JP3953844B2 - ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物、及びそれを用いた成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形品を所望の色調に着色することが容易となるように、樹脂組成物自体の色が白色に近く、日光、蛍光灯など紫外線領域を含む光に対しての変色性が小さく、長期間にわたって光に曝される環境下で使用した場合も変色する、という挙動を低減した、内装用、外装用の化粧板や各種部品等に供される樹脂成形品(特にはフィルム)とそれを製造するためのポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一旦施工されると長期間にわたって取り替えられることがない内装用、外装用樹脂部品材料としてはポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル等が多く使用されてきた。これらの樹脂は安価で、比較的簡単に耐紫外線性を改良でき、成形品の表面外観が綺麗に成形できるために、特に外観部品と呼ばれる通常光に曝され、人の目に触れる部品として多用されてきた。
【0003】
これらの材料のうち、塩化ビニルは柔軟で耐傷つき性も良好なことから壁紙、床材等として多用されてきた。ところが廃棄、焼却時の有毒ガス発生問題や、火災時の有毒ガス発生原因物質として、近年は特に内装用材料としては使われなくなってきた。またポリカーボネートや変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)は非晶性樹脂であり、耐薬品性が結晶性樹脂より劣ることから洗浄用や滅菌消毒用としてアルコールや次亜塩素酸系薬品を使用するキッチン、実験室や食品製造現場等では使用できない問題点があった。
【0004】
衛生性や耐薬品性が高い結晶性樹脂のうち、ポリエチレンやポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂を使用した壁紙、床材などは一部実用化されているが、これらオレフィン系樹脂は表面硬度が低く、耐傷つき性が悪いために、特に壁紙等では僅かに何かが触れただけで傷ついてしまい、外観が悪くなったり、他の材料との接着性が劣るために、切断や折り曲げ加工時に簡単に剥がれたり、施工後の壁や床からすぐ剥がれたりして問題となっていた。
【0005】
またセルロースを主成分とした紙は、紫外線で比較的簡単に黄色に変色する一方、簡単に燃えてしまい、集合住宅や学校、病院、事業所等、多数の人が出入り、生活する場所での使用は、好ましいとは言い難い材料であった。
トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を配合したポリブチレンテレフタレート系樹脂に関しては、例えば特開平10−1599号公報に記載されている。この技術は、紫外線吸収剤を重合時にモノマーと一緒に重合缶に仕込んで反応させる方法である。本方法は、生産効率は優れているが、重合缶の清掃に時間がかかったりして、着色を行うような場合の、少量他品種生産には適していない。また、重縮合の際の高温真空環境で飛散し、得られるポリマー中の紫外線吸収材料の量が一定とならなかったりして好ましくない。さらに本公開公報では、総合的な色目の変化であるΔEについての紫外線暴露試験後の結果を述べているが、この結果からではb値(青〜黄色/数値の大きい方が黄色みが強くなる)の改良効果についての開示はなく、予測もできない。
また特開平10−306209号公報には、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に、トリアジン系紫外線吸収剤とラクトン系熱安定剤を併用することの記載や、その場合の効果の示唆はなく、実施例でも、紫外線照射試験をする前の色目についてのデータ開示はなされておらず、紫外線照射試験前の樹脂の色目を出来るだけ白に近づけるいう技術思想はない。
【0006】
【課題を解決するための課題】
本発明の目的は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物から製造される成形品の初期の色が白色に近く、良好な耐薬品性、耐傷つき性を有し、更に長期間にわたって紫外線に曝されたときの黄色変色が少なく、火災や焼却処分時にも有毒ガスを発生させない特性を発揮する成形品が得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、検討を重ね、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に特定の紫外線吸収剤を配合すると、特に黄色に変色したことを示すb値が、配合直後において、初期の色調が白色に近いことを示す程度に低く、更に長期間にわたっても、このb値の変化が小さく抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の要旨は、動的粘弾性法で測定したガラス転移温度が0℃〜85℃であるポリブチレンテレフタレート系樹脂と、