JP3949967B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料に関するものであり、特に写真製版用に適したスキャナー、イメージセッター用熱現像感光材料に関し、さらに詳しくは、カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、高感度、高コントラストの写真特性を得ることができ、かつ、処理後の感光材料を長期間保管することができる熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
支持体上に感光性の画像形成層を有し、画像露光することで画像形成を行う感光材料が、数多く知られている。その中には、環境保全に寄与し画像形成手段を簡易化できるシステムとして、熱現像により画像を形成する技術がある。
近年、写真製版分野においては環境保全や省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれるようになっている。そこで、レーザー’スキャナーまたはレーザー’イメージセッターにより効率的に露光させることができ、かつ高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる写真製版用途の熱現像感光材料に関する技術開発が必要とされている。このような熱現像感光材料によれば、溶液系処理化学薬品を必要としない、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することが可能になる。
【0003】
熱現像により画像を形成する方法は、例えば米国特許第3,152,904号明細書、同第3,457,075号明細書、およびD.クロスタボーア(Klosterboer)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)A」(イメージング’プロセッシーズ’アンド’マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、J.スタージ(Sturge)、V.ウォールワーズ(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第9章第279頁、1989年)に記載されている。このような熱現像感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、および銀の還元剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有する。感光材料は常温で安定であるが、露光後に高温(例えば、80℃以上)に加熱したときに、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光により形成された潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色になり、非露光領域と対照をなすことから画像の形成がなされる。
【0004】
従来から知られている熱現像感光材料は、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノールなどの有機溶剤を溶媒とする塗布液を塗布することにより画像形成層を形成しているものが多い。有機溶剤を溶媒として用いることは、製造工程で人体へ悪影響が及ぶだけでなく、溶剤の回収その他の工程が必要になるためコスト上も不利である。
そこで、水を溶媒とする塗布液を用いて画像形成層を形成する方法が提案されている。例えば特開昭49−52626号公報、特開昭53−116144号公報などには、ゼラチンをバインダーとする画像形成層が記載されている。また特開昭50−151138号公報には、ポリビニルアルコールをバインダーとする画像形成層が記載されている。さらに特開昭60−61747号公報には、ゼラチンとポリビニルアルコールを併用した画像形成層が記載されている。これ以外の例として特開昭58−28737号公報には、水溶性ポリビニルアセタールをバインダーとする画像形成層が記載されている。このようなバインダーを用いれば、水溶媒の塗布液を用いて画像形成層を形成することができるため、環境面およびコスト面のメリットは大きい。
【0005】
しかしながら、ポリビニルアルコール、水溶性ポリアセタールなどのポリマーをバインダーとして用いると、現像部の銀色調が本来好ましいとされる黒色からかけ離れた茶色や黄色になるうえ、露光部の黒化濃度が低くて未露光部の濃度が高い等の問題がある。また、有機銀塩との相溶性が低いために塗布面質が悪くなるという問題もあり、商品価値が低くて実用に耐えないものしか製造することができなかった。さらに、一般的に感度をあげること、あるいはDmax(最高濃度)を高くすることはしばしばカブリの上昇をともなうため、カブリが低く、かつ高感、高Dmaxの写真特性を有する熱現像感光材料を提供することが望まれていた。さらに、上記の熱現像システムでは従来の化学処理感光材料に比べ、熱現像処理後の感光材料を長期間保管することによりカブリが上昇しやすいという問題があるため、熱現像感光材料において、処理後の感光材料を長期間保管してもカブリの上昇の少ない熱現像感光材料を提供することが望まれていた。
【0006】
欧州特許公開EP762,196A号公報、特開平9−90550号公報等には、熱現像感光材料に用いる感光性ハロゲン化銀粒子に第VII族またはVIII族の金属イオンまたは金属錯体イオンを含有させること、および熱現像感光材料中にヒドラジン誘導体を含有せしめて高コントラストな写真特性を得ることができることが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の解決しようとする第一の課題は、特に写真製版用、特にスキャナー、イメージセッター用熱現像感光材料において、カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、高感度、高コントラストの写真特性を有し、かつ処理後の感光材料を長期間保管してもカブリの上昇の少ない熱現像感光材料を提供することにある。
さらに、本発明の解決しようとする第二の課題は環境面、コスト面で有利な水系塗布可能な熱現像感光材料を提供することにある。
【0008】
(1) 支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを有する熱現像感光材料において、下記一般式(I)で表わされる化合物の少なくとも1種と、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【化3】
[式中、XはN、S、P、SeまたはTeの少なくとも1つの原子を有するハロゲン化銀吸着基または光吸収基を表す。LはC、N、S、Oの少なくとも1つの原子を有するk+n価の連結基を表す。Aは電子供与基を表し、Bは脱離基または水素原子を表し、A−Bは酸化後、脱離または脱プロトンされてラジカルA ' を生成する。kは0〜3を表し、mは0または1を表し、nは1もしくは2を表す。ただし、k=0かつn=1の場合はm=0である。]
【化4】
[一般式(1)中、R 1 、R 2 、R 3 は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、イミノ基、チオカルボニル基、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、アシルチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基またはスタニル基を表す。これらの置換基はさらにこれらの置換基で置換されていてもよい。Zはシアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルカンアミド基、スルホンアミド基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基、スルホ基(またはその塩)、ヘテロ環基、 アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれらの基で置換されたアリール基を表す。R 1 とZ、R 2 とR 3 、或いはR 3 とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
一般式(2)中、R 4 は置換基を表す。
一般式(3)中、X、Yは各々独立に水素原子または置換基を表し、A、Bは各々独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。これらの各基はさらに置換基を有してもよい。XとY、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
(2) 前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が、非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物であることを特徴とする(1)に記載の熱現像感光材料。
(3) 前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が、0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物であることを特徴とする(1)に記載の熱現像感光材料。
(4) 前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が、0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物であることを特徴とする(1)に記載の熱現像感光材料。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の熱現像感光材料について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0012】
まず、本発明の熱現像感光材料に用いる一般式(I)で表わされる化合物について説明する。
一般式(I)中、XはN、S、P、SeまたはTeの少なくとも1つの原子を有するハロゲン化銀吸着基または光吸収基を表す。
好ましいXは、N、S、P、SeまたはTeの少なくとも1つの原子を有し、銀イオンリガンド構造を有するハロゲン化銀吸着基である。銀イオンリガンド構造を有するハロゲン化銀吸着基として、例えば以下の一般式で表される基を挙げることができる。
【0013】
一般式(X−1)
−G1−Z1−Y1
式中、G1は2価の連結基であり、置換もしくは無置換のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、SO2基または2価のヘテロ環基を表す。Z1は、S、SeまたはTe原子を表す。Y1は水素原子またはZ1の解離体となった場合に必要な対イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンおよびアンモニウムイオンを表す。
【0014】
一般式(X−2a)、(X−2b)
【化5】
【0015】
一般式(X−2a)、(X−2b)で表される基は5〜7員のヘテロ環または不飽和環を有している。Zaは、O、N、S、SeまたはTe原子を表し、n1は0〜3を表す。Y2は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。
【0016】
一般式(X−3)
―Y3―(Z2)n2―Y4
式中、Z2はS、SeまたはTe原子を表し、n2は1〜3を表す。Y3は2価の連結基であり、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基または2価のヘテロ環基を表す。Y4はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0017】
一般式(X−4)
【化6】
【0018】
式中、Y5およびY6は各々独立してアルキル基、アルケニル基、アリーレン基またはヘテロ環基を表す。
【0019】
一般式(X−5a)、(X−5b)
【化7】
【0020】
式中、Z3は、S、SeまたはTe原子を表し、E1は水素原子、NH2、NHY10、N(Y10)2、NHN(Y10)2、OY10またはSY10を表す。E2は2価の連結基であり、NH、NY10、NHNY10、OまたはSを表す。Y7、Y8およびY9は各々独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Y8とY9は互いに結合して環を形成していてもよい。Y10は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0021】
一般式(X−6a)、(X−6b)
【化8】
【0022】
式中、Y11は2価の連結基であり、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アルーレン基または2価のヘテロ環基を表す。G2およびJは各々独立して、COOY12、SO2Y12、COY12、SOY12、CN、CHOまたはNO2を表す。Y12はアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表す。
【0023】
一般式(X−1)について詳細に説明する。式中、G1で表される連結基としては、それぞれ炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、3−オキサペンチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基)、炭素数3〜18の置換もしくは無置換の環状アルキレン基(例えばシクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基)、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニレン基(例えばエテン基、2−ブテニレン基)、炭素数2〜10のアルキニレン基(例えばエチニレン基)、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば無置換p−フェニレン基、無置換2,5−ナフチレン基)が挙げられる。
【0024】
式中、G1で表されるSO2基としては、−SO2−基の他に、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキレン基、炭素数3〜6の置換もしくは無置換の環状アルキレン基あるいは炭素数2〜10のアルケニレン基と結合した−SO2−基が挙げられる。
【0025】
式中、G1で表される2価のヘテロ環基としては、無置換もしくはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロ環基で置換されたもの、ベンゾ縮合またはナフト縮合されたもの(例えば、2,3−テトラゾールジイル基、1,3−トリアゾールジイル基、1,2−イミダゾールジイル基、3,5−オキサジアゾールジイル基、2,4−チアゾールジル基、1,5−ベンゾイミダゾールジイル基、2,5−ベンゾチアゾールジイル基、2,5−ベンゾオキサゾールジイル基、2,5−ピリミジンジイル基、3−フェニル−2,5−テトラゾールジイル基、2,5−ピリジンジイル基、2,4−フランジイル基、1,3−ピペリジンジイル基、2,4−モルホリンジイル基)が挙げられる。
【0026】
上記式中、G1で表されるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、SO2基または2価のヘテロ環基は置換基を有していてもよい。採りうる置換基について以下に説明するが、本明細書では以下に説明する置換基を「置換基Y」と称する。
置換基としては、例えばハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、tert−ブチル基)、アルケニル基(例えばアリル基、2−ブテニル基)、アルキニル基(例えばプロパルギル基)、アラルキル基(例えばベンジル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基)、ヘテロ環基(例えばピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、ピペリジニル基、モルホリル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、2−ナフチルオキシ基)、アミノ基(例えば無置換アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、エチルアミノ基、アニリノ基)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、ウレイド基(例えば無置換ウレイド基、N−メチルウレイド基)、ウレタン基(例えばメトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホニルアミノ基(例えばメチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基)、スルファモイル基(例えば無置換スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基)、カルバモイル基(例えば無置換カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基)、スルホニル基(例えばメシル基、トシル基)、スルフィニル基(例えばメチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基)、アルキルオキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基)、アシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基)、リン酸アミド基(例えばN,N−ジエチルリン酸アミド基)、シアノ基、スルホ基、チオスルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基、ニトロ基、アンモニオ基、ホスホニオ基、ヒドラジノ基、チアゾリノ基が挙げられる。また、置換基が2つ以上ある時はそれらは同じでも異なっていてもよく、置換基はさらに置換基を有していてもよい。
【0027】
一般式(X−1)の好ましい例を示す。
好ましい一般式(X−1)としては、G1は炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリーレン基、無置換もしくはアルキレン基またはアリーレン基と結合された、もしくはベンゾ縮合またはナフト縮合された5〜7員のヘテロ環基が挙げられる。Z1としてはS、Seが挙げられ、Y1としては、水素原子、ナトリウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。
さらに好ましくは、G1は、炭素数6〜8の置換もしくは無置換のアリーレン基、アリーレン基と結合された、またはベンゾ縮合された5〜6員のヘテロ環基であり、最も好ましくは、アリーレン基と結合された、もしくはベンゾ縮合された5〜6員のヘテロ環基である。さらに好ましいZ1はSであり、Y1は、水素原子、ナトリウムイオンである。
【0028】
一般式(X−2a)および(X−2b)について詳細に説明する。
式中、Y2で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、ジエチルアミノエチル基、n−ブトキシプロピル基、メトキシメチル基)、炭素数3〜6の置換もしくは無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、炭素数2〜10のアルケニル基(例えばアリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基)、炭素数2〜10のアルキニル基(例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基)、炭素数6〜12のアラルキル基(例えばベンジル基)等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基(例えばヒドロキシフェニル基、4−メチルヒドロキシフェニル基)等が挙げられる。
上記Y2はさらに置換基Y等を有してもよい。
【0029】
一般式(X−2a)および(X−2b)の好ましい例を示す。
式中、好ましくはY2が水素原子、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であり、ZaはO、NまたはSであり、n1が1〜3である。
さらに好ましくは、Y2が水素原子および炭素数1〜4のアルキル基であり、ZaはNまたはSであり、n1が2もしくは3である。
【0030】
次に一般式(X−3)について詳細に説明する。
式中、Y3で表される連結基としては、それぞれ炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、3−オキサペンチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基)、炭素数3〜18の置換もしくは無置換の環状アルキレン基(例えばシクロプロピレン基、シクロペンチニレン基、シクロへキシレン基)、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニレン基(例えばエテン基、2−ブテニレン基)、炭素数2〜10のアルキニレン基(例えばエチニレン基)、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば無置換p−フェニレン基、無置換2,5−ナフチレン基)が挙げられ、ヘテロ環基としては、無置換もしくはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、およびさらにヘテロ環基が置換されたもの(例えば2,5−ピリジンジイル基、3−フェニル−2,5−ピリジンジイル基、1,3−ピペリジンジイル基、2,4−モルホリンジイル基)が挙げられる。
【0031】
式中、Y4で表されるアルキル基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の直鎖、または分岐のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジブチルアミノエチル基、n−ブトキシメチル基、メトキシメチル基)、炭素数3〜6の置換もしくは無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)が挙げられ、アリール基としては、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基(例えば無置換フェニル基、2−メチルフェニル基)が挙げられる。
ヘテロ環基としては、無置換もしくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、および、さらにヘテロ環基が置換されたもの(例えばピリジル基、3−フェニルピリジル基、ピペリジル基、モルホリル基)が挙げられる。
上記Y4はさらに置換基Y等を有してもよい。
【0032】
一般式(X−3)の好ましい例を示す。
式中、好ましくはY3は炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキレン基、または炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリーレン基であり、Y4は炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、または炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であり、Z2はSまたはSeであり、n2は1〜2である。
