JP3965468B2 - 静電チャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に半導体ウエハや液晶基板等のウエハを静電吸着力によって吸着保持する静電チャックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造工程において、シリコンウエハ等の半導体ウエハ(以下、単にウエハという)に微細加工を施すエッチング工程、ウエハに薄膜等を形成する成膜工程、あるいは各種処理工程間への搬送等においては、ウエハを高精度に保持する必要があることから静電チャックが使用されている。
【0003】
この種の静電チャックは、板状セラミックス体の一方の主面(最も広い表面)を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミックス体中の載置面側に内部電極を備えたもので、ウエハを載置面に載せ、ウエハと内部電極との間に静電吸着力を発現させることによりウエハを載置面に強制的に吸着固定するようになっていた。
【0004】
ところで、静電吸着力には、誘電分極によるクーロン力と微小な漏れ電流によるジョンソン・ラーベック力があり、高い吸着力が得られるジョンソン・ラーベック力を発現させることが望まれている。
【0005】
このジョンソン・ラーベック力を得るには、ウエハ載置面と内部電極との間の絶縁層の体積固有抵抗値が使用温度雰囲気下において、1×108Ω・cm程度から1×1012Ω・cm程度の範囲にあることが必要であり、このジョンソン・ラーベック力を発現させるために、載置面と内部電極との間にある絶縁層を、遷移金属がほぼ均一に含有した低抵抗アルミナ質焼結体により形成したものが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された静電チャックは、遷移金属の添加量を制御することにより、載置面と内部電極との間にある絶縁層の体積固有抵抗値を制御するとしているが、主成分であるアルミナに遷移金属を添加した原料を用いて遷移金属がほぼ均一に含有したアルミナ質焼結体を得る事は非常に難しく、抵抗値が大きくばらついたり、収縮率が変化して所望の大きさの焼結体が得られないといった課題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示された静電チャックは、載置面と内部電極との間にある絶縁層中に内部電極の導体成分を分散させることにより、250℃〜450℃の温度範囲において、上記セラミック部の抵抗値が、1×109Ω・cm〜1×1011Ω・cmの範囲にある静電チャックが提案されている。
【0008】
更に、特許文献3では、150℃〜500℃という広い温度範囲において、上記載置面と内部電極との間の絶縁層として、炭素を含有する窒化アルミニウム質焼結体により形成し、上記載置面におけるビッカース硬度(Hv)が800〜1100となるようにした静電チャックが提案されている。
【0009】
また、静電チャックは窒化アルミニウム質焼結体に金属製の基盤を接着して基盤内部にガスを流したり、高温に加熱された状態でウエハー等を処理するため、窒化アルミニウム質焼結体自体に応力がかかる状態で使用される場合が多く、より高強度の窒化アルミニウム質焼結体が望まれており、特許文献4には、機械的強度とその信頼性の優れた窒化アルミニウム質焼結体及びその製造方法が提案されている。
【0010】
【特許文献1】
特公平6−97675号公報
【特許文献2】
特開2000−77508号公報
【特許文献3】
特開2002−110773号公報
【特許文献4】
特開2000−327430号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、ウエハ上に形成する回路の微小化が進み、より精度の高いウエハの固定が望まれているが、特許文献2に開示した静電チャックでは、載置面が高硬度のセラミックからなるため、ウエハの脱着時において、載置面の磨耗は極めて少ないものの、載置面と摺動するウエハの磨耗が大きく、パーティクルを発生させるため、このパーティクルが載置面に付着すると、次のウエハを吸着固定する際、ウエハと載置面との間にパーティクルが介在することになり、ウエハを高精度に固定することができないといった課題があった。
【0012】
即ち、ウエハを静電吸着力によって載置面に吸着させる際、高硬度のセラミックからなる載置面上を、硬度の小さいウエハが高い静電吸着力によって滑り合わされる状態となるため、載置面を平坦に仕上げたとしてもウエハを引っかき、ウエハを磨耗させていた。
【0013】
