JP3969701B2 - 空調設備管理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱又は冷却した流体を、流路に循環させて空調を行う空調設備の異常を検出する空調設備管理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
空調設備の一例としての暖房設備では、建物の各部屋を貫通した流路に、ボイラにて加熱した温水を循環させて、各部屋を暖房する構成になっている。そして、従来では、このような空調設備を管理すべく、温水の流量、圧力その他の物理量をセンサにて実測し、それら各物理量が所定の基準範囲にそれぞれ収まっているか否かに基づいて、異常判定を行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えば、ボイラから流路に一定の流量の温水を送っている場合には、温水の流速(=[流量]/[流路の断面積])と圧力との間には、一定の関係が成立する。従って、温水の流速が変化すれば、これに連動して温水の圧力も変化する。このように、空調設備では、一般に空調用の流体に係る複数のパラメータのうち何れかのパラメータ同士が、相互に一定の関係を有して連動する構成になっている。
【0004】
しかしながら、従来では、流体に係る各パラメータの実測データが、それぞれ別々に設けた基準範囲に収まっているか否かのみに基づいて異常判定を行っていた。具体的に上記した暖房設備に関しては、従来では、温水の流速と圧力とが、それぞれ所定の基準範囲に入っていたか否かを、別々にチェックしていた。即ち、温水の流速と圧力とが、図4のグラフG1で示した一定の関係を有している場合でも、そのグラフG1とは無関係に、流速及び圧力の各上限値と下限値とで囲んだ矩形範囲W1内に、実測データが収まったか否かに基づいて、異常判定を行っていた。
【0005】
このため、例えば、図4のポイントD2に示すように、流速と圧力の実測データが共に下限値に近い値となって、理論曲線G1上に乗っている場合と、同ポイントD3に示すように、流速の実測データが下限値に近い値になり、かつ、圧力の実測データが上限値に近い値になって、理論曲線G1から大きく外れた場合とが、区別されることなく、共に異常なしと判断されていた。
【0006】
つまり、従来では、流体に係る各パラメータの実測値が、それぞれ別々に設けた基準範囲に収まっているか否かのみに基づいて異常判定を行っていたので、それら各パラメータの間の一定の関係が崩れるような現象を伴う異常を検出することができなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より詳細に空調設備の管理を行うことが可能な空調設備管理装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る空調設備管理装置は、熱源にて強制的に加熱又は冷却した流体を、パイプに循環させて空調を行う空調設備の異常を検出する空調設備管理装置であって、パイプの2箇所に取り付けられて、流体の流速及び圧力をそれぞれ実測する1対のセンサヘッドと、一方のセンサヘッドが実測した流速及び圧力の実測データと、他方のセンサヘッドが実測した流速及び圧力の実測データとの計4つの実測データを取り込み、それら4つの実測データのうちの何れか3つの実測データをベルヌーイ方程式に代入して残り1つの実測データに対する基準値を演算すると共に、残り1つの実測データが所定の範囲内で基準値に一致したか否かに基づいて異常の有無を判別する信号処理部とを備えたところに特徴を有する。
【0011】
【発明の作用及び効果】
請求項1の空調設備管理装置では、一方のセンサヘッドがパイプの1箇所で実測した流速及び圧力の実測データと、他方のセンサヘッドがパイプの別の箇所で実測した流速及び圧力の実測データとの計4つの実測データを信号処理部に取り込み、それら4つの実測データのうちの何れか3つの実測データをベルヌーイ方程式に代入して残り1つの実測データに対する基準値を演算する。そして、残り1つの実測データが所定の範囲内で基準値に一致したか否かに基づいて異常の有無を判別する。このように、本発明によれば、パイプにおける2箇所の実測データの間でベルヌーイ方程式が成立しなくなる異常(例えば、流体の漏れ)を検出することができ、従来より詳細に空調設備の管理することが可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
以下、本発明を空調設備としての暖房設備10に適用した第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。この暖房設備10は、図1に示すように、建物内の各部屋50を貫通したパイプ11に温水(本発明の「流体」に相当する)を流し、パイプ11から放熱した熱によって、各部屋50を暖房する構造になっている。
【0015】
暖房設備には、本発明の熱源としてのボイラ12と、パイプ11に温水を送るための図示しないポンプとが備えられている。そして、これらポンプ及びボイラ12の設定によって、所定の温度の温水を、所定の圧力及び流量でパイプ11に流すことができる。
【0016】
パイプ11は、基幹部13から各部屋50に向けて複数の枝部14を延ばした構造をなす。基幹部13は、ボイラ12から送給した温水が流される往路13Aと、ボイラ12に温水を戻すための復路13Bと、これら往路13Aと復路13Bとを繋ぐバイパス13Cとを備える。
【0017】
各枝部14は、バイパス13Cに並列して、往路13Aと復路13Bとの間を繋ぐようにして設けられ、これにより、往路13Aから各枝部14に温水が分配されると共に、各枝部14を通過した温水が復路13Bに回収される。また、枝部14は、各部屋50内で蛇行して、部屋50内における表面積が広く確保され、さらに、枝部14の途中に設けたバルブ15の操作によって、枝部14内を流れる温水の流量を変更することができる。
