JP3968918B2 - 酢酸菌のキシリトールデヒドロゲナーゼ及びその遺伝子 - Google Patents

酢酸菌のキシリトールデヒドロゲナーゼ及びその遺伝子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酢酸菌の新規なキシリトールデヒドロゲナーゼ、それをコードする遺伝子、キシリトールデヒドロゲナーゼの製造法、及びキシリトールの製造法に関する。キシリトールは、食品、医薬分野等で有用である。
【0002】
【従来の技術】
天然に存在する糖アルコールであるキシリトールは、蔗糖よりもカロリーが低いが蔗糖に匹敵する甘味を呈し、低カロリー甘味料として将来有望である。加えて、抗う蝕性を有しており、虫歯予防甘味料となりうる。さらに、キシリトールは血糖値を上昇させないために、糖尿病治療の際の輸液として利用されている。そのためキシリトールの需要は今後増加することが予想される。
【0003】
現在、キシリトールは主として米国特許第4,008,825号に記載されるようなD−キシロースの水素添加により工業生産されている。原料となるD−キシロースは、硬木、藁、とうもろこしの穂軸、オート麦の外皮、その他キシランに富んだ植物材料を出発材料とし、これを加水分解することによって得られる。
【0004】
しかし、植物材料を加水分解して得られるD−キシロースは価格が高いという問題点がある。これは、生産コストが高いことによる。例えば、植物材料の加水分解処理の収率が低いため、生成するD−キシリトールの純度は低くなる。このため、加水分解処理後に、イオン交換処理をして加水分解に用いた酸および色素を除去する。さらに、D−キシロースを結晶化して他のヘミセルロース性糖類を除去する。食品に適するD−キシロースを得るためにはさらなる精製が必要となる。これらイオン交換処理および結晶化処理が生産コストの上昇につながる。
【0005】
そこで、出発材料が容易に手に入り、かつ生じる廃棄物の量が少ないキシリトールの製造法がいくつか開発されている。例えば、他のペンチトールを出発原料としてキシリトールを生産する方法が開発されてきた。容易に手に入るペンチトールのひとつがD−アラビトールであり、D−アラビトールは酵母を用いて製造することができる(Can.J.Microbiol.,31,1985,467-471、J.Gen.Microbiol.,139,1993,1047-54)。
【0006】
そこで、D−アラビトールを原料とするキシリトール生産法がいくつか開発されている。Applied Microbiology., 18, 1969, 1031-1035には、デバリオミセス・ハンゼニイ(Debaryomyces hansenii) ATCC20121を用いて、発酵によりグルコースからD−アラビトールを生産し、次に、アセトバクター・サブオキシダンス(Acetobacter suboxydance)を用いてD−アラビトールをD−キシルロースに変換し、さらにキャンディダ・ギリエルモンディ・ヴァリ.ソヤ(Candida guilliermondii var. soya)をD−キシルロースに作用させてキシリトールに変換する方法が報告されている。
【0007】
また、ヨーロッパ特許出願公開第403392号および同第421882号には、耐浸透圧酵母を用いてD−アラビトールを発酵生産し、次にアセトバクター(Acetobacter)属細菌、グルコノバクター(Gluconobacter)属細菌またはクレブジエラ(Klebsiella)属細菌を用いてD−アラビトールをD−キシルロースに変換し、次いでD−キシルロースにグルコース(キシロース)イソメラーゼを作用させてキシロースおよびD−キシルロース混合物を生成し、さらに生成したキシロース/D−キシルロースに水素添加してキシリトールに変換する方法が開示されている。また、同キシロース/D−キシルロース混合物中のキシロースを予備濃縮し、これに水素添加してキシリトールに変換する方法が開示されている。
【0008】
しかし、上記D−アラビトールを原料とするキシリトール生産法は、比較的高収率でキシリトールを生成することができるが、多段階の反応ステップを必要とするためにプロセスが煩雑なものとなるという欠点があり、そのため経済的にも満足のいくものではなかった。
【0009】
一方、遺伝子操作技術によりキシリトール発酵菌の育種が試みられている。クレブジエラ属細菌由来のアラビトールデヒドロゲナーゼ遺伝子およびピヒア(Pichia)属由来のキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子を、アラビトール発酵菌(キャンディダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属またはチゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属に属する酵母)に導入した遺伝子組換え菌を用いて、グルコースからキシリトールの発酵生産が試みられている(WO94/10325号国際公開パンフレット)。
しかし、上記のような遺伝子操作技術によるキシリトール発酵菌の育種は、実用的に完成されたものとはいえない。
【0010】
ところで、キシリトールデヒドロゲナーゼは、キシルロースからキシリトールを生成する反応を触媒する酵素であり、多くの生物種においてその存在が知られている。例えば、ピヒア・スティピティス(Pichia stipitis)(J. Ferment. Bioeng., 67, 25 (1989))、パキソレン・タンノフィルス(Pachysolen tannophilus)(J. Ferment. Technol., 64, 219 (1986))、キャンディダ・シェハタエ(Candida shehatae)(Appl. Biochem. Biotech., 26, 197 (1990))、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)(Biotechnol. Bioeng., 58, 440 (1998))、デバリオミセス・ハンゼニイ(Appl. Biochem. Biotech., 56, 79 (1996))、プルラリア・プルランス(Pullularia pullulans)(An. Acad. Brasil. Cienc., 53, 183 (1981))等の酵母、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(Microbiology, 140, 1679 (1994))、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)(FEMS Microbiol. Lett., 146, 79 (1997))等の糸状菌、ガルディエリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)(Planta, 202, 487, (1997))等の藻類、モルガネラ・モルガニ(Morgannela morganii)(J. Bacteriol., 162, 845 (1985))等の細菌等でキシリトールデヒドロゲナーゼの存在が知られている。
【0011】
また、キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子も、ピヒア・スティピティス(FEBS Lett., 324, 9 (1993))及びモルガネラ・モルガニ(DDBJ/GenBank/EMBL accession No.L34345)由来の遺伝子の塩基配列が報告されている。
しかしながら、酢酸菌由来のキシリトールデヒドロゲナーゼ及びその遺伝子は、存在自体知られていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、キシリトールを効率よく製造する技術あるいはキシリトール発酵菌の育種を確立するために、キシリトール生産能に優れた微生物のキシリトール生合成に関与する酵素及びその遺伝子、及びこれらの利用法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、D−アラビトールをキシリトールに直接変換する能力を有する微生物の検索を行った。その結果、グルコノバクター属又はアセトバクター属に属する細菌に、該能力を有する細菌が存在することを見い出した。そして、それらの細菌の一つであるグルコノバクター・オキシダンスから2種類のキシリトールデヒドロゲナーゼを精製することに成功し、さらにこれらの酵素をコードする遺伝子を単離して構造を決定することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、
(1)下記(A)又は(B)に示すタンパク質、
(A)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
