JP3966968B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質剤として、N−アルキルピロリドン類、N−シクロアルキルピロリドン類、N−アルキルカプロラクタム類、N−シクロアルキルカプロラクタム類、カプロラクタム類、及びN,N−ジアルキルイミダゾリジノン類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機アミド化合物を配合したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関し、更に詳しくは、流動性と靭性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。
本発明の樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィドの高融点を維持しつつ、ガラス転移温度及び冷結晶化温度(昇温時の結晶化温度)を低下させることができるので、従来より低い金型温度でも結晶化を促進させて成形することが可能であり、しかも強度に優れ、かつ、良好な表面性を有する成形品を与えることができる。また、本発明の樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィドの耐熱性、難燃性、耐薬品性などの諸特性を有することに加えて、溶融流動性、引張伸度、引張強度に優れているため、射出成形品のみならず、不織布やモノフィラメントなどの用途にも好適である。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略記)は、式[−Ar−S−](ただし、−Ar−は、アリーレン基である。)で表されるアリーレンスルフィドの繰り返し単位を主たる構成要素とする芳香族ポリマーであり、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略記)がその代表例である。PASは、一般に、耐熱性、難燃性、耐薬品性、寸法安定性、機械的性質等に優れているため、広範な分野で使用されている。
【0003】
しかしながら、PASには、引張伸度に代表される靭性が低いという欠点がある。PASは、分子量を上げると靭性が改良されるが、同時に溶融粘度も上がるため、精密な成形品、複雑な形状を有する成形品などを、流路が狭い複雑な形状の金型を用いて射出成形することが困難になる。特に、ガラス繊維などの充填剤を多量に配合したPAS樹脂組成物は、機械的性質や寸法安定性、耐熱性、電気的性質などの諸特性が改善されるものの、溶融粘度が極めて高くなるため、溶融流動性が大幅に低下する。したがって、成形時におけるPASの流動性を確保する必要上、その分子量を上げるのには限度があり、靭性を犠牲にせざるを得なかった。
【0004】
また、PASは、一般に、ガラス転移温度(Tg)及び冷結晶化温度(Tc)が高く、例えば、PPSの場合には、示差走査熱量計(DSC)により測定したTgが約90℃で、Tcが約125℃である。そのため、PASを用いて、射出成形により成形品を得る場合、結晶化を促進し、かつ、良好な外観の成形品を得るには、通常120℃以上、多くの場合130℃以上の高温に加熱された金型を用いる必要があった。しかしながら、汎用樹脂を用いた通常の射出成形においては、約100℃程度の金型温度で操作しているため、金型温度を120℃以上の高温にするには、特別な設備や燃料を使用しなければならないといった問題があった。
【0005】
更に、PASの射出成形において、硬度、寸法安定性、及び形状安定性に優れた成形品を作製するには、できるだけ急速に高い結晶化度を達成することが好ましい。しかし、金型温度を比較的高温にして急速に高い結晶化度を達成しても、成形品の金型内での滞留時間が長くなるため、射出成形サイクルを短くして生産性を上げるのには限度があった。
【0006】
従来、PASを高速で結晶化させる技術としては、例えば、モノマー性のカルボン酸エステルを添加する方法(特開昭62−230848号公報)、チオエーテルを添加する方法(特開昭62−230849号公報)、芳香族燐酸エステルを添加する方法(特開昭62−230850号公報、特開平1−225660号公報)などが提案されている。しかしながら、これらの方法では、使用する添加物の耐熱性が乏しく、成形加工時に蒸発ガスまたは分解ガスが発生するため、実用的ではない。
【0007】
PASは、射出成形品の分野のみならず、その優れた諸特性を生かして、高度の耐熱性、難燃性、耐薬品性などが要求される高性能フィルターへの用途展開が期待されている。一般に、高分子材料からなるフィルターとしては、不織布や多孔質体が使用されている。不織布からなる高性能フィルターを得るには、使用する高分子材料自体の諸特性が優れていることに加えて、捕集効率及び圧力損失の観点から、不織布を構成する繊維の繊度が細いことが好ましい。このため、極細繊維からなる不織布を製造することができるメルトブロー法により、PAS不織布を製造することができるならば、高性能フィルターなどの新たな分野での用途展開を図ることができる。
【0008】
