JP3949590B2 - シャワー用剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャワー流水中に希釈して使用するシャワー用剤に関し、特に配合される油性成分が肌や毛髪への残留性の良いシャワー用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
入浴時に浴槽中で使用される入浴剤と並んで、シャワー浴時に使用され、疲労回復、血行促進、湿温作用、清涼感等の効果を得るシャワー用剤がある。
【0003】
これまでのシャワー用剤は、成分を打錠した固形物、粉体等をシャワー用具に付属する容器中に保持し、シャワー流水に溶解させて身体に適用するものがある(特許文献1及び2参照)。しかし、シャワー用剤は、使用場所が浴室内であるため、使用したいときには、剤を得るために濡れた身体で浴室外に出ることなく、浴室内で剤を入手しすぐに使用できるよう、浴室内に保管することが望ましい。しかしながら、固形物、粉体等は湿気を嫌うため、多湿な浴室内での保管が難しい。そこで、浴室内に保管する場合には1回使用分を個別にピロー包装にする等の耐湿性を考慮した包装形態が必要になるが、使用のたびに個別包装を開封するのが手間であったり、開封した包装がゴミになる等、使い勝手が良くないという問題がある。
【0004】
一方、浴槽中で使用される液体状入浴剤(特許文献3参照)は、油性成分の働きで保湿作用、疲労回復、血行促進、清涼感等の効果が得られ、更にプラスチック等の密閉容器に収容されているため耐湿性が良好で、浴室での保管及び使用が可能であり、内容物の容器からの注出も簡単で、使用のたびにゴミが出ることもない。この液体状入浴剤をシャワー流水中に同伴させて身体に適用することが考えられるが、液体状入浴剤は界面活性剤を乳化剤とする水中油型乳化物であるため、シャワー流水中に同伴させて身体に適用しても、界面活性剤の作用により油性成分がシャワー流水で容易に洗い流されてしまい、油性成分の肌、毛髪への残留性に劣る等の問題がある。
【0005】
また、水中油型乳化物は、肌に塗布するタイプの化粧料において塗布時の使用感や安定性の向上等さまざまな検討がなされているが(特許文献4参照)、シャワー用剤として流水中に希釈、分散させて使用する上での、油性成分の肌、毛髪への吸着しやすさを検討したものはない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭61−236719号公報
【特許文献2】
特開平4−103524号公報
【特許文献3】
特開平10−36250号公報
【特許文献4】
特開平8−217624号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液体状で使い勝手がよく、シャワー用具の容器に充填し、流水によって流水中に希釈され、油性成分が肌、毛髪上に残留し易いシャワー用剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、流水中に希釈されるシャワー用剤において、界面活性剤を使用することなく、水相中に水溶性高分子を含有させ、その増粘機構により水中油型(O/W型)分散物を構成し、更に油相成分に拡張ぬれ仕事が一定範囲内のものを使用すると肌への吸着率が非常に高いことを見出した。即ち、シャワー時に当該水中油型分散物が流水中に希釈される際に、水溶性高分子に基づく増粘が失われると同時に油相である油滴が流水中に解放され、油滴の疎水性により肌、毛髪によく吸着することを見出した。また、油性成分の拡張ぬれ仕事を同時に大きくすることにより、油性成分が肌表面に広がりやすく肌との接触面積が増大することで、肌への吸着性を高めることができることも見出した。更に、このシャワー用剤は、液体状であるため、固形物や粉末等と異なり、プラスチックの密閉容器を使用することができ、浴室での保管・使用が可能、内容物の容器からの注出も容易であり、使用のたびにゴミがでることなく使い勝手がよい、といった特長を有することも見出した。
【0009】
即ち、本発明は、水溶性高分子を含有する水相中に、モード粒径10〜2,000μmの油性成分であって、式(1)により定義する拡張ぬれ仕事(W拡張ぬれ)が−10〜15mJ/m2、かつ水油間の界面自由エネルギーが2mJ/m2以上である油性成分が分散された水中油型分散物からなるシャワー用剤を、シャワー水に同伴させて身体に適用するシャワー方法であって、当該油性成分が、炭化水素類及びシリコーン油類から選ばれる非極性油と、高級脂肪酸類及び高級アルコールから選ばれる極性油とを0/100〜100/1の重量比で含有するものであるシャワー方法を提供するものである。
【0010】
【数3】
【0011】
さらに本発明は、上記拡張ぬれ仕事及び水油間の界面自由エネルギーに加え、式(2)により定義する付着仕事(W付着)が15〜60mJ/m2をも満たす油性成分が分散された水中油型分散物からなるシャワー用剤を、シャワー水に同伴させて身体に適用するシャワー方法を提供するものである。
【0012】
【数4】
【0013】
また本発明は、当該シャワー用剤を水の流路に内蔵してなるシャワーヘッドを提供するものである。
さらに本発明は、シャワー用剤を、孔径0.1mm〜2mm、孔の総面積10mm2〜45mm2のシャワーヘッドから、流量5L/分〜15L/分で身体に適用するシャワー方法を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のシャワー用剤に用いられる水溶性高分子としては、有機高分子である植物多糖類系、微生物多糖類系、動物蛋白質系等の天然高分子;セルロース系、デンプン系、アルギン酸系、多糖類系誘導体等の半合成高分子;ビニル系等の合成高分子及び無機高分子が挙げられる。
【0015】
植物多糖類系としては、グアーガム、ローストビーンガム、クインスシードガム、アラビアガム、トラガカントガム、カラギーナン、ガラクタン、ペクチン、マンナン、デンプン等が挙げられる。
【0016】
微生物多糖類系としては、キサンタンガム、デキストラン、プルラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸等が挙げられる。
【0017】
動物蛋白質系としては、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、ケラチン等が挙げられる。
【0018】
セルロース系としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0019】
