JP3951957B2 - 動力出力装置及びその制御方法並びに車両 - Google Patents

動力出力装置及びその制御方法並びに車両 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも発電機としての機能を有する駆動源を備える動力出力装置及びその制御方法並びに該動力出力装置を搭載する車両の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、いわゆるハイブリッド車両に好適に搭載されるハイブリッド型の動力出力装置が開発されている。この種のハイブリッド型の動力出力装置では、代表的には、エンジン、モータジェネレータ、クラッチ、変速装置及び駆動軸等が備えられている。このうち、モータジェネレータは、当該動力出力装置に要求される動作状態に応じて、バッテリから電源供給を受け電動機として利用され、或いはバッテリ充電用の発電機として利用される。このうち後者の場合、即ちモータジェネレータがバッテリ充電のための発電機として用いられる場合は、例えば当該ハイブリッド車両が減速走行しているとき、或いは惰性走行(以下、「惰走」ということがある。)しているとき等に実現される。この際、モータジェネレータは、ハイブリッド車両の車輪の運動エネルギを受けて回転し、所定の電気エネルギを発生することになるから、前記運動エネルギは前記電気エネルギ(及び熱エネルギ)として消費されることになり、所定の制動力を得ることができる。このような制動力による車両の制動は、一般に回生制動と呼ばれている。
【0003】
かかる回生制動は、車速と回生トルクとの間で予め定められた回生制御特性、或いはアクセルペダル操作量とモータジェネレータの出力トルク変化率との間で予め定められた加速出力トルク変化特性等に則って実施される。即ち、モータジェネレータは、ハイブリッド車両の実際の車速と前記回生制御特性、或いは現実のアクセルペダル操作量と前記加速出力トルク特性とから、所定の回生トルク、或いは出力トルク変化率が得られるように制御されるようになっている。
【0004】
この場合、当該ハイブリッド車両が現実に走行している路面の状況が重要となる。すなわち、該ハイブリッド車両が、摩擦係数μの比較的低い路面(以下、「低μ路面」ということがある。)の上を走行しているにもかかわらず、前記のように予め定められた回生制御特性、或いは出力変化率特性に則ってモータジェネレータを制御してしまうと、車輪のスリップを発生させることがあり、車両の走行安定性を損ねる可能性があるのである。
【0005】
そこで、例えば特許文献1では、前記のような路面の状況の相違に応じて、回生制御特性等を変更する技術が開示されている。この特許文献1では、低摩擦路面判定手段により車両の走行路が低摩擦路面であると判定された場合には、車輪のスリップを発生させないような回生制動トルクが得られるように、予め定められている回生制御特性を変更する技術が開示されており、これにより、車両の走行安定性を高めることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2000−270409号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のような技術には次のような問題点がある。すなわち、前記特許文献1に開示されている技術によれば、たしかに車輪のスリップを防止し、車両の走行安定性を高めることができる。しかしながら、ハイブリッド車両が惰走している場合、換言すると該車両のアクセルもブレーキも操作されていない場合であって、且つ、該車両が低μ路面の上を走行しているときには、ドライバに、いわゆる空走感を与えてしまうおそれがあったのである。ここに空走感とは、ドライバの意思に反して車両が前へ前へとより進んでいってしまうような感覚をいう。特に、ドライバが、踏み込んでいたアクセルを戻す操作を行った直後は、該ドライバとしては一定程度の制動がかかるものと期待していることが多いと考えられるから、前記の空走感はより顕著になる。
【0008】
このように、従来においては、ドライバが受ける感覚について特に対策が施されていない。より詳細にいえば、前記のように、路面の状況の相違に応じて回生制御特性を変更することで車輪のスリップを防止するという前記の特許文献1に記載されている技術を利用することによれば、たしかに、客観的な面における車両の走行安定性は殆ど問題なく達成されるものの、ドライバが主観的に受ける感覚がそれとは相違することになってしまうのである。したがって、このままでは、ドライバはそのような車両の走行安定性を十分に享受しているということができない。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、客観的に車両の走行安定性を達成するだけでなく、ユーザに空走感等の違和感を与えず、該ユーザの主観的な感覚からしても前記走行安定性が達成されているという感覚を与えることの可能な動力出力装置及びその制御方法並びに該動力出力装置を具備してなる車両を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の動力出力装置は、上記課題を解決するため、車両に搭載される動力出力装置であって、駆動源と、該駆動源から出力された動力が伝達される駆動軸と、前記車両の減速時、前記駆動軸の運動エネルギを受け前記駆動源で起こされた電気エネルギにより、所定の回生制御特性に基づいて充電可能とされた蓄電装置と、前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更手段とを備え、前記回生制御特性変更手段は、前記車両が惰性走行状態にあると判断し、且つ、前記摩擦係数が所定の値よりも小さいと判断する場合には、前記運動エネルギの前記電気エネルギへの変換に応じて発生する前記車両の回生制動力を大きくするように前記回生制御特性を変更する
【0011】
本発明の第1の動力出力装置によれば、駆動軸に動力を出力可能な電動機として、及び、バッテリ、或いは大容量コンデンサ等からなる蓄電装置に充電可能な発電機として機能し得るモータジェネレータ等からなる駆動源が備えられている。ここで、駆動源が電動機として作用しているとき、該駆動源は「力行」しているということができ、駆動源が発電機として作用しているときは「回生」しているということができる。このうち後者の回生の際には、駆動源は、駆動軸の運動エネルギを受けて電気エネルギを起こす。すなわち、運動エネルギが電気エネルギによって消費されることで、前記車両に制動力がかかることになる。このような車両の制動は、回生制動と呼ぶことができ、また、前記の制動力は回生制動力と呼ぶことができる。
【0012】
そして、本発明では特に、前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更手段を備えている。ここで車両が「惰性走行状態」にある場合とは、該車両が前記駆動源その他の積極的な動力の供給を一切受けることなく、惰性的に走行している状態をいう。具体的には例えば、該車両が前記駆動源の出力の程度を調整するためのアクセルペダルを備え、且つ、当該車両全体を制動するためのブレーキペダルを備えている場合においては、これらアクセルペダル及びブレーキペダルがともに操作されていない状態を考えることができる。
【0013】
そして、本発明では、このように惰性走行状態であるかどうかの如何、及び、車両が走行している路面の摩擦係数の如何に応じて、前記回生制御特性が変更されるのである。これによりまず、後段の要件、すなわち摩擦係数の大小に応じて回生制御特性が変更されるということにより、例えば摩擦係数が小さいのであれば回生制動力が小さくなるように回生制御特性を変更する等ということが可能になり、駆動軸に連結された車輪のスリップの発生を未然に防止することができる。言い換えれば、客観的な観点からみた、車両の走行安定性を実現することができるのである。
【0014】