さらに好ましくは、Y3は炭素数1〜4のアルキレン基であり、Y4は炭素数1〜4のアルキル基であり、Z2はSであり、n2は1である。
【0033】
次に一般式(X−4)について詳細に説明する。
式中、Y5およびY6で表されるアルキル基、アルケニル基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の直鎖、または分岐のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジブチルアミノエチル基、n−ブトキシメチル基、n−ブトキシプロピル基、メトキシメチル基)、炭素数3〜6の置換もしくは無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、炭素数2〜10のアルケニル基(例えばアリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基)が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基(例えば無置換フェニル基、4−メチルフェニル基)が挙げら、ヘテロ環基としては無置換もしくはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、およびさらにヘテロ環基が置換されたもの(例えばピリジル基、3−フェニルピリジル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリル基)が挙げられる。
上記式中、Y5およびY6はさらに置換基Y等を有していてもよい
【0034】
一般式(X−4)の好ましい例を示す。
式中、好ましくはY5およびY6が炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、または炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基である。
さらに好ましくはY5およびY6が、炭素数6〜8のアリール基である。
【0035】
次に一般式(X−5a)および(X−5b)について詳細に説明する。式中、E1で表される基としてはNH2、NHCH3、NHC2H5、NHPh、N(CH3)2、N(Ph)2、NHNHC3H7、NHNHPh、OC4H9、OPh、SCH3等が挙げられ、E2としては、NH、NCH3、NC2H5、NPh、NHNC3H7、NHNPh等が挙げられる。なお、本明細書において「Ph」はフェニル基を表す。
一般式(X−5a)および(X−5b)中、Y7、Y8およびY9で表されるアルキル基、アルケニル基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の直鎖または、分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジブチルアミノエチル基、n−ブトキシメチル基、n−ブトキシプロピル基、メトキシメチル基)、炭素数3〜6の置換もしくは無置換の環状アルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、炭素数2〜10のアルケニル基(例えば、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基)が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基(例えば、無置換フェニル基、4−メチルフェニル基)が挙げら、ヘテロ環基としては無置換もしくはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、およびさらにヘテロ環基が置換されたもの、(例えば、ピリジル基、3−フェニルピリジル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリル基)が挙げられる。
Y7、Y8およびY9はさらに置換基Y等を有していてもよい。
【0036】
一般式(X−5a)および(X−5b)の好ましい例を示す。
式中、好ましくはE1はアルキル置換もしくは無置換のアミノ基またはアルコキシ基であり、E2はアルキル置換もしくは無置換のアミノ連結基であり、Y7、Y8およびY9は炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、または炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリーレン基であり、Z3はSまたはSeである。
さらに好ましくは、E1はアルキル置換もしくは無置換のアミノ基であり、E2はアルキル置換もしくは無置換のアミノ連結基であり、Y7、Y8およびY9は炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基であり、Z3はSである。
【0037】
次に一般式(X−6a)および(X−6b)について詳細に説明する。
式中、G2およびJで表される基としてはCOOCH3、COOC3H7、COOC6H13、COOPh、SO2CH3、SO2C4H9、COC2H5、COPh、SOCH3、SOPh、CN、CHO、NO2等が挙げられる。
式中、Y11で表される連結基としては、それぞれ炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、3−オキサペンチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基)、炭素数3〜18の置換もしくは無置換の環状アルキレン基(例えばシクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基)、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニレン基(例えばエテン基、2−ブテニレン基)、炭素数2〜10のアルキニレン基(例えばエチニレン基)、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば無置換p−フェニレン基、無置換2,5−ナフチレン基)が挙げられる。
式中、Y11で表される2価のヘテロ環基としては、無置換もしくはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、またはさらにヘテロ環基が置換されたもの、(例えば2,5−ピリジンジイル基、3−フェニル−2,5−ピリジンジイル基、2,4−フランジイル基、1,3−ピペリジンジイル基、2,4−モルホリンジイル基)が挙げられる。
式中、Y11はさらに置換基Y等を有していてもよい。
【0038】
一般式(X−6a)および(X−6b)の好ましい例を示す。
式中、好ましくはG2およびJが炭素数2〜6のカルボン酸エステル類およびカルボニル類であり、Y11が炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキレン基または炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリーレン基である。
さらに好ましくは、G2およびJが炭素数2〜4のカルボン酸エステル類であり、Y11が炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキレン基または炭素数6〜8の置換もしくは無置換のアリーレン基である。
【0039】
Xで表されるハロゲン化銀吸着基の一般式は、好ましい順に(X−1)、(X−2a)、(X−2b)、(X−3)、(X−5a)、(X−5b)、(X−4)、(X−6a)、(X−6b)である。
【0040】
次に、一般式(I)中、Xで表される光吸収基について詳細に説明する。
一般式(I)中、Xで表される光吸収基としては以下の一般式で表される基が挙げられる。
一般式(X−7)
【化9】
【0041】
式中、Z4は5または6員の含窒素ヘテロ環を形成するために必要な原子群を表し、L2、L3、L4およびL5はメチン基を表す。p1はOまたは1を表し、n3は0〜3を表す。M1は電荷均衡対イオンを表し、m2は分子の電荷を中和するために必要な0〜10の数を表す。
【0042】
式中、Z4で表される5または6員の含窒素ヘテロ環としては、チアゾリジン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、セレナゾリン核、セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば、3,3−ジメチルインドレニン核)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核、イミダゾ〔4,5−b〕キノキザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核等が挙げられる。
Z4で表される5または6員の含窒素ヘテロ環は前述の置換基Yを有していてもよい。
【0043】
式中、L2、L3、L4およびL5は各々独立したメチン基を表す。L2、L3、L4およびL5で表されるメチン基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えば、置換もしくは無置換の炭素数1〜15のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、2−カルボキシエチル基)、置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル基、o−カルボキシフェニル基)、置換もしくは無置換の炭素数3〜20のヘテロ環基(例えばN,N−ジエチルバルビツール酸基)、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子)、炭素数1〜15のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)、炭素数1〜15のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基)、炭素数6〜20のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基)、炭素数0〜15のアミノ基(例えばN,N−ジフェニルアミノ基、Nーメチル−N−フェニルアミノ基、N−メチルピペラジン基)等が挙げられる。
また、他のメチン基と環を形成してもよい。あるいは、その他の部分と環を形成することもできる。
【0044】
式中、M1は光吸収基のイオン電荷を中性にするために必要に応じて、陽イオン叉は陰イオンの存在を示すために式の中に含まれている。典型的な陽イオンとしては水素イオン(H+)、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)等の無機陽イオン、アンモニウムイオン(例えば、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン)等の有機陽イオンが挙げられる。陰イオンも無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、沃素イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。さらに、イオン性ポリマーまたは逆電荷を有する光吸収基を用いてもよい。
本明細書では、例えばスルホ基をSO3 -、カルボキシ基をCO2 -と表記しているが、対イオンが水素イオンである時は各々SO3H、CO2Hと表記することができる。
式中、m2は電荷を均衡させるために必要な数を表し、分子内で塩を形成する場合は0である。
【0045】
一般式(X−7)の好ましい例を示す。
好ましい一般式(X−7)としては、Z4がベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ベンゾイミダゾール核またはキノリン核であり、L2、L3、L4およびL5が無置換のメチン基であり、p1がOであり、n3が1もしくは2である。
さらに好ましくは、Z4がベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核であり、n3が1である。特に好ましいZ4はベンゾチアゾール核である。
【0046】
一般式(I)中、好ましいkは0もしくは1であり、さらに好ましくは1である。
以下に一般式(I)のXの具体例を挙げるが、本発明において採用することができるXはこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化10】
【0048】
【化11】
【0049】
【化12】
【0050】
【化13】
【0051】
【化14】
【0052】
【化15】
【0053】
次に一般式(I)中、Lで表される連結基について詳細に説明する。
一般式(I)中、Lで表される連結基としては、それぞれ炭素数1〜20の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、3−オキサペンチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基)、炭素数3〜18の置換もしくは無置換の環状アルキレン基(例えば、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基)、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニレン基(例えば、エテン基、2−ブテニレン基)、炭素数2〜10のアルキニレン基(例えば、エチニレン基)、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば、無置換p−フェニレン基、無置換2,5−ナフチレン基)、ヘテロ環連結基(例えば、2,6−ピリジンジイル基)、カルボニル基、チオカルボニル基、イミド基、スルホニル基、スルホニルオキシ基、エステル基、チオエステル基、アミド基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、チオスルホニル基等が挙げられる。また、これらの連結基が、互いに連結して新たに連結基を形成してもよい。
Lはさらに前述の置換基Y等を有していてもよい。
【0054】
好ましい連結基Lとしては、炭素数1〜10の無置換のアルキレン基とアミノ基、アミド基、チオエーテル基、ウレイド基またはスルホニル基と連結した炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられ、さらに好ましくは炭素数1〜6の無置換のアルキレン基とアミノ基、アミド基またはチオエーテル基と連結した炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられる。
一般式(I)中、好ましいmは0もしくは1であり、さらに好ましくは1である。
【0055】
次に電子供与基Aについて詳細に説明する。
A−B部が酸化およびフラグメント化を受けて電子を発生してラジカルA'が生成し、さらにラジカルA'が酸化を受けて電子を発生させ、高感度化する反応過程を以下に示す。
【0056】
【化16】
【0057】
Aは電子供与基であるので、いずれの構造のものでも芳香族基上の置換基はAが電子過多である状態にするように選定するのが好ましい。例えば、芳香環が電子過多でない場合は、電子供与性基を導入し、逆にアントラセンのように非常に電子過多となっているような場合は、電子吸引性基を導入してそれぞれ酸化電位を調節するのが好ましい。
好ましい、A基は次の一般式を有するものである。
一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)
【0058】
【化17】
【0059】
一般式(A−1)および(A−2)中、Y12、Y12'、Y13およびY13'は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、アルキレン基およびアリ−レン基を表し、Y14およびY14'は各々独立にアルキル基、COOH、ハロゲン原子、N(Y15)2、OY15、SY15、CHO、COY15、COOY15、CONHY15、CON(Y15)2、SO3Y15、SO2NHY15、SO2NY15、SO2Y15、SOY15、CSY15を表す。Ar1およびAr1'は各々独立にアリール基、ヘテロ環基を表す。Y12とY13、Y12とAr1、Y12'とY13'、およびY12'とAr1'はそれぞれ結合して環を形成していてもよい。Q2およびQ2'は各々独立にO、S、Se、Teを表し、m3およびm4は各々独立に0もしくは1を表し、n4は1〜3を表す。L2はN−R、N−Ar、O、S、Seを表し、5〜7員のヘテロ環もしくは不飽和環を有するものであってもよい。Y15は水素原子、アルキル基およびアリール基を表す。一般式(A−3)の環状構造は、置換もしくは無置換の5〜7員環の不飽和環またはヘテロ環基を表す。
【0060】
一般式(A−1)、(A−2)および(A−3)について詳細に説明する。式中、Y12、Y12'、Y13およびY13'で表されるアルキル基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の直鎖、または分岐のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジブチルアミノエチル基、n−ブトキシメチル基、メトキシメチル基)、炭素数3〜6の置換もしくは無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)が挙げられ、アリール基としては、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基(例えば無置換フェニル基、2−メチルフェニル基)が挙げられる。
アルキレン基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の直鎖、または分岐のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、メトキシエチレン基)が挙げられ、アリーレン基としては炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば無置換フェニレン基、2−メチルフェニレン基、ナフチレン基)が挙げられる。
【0061】
一般式(A−1)および(A−2)中、Y14およびY14'で表される基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、n−ブトキシメチル基)、COOH基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、OH、N(CH3)2、NPh2、OCH3、OPh、SCH3、SPh、CHO、COCH3、COPh、COOC4H9、COOCH3、CONHC2H5、CON(CH3)2、SO3CH3、SO3C3H7、SO2NHCH3、SO2N(CH3)2、SO2C2H5、SOCH3、CSPh、CSCH3が挙げられる。
一般式(A−1)および(A−2)で表されるAr1およびAr1'としては、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基(例えば、フェニル基、2ーメチルフェニル基、ナフチル基)、置換もしくは無置換のヘテロ環基(例えば、ピリジル基、3−フェニルピリジル基、ピペリジル基、モルホリル基)が挙げられる。
【0062】
一般式(A−1)および(A−2)で表されるL2としては、NH、NCH3、NC4H9、NC3H7(i)、NPh、NPh−CH3、O、S、Se、Teが挙げられる。
一般式(A−3)の環状構造としては、不飽和の5〜7員環、ヘテロ環(例えば、フリル基、ピペリジル基、モルホリル基)が挙げられる。
一般式(A−1)および(A−2)中のY12、Y13、Y14、Ar1、L2、Y12'、Y13'、Y14'、Ar1'および一般式(A−3)中の環状構造上には前述の置換基Y等をさらに有してもよい。
【0063】
一般式(A−1)、(A−2)および(A−3)の好ましい例を示す。
一般式(A−1)および(A−2)中、好ましくはY12、Y12'、Y13およびY13'が各々独立に炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、アルキレン基、または炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であり、Y14およびY14'が炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基でモノ置換またはジ置換されたアミノ基、カルボン酸、ハロゲンまたは炭素数1〜4のカルボン酸エステルであり、Ar1およびAr1'が炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であり、Q2およびQ2'がO、SまたはSeであり、m3およびm4が0もしくは1であり、n4が1〜3であり、L2が、炭素数0〜3のアルキル置換されたアミノ基である。
一般式(A−3)で表される環状構造は、5〜7員のヘテロ環であることが好ましい。
【0064】
一般式(A−1)および(A−2)中、さらに好ましくは、Y12、Y12'、Y13およびY13'が各々独立に炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基またはアルキレン基であり、Y14およびY14'が炭素数1〜4の無置換のアルキル基、炭素数1〜4のモノアミノ置換もしくはジアミノ置換されたアルキル基であり、Ar1およびAr1'が炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であり、Q2およびQ2'がOまたはSであり、m3およびm4が0であり、n4が1であり、L2が炭素数0〜3のアルキル置換されたアミノ基である。
一般式(A−3)で表される環状構造は、5〜6員のヘテロ環であることがさらに好ましい。
一般式(I)のAがXまたはLと結合する部分は、Xが一般式(A−1)および(A−2)で表される場合はY12、Y13、Ar1、Y12'、Y13'またはAr1'の中から選択される。
以下に一般式(I)のAの具体例を挙げるが、本発明で採用することができるAはこれらの具体例に限定されるものではない。
【0065】
【化18】
【0066】
【化19】
【0067】
【化20】
【0068】
【化21】
【0069】
【化22】
【0070】
【化23】
【0071】
次に一般式(I)のBについて詳細に説明する。
Bが水素原子の場合は酸化後、分子内塩基によって脱プロトンされてラジカルA'を生成する。
好ましい、Bは水素原子および次の一般式を有するものである。
一般式(B−1)、(B−2)、(B−3)
【0072】
【化24】
【0073】
一般式(B−1)、(B−2)および(B−3)中、WはSi、SnまたはGeを表し、Y16は各々独立してアルキル基を表し、Ar2は各々独立してアリール基を表す。
一般式(B−2)および(B−3)は吸着基Xと結合させることができる。
一般式(B−1)、(B−2)および(B−3)について詳細に説明する。式中、Y16で表されるアルキル基としては、炭素数1〜6の置換もしくは無置換の直鎖、または分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、n−ブトキシエチル基、メトキシメチル基)、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリール基(例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基)が挙げられる。
一般式(B−1)、(B−2)および(B−3)中のY16およびAr2は前述の置換基Y等をさらに有していてもよい。
【0074】
一般式(B−1)、(B−2)および(B−3)の好ましい例を以下に示す。