従来より、PASをフィルターなどの用途に適用するために、メルトブロー法により極細繊維からなる不織布とする方法について、幾つかの提案がなされている。例えば、特開昭63−315655号公報には、平均繊度0.5デニール以下の繊維からなり、繊維の一部が少なくとも融着または絡合している不織布で、目付変動率が7%以下であるPPSメルトブロー不織布が開示されている。特開平1−229855号公報には、平均繊維径が0.1〜0.8μmのPAS繊維からなり、目付量が5〜500g/m2のPAS不織布が開示されている。
【0009】
しかしながら、これら従来技術により得られたPASメルトブロー不織布は、耐薬品性や寸法安定性を向上させるために、PASの結晶化度を高めると、引張伸度に代表される靭性が低下し、かつ、充分な引張強度を得ることができないという欠点があった。より具体的に、従来のPASメルトブロー不織布には、以下のような問題があった。
メルトブロー法では、一般に、熱可塑性樹脂を溶融して細孔から吐出させ、これを音速域の加熱気体で吹き飛ばして細化繊維化し、移動しつつある多孔ドラムやスクリーン上に捕集して不織布を製造している。溶融樹脂を音速域の加熱気体の作用で高度に細化するには、使用する熱可塑性樹脂の溶融粘度が低いことが必須とされている。したがって、PASを用いて、メルトブロー法により繊度のバラツキの少ない極細繊維からなる不織布を作るには、溶融粘度が小さなPASを用いる必要があった。
【0010】
一方、PASメルトブロー不織布において、PASの優れた特徴である耐薬品性及び寸法安定性を充分に発現させるには、PASの結晶化度を上げることが望ましい。しかしながら、溶融粘度が小さいPASを用いて得られたメルトブロー不織布は、メルトブロー条件や熱処理条件を調整して結晶化度を上げると、靭性が極端に低下し、実用上使用することができないものとなる。これに対して、溶融粘度が高いPASを使用すると、メルトブローによって極細繊維ができないばかりか、繊度のバラツキも大きくなる。メルトブローに際し、PASの見かけの溶融粘度を下げるためにダイ温度を上げると、樹脂の熱劣化によるゲル状物質によりダイが目詰まりを起こし、長時間連続して運転できないという問題が発生する。
【0011】
PASを用いたモノフィラメントが開発されているが、このモノフィラメントにも多くの問題点があった。良好な引張強度及び結節強度を有するモノフィラメントを得るには、高分子量のPASを用いる必要がある。繊維径のバラツキの小さいモノフィラメントを得るには、延伸工程で安定した延伸を行う必要があるため、ある程度高い溶融弾性を有するPASを用いる必要がある。ところが、分子量及び溶融弾性が高いPASを用いると、繊維状に溶融押出する押出工程において、押出機内で充分に溶融されずに押し出されるPASが混在し、これが次の延伸工程で繊維径のバラツキの原因になるという問題があった。PASを押出機内で均一に溶融させるために、押出温度を上げて充分な熱を加えると、PASの一部が熱劣化を起こしてゲル状物が生成し、長時間の連続運転ができないという欠点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、流動性と靭性という相反する特性を両立させたPAS樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、成形加工時に蒸発ガスや分解ガスがほとんど発生することなく、PAS本来の高融点を維持しつつ、ガラス転移温度及び冷結晶化温度を低下させることにより、耐熱性を維持しつつ、結晶化を促進させ、より低い金型温度であっても強度に優れ、かつ、良好な表面性を有する成形品を与えることができるPAS樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、PAS本来の耐熱性、難燃性、耐薬品性などの諸特性を有することに加えて、溶融流動性、引張伸度、引張強度に優れ、射出成形品、不織布、マルチフィラメント、モノフィラメントなどの各種成形品の成形用材料として好適なPAS樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、PASに改質剤として有機アミド化合物を特定の量比で配合することにより、PASの流動性(溶融流動性)と靭性を飛躍的に向上させることができ、更には、PAS本来の高融点を低下させることなく、ガラス転移温度及び冷結晶化温度を低下させることができ、それによって、耐熱性を維持しつつ、結晶化を促進させ、約100℃前後の低い金型温度であっても良好な表面性を有する成形品の得られることを見いだした。
【0014】
本発明のPAS樹脂組成物をメルトブロー不織布の製造に適用した場合、PASが本来有している優れた耐熱性、難燃性、耐薬品性などに加えて、結晶化度を高めた状態でも優れた靭性を有し、引張強度が高く、かつ、繊維径の小さいPASメルトブロー不織布を得ることができる。本発明の溶融流動性に優れたPAS樹脂組成物を用いると、見かけの溶融粘度を下げるため、及び押出機内でのPASの溶融を均一かつ安定させることができるので、熱劣化によるゲル状物質によりダイが目詰まりを起こし、長時間連続して運転できないという問題も解決できる。
【0015】
