JP3954134B2 - ディスクブレーキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両等に制動力を与えるのに好適に用いられるディスクブレーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術によるディスクブレーキを図4および図5に基づいて説明する。
【0003】
図中、1は車両の車輪と共に回転するディスク、2は該ディスク1のインナ側となる位置で車両の非回転部分に一体的に取付けられる取付部材としての取付ブラケットを示し、該取付ブラケット2はディスク1の周方向に離間して、ディスク1の外周を跨ぐように軸方向に伸長した一対の腕部3,3を備えている。
【0004】
ここで、各腕部3には図5に示す如く、後述する摺動ピン4のピン軸部4Aが挿嵌されるピン挿嵌穴3Aが有底のガイド穴として軸方向に形成されている。また、ピン挿嵌穴3Aの開口端側外周には、ブーツ取付部3Bが環状に突出形成され、その外側面には、後述する保護ブーツ7の取付部7Bを嵌合させる嵌合溝3Cが該取付部7Bの内径よりも大きな溝径をもって形成されている。
【0005】
4,4は各腕部3のピン挿嵌穴3Aに挿嵌された一対の摺動ピンを示し、該各摺動ピン4のピン軸部4Aは、一端側がピン挿嵌穴3Aに摺動可能に挿嵌され、他端側がピン挿嵌穴3Aの開口端側から突出している。また、ピン軸部4Aの他端側には、後述のキャリパ5に対するキャリパ固定部4Bが段付きの六角形をなして形成され、該キャリパ固定部4B内にはねじ穴4Cが形成されている。
【0006】
また、ピン軸部4Aとキャリパ固定部4Bとの間には、該ピン軸部4Aの基端側から径方向外向きに突出する環状突起部4Dが一体形成され、該環状突起部4Dとキャリパ固定部4Bとの間は後述する保護ブーツ7用の嵌合溝4Eとなっている。さらに、環状突起部4Dの一側は、突起部4Dの外周側からピン軸部4Aの外周面に向けて緩やかに傾斜する凹湾曲状のガイド面4Fとなっている。
【0007】
5は取付ブラケット2に各摺動ピン4を介して摺動可能に支持されたキャリパを示し、該キャリパ5は図4に示すように、ディスク1のインナ側に配設され、例えば1個または2個のシリンダ(図示せず)が内周側に形成されたインナ脚部5Aと、該インナ脚部5Aからディスク1のアウタ側へと該ディスク1の外周側を跨ぐように延設されたブリッジ部5Bと、該ブリッジ部5Bのアウタ側に位置してインナ脚部5Aと略平行に配設されたアウタ側の爪部5Cと、インナ脚部5Aの両端側から図4中の左,右にそれぞれ突設され、各摺動ピン4が取付けられる一対のピン取付部5D,5Dとから構成されている。
【0008】
6,6は各摺動ピン4をキャリパ5に取付けるボルトで、該各ボルト6は、キャリパ5の各ピン取付部5Dに穿設したボルト挿通穴5E内に挿通され、摺動ピン4のねじ穴4Cに螺着されることにより、該各摺動ピン4のキャリパ固定部4Bをキャリパ5の各ピン取付部5Dに一体的に固定している。
【0009】
7は摺動ピン4と取付ブラケット2のピン挿嵌穴3Aとの間を保護する保護ブーツを示し、該保護ブーツ7は図5に示すように、例えばゴム等の弾性材料から蛇腹状に形成され、断面略W字状をなす伸縮部7Aの両端側には、環状の取付部7B,7Cが伸縮部7Aよりも厚肉となって一体形成されている。そして、保護ブーツ7は、伸縮部7Aが摺動ピン4のピン軸部4Aの外周側に挿通され、取付部7Bが腕部3の嵌合溝3C内に締代をもって嵌合されると共に、取付部7Cが摺動ピン4の嵌合溝4E内に締代をもって嵌合され、摺動ピン4とピン挿嵌穴3Aとの摺動面に外部からゴミや雨水等の異物が侵入するのを防止している。
【0010】
