JP3954488B2 - 結晶膜の検査方法および検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶膜の検査方法および検査装置に関し、たとえば液晶ディスプレイパネルを製造する際に、エキシマレーザーアニール処理を施して生成されたポリシリコン膜を検査する検査方法および検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイのアクティブ素子などとして用いられる薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を製造するにあたっては、薄膜状のシリコン半導体を用いるのが一般的である。薄膜状のシリコン半導体は、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)から成る非晶質シリコン半導体と、結晶性を有するシリコンから成る結晶性シリコン半導体との2つに大別される。
【0003】
非晶質シリコン半導体は、成膜温度が比較的低く、気相成長法によって比較的容易に製造することが可能であり、量産性に富むといった特徴を有するので、最も一般的に用いられている。しかし非晶質シリコン半導体は、結晶性シリコン半導体に比べて導電性などの物性が劣るので、高速特性を得るために結晶性シリコン半導体から成るTFTの製造技術の確立が強く求められている。すなわち基板の一表面部に、プラズマCVD(CVD:Chemical Vapor Deposition)法または減圧熱化学気相成長法などによって、アモルファスシリコン薄膜が形成され、固相成長結晶化工程と、レーザーアニール結晶化工程とを順次経て、結晶性シリコン半導体膜(以後、結晶膜と表記)が形成される。
【0004】
従来、エキシマレーザーアニール装置によって結晶化された結晶膜を検査する技術が開示されている(たとえば特許文献1)。前記特許文献1に記載の従来技術には、基板の一表面部に所定の方向性を有する光を照射し、一表面部からの乱反射光の強度を計測し、その計測値に基づいて一表面部の凹凸状態を判定する技術が開示されている。前記乱反射光の強度は、エキシマレーザーアニール装置におけるレーザー走査に起因する特定の方向性と周期性とを有する「すじ」の発生に着目したフーリエ解析によって計測される。前記一表面部の凹凸状態から、この基板の結晶膜は荒れていると判定されると、前記結晶膜は不良と判定される。
【0005】
ところで本願発明者が繰り返し行った実験によれば、エキシマレーザーアニール装置のレーザーエネルギー強度が大きくなるに従って、前記エキシマレーザーアニール装置によって処理された結晶膜を構成する結晶の粒径が大きくなり、結晶膜の凹凸状態は大きくなる。しかしレーザーエネルギー強度が所定の強度を超えると、結晶膜を構成する結晶は粒径の小さな微結晶となり、結晶膜の凹凸状態は小さくなる。前記微結晶は、粒径の大きな結晶に比べて、導電性などの特性が極端に劣り、結晶膜の特性を著しく低下させる。
【0006】
結晶膜に付与されるエネルギー強度が過大となった場合に、結晶膜が前記エネルギーによって完全に溶融し、冷却時に結晶核が高密度かつランダムに形成される。各々の結晶核から結晶が成長するため、結晶粒径がたとえば数百ナノメーターの極めて小さい結晶の集合となった前記微結晶が形成される。したがって、導電性などの特性が良好な結晶膜を得るためには、エキシマレーザーアニール装置のレーザーエネルギー強度は、微結晶の発生する所定の強度を超えず、かつ前記所定の強度に近い強度であることが望ましい。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−110861号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようにレーザーエネルギー強度を制御することが望ましいが、レーザーエネルギー強度の制御精度には限界があり、レーザー照射の都度、たとえば約3%以上5%以下程度のレーザーエネルギー強度の変動がある。さらに前記レーザーエネルギー強度の変動時に、レーザーエネルギーが所定の強度を超え、微結晶を発生させた場合には、得られる結晶膜の前記特性は著しく低くなる。
【0009】
前記特許文献1に記載の従来技術では、レーザーエネルギー強度の変動による一表面部の凹凸状態の変動が、レーザー走査に起因する特定の方向性を有する「すじ」を発生させることから、前記「すじ」の発生に基づき、結晶膜の結晶化度を判定している。すなわち前記従来技術で用いられる「すじ」の判定手段では、結晶膜の凹凸状態に少なくとも一定の周期性があることを前提としている。前記周期性に基づいて、フーリエ変換を用いて結晶膜の結晶化度を判定している。しかし、エキシマレーザーアニール装置のレーザーエネルギー強度は必ずしも周期的に変動することはなく、実際に結晶化された結晶膜は、その凹凸状態に周期性が見られないものもある。したがって結晶膜の周期性に基づいて、フーリエ変換を用いて結晶化度を判定する技術は、汎用性が低い。
【0010】
さらにレーザーエネルギー強度と結晶化度との間には、所望の結晶化度が得られるレーザーエネルギー強度よりも小さい領域で相関性がある。換言すれば、前記小さい領域において、レーザーエネルギー強度が大きくなれば、結晶膜の結晶化度は高くなる。しかし、所望の結晶化度が得られるレーザーエネルギー強度を超える領域においては、レーザーエネルギー強度と結晶化度との間には、逆相関性がある。換言すれば、前記領域において、レーザーエネルギー強度が大きくなれば、結晶膜の結晶化度は低くなる。
【0011】
したがって従来技術では、レーザーエネルギー強度が小さくなる方向に変動し、結晶膜の凹凸状態が変動することに起因して「すじ」が発生したのか、レーザーエネルギー強度が大きくなる方向に変動し、微結晶が発生することによって結晶膜の凹凸状態が変動することに起因して「すじ」が発生したのかを判定することができない。
【0012】
したがって本発明の目的は、結晶膜に発生し得る微結晶を正確に判定することが可能となる結晶膜の検査方法および検査装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定する第1工程と、
第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める第2工程と、
第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定する第3工程と、
前記第3工程の判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する第4工程とを有し、
第1工程は、
前記第1方向が含まれると予想される所定範囲内の複数方向に関して、前記複数方向のうちの一方向に沿った濃度値の分散を、前記一方向と交差する方向の複数の位置において求める第1段階と、
前記複数の位置において求めた一方向に沿う複数の濃度値の分散の平均を求める第2段階と、
前記所定範囲内の複数方向について、第1および第2段階を繰り返し実行する第3段階と、
第3段階で各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定する第4段階とを備えることを特徴とする結晶膜の検査方法である。