本発明のPAS樹脂組成物をモノフィラメントの製造に適用した場合、PASが本来有している優れた耐熱性、難燃性、耐薬品性などに加えて、繊維径のバラツキが小さいモノフィラメントを得ることができ、しかも長時間にわたって安定して連続的な製造を行うことができる。本発明のPAS樹脂組成物は、押出機内での分子量の低下を抑制し、かつ、溶融流動性に優れているため、高分子量のPASを用いて、引張強度及び結節強度が改善されたモノフィラメントを得ることができる。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ポリアリーレンスルフィド100重量部に対して、改質剤として、N−アルキルピロリドン類、N−シクロアルキルピロリドン類、N−アルキルカプロラクタム類、N−シクロアルキルカプロラクタム類、カプロラクタム類、及びN,N−ジアルキルイミダゾリジノン類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機アミド化合物0.2〜10重量部を配合してなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤0〜800重量部を更に配合することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
ポリアリーレンスルフィド(PAS)
本発明で使用するPASとは、式[−Ar−S−](ただし、−Ar−は、アリーレン基である。)で表されるアリーレンスルフィドの繰り返し単位を主たる構成要素とする芳香族ポリマーである。[−Ar−S−]を1モル(基本モル)と定義すると、本発明で使用するPASは、この繰り返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含有するポリマーである。
【0018】
アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、置換フェニレン基(置換基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基である。)、p,p′−ジフェニレンスルホン基、p,p′−ビフェニレン基、p,p′−ジフェニレンカルボニル基、ナフチレン基などを挙げることができる。PASとしては、主として同一のアリーレン基を有するポリマーを好ましく用いることができるが、加工性や耐熱性の観点から、2種以上のアリーレン基を含んだコポリマーを用いることもできる。
【0019】
これらのPASの中でも、p−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を主構成要素とするPPSが、加工性に優れ、しかも工業的に入手が容易であることから特に好ましい。この他に、ポリアリーレンケトンスルフィド、ポリアリーレンケトンケトンスルフィドなどを使用することができる。コポリマーの具体例としては、p−フェニレンスルフィドの繰り返し単位とm−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマー、フェニレンスルフィドの繰り返し単位とアリーレンケトンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマー、フェニレンスルフィドの繰り返し単位とアリーレンケトンケトンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマー、フェニレンスルフィドの繰り返し単位とアリーレンスルホンスルフィドの繰り返し単位を有するランダムまたはブロックコポリマーなどを挙げることができる。これらのPASは、結晶性ポリマーであることが好ましい。また、PASは、靭性や強度などの観点から、直鎖状ポリマーであることが好ましい。
【0020】
このようなPASは、極性溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロゲン置換芳香族化合物とを重合反応させる公知の方法(例えば、特公昭63−33775号公報)により得ることができる。
アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムなどを挙げることができる。反応系中で、NaSHとNaOHを反応させることにより生成させた硫化ナトリウムも使用することができる。
【0021】
ジハロゲン置換芳香族化合物としては、例えば、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、p−ジブロムベンゼン、2,6−ジクロロナフタリン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4′−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、p,p′−ジクロロジフェニルエーテル、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、4,4′−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4′−ジクロロジフェニルケトンなどを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
