの面から、回収してリサイクルする方法がいくつか提案されている。
【0005】
これまでの重合禁止剤の回収方法としては、例えば次のようなものがある。
(1)単純リサイクル:アクリル酸エステルの製造プロセスで発生した重合禁止剤を含んだ精留塔の缶出液を、そのまま精製工程に循環させる(例えば、特許文献1参照。)。
(2)蒸発器による留去:重合禁止剤を含んだ精留塔の缶出液を蒸発器に導き、蒸発器で重合禁止剤を蒸発させた留分を精製工程に再使用する(例えば、特許文献2参照。)。
(3)水抽出:(2)で得た留分から水抽出により、重合禁止剤を回収する(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−181233号公報
【特許文献2】
特公昭56−17331号公報
【特許文献3】
特公昭60−59889号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような、従来の重合禁止剤の回収においては、重合禁止剤以外の化合物は考慮されていなかったため、不純物が混入されるという問題点がある。
【0008】
精留塔の缶出液、又は精留塔の缶出液をアクリル酸の多量体を分解するために熱分解した後の熱分解装置の缶出液を精製工程に循環させた場合、缶出液に含まれる全ての不純物が精製工程に循環されるため、製品中の不純物濃度が増大し、現実的ではない。
【0009】
蒸発器で重合禁止剤を蒸発させた場合も、重合禁止剤よりも沸点の低い不純物の大半が回収されるため、精製工程に循環させた際の精製工程の負荷の増大、又は製品中の不純物濃度の増大をもたらす。
【0010】
水抽出にて重合禁止剤を回収した場合も、水溶性の不純物を同時回収するため、同様の悪影響をもたらす。
【0011】
さらに、上記(1)、(2)の操作は、重合禁止剤を含有する被処理液は、高粘性のため、機器の汚れによる能力の低下や閉塞が起こりやすく、安定に連続運転することが困難であると言う問題もあった。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、アクリル酸の製造プロセスで使用される重合禁止剤を回収する方法において、抽出操作を連続して安定に行うと共に、該重合禁止剤をアクリル酸製造プロセスに循環させた場合に、前記重合禁止剤に同伴する不純物による製品品質の悪化を防ぐ重合禁止剤の回収方法を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、重合禁止剤の回収時の抽出操作を連続して安定に行うと共に、該重合禁止剤をアクリル酸製造プロセスに循環させた場合に、前記重合禁止剤に同伴する不純物による製品品質の悪化を防ぐアクリル酸の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するため各種の検討を行った結果、精製後に排出される前記重合禁止剤を含有する缶出液から、重合禁止剤を水性媒体により抽出して回収する際、該缶出液の粘度を一定範囲に保つことで、抽出操作を安定して行うことが可能となり、抽出効率の向上及び不純物の混入防止に有効であることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)プロパン、プロピレン及び/又はアクロレインの接触気相酸化によりアクリル酸を生成する工程、及びアクリル酸の重合を防止するための重合禁止剤の存在下で、前記工程で生成したアクリル酸を蒸留によって精製する工程を含むアクリル酸製造プロセスの前記精製する工程で排出される、重合禁止剤を含有する缶出液から重合禁止剤を回収する方法において、
該缶出液の20℃における粘度を2Pa・s(2000cP)以下に調整して水性媒体を用いて重合禁止剤を抽出することを特徴とする方法。
【0016】
(2)前記重合禁止剤を前記缶出液から前記水性媒体により抽出する前に、前記缶出液を加熱することを特徴とする(1)の方法。
【0017】
(3)抽出によって得られた重合禁止剤を含む水溶液を、加熱及び/又は減圧することにより、前記水溶液中の揮発性物質の少なくとも一部を揮散させる工程をさらに含むことを特徴とする(1)又は(2)の方法。
【0018】
(4)前記揮発性物質の少なくとも一部を揮散させた後の液の加熱処理を酸触媒の存在下で行い、加熱処理後の前記液を冷却し、冷却した前記液の固液分離を行う工程をさらに含むことを特徴とする(3)の方法。
【0019】
(5)前記水性媒体により抽出された重合禁止剤を、前記アクリル酸製造プロセスに循環させて再利用することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの方法。