更に、特許文献4に開示した窒化アルミニウム質焼結体及びその製造方法では、任意の切断面における粒界相結晶粒子の累積値75%粒子径と窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%粒子径との比が0.5〜1.5であることを特徴とする窒化アルミニウム質焼結体が提案されているが、この製造方法は、焼結助剤の添加量により粒界相結晶粒子の累積値75%粒子径と窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%粒子径との比を制御するため、窒化アルミニウム結晶粒子及び粒界相の粒子径ができるだけ等しいことが望ましく、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤の混合粉末の平均粒径比を1.1〜2の狭い範囲に調整する必要があり、焼成時の温度分布も非常に狭い範囲とする必要があることから、テストピースなど形状の小さい製品に対しては有効と言えるが、8インチや12インチ、更には18インチの静電チャックといった大きな製品の端部から中心部まで焼結助剤の添加量により粒界相結晶粒子の累積値75%粒子径と窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%粒子径との比を制御することは極めて実効性が少ないと言える。
【0014】
更に、近年の半導体産業の趨勢として、扱うウエハの大口径化がある。近年までは8インチのウエハが主流であったが、最近では12インチまで拡大してきている。将来的には18インチまで拡大する可能性があり、ウエハの大口径化のためにはウエハをプロセスする装置も大型化しなければならず、大型の静電チャックが必要となってくる。大型化した静電チャックではウエハWの面内温度差が大きくなるとの課題があった。
【0015】
本発明の目的は、ジョンソン・ラーベック効果を利用した高い静電吸着力でもってウエハを載置面上に強固に吸着固定することができるとともに、ウエハの脱着を繰り返したとしても載置面及びウエハを磨耗させることがなく、パーティクルの発生が極めて少ない静電チャックであって、更に12インチや18インチのウエハの加工プロセスに必要な面内均熱性を備えた静電チャックを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、板状セラミックス体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミックス体中に内部電極を備えた静電チャックにおいて、上記板状セラミックス体は、希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物を酸化物換算で1〜20重量%含有し、上記化合物と結合している酸素量を差し引いた酸素量が0.5〜1.5重量%である窒化アルミニウム質焼結体からなり、相対密度が97%以上であり、上記板状セラミックス体の載置面におけるビッカース硬度(Hv)が800〜1100であり、更に窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値が1.0〜5.0であるとともに、上記板状セラミックス体の25℃での体積固有抵抗値が1×10 8 Ω・cm〜1×10 12 Ω・cmであることを特徴とする。
【0017】
また、上記板状セラミックス体中に加熱用の内部電極を備え、上記板状セラミックス体の常温における熱伝導率が40W/(m・K)以上であるとともに、上記板状セラミックス体を1800℃以上で焼成したことを特徴とする。
【0018】
また、上記板状セラミックス体の焼結助剤がCe元素を含む化合物からなり、CeO2換算で1〜20重量%含むことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1(a)は本発明の1つの例である静電チャック1をベース基体8に固定した状態を示す斜視図、図1(b)は(a)のX−X線断面図である。この静電チャック1は、円盤状をした板状セラミックス体2の一方の主面を、ウエハWを載せる載置面3とするとともに、上記板状セラミックス体2中の載置面3の近傍には静電吸着用の内部電極4を備え、上記板状セラミックス体2中の他方の主面近傍には加熱用の内部電極5を備えている。
【0021】
上記静電吸着用の内部電極4は、図2に示すように2つの半円をした導体層4aから構成され配置してある。また、上記加熱用の内部電極5は、図3に示すように略同心円状に配置された円弧状の帯状導体層5aと、隣接する円弧状の帯状導体層5a同士を接続する直線状の帯状導体層5bとから成る。
【0022】
なお、上記静電吸着用の内部電極4を形成する2つの導体層4aにはそれぞれ給電端子6が電気的に接続してあり、また、加熱用の内部電極5を形成する帯状導体層5bにはそれぞれ給電端子7が電気的に接続している。
【0023】
また、上記静電チャック1の下面には、金属製のベース基体8を取着してあり、ヒートシンクやプラズマ電極として利用できる。
【0024】