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤0.05〜4重量%(wt%)と、ラクトン系熱安定剤0.01〜3wt%を含むことを特徴とする、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物、およびこの組成物から製造された成形品に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に使用されるポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下PBTと略す)は、ジカルボン酸としてテレフタル酸及び/又はそのエステル誘導体と、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを出発物質をして、縮重合して得られ、動的粘弾性法で測定したガラス転移温度が0℃〜85℃であるものである。
【0009】
該PBTの原料として用いられるテレフタル酸及び/またはそのエステル誘導体成分(以下テレフタル酸成分と略す)以外のジカルボン酸成分としては、具体的には、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸及び/またはこれらのエステル誘導体等が挙げられる。
【0010】
上記ジカルボン酸成分の他に、更に、例えば、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、及び、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分またはそのエステル誘導体、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分、またはそのエステル誘導体の一種又は二種以上が、共重合成分として用いられてもよい。
【0011】
もう1つのPBTのジオール成分として1,4ーブタンジオールを主成分とするが、それ以外のジオール成分としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール等が挙げられる。
【0012】
これらのジカルボン酸成分やジオール成分は主成分であるテレフタル酸成分や1,4ーブタンジオールと併せて使用し、且つ、2種類以上を同時に用いても良い。本発明のPBTとしては、実質的にテレフタル酸成分と1,4−ブタンジオールからなるホモPBT、若しくはテレフタル酸及び/またはそのエステル誘導体からなるジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを主成分とする2種以上のジオール混合物からなるジオール成分の重縮合物、テレフタル酸及び/またはそのエステル誘導体を主成分とする2種以上のジカルボン酸混合物からなるジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを主成分とする2種以上のジオール混合物からなるジオール成分の重縮合物が好ましい。
【0013】
テレフタル酸及び/またはそのエステル誘導体や、1,4−ブタンジオール、並びにこれらと併用されるジカルボン酸成分及び/またはそのエステル誘導体、及びジオール成分の使用量は、得られる共重合PBTの動的粘弾性法で測定したガラス転移温度が0〜85℃の範囲となる量で、適宜選択される。なお、耐薬品性や耐紫外線性の点からテレフタル酸及び/またはそのエステル誘導体は、ジカルボン酸成分の50重量%以上、また、1,4−ブタンジオールはジオール成分の50重量%以上であることが望ましい。
PBTの溶融粘度は、特に限定されるものではないが、フィルム成形のしやすさを考慮すると、250℃、せん断速度91.2(1/秒)、ノズル口径1mmφ、ノズル流路長30mm(L/D=30)の条件で測定した溶融粘度が400〜2500Pa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは600〜1300Pa・sである。
【0014】
本発明で使用するPBTの製造方法は、特に限定されるものではなく、基本的には、ポリブチレンテレフタレート系樹脂の慣用の製造方法を採用することができる。即ち、テレフタル酸及び/またはそのエステル誘導体を主成分とする前記ジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とする前記ジオール成分とを、単数若しくは複数のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒の存在下に、通常150〜280℃、好ましくは180〜265℃の温度、通常50〜1000torr(6666〜133322Pa)、好ましくは70〜760torr(9333〜101325Pa)の圧力下で、攪拌下に2〜5時間エステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、単数若しくは複数の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に、通常210〜280℃、好ましくは220〜265℃の温度、通常200torr(26664Pa)以下、好ましくは150torr(19998Pa)以下の減圧下で、攪拌下に2〜5時間重縮合反応させる。反応形式は連続式、半連続式、或いは回分式のいずれであってもよい。又、重縮合反応により得られた樹脂は、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら、若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体とされる。