また、本発明ではこれに加えて、回生制御特性の変更が、前記の前段の要件、すなわち車両が惰性走行状態であるか否かも考慮されて実行される。具体的には、車両が惰性走行状態にあり、且つ摩擦係数が比較的小さいと判断されるときには、回生制御特性を、前記回生制動力を大きくするように変更する。これによると、回生制動力が従前に比べてより大きくなることから、車両が惰走し且つ前記摩擦係数が小さいという状況時に特に懸念される空走感の発生を防止することができることになる。言い換えれば、前記で実現されるような客観的な観点からみた車両の走行安定性を、ドライバの主観的な観点からみても実感し得るということになる。なお、このような作用効果を得るためには、先に述べた
摩擦係数に応じて回生制動力を「小さく」するということと、惰性走行状態及び前記摩擦係数に応じて回生制動力を「大きく」するといこととの関係を次のように捉えるとよい。すなわち、前者の「小さく」という場合のその「程度」が、後者の「大きく」という場合のその「程度」を越える場合を想定すればよい。
【0015】
このように、本発明の第1の動力出力装置によれば、当該動力出力装を搭載する車両が惰性走行状態にあるか否か、また路面の摩擦係数が大きいか小さいかに応じて、回生制御特性が変更されるようになっていることから、該車両のドライバに空走感等の違和感を与えるおそれを極めて低減することができ、客観的にも主観的にも車両の走行安定性の向上という目的を達成することができるのである。
【0016】
なお、前記においては、電動機及び発電機として機能する駆動源のみ備えられている構成が示されているが、本発明はこのような形態に限定されない。例えば、前記駆動源(以下、「第1の駆動源」と呼ぶ。)の他に、点火燃焼式、或いは自着火燃焼式等のエンジン等からなる別の駆動源(以下、「第2の駆動源」と呼ぶ。)を備えた構成としてもよい。この場合、前記の駆動軸が第1及び第2の駆動源の協働によって駆動される構成を採用することが可能であり、或いは第1の駆動源は第1の駆動軸を駆動し、第2の駆動源は第2の駆動軸を駆動するなどというように、各々独立して別個独立の駆動軸を駆動させるような構成を採用してもよい。後者の構成によれば、いわゆる四輪駆動(4WD)が可能となる。
【0017】
また、本発明にいう「回生制御特性変更手段」とは、具体的には例えば、ワンチップのマイクロコンピュータ等が該当し、「回生制御特性」とは、当該マイクロコンピュータを構成するRAM内に記録された所定の順序で配列等された情報が該当する。この場合、「回生制御特性を変更する」とは、該回生制御特性そのものであるところの情報に関して、適当な加減乗除算、置換、組替え等を実施することを意味する。より具体的には、回生制御特性が、前記車両の速度と回生トルクとの比例関数のグラフとして表されるならば、そのグラフの傾きを増やし又は減じること、或いはその切片の値を増やし又は減じること等の算出操作が、「回生制御特性を変更する」に該当することになる。
【0018】
さらに、前記の回生制御特性変更手段は、後述する制御手段の一部を構成するように構成してもよい。
【0021】
本発明の第2の動力出力装置は、上記課題を解決するため、車両に搭載される動力出力装置であって、駆動源と、該駆動源から出力された動力が伝達される駆動軸と、前記車両の減速時、前記駆動軸の運動エネルギを受け前記駆動源で起こされた電気エネルギにより、所定の回生制御特性に基づいて充電可能とされた蓄電装置と、前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更手段とを備え、前記回生制御特性変更手段は、前記車両が惰性走行状態にあると判断し、且つ、前記摩擦係数が所定の値よりも小さいと判断する場合には、前記駆動源における前記運動エネルギの前記電気エネルギへの変換に応じて発生する回生制動力の時間に対する変化の割合を大きくするように前記回生制御特性を変更する。
【0022】
本発明の第2の動力出力装置によれば、駆動軸に動力を出力可能な電動機として、及び、バッテリ、或いは大容量コンデンサ等からなる蓄電装置に充電可能な発電機として機能し得るモータジェネレータ等からなる駆動源が備えられている。そして、前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更手段を備えている。このように惰性走行状態であるかどうかの如何、及び、車両が走行している路面の摩擦係数の如何に応じて、前記回生制御特性が変更されるのである。具体的には、車両が惰性走行状態にあり、且つ摩擦係数が比較的小さいと判断されるときには、回生制御特性を、前記回生制動力の時間に対する変化の割合を大きくするように変更する。したがって、より確実に、当該車両のドライバに空走感等の違和感を与えずに済む。
【0023】
本発明の動力出力装置の態様では、前記蓄電装置に対する充電を実施する前に、当該蓄電装置の電気残量を所定の閾値よりも予め小さくしておくように前記蓄電装置及び前記駆動源の少なくとも一方を制御する制御手段を更に備えている。
【0024】
この態様によれば、蓄電装置に対する充電が実施される前には、当該蓄電装置の電気残量が比較的少ない状態が実現されることになる。したがって、例えば前記のように、車両が惰性走行状態にあり、且つ摩擦係数が比較的小さい場合において、前記回生制動力が大きくなるように、或いは該回生制動力の時間に対する変化の割合が大きくなるように、回生制御特性が変更されることで、駆動源においてより多くの電気エネルギが発生したとしても、該電気エネルギを蓄電装置に無理なく吸収すること(即ち、無理なく充電すること)ができる。言い換えると、本態様によれば、過充電状態の出現を未然に防止することができる。
【0025】
なお、本態様において、「電気残量を予め小さくしておくように」蓄電装置及び駆動源の少なくとも一方を制御するとは、具体的には次のような各種の例を考えることができる。第一に、本発明の駆動源は、前記のように、蓄電装置の電気エネルギを受けて回転することで駆動軸を駆動させることが可能となっているから、最も典型的には、該駆動源をそのように使用することによって、蓄電装置の電気残量を小さくしておくことが可能である。
【0026】
第二に、本発明において、前記の構成のほかに、例えば空気調和機(エアコン)のコンプレッサ、ウォータポンプやパワーステアリング用のポンプ、空気清浄機のモータ等のいわゆる補機類、更には前記蓄電装置とは別の蓄電装置(例えば、12V系のバッテリ)を搭載するとともに、前記蓄電装置の電気エネルギを前記補機類の駆動に、或いは前記別の蓄電装置の充電等に利用することで、蓄電装置の電気残量を小さくしておくことが可能である。
【0027】
本発明の第1の動力出力装置の制御方法は、上記課題を解決するために、駆動軸を備えた車両に搭載され前記駆動軸の運動エネルギを受けて電気エネルギを起こす駆動源と、前記電気エネルギにより所定の回生制御特性に基づいて充電可能とされた蓄電装置とを備えた動力出力装置を制御する制御方法であって、前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更工程と、該回生制御特性変更工程の後、前記車両の減速時に、前記回生制御特性に基づいて前記蓄電装置の充電を行う充電工程とを含み、前記車両が惰性走行状態にあると判断し、且つ、前記摩擦係数が所定の値よりも小さいと判断する場合には、前記運動エネルギの前記電気エネルギへの変換に応じて発生する前記車両の回生制動力を大きくするように前記回生制御特性を変更する。本発明の第2の動力出力装置の制御方法は、上記課題を解決するために、駆動軸を備えた車両に搭載され、前記駆動軸の運動エネルギを受けて電気エネルギを起こす駆動源と、前記電気エネルギにより所定の回生制御特性に基づいて充電可能とされた蓄電装置とを備えた動力出力装置を制御する制御方法であって、前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更工程と、該回生制御特性変更工程の後、前記車両の減速時に、前記回生制御特性に基づいて前記蓄電装置の充電を行う充電工程とを含み、前記車両が惰性走行状態にあると判断し、且つ、前記摩擦係数が所定の負荷値よりも小さいと判断する場合には、前記運動エネルギの前記電気エネルギへの変換に応じて発生する回生制動力の時間に対する変化の割合を大きくするように前記回生制御特性を変更する。
【0028】
本発明の車両は、上記課題を解決するために、前述の本発明の動力出力装置(但し、その各種態様を含む。)と、該動力出力装置が搭載される車両本体と、該車両本体に取り付けられると共に前記駆動軸を介して出力される駆動力により駆動される車輪とを備えている。