一般式(B−2)および(B−3)中、好ましくは、Y16が炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基であり、Ar2が炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であり、WはSiまたはSnである。
一般式(B−2)および(B−3)中、さらに好ましくは、Y16が炭素数1〜3の置換もしくは無置換のアルキル基であり、Ar2が炭素数6〜8の置換もしくは無置換のアリール基であり、WはSiである。
一般式(B−1)、(B−2)および(B−3)中、最も好ましいのは、(B−1)のCOO-および(B−2)におけるSi−(Y16)3である。
一般式(I)中、好ましいnは1である。
以下に一般式(I)中のA−Bの具体例を挙げるが、本発明において採用することができるA−Bはこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化25】
【0076】
【化26】
【0077】
【化27】
【0078】
【化28】
【0079】
【化29】
【0080】
【化30】
【0081】
上記A−Bの電荷バランスに必要な対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、およびテトラメチルグアニジニウムイオンが挙げられる。
【0082】
A−Bの好ましい酸化電位は0〜1.5Vであり、より好ましくは0〜1.0Vであり、さらに好ましくは0.3〜1.0Vの範囲である。
結合開裂反応から生じるラジカルA'(E2)の好ましい酸化電位は−0.6〜−2.5Vであり、より好ましくは−0.9〜−2Vであり、さらに好ましくは−0.9〜−1.6Vの範囲である。
【0083】
酸化電位の測定法は以下の通りである。
E1はサイクリックボルタンメトリー法で行うことができる。電子供与体Aをアセトニトリル/0.1M過塩素酸リチウムを含有する水80%/20%(容量%)の溶液に溶解させる。ガラス状のカーボンディスクを動作電極に用い、プラチナ線を対電極に用い、飽和カロメル電極(SCE)を参照電極に用いる。25℃で、0.1V/秒の電位走査速度で測定する。サイクリックボルタンメトリー波のピーク電位の時に酸化電位対SCEをとる。これらA−B化合物のE1値は欧州特許第93,731A1号公報に記載されている。
ラジカルの酸化電位測定は過度的な電気化学およびパルス放射線分解法によって行われる。これらはJ.Am.Chem.Soc.1988,110,132、同1974,96,1287、同1974,96,1295で報告されている。
以下に一般式(I)で表される化合物の具体例を記すが、本発明に用いられる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0084】
【化31】
【0085】
【化32】
【0086】
【化33】
【0087】
【化34】
【0088】
【化35】
【0089】
【化36】
【0090】
【化37】
【0091】
【化38】
【0092】
【化39】
【0093】
【化40】
【0094】
【化41】
【0095】
【化42】
【0096】
【化43】
【0097】
【化44】
【0098】
【化45】
【0099】
一般式(I)で表される化合物の合成法としては、米国特許5,747,235号明細書、同5,747,235号明細書、欧州特許公開786,692A1号公報、同893,731A1号公報、同893,732A1号公報、国際公開WO99/05570号公報等に記載の方法、あるいはそれに準じた方法で容易に合成することができる。
【0100】
本発明の熱現像感光材料を製造する際に、一般式(I)で表される化合物は、塗布用の乳剤調製工程や熱現像感光材料の製造工程中のいかなる段階で使用してもよい。例えば、粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などに用いることができる。またこれらの工程中において、複数回に分けて添加することもできる。
一般式(I)で表される化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高くして溶解してもよい。逆に、水に溶解する場合、pHを低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを低くして溶解してもよい。
【0101】
一般式(I)で表される化合物は、画像形成層(乳剤層)中に使用するのが好ましいが、画像形成層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。一般式(I)で表される化合物の添加時期は増感色素添加の前後を問わず、各々好ましくはハロゲン化銀1mol当り、1×10-9〜5×10-2mol、さらに好ましくは1×10-8〜2×10-3molの割合でハロゲン化銀を含有する画像形成層に含有する。
【0102】
次に、本発明の一般式(1)〜(3)で表される化合物を説明する。
本発明の一般式(1)〜(3)で表される化合物は、以下の(i)〜(iii)のいずれかの機能を有する。
(i)非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物について説明する。(i)の化合物が感光材料中に存在しない場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上でのみ、物理現像が進行する。(i)の化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上で起こる物理現像に伴って生成する化学種、例えば現像主薬酸化体と(i)の化合物が反応し、非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種が生成する。その化学種が非感光性銀塩、例えばベヘン酸銀上および近傍に現像開始点を形成し、そこから物理現像が起こる。すなわち、(i)の化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上、およびイメージワイズに現像開始点が形成された非感光性有機銀塩上および近傍の両方で物理現像が進行する。
【0103】
図1は、(i)の化合物が0.01mol/銀molで感光材料中に存在する場合(A)、および存在しない場合(B)の両方について、現像後の感光材料を厚さ2μmに切削し、その薄片の電子顕微鏡写真を撮影した結果である。撮影対象となった熱現像感光材料は、特願2000−393931号明細書の実施例1における実験No.1の熱現像感光材料であり、現像処理は当該実施例1に記載される通りに行った。本発明の化合物を添加することによりが現像銀粒子の数が、大幅に増加していることが図1より明らかである。
【0104】
次に、( ii )0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物について説明する。現像銀粒子密度の増加量は、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、前記図1に示すような写真を撮影し、単位面積当たりの現像銀粒子の数を数え、その密度を比較することにより得ることができる。本発明の化合物が感光材料中に存在する場合は、該化合物が感光材料中に存在しない場合に比べ、現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する。より好ましい化合物の現像銀粒子密度増加率は500〜3000%である。
【0105】
次に、( iii )0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物について説明する。本明細書において「カバリングパワー」とは、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、可視濃度を現像銀量(g/m2)で割った値である。本発明の化合物によるカバリングパワーの増加は、前記図1の(A)と(B)の比較からわかるように、より小さな現像銀粒子が数多く形成されることによる。より好ましい化合物のカバリングパワー増加率は150〜500%である。
【0124】
次に本発明で用いられる一般式(1)、(2)または(3)で表わされる化合物について説明する。
【0125】
【化47】
【0126】
一般式(1)においてR1、R2、R3は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、イミノ基、チオカルボニル基、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、アシルチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基またはスタニル基を表す。これらの置換基はさらにこれらの置換基で置換されていてもよい。Zはシアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルカンアミド基、スルホンアミド基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基、スルホ基(またはその塩)、ヘテロ環基、アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれら電子吸引性基で置換されたアリール基を表す。一般式(1)においてR1とZ、R2とR 3 、或いはR3とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。一般式(2)においてR4は、置換基を表す。一般式(3)においてX、Yは各々独立に水素原子または置換基を表し、A、Bは各々独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。これらの各基はさらに置換基を有してもよい。一般式(3)においてXとY、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0127】
一般式(1)におけるR1、R2、R3 の上記の置換基をさらに説明すると、ハロゲン原子(フッ素原子、クロロ原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(N−置換の含窒素ヘテロ環基を含む)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、アシルチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、スタニル基等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0128】
一般式(1)においてZで表される基は電子吸引性基から選択される基であり、該電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことであり、具体的には、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルカンアミド基、スルホンアミド基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基、スルホ基(またはその塩)、ヘテロ環基、アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれら電子吸引性基で置換されたアリール基等である。ここにヘテロ環基とは、芳香族もしくは非芳香族の、飽和もしくは不飽和のヘテロ環基で、例えばピリジル基、キノリル基、ピラジニル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンツイミダゾリル基、ヒダントイン−1―イル基、ウラゾール−1−イル基、スクシンイミド基、フタルイミド基等がその例として挙げられる。一般式(1)においてZで表される電子吸引性基は、さらに任意の置換基を有していてもよい。
一般式(1)においてZで表される電子吸引性基として好ましくは、総炭素数0〜30の以下の基、即ち、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、さらに好ましくは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、またはホルミル基である。
【0129】
一般式(1)においてR1で表される置換基として好ましくは、総炭素数0〜30の基で、具体的には上述の一般式(1)のZで表される電子吸引性基と同義の基、およびアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、ウレイド基、アシルアミノ基、シリル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、さらに好ましくは上述の一般式(1)のZで表される電子吸引性基と同義の基、置換もしくは無置換のアリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、シリル基、またはアシルアミノ基であり、より好ましくは電子吸引性基、アリール基、またはアシルアミノ基である。R1が電子吸引性基を表す時、その好ましい範囲はZで表される電子吸引性基の好ましい範囲と同じである。
【0130】
一般式(1)においてR2およびR3で表される置換基として好ましくは、上述の一般式(1)のZで表される電子吸引性基と同義の基、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、置換もしくは無置換のフェニル基等である。R2およびR3はさらに好ましくは、どちらか一方が水素原子で、他方が置換基を表す時である。その置換基として好ましくは、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基(特にパーフルオロアルカンアミド基)、スルホンアミド基、置換もしくは無置換のフェニル基、またはヘテロ環基等であり、さらに好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、またはヘテロ環基であり、特に好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、アルコキシ基、またはヘテロ環基である。
【0131】
一般式(1)においてZとR1、或いはまたR2とR3とが環状構造を形成する場合もまた好ましい。この場合に形成される環状構造は、非芳香族の炭素環もしくは非芳香族のヘテロ環であり、好ましくは5員〜7員の環状構造で、置換基を含めたその総炭素数は1〜40、さらには3〜35が好ましい。
【0132】
一般式(1)で表される化合物の中で、より好ましいものの1つは、Zがシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミノ基、またはカルバモイル基を表し、R1が電子吸引性基を表し、R2またはR3のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。
さらにまた一般式(1)で表される化合物の中でより好ましいものの1つは、ZとR1とが連結して非芳香族の5員〜7員の環状構造を形成していて、R2またはR3のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。
ここでZとR1とが形成する非芳香族の5員〜7員の環状構造とは具体的に、インダン−1,3−ジオン環、ピロリジン−2,4−ジオン環、ピラゾリジン−3,5−ジオン環、オキサゾリジン−2,4−ジオン環、5−ピラゾロン環、イミダゾリジン−2,4−ジオン環、チアゾリジン−2,4−ジオン環、オキソラン−2,4−ジオン環、チオラン−2,4−ジオン環、1、3―ジオキサン−4,6−ジオン環、シクロヘキサン−1,3−ジオン環、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン環、シクロペンタン−1,3−ジオン環、イソオキサゾリジン−3,5−ジオン環、バルビツール酸環、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−オン環、ピラゾロトリアゾール環(例えば7H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]トリアゾール,7H−ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアゾール,7H−ピラゾロ[1,5−a]ベンズイミダゾール等)、ピロロトリアゾール環(例えば5H−ピロロ[1,2−b][1,2,4]トリアゾール,5H−ピロロ[2,1−c][1,2,4]トリアゾール等)、2−シクロペンテン−1,4−ジオン環、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド環、クロマン−2,4−ジオン環、2−オキサゾリン−5―オン環、2−イミダゾリン−5−オン環、2−チアゾリン−5−オン環、1−ピロリン−4−オン環、5−オキソチアゾリジン−2−オン環、4−オキソチアゾリジン−2−オン環、1,3−ジチオラン環、チアゾリジン環、1,3−ジチエタン環、1,3−ジオキソラン環等が挙げられ、中でもインダン−1,3−ジオン環、ピロリジン−2,4−ジオン環、ピラゾリジン−3,5−ジオン環、5−ピラゾロン環、バルビツール酸環、2−オキサゾリン−5―オン環等が好ましい。
【0133】
一般式(2)においてR4で表される置換基の例としては、一般式(1)のR1〜R3の置換基について説明したものと同じものおよびアルケニル基が挙げられる。
一般式(2)においてR4で表される置換基は、好ましくは電子吸引性基またはアリール基である。R4が電子吸引性基を表す時、好ましくは、総炭素数0〜30の以下の基、即ち、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、パーフルオロアルキル基、ホスホリル基、イミノ基、スルホンアミド基、またはヘテロ環基であり、さらにシアノ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホンアミド基、ヘテロ環基が好ましい。
R4がアリール基を表す時、好ましくは総炭素数0〜30の、置換もしくは無置換のフェニル基であり、置換基としては、一般式(1)のR1、R2、R3が置換基を表す時にその置換基として説明したものと同じものが挙げられるが、電子吸引性基が好ましい。
【0134】
一般式(3)においてX、Yで表される置換基としては、一般式(1)のR1〜R3の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。X、Yで表される置換基は、好ましくは総炭素数1〜50の、より好ましくは総炭素数1〜35の基であり、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アルコキシ基、またはアリール基等が好ましい。より好ましくはシアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシル基、ホルミル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、ヘテロ環基、または置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、ホルミル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ヘテロ環基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等である。
【0135】
XとYが、互いに結合して非芳香族の炭素環、または非芳香族のヘテロ環を形成している場合もまた好ましい。この時、形成される環は5員〜7員環が好ましく、具体的には一般式(1)のZとR1とが互いに結合して形成しうる非芳香族の5員〜7員環の例と同じものが挙げられ、その好ましい範囲もまた同じである。これらの環はさらに置換基を有していてもよく、その総炭素数は1〜40、さらには1〜35が好ましい。
【0136】
一般式(3)においてA、Bで表される基は、さらに置換基を有していてもよく、好ましくは総炭素数1〜40の、より好ましくは総炭素数1〜30の基である。
一般式(3)においてA、Bは、これらが互いに結合して環状構造を形成している場合がより好ましい。この時形成される環状構造は5員〜7員環の非芳香族のヘテロ環が好ましく、その総炭素数は1〜40、さらには3〜30が好ましい。この場合に、A、Bが連結した例(−A−B−)を挙げれば、例えば−O−(CH2)2−O−,−O−(CH2)3−O−,−S−(CH2)2−S−,−S−(CH2)3−S−,−S−Ph−S−,−N(CH3)−(CH2)2−O−,−O−(CH2)3−S−,−N(CH3)−Ph−S−,−N(Ph)−(CH2)2−S−等である。
【0137】
一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。カプラ−等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマ−が組み込まれているものでもよく、またカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、あるいは塩基により解離しうる解離性基(カルボキシ基、スルホ基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基等)が含まれていてもよい。これらの基の例としては、例えば特開昭63−29751号公報、米国特許第4,385,108号明細書、同4,459,347号明細書、特開昭59−195233号公報、同59−200231号公報、同59−201045号公報、同59−201046号公報、同59−201047号公報、同59−201048号公報、同59−201049号公報、特開昭61−170733号公報、同61−270744号公報、同62−948号公報、同63−234244号公報、同63−234245号公報、同63−234246号公報、特開平2−285344号公報、特開平1−100530号公報、特開平7−234471号公報、特開平5−333466号公報、特開平6−19032号公報、特開平6−19031号公報、特開平5−45761号公報、米国特許4994365号明細書、米国特許4988604号明細書、特開平73−259240号公報、特開平7−5610号公報、特開平7−244348号公報、独国特許4006032号明細書等に記載の化合物が挙げられる。
【0138】
次に,一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明で用いることができる一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物はこれらに限定されるものではない。
【0139】
【化48】
【0140】
【化49】
【0141】
【化50】
【0142】
【化51】
【0143】
【化52】
【0144】
【化53】
【0145】
【化54】
【0146】
【化55】
【0147】
【化56】
【0148】
【化57】
【0149】
【化58】
【0150】
一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は公知の方法により容易に合成することができるが、例えば、米国特許5,545,515号明細書、米国特許5,635,339号明細書、米国特許5,654,130号明細書、国際公開WO−97/34196号公報、或いは特開平11−231459号公報、特開平11−133546号公報、特開平11−95365号公報に記載の方法を参考に合成することができる。
【0151】