PASに多少の分岐構造または架橋構造を導入するために、1分子当たり3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロゲン置換芳香族化合物を少量併用することができる。ポリハロゲン置換芳香族化合物の好ましい例としては、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリブロモベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリブロモベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼンなどのトリハロゲン置換芳香族化合物、及びこれらのアルキル置換体を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、経済性、反応性、物性などの観点から、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、及び1,2,3−トリクロロベンゼンがより好ましい。
【0023】
極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン、テトラアルキル尿素、ヘキサアルキル燐酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機アミド溶媒が、反応系の安定性が高く、高分子量のポリマーが得やすいので好ましい。
PASの分子量は、特に限定されず、低分子量のものから高分子量のものまで使用することができる。例えば、PPSの場合、溶融粘度(310℃、剪断速度1200/secで測定)が、通常5〜600Pa・s、好ましくは10〜400Pa・s、より好ましくは20〜300Pa・sである。本発明では、比較的高分子量、したがって高溶融粘度のPASを用いても、流動性を改善することができる。ただし、充填剤を高充填する場合には、溶融粘度が比較的小さいPASを用いることが成形性の観点から好ましい。
【0024】
ところで、従来のPASは、重合後の後処理工程において、先ず極性溶媒と分離され、更に、洗浄により極性溶媒が除去されているため、残留する極性溶媒の含有率は、通常0.003重量%以下と微量である。市販のPPS製品中には、50〜100ppm程度のごく微量のNMPが含まれているだけである。その理由は、重合後に、NMPなどの極性溶媒を回収して再利用することに加えて、オリゴマーや未反応モノマー、副生物、不純物などを可能な限り除去して高品質のポリマーを得るために、徹底した洗浄処理が行われるためである。洗浄処理によって、生成PAS中に残留する極性溶媒も除去される。
【0025】
したがって、従来、NMPなどの極性溶媒を、PAS中に比較的多量に残留させることはなかった。もちろん、従来、有機アミド化合物を改質剤としてPASに配合することは行われていなかった。これに対して、本発明のPAS樹脂組成物は、重合後、精製されたPASに、改質剤として有機アミド化合物を添加することにより調製される。
【0026】
有機アミド化合物
本発明で改質剤として使用する有機アミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略記)、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン類またはN−シクロアルキルピロリドン類;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−シクロヘキシルカプロラクタムなどのN−アルキルカプロラクタム類またはN−シクロアルキルカプロラクタム類;ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のN,N−ジアルキルイミダゾリジノン類;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素類;ヘキサメチル燐酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド類;等が挙げられる。これらの有機アミド化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
有機アミド化合物の中でも、N−アルキルピロリドン類、N−シクロアルキルピロリドン類、N−アルキルカプロラクタム類、N−シクロアルキルカプロラクタム類、カプロラクタム類、及びN,N−ジアルキルイミダゾリジノン類が好ましく、N−アルキルピロリドン類、カプロラクタム類、及びN,N−ジアルキルイミダゾリジノン類が特に好ましい。
本発明で改質剤として使用する有機アミド化合物の配合割合は、PAS100重量部に対して、0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部、より好ましくは1〜6重量部である。有機アミド化合物の配合割合が小さ過ぎると、流動性と靭性の改良効果が小さく、ガラス転移温度及び冷結晶化温度の低下効果も小さくなる。有機アミド化合物の配合割合が大き過ぎると、強度が低下したり、ブリードするなどの好ましくない現象が起こるおそれがある。
【0028】
充填剤
本発明における樹脂組成物においては、充填剤は必ずしも必須とされる成分ではないが、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、電気的性質等の諸特性に優れた成形品を得るためには、その目的に応じて各種充填剤を配合することが好ましい。本発明は、充填剤配合の樹脂組成物においても、顕著な効果を奏することができる。
【0029】