【0014】
本発明に従えば、第1工程においては、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定する。第2工程においては、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める。第3工程においては、第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定する。第4工程においては、前記第3工程の判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する。
【0015】
特に、帯状部分の延在方向である第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布に関し、その分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定している。このように帯状部分を有する画像に基づいて濃度値の分布特性を求めておき、この濃度値の分布特性と結晶膜の微結晶発生状態との間の相関性を利用して、前記分布特性に基づいて結晶膜の微結晶発生状態を判定することができる。それ故、たとえばフーリエ変換などを用いることなく、結晶膜のたとえば導電性などの特性低下を確実に判定することができる。つまり本発明においては、前記公報に記載の従来技術のようにフーリエ変換を用いて、結晶膜の凹凸状態に関して周期性のあるものだけを検査するのではなく、結晶膜の凹凸状態の周期性に依存することなく凹凸状態の変化の中から前記特性低下の主原因となる微結晶を特定することで、結晶膜の特性低下を確実に判定することができる。それ故、本検査方法の汎用性を高くすることができる。
【0017】
さらに、第1段階では、第1方向が含まれると予想される所定範囲内の複数方向に関して、前記複数方向のうちの一方向に沿った濃度値の分散を、前記一方向と交差する方向の複数の位置において求める。第2段階では、前記複数の位置において求めた一方向に沿う複数の濃度値の分散の平均を求める。第3段階では、前記所定範囲内の複数方向について、第1および第2段階を繰り返し実行する。第4段階では、第3段階で各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定することができる。
【0018】
特に、第3段階で各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定することができるので、たとえば結晶膜を移送する手段の機械的誤差および調整誤差などがあったとしても、帯状部分を撮像するためのたとえば撮像手段などを高精度に調整することなく、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を正確にかつ簡単に求めることができる。したがって第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布も正確にかつ簡単に求めることができる。それ故、本検査方法の性能を高くすることが可能となる。
【0019】
また本発明は、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定する第1工程と、
第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める第2工程と、
第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定する第3工程と、
前記第3工程の判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する第4工程とを有し、
第2工程は、
第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の平均値となる分布位置の濃度値の分布を表す平均値濃度分布を求める段階と、
平均値濃度分布に、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行う段階と、
前記第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の累積相対度数分布の分布値が予め定めた値となる濃度値の第2方向の分布を表す相対度数値濃度分布を求める段階とを備え、
第3工程において、前記排除する処理を行う段階で求められる分布特性、および相対度数値濃度分布を求める段階で求められる分布特性から、微結晶化部分を特定することを特徴とする結晶膜の検査方法である。
【0020】
本発明に従えば、第1工程においては、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定する。第2工程においては、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める。第3工程においては、第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定する。第4工程においては、前記第3工程の判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する。
特に、帯状部分の延在方向である第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布に関し、その分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定している。このように帯状部分を有する画像に基づいて濃度値の分布特性を求めておき、この濃度値の分布特性と結晶膜の微結晶発生状態との間の相関性を利用して、前記分布特性に基づいて結晶膜の微結晶発生状態を判定することができる。それ故、たとえばフーリエ変換などを用いることなく、結晶膜のたとえば導電性などの特性低下を確実に判定することができる。つまり本発明においては、前記公報に記載の従来技術のようにフーリエ変換を用いて、結晶膜の凹凸状態に関して周期性のあるものだけを検査するのではなく、結晶膜の凹凸状態の周期性に依存することなく凹凸状態の変化の中から前記特性低下の主原因となる微結晶を特定することで、結晶膜の特性低下を確実に判定することができる。それ故、本検査方法の汎用性を高くすることができる。
さらに、第2工程においては、第2濃度分布に対し、第1濃度分布の平均値となる分布位置の濃度値の分布を表す平均値濃度分布を求め、次の段階で、平均値濃度分布に、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行う。次の段階で、第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の累積相対度数分布の分布値が予め定めた値となる濃度値の第2方向の分布を表す相対度数値濃度分布を求める。第3工程においては、前記排除する処理を行う段階で求められる分布特性、および相対度数値濃度分布を求める段階で求められる分布特性から、微結晶化部分を特定する。
【0021】