(B)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
(2)下記(C)又は(D)に示すタンパク質、
(C)配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
(D)配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質、である。
【0015】
また本発明は、
(3)下記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードするDNA、
(A)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
(B)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
(4)下記(C)又は(D)に示すタンパク質をコードするDNA、
(C)配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
(D)配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質、
(5)下記(a)又は(b)に示すDNAである(3)のDNA、
(a)配列表の配列番号3に記載の塩基配列のうち、少なくとも塩基番号25〜1053からなる塩基配列を含むDNA。
(b)配列表の配列番号3に記載の塩基配列のうち、少なくとも塩基番号25〜1053からなる塩基配列又は同塩基配列から調製されるプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(6)前記ストリンジェントな条件が、1×SSC及び0.1%SDSに相当する塩濃度で60℃で洗浄が行われる条件である(5)のDNA。
(7)下記(c)又は(d)に示すDNAである(4)のDNA、
(c)配列表の配列番号5に記載の塩基配列のうち、少なくとも塩基番号1063〜1848からなる塩基配列を含むDNA。
(d)配列表の配列番号5に記載の塩基配列のうち、少なくとも塩基番号1063〜1848からなる塩基配列又は同塩基配列から調製されるプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、を提供する。
(8)前記ストリンジェントな条件が、1×SSC及び0.1%SDSに相当する塩濃度で60℃で洗浄が行われる条件である(7)のDNA。
【0016】
本発明はまた、
(9)前記(3)〜(8)のいずれかのDNAが、該DNAがコードするキシリトールデヒドロゲナーゼが発現可能な形態で導入された細胞を提供する。
【0017】
本発明はさらに、
(10)前記(9)の細胞を培地で培養し、キシリトールデヒドロゲナーゼを培養物中に生成蓄積させ、該培養物よりキシリトールデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とするキシリトールデヒドロゲナーゼの製造法を提供する。
【0018】
さらに本発明は、
(11)前記(1)又は(2)のキシリトールデヒドロゲナーゼをD−キシルロースに作用させ、生成するキシリトールを採取することを特徴とするキシリトールの製造法、及び
(12)前記(9)の細胞をD−キシルロースに作用させ、生成するキシリトールを採取することを特徴とするキシリトールの製造法、を提供する。
【0019】
尚、本発明のキシリトールデヒドロゲナーゼは、D−キシルロースを還元してキシリトールを生成する反応、及びキシリトールを酸化してD−キシルロースを生成する反応のいずれをも触媒する活性を有するが、本発明において「キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有する」とは、少なくともD−キシルロースからキシリトールを生成する反応を触媒する活性を有することをいう。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
<1>本発明のキシリトールデヒドロゲナーゼ
本発明のキシリトールデヒドロゲナーゼは、グルコノバクター・オキシダンスが産生する酵素である。該酵素は2種類存在し、一方をXDH1、他方をXDH2と命名した。XDH1は配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を有し、XDH2は配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する。また、XDH1は、XDH2は、SDS-PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)でそれぞれ約36,000〜約40,000、及び約27,000〜約30,000の分子量を示す。以下、これら2種類のキシリトールデヒドロゲナーゼ、XDH1及び/又はXDH2を、まとめて「XDH」ということがある。
【0022】
後述の実施例5に示すように、XDH2の還元反応(D-キシルロースからキシリトールを生成する反応)における至適pHは、約5付近であった。公知のキシリトールデヒドロゲナーゼ、例えばアスペルギルス・ニガー由来のキシリトールデヒドロゲナーゼは、還元反応の至適pHが厳密に6.5であり(Cor F.B.Witteveen, et al., Microbiology, 1994, 140, 1679-1685)、本発明のグルコノバクター属細菌由来のXDH2とは反応至適pHが明らかに異なる。
【0023】
次に、本発明のXDHの製造法の例として、グルコノバクター・オキシダンスからXDHを単離・精製する方法を説明する。
まず、グルコノバクター・オキシダンス、例えばATCC621株の菌体から、超音波処理等の物理的方法、あるいは細胞壁溶解酵素等を用いた酵素法等により菌体を破壊し、遠心分離等により不溶性画分を除いて菌体抽出液を調製する。
【0024】
上記のようにして得られる菌体抽出液を、通常のタンパク質の精製法、陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどを組み合わせて分画することによって、XDHを精製することができる。
【0025】
陰イオン交換クロマトグラフィー用の担体としては、Q-Sepharose FF(ファルマシア社製)及びMono-Q(ファルマシア社製)等が挙げられる。XDHを含む抽出液をこれらの担体を詰めたカラムに通液させて酵素をカラムに吸着させ、カラムを洗浄した後に、高塩濃度の緩衝液を用いて酵素を溶出させる。その際、段階的に塩濃度を高めてもよく、濃度勾配をかけてもよい。例えば、Q-Sepharose FFを用いた場合には、カラムに吸着したXDHは、200〜350mM程度のKClで溶出される。また、Mono-Qでは150mMから250mM程度のKClで溶出される。
【0026】
アフィニティークロマトグラフィー用担体としては、HiTrap Blue(ファルマシア社製)が挙げられる。本発明のXDHは、NAD又はNADHを補酵素とし、これらの物質に親和性を有する。担体に担体に吸着したXDHは、5mM程度のNADを含む緩衝液で溶出することができる。
【0027】
疎水性クロマトグラフィー用担体としては、Phenyl Sepharose HP(ファルマシア社製)が挙げられる。低塩濃度で担体に吸着したXDHは200〜300mM程度の硫酸アンモニウムで溶出される。
【0028】
上記のようにして精製されたXDHは、さらにゲル濾過クロマトグラフィーまたはSDS-PAGE等により、XDH1及びXDH2に分離、精製することができる。ゲル濾過クロマトグラフィー用担体としては、Sephadex 200HP(ファルマシア社製)が挙げられる。
【0029】
上記精製操作において、XDHを含む画分は、後述の実施例に示した方法等により各画分のXDH活性を測定することにより、確認することができる。
上記のようにして精製されたXDH1及びXDH2のN末端のアミノ酸配列を、それぞれ配列表の配列番号1及び配列番号2に示す。
【0030】
本発明のXDHは、上記のようにグルコノバクター・オキシダンスの菌体から単離・精製することによって得られるが、異種タンパク質の発酵生産に通常用いられている方法によって、後述するXDHをコードするDNAを適当な宿主に導入し、発現させることによっても製造することができる。
以下に挙げる種々の遺伝子組換え技法は、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)に記載されている。
【0031】
XDH遺伝子を発現させるための宿主としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌、グルコノバクター・オキシダンス等のグルコノバクター属細菌、及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)をはじめとする種々の原核細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピヒア・・スティピティス(Pichia stipitis)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)をはじめとする種々の真核細胞を用いることができる。