一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。また上記のものの他に、米国特許5,545,515号明細書、米国特許5,635,339号明細書、米国特許5,654,130号明細書、米国特許5,705,324号明細書、米国特許5,686,228号明細書に記載の化合物、或いはまた特開平10−161270号公報、特開平11−119372号公報、特開平11−231459号公報、特開平11−133546号公報、特開平11−119373号公報、特開平11−109546号公報、特開平11−95365号公報、特開平11−95366号公報、特開平11−149136号公報に記載された化合物を併用して用いてもよい。
さらに本発明においては、特開平10−161270号公報に記載の種々のヒドラジン誘導体を組み合せて用いることもできる。
【0152】
一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、水または適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0153】
一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、支持体に対して画像記録層側の該画像記録層あるいは他のどの層に添加してもよいが、該画像記録層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。
一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物の添加量は、銀1molに対し1×10-6〜1molが好ましく、1×10-5〜5×10-1molがより好ましく、2×10-5〜2×10-1molが最も好ましい。
【0154】
また上記の化合物の他に、米国特許第5,545,515号明細書、同第5,635,339号明細書、同第5,654,130号明細書、国際公開WO97/34196号公報、米国特許第5,686,228号明細書に記載の化合物、或いはまた特開平11−119372号公報、特開平11−133546号公報、特開平11−119373号公報、特開平11−109546号公報、特開平11−95365号公報、特開平11−95366号公報、特開平11−149136号公報に記載の化合物を用いてもよい。
【0155】
本発明の熱現像感光材料にはリンを含む化合物として、五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが特に好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
本発明において好ましく用いることができる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩は、少量で所望の効果を発現するという点から画像形成層あるいはそれに隣接するバインダー層に添加する。
リンを含む化合物および五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0156】
本発明では超硬調画像形成のために、前記の化合物とともに硬調化促進剤として以下に挙げる化合物を併用することもできる。例えば、米国特許第5,545,505号明細書に記載のアミン化合物、具体的にはAM−1〜AM−5、米国特許第5,545,507号明細書に記載のヒドロキサム酸類、具体的にはHA−1〜HA−11、米国特許第5,545,507号明細書に記載のアクリロニトリル類、具体的にはCN−1〜CN−13、米国特許第5,558,983号明細書に記載のヒドラジン化合物、具体的にはCA−1〜CA−6、特開平9−297368号公報に記載のオニュ−ム塩類、具体的にはA−1〜A−42、B−1〜B−27、C−1〜C−14などを用いることができる。
【0157】
本発明に用いることができる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は、還元可能な銀イオン源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に長鎖脂肪カルボン酸の銀塩(炭素数は好ましくは10〜30、より好ましくは15〜28)が好ましい。また、配位子が4.0〜10.0の範囲の錯体安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜70質量%を構成することができる。好ましい有機銀塩として、カルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを挙げることができる。
【0158】
本発明においては、上記の有機酸銀ないしは有機酸銀の混合物の中でも、ベヘン酸銀含有率75mol%以上の有機酸銀を用いることが好ましく、ベヘン酸銀含有率85mol%以上の有機酸銀を用いることがさらに好ましい。ここでベヘン酸銀含有率とは、使用する有機酸銀に対するベヘン酸銀のモル分率を示す。本発明に用いる有機酸銀中に含まれるベヘン酸銀以外の有機酸銀としては、上記の例示有機酸銀を好ましく用いることができる。
【0159】
本発明に好ましく用いられる有機酸銀は、上記の有機酸のアルカリ金属塩(Na塩、K塩、Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることにより調製される。これらの調製方法については、特願平11−104187号明細書の段落番号0019〜0021に記載の方法を用いることができる。
【0160】
本発明においては、液体を混合するための密閉手段の中に硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液を添加することにより有機酸銀を調製する方法を好ましく用いることができる。具体的には、特願平11−203413号明細書に記載されている方法を用いることができる。
本発明においては有機酸銀の調製時に、硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液、あるいは反応液には水に可溶な分散剤を添加することができる。ここで用いる分散剤の種類および使用量については、特願平11−115457号明細書の段落番号0052に具体例が記載されている。
【0161】
本発明に用いる有機酸銀は第3級アルコールの存在下で調製することが好ましい。第3級アルコールとしては、総炭素数15以下の化合物が好ましく、10以下の化合物が特に好ましい。好ましい第3級アルコールの例としては、tert−ブタノール等が挙げられるが、本発明で使用することができる第3級アルコールはこれに限定されない。
本発明に用いる第3級アルコールの添加時期は有機酸銀調製時のいずれのタイミングでもよいが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明で用いる第3級アルコールは、有機酸銀調製時の溶媒としての水に対して重量比で0.01〜10の範囲で使用することができるが、0.03〜1の範囲で使用することが好ましい。
【0162】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状やサイズは特に制限されないが、特願平11−104187号明細書の段落番号0024に記載のものを用いることが好ましい。有機銀塩の形状は、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像から求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)は好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。測定方法としては、例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。この測定法での平均粒子サイズとしては0.05μm〜10.0μmの固体微粒子分散物が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜5.0μm、さらに好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜2.0μmである。
【0163】
本発明に用いる有機銀塩は、脱塩したものであることが好ましい。脱塩法は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、遠心ろ過、吸引ろ過、限外ろ過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知のろ過方法を好ましく用いることができる。限外ろ過の方法については、特願平11−115457号明細書に記載の方法を用いることができる。
【0164】
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。これらの分散方法については特願平11−104187号明細書の段落番号0027〜0038に記載の方法を用いることができる。
【0165】
本発明で用いる有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。具体的には、体積加重平均直径の標準偏差を体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が80%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0166】
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水からなるものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズを最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して0.5〜30質量%、特に1〜15質量%の範囲が好ましい。
【0167】
本発明で用いる有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
【0168】
本発明にはCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンを非感光性有機銀塩へ添加することが好ましい。Ca、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの非感光性有機銀塩への添加については、ハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましく、具体的には硝酸塩や硫酸塩などの形で添加することが好ましい。ハロゲン化物での添加は処理後の感光材料の光(室内光や太陽光など)による画像保存性、いわゆるプリントアウト性を悪化させるので好ましくない。このため、本発明ではハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましい。
【0169】
本発明に好ましく用いるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加時期としては、該非感光性有機銀塩の粒子形成後であって、粒子形成直後、分散前、分散後および塗布液調製前後など塗布直前までであればいずれの時期でもよく、好ましくは分散後、塗布液調製前後である。
本発明におけるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加量としては、非感光性有機銀1molあたり10-3〜10-1molが好ましく、特に5×10-3〜5×10-2molが好ましい。
【0170】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀のハロゲン組成は特に制限されない。具体的には、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀である。感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成については、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法で粒子形成することができるが、特にこの方法に限定されるものではない。
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、十四面体、平板状、球状、棒状、ジャガイモ状等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子あるいは平板状粒子が好ましい。粒子のアスペクト比、面指数など粒子形状の特徴については、特開平11−119374号公報の段落番号0225に記載されているものと同じである。また、ハロゲン組成の分布はハロゲン化銀粒子の内部と表面において均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、あるいは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0171】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀のハロゲン化銀粒子の粒子サイズは特に制限されない。粒子サイズは0.12μm以下であることが好ましく、0.01〜0.10μmであることがより好ましい。本発明で用いるハロゲン化銀粒子の粒径分布は、単分散度の値が30%以下であることが好ましく、1〜20%であることがより好ましく、5〜15%であることがさらに好ましい。ここで単分散度は、粒径の標準偏差を平均粒径で割った値の百分率(%)(変動係数)として定義されるものである。なおハロゲン化銀粒子の粒径は、便宜上、立方体粒子の場合は稜長で表し、その他の粒子(八面体、十四面体、平板状など)は投影面積円相当直径で算出する。
【0172】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体を含有する。周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましいのは、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムである。特に好ましい金属錯体は、(NH4)3Rh(H2O)Cl5、K2Ru(NO)Cl5、K3IrCl6、K4Fe(CN)6である。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1molに対し1×10-9mol〜1×10-3molの範囲が好ましく、1×10-8mol〜1×10-4molの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7−225449号公報等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。これら重金属の種類、添加方法に関しては、特開平11−119374号公報の段落番号0227〜0240に記載されている。
【0173】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている水洗法により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀乳剤は化学増感することが好ましい。化学増感については、特開平11−119374号公報の段落番号0242〜0250に記載されている方法を用いることが好ましい。また、米国特許第4,810,626号明細書、同第5,049,485号明細書に記載の化合物を使用することもできる。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開EP293,917A号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0174】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀に含有するゼラチンとしては、感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。低分子量ゼラチンの分子量は、500〜60,000であり、好ましくは分子量1,000〜40,000である。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。また、粒子形成時は通常のゼラチン(分子量100,000程度)を使用し、脱塩処理後の分散時に低分子量ゼラチンを使用してもよい。
【0175】
分散媒の濃度は0.05〜20質量%にすることができるが、取り扱い上5〜15質量%の濃度域が好ましい。ゼラチンの種類としては、通常アルカリ処理ゼラチンが用いられるが、その他に酸処理ゼラチン、フタル化ゼラチンの如き修飾ゼラチンも用いることができる。
【0176】
本発明に用いる感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、1種だけを用いてもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)を併用してもよい。
【0177】
本発明で用いる感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1molに対して感光性ハロゲン化銀0.01mol〜0.5molが好ましく、0.02mol〜0.3molがより好ましく、0.03mol〜0.25molが特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製を終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に得られる限り特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
【0178】
本発明に用いることができる増感色素としては、ハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、550nm〜750nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平10−186572号公報の一般式(II)で表される色素が挙げられ、具体的にはII−6、II−7、II−14、II−15、II−18、II−23、II−25の色素を好ましい色素として例示することができる。また、750〜1400nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平11−119374号公報の一般式(I)で表される色素が挙げられ、具体的には(25)、(26)、(30)、(32)、(36)、(37)、(41)、(49)、(54)の色素を好ましい色素として例示することができる。さらに、J−bandを形成する色素として、米国特許第5,510,236号明細書、同第3,871,887号明細書の実施例5に記載の色素、特開平2−96131号公報、特開昭59−48753号公報に開示されている色素を好ましい色素として例示することができる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0179】
これら増感色素の添加については、特開平11−119374号公報の段落番号0106に記載されている方法で添加することができるが、特に、この方法に限定されるものではない。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光層のハロゲン化銀1mol当たり10-6〜1molが好ましく、さらに好ましくは10-4〜10-1molである。
【0180】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開EP587,338A号公報、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書に開示されている化合物、複素芳香族あるいは脂肪族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、スチルベン、ヒドラジン、トリアジンから選択される化合物などが挙げられる。
特に好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報に開示されている複素芳香族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、特開平4−182639号公報の一般式(I)あるいは(II)で表される化合物、特開平10−111543号公報の一般式(I)で表されるスチルベン化合物、特開平11−109547号公報の一般式(I)で表わされる化合物である。具体的には特開平5−341432号公報のM−1〜M−24の化合物、特開平4−182639号公報のd−1)〜d−14)の化合物、特開平10−111543号公報のSS−01〜SS−07の化合物、特開平11−109547号公報の31、32、37、38、41〜45、51〜53の化合物である。
これらの強色増感剤の添加量は、画像形成層(乳剤層)中にハロゲン化銀1mol当たり10-4〜1molの範囲が好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり0.001〜0.3molの範囲がより好ましい。
【0181】
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質である。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1molに対して5〜50mol%含まれることが好ましく、10〜40mol%で含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は支持体に対して画像形成層側のいかなる層でもよい。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1molに対して10〜50mol%と多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0182】
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の還元剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6074号公報、同47−1238号公報、同47−33621号公報、同49−46427号公報、同49−115540号公報、同50−14334号公報、同50−36110号公報、同50−147711号公報、同51−32632号公報、同51−1023721号公報、同51−32324号公報、同51−51933号公報、同52−84727号公報、同55−108654号公報、同56−146133号公報、同57−82828号公報、同57−82829号公報、特開平6−3793号公報、米国特許第3,679,426号明細書、同第3,751,252号明細書、同第3,751,255号明細書、同第3,761,270号明細書、同第3,782,949号明細書、同第3,839,048号明細書、同第3,928,686号明細書、同第5,464,738号明細書、独国特許第2,321,328号明細書、欧州特許公開EP692,732A号公報などに開示されている還元剤を用いることができる。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1,−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。特に好ましい還元剤は、ビスフェノール、クロマノールである。
【0183】