特に第2工程においては、平均値濃度分布に、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行っている。換言すれば、前記予め定める濃度値より大きい濃度値を抽出することができる。第3工程においては、上述した2つの分布特性から、微結晶化部分を特定することができる。このように特性低下の主原因となる微結晶化部分の特定を実現することができる。
【0022】
また本発明は、結晶膜に光を照射する照射手段と、
結晶膜を撮像する撮像手段と、
照射手段および撮像手段を用いて、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定し、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める濃度分布算出手段と、
第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定し、この判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する判定手段とを有し、
濃度分布算出手段は、
前記第1方向が含まれると予想される所定範囲内の複数方向に関して、前記複数方向のうちの一方向に沿った濃度値の分散を、前記一方向と交差する方向の複数の位置において求め、
前記複数の位置において求めた一方向に沿う複数の濃度値の分散の平均を求め、
前記所定範囲内の複数方向について、濃度値の分散および濃度値の分散の平均を求めることで各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定することを特徴とする結晶膜の検査装置である。
本発明に従えば、照射手段によって結晶膜に光を照射しつつ、撮像手段によって結晶膜を撮像する。濃度分布算出手段は、これら照射手段および撮像手段を用いて、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定する。その後、前記濃度分布算出手段は、特定された第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める。判定手段は、前記第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定し、この判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定することができる。またこのような検査装置を実現することができる。
特に、帯状部分の延在方向である第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布に関し、その分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定している。このように帯状部分を有する画像に基づいて濃度値の分布特性を求めておき、この濃度値の分布特性と結晶膜の微結晶発生状態との間の相関性を利用して、前記分布特性に基づいて結晶膜の微結晶発生状態を判定することができる。それ故、たとえばフーリエ変換などを用いることなく、結晶膜のたとえば導電性などの特性低下を確実に判定することができる。つまり本発明においては、前記公報に記載の従来技術のようにフーリエ変換を用いて、結晶膜の凹凸状態に関して周期性のあるものだけを検査するのではなく、結晶膜の凹凸状態の周期性に依存することなく凹凸状態の変化の中から前記特性低下の主原因となる微結晶を特定することで、結晶膜の特性低下を確実に判定することができる。それ故、本検査装置の汎用性を高くすることができる。
さらに、濃度分布算出手段は、まず第1方向が含まれると予想される所定範囲内の複数方向に関して、前記複数方向のうちの一方向に沿った濃度値の分散を、前記一方向と交差する方向の複数の位置において求める。次に前記複数の位置において求めた一方向に沿う複数の濃度値の分散の平均を求める。そして、前記所定範囲内の複数方向について、濃度値の分散および濃度値の分散の平均を求めることで各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定することができる。
特に、各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定することができるので、たとえば結晶膜を移送する手段の機械的誤差および調整誤差などがあったとしても、帯状部分を撮像するためのたとえば撮像手段などを高精度に調整することなく、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を正確にかつ簡単に求めることができる。したがって第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布も正確にかつ簡単に求めることができる。それ故、本検査方法の性能を高くすることが可能となる。
【0023】
本発明は、結晶膜に光を照射する照射手段と、
結晶膜を撮像する撮像手段と、
照射手段および撮像手段を用いて、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定し、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める濃度分布算出手段と、
第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定し、この判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する判定手段とを有し、
濃度分布算出手段は、
第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の平均値となる分布位置の濃度値の分布を表す平均値濃度分布を求め、
平均値濃度分布に、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行い、
前記第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の累積相対度数分布の分布値が予め定めた値となる濃度値の第2方向の分布を表す相対度数値濃度分布を求め、
判定手段は、
前記排除する処理を行うことで求められる分布特性、および相対度数値濃度分布を求めることで求められる分布特性から、微結晶化部分を特定することを特徴とする結晶膜の検査装置である。
本発明に従えば、照射手段によって結晶膜に光を照射しつつ、撮像手段によって結晶膜を撮像する。濃度分布算出手段は、これら照射手段および撮像手段を用いて、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定する。その後、前記濃度分布算出手段は、特定された第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める。判定手段は、前記第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定し、この判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定することができる。またこのような検査装置を実現することができる。
【0024】