【0032】
XDH遺伝子を宿主に導入するのに用いる組み換えDNAは、発現させようとする宿主の種類に応じたベクターに、XDHをコードするDNAを該DNAがコードするXDHが発現可能な形態で挿入することで、調製可能である。XDH遺伝子を発現させるためのプロモーターとしては、XDH遺伝子固有のプロモーターが宿主細胞で機能する場合には該プロモーターを使用することができる。また、必要に応じて宿主細胞で働く他のプロモーターをXDHをコードするDNAに連結し、該プロモーター制御下で発現させるようにしてもよい。宿主としてエシェリヒア属細菌を用いる場合、このようなプロモーターとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージのPRプロモーター、PLプロモーター等が挙げられる。また、エシェリヒア属細菌用のベクターとしては、pUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218等が挙げられる。他にもファージDNAのベクターも利用できる。さらに、プロモーターを含み、挿入DNA配列を発現させることができる発現ベクターを使用することもできる。
【0033】
組換えDNAを宿主細胞に導入するための形質転換法としては、D.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology 68, 326 (1979))あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))等が挙げられる。
【0034】
<2>XDHをコードするDNA
XDHをコードするDNAは、グルコノバクター・オキシダンスのcDNAライブラリー又は染色体DNAライブラリーから、PCR(polymerase chain reacion、White,T.J. et al ;Trends Genet., 5, 185(1989)参照)またはハイブリダイゼーションによって取得することができる。PCRに用いるプライマーは、精製されたXDH1及びXDH2について決定されたN末端のアミノ酸配列に基づいて設計することができる。また、本発明によりXDH1遺伝子(配列番号3)及びXDH2遺伝子(配列番号5)の塩基配列が明らかになったので、これらの塩基配列に基づいてプライマー又はハイブリダイゼーション用のプローブを設計してもよい。PCR用のプライマーとして、5’非翻訳領域及び3’非翻訳領域に対応する配列を有するプライマーを用いると、XDHのコード領域全長を増幅することができる。具体的には、XDH2については、5’側プライマーとしては配列番号5において塩基番号1063よりも上流の領域の塩基配列を有するプライマーが、3’側プライマーとしては塩基番号1851よりも下流の領域の塩基配列に相補的な配列を有するプライマーが挙げられる。XDH1については、5’側プライマーとしては配列番号3において塩基番号25よりも上流の領域の塩基配列を有するプライマーが挙げられる。
【0035】
プライマーの合成は、例えば、Applied Biosystems社製DNA合成機 model 380Bを使用し、ホスホアミダイト法を用いて(Tetrahedron Letters(1981),22,1859参照)常法に従って合成できる。PCR反応は、例えばGene Amp PCR System 9600(PERKIN ELMER社製)及びTaKaRa LA PCR in vitro Cloning Kit(宝酒造社製)を用い、供給者により指定された方法に従って行うことができる。
【0036】
本発明のDNAは、コードされるXDH1またはXDH2の活性、すなわちD−キシルロースからキシリトールを生成する活性が損なわれない限り1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むXDH1又はXDH2をコードするものであってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが2〜10個である。
【0037】
このようなXDH1またはXDH2と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは、例えば部位特異的変異法によって、XDH1遺伝子またはXDH2遺伝子の特定の部位のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加されるように塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変されたDNAは、従来知られている突然変異処理によっても取得され得る。突然変異処理としては、XDHをコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及びXDHをコードするDNAを保持するエシェリヒア属細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工突然変異に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
【0038】
また、上記のような塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位等には、微生物の種あるいは菌株による差等、天然に生じる変異も含まれる。
上記のような変異を有するDNAを適当な細胞で発現させ、発現産物のXDH活性を調べることにより、XDH1またはXDH2と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。また、変異を有するXDH1またはXDH2をコードするDNAまたはこれを保持する細胞から、例えば配列表の配列番号3に記載の塩基配列のうち、塩基番号25〜1053からなる塩基配列を有するDNAもしくは同塩基配列から調製されるプローブ、または配列番号5に記載の塩基配列のうち、塩基番号1063〜1848からなる塩基配列を有するDNAもしくは同塩基配列から調製されるプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、XDH活性を有するタンパク質をコードするDNAを単離することによっても、XDH1またはXDH2と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAが得られる。
【0039】
ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せばサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件であ0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。このような条件でハイブリダイズする遺伝子の中には途中にストップコドンが発生したものや、活性中心の変異により活性を失ったものも含まれるが、それらについては、市販の発現ベクターにつなぎ、適当な宿主で発現させて、発現産物のXDH活性を後述の方法で測定することによって容易に取り除くことができる。
【0040】
本発明のXDHをコードするDNAは、前述したXDHの製造法及び後述のキシリトールの製造法に用いることができる他、キシリトール生産菌の育種に用いることができる。例えば、グルコノバクター属細菌等、D−アラビトールからキシリトールを生成する能力を有する微生物においてXDH遺伝子を増強することによって、該微生物のD−アラビトールからキシリトールへの変換能を高めることができる。
【0041】
<3>キシリトールの製造法
本発明のXDH、またはXDHをコードするDNAが導入されXDHを発現する細胞を、D−キシルロースに作用させ、生成するキシリトールを採取することにより、キシリトールを製造することができる。
【0042】
XDHとしては、グルコノバクター属細菌から抽出した酵素であっても、XDHをコードするDNAを用いた遺伝子組換え法によって製造した酵素であってもよい。また、XDHは、XDH1又はXDH2のいずれであってもよく、これらの任意の割合の混合物であってもよい。
【0043】
D−キシルロースからキシリトールを生成させる反応は、通常、温度20〜60℃、望ましくは30〜40℃、pH4〜10、望ましくはpH4〜8で好結果を与える。反応には、静置反応あるいは攪拌反応のいずれの方法も採用し得る。反応時間は、使用するXDHの濃度、細胞の量、あるいは基質濃度によって異なるが、1〜100時間が望ましい。
【0044】