また、図1(a)、(b)に示す板状セラミックス体2は、絶縁性の窒化アルミニウム質焼結体により成る。この板状セラミックス体2の上部の絶縁層2aは、静電吸着力に影響を与える重要な部分であり、通常の厚みは50〜1500μmであり、好ましくは100〜1000μmに設定されている。50μm未満だと膜厚が薄すぎるため、充分な耐電圧が得られず、シリコンウエハWを載置し吸着した際に絶縁破壊を起こす可能性がある。一方、1500μmを超えるとシリコンウエハWと内部電極4との距離が大きくなるため、吸着力が小さくなる。
【0025】
本発明の静電チャック1は、上記板状セラミックス体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミックス体中に内部電極を備えた静電チャックにおいて、上記板状セラミックス体は、希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物を酸化物換算で1〜20重量%含有し、前記化合物と結合している酸素量を差し引いた酸素量が0.5〜1.5重量%である窒化アルミニウム質焼結体からなり、相対密度が97%以上であり、上記板状セラミックス体の載置面におけるビッカース硬度(Hv)が800〜1100であり、更に窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値が1.0〜5.0であることを特徴とする。
【0026】
本発明では、上記板状セラミックス体2の希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物を酸化物換算での含有量を1〜20重量%の範囲とする。
【0027】
その理由は、希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物を酸化物換算で1重量%未満とすると、生成される希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素とアルミニウムとからなる複合化合物相の量が少ないため、窒化アルミニウム質焼結体の体積固有抵抗値を1×108Ω・cm程度から1×1012Ω・cm程度の範囲に制御することが困難になり、また、焼結が進行しにくいため、焼結体中の窒化アルミニウム結晶粒子に不純物酸素が残存し、高熱伝導率を持つ焼結体が得られにくくなるからである。
【0028】
一方、希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物を酸化物換算で20重量%を超えると希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素とアルミニウムからなる複合化合物相の生成量が多くなり、窒化アルミニウム質焼結体の強度及び熱伝導率が小さくなるからである。更に、窒化アルミニウム質焼結体のビッカース硬度が小さくなるため、パーティクルが発生しやすく、このパーティクルが上記載置面3に付着すると、ウエハWを吸着固定する際に高精度に固定することができなくなるからである。
【0029】
希土類元素やアルカリ土類金属元素からなる化合物は、窒化アルミニウム粉末と伴に希土類元素やアルカリ土類金属元素の酸化物や炭酸塩や窒化物として添加することが好ましい。前記の酸化物や炭酸塩や窒化物の例としてCeO2、Y2O3、Er2O3やCaCO3やCeN、CeONが挙げられる。
【0030】
また、希土類元素やアルカリ土類金属元素とアルミニウムからなる複合化合物相は、希土類金属元素の窒化物、酸化物、酸窒化物と窒化アルミニウムが焼成により反応して窒化アルミニウム結晶以外の結晶として存在する。
【0031】
特に、希土類元素としてセリウムを使うとCeAlO3相を生成しCeAlO3相は導電性を示すことから、この相を絶縁材料である窒化アルミニウムの粒子間、すなわち窒化アルミニウム結晶以外の結晶として連続的に存在させることにより導電性を図ることができ、窒化アルミニウム質焼結体の体積固有抵抗値を小さくさせることができる。
【0032】
また、本発明では、上記板状セラミックス体2が、希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物と結合している酸素量を差し引いた酸素量を0.5〜1.5重量%の範囲とする。
【0033】
その理由は、酸素量が0.5重量%未満では相対密度が97%未満となるためパーティクルが発生しやすく、このパーティクルが上記載置面3に付着すると、ウエハを吸着固定する際に高精度に固定することができないからである。一方、酸素量が1.5重量%を越えると、酸素が粒子境界に偏析して粒子境界の熱伝導率が低下し、熱抵抗が生じる為、窒化アルミニウム質焼結体全体の熱伝導率が小さくなり均熱性も低下するからである。
【0034】
また、本発明の板状セラミックス体2の相対密度が97%以上とする。その理由は、相対密度が97%未満でパーティクルが発生しやすく、このパーティクルが上記載置面3に付着すると、ウエハを吸着固定する際に高精度に固定することができないからであり、さらに、気孔数が多いため緻密な焼結体が得られず耐食性や耐磨耗性が低下するからである。