本発明において還元剤は、水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0184】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含ませると光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。色調剤は支持体に対して画像形成層側の層に銀1molあたりの0.1〜50%molの量含ませることが好ましく、0.5〜20%mol含ませることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の色調剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6077号公報、同47−10282号公報、同49−5019号公報、同49−5020号公報、同49−91215号公報、同50−2524号公報、同50−32927号公報、同50−67132号公報、同50−67641号公報、同50−114217号公報、同51−3223号公報、同51−27923号公報、同52−14788号公報、同52−99813号公報、同53−1020号公報、同53−76020号公報、同54−156524号公報、同54−156525号公報、同61−183642号公報、特開平4−56848号公報、特公昭49−10727号公報、同54−20333号公報、米国特許第3,080,254号明細書、同第3,446,648号明細書、同第3,782,941号明細書、同第4,123,282号明細書、同第4,510,236号明細書、英国特許第1,380,795号明細書、ベルギー特許第841,910号明細書などに開示される色調剤を用いることができる。色調剤の具体例としては、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5−オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N−(ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2−(トリブロモメチルスルホニル)−ベンゾチアゾール;ならびに3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(たとえば、4−(1−ナフチル)フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン、6−イソブチルフタラジン、6−tert−ブチルフタラジン、5,7−ジメチルフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンおよび6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4−ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)などがある。
【0185】
本発明では色調剤として、特開2000−35631号公報に記載の一般式(F)で表されるフタラジン誘導体が好ましく用いられる。具体的には同公報に記載のA−1〜A−10が好ましく用いられる。
【0186】
色調剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0187】
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理前の膜面pHは6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11−87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0188】
本発明の熱現像感光材料において、ハロゲン化銀乳剤および/または有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対してさらに保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することができる。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038号明細書および同第2,694,716号明細書に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437号明細書および同第2,444,605号明細書に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663号明細書に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135号明細書に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405号明細書に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263号明細書および同第2,597,915号明細書に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665号明細書および同第4,442,202号明細書に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557号明細書および同第4,137,079号明細書、同第4,138,365号明細書および同第4,459,350号明細書に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985号明細書に記載のリン化合物などがある。
【0189】
本発明の熱現像感光材料は、高感度化やカブリ防止を目的として安息香酸類を含有してもよい。本発明で用いる安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい例としては、米国特許第4,784,939号明細書、同第4,152,160号明細書、特開平9−329863号公報、同9−329864号公報、同9−281637号公報などに記載の化合物が挙げられる。安息香酸類は熱現像感光材料のいかなる層に添加してもよいが、支持体に対して画像形成層側の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。安息香酸類の添加は塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でもよいが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。安息香酸類の添加量としてはいかなる量でもよいが、銀1mol当たり1×10-6mol〜2molが好ましく、1×10-3mol〜0.5molがさらに好ましい。
【0190】
本発明を実施するために必須ではないが、画像形成層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的のために好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1mol当たり好ましくは1×10-9mol〜1×10-3mol、さらに好ましくは1×10-8mol〜1×10-4molの範囲である。
【0191】
本発明で特に好ましく用いられるカブリ防止剤は有機ハロゲン化物であり、例えば、特開昭50−119624号公報、同50−120328号公報、同51−121332号公報、同54−58022号公報、同56−70543号公報、同56−99335号公報、同59−90842号公報、同61−129642号公報、同62−129845号公報、特開平6−208191号公報、同7−5621号公報、同7−2781号公報、同8−15809号公報、米国特許第5,340,712号明細書、同第5,369,000号明細書、同第5,464,737号明細書に開示されているような化合物が挙げられる。
特願平11−87297号明細書に記載の式(P)で表される親水性有機ハロゲン化物がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同明細書に記載の(P−1)〜(P−118)が好ましく用いられる。
有機ハロゲン化物の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10-5〜2mol/molAg、より好ましくは5×10-5〜1mol/molAg、さらに好ましくは1×10-4〜5×10-1mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0192】
また、特願平11−87297号明細書に記載の式(Z)で表されるサリチル酸誘導体がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同明細書に記載の(A−1)〜(A−60)が好ましく用いられる。式(Z)で表されるサリチル酸誘導体の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10-5〜5×10-1mol/molAg、より好ましくは5×10-5〜1×10-1mol/molAg、さらに好ましくは1×10-4〜5×10-2mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0193】
本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤として、ホルマリンスカベンジャーが有効であり、例えば、特願平11−23995号明細書に記載の式(S)で表される化合物およびその例示化合物(S−1)〜(S−24)が挙げられる。
【0194】
本発明に用いるカブリ防止剤は、水あるいは適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し用いることもできる。
【0195】
本発明に用いるカブリ防止剤は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。画像形成層は還元可能な銀塩(有機銀塩)を含有する層であり、好ましくはさらに感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層であることが好ましい。
【0196】
本発明の熱現像感光材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御することや、現像前後の保存性を向上させることなどを目的としてメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでもよいが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビス−(ベンゾチアゾール)、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドキロシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、3−(5−メルカプトテトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−メチル−N’−{3−(5−メルカプトテトラゾリル)フェニル}ウレア、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
これらのメルカプト化合物の添加量としては画像形成層中に銀1mol当たり0.0001〜1.0molの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1mol当たり0.001〜0.3molの量である。
【0197】
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に、有機銀塩、還元剤および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層を有し、画像形成層上には少なくとも1層の保護層が設けられていることが好ましい。また、本発明の熱現像感光材料は支持体に対して画像形成層と反対側(バック面)に少なくとも1層のバック層を有することが好ましく、画像形成層、保護層、そしてバック層のバインダーとしてポリマーラテックスが用いられる。これらの層にポリマーラテックスを用いることによって、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた水系塗布が可能になり、環境面、コスト面で有利になるとともに、熱現像時にシワの発生がない熱現像感光材料が得られるようになる。また、所定の熱処理をした支持体を使用することにより、熱現像の前後で寸法変化の少ない熱現像感光材料が得られる。
【0198】
本発明においては、良好な写真性能が得られ、かつ水系塗布を可能にするバインダーを用いることが好ましい。画像形成層側の主バインダーとしては、具体的にはポリマーラテックスもしくはゼラチンを用いることが好ましく、以下に述べるポリマーラテックスを用いることが特に好ましい。さらに、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層のうち少なくとも1層は以下に述べるポリマーラテックスを全バインダーの50質量%以上、さらに好ましくは70重量%以上含有する画像形成層であることが好ましい。また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。
これらの層にポリマーラテックスを用いることによって、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた水系塗布が可能になり、環境面、コスト面で有利になるとともに、熱現像時にシワの発生がない熱現像感光材料が得られる。また、所定の熱処理をした支持体を使用することにより、熱現像の前後で寸法変化の少ない熱現像感光材料が得られる。
【0199】
本明細書でいう「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散されたものなどいずれでもよい。なお本発明で用いるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒径は1〜50000nmが好ましく、5〜1000nmがより好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0200】
本発明で用いるポリマーラテックスは、通常の均一構造のポリマーラテックスであってもよいし、いわゆるコア/シェル型のラテックスであってもよい。コア/シェル型の場合、コアとシェルのガラス転移温度は異なっている方が好ましい場合がある。特に、コアのTgがシェルのTgより高いコア/シェル型ラテックスは、良好な造膜性が得られる。
【0201】
本発明で用いるバインダーに好ましく用いるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、−30〜40℃であることが好ましい。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜100℃であることが好ましい。
ポリマーのTgは、例えば「J.Brandrup,E.H.Immergut共著Polymer Handbook,2nd Edition, III-139〜III-192(1975)」に記載の方法で求められる。
【0202】
本発明で用いるポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃であることが好ましく、0℃〜70℃程度であることがより好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0203】
本発明の画像形成層、保護層およびバック層のポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などが挙げられる。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでもよい。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。ポリマーの分子量は数平均分子量で5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度が好ましい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く、好ましくない。
【0204】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに具体的には、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸=33.5/50/16.5(質量%)のコポリマーラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸=47.5/47.5/5(質量%)のコポリマーラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸=95/5(質量%)のコポリマーラテックスなどが挙げられる。また、このようなポリマーは市販もされていて、例えばアクリル樹脂の例として、セビアンA−4635,46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol LX811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)、VONCORT−R3340、R3360、R3370、4280(以上大日本インキ化学(株)製)など、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol LX410、430,435、438C(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上旭化成工業(株)製)、アロンD7020、D504、D5071(以上三井東圧(株)製)など、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよい。
【0205】
画像形成層には必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0206】
画像形成層は水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、本明細書で言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。具体的な溶媒組成の例としては以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5(ただし数字は質量%を表す。)
【0207】
さらに、保護層用のバインダーとして、特願平11−6872号明細書の段落番号0025〜0029に記載の有機概念図に基づく無機性値を有機性値で割ったI/O値の異なるポリマーラテックスの組み合わせを好ましく用いることができる。
【0208】
本発明においては必要に応じて、特願平11−143058号明細書の段落番号0021〜0025に記載の可塑剤(例えば、ベンジルアルコール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレートなど)を添加して、造膜温度をコントロールすることができる。また、特願平11−6872号明細書の段落番号0027〜0028に記載されるように、ポリマーバインダー中に親水性ポリマーを、塗布液中に水混和性の有機溶媒を添加してもよい。
【0209】
それぞれの層には、特開2000−19678号公報の段落番号0023〜0041に記載の官能基を導入した第一のポリマーラテックスとこの第一のポリマーラテックスと反応しうる官能基を有する架橋剤および/または第二のポリマーラテックスを用いることもできる。
上記の官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、N−メチロール基、オキサゾリニル基など、架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メチロ−ル化合物、ヒドロキシ化合物、カルボキシル化合物、アミノ化合物、エチレンイミン化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物などから選ばれる。架橋剤の具体例として、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンイソシアネート、デュラネートWB40−80D、WX−1741(旭化成工業(株)製)、バイヒジュール3100(住友バイエルウレタン(株)製)、タケネートWD725(武田薬品工業(株)製)、アクアネート100、200(日本ポリウレタン(株)製)、特開平9−160172号公報記載の水分散型ポリイソシアネート;アミノ化合物としてスミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製);エポキシ化合物としてデナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製);ハロゲン化合物として2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウムなどが挙げられる。
【0210】
画像形成層用の全バインダー量は0.2〜30g/m2が好ましく、1.0〜15g/m2がより好ましい。画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
保護層用の全バインダー量は、保護層の膜厚を3μm以上にすることができる量であることが好ましく、具体的には1〜10.0g/m2が好ましく、2〜6.0g/m2がより好ましい。
本発明では、保護層の膜厚は3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがさらに好ましい。保護層膜厚の上限としては特に制限はないが、塗布乾燥のことを考慮し、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。
バック層用の全バインダー量は0.01〜10.0g/m2が好ましく、0.05〜5.0g/m2がより好ましい。
【0211】
本発明では、これらの各層は2層以上設けられる場合がある。画像形成層が2層以上である場合は、すべての層のバインダーとしてポリマーラテックスを用いることが好ましい。また、保護層は画像形成層上に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層の保護層にポリマーラテックスが用いられることが好ましい。また、バック層は支持体バック面の下塗り層の上部に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層のバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。
【0212】
本発明では滑り剤を用いることができる。本明細書における「滑り剤」とは、物体表面に存在させた時に、存在させない場合に比べて物体表面の摩擦係数を減少させることができる化合物を意味する。その種類は特に制限されない。
【0213】
本発明に用いる滑り剤としては、特開平11−84573号公報の段落番号0061〜0064、特願平11−106881号明細書の段落番号0049〜0062に記載の化合物を挙げることができる。
好ましい滑り剤の具体例としては、セロゾール524(主成分カルナバワックス)、ポリロンA,393,H−481(主成分ポリエチレンワックス)、ハイミクロンG−110(主成分エチレンビスステアリン酸アマイド)、ハイミクロンG−270(主成分ステアリン酸アマイド)(以上、中京油脂(株)製)、
W−1 C16H33−O−SO3Na
W−2 C18H37−O−SO3Na
などが挙げられる。
滑り剤の使用量は添加層のバインダー量の0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0214】