充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維などの無機質繊維状物;ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮などの金属繊維状物;ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質;などの繊維状充填剤を挙げることができる。
また、充填剤としては、例えば、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、フェライト、クレー、ガラス粉、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの粒状または粉末充填剤;などが挙げられる。
【0030】
これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。充填剤は、必要に応じて集束剤や表面処理剤により処理されたものであってもよい。集束剤または表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物が挙げられる。これらの化合物は、予め表面処理または集束処理を施してから用いるか、あるいは樹脂組成物調製の際に、同時に添加してもよい。
充填剤の使用割合は、その種類や比重、使用目的、用途などにもよるが、PAS100重量部に対して、通常0〜800重量部、好ましくは5〜700重量部、より好ましくは10〜300重量部である。充填剤の配合割合が小さ過ぎると充填効果が小さく、逆に、過大であると成形性に問題を生じるほか、成形品の機械的強度が低くなることがある。
【0031】
その他の配合剤
本発明の樹脂組成物には、所望によりその他の熱可塑性樹脂を配合することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、PASが溶融加工される高温条件下において安定な熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアルキルアクリレート、ABS樹脂、ポリ塩化ビニルを挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、エポキシ基含有αオレフィン系共重合体などの耐衝撃性改質剤、アミノアルコキシシラン化合物などのシランカップリング剤、エチレングリシジルメタクリレートなどの樹脂改良剤;ペンタエリスリトールテトラステアレートなどの滑剤;熱硬化性樹脂;酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤;ボロンナイトライドなどの核剤;難燃剤;染料や顔料等の着色剤;などを配合することができる。
【0033】
樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、一般に合成樹脂組成物の調製に用いられる設備と方法により調製することができる。すなわち、必要な成分を混合し、1軸または2軸の押出機を使用して混練し、押し出して成形用ペレットとすることができる。必要成分の一部をマスターバッチとして混合し、成形する方法、また、各成分の分散混合を良くするために、使用する原料の一部を粉砕し、粒径を揃えて混合し、溶融押し出しすることなどもできる。
PASは、有機アミド化合物を極性溶媒として用いることにより合成可能であるため、重合後、常法に従って、オリゴマーや未反応モノマー、副生物、不純物などを除去して精製した後、得られた精製PASに、有機アミド化合物を所定の割合になるよう混合してもよい。
【0034】
本発明のPAS樹脂組成物は、溶融流動性と靭性に優れており、しかもPAS本来の高融点を維持しつつ、ガラス転移温度及び冷結晶化温度が適度に低減されているので、低温金型を用いて、充分な強度と靭性を有し、良好な表面性を有する成形品を与えることができる。
また、本発明のPAS樹脂組成物は、PAS本来の耐熱性、難燃性、耐薬品性などの諸特性を有することに加えて、溶融流動性、引張伸度、引張強度に優れているため、不織布やモノフィラメントなどの用途にも好適である。
【0035】
本発明のPAS樹脂組成物を用いて不織布を製造するには、スパンボンド法やメルトブロー法を採用することができ、それによって、極細繊維からなり、繊度のバラツキが小さく、耐熱性、難燃性、耐薬品性、靭性、引張強度、寸法安定性などに優れた不織布を得ることができる。本発明のPAS不織布は、高性能フィルターの用途に好適である。
本発明のPAS樹脂組成物は、常法に従って、モノフィラメントに成形することができる。本発明のPAS樹脂組成物は、溶融流動性に優れているため、高い分子量と溶融弾性を有するPASを用いて、繊維径のバラツキの小さなモノフィラメントを安定的に製造することができる。本発明のPASモノフィラメントは、繊維径のバラツキが小さく、耐熱性、難燃性、耐薬品性、引張強度、結節強度などに優れている。
【0036】
【実施例】
以下に、合成例、実施例、及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
物性の測定方法は、以下に示すとおりである。
(1)溶融粘度
キャピログラフ(東洋精機社製)を用いて、温度310℃、剪断速度1200/secの条件で測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)、冷結晶化温度(Tc)、及び融点(Tm)