【0020】
(6)前記重合禁止剤を水性媒体により抽出する前に行う前記缶出液への加熱は、該缶出液中に含まれるアクリル酸の多量体を熱分解処理するための加熱であることを特徴とする(2)〜(5)のいずれかの方法。
【0021】
(7)プロパン、プロピレン及び/又はアクロレインの接触気相酸化によりアクリル酸を生成させる工程、及びアクリル酸の重合を防止するための重合禁止剤の存在下で、前記工程で生成したアクリル酸を蒸留によって精製する工程を含むアクリル酸の製造方法において、
前記精製する工程で排出される、重合禁止剤を含有する缶出液の20℃における粘度を2Pa・s(2000cP)以下に調整して、水性媒体を用いて重合禁止剤を前記缶出液から抽出することを特徴とする方法。
【0022】
(8)前記精製する工程で排出される缶出液を150〜250℃の範囲で0.1〜40時間熱処理した後、前記缶出液に対して体積比で1.5倍以上の水性媒体を前記缶出液に40℃以上で接触させることにより、前記缶出液に含まれる重合禁止剤を水溶液として回収し、該水溶液を前記精製する工程で用いられる前記重合禁止剤に再利用することを特徴とする(7)の方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の重合禁止剤を回収する方法は、アクリル酸製造プロセスにおける精製工程から排出される重合禁止剤を含有する缶出液から、重合禁止剤を水性媒体により抽出して回収する際、該缶出液の20℃における粘度を2Pa・s(2000cP)以下に調整して抽出を行い、重合禁止剤を回収することを特徴とする。
【0024】
重合禁止剤を含有する缶出液の粘度は、特に90℃以下の条件下では、微量に含有されるアクリル酸の重合体に大きく依存する。アクリル酸やその二量体、並びにマレイン酸などの不純物濃度が同程度でも液粘度が大きく異なることがあり、これにより液の輸送や抽出操作が極度に困難となる場合がある。
【0025】
そこで、本発明においては、重合禁止剤を回収するために抽出を行う前に、缶出液の20℃における粘度を2Pa・s(2000cP)以下に調整する。缶出液の粘度がこれ以上になると、抽出操作時に抽出操作に用いる装置内の汚れや閉塞が起こり、望ましくない。
【0026】
本発明において、「重合禁止剤を含有する缶出液」とは、アクリル酸製造プロセスにおいて精製工程から排出される缶出液をいうが、該缶出液を濃縮のために加熱したもの、及び/又は該缶出液中のアクリル酸多量体を熱分解処理して、アクリル酸を留出ガス又は留出液として回収した後に発生した熱分解後缶出液であることが好ましい。また、アクリル酸エステルの製造プロセスにおける精製工程から発生する重合禁止剤を含む缶出液に対して本発明の方法を適用することも可能である。
【0027】
缶出液の20℃における粘度を2Pa・s(2000cP)以下とするには、缶出液に含まれるアクリル酸やその多量体(主に二量体)の含有比を制御したり、缶出液を加熱して、主にアクリル酸のミカエル付加物からなる二量体を分解することにより調整可能である。
【0028】
「重合禁止剤を含有する缶出液」には、缶出液を濃縮したものを用いるのが、機器の小型化、回収効率、熱負荷の点から好ましいが、加熱濃縮やアクリル酸多量体の加熱を過度に行うと粘度が大きく増加することがあるので、処理時間、温度を調整して適切な粘度にすることで抽出効率を良くすることができる。具体的な処理時間、温度としては、缶出液を150〜250℃で0.1〜40時間、好ましくは160〜230℃で0.5〜20時間である。
【0029】
20℃における粘度を測定する方法としては、例えば、振動式粘度計を回収槽への缶出液供給ラインに設置する方法等が挙げられる。
【0030】
また、缶出液の粘度とともに、缶出液の常圧下における沸点が160℃以上になるよう、熱分解処理の際の分解温度を調整することが好ましい。缶出液の沸点がこれ以下となると、抽出工程で二液層の形成が困難となる。
【0031】
アクリル酸の製造プロセスに用いられる重合禁止剤としては、p−ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、フェノチアジン、銅又はマンガン含有化合物などがあるが、これに限定されるものではない。
【0032】
アクリル酸の製造は、通常の方法により行われるものである。
【0033】
精製工程から排出される缶出液は、特に制限されるものではないが、例えば、アクリル酸30〜70重量%、アクリル酸二量体10〜45重量%を主成分として含むものである。
【0034】