特に、帯状部分の延在方向である第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布に関し、その分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定している。このように帯状部分を有する画像に基づいて濃度値の分布特性を求めておき、この濃度値の分布特性と結晶膜の微結晶発生状態との間の相関性を利用して、前記分布特性に基づいて結晶膜の微結晶発生状態を判定することができる。それ故、たとえばフーリエ変換などを用いることなく、結晶膜のたとえば導電性などの特性低下を確実に判定することができる。つまり本発明においては、前記公報に記載の従来技術のようにフーリエ変換を用いて、結晶膜の凹凸状態に関して周期性のあるものだけを検査するのではなく、結晶膜の凹凸状態の周期性に依存することなく凹凸状態の変化の中から前記特性低下の主原因となる微結晶を特定することで、結晶膜の特性低下を確実に判定することができる。それ故、本検査装置の汎用性を高くすることができる。
さらに、濃度分布算出手段は、第2濃度分布に対し、第1濃度分布の平均値となる分布位置の濃度値の分布を表す平均値濃度分布を求め、次に、平均値濃度分布に、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行う。そして、第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の累積相対度数分布の分布値が予め定めた値となる濃度値の第2方向の分布を表す相対度数値濃度分布を求める。
判定手段は、前記排除する処理を行うことで求められる分布特性、および相対度数値濃度分布を求めることで求められる分布特性から、微結晶化部分を特定する。
特に濃度分布算出手段は、平均値濃度分布に、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行っている。換言すれば、前記予め定める濃度値より大きい濃度値を抽出することができる。判定手段では、上述した2つの分布特性から、微結晶化部分を特定することができる。このように特性低下の主原因となる微結晶化部分の特定を実現することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態に係り、結晶膜の微結晶を検出する工程を段階的に示すフローチャートである。図2は、基板1を厚み方向に切断して拡大して示す断面図であって、基板1の一表面部に、結晶性膜を形成した後、結晶膜2(図3参照)を形成する工程を段階的に示す断面図である。図3は、エキシマレーザーアニール装置3と、帯状部分4との関係を示す基板1の斜視図である。本実施形態は、たとえば液晶ディスプレイを製造する際に用いられる結晶性シリコン半導体膜(以後、単に結晶膜と記載する場合もある)を検査する検査装置に、本発明の検査装置を適用した場合の一例を示す。以下の説明は、結晶膜の検査方法の説明も含む。
【0026】
図2(a)に示される基板1は、電気絶縁性材料であるたとえばガラスなどから成る厚み方向から見てたとえば長方形の平板状基材5の表面部5aに、非晶質膜としての非晶質シリコン層6が形成されて構成される。次に図2(b)に示すように、非晶質シリコン層6の一表面部6aに、たとえば酸化液が塗布され、この酸化液の働きによって酸化膜7が形成される。酸化膜7の一表面部7aに触媒堆積層8が形成された図2(c)に示される基板1は、非晶質シリコン層6の結晶化が始まる温度、たとえば約550℃以上で加熱されて非晶質シリコン層6の結晶化が進行する。非晶質シリコン層6の結晶化がある程度進行した後、図3に示すように、エキシマレーザーアニール装置を用いて、非晶質シリコン層6に対しレーザー光Raを照射する。その結果、非晶質シリコン層6は一度溶融し、冷却固化過程を経て多結晶化する。つまり基板1の一表面部に結晶膜2が形成される。
【0027】
図4は、結晶膜2の検査装置9を概略示す斜視図である。前記結晶膜2を検査する検査装置9は、xyステージ10と、xyステージ駆動機構11と、撮像手段としてのCCDカメラ12(CCD:Charge Coupled Device)と、照射手段としての照明13と、濃度分布算出手段および判定手段としての制御装置14とを有する。xyステージ10は、基板1を吸着支持可能に構成されている。またxyステージ10は、基板1の厚み方向に移動可能に構成されるとともに、x方向およびy方向に移動可能に構成されている。前記x方向は、長方形状のxyステージ10の長手方向に沿った方向であり、前記y方向は、x方向および基板1の厚み方向に直交する方向である。xyステージ駆動機構11は、CCDカメラ12および照明13に対し、結晶膜2の任意の一部分を検査対象位置に選択的に移動駆動する機構である。このxyステージ駆動機構11は、xyステージ10をx方向に移動駆動可能なx方向駆動部11aと、y方向に移動駆動可能なy方向駆動部11bとを有する。
【0028】
CCDカメラ12は、基板1の厚み方向一方(矢符A1にて示す)に支持され、基板1に形成された結晶膜2を撮像可能に配置して設けられている。このCCDカメラ12は、たとえば約1mm×1mmの矩形領域を撮像可能に構成されている。照明13は、たとえば、CCDカメラ12のレンズとなる暗視野顕微鏡12aの暗視野照明として使用される。これら照明13およびCCDカメラ12を用いて、結晶膜2を厚み方向一方側から撮像することが可能となる。
【0029】
図5は、本発明の実施の形態に係る結晶膜の検査装置9の制御系のブロック図である。制御装置14は、中央演算処理装置15(CPU:Central Processing Unit、以後CPU15と表記)と読み出し専用記憶装置16(ROM:Read Only Memory 、以後ROM16と表記)と読み出し書き込み記憶装置17(RAM:Random Access Memory 、以後RAM17と表記)とから成るマイクロコンピュータと、バス18と、入出力インターフェース19と、図示外の駆動回路とで構成されている。
【0030】
CPU15とROM16とRAM17とは、バス18を介して入出力インターフェース19に電気的に接続されている。入出力インターフェース19には、CCDカメラ12、入力手段であるキーボード20およびマウス21がそれぞれ電気的に接続されている。また入出力インターフェース19には、図示外の駆動回路を介してxyステージ駆動機構11、照明13および表示装置22がそれぞれ電気的に接続されている。ROM16には、後述する第1および第2濃度分布の分布特性としての濃度分布特性を求め、結晶膜2の微結晶を判定するとともに結晶膜2の結晶化不良を判定するプログラムが格納されている。本プログラムはCPU15にて実行される。
【0031】
図6は、レーザーエネルギーと結晶化度および表面粗さとの関係を表す図表である。非晶質シリコン層6に対し、照射するレーザー光Raのレーザーエネルギーが所望の値よりも低い場合には、結晶膜2の結晶化度は、所望の100%よりも低く、結晶膜2の表面粗さも低い傾向にある。レーザーアニールのレーザーエネルギーが適切な場合には、レーザーエネルギーによって溶融した内部に非溶融部が点在する。そして前記非溶融部を結晶核として結晶が成長するので、結晶粒径が数ミクロンメーターの大きな結晶となる。