【0015】
エステル化反応触媒としては少なくともチタン化合物が用いられ、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等が代表的なものとして挙げられ、その使用量は、例えばテトラブチルチタネートの場合、ポリブチレンテレフタレート系樹脂の理論収量に対してチタン原子として、通常30〜300ppm、好ましくは50〜200ppmである。また、エステル化反応触媒として、前記チタン化合物の他に加えて、例えば、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、ジルコニウム化合物等を用いることもできる。
【0016】
重縮合反応触媒としては、エステル化反応時に添加したエステル化反応触媒を引き続いて重縮合反応触媒として用いることにより新たな触媒の添加を行わなくてもよいが、エステル化反応時に添加したエステル化反応触媒と同じ触媒を更に添加してもよく、そのときの使用量は、例えばテトラブチルチタネートの場合、ポリブチレンテレフタレート系樹脂の理論収量に対してチタン原子として、通常300ppm以下、好ましくは150ppm以下である。又、エステル化反応時に添加したエステル化反応触媒とは異なる、例えば、三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物等を新たに添加してもよい。
【0017】
前記エステル化反応、又は/及び、重縮合反応において、前記触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、及びそれらのエステルや金属塩等の燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物等の反応助剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3',5'−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール化合物、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物等の抗酸化剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸及びそのエステル、シリコーンオイル等の離型剤等の他の添加剤を存在させてもよい。
【0018】
エステル化反応槽としては、例えば、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等の型式のいずれであってもよく、又、単数槽としても、同種又は異種の槽を直列させた複数槽としてもよい。又、重縮合反応槽としては、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽等の型式のいずれであってもよく、又、単数槽としても、同種又は異種の槽を直列させた複数槽としてもよい。
【0019】
本発明で使用される紫外線吸収剤はトリアジン系のものを使用することが必要である。トリアジン系の紫外線吸収剤で、融点100℃以上の高いものである。
これは、コンパウンドや成形の際、スクリューフィード部付近での溶融がないために食い込みが安定する。また、トリアジン系紫外線吸収剤は、そのもの自体の着色が少なく、且つ樹脂に配合したときの樹脂の色目への影響が少なく、通常白色のPBTにおいては、その白色を変化させることが小さく、各種着色する場合において、色の調整がしやすく、特に白物用として望ましい。
本発明で使用するトリアジン系の紫外線吸収剤としては、下記式1で表される構造のものが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
その内でも特に2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−{(ヘキシル)オキシ}フェノール(チヌビン1577FF チバスペシャリティーケミカルズ社製)が市販されており、入手が容易であるので好ましい。
該紫外線吸収剤の配合量は、PBTと各種添加剤を合計した重量に対して0.05〜4wt%である。0.05wt%以下の添加量では、紫外線を照射したとき、短時間でb値が高くなり、樹脂が黄色く変色したのが目視でもわかるので、好ましくない。4wt%を越えると紫外線吸収剤自体で樹脂への着色が目立つようになり、各種着色し難くなるばかりではなく、成形品やフィルム表面にブリードアウトして粉吹き状態となり、好ましくない。さらに好ましい添加量としては0.1〜2wt%であり、より好ましくは0.2〜1wt%の範囲である。