生成したキシリトールを反応終了混合物から採取分離するには、合成吸着剤を用いる方法や沈殿剤を用いる方法、その他通常の採取分離法が採用できる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は実施例の記載に限定されない。
【0046】
【実施例1】
グルコノバクター・オキシダンスによるXDHの生産及び精製
<1>グルコノバクター・オキシダンスATCC621の培養
グルコノバクター・オキシダンスATCC621を培養し、充分にXDH活性を有する菌体を得た。培養は総てPD培地を用い、30℃で液体振盪培養にて行った。PD培地の組成は24g/L Potato dextrose(Difco)、30 g/L Yeast Extract(Difco)、5g/L肉エキス(Difco)、15 g/Lグリセロール、10 g/L D-アラビトール、10 g/L D-キシロース、10 g/Lキシリトール、20 g/L炭酸カルシウム(関東化学)、pH7.0である。
【0047】
まず、種培養として、ATCC621株をPD培地を40ml含む坂口フラスコに接種し、30℃で一晩振盪培養した。得られた培養液を同じくPD培地を40ml含む坂口フラスコに40連で1%接種し、30℃で3日間振盪培養した(本培養)。遠心分離により炭酸カルシウムを除いた後、遠心分離にて集菌し、当該菌体を得た。こうして得られた菌体を、XDHを精製するための材料として用いた。
【0048】
なお、XDH活性は、以下の酵素活性測定法により行った。酵素液30μlを100mM(終濃度)キシリトール、2mM NAD、及び100mM CAPS(pH10.0)を含む反応溶液570μlに添加して30℃にて酵素反応を行い、反応に伴い生じるNADHの増加を分光光度計(DU 640 Spectrometer、BECKMAN社製)を使用して340nmの吸光度を測定することにより決定した。一分間に1μmolのNADHを生じる活性を1Uとした。なおNADHの340nmにおける分子吸光係数はε=6.3×103として算出した。
【0049】
<2>XDHの精製
(1)菌体抽出液の調製
上記で得られた菌体を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)に懸濁し、5000×gで10分間遠心し、沈澱画分に再度集菌した。この菌体の懸濁及び遠心の作業を2回繰り返して菌体を洗浄した。
【0050】
洗浄した菌体約10gを、50mlの緩衝液1(20mM Tris-HCl(pH 7.6)、0.5mM EDTA、1mM MgCl2、1mM DTT)に懸濁し、4℃で20分間超音波破砕した。破砕液を遠心分離(8000rpm、10分間)して菌体残渣を除き、さらに超遠心分離(56000rpm、30分間)して不溶性画分を除いて可溶性画分を得た。
【0051】
(2)陰イオン交換クロマトグラフィー
上記可溶性画分を緩衝液1で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラムQ-Sepharose FF(ファルマシア社製)に供した。この操作によりXDHは担体に吸着した。
【0052】
次に、担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)を緩衝液1を用いて洗い流した後、KClを含む緩衝液を溶出液として用いて、吸着したタンパク質の溶出を行った。このとき、緩衝液中のKCl濃度を0Mから0.5Mまで直線的に変化させた。このとき得られた各溶出画分についてXDH活性を測定したところ、KCl濃度がおよそ200〜350mMの溶出位置にXDH活性が認められた。
【0053】
(3)NADアフィニティークロマトグラフィー
上記で得られたXDH活性を含む画分を集めて、緩衝液1に対して透析した。透析後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過した。ここで得られた濾液を、緩衝液1で平衡化されたNADアフィニティーカラムHiTrap Blue 5ml(ファルマシア社製)に供した。この操作によりXDHは担体に吸着した。
【0054】
次に、担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)を緩衝液1を用いて洗い流した後、NADを含む緩衝液2(20mM Tris-HCl(pH 7.6)、0.5mM EDTA、1mM MgCl2、1mM DTT、5mM NAD)を溶出液として用いて、吸着したタンパク質の溶出を行った。このときXDHは溶出画分に検出された。
【0055】
(4)陰イオン交換クロマトグラフィー
上記のXDH活性を含む溶出画分を0.45μmのフィルターで濾過した。ここで得られた濾液を、緩衝液1で平衡化された陰イオン交換クロマトグラフィーカラムMono-Q(ファルマシア社製)に供した。この操作により、XDHは担体に吸着した。
【0056】
次に、緩衝液1により非吸着タンパク質を洗い流した後、KClを含む緩衝液を溶出液として用いて、吸着されたタンパク質の溶出をおこなった。このとき、緩衝液中のKCl濃度を直線的に0mMから500mMへ変化させるという溶出方法を用いた。このとき得られた各溶出画分についてXDH活性を測定したところ、KCl濃度がおよそ150mMから250mMの溶出位置に活性が認められた。
【0057】
(5)疎水性クロマトグラフィー
活性が検出された溶出画分を緩衝液3(50mMリン酸カリウム緩衝液、1M硫酸アンモニウム、pH 7.0)に対して透析した。透析後に得られた溶液を0.45μmのフィルターで濾過した。ここで得られた濾液を、緩衝液3で平衡化した疎水性クロマトグラフィーカラムPhenyl Sepharose HP(ファルマシア社製)に供した。この操作によりXDHは担体に吸着した。
【0058】
次に、担体に吸着しなかった非吸着タンパク質を緩衝液3を用いて洗い流した後、緩衝液4(50mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.0)を溶出液として用いて、吸着したタンパク質の溶出を行った。このとき、緩衝液中の硫酸アンモニウム濃度を1Mから0Mまで直線的変化させた。このとき得られた各溶出画分についてXDH活性を測定したところ、硫酸アンモニウム濃度がおよそ200〜300mMの溶出位置にXDH活性が認められた。
【0059】
(6)精製画分の分析
上記精製操作で得られたXDH活性画分をSDS-PAGEに付し、クマジーブリリアントブルー染色したところ、XDHは2本のバンドになるまでに精製されていることが確認され、その分子量はそれぞれ約27,000〜約30,000及び、約36,000〜約40,000と見積もられた(図1参照)。以後、分子量約36,000〜約40,000のバンドに相当する蛋白質をXDH1、分子量約27,000〜約30,000のバンドに相当する蛋白質をXDH2と称することとする。
【0060】
また、得られた活性画分をNative-PAGE(非変性-PAGE)に供して、クマジーブリリアントブルー染色したところ100kDa以上に対応する2本のバンドが確認され、さらにNative-PAGE後のゲルを活性染色溶液(25mMグリシン緩衝液、2.5mM NAD、50mMキシリトール、0.2mM フェナジンメトサルフェート(phenazine methosulfate)、0.2mM 塩化テトラニトロブルーテトラゾリウム(tetranitro blue tetrazolium chloride))に供して活性染色したところ、対応する2本のバンドの両方からXDH活性が検出され、SDS-PAGEでの2本のバンドに対応する蛋白はいずれもXDH活性を有していることを確認した(図1)。以下、このXDH1及びXDH2を含む精製画分を単にXDHと称することがある。
【0061】
上記精製を行った結果のXDH比活性の上昇を測定した。前出の菌体抽出液、及び精製により得られた活性画分のXDH活性を測定した結果、この一連の精製操作により、単位タンパク質重量あたりの比活性は約550倍に上昇したことがわかった。なお、今回用いた活性測定法においては、精製したXDHの比活性は、約130U/mg(30℃、pH10)と見積もられた。
【0062】
(7)XDHのN末端付近のアミノ酸配列の決定
上記のように精製されたXDHのN末端付近の配列を以下のようにして決定した。即ち、精製されたXDH画分のうち、タンパク質量約10μg分をSDS存在下ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、ゲル中のXDHを膜フィルターに転写し、プロテインシーケンサーによってアミノ酸配列をN末端から解析した。具体的には、ミリポア社ミリブロットを用い、セミドライ方式(タンパク質構造解析、平野久著、東京化学同人)によって電気泳動後のゲルからポリビニリデンフルオリド(PVDF)膜に目的酵素を転写した。続いて、PVDF膜上の目的酵素(XDH1及びXDH2)をプロテインシーケンサー(ABI社製、モデル476A)に供し、N末端アミノ酸配列解析を行った。