【0032】
照射するレーザー光Raのレーザーエネルギーが所望の値よりも高い場合には、結晶膜2に微結晶が発生し、その微結晶化部分28(図9a参照)の表面粗さは極めて低くなる。微結晶化部分28は、微結晶部分とも呼ばれている。前記微結晶は、レーザーアニールのレーザーエネルギーが過大となった場合に、結晶膜2が前記レーザーエネルギーによって完全に溶融し、冷却時に結晶核が高密度かつランダムに形成され、各々の結晶核から結晶が成長するため、結晶粒径が数百ナノメーターの極めて小さい結晶の集合となったものである。
【0033】
エキシマレーザーアニール装置3は、予め定められるパルス数で発振されてレーザー光Raを照射するように構成されている。また、エキシマレーザーアニール装置3は、照射対象の非晶質シリコン層6に対し、所定のY方向長さと、Y方向および基板1の厚み方向に直交するX方向のX方向幅とを有する矩形状のレーザー光Raを照射するように構成されている。このエキシマレーザーアニール装置3と、前記xyステージ駆動機構11またはxyステージ駆動機構11と略同等の駆動機構とで協働して、非晶質シリコン層6を有する基板1をX方向に送りつつ前記基板1にレーザー光Raを照射する。
【0034】
このように基板1を予め定めた送り速度でX方向に送りつつ、エキシマレーザーアニール装置3は、前記矩形状のレーザー光Raを予め定めるパルス数で発振することによって、基板1には、略Y方向に延びる帯状部分4が形成される。本実施形態において、「略Y方向」は「Y方向」を含む。ただし、所望の結晶化度が得られるレーザーエネルギー値よりもかなり小さいレーザーエネルギー値で照射された場合には、帯状部分4は皆無となる。また所望の結晶化度が得られるレーザーエネルギー値が得られるレーザーエネルギー値よりもかなり大きなレーザーエネルギー値で照射された場合にも、帯状部分4は皆無となる。各帯状部分4の帯幅は、たとえば前記パルス数の整数倍に略相当する。
【0035】
図7は、帯状部分の延在方向すなわち帯状方向を求める方法を段階的に示すフローチャートである。図8は、微結晶の検出方法を示すフローチャートである。図1も併せて説明する。図1におけるai(i=1,2,3,…)、図7および図8におけるbi(i=10,11,12,…)は、それぞれステップを示す。図9は、帯状部分4を有する画像Sから、帯状部分4の延在方向すなわち帯状方向を求める方法を説明するための図であり、図9(a)は、画像Sから、帯状方向が含まれると予想される所定範囲内の全ての分散算出方向23に対して分散算出を行う場合に、分散算出方向23が帯状方向とは異なる状態を示す図であり、図9(b)は、画像Sから、前記所定範囲内の全ての分散算出方向23に対して分散算出を行う場合に、分散算出方向23が帯状方向と一致する状態を示す図である。この所定範囲内の全ての分散算出方向23が、所定範囲内の複数方向に相当する。図10は、所定範囲内の複数方向に関して、前記複数方向のうちの一方向に沿った濃度値の分散を、前記一方向と交差する方向の複数の位置において求めるための説明図である。図11は、各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定する方法を説明するための図である。
【0036】
図1のステップ1および2、図7のステップ10および11に示すように、基板1すなわち結晶膜2の一部分を、xyステージ駆動機構11によって検査対象位置に移動させ、前記結晶膜2に、照明13によって光を照射する。図4および図9に示すように、結晶膜2がCCDカメラ12によって結晶膜2の厚み方向一方側から撮像される画像Sは、表示装置22に表示される。また結晶膜2は、帯状部分4が略y方向に近い方向に沿って直線状に撮像される。このようにステップ11において、複数列の帯状部分4を有する画像Sが得られる。前記画像Sは、たとえばRAM17に一時的に記憶される。
【0037】
ステップ11で得られた帯状部分4を有する画像Sに基づいて、ステップ12では、所定の範囲の各方向について、分散算出方向23に濃度値の分散を求める。すなわちステップ12においては、略y方向に近い方向であって、予め定めた方向の範囲に含まれる全ての分散算出方向23に対して、後述する撮像範囲のy座標がYsにおけるXsからXeに至る全てのxから分散算出方向23へy座標がYeとなるまでの範囲の分散を求める。換言すれば、帯状部分4が含まれると予想される所定範囲内の全ての分散算出方向23に関して、前記全ての分散算出方向23のうちの一方向に沿った濃度値の分散を求める。ステップ13では、求めた分散のxに対する平均を求める。すなわち、前記一方向と交差する方向の複数の位置において求めた一方向に沿う複数の濃度値の分散の平均を求める。
【0038】
そして所定範囲内の全ての分散算出方向23について、上述した一方向に沿った濃度値の分散を求め、複数の濃度値の分散の平均を求める段階を繰り返し実行する。前記分散の平均を分散平均と表記する場合もある。次にステップ14では、前記段階で分散算出方向23毎に求められる分散の平均に基づいて、全ての分散算出方向23のうちの1つの方向を第1方向として特定する。すなわち、ステップ12および13で得られた全ての分散算出方向23に対する分散平均のうち最も小さい分散平均つまり最小の平均値を有する分散算出方向23を、第1方向である帯状方向と決定する。
【0039】
前記撮像範囲は、矩形状の画像領域のうち座標(Xs、Ys)から座標(Xe、Ye)にわたる全ての領域と同義である。前記座標(Xs、Ys)は、矩形状の画像領域のx方向に平行な一方側の一辺と、この一辺に隣接しかつy方向に平行な一方側の一辺との交点P1を示す。前記座標(Xe、Ye)は、前記交点P1の対角となる交点P2であって、x方向に平行な他方側の一辺と、この一辺に隣接しかつy方向に平行な他方側の一辺との交点P2を示す。
【0040】
図12は、帯状部分4を有する画像から、帯状方向の平均濃度値および相対度数分布を求める方法を説明するための図である。図13は、累積相対度数分布の分布値から相対度数分布濃度値を選び出す方法を説明するための図である。図14は、図15の平均濃度値分布と図16の変動率分布とに対応する画像を示す図である。図15は、図14の帯状部分4を有する画像に対応する1次元の平均濃度値分布を示す図である。図16は、図14の帯状部分4を有する画像に対応する1次元の変動率分布を示す図である。図17は、図18の相対度数分布濃度値に対応する画像を示す図である。図18は、図17の帯状部分4を有する画像に対応する1次元の相対度数分布濃度値を示す図である。図19は、変動率分布と相対度数分布濃度値とから、微結晶化部分を判定する方法を説明するための図である。図8も併せて説明する。
【0041】
ステップ15では、帯状部分4に沿った濃度値の平均値であって、複数列の帯状部分4のうち少なくとも列毎に求められる複数の濃度値の平均値である第1濃度分布を求める。すなわち、ステップ14で得られた帯状方向に対し、前記撮像範囲のy座標がYsにおけるXsからXeに至る全てのxから帯状方向へy座標がYeとなるまでの範囲の平均濃度値25および相対度数分布を計算する(図13参照)。前記平均濃度値25が、第1濃度分布に相当する。