【0029】
本発明の車両によれば、前述の本発明の動力出力装置を具備してなるから、例えば当該車両が惰走しており、且つ駆動軸に連結された車輪が低μ路面に接している場合(即ち、車両が走行している路面の摩擦係数が知覚的小さい場合)に、当該車両の回生制動力が大きくなるように回生制御特性を変更することが可能となるから、該車両のドライバに空走感等の違和感を与えずに済む。
【0030】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。
【0032】
(車両)
図1は、本発明の実施形態に係る四輪自動車(以下、単に「自動車」という。)MVの構成例を示す図である。この図において、自動車MVは、車両本体MVSを備えるとともに、該車両本体MVSに車輪TF1及びTF2並びにTR1及びTR2を備えている。なお、以下では、符号TF1及びTF2については「前輪」と、符号TR1及びTR2については「後輪」ということがある。
【0033】
このうち前輪TF1及びTF2には、これらに動力を伝達するための駆動軸157が接続されており、該駆動軸157には順に、ディファレンシャルギア154、変速装置160及びエンジン150が接続されている。
【0034】
このうちエンジン150は、本実施形態において、直噴式ガソリンエンジンであり、変速装置160は、フルオート式の同期噛み合い式変速装置として構成されている。ただし、本発明は、エンジン150及び変速装置160として、前記以外の形式を採用して構わない。
【0035】
前記のうちエンジン150には、フライホイール151を介してスタータモータ152が接続されている。エンジン150の始動の際には、該エンジン150はスタータモータ152から動力を受けてクランキングさせられる。また、エンジン150にはエンジン用ECU(Electrical Control Unit)170が接続されており、変速装置160には、変速装置用ECU180が接続されている。エンジン用ECU170及び変速装置用ECU180は、内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従い、エンジン150及び変速装置160に関する各種の制御を実行する。なお、図示を適宜省略したが、エンジン150及び変速装置160には、前記各種の制御を可能とするために、その運転状態等を知ることのできる種々のセンサが接続されている。図1においては特に、車輪TF1及びTF2の速度を検出するための車輪センサ201が示されている。エンジン150及び変速装置160の構成等については、後にも詳しく述べる。
【0036】
前輪TF1及びTF2に接続された駆動軸157には、ステアリングホイール158が接続されている。このステアリングホイール158が当該自動車MVのドライバによって操作されると、前輪TF1及びTF2の方向は変じられ、当該自動車MVの進行方向が変じられることになる。
【0037】
他方、後輪TR1及びTR2には、駆動軸444が接続されており、該駆動軸444には図示しないギアを介してモータジェネレータ480が接続されている。モータジェネレータ480には、インバータ442及びバッテリ440が接続されている。このうちバッテリ440は、所定電圧のDC電源であり、インバータ442は、バッテリ440から電力供給を受けて三相電流を発生させる。モータジェネレータ480は、この三相電流を受けて電動機として機能することにより、駆動軸444が回転させられることになる(力行動作)。逆に、後輪TR1及びTR2等から力を受けてモータジェネレータ480が回転させられるときには、該モータジェネレータ480は発電機として機能することにより、バッテリ440の充電が行われることになる(回生動作)。なお、前記のバッテリ440はモータジェネレータ480を駆動するための高圧電源用として設けられているが、本実施形態においては特に、例えば前記のスタータモータ152、或いは図示しない空気調和機用のコンプレッサ、ウォータポンプやパワーステアリング用のポンプ、空気清浄機のモータ等の補機系を駆動するための低圧電源用のバッテリ(不図示)が設けられており、高圧及び低圧の二系統構成とされている。
【0038】
モータジェネレータ480には、モータジェネレータ用ECU450が接続されている。モータジェネレータ用ECU450は、前記のエンジン用ECU170及び変速装置用ECU180と同様、内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従い、モータジェネレータ480に関する各種の制御を実行する。特に、モータジェネレータ用ECU450は、当該自動車MVの前進及び後進を検出するとともに、要求されたトルクを実現するための指令をインバータ442に送出する機能を有する(モータジェネレータ480は、それに応じて回転速度、回転方向等が変更させられる。)。また、モータジェネレータ用ECU450は、本発明にいう「回生制御特性変更手段」の一例に該当し、後に詳述するように、自動車MVが減速時、当該自動車MVが低μ路面の上を走行しているか、或いは高μ路面の上を走行しているか等に応じて、回生トルクの最大値、或いは回生トルクの時間に対する変化の割合等に適当な制限を設けるとともに、該制限に従った回生トルクを実現するように、モータジェネレータ480を制御する。
【0039】
このように本実施形態に係る自動車MVでは、前輪TF1及びTF2は、駆動軸157を介してエンジン150により駆動させられ、後輪TR1及びTR2については、駆動軸444を介してモータジェネレータ480により駆動させられるようになっている。つまり、本実施形態に係る自動車MVにおいては、いわゆる四輪駆動(4WD)が実現可能となっている。
【0040】
前記に加えて、本実施形態の自動車MVには、そのキャビンMVC内に、モード選択スイッチ501が備えられている。モード選択スイッチ501は、例えばボタン式、タッチパネル式、或いはリモートコントロール式等ドライバが操作可能でありその意思伝達が可能な機構を備えてなり、当該自動車MVの走行態様の如何に関する種々のモードを選択するためのスイッチである。ここに種々のモードとは、例えば「雪道走行モード」や「モータ走行モード」等を挙げることができる。前記の「雪道走行モード」とは、自動車MVが、例えば氷雪面等摩擦係数の小さい路面、即ち低μ路面の上を走行している場合に選択され、前記エンジン150及びモータジェネレータ480の出力を抑制し、或いは変速装置160における変速位置を低速に固定してエンジンブレーキを利用しやすいようにすること等を内容とする。また、後者の「モータ走行モード」とは、例えば自動車MVが低速状態を強いられるような場合に選択され、エンジン150を利用せずモータジェネレータ480のみで走行すること等を内容とする。エンジン用ECU170、変速装置用ECU180及びモータジェネレータ用ECU450は、選択されたモードの内容に基づきその制御の内容を決定し、自動車MVはその制御に従って走行する。このようなモード選択スイッチ501の存在によると、ドライバが外界を視認すること等によって得られた情報に沿い、且つ、ドライバの意思を反映させた上で、自動車MVを走行させることが可能となる。
【0041】
(直噴式ガソリンエンジン)
図2は、本発明の実施形態に係る動力出力装置を構成するエンジン150及びその周辺機器等の構成例を示す図である。
【0042】
エンジン150は、燃料室内に燃料を直接噴射する、いわゆる直噴式ガソリンエンジンである。このエンジン150には、図示されないシリンダブロック、シリンダブロックの内部に配置されたシリンダ、シリンダの内部を摺動可能に配置されたピストンがそれぞれ設けられている。
【0043】
シリンダの内部であってピストンの頂面に臨む空間には燃焼室20が形成されている。燃焼室20には、燃料噴射弁22の噴射口が露出している。エンジン150の運転中、燃料噴射弁22には、図示しない燃料ポンプから燃料が圧送される。また、燃焼室20には、図示しない点火プラグが設けられており、この点火プラグに着火することにより、燃焼室20内に爆発を生じさせ、シリンダ内のピストンに動力を伝達することになる。
【0044】