また、熱分解後缶出液は、特に制限されるものではないが、例えば、以下の化合物が含有される。なお、アクリル酸多量体が分解され、アクリル酸が生成されるが、該アクリル酸の一部は熱分解装置の留出液(又はガス)として精製工程に循環され得る。
アクリル酸6〜20重量%、アクリル酸二量体15〜35重量%、マレイン酸3〜14重量%、ハイドロキノン1〜5重量%、p−メトキシフェノール0〜3重量%、フェノチアジン0〜4重量%。
【0035】
本発明における抽出は、水性媒体を用いて行う。用いられる水性媒体としては、アクリル酸の精製プロセスより生じる水、具体的には脱水蒸留塔からの留出水、エジェクター排水、機器洗浄により生じる排水でもよく、また新規に供給されるものでもよい。
【0036】
また、抽出に用いられる水性媒体の量としては、重合禁止剤を含む缶出液に対して体積比で1.5〜3倍の範囲が望ましい。1.5倍よりも少なすぎると二液層が形成されにくく抽出操作が困難になる傾向がある。水性媒体が過剰にあっても効率は向上せず、回収槽の機器が大きくなり、熱負荷が増大するので経済的でない。
【0037】
抽出操作温度は40〜60℃の範囲が望ましい。温度が低いと缶出液の粘度増加により、操作性が悪化する傾向がある。一方、温度が高いと水層への油分の溶解量が増大するため、得られた抽出水層を精製工程に循環させる場合、循環されるまでに液温が低下すると、油層が分離してしまうことがある。
【0038】
抽出操作により抽出水層に回収される重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノールなどのフェノール系化合物、及び銅、マンガンなどの金属錯体であり、フェノチアジンなどの水に難溶な化合物は回収されない。
【0039】
抽出を行うために回収槽を用いることができ、回収槽の形状は棚段式あるいは充填物式の抽出塔でもよく、また内装物を含まない空塔でもよい。
【0040】
図2に本発明における抽出操作に用いられる回収槽の一例を示す。缶出液供給ライン1から缶出液が回収槽に供給され、水性媒体供給ライン2から水が抽出槽の油層の界面より下部に供給される。なお、缶出液供給ライン1の供給口には分散ノズル5を設け、抽出効率を向上させることも好ましい形態である。
【0041】
回収槽の温度の調節は、図示しないが、缶出液供給ライン1、水性媒体供給ライン2の温度を各供給ラインに設けた熱交換器等により調節すればよい。
【0042】
抽出終了した水層は水層抜出ライン3から回収し、油層は油層抜出ライン4から抜き出す。なお、缶出液供給ライン1から供給される缶出液が、水層抜出ライン3に混入するのを防ぐために邪魔板6を設けることが好ましい。抽出操作としては、滞留時間が長いほど抽出効率は高くなるが、回収槽のサイズが大きくなり、コスト的にも望ましいものではない。なお、滞留時間は、供給缶出液、供給水性媒体、抜出される水層、油層の液量(速度)により調節される。
【0043】
また、本発明においては、抽出によって得られた重合禁止剤を含む水溶液を、加熱及び/又は減圧することにより揮発性物質の少なくとも一部を揮散させる工程をさらに含むことが好ましい。それによって、缶出液に含まれる不純物のうち、アルデヒド類、具体的にはフルフラール、ベンズアルデヒドなどは、抽出液の一部を留去することで、留出液と共に定量的に除去できる。
【0044】
加熱及び/又は減圧の方法として、抽出によって得られた重合禁止剤を含む水溶液の10体積%以上、好ましくは20体積%以上を留去することが好ましい。
【0045】
さらに、前記揮発性物質の少なくとも一部を揮散させた後の液を、酸触媒の存在下で加熱処理を行い、冷却し、固液分離を行う工程をさらに有することが好ましい。揮散させた後の液を酸触媒の存在下で加熱処理することで、揮散させた後の液中に含まれるマレイン酸をフマル酸に異性化させることができ、該液を冷却してフマル酸を析出させ、固液分離することによりフマル酸を除去することができる。
【0046】
マレイン酸の異性化は、通常の方法により行うことができる。具体的には、酸触媒として塩酸等を処理回収液に対して0.002〜3mol/lの濃度で用い、加熱処理した後で10〜40℃に冷却させてフマル酸を析出させて、濾別等により固液分離を行い、最終回収液を得る。また、酸触媒で処理した後、濃縮して塩酸を除去すると共に析出フマル酸量を増やすことも好ましい。
【0047】
以下に、本発明の一つの実施の形態を図を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0048】
図1は、本発明の一つの実施の形態を示す系統図である。