【0042】
次にステップ16に移行し、ステップ15で得られたXsからXeに至る全てのx毎の平均濃度値25を、XsからXeに至るまでの1次元の平均濃度値分布として配列する(図15参照)。前記1次元の平均濃度値分布が、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布に相当する。次にステップ17では、ステップ16で得られた1次元の平均濃度値分布に対して、式(1)で表されるハイパスフィルタ処理であって、後述する変動率分布を求めるためのハイパスフィルタ処理を実行する。ハイパスフィルタ処理は、ハイパス処理と同義である。
【0043】
【数1】
【0044】
式(1)に関して、各xに対する平均濃度値をM(x)と表し、ハイパスフィルタ処理後の各xに対する変動率27をH(x)と表す。フィルタサイズLは、微結晶を精度良く検出する目的で変動率27を検出できるように予め定められる。具体的にフィルタサイズLは、エキシマレーザーアニール装置3の基板送り速度、発振パルス数、レーザー光Raの矩形状の幅、図示外の撮像系の倍率および画像分解能などから定められる。
【0045】
上述したように前記ステップ17において、前記ハイパスフィルタ処理を実行することによって、x方向に急峻な平均濃度値の変化を抽出した変動率の1次元の変動率分布を配列する(図16参照)。換言すれば、ステップ16で得られた1次元の平均濃度値分布に対して、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行う。その後図8、図17、図18に示すように、ステップ18において、所定の累積相対度数分布となる濃度値を、x方向つまり第2方向に1次元化する。すなわちステップ18では、ステップ15で得られたXsからXeに至る全てのx毎の相対度数分布の下側累積相対度数が、たとえば約20%となる濃度値(予め定める値となる濃度値)である相対度数分布濃度値26の、XsからXeに至るまでの1次元の相対度数濃度値分布として配列する。このステップ18が、第1濃度分布の相対度数分布値が予め定める値となる濃度値の第2方向の分布を求める段階に相当する。これによって、相対度数分布濃度値においては、帯状部分の中の一部に微結晶が存在する場合でも、微結晶の濃度値を表すことが可能となる。
【0046】
次に図1のステップ3、図8、図19に示すように、ステップ19において、所定の度数分布濃度値と変動率とから、微結晶を判定し計数する。すなわちステップ19では、ステップ17で得られた1次元変動率分布および、ステップ18で得られた1次元相対度数濃度値分布に対して、XsからXeに至る全てのx毎に、変動率27と相対度数分布濃度値26とから、そのxの位置が微結晶化部分であるか否か判定する。たとえば前記変動率27が所定の変動率しきい値より低くかつ、相対度数濃度しきい値より低い場合に、そのxの位置は微結晶であると判定される。さらに微結晶と判定されたxの位置の割合および連続していない微結晶と判定されたxの位置の個数を計数する。
【0047】
複数のサンプル基板から撮像された微結晶の帯状部分4の変動率を調べ、微結晶の検出精度が極力良くなるように、前記変動率しきい値を決定する。また複数のサンプル基板から撮像された微結晶の帯状部分4の濃度分布を調べ、微結晶の検出精度が極力良くなるように、前記相対度数濃度しきい値を決定する。
【0048】
その後、図1のステップ4において、ステップ19で得られた微結晶と判定されたxの位置の割合および連続していない微結晶と判定されたxの位置の個数に対し、予め定める不良判定しきい値より大きい前記割合および個数であった場合に、この結晶膜は不良であると判定する。その後ステップ5でこの図1のフローを終了する。したがって本検査装置9によれば、不所望の結晶化度の結晶膜2すなわち不良基板1を排除することが可能となる。前記不良判定しきい値は、検出精度などに応じて決定する。
【0049】
以上説明した結晶膜2の検査方法によれば、先ず、結晶膜2を厚み方向一方側から撮像した、複数列の帯状部分4を有する画像Sに基づいて、帯状部分4の延在方向である第1方向を特定する。その後の工程において、前記第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求め、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める。その後の工程において、第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜2に発生し得る微結晶の有無を判定することができる。前記工程の判定結果に基づいて、結晶膜2の結晶化不良を判定することができる。
【0050】
特に、帯状部分4の延在方向である第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布に関して、その分布特性に基づいて、結晶膜2に発生し得る微結晶の有無を判定している。このように帯状部分4を有する画像Sに基づいて濃度値の分布特性を求めておき、この濃度値の分布特性と結晶膜2の微結晶発生状態との間の相関性を利用して、前記分布特性に基づいて結晶膜2の微結晶発生状態を判定することができる。それ故、たとえばフーリエ変換などを用いることなく、結晶膜2のたとえば導電性などの特性低下を確実に判定することができる。つまり本実施形態においては、前記公報に記載の従来技術のようにフーリエ変換を用いて、結晶膜の凹凸状態に関して周期性のあるものだけを検査するのではなく、結晶膜2の凹凸状態の周期性に依存することなく凹凸状態の変化の中から前記特性低下の主原因となる微結晶を特定することで、結晶膜2の特性低下を確実に判定することができる。それ故、本検査方法の汎用性を高くすることができる。
【0051】
また本検査方法によれば、画像Sのうち予め定める所定範囲の方向に延びる帯状部分4に基づいて、所定範囲内の全ての方向に対して濃度値の分散値をそれぞれ求める。その後、第2方向に関して分散値の平均値を求め、求められた分散値の平均値のうち、最小の平均値を有する方向を第1方向として特定することができる。このように帯状部分4の延在方向である第1方向を正確に特定することができるので、たとえば結晶膜2すなわち基板1を移送するxyステージ駆動機構11の機械的誤差および調整誤差などがあったとしても、帯状部分4を撮像するための前記CCDカメラ12を高精度に調整することなく、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を正確にかつ簡単に求めることができる。したがって第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布も正確にかつ簡単に求めることができる。それ故、本検査方法の性能を高くすることが可能となる。
【0052】
また本検査方法によれば、図19に示すように、ハイパスフィルタ処理を実行する段階で求められる分布特性、および第2方向の分布を求める段階で求められる分布特性から、それぞれ予め定められる変動率しきい値、および相対度数濃度しきい値に基づいて微結晶化部分28を特定することができる。特に、図19に示すように、分布特性から、結晶膜2に与えられるエネルギー強度が増加し微結晶が発生して凹凸状態が変動した場合の濃度変動率を抽出することができる。しかも、結晶膜2に与えられるエネルギー強度が減少して凹凸状態が変動した場合の濃度変動率を抽出しないように予め定める変動率の値および、微結晶が発生している部位に生じる濃度の値に基づいて、微結晶化部分28を特定することができる。