【0035】
また、本発明では、板状セラミックス体2のビッカース硬度(Hv)が800〜1100の範囲とする。その理由は、ビッカース硬度が800未満だと、載置面3を形成する窒化アルミニウム質焼結体そのものの焼結が不十分となり、脱粒等によるパーティクルが発生しやすく、このパーティクルが上記載置面3に付着すると、ウエハWを吸着固定する際に高精度に固定することができないからであり、一方、ビッカース硬度が1100を越えるとウエハの脱着時において載置面の磨耗は極めて少ないものの、載置面3と摺動するウエハの磨耗が多くパーティクルを発生させるため、このパーティクルが上記載置面3に付着すると、ウエハWを吸着固定する際に高精度に固定することができないからである。
【0036】
また、本発明では、窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値Rが1.0〜5.0の範囲とする。
【0037】
その理由は、窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値が5.0を超えると、載置面3を形成する窒化アルミニウム質焼結体の脱粒によるパーティクルが発生しやすく、このパーティクルが上記載置面3に付着すると、ウエハWを吸着固定する際に高精度に固定することができなくなる。
【0038】
また、窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値が1.0未満ではウエハWの摩耗が大きくなり、ウエハWの脱着時において載置面の磨耗は極めて少ないものの、載置面と摺動するウエハWの磨耗が多くパーティクルを発生させるため、このパーティクルが上記載置面3に付着すると、ウエハを吸着固定する際に高精度に固定することができなくなる。
【0039】
パーティクルの発生には窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値がパーティクルの発生に大きく関与しているからである。窒化アルミニウムの結晶は元来硬質粒子であり、ウエハWを摩耗させてパーティクルを発生させやすい。窒化アルミニウム結晶以外の結晶は窒化アルミニウム結晶よりも硬度が小さいため、緩衝剤として働き、ウエハWの摩耗を低減する。しかしながら、窒化アルミニウム結晶以外の結晶が大きすぎると窒化アルミニウム結晶以外の結晶自体が脱粒しやすくなる。
【0040】
尚、窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径と窒化アルミニウム結晶の最大粒径を測定する方法として、窒化アルミニウム質焼結体の断面を表面粗さRmax0.1μm以下の表面に仕上げて、中心部、外周部それぞれ3ヶ所をBEM(Back−scattering Electron Microscope)で1000倍に拡大して組織を観察した際に、1ヶ所につき0.01平方メートルの範囲内にある窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径と、窒化アルミニウム結晶の最大粒径をそれぞれ測定する。そして、中心部、外周部それぞれ3ヶ所からそれぞれ得られた窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径の平均値と、同様に窒化アルミニウム結晶の最大粒径の平均値を算出した。そして、上記の窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径の平均値を窒化アルミニウム結晶の最大粒径の平均値で除した値をRとした。
【0041】
窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値Rは、1850℃焼成時の保持時間によって制御できる。保持時間が0.5時間未満では、窒化アルミニウム結晶以外の結晶の拡散が十分でなく、かつ窒化アルミニウム結晶が成長していないため、Rは5以上となる。0.5〜3時間では、Rの値は1〜5の間で推移し、3時間を超えるとRは1未満となる。
【0042】
尚、特許文献4に記載の窒化アルミニウムは、結晶の最大粒径には言及していないが、粒界相結晶粒子の累積値75%粒子径と窒化アルミニウム結晶粒子の累積値50%結晶粒子径との比が0.5〜1.5であることから、本発明とは構成が異なり、窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値は1.0よりも小さくなっているものと推察できる。
【0043】
本発明の静電チャック1によれば、ウエハWの脱着時に、シリコンやガリウム砒素等からなるウエハWが載置面3と摺り合わされたとしても、載置面3の硬度をウエハWの硬度に近似させることができるため、載置面3の磨耗を抑えつつ、ウエハWの磨耗も低減することができ、その結果、パーティクルの発生を大幅に低減し、載置面3へのパーティクルの付着を抑制することができる。