燃焼室20には、上記のほか、図示しない排気弁を介して排気マニホールド30が連通している。排気マニホールド30には、ターボチャージャ39を介して排気管31が接続されている。このうち排気管31の途上には、例えばPM(排気微粒子)フィルタ等からなる排気浄化装置35が設けられている。なお、PMフィルタとは、ステンレス鋼粉末を焼結したシームレス管状フィルタ(液体精密ろ過フィルタ)である。排気浄化装置35には、温度センサ35Tが付設されている。他方、燃焼室20には、図示しない吸気弁を介して吸気マニホールド32の各枝管が連通している。吸気マニホールド32には、インタークーラ39Cを介して吸気管33が接続されている。このうち吸気マニホールド32内には、スロットル弁32Vが配設されている。
【0045】
以上の排気系及び吸気系の双方に関連する装置として、エンジン150には、ターボチャージャ39及び排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置38が設けられている。
【0046】
まず、ターボチャージャ39は、例えばタービン及びコンプレッサ(いずれも不図示)を備えてなり、タービンが排気マニホールド30内を流れる排気ガスのエネルギにより回転させられることにより、コンプレッサは、このタービンの動力をシャフトを介して受け取るようになっている。これにより、吸気管33内の空気を圧縮して燃焼室20側に供給することが可能となる。すなわち、ターボチャージャ39は、燃焼室20に対する吸入空気量を制御する機能を備えている。ちなみに、吸気管33の空気吸入方向において、ターボチャージャ39とスロットル弁32Vとの間には、インタークーラ39Cが設けられているが、このインタークーラ39Cは、ターボチャージャ39により圧縮されて温度が上昇した空気を冷却するためのものである。なお、ターボチャージャ39としては、コンプレッサの回転数に対応する吐出量を制御することのできる、いわゆる可変容量式のターボチャージャを用いてよい。
【0047】
他方、排気ガス再循環装置38は、排気マニホールド30と吸気マニホールド32とを接続するパイプ38と、パイプ38の途中に設けられ、かつ、排気マニホールド30から吸気マニホールド32に戻されるガスの流量を制御するEGRバルブ38Vとを備えている。これにより、燃焼室20から排気マニホールド30に排出されたガスの一部を、吸気系統に戻すことが可能になる。これによると、燃焼室20内の燃焼温度は下がり、窒素酸化物の生成と、吸入空気量の増加による排気微粒子の生成とを抑制することができる。
【0048】
以上述べたようなエンジン150をはじめとする各種の要素は、エンジン用ECU170により制御される。エンジン用ECU170は、エンジン150の燃料噴射量や回転速度その他の制御を実行する。例えば前記の要素のうちスロットル弁32Vは図示しないスロットルモータに連結され、スロットルモータはエンジン用ECU170に接続されてその制御下にある。これにより、スロットルモータは、エンジン用ECU170から供給される制御信号に応じてスロットル弁32Vの開度を変化させる。
【0049】
他方、エンジン用ECU170には、前記の各種の機構的要素の他、イグニッションスイッチ76(以下、「IGスイッチ76」という。)が接続されている。エンジン用ECU170は、IGスイッチ76の出力信号に基づき、IGスイッチ76のオン/オフ状態を検出する。IGスイッチ76がオン状態からオフ状態とされると、燃料噴射弁22による燃料噴射等が停止され、エンジン150の運転が停止される。さらに、エンジン用ECU170には、アクセルペダル78の近傍に設けられたアクセル開度センサ80が接続されている。アクセル開度センサ80は、アクセルペダル78の踏み込み量に応じた電気信号を、エンジン用ECU170に向けて出力する。加えて、エンジン用ECU170には、ブレーキペダル82の近傍に設けられたブレーキ開度センサ84が接続されている。ブレーキ開度センサ84は、ブレーキペダル82の踏み込み量に応じた電気信号を、エンジン用ECU170に向けて出力する。
【0050】
さらに加えて、エンジン用ECU170は、図1に示した車輪センサ201等の検出結果に基づいて、自動車MVが走行している路面の勾配の程度、前輪TF1及びTF2の加速度、或いはスリップ率等を算出する機能や、その他当該自動車MVを運行する上で必要な各種のパラメータを算出する機能を有する。また、本実施形態において、エンジン用ECU170は、自動車MVの全体のトルクを管理する等のほか、必要な場合には前記の変速装置用ECU180やモータジェネレータ用ECU450に対しても指令を発する。要するに、本実施形態に係るエンジン用ECU170は、エンジン150に関する制御を実施する以外にも、当該自動車MVの全体的且つ調和的な動作を統御する機能を併せもっている。
【0051】
(変速装置)
図3は、図1及び図2に示した変速装置160の構成例を示す図である。この図3において、エンジン150に連結されたクランク軸155は、クラッチCを介してインプット軸156に連結されている。インプット軸156には、該軸を中心として、1速から5速までの各速の入力歯車1IN〜5IN(以下、「1速入力歯車1IN」などという。)が設けられているとともに、後進段入力歯車RINが設けられている。このうち、3速入力歯車3IN、4速入力歯車4IN及び5速入力歯車5INは、インプット軸156との関係で相対的に自由に回転し得るように設けられている。また、3速入力歯車3INと4速入力歯車4INとの間にはスリーブS1が設けられており、5速入力歯車5INには、これに対応するようにスリーブS2が設けられている。スリーブS1は、図中左右いずれかの方向に移動することによって、3速又は4速入力歯車3IN又は4INとインプット軸156を連結することが可能である。スリーブS2も、スリーブS1と同様、図中右方向に移動することによって、5速入力歯車5INとインプット軸156を連結することが可能である。なお、各スリーブS1及びS2と、これらに連結可能な3速〜5速入力歯車3IN〜5INとの間には、それぞれ、両者間の噛み合いがスムースに行われるように、図示しない同期装置が設けられている。
【0052】
他方、アウトプット軸153には、該軸を中心として、前記の各速の入力歯車1IN〜5INのそれぞれに対応した各速の出力歯車1OUT〜5OUT及びROUT(以下、「1速出力歯車1OUT」などという。)が設けられている。このうち、1速出力歯車1OUT、2速出力歯車2OUT及び3速出力歯車3OUTは、アウトプット軸153との関係で相対的に自由に回転し得るように設けられている。また、1速出力歯車1OUTと2速出力歯車2OUTとの間にはスリーブS3が設けられており、3速出力歯車3OUTに対応するようにスリーブS4が設けられている。スリーブS3及びS4はともに、前記のスリーブS1及びS2と略同様な機能を果たす。すなわち、スリーブS3は、アウトプット軸153と1速出力歯車1OUT又は2速出力歯車2OUTとを連結するように移動可能に構成されており、スリーブS4は、アウトプット軸153と3速出力歯車3OUTとを連結するように移動可能に構成されている。ただし、スリーブS3は、1速出力歯車1OUT及び2速出力歯車2OUTとの間、図中真中の位置において、アウトプット軸153と後進段出力歯車ROUTとを連結させる作用を果たし、後進段入力歯車RINからアウトプット軸153への動力伝達を可能にする。なお、各スリーブS3及びS4と、これらに連結可能な1速〜3速出力歯車1OUT〜3OUT及び後進段出力歯車ROUTとの間には、それぞれ、両者間の噛み合いがスムースに行われるように、図示しない同期装置が設けられている。
【0053】
以上のような構成を備える変速装置160は、典型的には、以下のように動作する。なお、変速装置160の動作は、本実施形態において、図1に示した変速装置用ECU180によって自動的に行われる。
【0054】