8,8はキャリパ5によりディスク1の両面に押圧される一対の摩擦パッドで、該各摩擦パッド8は図4に示すように、ディスク1の両面側でキャリパ5のインナ脚部5Aとアウタ側の爪部5Cとの間にそれぞれ配設され、取付ブラケット2によりディスク1の軸方向に摺動可能に支持されている。
【0011】
このように構成される従来技術のディスクブレーキでは、キャリパ5の各シリンダ内に外部からブレーキ液圧が供給されることより、これらのシリンダ内に挿嵌されたピストン(図示せず)が摺動し、インナ側の摩擦パッド8をディスクに向けて押圧する。これにより、キャリパ5はディスク1のインナ側から離間する方向に反力を受け、この方向に向けて取付ブラケット2に対し摺動変位することにより、アウタ側の摩擦パッド8をディスク1に押圧するから、ディスク1は各摩擦パッド8により両面側から制動力を付与される。
【0012】
一方、保護ブーツ7の組付け工程について述べると、まず腕部3のピン挿嵌穴3A内に摺動ピン4を挿嵌する前に、保護ブーツ7の取付部7Bを腕部3の嵌合溝3C内に嵌合させることにより、保護ブーツ7をピン挿嵌穴3Aの外周側から軸方向に突出するように保護ブーツ7の取付部7Bを腕部3に取付ける。
【0013】
次に、例えば自動組付け装置等を用いて摺動ピン4のピン軸部4Aを保護ブーツ7の取付部7C側から伸縮部7A内に挿入し、該伸縮部7A内を介して腕部3のピン挿嵌穴3A内へと図5中の矢示A方向に挿嵌する。そして、保護ブーツ7の取付部7Cを摺動ピン4の嵌合溝4Eに嵌合するために、下記のように取付け作業を行う。
【0014】
即ち、ピン軸部4Aをピン挿嵌穴3A内に挿嵌してゆくと、摺動ピン4のガイド面4Fが保護ブーツ7の取付部7Cに内周側から摺接するようになる。そして、この状態でさらにピン軸部4Aをピン挿嵌穴3A内に挿嵌することにより、保護ブーツ7と摺動ピン4との環状空間9内に封入された空気が圧縮され、このときの圧力により保護ブーツ7の取付部7Cはガイド面4Fに沿って外向きに拡径されるように弾性変形する。
【0015】
この結果、保護ブーツ7の取付部7Cはガイド面4F上を環状突起部4Dの外周側に向けて相対的に摺動し、該環状突起部4Dの外周側で最大に拡径した後に、これを乗越えるように嵌合溝4E内に嵌合される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、保護ブーツ7の組付け時に、摺動ピン4を保護ブーツ7の伸縮部7A内を介して腕部3のピン挿嵌穴3A内に挿入すると、環状空間9内の空気圧により、保護ブーツ7の取付部7Cが摺動ピン4のガイド面4Fに沿って環状突起部4D上へと摺動し、該環状突起部4Dを乗越えるように嵌合溝4E内に嵌合される。
【0017】
しかし、保護ブーツ7はゴム等の摩擦抵抗が大きい材料によって形成されているから、摺動ピン4をピン挿嵌穴3A内へと図5中の矢示A方向に挿嵌しても、保護ブーツ7の取付部7Cが摩擦抵抗によりガイド面4Fの途中位置で止まってしまう。そして、摺動ピン4をこの状態からさらにピン挿嵌穴3A内に挿嵌すると、保護ブーツ7の取付部7Cが伸縮部7A内に向けて巻込まれるように矢示B方向に屈曲してしまうことがある。
【0018】
このため、従来技術では、作業者等が自動組付け装置等の運転を一旦停止し、摺動ピン4のガイド面4F上に止まったまま伸縮部7A内に巻込まれた取付部7Cを、手作業で巻戻すようにして摺動ピン4の嵌合溝4E内に取付け直さなければならず、保護ブーツ7の組付けや交換等の作業に手間がかかるという問題がある。
【0019】