【0044】
また、各給電端子6より静電吸着用の内部電極4を構成する2つの導体層4a間に直流電圧を印加することにより、ウエハWと内部電極4との間にジョンソン・ラーベック力による静電吸着力を発現させることができ、ウエハWを載置面3に強固に吸着固定させることができる。
【0045】
かくして、本発明の静電チャック1を用いれば、ウエハWを載置面3上に精度良く固定することができるため、成膜工程では均一な厚みの膜をウエハWの上に被着することができ、また、エッチング工程では、所定の寸法精度に微細加工を施すことが可能となる。
【0046】
また本発明は、上記板状セラミックス体2中に加熱用の内部電極5を備え、上記板状セラミックス体2の常温における熱伝導率が40W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0047】
上記板状セラミックス体2中に加熱用の内部電極5を備えることで、ウェハWを加熱することができる。そして板状セラミックス体2の常温における熱伝導率が40W/(m・K)未満では12インチや18インチのウエハを加工処理する際に必要な200℃においてレンジ10℃のウェハW面内の均熱性が得られないからである。上記板状セラミックス体2として、セラミックスの中でも大きな熱伝導率を有する窒化アルミニウム質焼結体により形成すると、12インチや18インチのウエハをプロセスする際に必要なウェハW面内の均熱性が得られる。
【0048】
また、成膜工程やエッチング工程におけるスループットを向上させることができるとともに、載置面3の温度分布を均一にすることができるため、成膜工程では、ウエハ上に均質な膜を被着することができ、また、エッチング工程では所定の深さに微細加工することができる。
【0049】
しかも、窒化アルミニウム質焼結体は、成膜ガスやエッチングガス等に用いられる弗素系ガスや塩素系ガス等のプロセスガスに対する耐食性にも優れることから、腐食磨耗によるパーティクルの発生も低減することができる。
【0050】
次に、本発明の具体的な製造方法について説明する。
【0051】
静電チャック1を製造するには、主成分であるAlN粉末に対し酸素を含有させ、必要に応じて希土類酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び炭酸塩などの焼結助剤を添加する。特にCeの窒化物、酸化物、酸窒化物を添加し、バインダー及び溶媒を添加混合して泥奬を製作し、ドクターブレード法等のテープ成形法にて窒化アルミニウムグリーンシート9を複数枚形成する。酸素の含有方法としては、出発原料であるAlN粉末の酸素含有量を0.5〜1.5重量%とするか、AlN粉末の酸素含有量が0.5〜1.5重量%に満たない場合は酸素含有量が0.5〜1.5重量%となるようにAl2O3を添加しても良い。
【0052】
そして、一つの窒化アルミニウムグリーンシート9に静電吸着用の内部電極4をなす導体ペーストを図2に示すパターン形状に敷設するとともに、別の窒化アルミニウムグリーンシート9に加熱用の内部電極5をなす導体ペーストを、図3に示すパターン形状に敷設する。
【0053】
この時、少なくとも静電吸着用の内部電極4をなす導体ペースト11には、WCやTiC等の金属炭化物を主体とする導体ペーストを用いる。なお、加熱用の内部電極5をなす導体ペースト12には、静電吸着用の内部電極4と同様に、WCやTiC等の金属炭化物を主体とする導体ペースト、あるいはWやMo等の金属を主体とする導体ペーストを用いれば良い。
【0054】
次いで、図4に示すように、各窒化アルミニウムグリーンシート9を溶剤とバインダーからなる密着液10を介して所定の順序で積み重ね、圧力を加えながら熱圧着することにより窒化アルミニウムグリーンシート積層体を製作する。この時、必要に応じて切削加工を施してもよい。
【0055】
しかる後、窒化アルミニウムグリーンシート積層体に脱脂処理を施した後、窒素雰囲気や不活性ガス雰囲気下で焼成するのであるが、ここで焼成温度は1800℃以上、好ましくは1850℃以上とする。
【0056】
上述した条件にて焼成することにより、静電吸着用の内部電極4と加熱用の内部電極5がそれぞれ埋設された板状セラミックス体2を製作することができる。
【0057】