紫外線吸収剤としては、上記のトリアジン系の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系等と併用しても良い。しかし、トリアジン系以外のものが多く含まれると、樹脂と混合し、成形品を成形した時点で黄色着色が強くなって好ましくない。
【0022】
本発明では、上記トリアジン系紫外線吸収剤とラクトン系熱安定剤を併用する。ラクトン系熱安定剤もそのもの自体が白色であり、PBTの色目に影響を与えない。また融点が比較的高く、主に200℃以上で成形するPBTに配合しやすい特徴がある。
本発明で使用するラクトン系熱安定剤は下記式2で示される構造式で表されるものが好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
具体例としては、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンの反応生成物等が上げられ、具体的にはHP−136(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が市販されており、入手が容易であるので好ましい。
該ラクトン系熱安定剤の配合量は0.01〜3wt%である。添加量が0.01wt%以下では、熱安定剤としての効果が小さく、紫外線照射時のb値の変化が大きくなってしまう。添加量が3wt%より多いと、成形品やフィルムの表面にブリードアウトして粉吹き状態となったり、原料コストが上がるので好ましくない。さらに好ましい添加量としては0.05〜1wt%であり、より好ましい範囲としては0.05〜0.5wt%である。
【0025】
本発明に使用する熱安定剤は、前述のラクトン系熱安定剤のみでも十分であるが、更にフェノール系やリン系の熱安定剤を併用すると更に効果的である。フェノール系熱安定剤としては例えばペンタエルスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。特に好ましい物質としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。
【0026】
本発明で使用するリン原子を含むリン系熱安定剤は、たとえばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4−ジイルビスフォスファイト、ビス(2,4−tert−ブチルフェニル)ペンタエルスリトールジフォスファイト、トリス(モノノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。特に好ましい物質としてはビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−tert−ブチルフェニル)ペンタエルスリトールジフォスファイトが挙げられる。
ラクトン系、フェノール系、リン系、それぞれの熱安定剤の添加量は上記の範囲内であれば問題なく、特にそれぞれの量比に制限はない。好ましい配合比は前述添加剤の順番で、例えば1:2:3〜1:3:2であり、ラクトン系に対してその他のものが2〜3倍量を配合するのがよい。本発明においては、該熱安定剤としてラクトン系のものを使用すれば、リン系やフェノール系を添加しても着色がほとんど起こらない。ただし、フェノール系が多すぎると、その色が樹脂組成物中で目立つようになり、また、リン系が多すぎると、PBTがゲル化したり、分解したりして好ましくない。
【0027】
上記紫外線吸収剤と熱安定剤をPBTに添加する方法は、公知の方法が採用できる。すなわち所定量の紫外線吸収剤及び熱安定剤をPBTに予めドライブレンドした後に直接成形するドライブレンド法;所定量の紫外線吸収剤及び熱安定剤をPBTに添加した後、一旦2軸混練機等で混練しその後、直接成形する方法;一旦2軸混練したものをストランド状に押し出してカットし、ペレットとした後、成形する全練り法;紫外線吸収剤及び熱安定剤を高濃度に配合した後に、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、1軸または2軸混練機を用いてPBTに練り込んだ後、ペレット化し、その高濃度ペレット(マスターバッチ)を所定の濃度になるように成形時に希釈して使用するマスターバッチ法等が採用できる。
また紫外線吸収剤を重合時に配合したPBT(特開平10−1599)、又は熱安定剤の一部を重合時に配合したPBTを使用することもできる。
【0028】
成形品を成形する際には、たとえばフィルムの場合は、前述の紫外線吸収剤と熱安定剤を配合した樹脂組成物を、1軸押出機にTダイやインフレーションダイを結合させたフィルム成形機やカレンダーロールを用いて通常フィルム成形を行う。Tダイを結合させたフィルム成形機では、平面上のフィルムやシートが得られ、インフレーションダイを結合させた場合は、チューブ状のフィルムを成形することが出来る。インフレーション成形においては、溶融樹脂を吐出させた後に空気を吹き付けて冷却する空冷インフレーション法、水を直接かけて冷却する水冷インフレーション法のいずれも可能である。壁紙など、広い幅の平面上のフィルム成形品が必要な場合は、Tダイ成形法が好ましい。