重合禁止剤を含有する熱分解装置の缶出液を、抽出するための回収槽に抽出に用いられる水性媒体と共に供給する。また、この缶出液の代わりに精製塔の缶出液を回収槽に供給することも可能である。このとき、回収槽に供給する缶出液の20℃における粘度を、2Pa・s以下とする。重合禁止剤を含有する缶出液中のアクリル酸の多量体を分解するために、熱分解処理を行う場合は、回収槽に供給する前に缶出液を熱分解装置で熱分解処理することが好ましい。
【0049】
続いて水層(上層)を、アルデヒドを除去するための加熱槽に供給し、加熱及び/又は減圧を行う。加熱及び/又は減圧処理により得られた水溶液に、マレイン酸を除くために酸触媒を加え加熱処理を行ってフマル酸への異性化を行い、静置槽に移し、冷却して固液分離する。
【0050】
回収槽で得られた抽出液に酸触媒を添加し、加熱、濃縮を行うことにより、加熱槽と静置槽で行う工程(アルデヒド除去、マレイン酸除去)を同時に行うこともできる。
【0051】
これらの工程で得られた重合禁止剤を含む水溶液は、アクリル酸製造プロセス、具体的にはアクリル酸を捕集する工程に循環させて再利用することができる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
<缶出液の組成>
精製塔の缶出液を、熱分解装置を用いて200℃、100kPaの条件で1時間熱分解処理を行い、装置上部から回収アクリル酸を含む気体を、装置下部から濃縮された重合禁止剤含有液を得た。この缶出液の組成は、次の通りであり、また液粘度は1.3Pa・s/20℃であった。
・アクリル酸 16.4重量%
・アクリル酸二量体 15.6重量%
・アクリル酸三量体 7.1重量%
・フルフラール 690重量ppm
・ベンズアルデヒド 2800重量ppm
・マレイン酸 4.3重量%
・p−ハイドロキノン 1.8重量%
・p−メトキシフェノール 1.2重量%
【0054】
<操作1>水抽出
上記組成を有する缶出液に対して、下記の条件で抽出を行った。なお、抽出操作で得られた水層は缶出液の3.1体積倍である。
操作温度50℃、常圧
供給水性媒体:水(蒸留水)
供給水性媒体/缶出液(容量比)=3
回収槽内の平均滞留時間 1時間
回収槽 縦型円筒形容器 縦/横比=3
回収槽内挿入物 無し。
上層(水層) 連続抜出し。
下層(油層) 10分毎の断続抜出し。
【0055】
上記の抽出操作で得られた水層(以下、「抽出液」という)の重合禁止剤及び主要不純物の組成は以下の通りである。括弧の中は回収率を示す。
・フルフラール 145重量ppm(65%)
・ベンズアルデヒド 343重量ppm(38%)
・マレイン酸 0.79重量%(57%)
・p−ハイドロキノン 0.40重量%(69%)
・p−メトキシフェノール 0.21重量%(53%)
【0056】
<操作2>アルデヒドの留去
上記操作1で得られた抽出液を、常圧下体積45%にまで濃縮した。得られた濃縮液の組成を以下に示す。括弧の中は回収率を示す。
・フルフラール 17重量ppm(3.5%)
・ベンズアルデヒド 1重量ppm(0.05%)
・マレイン酸 1.78重量%(58%)
・p−ハイドロキノン 0.89重量%(69%)
・p−メトキシフェノール 0.45重量%(52%)
【0057】
<操作3>マレイン酸の除去と異性化
上記操作2で得られた濃縮液に塩酸を加え、70℃で30分間攪拌した後、さらに加熱して塩酸を除去すると共に、液量を1/3に濃縮した。そして、30℃に冷却後、析出した固体(フマル酸とマレイン酸の混晶)を分離した。
得られた溶液の組成を以下及び表1に示す。括弧の中は回収率を示す。
・マレイン酸+フマル酸 1.75重量%(19%)
・p−ハイドロキノン 2.43重量%(63%)
・p−メトキシフェノール 1.11重量%(43%)
【0058】
[比較例1]
実施例1において、熱分解処理の時間を1.2時間とした以外は同様にして、下記の組成の2.2Pa・s/20℃の缶出液を得た。この缶出液について実施例1と同様に操作1を行った。抽出液中のハイドロキノンの濃度は0.11重量%(回収率19%)となった。得られた結果を表1に示す。
・アクリル酸 15.8重量%
・アクリル酸二量体 15.5重量%
・アクリル酸三量体 7.4重量%
・フルフラール 670重量ppm
・ベンズアルデヒド 2800重量ppm
・マレイン酸 4.4重量%
・p−ハイドロキノン 1.8重量%
・p−メトキシフェノール 1.1重量%
【0059】
[比較例2]
比較例1で得られた、粘度が2.2Pa・s/20℃の缶出液に対して、抽出操作の温度を60℃に変えた以外は、実施例と同様におこなったところ、抽出液中のハイドロキノンの濃度は0.15重量%(回収率27%)になった。得られた結果を表1に示す。