例えば、1速から2速への変速時における当該変速装置160の動作については次のようである。まず、1速走行の段階においては、スリーブS3は、1速出力歯車1OUTをアウトプット軸153に連結するように、図中右方向に移動している。他方、残るスリーブS2乃至S4は、いずれも中立の状態を保っており、2速乃至5速入力歯車2IN〜5INからアウトプット軸153へは動力が伝達されないようになっている。これにより、エンジン150からの出力は、クラッチCを介して、インプット軸155、1速入力歯車1IN、1速出力歯車1OUT、スリーブS1及びアウトプット軸153を介してディファレンシャルギア154に伝達される。
【0055】
続いて、この状態から、2速へ変速する際においては、いったんクラッチCを断絶した上で、スリーブS3が1速出力歯車1OUTに接続されている状態から、2速出力歯車2OUTに接続される状態に変更する。この後、クラッチCを再び係合させると、エンジン150からの出力は、クラッチCを介して、インプット軸155、2速入力歯車2IN、速出力歯車2OUT、スリーブS1及びアウトプット軸153を介してディファレンシャル154に伝達される。
【0056】
残る3速走行以降においても、スリーブS1乃至S4を適当に移動させることにより、同様な変速作用が実現されることになる。なお、前記のスリーブS1乃至S4の動作、或いはクラッチCの動作等は電気的に又は油圧によって実現することができる。また、上述の例のような各速間の変更を変速装置160において実施することが、本発明にいう「変速装置における変速操作」の一例に該当する。さらに、上述のような変速操作は、それがユーザの指令に基づく場合(セミオート式)と、自動的に行う場合(フルオート式)との双方があるが、本実施形態においては、後者の場合を前提とする。ここに「自動的に」とは、自動車MVの速度及びアクセルペダル78の開度を両軸にとった変速線図等の適当なマップ(不図示)に基づいて変速操作が行われること(即ち、ドライバの意志に基づかずに行われること)を意味する。
【0057】
(回生制動の態様に関する制御)
以下では、本発明に係る制御手段を構成するエンジン用ECU170、変速装置用ECU180及びモータジェネレータ用ECU450により、自動車MVの回生制動の態様に関する制御について、図4を参照しながら説明する。ここに図4は、当該制御の処理の流れを示すフローチャートである。なお、これにより説明する図4の処理は、当該自動車MVにおいて、一定の時間間隔をおいて間欠的に実行され、又は必要なときに応じて実行されるなどというようになっている。
【0058】
図4において、まず、エンジン用ECU170は、前輪TF1及びTF2並びに後輪TR1及びTR2のスリップ率sを算出する(ステップS101)。このスリップ率sの算出は、前輪TF1及びTF2及び後輪TR1及びTR2の駆動力、各車輪TF1、TF2、TR1及びTR2の速度等に基づいて算出することができる。なお、算出の基礎になるパラメータは、例えば図1に示した車輪センサ201等によって得ることができる。
【0059】
次に、エンジン用ECU170は、前記で求められたスリップ率sと、前輪TF1及びTF2並びに後輪TR1及びTR2の駆動力、自動車MVの荷重等とに基づいて、自動車MVが現に走行している路面の摩擦係数μを推定する(ステップS102)。なお、この場合においては、推定された摩擦係数μの大きさにより、当該自動車MVが、現時点において、氷雪面等の低μ路面上を走行しているか、又は通常の乾燥した舗装路面等の比較的高い摩擦係数の路面の上を走行しているかなどといった概括的な判断を、エンジン用ECU170にさせることができる。この判断は、予め定めた所定の基準摩擦係数μを基準に行うことが可能である。すなわち、前記で推定された摩擦係数μが、このμよりも大きければ(μ>μ)、摩擦係数が比較的高い路面、即ち「高μ路面」と、そうでなければ(μ≦μ)、「低μ路面」などと判断することが可能である。
【0060】
続いて、エンジン用ECU170は、自動車MVの速度及び前記で推定された摩擦係数μ等に基づいて、基本となる減速度(以下、「基本減速度」という。)を算出する(ステップS103)。ここで「基本減速度」とは、次のような意義を有する。すなわち、前記のアクセルペダル78及びブレーキペダル82の双方がOFFとされた場合、言い換えると当該自動車MVが惰走する状態となった場合、車輪TF1及びTF2並びにTR1及びTR2の回転力がエンジン150及びモータジェネレータ480に伝達されることによって、制動力(即ち、いわゆるエンジンブレーキ及び回生制動力)が発生することになるが、「基本減速度」とは、このような制動力が作用することで当該自動車MVが時間の経過に応じてどのように速度を低下させるかを表す指標である。具体的には、図5に示すように、現時点における自動車MVの速度V1,V2,…,Vnの相違に応じて、それぞれ基本減速度R1,R2,…,Rnが定められることになる(但し、図に示されているのは、V1、V2及びV3とこれらに対応するR1、R2及びR3のみである。)。
【0061】
ちなみに、このような基本減速度R1,R2,…,Rnの設定にあたっては、前記で推定された摩擦係数μの大きさの如何も勘案される。したがって、例えば摩擦係数μが比較的小さい場合には、基本減速度R1,R2,…,Rnとしては、本来とられ得る減速度よりもより小さな減速度を設定する等としておくのが好ましい。例えば、図5において、前記の「本来とられ得る減速度」が符号R1´を付した直線で表されるとするならば、基本減速度R1としては、これよりも傾きの大きい図示のような直線として設定しておく等というようである。このようにしておけば、車輪TF1及びTF2並びにTR1及びTR2のスリップを防止することができる。
【0062】
なお、前記で「基本減速度」という場合における「基本」とは、該基本減速度が、後の処理において補正の対象となること(ステップS203)に対応している。この点については、後に改めて説明することとする。また、このような基本減速度、より一般的に「減速度」は、基本的にはなるべく小さい方(つまり、図5でいえば、より傾きの小さい直線であることの方)が好ましい。というのも、エンジンブレーキ、或いは回生制動力をなるべく作用させないで、自動車MVの運動エネルギを可能な限り保存するようにすれば、当該自動車MVはより少ない燃料消費量でより遠くに進行することができるからである。
【0063】
さて、以上のような基本減速度の算出処理に続き、エンジン用ECU170は、モード選択スイッチ501において選択されているモードの如何を確認する(ステップS201)。本実施形態では特に、このステップS201において、ドライバが、前記の「雪道走行モード」を選択しているか否かについて確認するようになっている。ここで、「雪道走行モード」が選択されている場合においては、バッテリ440のSOC(State Of Charge)量の低下要求フラグをONにする処理に移り(ステップS201からステップS202へ)、選択されていない場合においては、前記のステップS102において推定された路面の摩擦係数μが大きいか小さいかについての判断を行う処理へと移る(ステップS201からステップS211へ)。
【0064】
このうち、第一に、図4のステップS202におけるバッテリ440のSOC量の低下要求フラグをONにする処理とは、具体的には、バッテリ440に蓄積されている電気エネルギをより多く消費することを許可することを意味するが、この点については、後のステップS204に関する説明の際に改めて触れる。
【0065】
そして、バッテリ440のSOC量の低下要求フラグをONにする処理が終了したら次に、前記のステップS103において定めた基本減速度の補正を行う(ステップS203)。例えば、図6に示すように、ステップS103において定められた基本減速度が図中符号RBで示される直線で表されるとすれば、当該基本減速度を、符号RμLで指示される直線のように補正するのである(以下、補正減速度RμLなどと称する。)。
【0066】