次に、得られた板状セラミックス体2において、内部電極4が埋設されている側の表面に研削加工を施して内部電極4から載置面3までの距離を50〜1500μmとし、さらに載置面3を算術平均粗さ(Ra)で0.5μm以下に研磨することによりウエハWを載せる載置面3を形成するとともに、加熱用の内部電極5が埋設されている側の表面に、静電吸着用の内部電極4及び加熱用の内部電極5と連通する穴をそれぞれ穿孔し、各穴に給電端子6、7を挿入してロウ付けすることにより得ることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態では、静電チャック1を構成する板状セラミックス体2が焼結にて一体的に形成され、各板状セラミックス体2中に静電吸着用の内部電極4を埋設した例を示したが、板状セラミックス体2が2つの部材から構成されたものでも良く、例えば、図5に示すように、板状セラミックス体2を、ウエハWの載置面3と静電吸着用の内部電極4との間にある絶縁層2aと、それ以外のセラミック部2bとに分割し、両者を接着やロウ付け等にて接合したものでも良く、この場合、上記絶縁層2aは、絶縁層2aとなる窒化アルミニウムグリーンシート9上に、静電吸着用の内部電極4となるWCやTiC等の金属炭化物を主体とする導体ペーストを印刷した状態で、1800℃以上の温度で同時焼成することにより、絶縁層2a上に静電吸着用の内部電極が一体的に形成された窒化アルミニウム質焼結体により形成すれば良い。
【0059】
また、本発明は上記実施形態に示したものだけに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で改良や変更したものでも良いことは言うまでもない。
【0060】
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明の方法を具体的に説明するための実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における各種物性値の測定は次の方法により行った。
【0061】
1)窒化アルミニウム質焼結体の酸素含有量
窒化アルミニウム質焼結体からなる板状セラミックス体2から3×4×40mmの試験片を切り出し、窒化珪素製乳鉢で200Meshアンダーまで粉砕し、LECO社製酸素分析機にて酸素量を測定した。
【0062】
2)相対密度
窒化アルミニウム質焼結体からなる板状セラミックス体2から3×4×40mmの試験片を切り出し、アルキメデス法で求めた嵩比重の理論密度に対する比である相対密度を算出した。
【0063】
3)熱伝導率
窒化アルミニウム質焼結体からなる板状セラミックス体2からφ10×2tの試験片を切り出し、レーザーフラッシュ法により測定した。
【0064】
4)ビッカース硬度(Hv)
載置面3のビッカース硬度はAKASHI製作所製のビッカース硬度計を用い、1kg加重を15秒間加えた後の圧痕の長さを測定し、JISに定められたビッカース硬度測定式から硬度を算出した。
【0065】
5)ウエハWに付着するパーティクル数
静電チャック1の静電吸着用の内部電極4に500Vの直流電圧を印加して12インチのシリコンウエハWを吸着させた後、ウエハWに付着する0.3μm以上のパーティクル数をTENKOR社製のウエハーパーティクルカウンタ(機種名:SP1)で測定した。このパーティクルカウンタは、アルゴンイオンレーザを用いてウエハW表面の異物等を検出し、画像処理するもので、半導体製造プロセスにおいて広く用いられている装置である。
【0066】
以下、図1に示す本発明の静電チャック1の具体例を示す。
【0067】
純度99%、平均粒径1.2μmのAlN粉末に、焼結助剤としてCeO2を15重量%添加した。更に有機バインダーと溶媒を加えて泥奬を作製し、ドクターブレード法にて厚さ約0.5mmの窒化アルミニウムグリーンシート9を複数枚製作した。このうち一枚の窒化アルミニウムグリーンシート9には、図2に示すようなパターン形状となるように、導体ペーストを静電吸着用の内部電極4の形状にスクリーン印刷した。また、もう一枚の窒化アルミニウムグリーンシート9には、図3に示すようなパターン形状となるように、加熱用の内部電極5となる導体ペーストをそれぞれスクリーン印刷法にて敷設した。
【0068】
上記静電吸着用の内部電極4となる導体ペースト11には、WC粉末とAlN粉末とを混合して粘度調整した導体ペーストを用いた。また、加熱用の内部電極5となる導体ペースト12は、タングステン粉末とAlN粉末とを混合して粘度を調整した導体ペーストを用いた。
【0069】
そして、各窒化アルミニウムグリーンシート9を所定の順序で積み重ね、50℃で、4.9kPaの圧力で熱圧着することにより窒化アルミニウムグリーンシート積層体を形成し、切削加工を施して円盤状に形成した。
【0070】
次いで、窒化アルミニウムグリーンシート積層体を真空脱脂した後、窒素雰囲気下で1850℃の温度で焼成することにより、静電吸着用の内部電極4と加熱用の内部電極5がそれぞれ埋設された窒化アルミニウム質焼結体からなる板状セラミックス体2を製作した。
【0071】
しかる後、得られた板状セラミックス体2に研削加工を施して、外形200mm、板厚9mmで、載置面3から内部電極4までの距離が1200μmとなるように研削加工した後、上記載置面3にラップ加工を施し、その表面粗さを算術平均粗さ(Ra)で0.2μmに仕上げて載置面3を形成するとともに、載置面3と反対側の表面に、静電吸着用の内部電極4と加熱用の内部電極5とそれぞれ連通する穴を穿孔し、各穴に給電端子6、7を挿入してロウ付けすることにより静電チャック1を得た。