溶融押出により作製したペレット状物を310℃でホットプレスした後、急冷して得たシートについて、ガラス転移温度(Tg)、冷結晶化温度(Tc)、及び融点(Tm)を測定した。より具体的には、パーキン・エルマー社製の示差走査熱量計(DSC)を用いて、試料を、窒素雰囲気中、30℃で3分間保持した後、10℃/minの昇温速度で340℃まで昇温し、その際に、Tg、Tc及びTmを測定した。
【0037】
(3)引張り物性(引張強度及び引張伸度)
溶融押出により作製したペレット状物を用いて、射出成形により試験片を作製し、ASTM D638に準拠して、標点間距離50mm、クロスヘッド速度5mm/minで測定した。
(4)重量平均分子量(Mw)
溶融押出により作製したペレット状物を用いて、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(GPC法)により重量平均分子量を求めた。測定条件は、以下の通りである。
インジェクター、ポンプ、カラム(SHODEX AT80 M/S 2本)及び水素炎イオン検出器(FID)を備えた測定装置に、1−クロロナフタレンを0.7ml/分の流速で流しながら、濃度0.05重量%の1−クロロナフタレン溶液に調整した試料を注入し、分析した。分子量の校正は、標準ポリスチレン及びPh−S−(Ph−S)3−Ph(ただし、Phは、フェニル基またはフェニレン基を示す。)で行い、データ処理には、システムインスツルメント社製SIC7000Bを用いた。
【0038】
(5)有機アミド化合物の含有量
溶融押出により作製したペレット状物を、成分濃縮器とピロライザーを装着したガスクロマトグラフィー(パージ・アンド・トラップGC)の濃縮器中で、330℃で15分間処理し、その間に発生する有機アミド化合物及び他のガス成分を−40℃で捕集し、ガスクロマトグラフィー分析により有機アミド化合物を定量した。改質剤として有機アミド化合物を添加した樹脂組成物については、有機アミド化合物の含有量を下一桁まで表示し、有機アミド化合物無添加の樹脂組成物については、有機アミド化合物(重合溶媒として使用したNMP)含有量が微量のため下3桁まで表示した。
(6)低温金型評価
溶融押出により作製したペレット状物を、金型温度105℃にて射出成形して試験片を作製し、得られた試験片を目視で観察して、以下の基準で表面光沢を判定した。
◎:光沢が優れている、
○:光沢が良好である、
×:光沢が劣る。
【0039】
[合成例1]ポリマーAの合成例
重合缶にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)720kgと、46.21重量%の硫化ナトリウム(Na2S)を含む硫化ナトリウム・5水塩420kgとを仕込み、窒素ガスで置換後、撹拌しながら徐々に200℃まで昇温して水158gを溜出させた。このとき、62モルのH2Sが揮散した。上記脱水工程後、重合缶にp−ジクロロベンゼン(以下、「pDCB」と略記)371kgとNMP189kgとを加え、撹拌しながら220℃で4.5時間反応させた。その後、撹拌を続けながら、水49kgを圧入し、255℃に昇温して5時間反応させた。反応終了後、室温付近まで冷却してから、内容物を100メッシュのスクリーンに通して粒状ポリマーを篩分し、アセトン洗2回、さらに水洗3回を行い、洗浄ポリマーを得た。更に、この洗浄ポリマーを3重量%塩化アンモニム水溶液で洗浄した後、水洗を行った。脱水後、回収した粒状ポリフェニレンスルフィド(ポリマーA)を105℃で3時間乾燥した。このようにして得られたポリマーAの収率は92%で、溶融粘度は55Pa・sであった。
【0040】
[合成例2]ポリマーBの合成例
重合缶に合成例1と同じ成分を仕込み、脱水を行ったところ、水160kgと62モルのH2Sが溜出した。次に、pDCB364kgとNMP250kgとを加え、撹拌しながら220℃で4.5時間反応させた。その後、撹拌を続けながら圧入する水量を59kgにした以外は、合成例1と同様に重合反応及び生成ポリマーの後処理を行って、粒状ポリフェニレンスルフィド(ポリマーB)を得た。得られたポリマーBの収率は89%で、溶融粘度は140Pa・sであった。
【0041】
[合成例3]ポリマーCの合成例
重合缶にNMP800kgと46.40重量%のNa2Sを含む硫化ナトリウム・5水塩390kgとを仕込み、合成例1と同様に脱水処理を行ったところ、水147kgと57モルのH2Sが溜出した。次に、重合缶にpDCB339kg、NMP218kg、及び水9.2kgを加え、撹拌しながら220℃で4.5時間反応させた。その後、撹拌を続けながら水70kgを圧入し、255℃に昇温して3時間反応した後、245℃で8時間反応を継続した。反応終了後、合成例1と同様に処理して粒状ポリフェニレンスルフィド(ポリマーC)を回収した。得られたポリマーCの収率は90%で、溶融粘度は236Pa・sであった。
【0042】
[合成例4]ポリマーDの合成例