本発明は上述した従来技術の問題を鑑みなされたもので、保護ブーツの取付部を摺動ピンの嵌合溝内に容易に嵌合でき、保護ブーツの組付けや交換等の作業を円滑に行うことができると共に、その作業効率やメンテナンス性を大幅に向上できるようにしたディスクブレーキを提供することを目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明は、車両の非回転部分に取付けられ、ディスクを跨ぐように配設される腕部にガイド穴が形成された取付部材と、該取付部材のガイド穴内に摺動可能に挿嵌される摺動ピンと、該摺動ピンを介して前記取付部材に支持され、前記ディスクの軸方向に摺動変位するキャリパと、前記ガイド穴と摺動ピンとの摺動面を保護するため、一端側が前記ガイド穴の開口端側に位置して前記取付部材の腕部の外周側に取付けられ、他端側が摺動ピンの外周側に取付けられる環状の取付部となった保護ブーツとからなるディスクブレーキに適用される。
【0021】
そして、請求項1に記載の発明が採用する構成の特徴は、前記摺動ピンを、少なくとも一端側が前記取付部材のガイド穴内に摺動可能に挿嵌されるピン軸部と、該ピン軸部の他端側に一体形成され、前記キャリパにボルトにより固定するためのねじ穴を有するキャリパ固定部と、該キャリパ固定部と前記ピン軸部との間に設けられ、該キャリパ固定部との間に前記保護ブーツの取付部を嵌合させる嵌合溝を形成した環状突起部と、該環状突起部と前記ピン軸部との間に位置して該ピン軸部よりも大径で環状突起部よりも小径で、前記ピン軸部の外周側とほぼ平行の環状に形成され、かつ、前記保護ブーツの取付部にほぼ対応する軸方向寸法に形成された平坦面部を有するブーツガイド部とから構成し、該ブーツガイド部の平坦面部は、前記摺動ピンの軸方向で前記キャリパ固定部のねじ穴とは重ならない位置に配置する構成としたことにある。
【0022】
このように構成することにより、保護ブーツの組付け時にはその一端側をガイド穴の開口端側に取付け、該保護ブーツの他端側から摺動ピンのピン軸部を腕部のガイド穴内に挿嵌することにより、保護ブーツの取付部を環状突起部よりも小径なブーツガイド部上に簡単に乗上げさせることができる。そして、ブーツガイド部は保護ブーツの取付部にほぼ対応する軸方向寸法を有しているから、ピン軸部をガイド穴内にさらに深く挿嵌することにより、取付部をブーツガイド部上で引摺って保護ブーツの内側に撓ませることなく、該ブーツガイド部上から環状突起部上へと取付部を安定して乗り上げさせることができ、その後に嵌合溝内へと確実に嵌合できる。
【0023】
また、請求項2に記載の発明では、前記ブーツガイド部の平坦面部を、その外周面が前記保護ブーツの取付部に対して締代を与えるように該取付部の内径よりも大なる外径寸法をもって形成したことにある。
【0024】
これにより、保護ブーツの取付部を摺動ピンのブーツガイド部上に弾性的に乗上げさせた状態で取付部に締代を与えることができるから、保護ブーツと摺動ピンとの間に形成される環状空間内に空気を封入した密閉状態に保持できる。そして、ピン軸部をこの状態から腕部のガイド穴内にさらに深く挿嵌すると、保護ブーツが軸方向に縮んで前記環状空間内の空気を圧縮するようになるから、このときの圧力により保護ブーツの取付部を摺動ピンの環状突起部上へと押圧でき、該取付部を嵌合溝内に円滑に嵌合できると共に、取付部が保護ブーツ内に巻込まれるのを確実に防止できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。なお、実施例では、従来技術と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0026】
図中、11は本実施例によるディスクブレーキの摺動ピンを示し、該摺動ピン11は、従来技術で述べた摺動ピン4とほぼ同様に形成されているものの、該摺動ピン11は後述のブーツガイド部16を有している点で従来技術によるものとは異なっている。