【0072】
尚、試料No.1は上記に説明した方法で作製したが、試料No.2〜7は焼結助剤の添加量を変えた点を除き試料No.1と同様の方法で作製した。
【0073】
試料No.8〜11は酸素含有量が0.4重量%であるAlN粉末にAl2O3をそれぞれ0.18重量%、1.11重量%、2.05重量%、2.25重量%添加することにより、希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物と結合している酸素量を差し引いた酸素量が0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、1.6重量%となるように調整した。
【0074】
試料No.14、試料No.15は窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値Rを変えるため、焼結時の保持時間をこれまでの0.5〜3時間を5時間、1時間として値Rを変えた試料を作製した。それ以外の作製工程は試料No.1と同様の方法とした。
【0075】
試料No.17〜20は、焼結助剤の種類を変えた試料を作製した。それ以外の作製工程は試料No.1と同様の方法とした。
【0076】
上記のように作製した静電チャックを室温25℃において、静電吸着用の内部電極4に500Vの直流電圧を印加して12インチのシリコンウエハWを吸着させた後、ウエハWに付着する0.3μm以上のパーティクルの数をパーティクルカウンターで測定した。その後、発熱用の内部電極5に通電しウエハWの平均温度を200℃としウエハWの面内温度差を測温点9箇所の測温ウエハWを用いて測定した。また、各種物性値について測定した結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
試料No.6は、前記化合物の含有量が0.9重量%であることから熱伝導率が37W/(m・K)と小さく、ウエハWの面内温度差が11℃と大きく均熱性が劣った。
【0079】
試料No.7は、前記化合物の含有量が21重量%と大きいことから熱伝導率が34W/(m・K)と小さくなり、ウエハWの均熱性が劣った。また窒化アルミニウム質焼結体の硬度が小さくなるため、パーティクル数が5000ヶと多かった。
【0080】
試料No.10は、前記化合物と結合している酸素量を差し引いた酸素量が0.4重量%と小さいことから、相対密度が96%と小さくパーティクル数が20000ヶと多かった。
【0081】
また試料No.11は、前記化合物と結合している酸素量を差し引いた酸素量が1.6重量%と多いことから、熱伝導率が35W/(m・K)と小さくなりウエハWの面内温度差が12℃と大きかった。
【0082】
試料No.13は相対密度が96%と小さいことからパーティクル数が20000ヶと多かった。
【0083】
試料No.14は、窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値Rが0.9であることからパーティクル数が6000ヶと多かった。
【0084】
試料No.15は、窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値が2.1であることからパーティクル数が6000ヶと多かった。
【0085】
この結果、上記板状セラミックス体は、希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物を酸化物換算で1〜20重量%含有し、前記化合物と結合している酸素量を差し引いた酸素量が0.5〜1.5重量%である窒化アルミニウム質焼結体からなり、相対密度が97%以上であり、上記板状セラミックス体の載置面におけるビッカース硬度(Hv)が800〜1100であり、更に窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値が1.0〜5.0であると、パーティクルの発生を大幅に低減することができることから、静電チャックとして優れた特性を示す事が分った。
【0086】
また、発熱用の内部電極5を埋設し、前記板状セラミックス体の熱伝導率が40W/(m・K)以上とすることにより、12インチのウエハWを加工処理する際に必要な9℃以下の面内均熱性を得ることができ優れていることが分かる。
(実施例2)
次に、試料No.1と同様の製造方法で、焼結助剤の添加量を変えて窒化アルミニウム質焼結体の試料を作製し、室温25℃において静電吸着用の内部電極4に500Vの直流電圧を印加して12インチのシリコンウエハWを吸着させ、このシリコンウエハWをロードセルにて引き剥がすのに要する荷重を吸着力として測定し、また、シリコンウエハWと吸着用の内部電極との間の絶縁層の体積固有抵抗値を測定した。その結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