【0063】
その結果、XDH1についてはN末端から27残基のアミノ酸配列が、XDH2についてはN末端から25残基のアミノ酸配列が決定した。決定されたXDH1のN末端付近のアミノ酸配列を配列表の配列番号1に、XDH2のN末端付近のアミノ酸配列を配列表の配列番号2にそれぞれ示した。
【0064】
【実施例2】
XDHによるD-キシルロースのキシリトールへの変換
実施例1で得られた精製XDH(XDH1及びXDH2)を用いて、D-キシルロースからのキシリトールへの変換を行った。21mM D-キシルロース、20mM NADH、100mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を含む反応溶液0.25mlに0.2Uの精製XDHを添加し、30℃で一時間インキュベートすることにより反応を行った。反応後の溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供し、下記の条件にて生成したキシリトールを分析した。
【0065】
カラム:Shodex SC1211〔昭和電工社製品〕
移動層:50%アセトニトリル/50% 50ppm Ca-EDTA水溶液
流 速:0.8 ml/分、
温 度:60℃、
検 出:RI検出器
【0066】
その結果、反応後の溶液に18mMのキシリトールの生成が認められ、該精製XDHを用いてD-キシルロースからキシリトールが生産可能であることが示された。
【0067】
【実施例3】
グルコノバクター属由来のXDH遺伝子の単離
<1>PCRによるXDH遺伝子断片の増幅
(1)XDHのN末端アミノ酸配列に基づいたPCRプライマーの作製
前述のグルコノバクター・オキシダンスATCC621由来XDH(XDH1、XDH2)のそれぞれのN末端アミノ酸配列(配列番号1及び2)をもとに、配列番号7〜10にそれぞれ示す塩基配列を有するミックスプライマーを作成した。
【0068】
(2)グルコノバクター・オキシダンスATCC621の染色体DNAの調製
グルコノバクター・オキシダンスATCC621株を以下の条件で培養した。まず、種培養として、ATCC621株を20mlのYPG培地(3%グルコース、0.5% Bacto Yeast Extract、0.3% Bacto Peptone、pH6.5)を用いて一晩培養した。この培養液5mlを種菌として、100mlのYPG培地を用いて本培養を行った。培養は、30℃で振盪培養にて行った。
【0069】
上記条件下で対数増殖後期まで培養した後、培養液100mlを遠心分離操作(12000×g、4℃、15分間)に供し、集菌した。この菌体を10mlの50:20TE(50mM Tris-HCl, pH 8.0, 20mM EDTA)に懸濁し、遠心分離操作により菌体を洗浄、回収した。再び、この菌体を10ml 50:20 TEに懸濁した。さらに、この懸濁液に、0.5mlの20 mg/mlリゾチーム溶液、1mlの10%SDS溶液を加えた後、55℃で20分間インキュベートした。インキュベート後、1倍容の10:1 TE飽和のフェノールを加えて除タンパクを行った。分離した水層に対して、1倍容の2−プロパノールを加えて、DNAを沈澱させ、回収した。沈澱したDNAを0.5ml 50:20 TEに溶解した後、5μlの10mg/ml RNase、5μlの10mg/ml Proteinase Kを加えて、55℃で2時間反応させた。反応後、1倍容の10:1 TE飽和のフェノールで除タンパクを行った。さらに、分離した水層に対して、1倍容の24:1クロロホルム/イソアミルアルコールを加えて攪拌し、水層を回収した。この操作をさらに2回行った後に得られた水層に、終濃度0.4Mとなるように3M酢酸ナトリウム溶液(pH 5.2)を加え、さらに2倍容のエタノールを加えた。沈澱となって生じたDNAを回収し、70%エタノールで洗浄した後、乾燥させ、1mlの10:1 TEに溶解させた。
【0070】
(3)PCR法によるDNA断片の取得
グルコノバクター属細菌由来のXDHをコードする遺伝子を含むDNA分子を、TaKaRa LA PCR in vitro Cloning Kit(宝酒造社製)を用いたPCRにより増幅、単離した。以下、断わりの無い限り、キットの説明書の方法に基づき実験を行った。
【0071】
上記(2)のようにして調製した染色体DNA 5μgを、制限酵素Pst I又はHindIIIでそれぞれ消化した。次に、エタノール沈澱操作により回収したDNA断片に、PstIカセット、又はHindIIIカセットを連結した。さらにエタノール沈澱操作を行った後、回収したDNAに対してプライマーC1と以下に示す組合せのプライマーを使用して1回目のPCRを行った。即ちXDH1のアミノ酸配列に基づいたプライマーXDH1-S1には鋳型DNAとしてはPstIカセットを連結したDNAを使用して、XDH2の配列に基づいたプライマーXDH2-S1には鋳型DNAとしてHindIIIカセットを連結したDNAをそれぞれ使用した。プライマーC1の塩基配列を配列表の配列番号11に示し、プライマーXDH1-S1の塩基配列を配列表の配列番号7に示し、プライマーXDH2-S1の塩基配列を配列表の配列番号9に示した。プライマーC1はTaKaRa LA PCR in vitro Cloning Kitに含まれており、PstIカセット内及びHindIIIカセット内の配列に対応する。PCR反応は、Gene Amp PCR System 9600(PERKIN ELMER社製)を用いて行い、以下の条件の反応を30サイクル行った。
【0072】
94℃ 30秒
55℃ 2分
72℃ 1分
【0073】
次にこの反応液を100倍に希釈して、プライマーC2及びプライマーXDH1-S2もしくはプライマーXDH2-S2を新たに加えて2回目のPCRを行った。条件は1回目と同じである。プライマーC2の塩基配列を配列表の配列番号12に示し、プライマーXDH1-S2の塩基配列を配列表の配列番号8に示し、プライマーXDH2-S2の塩基配列を配列表の配列番号10に示した。プライマーC2はTaKaRa LA PCR in vitro Cloning Kitに含まれており、PstIカセット内及びHindIIIカセット内の配列に相当する配列を含む。プライマーXDH1-S2およびプライマーXDH2-S2は、それぞれ決定したアミノ酸配列に基づいて設計した配列、及びEcoRI部位に対応する配列、及びEcoRI部位を含んでいる。
【0074】
反応後、反応液3μlを0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果、プライマーXDH1-S2を使用した場合には約1kbのDNA断片が、プライマー XDH2-S2を使用した場合には約1.7kbのDNA断片が増幅されていることが確認された。
【0075】
(4)PCRで増幅されたDNA断片のpUC19へのクローニング
PCRで増幅された約1kbp (XDH1)と約1.7kbp (XDH2)のDNA断片をpUC19と連結してクローニングを行った。連結は、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造製)を用いて行った。以下、断わりの無い限り、キットの説明書の方法に基づき実験を行った。
【0076】
プライマーXDH1-S2により増幅された約1kbのDNA断片400ngをPstI及びEcoRIによって消化後に、該DNA断片を精製し、PstI及びEcoRIによって消化されたpUC19と連結した。このライゲーション反応液を用いてエシェリヒア・コリJM109を形質転換した。
【0077】
また、プライマーXDH2-S2により増幅された約1.7kbpのDNA断片400ngをHindIII及びEcoRIによって消化後に、該DNA断片を精製し、HindIII及びEcoRIによって消化されたpUC19と連結した。このライゲーション反応液を用いて大腸菌エシェリヒア・コリJM109を形質転換した。
【0078】
得られたそれぞれの形質転換体より、目的とする約1kbp(XDH1)及び約1.7kbp(XDH2)のDNA断片を含むpUC19で形質転換されたJM109を数株づつ選抜した。選抜の方法は、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)に記載されている。
【0079】
(5)XDH2遺伝子断片の塩基配列決定
約1.7kbp(XDH2)のDNA断片を含むpUC19で形質転換されたJM109が保有するプラスミドを、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)に記載される方法に従って調製し、挿入DNA断片の塩基配列を決定した。シーケンス反応は、 Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI社製)を用いて説明書に従って行った。また、電気泳動は、DNA Sequencer 373(ABI社製)を用いて行った。