【0053】
また本検査装置9によれば、照明13によって結晶膜2に光を照射しつつ、CCDカメラ12によって結晶膜2を撮像する。これら照明13およびCCDカメラ12を用いて、結晶膜2を厚み方向一方側から撮像した画像Sに基づいて、前記帯状部分4の延在方向である第1方向が特定される。その後、特定された第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布が求められ、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布が求められる。前記第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜2に発生し得る微結晶の有無が判定される。この判定結果に基づいて、結晶膜2の結晶化不良を判定することができる。
【0054】
このように、結晶膜2に発生し得る微結晶を正確に判定することが可能となる結晶膜2の検査装置9を実現することができる。前記検査装置9によれば、結晶膜2の凹凸状態の周期性などに依存することなく凹凸状態の変化の中から、結晶膜2の特性低下の主原因となる微結晶を特定することで、結晶膜2の特性低下を確実に判定することができる。それ故、本検査装置9の汎用性を高くすることができる。
【0055】
前記検査装置9および検査方法によって得られる判定結果つまり結晶化度に基づいて、レーザーアニール処理におけるエネルギーの過不足を判定し、この判定結果に基づいてレーザーアニール処理で前駆体に与えるエネルギーを制御することができるので、その制御以後、所望の結晶膜2の結晶化度を実現することが可能となる。
【0056】
本実施形態においては、ステップ17の後、上述した所定の累積相対度数分布となる濃度値を、x方向に1次元化するステップを配設したが、前記ステップをステップ15の後でかつステップ16の前に配設してもよい。この場合にはステップ17の後、後述するステップ19に移行する。またこの場合にも、前記実施形態と同様の効果を奏する。その他、前記実施形態に、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において種々の部分的変更を行う場合もある。
【0057】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、特に、帯状部分の延在方向である第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布に関し、その分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定している。このように帯状部分を有する画像に基づいて濃度値の分布特性を求めておき、この濃度値の分布特性と結晶膜の微結晶発生状態との間の相関性を利用して、前記分布特性に基づいて結晶膜の微結晶発生状態を判定することができる。それ故、たとえばフーリエ変換などを用いることなく、結晶膜のたとえば導電性などの特性低下を確実に判定することができる。つまり本発明においては、前記公報に記載の従来技術のようにフーリエ変換を用いて、結晶膜の凹凸状態に関して周期性のあるものだけを検査するのではなく、結晶膜の凹凸状態の周期性に依存することなく凹凸状態の変化の中から前記特性低下の主原因となる微結晶を特定することで、結晶膜の特性低下を確実に判定することができる。それ故、本検査方法の汎用性を高くすることができる。
【0058】
また本発明によれば、特に、第3段階で各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定することができるので、たとえば結晶膜を移送する手段の機械的誤差および調整誤差などがあったとしても、帯状部分を撮像するためのたとえば撮像手段などを高精度に調整することなく、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を正確にかつ簡単に求めることができる。したがって第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布も正確にかつ簡単に求めることができる。それ故、本検査方法の性能を高くすることが可能となる。
【0059】
また本発明によれば、特に第2工程においては、平均値濃度分布に、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行っている。換言すれば、前記予め定める濃度値より大きい濃度値を抽出することができる。第3工程においては、2つの分布特性から、微結晶化部分を特定することができる。このように特性低下の主原因となる微結晶化部分の特定を実現することができる。
【0060】
また本発明によれば、結晶膜における微結晶を正確に判定することができる結晶膜の検査装置を実現することができる。特に、帯状部分の延在方向である第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布に関し、その分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定している。このように帯状部分を有する画像に基づいて濃度値の分布特性を求めておき、この濃度値の分布特性と結晶膜の微結晶発生状態との間の相関性を利用して、前記分布特性に基づいて結晶膜の微結晶発生状態を判定することができる。それ故、たとえばフーリエ変換などを用いることなく、結晶膜のたとえば導電性などの特性低下を確実に判定することができる。つまり本発明においては、前記公報に記載の従来技術のようにフーリエ変換を用いて、結晶膜の凹凸状態に関して周期性のあるものだけを検査するのではなく、結晶膜の凹凸状態の周期性に依存することなく凹凸状態の変化の中から前記特性低下の主原因となる微結晶を特定することで、結晶膜の特性低下を確実に判定することができる。それ故、本検査装置の汎用性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係り、結晶膜の微結晶を検出する工程を段階的に示すフローチャートである。
【図2】基板1を厚み方向に切断して拡大して示す断面図であって、基板1の一表面部に、結晶性膜を形成した後、結晶膜2を形成する工程を段階的に示す断面図である。
【図3】エキシマレーザーアニール装置3と、帯状部分4との関係を示す基板の斜視図である。
【図4】結晶膜2の検査装置9を概略示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る結晶膜2の検査装置9の制御系のブロック図である。
【図6】レーザーエネルギーと結晶化度および表面粗さとの関係を表す図表である。
【図7】帯状部分の延在方向すなわち帯状方向を求める方法を段階的に示すフローチャートである。
【図8】微結晶の検出方法を示すフローチャートである。