この補正減速度RμLの定立は、回生トルク限界値及び回生トルクの時間に対する変化の割合(以下、単に「変化率」という。)の限界値を定めることにほぼ同義である。ここに回生トルクとは、前記のように、自動車MVが惰走する状態に至った後、車輪TR1及びTR2の運動エネルギを受けてモータジェネレータ480が発生するトルクをいう。この回生トルクが大きければ回生制動力はより大きく作用し(即ち、自動車MVの減速度はより大きくなる。)、小さければより小さく作用する(即ち、自動車MVの減速度はより小さくなる。)。ステップS203では、この回生トルクの限界値及び該回生トルクの変化率の限界値を定めるのである。具体的には例えば、回生トルクの限界値TLは、図7(a)に示すように、回生トルクと車速との関係を表すグラフ上において、基本減速度に基づく回生トルクの限界値TLBよりも、より大きな値をとるように定められる。また、回生トルクの変化率RLも、図7(b)に示すように、回生トルクと時間との関係を表すグラフ上において、基本減速度に基づく回生トルクの変化率の限界値RLBよりも、より小さな値をとるように定められる(いずれも図中の矢印参照)。なお、回生トルクの変化率の限界値は、例えば図7(b)の符号RLCで示すように、時点時点に応じて異なる値をとるように設定してもよい(以下、変化率限界値RLCなどという。)。
【0067】
なお、前記の図5、図6及び図7はいずれも、本実施形態の自動車MVにおける「回生制御特性」を表していると考えることができる。
【0068】
他方、前記のステップS201からの枝分かれの第二として、ステップS211においては、推定された摩擦係数μが大きいか小さいかが判定される。この判定は、前述した基準摩擦係数μに基づいて行うことができる。すなわち、この場合、自動車MVが現に走行している路面が低μ路面である場合(即ち、μ≦μ)には、当該摩擦係数μは小さいと判定し、そうではなく高μ路面である場合(即ち、μ>μ)には、当該摩擦係数μは大きいと判定する等というようである。そして、摩擦係数μが大きいと判定されるときには、SOC量の低下要求フラグをOFFにする処理へと移り(ステップS211からステップS212へ)、そうでないときには、前記のSOC量の低下要求フラグをONにする処理へと移る(ステップS211からステップS202へ)。ここで、後者の処理は、既に述べたとおり、SOC量の低下要求フラグをONにする処理(ステップS202)を実施した後、基本減速度の補正処理等を経る(ステップS203、また図6及び図7参照)。他方、前者のSOC量の低下要求フラグをOFFにする処理とは、次に述べるような意義を有する。
【0069】
まず、前記のステップS203、或いはステップS212の処理を経ると、それに続いて、バッテリ440の目標SOCが算出される(ステップS204)。この場合、該目標SOCの算出にあたっては、前記のステップS202、或いはステップS212において、低下要求フラグがONとされているか、或いはOFFとされているかが当該算出に反映されることになる。
【0070】
すなわち、当該フラグが“ON”とされているならば、バッテリ440の電気残量が可能な限り小さくなるように、すなわち目標SOCの値を可能な限り小さくするように当該目標SOCの値を算出する。このように目標SOCが小さく設定される場合には、バッテリ440の電気エネルギの利用は比較的自由に行われることになる。例えば、モータジェネレータ480を駆動することによって、バッテリ440の電気エネルギを消費することが考えられる。或いは、該バッテリ440の電気エネルギを、補機系を駆動するための12V系のバッテリの充電のために用いることも有効である。さらには、バッテリ440の電気エネルギを適当な手段により変圧した後、これを補機系を駆動するために用いることも有効である。いずれにせよ、SOC量低下要求フラグがONにされ、低めの目標SOCが設定されると、以上のような各種の手段が適宜採用されることになる結果、バッテリ440の電気残量は小さくされることになる。
【0071】
他方、当該フラグが“OFF”とされているならば、バッテリ440の電気残量を殊更に小さくさせないように、すなわち目標SOCの値を、該フラグがONである場合よりも大きくするように当該目標SOCの値を算出する。このことから、SOCの低下要求フラグがOFFとされるときには、前記したような、バッテリ440の電気残量を低下せしめる各種の手段(モータジェネレータ480の駆動、12V系のバッテリの充電、或いは各種の補機系の駆動等)は殊更には実行されないことになる。
【0072】
なお、低下要求フラグがONとされる場合であっても、バッテリ440の電気残量が必要以上に減少することは未然に防止されるのが好ましい。したがって、前記の各種の手段を採用している最中にあっても、バッテリ440の電気残量は常にチェックしておき、該電気残量値が所定の電気残量値を下回る場合には、前記の各種の手段の実行を中止するような構成を併せて備えておくのが好ましい。
【0073】
以上のように、ステップS201からステップS204までの処理によれば、雪道走行モードがONとされているか、或いは自動車MVが低μ路面を走行していると判断される場合には、バッテリ440の電気残量を可能な限り小さくするような処理が実行されることになるとともに、基本減速度を補正した補正減速度RμLを定める処理(図6参照)等が実行されることになる。他方、そうでない場合、すなわち自動車MVが高μ路面の上を走行している場合等には、前記のようなバッテリ440に関する処理や基本減速度の補正処理等は実施されない。すなわち、この場合には、自動車MVが惰走する状態になると、ステップS103において定められた基本減速度がそのまま適用されることになるのである。
【0074】
ただし、自動車MVが比較的高い摩擦係数μの路面の上を走行しているという場合には、例えば図6の符号RμHを付した直線のように、前記の補正減速度RμLとは逆の方向に基本減速度を補正する処理を実行するようにしてもよい。このようにすれば、自動車MVの運動エネルギを、可能な限り当該自動車MVの進行に利用することができる。したがって、自動車MVはより少ない燃料消費量でより遠くに進行することができる。なお、この場合において、基本減速度RBが、図5を参照して説明したように、低μ路面に対応すべく、本来とられ得る減速度R´をより小さくするように定められた減速度であるというときには、前記の比較的高い摩擦係数μの路面とは、当該低μ路面に“比べて”、高い摩擦係数μを有する路面ということを意味する。より正確にいえば、当該高μ路面の摩擦係数μは、いわゆる乾燥した舗装路面における摩擦係数μから比べれば、未だ小さいと評価し得るということである。
【0075】
さて、以上の各処理が完了したら続いて、当該自動車MVが惰走する場合に関する処理(以下、「回生処理」という。)へと移行する。まず、この回生処理の本体処理(図4のステップS306以降の処理をいう。以下同じ。)へ移行するための各種の条件がチェックされる。すなわち第一に、エンジン150がアイドリング状態にあるか否かが判定される(ステップS301)。なお、このアイドリング状態とは、エンジン150から出力を必要としない状態をいい、エンジン停止状態も含まれるものである。第二に、ブレーキペダル82がONとされているか否かが判定される(ステップS302)。ここで第一の判定によりエンジン150がアイドリング状態にあり、第二の判定によりブレーキペダル82がOFFとされていると判断されるなら、当該自動車MVにおいては、アクセルペダル78もブレーキペダル82も踏み込まれていない状況となっていると考えられることにより、当該自動車MVは惰走する状態にあると推定されることになる。
【0076】
ちなみに、ステップS301において、エンジン150がアイドリング状態にないと判定されるときには、加速時アシストトルクを算出する処理へと移行する(ステップS301からS401へ)。ここで加速時アシストトルクとは、アクセルペダル78の操作量等を勘案しつつ、該自動車MVに全体的に要求されているトルクを、エンジン150により出力可能なトルク及びモータジェネレータ480により出力可能なトルクによって満足させようとする場合における、後者のトルクをいう。つまり、ステップS401の処理は、四輪駆動を実施する場合における後輪TR1及びTR2が受け持つべきトルクの算出を実施することになる。他方、ステップS302において、ブレーキペダル82がONとされていると判定されるときには、ブレーキ強調回生トルクが算出される(ステップS302からS402へ)。このブレーキ強調回生トルクとは、ブレーキペダル82により制動力が得られる場合に、モータジェネレータ480で得るべき回生トルクを意味する。すなわち、この場合には、ブレーキペダル82による制動力が期待されるから、その分を織り込んだ上で、回生制動力の大きさを定めようとするのである。一般に、この場合の回生制動力、ないしは回生トルクは、比較的小さくてよいことになる。