重合缶にNMP800kgと46.10重量%のNa2Sを含む硫化ナトリウム・5水塩373kgとを仕込み、合成例1と同様に脱水処理を行ったところ、水142kgと54モルのH2Sが溜出した。次に、重合缶にpDCB320kg、1,2,4−トリクロロベンゼン0.79kg、NMP274kg、及び水0.9kgを加え、撹拌しながら220℃で1時間反応させ、次いで、230℃で3時間反応させた。その後、撹拌を続けながら水77kgを圧入し、255℃に昇温して1時間反応した後、245℃で3時間反応を継続した。反応終了後、室温付近まで冷却してから、内容物を100メッシュのスクリーンに通して粒状ポリマーを篩分し、アセトン洗2回、さらに水洗4回行い、洗浄ポリフェニレンスルフィド(ポリマーD)を得た。脱水後、回収した粒状ポリマーは、105℃で3時間乾燥した。得られたポリマーDの収率は90%で、溶融粘度は517Pa・sであった。
【0043】
[合成例5]ポリマーEの合成例
合成例1と同じ成分を仕込み、脱水を行ったところ、水157kgと62モルのH2Sが溜出した。次に、pDCB374kgとNMP189kgとを加えた以外は、合成例1と同様に重合反応及び生成ポリマーの後処理を行って、粒状ポリフェニレンスルフィド(ポリマーE)を得た。得られたポリマーEの収率は93%で、溶融粘度は28Pa・sであった。
【0044】
[合成例6]ポリマーFの合成例
pDCBの使用量を360kgとしたこと以外は、合成例2と同様に脱水工程及び重合反応を行い、反応終了後、室温付近まで冷却してから、内容物を100メッシュのスクリーンに通して粒状ポリマーを篩分し、アセトン洗2回、更に水洗4回行い、ポリフェニレンスルフィド(ポリマーF)を得た。脱水後、回収した粒状ポリマーを105℃で3時間乾燥した。得られたポリマーFの収率は89%で、溶融粘度は210Pa・sであった。
【0045】
[実施例1]
ポリマーA98重量%とNMP2重量%をヘンシェルミキサーで均一にドライブレンドした後、45mmφの二軸混練押出機(池貝鉄鋼社製PCM−45)へ供給し、シリンダー温度260〜330℃にて混練を行い、ペレット状物を作製した。得られたペレット状物を150℃で6時間乾燥した後、射出成型機(東芝機械社製IS−75)で、金型温度145℃、シリンダー温度300〜320℃で引張り試験片を作製した。樹脂組成物の組成及び物性の測定結果を表1に示した。
【0046】
[実施例2〜7、及び比較例1〜4]
表1に示す量比の各樹脂成分とNMPを用いたこと以外は、実施例1と同様にして各ペレット状物を作製し、引張り試験片を作製した。各樹脂組成物の組成及び物性の測定結果を表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
[実施例8]
合成例1で得られたポリマーA59重量%、NMP1重量%、及びガラス短繊維(日本電気ガラス社製、直径13μm)40重量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状物を作製し、引張り試験片を作製した。更に、低温金型での特性を見るために金型温度を105℃として、同様に射出成形を行い、作製した試験片を目視で観察し、表面光沢を判定した。樹脂組成物の組成及び物性の測定結果を表2に示した。
【0049】
[実施例9〜11、及び比較例5〜7]
表2に示す量比の各樹脂成分とNMPとガラス短繊維を用いたこと以外は、実施例8と同様にして各ペレット状物を作製し、引張り試験片を作製した。各樹脂組成物の組成及び物性の測定結果を表2に示した。
【0050】
【表2】
(*1)ガラス短繊維(日本電気ガラス社製、直径13μm)
【0051】
[実施例12]
ポリマーAをポリマーBに、NMPをε−カプロラクタムに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状物を作製し、引張り試験片を作製した。樹脂組成物の組成及び物性の測定結果を表3に示した。
【0052】
[実施例13]
ポリマーAをポリマーBに、NMPを1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にしてペレット状物を作製し、引張り試験片を作製した。樹脂組成物の組成及び物性の測定結果を表3に示した。
【0053】
【表3】
【0054】
[実施例14]
合成例6で得られたポリマーF98重量%とε−カプロラクタム2重量%をヘンシェルミキサーで均一にドライブレンドした後、45mmφの二軸混練押出機(池貝鉄鋼社製PCM−45)へ供給し、シリンダー温度260℃〜330℃にて混練を行い、ペレット状物を得た。
得られたペレット状物を150℃で6時間乾燥した後、ノズル径0.3mm、ノズル数300個のメルトブローダイを装着した40mmφの単軸押出機に供給し、メルトブローダイ通過の際の樹脂温度(紡糸温度)320℃、吐出量0.1g/min/ノズル、ガス温度350℃、エア量3Nm3/minの条件でメルトブローして不織布を作成した。この結果、平均繊度3.5μm、目付量150g/m2で、ショットの発生のないPPSメルトブロー不織布が得られた。
この不織布を150℃で5時間熱処理し、幅2cmの短冊状に切り出し、測定温度23℃、標点間距離50mm、クロスヘッド速度5mm/minで引張り試験を行い、引張り強度を求めたところ、1.3kg/cmであった。
【0055】
[比較例8]