【0029】
射出成形する場合は、金型を用いて通常各種成形品を成形することが出来る。金型温度は特に制限はなく、成形サイクル、成形品の寸法、ソリ、外観等が最適化するように設定すればよい。
成形するに当たって、前述以外のヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系やヒンダードアミン系の熱安定剤、着色のための染顔料、離型剤や結晶核剤としての無機や有機のフィラー類、可塑剤、難燃材を、樹脂組成物に配合したものを用いても良い。
また、得られた成形品は、必要に応じて印刷したり、塗装したり、他の材料、例えば他の樹脂フィルムやシート、紙、金属板等と積層するなど、複合化したりすることも可能である。
【0030】
PBTは、ポリエステル樹脂であるので、通常は成形する前に熱風、真空、窒素雰囲気下等、適当な環境下で乾燥する。また押出機の種類によっては原料樹脂組成物を乾燥せず、押出機で溶融押出しながら、途中に真空ベントを設置することで、事前乾燥に替えることもできる。
このような本発明の樹脂組成物を用いた成形品は、紫外線照射前に色差計で測定したときのb値が5以下であるのが好ましい。b値は青色〜黄色への色を評価する項目で、数値が大きくなると黄色みを帯びてくる。b値が5以上であるとかなり黄色みが有ることを示し、着色する際、特に白系統の色への着色が困難となるので好ましくない。特に、純白に近い着色を行うためにはb値が4以下であるのが好ましい。
【0031】
得られた成形品は、紫外線での変色が少なく、室内や屋外で使用する壁紙や表面部材として好適である。紫外線による変色については促進試験としてウエザーメーターと呼ばれる評価装置で、通常より強い紫外線を照射して、促進試験を行うことで確認できる。ウエザーメーターでの紫外線照射試験条件は、用途によって様々ではあるが、建材の耐紫外線性評価の条件としては、ブラックパネル温度:63℃、102分紫外線照射、18分暗黒で雨のトータル120分の周期で連続的に紫外線照射と雨、暗黒を繰り返す試験が一般的である。この条件で、耐紫外線性照射試験200時間を行って、b値が10以下であるのがより好ましい。b値が10より大きくては、黄色みが強く、例えば壁紙などにした場合、短時間で壁が黄変して見苦しくなり、好ましくない。更に長期に使用される用途では、前述条件で紫外線照射をした後のb値は8以下がより好ましい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[使用したPBT樹脂]
PBT−1:IV値1.25、融点224℃、ホモPBT樹脂、ガラス転移温度80℃(商品名:NOVADURAN(登録商標)5020S 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品)
PBT−2:IV値1.15、融点222℃、ジオール成分の10wt%が分子量1000のポリブチレングリコールである共重合PBT樹脂、ガラス転移温度58℃(商品名:NOVADURAN(登録商標)5505S 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品)
PBT−3:IV値1.30、融点219℃、ジオール成分の20wt%が分子量1000のポリブチレングリコールである共重合PBT樹脂、ガラス転移温度22℃(商品名:NOVADURAN(登録商標)5510S 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品)
【0033】
[使用した紫外線吸収剤]
UV−1:トリアジン系紫外線吸収剤 2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(商品名;チヌビン1577FF、チバスペシャリティーケミカルズ社製品)
UV−2:トリアゾール系紫外線吸収剤 2−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(商品名;チヌビン234、チバスペシャリティーケミカルズ社製品)
【0034】
[使用した熱安定剤]
熱安1:3ーヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンの反応生成物(ラクトン系、商品名;HP−136、チバスペシャリティーケミカルズ社製品)
熱安2:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名;IRGANOX1010、チバスペシャリティ−ケミカルズ社製品)
熱安3:トリス(2、4ージーtert−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS168、チバスペシャリティーケミカルズ社製品)
熱安4:熱安1=15wt%、熱安2=28.3wt%、熱安3=56.7wt%の混合物(商品名:IRGANOX HP2215FF、チバスペシャリティーケミカルズ社製品)
【0035】
実施例1〜8、比較例1〜5