【0080】
その結果、PCRで増幅されたDNA断片は、配列表配列番号5に示される塩基配列のうち、1116番目のチミジン残基から2774番目のチミジン残基に至る配列を有することが解った。
【0081】
(6)PCR法によるXDH2遺伝子の上流領域のDNA断片の取得
XDH2遺伝子およびXDH2遺伝子の上流領域のDNA断片を、上記で決定された塩基配列を利用してPCRにより増幅、単離した。、PCR反応は、TaKaRa LA PCR in vitro Cloning Kit(宝酒造社製)を用いて行った。以下、断わりの無い限り、説明書の方法に基づき実験を行った。
【0082】
上記(2)のようにして調製した染色体DNA 5μgを制限酵素SalIで消化した。次に、エタノール沈澱操作により回収したDNA断片にSalI Cassetteを連結した。さらにエタノール沈澱操作を行った後、回収したDNAに対して、プライマーC1及びプライマーXDH2UP-S1を用いて1回目のPCRを行った。プライマーC1の塩基配列を配列表の配列番号11に示し、プライマーXDH2UP-S1の塩基配列を配列表の配列番号13に示した。プライマーXDH2UP-S1は、配列番号5に示すグルコノバクターのXDH2をコードする遺伝子群の塩基配列中1317番目のシトシン残基から1283番目のシトシン残基までの領域に相補する配列である。
【0083】
PCR反応は、Gene Amp PCR System 9600(PERKIN ELMER社製)を用いて行い、以下の条件の反応を30サイクル行った。
94℃ 30秒
55℃ 2分
72℃ 1分
【0084】
次にこの反応液を100倍に希釈して、プライマーC2及びプライマーXDH2UP-S2を新たに加えて2回目のPCRを行った。条件は1回目と同じである。プライマーC2及びプライマーXDH2UP-S2の配列をそれぞれ配列表配列番号12と配列番号14に示す。プライマーXDH2UP-S2は、配列番号5に示すグルコノバクターのXDH2をコードする遺伝子の塩基配列中1255番目のグアノシン残基から1225番目のグアノシン残基までの領域に相補する配列である。反応後、反応液3μlを0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果、約1.3kbのDNA断片が増幅されていることが確認された。
【0085】
(7)XDH2遺伝子及びその上流領域を含むDNA断片の塩基配列決定
上記のPCRで増幅された約1.3kbpのDNA断片を精製し、塩基配列を決定した。シーケンス反応は、 Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI社製)を用いて説明書に従って行った。また、電気泳動は、DNA Sequencer 373(ABI社製)を用いて行った。
【0086】
その結果、(6)で増幅されたDNA断片は配列表配列番号5に示される塩基配列のうち、1番目のグアノシン残基から1224番目のグアノシン残基に至る配列を有することが解った。配列番号5に示す塩基配列は、この塩基配列と、前記(5)で決定した塩基配列を併せたものである。ユニバーサル・コドンに基づいて該塩基配列によってコードされ得るアミノ酸配列を配列番号5に併記するとともに配列番号6に示す。該アミノ酸配列の2番目からから26番目までの配列は、配列番号2に示したXDH2のN末端アミノ酸配列の1番目から25番目の配列と完全に一致していた。このことから、PCRで増幅されたDNA断片は、目的のグルコノバクター属細菌由来のXDH2遺伝子及びその上流領域であることが確認された。
【0087】
(8)XDH2遺伝子コード領域全長を有するDNA断片のクローニング
XDH2遺伝子のコード領域全長を有するDNA断片をPCR法により増幅し、pUC18と連結してクローニングを行った。PCR反応は、TaKaRa LA PCR kit(宝酒造社製)を用いて行った。以下断わりの無い限り、説明書の方法に基づき実験を行った。
【0088】
前記(2)のようにして調製したグルコノバクター・オキシダンス ATCC621株の染色体DNA 1μgを鋳型として、プライマーXDH2-5'及びプライマーXDH2-3'を用いてPCRを行った。プライマーXDH2-5'の塩基配列を配列表の配列番号15に示し、プライマーXDH2-3'の塩基配列を配列表の配列番号16に示した。プライマーXDH2-5'は配列番号5に示されるXDH2遺伝子を含む塩基配列のうち1043番目のシトシン残基から1063番目のアデノシン残基までの領域に相当する配列を含み、プライマーXDH2-3'は、1957番目のグアノシン残基から1978残基のシトシン残基までの領域に相補する配列を含む配列である。
【0089】
PCR反応は、GeneAmp PCR System 9600(PERKIN ELMER社製)を用いて行い、以下の条件の反応を30サイクル行った。
【0090】
94℃ 30秒
55℃ 2分
72℃ 1分
【0091】
反応後、反応液3μlを0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果、約1kbpのDNA断片が増幅されていることが確認された。
上記のPCRで増幅された約1kbpのDNA断片をpUC18と連結してクローニングを行った。クローニングは DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造製)を用いて行った。以下、断わりの無い限り、説明書の方法に基づき実験を行った。増幅された約1kbのDNA断片400ngを、BamHI及びEcoRIによって消化後に、該DNA断片を精製し、BamHI及びEcoRIによって消化されたpUC18と連結した。このライゲーション反応液を用いてエシェリヒア・コリJM109を形質転換した。
【0092】
得られた形質転換体より、目的とする約1kbpのDNA断片を含むpUC18で形質転換されたJM109を数株選抜した。選抜の方法はMolecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)に記載されている。
【0093】
上記のようにしてグルコノバクター・オキシダンス由来XDH2遺伝子をクローニングすることができた。上記方法により得られた目的とするXDH2遺伝子断片を有するプラスミドをpUCXDH2とする。
【0094】
(9)XDH1遺伝子断片の塩基配列の決定
前記(4)で選抜された、約1kbp(XDH1)のDNA断片を含むpUC19で形質転換されたJM109が保有するプラスミドを、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)に記載される方法に従って調製し、挿入DNA断片の塩基配列を決定した。シーケンス反応は、 Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI社製)を用いて説明書に従って行った。また、電気泳動は、DNA Sequencer 373(ABI社製)を用いて行った。
【0095】
その結果、PCRで増幅されたDNA断片は、配列表配列番号3に示される塩基配列のうち、52番目のグアノシン残基から1011番目のグアノシン残基に至る配列を有することが解った。
【0096】
(10)染色体DNAライブラリーからのXDH1遺伝子のクローニング
i)染色体DNAライブラリーの作製
前記(2)で調製した染色体DNA 1μgをHindIIIで完全に消化した。エタノール沈澱によってDNAを回収した後、10μlの10:1 TEに溶解した。このうちの5μlと、HindIIIで消化されてさらにBAP(bacterial alkaline phosphatase)による脱リン酸化処理を受けたpUC19(宝酒造製)1ngとを混合し、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造製)を用いて連結反応を行った。このライゲーション反応液3μlとエシェリヒア・コリJM109株のコンピテント・セル(宝酒造製)100μlとを混合して、エシェリヒア・コリJM109株を形質転換した。これを適当な固形培地に塗布し、染色体DNAライブラリーを作製した。
【0097】
ii)プローブの作成
プローブには、(3)で取得したXDH1遺伝子の一部を用いることにした。(3)で取得したプライマーC2及びプライマーXDH1-S2により増幅された約1kbのDNA断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離した。目的のバンドを切り出し、Gene Clean II Kit(フナコシ社製)を用いてDNAを精製した。最終的に50ng/μlのDNA溶液16μlを得た。このDNA断片をDIG High Prime(ベーリンガー・マンハイム社製)を使用して、説明書通りにプローブのジゴキシゲニンによる標識を行った。