【0077】
さて前記の第二に続けて、第三に、回生可能フラグがONとされているか否かが判定される(ステップS303)。ここで回生可能フラグとは、図4に示す処理とは別の処理において、モータジェネレータ480の状況、或いはバッテリ440のSOC量等の各種の事情を勘案してON又はOFFと設定されるフラグである。例えば、バッテリ440のSOC量がほぼ満杯状態にあるときには、回生によって起こされる電気エネルギを該バッテリ440において蓄えることが不可能であるから、回生可能フラグはOFFとされる。
【0078】
更に第四に、変速装置160がニュートラルであるか否かが判定される(ステップS304)。すなわち、変速装置160のクラッチCが断絶状態にあるか否かが判定されることになる。ここでクラッチCが断絶状態にないと判定されるなら、エンジン150において発生する制動力、すなわちいわゆるエンジンブレーキの大きさに応じて、前記のステップS203で得られた補正減速度RμLを更に補正する(ステップS305)。これは、エンジンブレーキの制動力と回生制動力とのバランスをとって、自動車MVに全体的に適切な制動力を作用させるためである。具体的には例えば、既に参照した図6に示すように、補正減速度RμLを、符号RμL(E)で示される直線のように補正することになる(以下、補正減速度RμL(E)などと称す。)。また、このようなことにより、前記のステップS203においていったん設定された回生トルク限界値TL及び回生トルクの変化率の限界値RLが、それぞれ符号TL(E)及び符号RL(E)で示すもの等に補正されることになる。なお、これらの補正は、自動車MVが高μ路面の上を走行している場合等には、前記の基本減速度、或いは補正減速度RμH(図6参照)に基づいて実施されることになる。
【0079】
以上、まず、第一及び第二の判定で自動車MVが惰走する状態にあると判断され、且つ、前記第三の判定で回生可能フラグがONであるときには、回生処理の本体処理へと移行する。また、前記第四の判定で変速装置160がニュートラルであると判断されるときにも、回生処理の本体処理へと移行する。さらに、前記のように補正減速度RμLを更に補正した補正減速度RμL(E)を定めた場合にも、それに引き続き、回生処理の本体処理へと移行する。
【0080】
回生処理の本体処理では、まず、回生トルクの目標値が定められ(ステップS306)、回生トルクの変化率についての制限が設けられ(ステップS307)、更には、回生トルクが採り得る最大値の制限が設けられる(ステップS308)。これらは、前記で定められた補正減速度RμL(E)、或いはより具体的には、既に参照した図7(a)及び(b)に基づいて定められることになる。そして次に、前記で定められた補正減速度RμL並びに回生トルクの限界値TL及び変化率の限界値RL等に従いながら、モータジェネレータ480を駆動する(ステップS501)。このようなモータジェネレータ480の駆動処理は、モータジェネレータ用ECU450によって制御される。
【0081】
このモータジェネレータ480の駆動処理は、具体的には、例えば図8及び図9に示すように行われることになる。ここに図8は、惰走状態に至った後の自動車MVの減速の様子を表すグラフであり、図9は、惰走状態に至った後におけるモータジェネレータ480の出力する駆動力の時間に対する変化の割合を表すグラフである。
【0082】
まず、図8の時間t1において、自動車MVが惰走する状態に突入することが示されている。これは、時点t1の直前においてアクセル開度AOCが減少し始め、当該時間t1で完全に“0”となっていることにより示されている(図4のステップS301参照)。したがって、自動車MVは、当該時点t1の以後、モータジェネレータ480及びエンジン150に起因する回生制動力、或いはエンジンブレーキを受けて減速することになる。
【0083】
ここで、もし、前記のステップS102において推定された摩擦係数μが小さいと判定され(ステップS211)、或いはドライバによって雪道走行モードが選択されている場合(ステップS201;YES)には、ステップS203を経ていることにより、当該自動車MVは、通常の場合における基本減速度に比べて、より減速度の大きい補正減速度RμL、或いはこれに基づく補正減速度RμL(E)(ステップS305)に従って減速されることになる。
【0084】
図8においては、補正減速度RμLに従って減速されている様子が示されている。この場合、自動車MVは、図8に併せて示す基本減速度RBとの対比からも明らかなように、より速やかに減速されていることがわかる。つまり、この場合においては、より大きな回生トルクが発生し、より大きな回生制動力が作用しているのである。
【0085】
したがって、本実施形態によれば、まず、自動車MVが惰走する状態にあり、且つ、低μ路面の上を走行している場合において、該自動車MVのドライバに空走感等の違和感を与えることを未然に防止することができる。ちなみに、この場合において、「より大きな回生制動力が作用している」とはいっても、基本減速度RB等は、図5を参照して説明したように、自動車MVが低μ路面の上を走行している場合、本来とられ得る減速度よりも、予め、より小さな減速度として設定され得るようになっている(図5における本来とられ得る減速度R1´及び基本減速度R1並びに前述した説明参照。)。すなわち、本実施形態によれば、一般に、本来とられ得る減速度“RR”があり、該減速度RRがいったん低μ路面に対応すべくより小さな基本減速度“RRB”として設定され、更にこの基本減速度RRBが図4のステップS203においてより大きな補正減速度“RRBμL”として設定されるということがいえる。この場合、基本減速度RRBと補正減速度RRBμLとの差は、減速度RRと基本減速度RRBとの差よりも小さい方が好ましい。これは、低μ路面に対応すべく設定された基本減速度RRBの趣旨をないがしろにすることを防止するためである。
【0086】
このようなことから結局、本実施形態では、自動車MVが低μ路面の上を走行している場合において、車輪TF1及びTF2並びにTR1及びTR2のスリップを発生させないという、いわば客観的な観点から見た車両の走行安定性を達成できるだけでなく(この効果は前記の減速度RRから基本減速度RRBへの変更によりもたらされる。)、空走感等の違和感をドライバに与えないことから、いわば該ドライバの主観的な観点からみても前記の車両の走行安定性という効果を享受し得ることになる(この効果は前記の基本減速度RRBから補正減速度RRBμLへの変更によりもたらされる。)。
【0087】
また、本実施形態においては、前記のように、より大きな回生制動力が作用することから、図8では、モータジェネレータ480においてより大きな電気エネルギが生み出されることになり、該電気エネルギは、バッテリ440の充電に用いられることになる。したがって、バッテリ440のSOC量が満杯に近い状態にあると、過充電を発生させるおそれがある。しかるに、本実施形態においては、自動車MVが低μ路面の上を走行している場合、或いは雪道走行モードが選択されている場合に、前記のステップS202においてバッテリ440のSOC量の低下要求フラグがONとされることが大きな意味をもってくる。すなわち、本実施形態では、前記のような各場合においては、バッテリ440の電気残量が可能な限り小さくなるように、その電気エネルギが消費されるようになっていることから、図8のように、より大きな回生トルク、ひいてはより大きな電気エネルギが発生するとしても、バッテリ440には、当該電気エネルギを吸収するだけの十分な余裕があることになるのである。このように、本実施形態においては、バッテリ440の過充電が発生することが未然に防止されていることになる。
【0088】