【0027】
12は一端側が腕部3のピン挿嵌穴3A内に摺動可能に挿嵌されたピン軸部で、該ピン軸部12の他端側はピン挿嵌穴3Aから突出している。13はキャリパ5のピン取付部5Dに固定されるキャリパ固定部で、該キャリパ固定部13はピン軸部12の他端側に一体形成され、その外形状はキャリパ5側への取付け時等にスパナ等の工具を係合させるために横断面が六角形状をなしている。また、キャリパ固定部13にはねじ穴13Aが形成され、該ねじ穴13Aにはボルト6が螺着されることにより、摺動ピン11はキャリパ5のピン取付部5Dに固定されている。
【0028】
14はキャリパ固定部13とピン軸部12との間に一体形成された環状突起部を示し、該環状突起部14はピン軸部12の外周側に対し径方向外向きに突出し、その外径は寸法D1 となっている。そして、環状突起部14はキャリパ固定部13との間に嵌合溝15を形成し、該嵌合溝15には保護ブーツ7の取付部7Cが締代をもって嵌合される。
【0029】
16は本実施例によるブーツガイド部を示し、該ブーツガイド部16は環状突起部14とピン軸部12との間に一体形成され、該ピン軸部12の外周側から径方向外向きに突出している。そして、ブーツガイド部16は図1および図3に示す如く、その軸方向中間部位の外周面がピン軸部12の外周側とほぼ平行に形成された環状の平坦面部16Aとなり、該平坦面部16Aの両端側には、該平坦面部16Aからピン軸部12の外周側に向けて凸湾曲状に縮径する環状のガイド面部16Bと、平坦面部16Aから環状突起部14の外周側に向けて凹湾曲状に拡径するガイド面部16Cとが形成されている。そして、ブーツガイド部16の平坦面部16Aは、図1、図2に示す如く、キャリパ固定部13のねじ穴13Aに対して軸方向で重ならない位置に形成されている。
【0030】
ここで、ブーツガイド部16の平坦面部16Aはその外径寸法D2 が、環状突起部14の寸法D1 よりも小さく(D2 <D1 )、保護ブーツ7の取付部7Cが自由長状態となったときの内径D3 (図2中に一点鎖線で示す)よりも大きく(D3 <D2 )なるように形成されている。また、平坦面部16Aの軸方向寸法L2 は、保護ブーツ7の取付部7Cの軸方向寸法L1 とほぼ等しく、前記ガイド面部16B,16Cはその湾曲形状部分の長さ寸法が従来技術のガイド面4Fの湾曲形状部分の長さ寸法よりも大幅に短縮して形成されている。
【0031】
本実施例によるディスクブレーキは上述の如き構成を有するもので、その基本的作動については従来技術によるものと格別差異はない。
【0032】
然るに、本実施例では、摺動ピン11の環状突起部14とキャリパ固定部13との間に保護ブーツ7用の嵌合溝15を形成し、環状突起部14とピン軸部12との間には、該ピン軸部12よりも大径で環状突起部14よりも小径のブーツガイド部16と共に、該ブーツガイド部16の軸方向両端側に位置してピン軸部12および環状突起部14に向け湾曲するガイド面16B,16Cを形成する構成としたから、保護ブーツ7を摺動ピン11の外周側に組付ける工程では、その取付部7Cをブーツガイド部16を介して2段階に拡径させつつ、環状突起部14上に容易に乗上げさせることができ、保護ブーツ7の取付部7Cを環状突起部14から嵌合溝15内に円滑に嵌合できる。
【0033】
即ち、保護ブーツ7の組付け工程では、まず保護ブーツ7の取付部7B側を腕部3側に取付けた状態で、保護ブーツ7の取付部7C側から摺動ピン11のピン軸部12を腕部3のピン挿嵌穴3A内に挿嵌することにより、保護ブーツ7の取付部7Cをブーツガイド部16のガイド面部16Bに沿って徐々に拡径させつつ、ブーツガイド部16の平坦面部16A上に安定して乗上げさせることができる。