本発明の熱現像感光材料を熱現像する際に、特開2000−171935号公報、特願平11−106881号明細書に記載のように予備加熱部を対向ローラーで搬送し、熱現像処理部は画像形成層を有する側をローラーの駆動により、その反対側のバック面を平滑面に滑らせて搬送する熱現像機を用いる場合、熱現像感光材料の画像形成層を有する側の最表面層とバック面の最表面層との熱現像処理温度における摩擦係数の比は1.5以上であることが好ましい。その摩擦係数の比の上限は特に制限されないが、30程度であることが好ましい。摩擦係数の比は以下の式により求めることができる。
摩擦係数の比=熱現像機のローラー部材と画像形成層を有する面との動摩擦係数(μe)/熱現像機の平滑面部材とバック面との動摩擦係数(μb)
μbは1.0以下であることが好ましく、0.05〜0.8であることがより好ましい。
本発明において熱現像処理温度での熱現像処理機部材と画像形成層を有する面および/またはその反対面の最表面層の滑り性は、最表面層に滑り剤を含有させ、その添加量を変えることにより調整することができる。
【0215】
支持体の両面には、特開昭64−20544号公報、特開平1−180537号公報、特開平1−209443号公報、特開平1−285939号公報、特開平1−296243号公報、特開平2−24649号公報、特開平2−24648号公報、特開平2−184844号公報、特開平3−109545号公報、特開平3−137637号公報、特開平3−141346号公報、特開平3−141347号公報、特開平4−96055号公報、米国特許第4,645,731号明細書、特開平4−68344号公報、特許第2,557,641号公報の2頁右欄20行目〜3頁右欄30行目、特開2000−39684号公報の段落番号0020〜0037、特願平11−106881号明細書の段落番号0063〜0080に記載の塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位を70質量%以上含有する塩化ビニリデン共重合体を含む下塗り層を設けることが好ましい。
【0216】
塩化ビニリデン単量体が70質量%未満の場合は、十分な防湿性が得られず、熱現像後の時間経過における寸法変化が大きくなってしまう傾向がある。また、塩化ビニリデン共重合体は、塩化ビニリデン単量体のほかの構成繰り返し単位としてカルボキシル基含有ビニル単量体の繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含ませるのは、塩化ビニル単量体のみでは、重合体(ポリマー)が結晶化してしまい、防湿層を塗設する際に均一な膜を作り難くなり、また重合体(ポリマー)の安定化のためにはカルボキシル基含有ビニル単量体が不可欠であるからである。
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の重量平均分子量は45,000以下であることが好ましく、10,000〜45,000であることがより好ましい。分子量が大きくなると塩化ビニリデン共重合体層とポリエステル等の支持体層との接着性が悪化してしまう傾向がある。
【0217】
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の含有量は、塩化ビニリデン共重合体を含有する下塗り層の片面当りの合計膜厚として0.3μm以上であることが好ましく、0.3μm〜4μmであることがより好ましい。
【0218】
なお、下塗り層としての塩化ビニリデン共重合体層は、支持体に直接設層される下塗り層第1層として設けることが好ましく、通常は片面ごとに1層ずつ設けられるが、場合によっては2層以上設けてもよい。2層以上の多層構成とするときは、塩化ビニリデン共重合体量が合計で上記の範囲であることがより好ましい。
これらの層には塩化ビニリデン共重合体のほか、架橋剤やマット剤などを含有させてもよい。
【0219】
支持体には必要に応じて塩化ビニリデン共重合体層のほか、SBR、ポリエステル、ゼラチン等をバインダーとする下塗り層を塗布してもよい。これらの下塗り層は多層構成としてもよく、また支持体に対して片面または両面に設けてもよい。下塗り層の厚み(1層当たり)は一般に0.01〜5μmであり、より好ましくは0.05〜1μmである。
【0220】
本発明の熱現像感光材料には、種々の支持体を用いることができる。典型的な支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、硝酸セルロース、セルロースエステル、ポリビニルアセタール、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、両面がポリエチレンで被覆された紙支持体などが挙げられる。このうち二軸延伸したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが強度、寸法安定性、耐薬品性などの点から好ましい。支持体の厚みは下塗り層を除いたベース厚みで90〜180μmであることが好ましい。
【0221】
本発明の熱現像感光材料に用いる支持体としては、特開平10−48772号公報、特開平10−10676号公報、特開平10−10677号公報、特開平11−65025号公報、特開平11−138648号公報に記載の二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0222】
このような熱処理後における支持体の120℃、30秒加熱による寸法変化率は縦方向(MD)が−0.03%〜+0.01%、横方向(TD)が0〜0.04%であることが好ましい。
【0223】
本発明の熱現像感光材料には、ゴミ付着の減少、スタチックマーク発生防止、自動搬送工程での搬送不良防止などの目的で、特開平11−84573号公報の段落番号0040〜0051に記載の導電性金属酸化物および/またはフッ素系界面活性剤を用いて帯電防止することができる。導電性金属酸化物としては、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11−223901号公報の段落番号0012〜0020に記載のアンチモンでドーピングされた針状導電性酸化錫、特開平4−29134号公報に記載のアンチモンでドーピングされた繊維状酸化錫が好ましく用いられる。
【0224】
金属酸化物含有層の表面比抵抗(表面抵抗率)は25℃、相対湿度20%の雰囲気下で1012Ω以下であることが好ましく、1011Ω以下であることがより好ましい。これにより良好な帯電防止性が得られる。このときの表面抵抗率の下限は特に制限されないが、通常107Ω程度である。
【0225】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層を有する面およびその反対面の最外層表面の少なくとも一方、好ましくは両方のベック平滑度は、5000秒以下であり、より好ましくは10秒〜2000秒である。
本発明におけるベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
熱現像感光材料の画像形成層を有する面の最外層およびその反対面の最外層のベック平滑度は、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載されるように、前記両面の層に含有させるマット剤の粒径および添加量を適宜変化させることによってコントロールすることができる。
【0226】
本発明では、塗布性付与のための増粘剤として水溶性ポリマーを好ましく用いることができる。本発明で用いる水溶性ポリマーは、天然物でも合成ポリマーでもよく、その種類は特に限定されない。具体的には、天然物としてはデンプン類(コーンスターチ、デンプンなど)、海藻(寒天、アルギン酸ナトリウムなど)、植物性粘着物(アラビアゴムなど)、動物性タンパク(にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白など)、発酵粘着物(プルラン、デキストリンなど)などが挙げられる。また、半合成ポリマーであるデンプン質(可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、デキストランなど)、セルロース類(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)も用いることができる。さらに合成ポリマーとして、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリビニルスルフィン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、アクリル酸またはその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などを挙げることができる。
【0227】
これらの中でも好ましく用いられる水溶性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などである。これらは、特に増粘剤として好ましく利用される。
【0228】
これらの中でも特に好ましい増粘剤は、ゼラチン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体などである。これらの化合物は、「新’水溶性ポリマーの応用と市場」(株式会社シーエムシー発行、長友新治編集、1988年11月4日発行)に詳細に記載されている。
【0229】
増粘剤としての水溶性ポリマーの使用量は、塗布液に添加した時に粘度が上昇すれば特に限定されない。一般に液中の濃度は好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。これらによって得られる粘度は、初期の粘度からの上昇分として1〜200mPa’sが好ましく、より好ましくは5〜100mPa’sである。なお、粘度はB型回転粘度計で25℃で測定した値を示す。塗布液などへの添加に当たっては、一般に増粘剤はできるだけ希薄溶液で添加することが望ましい。また添加時には十分な攪拌を行うことが好ましい。
【0230】
本発明で用いる界面活性剤について以下に説明する。本発明で用いる界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤、写真性コントロール剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を、適宜選択して使用することによってそれらの目的は達成することができる。本発明では、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)のいずれの界面活性剤も使用することができる。さらにフッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。
【0231】
好ましいノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤を挙げることができ、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
【0232】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩を挙げることができ、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物などを挙げることができる。
【0233】
カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジウム塩などを挙げることができ、より具体的には第1〜第3級脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩など)を挙げることができる。
【0234】
ベタイン系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルホベタインなどを挙げることができ、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタインなどを挙げることができる。
【0235】
これらの界面活性剤は、「界面活性剤の応用」(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に記載されている。本発明における好ましい界面活性剤の使用量は特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる量であればよい。なお、フッ素含有界面活性剤の塗布量は、1m2当り0.01mg〜250mgが好ましい。
【0236】
以下に界面活性剤の具体例を記すが、本発明で用いることができる界面活性剤はこれらに限定されるものではない(ここで、−C6H4−はフェニレン基を表わす)。
WA−1 :C16H33(OCH2CH2)10OH
WA−2 :C9H19-C6H4-(OCH2CH2)12OH
WA−3 :ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
WA−4 :トリ(イソプロピル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−5 :トリ(イソブチル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−6 :ドデシル硫酸ナトリウム
WA−7 :α−スルファコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル ナトリウム塩
WA−8 :C8H17-C6H4-(CH2CH2O)3(CH2)2SO3K
WA−10 :セチルトリメチルアンモニウム クロライド
WA−11 :C11H23CONHCH2CH2N(+)(CH3)2-CH2COO(-)
WA−12 :C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)16H
WA−13 :C8F17SO2N(C3H7)CH2COOK
WA−14 :C8F17SO3K
WA−15 :C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)4(CH2)4SO3Na
WA−16 :C8F17SO2N(C3H7)(CH2)3OCH2CH2N(+)(CH3)3-CH3’C6H4-SO3 (-)
WA−17 :C8F17SO2N(C3H7)CH2CH2CH2N(+)(CH3)2-CH2COO(-)
【0237】
本発明の好ましい態様においては、画像形成層および保護層に加えて、必要に応じて中間層を設けてもよい。生産性の向上などを目的として、これらの複数の層は水系において同時重層塗布することが好ましい。塗布方式はエクストルージョン塗布、スライドビード塗布、カーテン塗布などがあるが、特開2000−2964号公報の図1に示されるスライドビード塗布方式が特に好ましい。
【0238】
ゼラチンを主バインダーとして用いるハロゲン化銀写真感光材料の場合は、コーティングダイの下流に設けられている第一乾燥ゾーンで急冷され、その結果、ゼラチンのゲル化が起こり、塗布膜は冷却固化される。冷却固化されて流動の止まった塗布膜は続く第二乾燥ゾーンに導かれ、これ以降の乾燥ゾーンで塗布液中の溶媒が揮発され、成膜される。第二乾燥ゾーン以降の乾燥方式としては、U字型のダクトからローラー支持された支持体に噴流を吹き付けるエアーループ方式や円筒状のダクトに支持体をつるまき状に巻き付けて搬送乾燥する、つるまき方式(エアーフローティング方式)などが挙げられる。
【0239】
バインダーの主成分がポリマーラテックスである塗布液を用いて層形成を行うときには、急冷では塗布液の流動を停止させることができないため、第一乾燥ゾーンのみでは予備乾燥が不十分である場合もある。この場合は、ハロゲン化銀写真感光材料で用いられている様な乾燥方式では流れムラや乾燥ムラが生じ、塗布面状に重大な欠陥を生じやすい。
【0240】
本発明における好ましい乾燥方式は、特開2000−2964号公報に記載されているような第一乾燥ゾーン、第二乾燥ゾーンを問わず、少なくとも恒率乾燥が終了するまでの間は水平乾燥ゾーンで乾燥させる方式である。塗布直後から水平乾燥ゾーンに導かれるまでの支持体の搬送は、水平搬送であってもなくてもどちらでもよく、塗布機の水平方向に対する立ち上がり角度は0〜70°の間にあればよい。また、本発明における水平乾燥ゾーンとは、支持体が塗布機の水平方向に対して上下に±15°以内に搬送されればよく、水平搬送を意味するものではない。
【0241】
本明細書において「恒率乾燥」とは、液膜温度が一定で流入する熱量全てが溶媒の蒸発に使用される乾燥過程を意味する。また、本明細書において「減率乾燥」とは、乾燥末期における種々の要因(水分移動の材料内部拡散が律速になる、蒸発表面の後退など)により乾燥速度が低下し、与えられた熱が液膜温度上昇にも使用される乾燥過程を意味する。恒率過程から減率過程に移行する限界含水率は200〜300%である。恒率乾燥が終了する時には、流動が停止するまで十分に乾燥が進むため、ハロゲン化銀写真感光材料の様な乾燥方式も採用することができるが、本発明においては恒率乾燥後も最終的な乾燥点まで水平乾燥ゾーンで乾燥させることが好ましい。
【0242】
画像形成層および/または保護層を形成する際、恒率乾燥時の液膜表面温度はポリマーラテックスの最低造膜温度(MTF;通常ポリマーのガラス転移温度Tgより3〜5℃高い)以上にすることが好ましい。通常は製造設備の制限より25℃〜40℃にすることが多い。また、減率乾燥時の乾球温度は支持体のTg未満の温度(PETの場合通常80℃以下)であることが好ましい。本明細書における「液膜表面温度」とは、支持体に塗布された塗布液膜の溶媒液膜表面温度を言い、「乾球温度」とは乾燥ゾーンの乾燥風の温度を意味する。
【0243】
恒率乾燥時の液膜表面温度が低くなる条件で乾燥した場合、乾燥が不十分になりやすい。このため特に保護層の造膜性が著しく低下し、膜表面に亀裂が生じやすくなる。また、膜強度も弱くなり、露光機や熱現像機での搬送中に傷がつきやすくなるなどの重大な問題が生じやすくなる。
【0244】
一方、液膜表面温度が高くなる条件で乾燥した場合は、主としてポリマーラテックスから構成される保護層は速やかに皮膜を形成するが、その一方で画像形成層などの下層は流動性が停止していないので、表面に凹凸が発生しやすくなる。また、支持体(ベース)にTgよりも高い過剰の熱がかかると、感光材料の寸度安定性、耐巻き癖性も悪くなる傾向にある。
【0245】
下層を塗布乾燥してから上層を塗布する逐次塗布においても同様であるが、特に、下層の乾燥前に上層を塗布して、両層を同時に乾燥する同時重層塗布を行うための塗布液物性としては、画像形成層の塗布液と保護層の塗布液とのpH差が2.5以下であることが好ましく、このpH差は小さい程好ましい。塗布液のpH差が大きくなると塗布液界面でミクロな凝集が生じやすくなり、長尺連続塗布時に塗布筋などの重大な面状故障が発生しやすくなる。
【0246】
画像形成層の塗布液粘度は25℃で15〜100mPa’sが好ましく、さらに好ましくは40〜70mPa’sである。一方、保護層の塗布液粘度は25℃で5〜75mPa’sが好ましく、さらに好ましくは30〜60mPa’sである。これらの粘度はB型粘度計によって測定される。
【0247】
乾燥後の巻取りは温度20〜30℃、相対湿度45±20%の条件下で行うことが好ましく、巻き姿はその後の加工形態に合わせ画像形成層側の面を外側にしてもよいし、内側にしてもよい。また、加工形態がロール品の場合は巻き姿で発生したカールを除去するために加工時に巻き姿とは反対側に巻いたロール形態にすることも好ましい。なお、熱現像感光材料の相対湿度は20〜55%(25℃測定)の範囲で制御されることが好ましい。
【0248】
ハロゲン化銀を含みゼラチンを基体とする粘性液である従来の写真乳剤塗布液は、通常加圧送液するだけで気泡が液中に溶解、消滅してしまい、塗布時に大気圧下に戻されても気泡が析出するようなことはほとんどない。ところが、本発明で好ましく用いられる有機銀塩分散物とポリマーラテックスなどを含む画像形成層塗布液の場合は、加圧送液だけでは脱泡が不十分になりやすいため、気液界面が生じないようにして送液しながら超音波振動を与え脱泡することが好ましい。
【0249】
本発明における塗布液の脱泡は、塗布液を塗布される前に減圧脱気し、さらに1.5kg/cm2以上の加圧状態に保ち、かつ気液界面が生じないようにして連続的に送液しながら超音波振動を与える方式が好ましい。具体的には、特公昭55−6405号公報4頁20行〜7頁11行に記載されている方式が好ましい。このような脱泡を行う装置として、特開2000−98534号公報の実施例と図2に示される装置を好ましく用いることができる。
【0250】
加圧条件としては、1.5kg/cm2以上が好ましく、1.8kg/cm2以上がより好ましい。その上限に特に制限はないが、通常5kg/cm2程度である。与えられる超音波の音圧は0.2V以上、好ましくは0.5V〜3.0Vであり、一般的に音圧は高い方が好ましいが、音圧が高すぎるとキャピテーションにより部分的に高温状態になりカブリの発生原因となる。周波数は特に制約はないが、通常10kHz以上、好ましくは20kHz〜200kHzである。なお、減圧脱気は、タンク内(通常、調液タンクもしくは貯蔵タンク)を密閉減圧し、塗布液中の気泡径を増大させ、浮力をかせぎ脱気させることを指し、減圧脱気の際の減圧条件は−200mmHgないしそれより低い圧力条件、好ましくは−250mmHgないしそれより低い圧力条件とし、その最も低い圧力条件は特に制限はないが通常−800mmHg程度である。減圧時間は好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上であり、その上限は特に制限されない。
【0251】
本発明において、画像形成層、画像形成層の保護層、下塗層およびバック層には特開平11−84573号公報の段落番号0204〜0208、特願平11−106881号明細書の段落番号0240〜0241に記載されるようにハレーション防止などの目的で、染料を含有させることができる。
【0252】
画像形成層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることができる。画像形成層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えば特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることができる。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などいかなる方法でもよい。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1×10-6g〜1gの範囲で用いることが好ましい。
【0253】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、該染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でもよい。例えば特開平11−119374号公報の段落番号0300に記載されている化合物を用いることができる。また、ベルギー特許第733,706号明細書に記載されるように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54−17833号公報に記載されるように光照射による消色で濃度を低下させる方法等を用いることもできる。
【0254】