さらに、本実施形態においては、回生制動力は、上述した回生トルク限界値TL及び回生トルクの変化率の限界値RL等の制約に従って作用する。特に、前記の回生トルクの変化率の制限は、例えば図9に示すように生かされることになる。すなわち、図9において、モータジェネレータ480の駆動力TμLは、時間t1を越えるとマイナスの値をとる、すなわち回生制動力が発生することが示されている。そして、図9では特に、該回生制動力の作用は、図7(b)に示された、時点時点で異なる値をとる回生トルクの変化率の限界値RLCの制約を受けていることが示されている。例えば時間t1では、変化率限界値RLC1による制約を受け、その後、時間T2及びT3ではそれぞれ変化率限界値RLC2及びRLC3による制約を受けるなどというようである。このようにしておけば、例えば回生制動力の変化が滑らかに行われることになり、該変化が極端に大きくなるなどといった事態を未然に回避することができるから、自動車MVの高い走行安定性を実現することができる。
【0089】
なお、以上の説明は、自動車MVが低μ路面の上を走行している場合を念頭にしているが、自動車MVが高μ路面の上を走行している場合にも、同様な制御が実施されることに変わりはない。図9では特に、前記よりも高い摩擦係数μを有する場合に、駆動力の時間に対する変化の割合がどうなるかが示されている(図中符号TμH参照。)。
【0090】
また、上記の実施形態は、図1を参照して説明したように、前輪TF1及びTF2がエンジン150により駆動され、後輪TR1及びTR2がモータジェネレータ480により駆動される自動車MVに関するものであったが、本発明は、このような形態に限定されるものではない。例えば、図10に示すように、前輪TF1及びTF2がモータジェネレータ481により駆動され、後輪TR1及びTR2がエンジン150により駆動されるような自動車MV´であっても、また車輪TF1及びTF2がモータジェネレータとエンジンにより駆動されるような自動車であっても、本発明の適用は可能である。なお、図10においては、前記の説明に必要な範囲で、各要素を図示しており、その他の要素については適宜図示を省略した。
【0091】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う動力出力装置及びその制御方法並びに車両もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、回生制御特性が変更されることにより、該車両のドライバに空走感等の違和感を与えずにすみ、客観的にも主観的にも車両の走行安定性を向上させるという目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る動力出力装置を構成するエンジン及びその周辺機器等の構成例を示す説明図である。
【図3】図1及び図2に示す変速装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る回生制動の態様に関する制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】横軸に時間、縦軸に車速をとったグラフであって、図4のステップS103における基本減速度を設定することを説明するための説明図である。
【図6】図5と同趣旨のグラフであって、図5に示された基本減速度を補正して補正減速度を設定するための説明図である。
【図7】いずれも縦軸に回生トルクをとったグラフであって、(a)は横軸に車速をとり、回生トルクの限界値を設定するための説明図であり、(b)は横軸に時間をとり、回生トルクの変化率の限界値を設定するための説明図である。
【図8】惰走状態に至った後の自動車MVの減速の様子を表すグラフである。
【図9】惰走状態に至った後におけるモータジェネレータの出力する駆動力の時間に対する変化の割合を表すグラフである。
【図10】本発明の実施形態に係り、図1とは異なる構成例となる車両の構成例を示す図である。
【符号の説明】
150…エンジン
170…エンジン用ECU
180…変速装置用ECU
480…モータジェネレータ
444…駆動軸
450…モータジェネレータ用ECU
TF1、TF2…前輪
TR1、TR2…後輪

Claims (6)

  1. 車両に搭載される動力出力装置であって、
    駆動源と、
    該駆動源から出力された動力が伝達される駆動軸と、
    前記車両の減速時、前記駆動軸の運動エネルギを受け前記駆動源で起こされた電気エネルギにより、所定の回生制御特性に基づいて充電可能とされた蓄電装置と、
    前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更手段と
    を備え
    前記回生制御特性変更手段は、
    前記車両が惰性走行状態にあると判断し、且つ、前記摩擦係数が所定の値よりも小さいと判断する場合には、
    前記運動エネルギの前記電気エネルギへの変換に応じて発生する前記車両の回生制動力を大きくするように前記回生制御特性を変更することを特徴とする動力出力装置。
  2. 車両に搭載される動力出力装置であって、
    駆動源と、
    該駆動源から出力された動力が伝達される駆動軸と、
    前記車両の減速時、前記駆動軸の運動エネルギを受け前記駆動源で起こされた電気エネルギにより、所定の回生制御特性に基づいて充電可能とされた蓄電装置と、
    前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更手段と
    を備え、
    前記回生制御特性変更手段は、
    前記車両が惰性走行状態にあると判断し、且つ、前記摩擦係数が所定の負荷値よりも小さいと判断する場合には、
    前記運動エネルギの前記電気エネルギへの変換に応じて発生する回生制動力の時間に対する変化の割合を大きくするように前記回生制御特性を変更することを特徴とする動力出力装置
  3. 前記蓄電装置に対する充電を実施する前に、当該蓄電装置の電気残量を所定の閾値よりも予め小さくしておくように前記蓄電装置及び前記駆動源の少なくとも一方を制御する制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の動力出力装置。
  4. 駆動軸を備えた車両に搭載され、前記駆動軸の運動エネルギを受けて電気エネルギを起こす駆動源と、前記電気エネルギにより所定の回生制御特性に基づいて充電可能とされた蓄電装置とを備えた動力出力装置を制御する制御方法であって、
    前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更工程と、
    該回生制御特性変更工程の後、前記車両の減速時に、前記回生制御特性に基づいて前記蓄電装置の充電を行う充電工程と、
    を含み、
    前記回生制御特性変更工程は、
    前記車両が惰性走行状態にあると判断し、且つ、前記摩擦係数が所定の値よりも小さいと判断する場合には、
    前記運動エネルギの前記電気エネルギへの変換に応じて発生する前記車両の回生制動力を大きくするように前記回生制御特性を変更することを特徴とする動力出力装置の制御方法。
  5. 駆動軸を備えた車両に搭載され、前記駆動軸の運動エネルギを受けて電気エネルギを起こす駆動源と、前記電気エネルギにより所定の回生制御特性に基づいて充電可能とされた蓄電装置とを備えた動力出力装置を制御する制御方法であって、
    前記車両が惰性走行状態にあるか否かに応じ、且つ、前記車両が走行している路面の摩擦係数に応じて、前記回生制御特性を変更する回生制御特性変更工程と、
    該回生制御特性変更工程の後、前記車両の減速時に、前記回生制御特性に基づいて前記蓄電装置の充電を行う充電工程と、
    を含み、
    前記回生制御特性変更工程は、
    前記車両が惰性走行状態にあると判断し、且つ、前記摩擦係数が所定の負荷値よりも小さいと判断する場合には、
    前記運動エネルギの前記電気エネルギへの変換に応じて発生する回生制動力の時間に対する変化の割合を大きくするように前記回生制御特性を変更することを特徴とする動力出力装置の制御方法。
  6. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の動力出力装置と、
    該動力出力装置が搭載される車両本体と、
    該車両本体に取り付けられると共に駆動軸を介して出力される駆動力により駆動される車輪と
    を備えたことを特徴とする車両。
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