【0034】
そして、ブーツガイド部16の平坦面部16Aを、その外径が保護ブーツ7の取付部7Cの内径よりも大きくなるように形成したから、該取付部7Cを平坦面部16A上に締代をもって乗上げさせることができ、保護ブーツ7と摺動ピン11との間の環状空間17内に空気を封入した密閉状態に保持できる。この結果、ピン軸部12をこの状態から図2中の矢示A方向に向けてピン挿嵌穴3A内へとさらに深く挿嵌すると、該環状空間17内で圧縮された空気の圧力により、保護ブーツ7の取付部7Cを環状突起部14上に向け図3中の矢示C方向へと拡開させるように押圧することができる。
【0035】
さらに、ブーツガイド部16の平坦面部16Aを保護ブーツ7の取付部7Cとほぼ等しい軸方向寸法をもって形成したから、環状空間17内の圧力により矢示C方向へと押圧された保護ブーツ7の取付部7Cを、平坦面部16A上で軸方向に摺動させることなく、該平坦面部16Aからブーツガイド部16のガイド面部16Cに沿って環状突起部14上に安定して乗上げさせることができ、保護ブーツ7の取付部7Cが平坦面部16A上を摺動することにより、取付部7Cが伸縮部7A内に巻込まれるのを確実に防止できると共に、該取付部7Cを環状突起部14上から嵌合溝15内へと円滑に嵌合させることができる。
【0036】
従って、本実施例によれば、保護ブーツ7を取付ブラケット2の腕部3と摺動ピン11との間に従来技術と同様の組付け工程によって円滑に組付けることができ、保護ブーツ7の取付部7Cが伸縮部7A内に巻込まれることによって組付け工程が途中で中断したり、その工数が増大したりするのを確実に防止できると共に、ディスクブレーキの組立時の作業性やメンテナンス性を大幅に向上させることができる。
【0037】
また、ブーツガイド部16の平坦面部16Aが保護ブーツ7の取付部7Cとほぼ等しい軸方向寸法となるように、平坦面部16Aの軸方向寸法を比較的短い寸法に形成しているから、該平坦面部16Aの端部が保護ブーツ7の伸縮部7Aに接触したりするのを防止でき、キャリパ5の摺動変位に悪影響を及ぼす等の問題を解消できる。
【0038】
なお、前記実施例では、ブーツガイド部16に凸湾曲状および凹湾曲状のガイド面部16B,16Cを形成したが、本発明はこれに限らず、ガイド面部16B,16Cをテーパ状の傾斜面として形成してもよい。
【0039】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1に記載の発明によれば、摺動ピンのピン軸部とキャリパ固定部との間に保護ブーツ用の嵌合溝を形成する環状突起部を設けると共に、環状突起部とピン軸部との間には、該ピン軸部よりも大径で環状突起部よりも小径で、前記ピン軸部の外周側とほぼ平行の環状に形成され、かつ、前記保護ブーツの取付部にほぼ対応する軸方向寸法に形成された平坦面部を有するブーツガイド部を設け、該ブーツガイド部の平坦面部は、前記摺動ピンの軸方向で前記キャリパ固定部のねじ穴とは重ならない位置に配置する構成としたから、保護ブーツを摺動ピンの外周側に組付けるときには、保護ブーツの取付部をブーツガイド部を介して2段階に拡径させつつ、環状突起部上に容易に乗上げさせることができ、保護ブーツの取付部を環状突起部上から嵌合溝内に円滑に嵌合できる。また、ブーツガイド部を保護ブーツの取付部にほぼ対応する軸方向寸法に形成したことから、保護ブーツの取付部をブーツガイド部上で引摺ることなく、ブーツガイド部上から環状突起部上に安定して乗上げさせることができ、保護ブーツの取付部がブーツガイド部上で引摺られ保護ブーツ内に巻込まれるのを確実に防ぐことができると共に、ブレーキ操作時等に保護ブーツの一部がブーツガイド部に接触、干渉したりするのを防止できる。そして、保護ブーツを取付部材の腕部と摺動ピンとの間に従来技術と同様の組付け作業によって円滑に組付けることができ、保護ブーツの取付部がその内部に巻込まれることによって組付け作業が途中で中断したり、組付け作業の工数が増大したりするのを確実に防止できると共に、ディスクブレーキの組立時の作業性やメンテナンス性を大幅に向上させることができる。