本発明の熱現像感光材料が熱現像後において、PS版により刷版を作製する際にマスクとして用いられる場合、熱現像後の熱現像感光材料は、製版機においてPS版に対する露光条件を設定するための情報や、マスク原稿およびPS版の搬送条件等の製版条件を設定するための情報を画像情報として担持している。従って、前記のイラジエーション染料、ハレーション染料、フィルター染料の濃度(使用量)は、これらを読み取るために制限される。これら情報はLEDあるいはレーザーによって読み取られるため、センサーの波長域のDmin(最低濃度)が低い必要があり吸光度が0.3以下である必要がある。例えば、富士写真フイルム(株)社製、製版機S−FNRIIIはトンボ検出のための検出器およびバーコードリーダーとして670nmの波長の光源を使用している。また、清水製作社製、製版機APMLシリーズのバーコードリーダーとして670nmの光源を使用している。すなわち670nm付近のDmin(最低濃度)が高い場合にはフィルム上の情報が正確に検出できず搬送不良、露光不良など製版機で作業エラーが発生する。従って、670nmの光源で情報を読み取るためには670nm付近のDminが低い必要があり、熱現像後の660〜680nmの吸光度が0.3以下である必要がある。より好ましくは0.25以下である。その下限に特に制限はないが、通常は0.10程度である。
【0255】
本発明において、像様露光に用いられる露光装置は露光時間が10-7秒以下の露光が可能な装置であればいずれでもよいが、一般的にはレーザーダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)を光源に使用した露光装置が好ましく用いられる。特に、LDは高出力、高解像度の点でより好ましい。これらの光源は目的波長範囲の電磁波スペクトルの光を発生することができるものであればいずれでもよい。例えばLDであれば、色素レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなどを用いることができる。
【0256】
本発明の熱現像感光材料は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光する。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.2以上であることが好ましい。
【0257】
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定されず、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、高出力が得られ、書き込み時間が短くなるという点でレーザーヘッドを2機以上搭載するマルチチャンネルが好ましい。特に、円筒外面方式の場合にはレーザーヘッドを数機から数十機以上搭載するマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0258】
本発明の熱現像感光材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にある。この干渉縞の発生防止技術としては、特開平5−113548号公報などに開示されているレーザー光を感光材料に対して斜めに入光させる技術や、国際公開WO95/31754号公報などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
【0259】
本発明の熱現像感光材料に画像形成する際の加熱現像工程はいかなる方法によるものであってもよいが、通常はイメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像する。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像感光材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5−56499号公報、特開平9−292695号公報、特開平9−297385号公報および国際公開WO95/30934号公報に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7−13294号公報、国際公開WO97/28489号公報、同97/28488号公報および同97/28487号公報に記載の熱現像機がある。特に好ましいのは非接触型の熱現像機である。好ましい現像温度は80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間は1〜180秒が好ましく、5〜90秒がさらに好ましい。ラインスピードは140cm/min以上、さらには150cm/min以上が好ましい。
【0260】
熱現像時における熱現像感光材料の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満の温度で画像が出ないようにして、5秒以上加熱した後、110℃〜140℃で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)を採用することが有効である。
【0261】
本発明の熱現像感光材料を熱現像処理するとき、110℃以上の高温にさらされるため、該材料中に含まれている成分の一部、あるいは熱現像による分解成分の一部が揮発してくる。これらの揮発成分は現像ムラの原因になったり、熱現像機の構成部材を腐食させたり、温度の低い場所で析出し異物として画面の変形を引起こしたり、画面に付着して汚れとなったりする等の種々の悪い影響を及ぼすことが知られている。これらの影響を除くための方法として、熱現像機にフィルターを設置し、また熱現像機内の空気の流れを最適に調整することが知られている。これらの方法は有効に組み合わせて利用することができる。
例えば、国際公開WO95/30933号公報、同97/21150号公報、特表平10−500496号公報には、結合吸収粒子を有し揮発分を導入する第一の開口部と排出する第二の開口部とを有するフィルターカートリッジを、フィルムと接触して加熱する加熱装置に用いることが記載されている。また、国際公開WO96/12213号公報、特表平10−507403号公報には、熱伝導性の凝縮捕集器とガス吸収性微粒子フィルターを組合せたフィルターを用いることが記載されている。本発明ではこれらを好ましく用いることができる。
また、米国特許第4,518,845号明細書、特公平3−54331号公報には、フィルムからの蒸気を除去する装置とフィルムを伝熱部材へ押圧する加圧装置と伝熱部材を加熱する装置とを有する構成が記載されている。また、国際公開WO98/27458号には、フィルムから揮発するカブリを増加させる成分をフィルム表面から取り除くことが記載されている。これらについても本発明では好ましく用いることができる。
【0262】
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を図2に示す。図2は熱現像機の側面図を示したものである。図2の熱現像機は熱現像感光材料10を平面状に矯正および予備加熱しながら加熱部に搬入する搬入ローラー対11(上部ローラーはシリコンゴムローラーで、下部ローラーがアルミ製のヒートローラー)と熱現像後の熱現像感光材料10を平面状に矯正しながら加熱部から搬出する搬出ローラー対12を有する。熱現像感光材料10は搬入ローラー対11から搬出ローラー対12へと搬送される間に熱現像される。この熱現像中の熱現像感光材料10を搬送する搬送手段は画像形成層を有する面が接触する側に複数のローラー13が設置され、その反対側のバック面が接触する側には不織布(例えば芳香族ポリアミドやテフロンから成る)等が貼り合わされた平滑面14が設置される。熱現像感光材料10は画像形成層を有する面に接触する複数のローラー13の駆動により、バック面を平滑面14の上に滑らせながら搬送される。ローラー13の上部および平滑面14の下部には、熱現像感光材料10の両面から加熱されるように加熱ヒーター15が設置される。この場合の加熱手段としては板状ヒーター等が挙げられる。ローラー13と平滑面14とのクリアランスは平滑面の部材により異なるが、熱現像感光材料10が搬送できるクリアランスに適宜調整される。好ましくは0〜1mmである。
【0263】
ローラー13の表面の材質および平滑面14の部材は、高温耐久性があり、熱現像感光材料10の搬送に支障がなければ何でもよいが、ローラー表面の材質はシリコンゴム、平滑面の部材は芳香族ポリアミドまたはテフロン(PTFE)製の不織布が好ましい。加熱手段としては複数のヒーターを用い、それぞれ加熱温度を自由に設定することが好ましい。
【0264】
なお、加熱部は、搬入ローラー対11を有する予備加熱部Aと、加熱ヒーター15を備えた熱現像加熱部Bとで構成されるが、熱現像処理部Bの上流の予備加熱部Aは、熱現像温度よりも低く(例えば10〜30℃程度低く)、熱現像感光材料10中の水分量を蒸発させるのに十分な温度および時間に設定することが望ましく、熱現像感光材料10の支持体のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で、現像ムラが出ないように設定することが好ましい。予備加熱部と熱現像処理部の温度分布としては±1℃以下が好ましく、さらには±0.5℃以下が好ましい。
また、熱現像処理部Bの下流にはガイド板16が設置され、搬出ローラー対12とガイド板16とを有する徐冷部Cが設置される。
ガイド板16は熱伝導率の低い素材が好ましく、熱現像感光材料10に変形が起こらないようにするために冷却は徐々に行うのが好ましく、冷却速度としては、0.5〜10℃/秒が好ましい。
【0265】
以上、図示例に従って説明したが、これに限らず、例えば特開平7−13294号公報に記載のものなど、本発明に用いる熱現像機は種々の構成のものであってもよい。また、本発明において好ましく用いられる多段加熱方法の場合は、上述のような装置において、加熱温度の異なる熱源を2個以上設置し、連続的に異なる温度で加熱するようにすればよい。
【0266】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0267】
<実施例1>
《ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
水700mlにアルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)11g、臭化カリウム30mg、および4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3gを溶解して、45℃にてpHを6.5に調整した。その後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mlと臭化カリウムを1mol/L、(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10-6mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/Lで含む水溶液を、pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mlと臭化カリウムを1mol/LおよびK3IrCl6を2×10-5mol/Lで含むハロゲン塩水溶液を、pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51.1g加え、pH5.9、pAg8.0に調整した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.08μm、投影面積変動係数9%、(100)面比率90%の立方体粒子であった。
得られたハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して銀1mol当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76μmolを添加し、3分後にトリエチルチオ尿素71μmolを添加した後、100分間熟成し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを5×10-4mol、化合物Aを0.17g加えた後、40℃に降温させた。
その後、40℃に温度を保ち、ハロゲン化銀1molに対して4.7×10-2molの臭化カリウム(水溶液として添加)、1.3×10-3molの下記増感色素A(エタノール溶液として添加)、6.4×10-3molの化合物B(メタノール溶液として添加)を攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Aの調製を終了した。
得られたハロゲン化銀乳剤は、下記の塗布液の調製に用いた。
【0268】
【化59】
【0269】
《ベヘン酸銀分散物Aの調製》
ベヘン酸(ヘンケル社製、EdenorC22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5mol/LのNaOH水溶液49.2L、tert−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。これとは別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2Lを用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのtert−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、攪拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。この時、硝酸銀水溶液添加開始後7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液添加終了後9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が上がらないようにコントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、スチームトレースにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるようにスチーム量をコントロールした。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は攪拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調節した。
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間攪拌放置し、25℃に降温した。その後、遠心ろ過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られたベヘン酸銀の粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均投影面積径0.52μm、平均粒子厚み0.14μm、平均球相当径の変動係数15%の鱗片状の結晶であった。
【0270】
次に、以下の方法でベヘン酸銀の分散物を作製した。乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217,平均重合度:約1700)7.4gおよび水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。次に予備分散済みの原液を分散機(マイクロフルイデックス’インターナショナル’コーポレーション製、マイクロフルイダイザーM−110S−EH、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750kg/cm2に調節して、3回処理し、ベヘン酸銀分散物Aを得た。このとき、蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着して冷媒の温度を調節することにより、所望の分散温度に設定した。
得られたベヘン酸銀分散物Aに含まれるベヘン酸銀粒子は、体積加重平均直径0.52μm、変動係数15%の粒子であった。粒子サイズの測定は、Malvern Instruments Ltd.製MasterSizerXにて行った。また電子顕微鏡撮影により評価したところ、長辺と短辺の比は1.5、粒子厚みは0.14μm、平均アスペクト比(粒子の投影面積の円相当径と粒子厚みの比)が5.1であった。
得られたベヘン酸銀分散物Aは、下記の塗布液の調製に用いた。
【0271】
《還元剤の固体微粒子分散物の調製》
還元剤[1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン]10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400g、メタノール640g、および水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調整し、還元剤の固体微粒子分散物を得た。こうして得られた分散物に含まれる還元剤粒子は、メジアン径が0.44μm、最大粒子径が2.0μm以下、平均粒子径の変動係数が19%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0272】
《有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物A[トリブロモメチル(4−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)フェニル)スルホン]10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液639g、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400g、メタノール640g、および水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち水を加えて有機ポリハロゲン化合物Aの濃度が25質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物を得た。こうして得られた分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は、メジアン径が0.36μm、最大粒子径が2.0μm以下、平均粒子径の変動係数が18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0273】
《有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物B[トリブロモメチルナフチルスルホン]5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kg、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213g、および水10kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2.5gと水を加えての有機ポリハロゲン化合物Bの濃度が23.5質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物を得た。得られた分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は、メジアン径が0.38μm、最大粒子径が2.0μm以下、平均粒子径の変動係数が20%であった。得られた分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0274】
《有機ポリハロゲン化合物C水溶液の調製》
室温で攪拌しながら、水75.0ml、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20%水溶液)8.6ml、オルトリン酸二水素ナトリウム’2水和物(5%水溶液)6.8ml、および水酸化カリウムの1mol/L水溶液9.5mlを順次添加し、添加終了後5分間攪拌混合した。さらに、攪拌しながら有機ポリハロゲン化合物C(3−トリブロモメタンスルホニルベンゾイルアミノ酢酸)4.0gの粉末を添加し、溶液が透明になるまで均一に溶解して水溶液100mlを得た。得られた水溶液は、200メッシュのポリエステル製スクリーンにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0275】
《化合物Zの乳化分散物の調製》
化合物Zを85質量%含有する三光(株)製R−054を10kgとMIBK11.66kgを混合した後、窒素置換して80℃1時間溶解した。この液に水25.52kgとクラレ(株)製MPポリマー(クラレ(株)製、MP−203)の20質量%水溶液12.76kgとトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.44kgを添加して、20〜40℃、3600rpmで60分間乳化分散した。さらに、この液にサーフィノール104E(日信化学(株)製)0.08kgと水47.94kgを添加して減圧蒸留しMIBKを除去したのち、化合物Zの濃度が10質量%になるように調製した。こうして得た分散物に含まれる化合物Zの粒子はメジアン径0.19μm、最大粒子径1.5μm以下、粒子径の変動係数17%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0276】
《6−イソプロピルフタラジン化合物の分散液の調製》
室温で水62.35gを攪拌しながら変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)2.0gが塊状にならない様に添加し10分間攪拌混合した。その後加熱し、内温が50℃になるまで昇温した後、内温50〜60℃の範囲で90分間攪拌し均一に溶解させた。内温を40℃以下に降温し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217、10質量%水溶液)25.5g、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20質量%水溶液)3.0g、および6−イソプロピルフタラジン(70質量%水溶液)7.15gを添加し、30分攪拌し透明分散液100gを得た。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0277】
《本発明の化合物の固体微粒子分散物の調製》
表13に記載される本発明の化合物4kgに対して、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールPVA−217)1kgと水36kgを添加し、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて12時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.04gと水を加えて本発明の化合物の濃度が10質量%になるように調整し、本発明の化合物の固体微粒子分散物を得た。得られた分散物に含まれる本発明の化合物の粒子は、メジアン径が0.34μm、最大粒子径が3.0μm以下、粒子径の変動係数が19%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0278】
《現像促進剤Wの固体微粒子分散物の調製》
現像促進剤W10kg、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kg、および水20kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型ビーズミル(アイメックス(株)製、UVM−2)にて5時間分散したのち水を加えて現像促進剤Wの濃度が20質量%になるように調整し、現像促進剤Wの固体微粒子分散物を得た。得られた分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子は、メジアン径が0.5μm、最大粒子径が2.0μm以下、平均粒子径の変動係数が18%であった。得られた分散物は、孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行いゴミ等の異物を除去したうえで、下記の塗布液の調製に用いた。