合成例6で得られたポリマーFをヘンシェルミキサーで均一にドライブレンドした後、45mmφの二軸混練押出機(池貝鉄鋼社製PCM−45)へ供給し、シリンダー温度260℃〜330℃にて混練を行い、ペレット状物を得た。得られたペレット状物を150℃で6時間乾燥した後、ノズル径0.3mm、ノズル数300個のメルトブローダイを装着した40mmφの単軸押出機に供給し、メルトブローダイ通過の際の樹脂温度(紡糸温度)320℃、吐出量0.1g/min/ノズル、ガス温度350℃、エア量3Nm3/minの条件でメルトブローして不織布を作成した。この結果、平均繊度8.5μm、目付量150g/m2で、ショットの発生のないPPSメルトブロー不織布が得られたが、平均繊度が大きすぎ、フィルター用途には、用いることができないものであった。
この不織布を150℃で5時間熱処理し、幅2cmの短冊状に切り出し、測定温度23℃、標点間距離50mm、クロスヘッド速度5mm/minで引張り試験を行い、引張り強度を求めたところ、1.0kg/cmであった。
【0056】
[実施例15]
合成例4で得られたポリマーD98重量%とε−カプロラクタム2重量%を、ヘンシェルミキサーで均一にドライブレンドした後、45mmφの二軸混練押出機(池貝鉄鋼社製PCM−45)へ供給し、シリンダー温度260℃〜330℃にて混練を行い、ペレット状物を得た。
得られたペレット状物を150℃で6時間乾燥した後、ノズル孔径2.8mmのノズル装着した25mmφの単軸押出機に供給し、押出温度310℃で繊維状に溶融押出し、90℃の温水で冷却した後、130℃に調整した湿熱バスで4倍に1段延伸し、180℃に調整した湿熱バスで1.5倍に2段延伸し、さらに、240℃に調整した乾湿バスで約6秒間、0.98倍に弛緩処理して、繊維径約250μmのPAS繊維を得た。繊維製造中、30時間安定した繊維が得られ、繊維径のバラツキもほとんどなく、収率は98%以上であった。
【0057】
[比較例9]
合成例4で得られたポリマーDを、45mmφの二軸押出機(池貝鉄鋼社製PCM−45)へ供給し、シリンダー温度260℃〜330℃にて混練を行い、ペレット状物を得た。得られたペレット状物を150℃で6時間乾燥した後、実施例15と同様な条件で繊維を作成した。得られた繊維の繊維径のバラツキが大きく、収率は60%であった。
【0058】
[比較例10]
合成例4で得られたポリマーDを、45mmφの二軸混練押出機(池貝鉄鋼社製PCM−45)へ供給し、シリンダー温度260℃〜330℃にて混練を行い、ペレット状物を得た。得られたペレット状物を150℃で6時間乾燥した後、実施例15と同様の単軸押出機に供給し、押出温度340℃で繊維状に溶融押出し、90℃の温水で冷却した後、130℃に調整した湿熱バスで4倍に1段延伸し、180℃に調整した湿熱バスで1.5倍に2段延伸し、さらに240℃に調整した乾湿バスで約6秒間、0.98倍に弛緩処理して、繊維径約250μmのPAS繊維を得た。3時間繊維を製造した後、繊維径のバラツキが大きくなり、長時間安定した繊維を得ることができなかった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、流動性、機械的性質、成形時の結晶化促進効果が著しく改善されたPAS樹脂組成物が提供される。より具体的には、本発明により、次の如き利点が得られる。
(1)本発明のPAS樹脂組成物は、溶融流動性の改善により、複雑な形状の成形品に容易に成形することができる。また、その成形品は、機械的性質に優れるため、軽量化が図れる。
(2)本発明のPAS樹脂組成物は、溶融流動性の改善により、押出成形時に押出機の負荷を低減することができ、安定した押出成形を行うことができる。
(3)本発明のPAS樹脂組成物は、通常より20〜50℃低い金型温度で射出成形しても、表面光沢が良好で、高い結晶化度の成形品が得られる。
(4)本発明のPAS樹脂組成物を射出成形すると、成形サイクルが短くなり、生産性が向上し、コストの低減を達成することができる。
(5)本発明のPAS樹脂組成物は、熱安定性に優れ、添加剤に起因する蒸発ガスや分解ガスが殆ど発生せず、これらによる障害がほとんどない。
(6)本発明のPAS樹脂組成物を用いて、極細繊維からなり、繊度のバラツキが小さく、耐熱性、難燃性、耐薬品性、靭性、引張強度、寸法安定性などに優れた不織布を得ることができる。このPAS不織布は、高性能フィルターの用途に好適である。
(7)本発明のPAS樹脂組成物を用いて、繊維径のバラツキの小さなモノフィラメントを安定的に製造することができる。このPASモノフィラメントは、繊維径のバラツキが小さく、耐熱性、難燃性、耐薬品性、引張強度、結節強度などに優れている。
Claims (3)
- ポリアリーレンスルフィド100重量部に対して、改質剤として、N−アルキルピロリドン類、N−シクロアルキルピロリドン類、N−アルキルカプロラクタム類、N−シクロアルキルカプロラクタム類、カプロラクタム類、及びN,N−ジアルキルイミダゾリジノン類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機アミド化合物0.2〜10重量部を配合してなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- ポリアリーレンスルフィド100重量部に対して、充填剤0〜800重量部を更に配合してなる請求項1記載の樹脂組成物。
- ポリアリーレンスルフィドが、ポリフェニレンスルフィドである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
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