【0098】
iii)コロニーハイブリダイゼーションによるスクリーニング
XDH1遺伝子全長を取得するために、上記プローブを用いたコロニーハイブリダイゼーションによる染色体DNAライブラリーのスクリーニングを行った。コロニーハイブリダイゼーションの操作は、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)に説明されている。
【0099】
染色体DNAライブラリーのコロニーをナイロンメンブレンフィルター(Hybond-N、アマシャム社製)に移し、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイブリダイゼーションは、EASY HYB(ベーリンガー・マンハイム社製)を用いて行った。フィルターを該バッファー(EASY HYB)中に浸し、42℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った。その後、上記で作製した標識プローブを添加し、42℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。この後、フィルターを0.1% SDSを含む2×SSCで室温、20分間洗浄した。さらに0.1% SDSを含む0.1×SSCで65℃、15分間洗浄を2回行った。
【0100】
プローブとハイブリダイズするコロニーの検出は、DIG Nucleotide Detection Kit(ベーリンガー・マンハイム社製)を使用して、説明書通りに行った。その結果、プローブとハイブリダイズするコロニーを4株確認できた。
【0101】
(11)XDH1遺伝子のDNAシーケンス
前記(5)と同様にして、pUC19に挿入されたDNA断片の塩基配列を決定した。その結果を、配列表配列番号3に示す。ユニバーサル・コドンに基づいて該塩基配列によってコードされ得るアミノ酸配列を配列番号3に併記するとともに配列番号4に示す。該アミノ酸配列の2番目からから28番目までの配列は、配列番号1において開示した27残基からなるアミノ酸配列の1番目から27番目の配列と完全に一致していた。このことから取得したDNA断片は、目的のグルコノバクター属細菌由来のXDH1遺伝子及びその周辺領域であることが確認された。
【0102】
【実施例4】
グルコノバクター属細菌由来のXDH2遺伝子の大腸菌における発現及び精製
<1>組換えXDH2遺伝子を有する大腸菌の培養及び発現誘導
実施例3で取得したpUCXDH2では、グルコノバクター属細菌由来のXDH2遺伝子をコードするDNAがlacZプロモーターの下流に接続されており、lacZプロモーターから発現するようにデザインされていた。
【0103】
pUCXDH2によって形質転換された大腸菌JM109と、コントロールとして、pUC18によって形質転換された大腸菌JM109を、アンピシリン100μg/mlを含むLB培地50mlを用いて、37℃で一晩振盪培養した。これを種培養とした。pUCXDH2によって形質転換された大腸菌JM109の種培養を、新しい培地を入れたフラスコに1%植菌し、これを実験区1とした。一方、pUC18によって形質転換された大腸菌JM109の種培養も同様にフラスコに1%植菌し、実験区2とした(コントロール)。各実験区の培養を行い、610nmの波長を有する光の吸光度が約0.7になったところで、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を終濃度1mMとなるよう添加した。その後、4時間経過したところで培養を終了した。
【0104】
<2>誘導発現した蛋白質の確認
培養終了後、培養液10mlを遠心分離(12,000×g、15分間)し、菌体を回収した。この菌体を2mlの10mM Tris-HCl、pH 7.5に懸濁し、遠心分離により菌体を洗浄、回収した。この菌体を1mlの同バッファーに懸濁した後、マルチビーズショッカー(安井機械(株)製)を用いて、0.1mmジルコニアビーズで3分間振盪破砕した。この菌体破砕懸濁液をSDS-PAGEに供し、CBB(クマジーブリリアントブルー)染色した。その結果、実験区1(pUCXDH2によって形質転換されたJM109)にのみにおいて観察される分子量約27,000〜30,000のバンドが確認された。この分子量から推定して、期待したXDH2蛋白質が発現したものと考えられた。
【0105】
<3>XDH活性の確認
発現された蛋白質のXDH活性を測定した。上記菌体破砕懸濁液を使用して実施例1に記載した方法によりXDH活性を測定した。その結果、コントロールのpUC18により形質転換された大腸菌JM109ではXDH活性が検出されなかったの対して、pUCXDH2により形質転換された大腸菌JM109では、14U/mgのXDH活性が検出された。この結果より、pUCXDH2により形質転換された大腸菌JM109では、XDH活性が確認された。
【0106】
<4>組換え大腸菌JM109からのXDH2の精製
上記<2>で培養した、pUCXDH2によって形質転換された大腸菌JM109を遠心分離にて集菌し、当該菌体を得た。こうして得られた菌体をXDHを精製するための材料として用いた。なお、XDH活性は、実施例1に記載した方法により測定した。
【0107】
(1)菌体抽出液の調製
上記菌体を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7)に懸濁し、5000×gで10分間遠心し、沈澱画分に再度集菌した。この懸濁及び遠心の作業を、菌体の洗浄とした。この菌体の洗浄を2回繰り返した。
【0108】
洗浄菌体約3gを20mlの緩衝液1(20mM Tris-HCl(pH 7.6)、0.5mM EDTA、1mM MgCl2、1mM DTT)に懸濁し、4℃で20分間超音波破砕した。破砕液を遠心分離(8000rpm、10分間)して菌体残渣を除き、さらに超遠心分離(56000rpm、30分間)して不溶性画分を除いて可溶性画分を得た。
【0109】
(2)陰イオン交換クロマトグラフィー
得られた可溶性画分を緩衝液1で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラムQ-Sepharose FF(ファルマシア社製)に供した。この操作によりXDHは担体に吸着した。
【0110】
次に、担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)を緩衝液1を用いて洗い流した後、KClを含む緩衝液を溶出液として用いて、吸着したタンパク質の溶出を行った。このとき、緩衝液中のKCl濃度を0Mから0.5Mまで直線的に変化させた。このとき得られた各溶出画分についてXDH活性を測定したところ、KCl濃度がおよそ200〜350mMの溶出位置にXDH活性が認められた。
【0111】
(3)NADアフィニティークロマトグラフィー
XDH活性を含む画分を集めて、緩衝液1に対して透析した。透析後の溶液を0.45μmのフィルターで濾過した。ここで得られた濾液を、緩衝液1で平衡化されたNADアフィニティーカラムHiTrap Blue 5ml(ファルマシア社製)に供した。この操作によりXDHは担体に吸着した。次に、担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)を緩衝液1を用いて洗い流した後、NADを含む緩衝液2(20mM Tris-HCl(pH 7.6)、0.5mM EDTA、1mM MgCl2、1mM DTT、5mM NAD)を溶出液として用いて、担体に吸着したタンパク質の溶出を行った。このときXDHは溶出画分に検出された。
【0112】
(4)疎水性クロマトグラフィー
活性が検出された溶液を緩衝液3(50mMリン酸カリウム緩衝溶液、1M硫酸アンモニウム、pH 7.0)に対して透析した。透析後に得られた溶液を0.45μmのフィルターで濾過した。ここで得られた濾液を、緩衝液3で平衡化した疎水性クロマトグラフィーカラムPhenyl Sepharose HP(ファルマシア社製)に供した。この操作によりXDHは担体に吸着した。
【0113】
次に、担体に吸着しなかった非吸着タンパク質を緩衝液3を用いて洗い流した後、緩衝液4(50mMリン酸カリウム緩衝溶液、pH7.0)を溶出液として用いて、吸着したタンパク質の溶出を行った。このとき、緩衝液中の硫酸アンモニウム濃度を1Mから0Mまで直線的変化させた。このとき得られた各溶出画分についてXDH活性を測定したところ、硫酸アンモニウム濃度がおよそ200〜300mMの溶出位置にXDH活性が認められた。
【0114】
得られた活性画分をSDS-PAGEに付し、クマジーブリリアントブルー染色したところ、XDH2は1本のバンドになるまでに精製されていることが確認され、その分子量は約27,000〜約30,000と見積もられた。即ち、大腸菌JM109で発現させたXDH2を単一になるまで精製することができた。
【0115】