【0279】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Aを添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、圧力0.54atmで45分間減圧脱気を行った。塗布液のpHは7.7、粘度は25℃で50mPa’sであった。
【0280】
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
【0281】
【化60】
【0282】
【化61】
【0283】
《保護層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体のガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ塗布液のガラス転移温度を24℃として溶液とした;平均粒子径116nm)943gに水を加え、有機ポリハロゲン化合物C水溶液を114.8g、有機ポリハロゲン化合物Aを固形分として10.0g、オルトリン酸二水素ナトリウム’二水和物を固形分として0.69g、現像促進剤Wを固形分として11.55g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒径7μm、平均粒径の変動係数8%)1.58gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)29.3g、化合物Eを1.62g加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで減圧脱気を60分間行った。得られた保護層塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa’sであった。
【0284】
《下層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体のガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃として容器とした;平均粒子径74nm)625gに水を加え、化合物Cを0.23g、化合物Eを0.13g、化合物Fを11.7g、化合物Hを2.7gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)11.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で30mPa’sであった。
【0285】
《上層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体のガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、塗布液のガラス転移温度を24℃として溶液とした;平均粒子径116nm)649gに水を加え、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524、シリコーン含有量5ppm未満)の30質量%溶液18.4g、化合物Cを0.23g、化合物Eを1.85g、化合物Gを1.0g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒径7μm、平均粒径の変動係数8%)3.45gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)を26.5g加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは5.3、粘度は25℃で25mPa’sであった。
【0286】
【化62】
【0287】
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化して、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した。その後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
これを周速の異なるロールを用い、110℃で3.3倍に縦延伸し、ついでテンターを用いて130℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定した後、同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロール状のPET支持体を得た。
【0288】
(2)下塗り層およびバック層の作製
▲1▼下塗り第一層
上記PET支持体に0.375kV’A’分/m2のコロナ放電処理を施した後、以下に示す組成の塗布液を6.2ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0289】
【0290】
▲2▼下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0291】
【0292】
▲3▼バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV’A’分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0293】
【0294】
▲4▼バック第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様にバック第一層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0295】
【0296】
▲5▼バック第三層
下塗り第一層と同じ塗布液を6.2ml/m2となる様にバック第二層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに185℃で30秒乾燥した。
【0297】
▲6▼バック第四層
以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で30秒、次いで150℃で30秒、さらに170℃で30秒乾燥した。
【0298】
ラテックス−B 286g
化合物−Bc−B 2.7g
化合物−Bc−C 0.6g
化合物−Bc−D 0.5g
2,4ジクロロ−6−ヒドロキシーs−トリアジン 2.5g
ポリメチルメタクリレート(10質量%水分散物、
平均粒子径5μm、平均粒子の変動係数7%) 7.7g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
【0299】
【化63】
【0300】
ラテックス−A:
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部 塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部 塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
質量平均分子量38,000
ラテックス−B:
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/
2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=59/9/26/
5/1(質量%)の共重合体
【0301】
(3)搬送熱処理
(3−1)熱処理
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を、160℃に設定した全長200m熱処理ゾーンに入れ、張力2kg/cm2、搬送速度20m/分で搬送した。
(3−2)後熱処理
上記熱処理に引き続き、40℃のゾーンに15秒間通して後熱処理を行い、巻き取った。この時の巻き取り張力は10kg/cm2であった。
【0302】
《熱現像感光材料の作製》
PET支持体の下塗り第二層の上に、特開2000−2964号公報の図1に示されているスライドビート塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を表13のように、塗布銀量1.5g/m2になるように塗布した。さらにその上に、前記保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.29g/m2になるように画像形成層塗布液と共に同時重層塗布した。その後、保護層の上に前記下層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.97g/m2および前記上層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.07g/m2になるように下層オーバーコート塗布液と共に同時重層塗布し、熱現像感光材料を作製した。
塗布時の乾燥は、恒率過程、減率過程とも乾球温度70〜75℃、露点8〜25℃、液膜表面温度35〜60℃の範囲で、塗布液の流動がほぼなくなる乾燥点近傍までは水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)で行った。乾燥後の巻取りは温度25±5℃、相対湿度45±5%の条件下で行い、巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、熱現像感光材料の包袋相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.0、ベック平滑度は700秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は600秒であった。
【0303】
《写真性能の評価》
(露光処理)
得られた熱現像感光材料を、ビーム径(ビーム強度の1/2のFWHM)12.56μm、レーザー出力50mW、出力波長783nmの半導体レーザーを搭載した単チャンネル円筒内面方式のレーザー露光装置を使用し、ミラー回転数60000rpm、露光時間1.2×10-8秒の露光を実施した。この時のオーバーラップ係数は0.449にし、熱現像感光材料面上のレーザーエネルギー密度は75μJ/cm2とした。
さらに、感度、γ(コントラスト)評価のために、得られた熱現像感光材料を、ステップウェッジを通して、画像形成層塗布液を塗布した側から露光した。露光はキセノン光源で785nmの干渉フィルターを通し10-4秒で行った。
(熱現像処理)
露光済みの熱現像感光材料を図3に示した熱現像機を用いて、熱現像処理を行った。熱現像処理部のローラー表面材質はシリコンゴム、平滑面はテフロン不織布とし、搬送のラインスピードは150cm/minに設定した。熱現像処理は、予備加熱部で12.2秒(予備加熱部と熱現像処理部の駆動系は独立しており、熱現像部との速度差は−0.5%〜−1%に設定、各予熱部の金属ローラーの温度設定、時間は第1ローラー温度67℃、2.0秒、第2ローラー温度82℃、2.0秒、第3ローラー温度98℃、2.0秒、第4ローラー温度温度107℃、2.0秒、第5ローラー温度115℃、2.0秒、第6ローラー温度120℃、2.0秒にした)、熱現像処理部(熱現像感光材料面温度120℃)で17.2秒、徐冷部で13.6秒行った。なお、幅方向の温度精度は±0.5℃であった。各ローラー温度の設定は熱現像感光材料の幅(例えば幅61cm)よりも両側それぞれ5cm長くして、その部分にも温度をかけて、温度精度が出るようにした。なお、各ローラーの両端部分は温度低下が激しいので、熱現像感光材料の幅よりも5cm長くした部分はローラー中央部よりも1〜3℃温度が高くなるように設定し、熱現像感光材料(例えば幅61cmの中で)の画像濃度が均質な仕上がりになるように留意した。
【0304】
(評価)
画像のDmin(カブリ)、Dmax(最高濃度)については、マクベスTD904濃度計(可視濃度)により測定を行った。感度については、ステップウェッジを通して露光したサンプルについて、濃度がカブリ+0.3を与える露光量の常用対数値で示し、試料1−3の値を1として、値が大きい方が高感度になるように示した。コントラストは((1.5−0.5)/log(濃度1.5を与える露光量)−log(濃度0.5を与える露光量))で表わされる値で示した。
処理後の感光材料を保管した際のカブリの変化については、処理後の感光材料を50℃相対湿度50%の条件下で8日間放置した後でカブリ濃度を測定することにより行った。
現像銀粒子密度は、発明の実施の形態中に記載した方法と同様に、写真を撮影し、単位面積当たりの現像銀粒子の数を数え、その密度を比較した。カバリングパワーについても、発明の実施の形態中に記載した方法と同様に、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、可視濃度を現像銀量(g/m2)で割った値で比較した。
【0305】
上記評価を実施した結果を表13に示す。
表13より明らかなように、本発明の構成の試料が、現像銀粒子密度、カバーリングパワーが高く、カブリ、Dmaxの点ですぐれ、高感度、高γであり、なおかつ、処理後保管によるカブリの上昇が少なく、良好な性能を示していることがわかる。一方、本発明の化合物を含まない試料はコントラスト、Dmaxが低く、現像銀粒子密度、カバリングパワーも低い。また、一般式(I)の化合物を含まない試料は、感度が低く、感光材料保管後のカブリの上昇が大きいことがわかる。
【0306】
【表13】
【0307】
<実施例2>
《画像形成層塗布液の調製》
実施例1で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Aを添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。完成後、圧力0.54atmで減圧脱気を45分間行った。塗布液のpHは7.3〜7.7、粘度は25℃で40〜50mPa’sであった。
【0308】
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
【0309】
《下層保護層塗布液の調製》
メチルアクリレート/メチルメタアクリレート=70/30(質量比、平均粒径110nm、質量平均分子量800,000)のポリマーラテックス溶液(共重合体のガラス転移温度30℃、固形分濃度28.0%、化合物Aを100ppm含有)900gに水を加え、化合物Eを0.2g、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)を35.0g加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.5質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで減圧脱気を60分間行った。塗布液のpHは5.2、粘度は25℃で35mPa’sであった。
【0310】
《上層保護層塗布液の調製》
メチルアクリレート/メチルメタアクリレート=70/30(質量比、平均粒径110nm、質量平均分子量800,000)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度30℃、固形分濃度として28.0%、化合物Aを100ppm含有)900gに、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524、シリコーン含有量として5ppm未満)30質量%溶液を10.0g、化合物Cを0.3g、化合物Eを1.2g、化合物Fを25.0g、化合物Hを6.0g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒径7μm、平均粒径の変動係数8%)5.0gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)40.0gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を1.5質量%含有)を調製した。調製後、圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは2.4、粘度は25℃で35mPa’sであった。
【0311】
《熱現像感光材料の作製》
実施例1に記載したように下塗り層を塗布したPET支持体の下塗り層の上に、特開2000−2964号公報の図1に示されているスライドビ-ド塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になる様に、その上に、前記の保護層下層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.0g/m2になる様に、さらにその上に前記の保護層上層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.3g/m2になる様に、画像形成層と保護層下層および上層の3層を同時に重層塗布した。
塗布時の乾燥条件は、第一乾燥ゾーン(低速風乾燥域)が乾球温度70〜75℃、露点9〜23℃、支持体面上での風速8〜10m/s、液膜表面温度35〜40℃の範囲で乾燥し、第二乾燥ゾーン(高速風乾燥域)が、乾球温度65〜70℃、露点20〜23℃、そして支持体面上での風速20〜25m/sで乾燥した。第一乾燥ゾーンの滞在時間は、このゾーンでの恒率乾燥期の2/3の時間で、第二乾燥ゾーンに移行させ、乾燥した。第一乾燥ゾーンは、水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)である。塗布速度は、60m/minで行った。乾燥後の巻取りは温度25±5℃、相対湿度45±10%の条件下で行った。巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋湿度は相対湿度20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.0、ベック平滑度は4000秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は500秒であった。
【0312】
塗布方法を変更し、一般式(I)の化合物としてI−10を使用する以外は、実施例1と同様にハロゲン化銀乳剤、本発明の化合物を使用して試料を作製し評価を実施したところ、実施例1と同様に本発明の構成の試料が良好な性能を示した。
【0313】
<実施例3>
実施例1で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1molに対して、実施例2と同様にして、バインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤を添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。この時、ハロゲン化銀乳剤に添加した本発明の化合物種5.0g、一般式(I)の化合物0.1gを表14のように添加した。完成後、圧力0.54atmで減圧脱気を45分間行った。塗布液のpHは7.3〜7.7、粘度は25℃で40〜50mPa’sであった。
【0314】
さらに、実施例2と同様に、下層保護層塗布液を調製した。上層保護層塗布液は、マット剤として平均粒径11μmのポリスチレン粒子(平均粒径の変動係数8%)5.0gを使用する以外は実施例2とまったく同様の方法で調製した。
そして、実施例1に記載したように下塗り層を塗布したPET支持体の下塗り層の上に、特開2000−2964号公報の図1に示されているスライドビード塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になる様に、その上に、前記の保護層下層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.2g/m2になる様に、さらにその上に前記の保護層上層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.3g/m2になる様に、画像形成層と保護層下層および上層の3層を同時に重層塗布した。
【0315】
塗布時の乾燥条件、巻き姿は実施例2と同様とし、その後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋湿度は相対湿度20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.1、ベック平滑度は1100秒であり、反対側の膜面pHは5.9、ベック平滑度は500秒であった。
こうして得られた試料について、実施例1と同様の方法で評価を行った。
上記評価を実施した結果を表14に示す。表14より明らかなように、実施例1と同様に本発明の構成の試料が、現像銀粒子密度、カバーリングパワーが高く、カブリ、Dmaxの点ですぐれ、高感度、高γであり、なおかつ、処理後保管によるカブリの上昇が少なく、良好な性能を示していることがわかる。
【0316】
【表14】
【0317】
<実施例4>
実施例1〜3のハロゲン化銀乳剤Aの調製において、トリエチルチオ尿素のかわりにカルボキシメチルトリメチルチオ尿素、または、ジカルボキシメチルジメチルチオ尿素を使用してハロゲン化銀乳剤を調製する以外は、まったく同様にして熱現像感光材料の作製を行い、評価を行ったところ、
実施例1〜3と同様に本発明の条件を満たす試料が良好な性能を示した。
【0318】
<実施例5>
実施例1〜4で作製した試料を、富士写真フイルム株式会社製ドライシステムプロセッサーFDS−6100Xを用いて熱現像処理を行い同様の評価を行ったところ、実施例1〜4と同様に本発明の構成の試料が良好な性能を示した。
【発明の効果】
本発明によれば、カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、高感度、高コントラストの写真特性を有し、処理後の感光材料を長期間保管してもカブリの上昇の少ない写真製版用途に適した写真特性を得ることができる熱現像感光材料を得ることができる。また、環境面、コスト面で有利な水系塗布が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の化合物が熱現像感光材料に存在する場合(A)と存在しない場合(B)の断面電子顕微鏡写真である。
【図2】 本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
10 熱現像感光材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像処理部
C 徐冷部
Claims (4)
- 支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを有する熱現像感光材料において、下記一般式(I)で表わされる化合物の少なくとも1種と、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
一般式(2)中、R4は置換基を表す。
一般式(3)中、X、Yは各々独立に水素原子または置換基を表し、A、Bは各々独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。これらの各基はさらに置換基を有してもよい。XとY、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。] - 前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が、非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が、0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が、0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
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