紫外線吸収剤:UV−1、UV−2、熱安定剤:熱安1、熱安2、熱安3は、それぞれ別々にPBT−2に5wt%添加してドライブレンドしたあと、2軸押出機(TEX30−HCT 日本製鋼社製)で樹脂温260℃でコンパウンドした後、ペレット化し、それぞれ添加剤濃度5wt%の高濃度マスターバッチを作製した。
この高濃度マスターバッチを使用し、下記表1及び表2に示すように、成形時の樹脂組成物中の添加剤濃度が、表に示した所定量になるよう、各々所定の使用樹脂(PBT−1、PBT−2、PBT−3)で希釈した樹脂組成物を用い、下記の条件で成形した。
(成形条件)
ASTM1号引張試験用ダンベルをJ75ED(日本製鋼社製)を用いて、シリンダー設定温度260℃、樹脂温265℃、金型温度80℃の条件、成形サイクル50秒で成形した。
紫外線照射試験はスガ試験機(株)社製サンシャインスーパーロングライフウエザーメーター 商品名:WEL−SUN−DC型を使ってブラックパネル温度63℃、120分サイクル(うち雨18分)の条件で紫外線照射試験を行った。色の変化は日本電色工業社製スペクトロカラーメーター 商品名:SE2000を用いて、紫外線照射前後の引張試験片の中央部付近で色(b値)を測定し、その変化について表1、表2にまとめて示した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
実施例9
実施例8の樹脂組成物を用いて、以下の条件で厚み70μmのフィルムを作製した。作製したフィルムを10cm角の鋼板にエポキシ系接着剤を用いて貼り付け、紫外線照射試験を行った。紫外線照射前のb値は3.0であり、200時間紫外線照射後のb値は7.5であった。
(フィルム成形条件)
押出機(口径40mmφ、L/D=25の単軸押出機、FS40−25、池貝社製品)の先端に、コートハンガータイプTダイ(幅600mm)を取り付け、シリンダー設定温度250〜260℃、ダイス設定温度260℃、冷却ロール温度40℃の条件で、単層フィルムをキャスト法により作製した。
【0039】
【発明の効果】
1.トリアジン系紫外線吸収剤とラクトン系熱安定剤を併用したポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、この樹脂組成物から得られる成形品は、初期のb値が小さく、白い成形品の製造が可能である(実施例1〜実施例3、比較例5)。
2.トリアジン系紫外線吸収剤とラクトン系熱安定剤を併用したポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、この樹脂組成物から得られる成形品は、紫外線照射後のb値変化が小さく、長期間光に曝される部品(製品)、壁紙などの製造用に使用しても、部品の黄変が少なく、良好なものが得られる(実施例1〜実施例3、比較例1)。
3.ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物には、トリアジン系紫外線吸収剤とラクトン系熱安定剤に、更にフェノール系やリン系の熱安定剤を添加すると、この樹脂組成物から得られる成形品は、更に紫外線照射後のb値変化が小さく、より白い状態を保つことが出来る(実施例4〜実施例6、実施例8)。
4.ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物に、トリアジン系紫外線吸収剤を多量に添加すると、この樹脂組成物から得られる成形品は、紫外線照射前のb値が高く、黄色くなるばかりでなく、成形品表面に滲み出てきて粉吹き状態となり、実用に耐えられなくなる(比較例3)。
Claims (6)
- 動的粘弾性法で測定したガラス転移温度が0℃〜85℃であるポリブチレンテレフタレート系樹脂と、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤0.05〜4重量%(wt%)と、ラクトン系熱安定剤0.01〜3wt%を含むことを特徴とする、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
- ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物に、さらにフェノール系熱安定剤0.01〜3.0wt%とリン系熱安定剤を0.01〜3.0wt%とを含む請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
- 請求項1又は請求項2に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を原料として製造された成形品。
- 成形品が、色差計で測定したb値が5以下である請求項3に記載の成形品。
- 成形品が、ブラックパネル63℃、120分(内雨18分)の条件のウエザーメーターで紫外線処理200時間後のb値が10以下である請求項3に記載の成形品。
- 成形品がフィルムである、請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の成形品。
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