【0018】
さて、パイプ11のうち往路13Aと復路13Bの各基端部には、それぞれ管理装置20,20が設けれ、これら管理装置20,20が出力する実測データが信号処理装置40 に取り込まれて処理されている。そして、信号処理装置40と2台の管理装置20とによって、本発明に係る空調設備管理装置が構成されている。管理装置20は、図2に示すように流量センサ21と温度センサ22と圧力センサ23とを、1つのセンサヘッド24に纏めて固定し、かつ、このセンサヘッド24に信号処理部30を一体に設けた構造をなしている。
【0019】
センサヘッド24は、例えば、全体として円柱状をなし、パイプ11のバイパス13Cに連通したセンサ装着筒25に挿入されている。センサヘッド24の軸芯部分には、前記流量センサ21が設けられている。この流量センサ21は、電磁流量計であり、センサヘッド24の軸芯部に延ばしたコア27にコイル28を巻回して備えると共に、コア27を間に挟んだ両側に、1対の電極29,29を設け、それら電極29,29の先端をパイプ11内に突出させてある。そして、コイル28にて生成した交番磁界を、温水が直交して流れることで、電極29,29間に生じた起電力を検出し、この起電力に対応した温水の流量が測定される。
【0020】
また、センサヘッド24のうち先端外面寄りには、温度センサ22としてのサーミスタが設けられている。さらに、センサヘッド24には、先端面に開放した連通路26が設けられ、その連通路26の奥部に、圧力センサ23が設けられている。圧力センサ23は、前記連通路26の奥部に設けたダイヤフラム23Aの変形量に基づいて、温水の圧力を測定する構成になっている。
【0036】
信号処理装置40は、図示しないMPUを主要部として、ROM、RAMを備えた構成をなし、ROMに記憶したメインプログラムM2をランして、信号処理を行う。図3に示すように、メインプログラムM2では、まず、各管理装置20,20が実測した温水の流速及び圧力を取り込む(S30)。ここで、一方の管理装置20から取り込んだ流速及び圧力の実測データを、以下、流速V1及び圧力P1とし、他方の管理装置20から取り込んだ流速及び圧力を、流速V2及び圧力P2とすると、ベルヌーイ(Bernoulli)方程式から、
【0037】
P1+C1・V12=P2+C1・V22+C2・・・(1)
【0038】
が成立する。但し、上記式(1)においてC1は、単位質量wを2で除した定数であり、C2は、両管理装置20,20が取り付けられたパイプ11の高低差hに、重力加速度g及び単位質量wを乗じた定数である。そして、メインプログラムM2では、取り込んだ4つの実測データP1,P2,V1,V2のうちの、例えば圧力P1を除く、3つの実測データP2,V1,V2を上記式(1)に代入して、圧力の基準値P0を算出する(S31)。
【0039】
次いで、この圧力の基準値P0と、実測した圧力P1とが、所定の損失範囲C3内で一致したか否かをチェックし(S32)、一致しなかった場合には、遠隔表示部36に警告表示を行う(S33)。具体的には、例えば、パイプ11から温水が漏れるような事態が生じた場合には、ベルヌーイ方程式が成立しなくなるから、圧力の基準値P0と、実測した圧力P1とが、所定の損失範囲C3内で一致しなくなり、異常発生を検出することができる。このように、本実施形態によれば、従来より、詳細に暖房設備10(空調設備)を管理することができ、異常を早期に発見することが可能になる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)前記各実施形態では、管理装置20を、空調設備としての暖房設備10に設置したものを例示したが、管理装置20は、クーラに設置してもよい。即ち、本発明における「熱源」には、冷熱源が含まれる。
【0041】
(2)前記各実施形態の管理装置20に備えた流量センサ21は、電磁流量計であったが、流量計はこれに限られず、例えば、オリフィスやベンチュリ管を用いた流量計であってもよい。
【0043】
(3)また、本発明は、空調設備以外で、流路を備えた設備(例えば、化学プラント等における熱交換器)の異常検出装置に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る暖房設備(空調設備)の概念図
【図2】 管理装置の断面図
【図3】 信号処理装置でランされるメインプログラムのフローチャート
【図4】 流速と圧力との関係及び従来の異常判別の基準範囲を示したグラフ
【符号の説明】
10…暖房設備(空調設備)
11…パイプ
12…ボイラ(熱源)
20…管理装置
21…流量センサ
22…温度センサ
23…圧力センサ
30…信号処理部
40…信号処理装置(信号処理部)
Claims (1)
- 熱源にて強制的に加熱又は冷却した流体を、パイプに循環させて空調を行う空調設備の異常を検出する空調設備管理装置であって、
前記パイプの2箇所に取り付けられて、前記流体の流速及び圧力をそれぞれ実測する1対のセンサヘッドと、
一方の前記センサヘッドが実測した流速及び圧力の実測データと、他方の前記センサヘッドが実測した流速及び圧力の実測データとの計4つの実測データを取り込み、それら4つの実測データのうちの何れか3つの実測データをベルヌーイ方程式に代入して残り1つの実測データに対する基準値を演算すると共に、前記残り1つの実測データが所定の範囲内で前記基準値に一致したか否かに基づいて異常の有無を判別する信号処理部とを備えたことを徴とする空調設備管理装置。
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