デンプン系としては、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン等が挙げられる。
【0020】
アルギン酸系としては、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
多糖類系誘導体としては、デキストラン硫酸、カルボキシメチルキチン等が挙げられる。
【0022】
合成高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー(アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体)、ポリアクリル酸ナトリウム等のビニル系の他に、ポリエチレングリコール、酸化エチレン・酸化プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0023】
無機高分子としては、ベントナイト、ラポナイト、微粒子二酸化チタン等が挙げられる。
【0024】
これらの水溶性高分子の中で、クインスシードガム、トラガカントガム、ペクチン、キサンタンガム、ゼラチン、カゼイン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等が好ましい。特にアルキル変性カルボキシビニルポリマー、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースが、水中油型分散物の安定性と希釈時の分散性の点で好ましい。
【0025】
本発明のシャワー用剤における水溶性高分子の含有量は、水中油型分散物の安定性、希釈時の分散性の点から、0.01〜10重量%(以下単に%と記載する)が好ましく、特に0.05〜5%が好ましい。
【0026】
本発明のシャワー用剤の油相に用いられる油性成分としては、保湿作用や感触向上作用等の目的で通常化粧料に用いられる、油脂類、ロウ類、炭化水素類、シリコーン油類、エステル類、高級脂肪酸類、高級アルコール、環状アルコール等が挙げられ、炭化水素類、シリコーン油類等の非極性油、エステル類、高級脂肪酸類、高級アルコール、環状アルコール等の極性油が特に好ましい。但し、油性成分が全体として、油性成分の肌表面への広がり易さ及びべたつき防止の点から、式(1)における拡張ぬれ仕事(W拡張ぬれ)が−10〜30mJ/m2、かつ水油間の界面自由エネルギーが2mJ/m2以上であることが必要である。従って、単独では本条件を満たさない油性成分もあり、その場合は本条件を満たすべく、2種以上を組み合わせて使用する。更に、油性成分が全体として、油性成分の肌への高吸着性及びべたつき防止の点から、式(2)における付着仕事(W付着)が15〜80mJ/m2であることが好ましい。上記極性油であれば、ほぼ本発明の要件を満たし単独で使用することができるが、非極性油を使用する場合は、極性油との併用により、本発明の要件を満たすことができる。また、拡張ぬれ仕事は−10mJ/m2〜20mJ/m2であることが好ましく、更に−10mJ/m2〜15mJ/m2であることが特に好ましい。付着仕事は15mJ/m2〜70mJ/m2であることが好ましく、更に15mJ/m2〜60mJ/m2であることが特に好ましい。
【0027】
油脂類としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、牛脚油、オリーブ油、肝油、キョウニン油、ゴマ油、小麦胚芽油、米ヌカ油、米胚芽油、サザンカ油、サフラワー油、シナモン油、大豆油、茶実油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、綿実油、落花生油、卵黄油等が挙げられる。
【0028】
ロウ類としては、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、キャンデリラロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、カポックロウ、サトウキビロウ、ホホバロウ、羊毛ロウ、セラックロウ等が挙げられる。
【0029】
炭化水素類としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、スクワレン、プリスタン等が挙げられる。
【0030】
シリコーン油類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、アルコール変性ポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0031】
エステル類としては、炭素数8以上の高級脂肪酸とアルコールのエステルである、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、酢酸ラノリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸ブチル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸ヘキシル、2−エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、コレステリルエステル等が挙げられる。
【0032】
高級脂肪酸類としては、炭素数12〜28の高級脂肪酸類、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、リノレイン酸、オキシステアリン酸等が挙げられる。
【0033】
高級アルコール類としては、炭素数12〜28の高級アルコール類、例えばセチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0034】
環状アルコール類としては、メントール等が挙げられる。
【0035】
これらの油性成分のなかで、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン、ジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン等の非極性油と、オレイン酸、ラウリン酸、オレイルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、コレステリルエステル、メントール等の極性油とを混合することが特に好ましい。
また、非極性油/極性油の重量比は、0/100〜100/1の範囲で、油性成分の特徴に合わせ、本発明の範囲内に入るよう調整可能であるが、0/100〜100/5が効果の点で好ましく、0/100〜100/10が特に好ましい。