【図9】帯状部分4を有する画像Sから、帯状部分4の延在方向すなわち帯状方向を求める方法を説明するための図であり、図9(a)は、画像Sから、帯状方向が含まれると予想される所定範囲内の全ての分散算出方向23に対して分散算出を行う場合に、分散算出方向23が帯状方向とは異なる状態を示す図であり、図9(b)は、画像Sから、前記所定範囲内の全ての分散算出方向23に対して分散算出を行う場合に、分散算出方向23が帯状方向と一致する状態を示す図である。
【図10】所定範囲内の複数方向に関して、前記複数方向のうちの一方向に沿った濃度値の分散を、前記一方向と交差する方向の複数の位置において求めるための説明図である。
【図11】各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定する方法を説明するための図である。
【図12】帯状部分4を有する画像から、帯状方向の平均濃度値および相対度数分布を求める方法を説明するための図である。
【図13】累積相対度数分布の分布値から相対度数分布濃度値を選び出す方法を説明するための図である。
【図14】図15の平均濃度値分布と図16の変動率分布とに対応する画像を示す図である。
【図15】図14の帯状部分4を有する画像に対応する1次元の平均濃度値分布を示す図である。
【図16】図14の帯状部分4を有する画像に対応する1次元の変動率分布を示す図である。
【図17】図18の相対度数分布濃度値に対応する画像を示す図である。
【図18】図17の帯状部分4を有する画像に対応する1次元の相対度数分布濃度値を示す図である。
【図19】変動率分布と相対度数分布濃度値とから、微結晶化部分を判定する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
2 結晶膜
4 帯状部分
9 検査装置
12 CCDカメラ
13 照明
14 制御装置
15 CPU
16 ROM
17 RAM
28 微結晶化部分
Claims (4)
- 結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定する第1工程と、
第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める第2工程と、
第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定する第3工程と、
前記第3工程の判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する第4工程とを有し、
第1工程は、
前記第1方向が含まれると予想される所定範囲内の複数方向に関して、前記複数方向のうちの一方向に沿った濃度値の分散を、前記一方向と交差する方向の複数の位置において求める第1段階と、
前記複数の位置において求めた一方向に沿う複数の濃度値の分散の平均を求める第2段階と、
前記所定範囲内の複数方向について、第1および第2段階を繰り返し実行する第3段階と、
第3段階で各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定する第4段階とを備えることを特徴とする結晶膜の検査方法。 - 結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定する第1工程と、
第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める第2工程と、
第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定する第3工程と、
前記第3工程の判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する第4工程とを有し、
第2工程は、
第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の平均値となる分布位置の濃度値の分布を表す平均値濃度分布を求める段階と、
平均値濃度分布に、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行う段階と、
前記第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の累積相対度数分布の分布値が予め定めた値となる濃度値の第2方向の分布を表す相対度数値濃度分布を求める段階とを備え、
第3工程において、前記排除する処理を行う段階で求められる分布特性、および相対度数値濃度分布を求める段階で求められる分布特性から、微結晶化部分を特定することを特徴とする結晶膜の検査方法。 - 結晶膜に光を照射する照射手段と、
結晶膜を撮像する撮像手段と、
照射手段および撮像手段を用いて、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定し、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める濃度分布算出手段と、
第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定し、この判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する判定手段とを有し、
濃度分布算出手段は、
前記第1方向が含まれると予想される所定範囲内の複数方向に関して、前記複数方向のうちの一方向に沿った濃度値の分散を、前記一方向と交差する方向の複数の位置において求め、
前記複数の位置において求めた一方向に沿う複数の濃度値の分散の平均を求め、
前記所定範囲内の複数方向について、濃度値の分散および濃度値の分散の平均を求める ことで各方向毎に求められる分散の平均に基づいて、複数方向のうちの1つの方向を第1方向として特定することを特徴とする結晶膜の検査装置。 - 結晶膜に光を照射する照射手段と、
結晶膜を撮像する撮像手段と、
照射手段および撮像手段を用いて、結晶膜を厚み方向一方側から撮像した画像であって、複数列の帯状部分を有する画像に基づいて、帯状部分の延在方向である第1方向を特定し、第1方向の濃度値の分布を表す第1濃度分布を求めるとともに、第1方向と交差する第2方向の濃度値の分布を表す第2濃度分布を求める濃度分布算出手段と、
第2濃度分布の分布特性に基づいて、結晶膜における微結晶の有無を判定し、この判定結果に基づいて、結晶膜の結晶化不良を判定する判定手段とを有し、
濃度分布算出手段は、
第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の平均値となる分布位置の濃度値の分布を表す平均値濃度分布を求め、
平均値濃度分布に、予め定める濃度値以下の濃度値を排除する処理を行い、
前記第2濃度分布に対し、前記第1濃度分布の累積相対度数分布の分布値が予め定めた値となる濃度値の第2方向の分布を表す相対度数値濃度分布を求め、
判定手段は、
前記排除する処理を行うことで求められる分布特性、および相対度数値濃度分布を求めることで求められる分布特性から、微結晶化部分を特定することを特徴とする結晶膜の検査装置。
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