【0040】
また、請求項2に記載の発明によれば、ブーツガイド部の平坦面部は、その外径を保護ブーツの取付部の内径よりも大きく形成したから、取付部をブーツガイド部上に締代をもって乗上げさせ、保護ブーツと摺動ピンとの間に形成される環状空間内に空気を封入した密閉状態に保持できると共に、ピン軸部をこの状態から腕部のガイド穴内にさらに深く挿嵌することにより、前記環状空間内で圧縮された空気の圧力によって保護ブーツの取付部を摺動ピンの環状突起部上へと確実に押圧することができる。従って、保護ブーツの取付部が該保護ブーツ内に巻込まれるのを確実に防止できると共に、該取付部を嵌合溝内に円滑に嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるディスクブレーキの摺動ピンおよび保護ブーツ等を拡大して示す縦断面図である。
【図2】図1中の保護ブーツを摺動ピンに組付ける状態を示す縦断面図である。
【図3】保護ブーツの取付部および摺動ピンのブーツガイド部等を示す図2中の要部拡大図である。
【図4】従来技術によるディスクブレーキを示す一部破断の外観図である。
【図5】保護ブーツの組付け状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ディスク
2 取付ブラケット(取付部材)
3 腕部
3A ピン挿嵌穴(ガイド穴)
5 キャリパ
7 保護ブーツ
7C 取付部
11 摺動ピン
12 ピン軸部
13 キャリパ固定部
14 環状突起部
15 嵌合溝
16 ブーツガイド部
Claims (2)
- 車両の非回転部分に取付けられ、ディスクを跨ぐように配設される腕部にガイド穴が形成された取付部材と、該取付部材のガイド穴内に摺動可能に挿嵌される摺動ピンと、該摺動ピンを介して前記取付部材に支持され、前記ディスクの軸方向に摺動変位するキャリパと、前記ガイド穴と摺動ピンとの摺動面を保護するため、一端側が前記ガイド穴の開口端側に位置して前記取付部材の腕部の外周側に取付けられ、他端側が摺動ピンの外周側に取付けられる環状の取付部となった保護ブーツとからなるディスクブレーキにおいて、
前記摺動ピンは、少なくとも一端側が前記取付部材のガイド穴内に摺動可能に挿嵌されるピン軸部と、該ピン軸部の他端側に一体形成され、前記キャリパにボルトにより固定するためのねじ穴を有するキャリパ固定部と、該キャリパ固定部と前記ピン軸部との間に設けられ、該キャリパ固定部との間に前記保護ブーツの取付部を嵌合させる嵌合溝を形成した環状突起部と、該環状突起部と前記ピン軸部との間に位置して該ピン軸部よりも大径で環状突起部よりも小径で、前記ピン軸部の外周側とほぼ平行の環状に形成され、かつ、前記保護ブーツの取付部にほぼ対応する軸方向寸法に形成された平坦面部を有するブーツガイド部とから構成し、
該ブーツガイド部の平坦面部は、前記摺動ピンの軸方向で前記キャリパ固定部のねじ穴とは重ならない位置に配置する構成としたことを特徴とするディスクブレーキ。 - 前記ブーツガイド部の平坦面部は、その外周面が前記保護ブーツの取付部に対して締代を与えるように該取付部の内径よりも大なる外径寸法をもって形成してなる請求項1に記載のディスクブレーキ。
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