【実施例5】
XDHの至適pHの決定
実施例4にて取得したXDH2酵素を用いて、反応pHによる酵素活性の変化を以下の方法で測定し、至適pHを決定した。
【0116】
酵素反応緩衝液には酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.3、4、4.5、5及び6)、Tris-HCl(pH7及び8)、Glycine-NaOH(pH9)、CAPS-NaOH(pH10)緩衝液を用いた。XDH活性の還元反応の測定は、以下の方法で行った。酵素液30μlを100mM(終濃度)D-キシルロース、0.2mM NADH、及び100mM緩衝溶液を含む反応溶液570μlに添加して30℃にて酵素反応を行い、反応に伴うNADHの減少を分光光度計(DU 640 Spectrometer, BECKMAN社製 )を使用して340nmの吸光度を測定することにより決定した。一分間に1μmolのNADHを減少させる活性を1Uとした。なおNADHの340nmにおける分子吸光係数はε=6.3×103として算出した。それぞれの緩衝液は反応溶液中で100mMの濃度となるように添加した。酵素源として、上述の精製したXDH画分を用い,反応は30℃において行った。測定結果は、それぞれの反応溶液のpHの実測値に対する酵素活性の相対値の形で示した。便宜上、pH 5における酸化反応の活性の活性を100とした。測定結果は図2に示した。
【0117】
本発明のXDH2の還元反応(D-キシルロースからキシリトールを生成する反応)の至適pHは約5付近であることが分かった(図2参照)。ところで、Cor F.B.Witteveenらが報告した(Microbiology, 1994, 140, 1679-1685)アスペルギルス・ニガー由来のXDHは、その還元反応の至適pHが厳密に6.5であるので、本発明のグルコノバクター属細菌由来のXDH2は既知のXDHはその至適pHが明らかに異なるものである。即ち、本発明で見出したグルコノバクター属細菌由来XDHのうち少なくともXDH2は、還元反応の至適pHが低いという特徴があることが示された。
【0118】
【発明の効果】
本発明により、新規なキシリトールデヒドロゲナーゼ、該酵素をコードするDNA、該DNAを利用してキシリトールデヒドロゲナーゼを製造することができる。また、前記キシリトールデヒドロゲナーゼ、又は該酵素をコードするDNAを導入した細胞を用いて、キシリトールを製造することができる。
さらに、本発明のDNAは、キシリトール生産菌の育種に利用することができる。
【0119】
【配列表】
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【0120】
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【0121】
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【0122】
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【0123】
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【0124】
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【0125】
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【0126】
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【0127】
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【0128】
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【0129】
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【0130】
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【0131】
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【0132】
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【0133】
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【0134】
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【0135】
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【0136】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 精製されたXDHのポリアクリルアミドゲル電気泳動写真。a)は、SDS-PAGE後にCBB染色したもの。b)は、Native-PAGE後にCBB染色したもの。c)は、Native-PAGE後に活性染色したもの。
【図2】 XDH2の酵素活性のpH依存性を示すグラフ図。

Claims (10)

  1. 下記(A)又は(B)に示すタンパク質。
    (A)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
    (B)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
  2. 下記(C)又は(D)に示すタンパク質。
    (C)配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
    (D)配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
  3. 下記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードするDNA。
    (A)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
    (B)配列表の配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
  4. 下記(C)又は(D)に示すタンパク質をコードするDNA。
    (C)配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
    (D)配列表の配列番号6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列からなり、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
  5. 下記(a)又は(b)に示すDNAである請求項3記載のDNA。
    (a)配列表の配列番号3に記載の塩基配列のうち、少なくとも塩基番号25〜1053からなる塩基配列を含むDNA。
    (b)配列表の配列番号3に記載の塩基配列のうち、少なくとも塩基番号25〜1053からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  6. 下記(c)又は(d)に示すDNAである請求項4記載のDNA。
    (c)配列表の配列番号5に記載の塩基配列のうち、少なくとも塩基番号1063〜1848からなる塩基配列を含むDNA。
    (d)配列表の配列番号5に記載の塩基配列のうち、少なくとも塩基番号1063〜1848からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、キシリトールデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  7. 請求項3〜6のいずれか一項に記載のDNAが、該DNAがコードするキシリトールデヒドロゲナーゼが発現可能な形態で導入された細胞。
  8. 請求項7記載の細胞を培地で培養し、キシリトールデヒドロゲナーゼを培養物中に生成蓄積させ、該培養物よりキシリトールデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とするキシリトールデヒドロゲナーゼの製造法。
  9. 請求項1又は2に記載のキシリトールデヒドロゲナーゼをD−キシルロースに作用させ、生成するキシリトールを採取することを特徴とするキシリトールの製造法。
  10. 請求項7記載の細胞をD−キシルロースに作用させ、生成するキシリトールを採取することを特徴とするキシリトールの製造法。
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