【0060】
[実施例2]
実施例1の抽出操作において、供給水性媒体に脱水蒸留塔の缶出液の水層(6重量%酢酸含有)を用いる以外は実施例1の操作1と同様に行った。抽出液中のハイドロキノンの濃度は0.35重量%(回収率61%)と、ほぼ等量の回収が行えた。得られた結果を表1に示す。
【0061】
[実施例3]
実施例1の操作1において抽出操作の温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様にして重合禁止剤の回収を行った。抽出液中のハイドロキノンの濃度は0.40重量%(回収率71%)であった。得られた結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、アクリル酸の製造プロセスで使用される重合禁止剤を回収する方法において、抽出操作を連続して安定に行うことができる。また、該重合禁止剤をアクリル酸製造プロセスに循環させる際、同伴する不純物による製品品質の悪化を防いだ重合禁止剤の回収方法を提供することができる。
【0064】
また本発明によれば、重合禁止剤の回収時の抽出操作を連続して安定に行うと共に、該重合禁止剤をアクリル酸製造プロセスに循環させた場合に同伴する不純物による製品品質の悪化を防ぐアクリル酸の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重合禁止剤の回収方法の一つの実施の形態を示す系統図である。
【図2】本発明の重合禁止剤の回収方法に用いる回収槽の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 缶出液供給ライン
2 水性媒体供給ライン
3 水層抜出ライン
4 油層抜出ライン
5 分散ノズル
6 邪魔板
Claims (8)
- プロパン、プロピレン及び/又はアクロレインの接触気相酸化によりアクリル酸を生成する工程、及びアクリル酸の重合を防止するための重合禁止剤の存在下で、前記工程で生成したアクリル酸を蒸留によって精製する工程を含むアクリル酸製造プロセスの前記精製する工程で排出される、重合禁止剤を含有する缶出液から重合禁止剤を回収する方法において、
該缶出液の20℃における粘度を2Pa・s(2000cP)以下に調整して水性媒体を用いて重合禁止剤を抽出することを特徴とする方法。 - 前記重合禁止剤を前記缶出液から前記水性媒体により抽出する前に、前記缶出液を加熱することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 抽出によって得られた重合禁止剤を含む水溶液を、加熱及び/又は減圧することにより、前記水溶液中の揮発性物質の少なくとも一部を揮散させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 前記揮発性物質の少なくとも一部を揮散させた後の液の加熱処理を酸触媒の存在下で行い、加熱処理後の前記液を冷却し、冷却した前記液の固液分離を行う工程をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
- 前記水性媒体により抽出された重合禁止剤を、前記アクリル酸製造プロセスに循環させて再利用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記重合禁止剤を水性媒体により抽出する前に行う前記缶出液への加熱は、該缶出液中に含まれるアクリル酸の多量体を熱分解処理するための加熱であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
- プロパン、プロピレン及び/又はアクロレインの接触気相酸化によりアクリル酸を生成させる工程、及びアクリル酸の重合を防止するための重合禁止剤の存在下で、前記工程で生成したアクリル酸を蒸留によって精製する工程を含むアクリル酸の製造方法において、
前記精製する工程で排出される、重合禁止剤を含有する缶出液の20℃における粘度を2Pa・s(2000cP)以下に調整して、水性媒体を用いて重合禁止剤を前記缶出液から抽出することを特徴とする方法。 - 前記精製する工程で排出される缶出液を150〜250℃の範囲で0.1〜40時間熱処理した後、前記缶出液に対して体積比で1.5倍以上の水性媒体を前記缶出液に40℃以上で接触させることにより、前記缶出液に含まれる重合禁止剤を水溶液として回収し、該水溶液を前記精製する工程で用いられる前記重合禁止剤に再利用することを特徴とする請求項7に記載の方法。
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