試料No.24は前記化合物の含有量が0.8重量%と少ないことから、体積固有抵抗値が2x1012Ω・cmと大きく、吸着力は0.98kPaと小さかった。
【0089】
また、試料No.25は前記化合物の含有量が25重量%と多いことから、体積固有抵抗値が9x107Ω・cmと小さく、ウエハWと載置面の間の漏れ電流が大きく、吸着力は0.98kPaと小さかった。
【0090】
これに対し、試料No.21〜23は前記化合物を1〜20重量%含有し、静電吸着力が19.6kPa〜34.3kPaと大きく好ましいことが分かった。
【0091】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、板状セラミックス体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミックス体中に内部電極を備えた静電チャックにおいて、上記板状セラミックス体は、希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物を酸化物換算で1〜20重量%含有し、上記化合物と結合している酸素量を差し引いた酸素量が0.5〜1.5重量%である窒化アルミニウム質焼結体からなり、相対密度が97%以上であり、上記板状セラミックス体の載置面におけるビッカース硬度(Hv)が800〜1100であり、更に窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値が1.0〜5.0であるとともに、上記板状セラミックス体の25℃での体積固有抵抗値が1×10 8 Ω・cm〜1×10 12 Ω・cmであることにより、ジョンソン・ラーベック効果を利用した大きな静電吸着力でもってウエハを載置面上に強固に吸着固定することができるとともに、シリコン、ガリウム砒素等からなるウエハの脱着を繰り返したとしても、載置面の硬度がウエハの硬度に近似していることから、載置面及びウエハの磨耗を抑えることができ、パーティクルの発生を大幅に低減することができる。更に12インチや18インチのウエハをプロセスする際に必要な面内均熱性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る静電チャックをベース基体に固定した状態を示す斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図2】図1の静電チャックに備える静電吸着用の内部電極のパターン形状を示す平面図である。
【図3】図1の静電チャックに備える加熱用の内部電極のパターン形状を示す平面図である。
【図4】本発明に係る静電チャックの製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明に係る静電チャックの他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1:静電チャック
2:板状セラミックス体
2a:絶縁層
2b:あるセラミック部
3:載置面
4:内部電極
4a:導体層
5:内部電極
5a:帯状導体層
5b:帯状導体層
6:給電端子
7:給電端子
8:ベース基体
9:窒化アルミニウムグリーンシート
10:密着液
11:導体ペースト
12:導体ペースト
W:ウエハ
Claims (3)
- 板状セラミックス体の一方の主面をウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミックス体中に内部電極を備えた静電チャックにおいて、上記板状セラミックス体は、希土類元素及び/又はアルカリ土類金属元素からなる化合物を酸化物換算で1〜20重量%含有し、上記化合物と結合している酸素量を差し引いた酸素量が0.5〜1.5重量%である窒化アルミニウム質焼結体からなり、相対密度が97%以上であり、上記載置面におけるビッカース硬度(Hv)が800〜1100であり、更に窒化アルミニウム結晶以外の結晶の最大粒径を窒化アルミニウム結晶の最大粒径で除した値が1.0〜5.0であるとともに、上記板状セラミックス体の25℃での体積固有抵抗値が1×10 8 Ω・cm〜1×10 12 Ω・cmであることを特徴とする静電チャック。
- 上記板状セラミックス体中に加熱用の内部電極を備え、上記板状セラミックス体の常温における熱伝導率が40W/(m・K)以上であるとともに、上記板状セラミックス体を1800℃以上で焼成したことを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
- 上記板状セラミックス体の焼結助剤がCe元素を含む化合物からなり、CeO2換算で1〜20重量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の静電チャック。
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