これらの油性成分は、非極性油及び極性油いずれも1種又は2種以上組合せて配合でき、その本発明シャワー用剤中の含有量は、油性成分全体として0.5〜70%、特に1〜50%が効果の点で好ましい。
【0036】
更に、本発明のシャワー用剤の油相に用いられる油性成分として、上記の保湿作用や肌感触向上作用等の目的で用いられるものの他に、ニコチン酸メチル、ニコチン酸エチル、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸トコフェロール等のニコチン酸誘導体、ノニル酸バニリルアミド、リノール酸メチル、リノール酸エチル等のリノール酸誘導体、オクチルフタリド等のフタリド誘導体、γ−オリザノール等の血行促進剤や、l−メントール、薄荷油、カンフル等の冷感剤が好ましい例として挙げられる。
これら血行促進剤や冷感剤は1種又は2種以上組合せて含有でき、その本発明シャワー用剤中の含有量は、0.0005〜5%、特に0.01〜2%が効果の点から好ましい。
【0037】
本発明のシャワー用剤には、溶剤又は不凍液としてアルコール類を含有することができる。アルコール類としては、炭素数1〜5の低級アルコール、炭素数2〜6の多価アルコールが挙げられ、エチルアルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングルコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。これらのアルコール類の本発明シャワー用剤中の含有量は、0.1〜50%が好ましく、1〜30%が特に好ましい。
【0038】
本発明のシャワー用剤において、水中油型分散物の油滴は、モード粒径が、10〜2,000μmであって、特に15〜1,000μmであるのが、使用感の点で好ましい。ここでモード粒径とは、粒径の頻度分布値が最大となる粒径であり、頻度分布グラフの最も高い頂点を示す粒径である。測定はレーザー回折/散乱法により行う。
【0039】
本発明のシャワー用剤の粘度は、水中油型分散物の安定性と希釈時の分散性の点で1,000〜100,000mPa・sが好ましく、特に3,000〜30,000mPa・sであることが好ましい。なお、測定条件は、使用機器:BM型粘度計((株)東京什器製)、ローター:No.4、回転数:12r/min、測定時間:60秒、測定温度:25℃である。
【0040】
本発明のシャワー用剤の油相及び水相の含有重量比は、油性成分の肌への残留性と水中油型分散物の安定性の点で、油相/水相=1/200〜7/3が好ましく、特に1/100〜1/1であるのが好ましい。また油性成分と水溶性高分子の含有重量比は、水中油型分散物の安定性の点で、油性成分/水溶性高分子=1,000/1〜1/10が好ましく、特に500/1〜1/5であるのが好ましい。
【0041】
本発明は水溶性高分子の増粘機構により形成される安定な水中油型分散物を用いるものであり、界面活性剤により形成される水中油型乳化物とは異なる。
【0042】
更に本発明のシャワー用剤には、抗炎症剤、美白剤、UVケア剤、殺菌剤、制汗剤、防腐剤、酸化防止剤、顔料、香料及び少量の界面活性剤等を含有することもできる。
【0043】
抗炎症剤としては、グリチルリチン酸塩、β−グリチルレチン酸、アラントイン、インドメタシン、グアイアズレン、グアイアズレンスルホン酸塩、生薬抽出液、薬草エキスなどが挙げられる。本発明シャワー用剤中の含有量は、0.01〜10%が好ましく、特に0.1〜2%が効果の点から好ましい。
【0044】
美白剤、UVケア剤としてはビタミンC誘導体(アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウムなど)、アルブチン、コウジ酸、カミツレエキス、パーソールMCX、エスカロール507、オキシベンゾン、ユビナール等が挙げられる。本発明シャワー用剤中の含有量は、0.01〜10%が好ましく、特に0.1〜5%が効果の点から好ましい。
【0045】
殺菌剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、トリクロロカルバニド、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。本発明シャワー用剤中の含有量は、0.01〜5%が好ましく、特に0.1〜1%が効果の点から好ましい。
【0046】
制汗剤としては、塩化アンモニウム、クロロヒドロキシアルミニウム、乳酸アルミニウム、アラントインアルミニウム誘導体、p−フェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。本発明シャワー用剤中の含有量は、0.01〜10%が好ましく、特に0.05〜5%が効果の点から好ましい。
【0047】
本発明のシャワー用剤中には、更に水不溶性粉体を含有させると、肌のさらさら感、すべすべ感等の使用感の向上が得られ好ましい。
水不溶性粉体としては、例えば、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、雲母、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ミョウバン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等の無機粉体、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン・アクリル酸重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、ポリウレタン、ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン、シルク、セルロースパウダー、シリコーンパウダー、ポリアクリル酸等の有機粉体等が挙げられる。これらの中で、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、シリコーンパウダーが肌での感触が良好であることから、本発明のシャワー用剤には特に好ましい。
【0048】
かかる粉体の形状は、平板状、塊状、鱗片状、球状等のいずれであってもよいが、平板状、鱗片状、球状等の粉体が皮膚感触を高める上で特に好ましい。
【0049】
これらの水不溶性粉体は、皮膚のざらざら感がなく、さらさら感が得られて使用感を高める上から、レーザー回折/散乱法での平均粒径が0.1〜15μm、特に1〜10μmであるのが好ましい。
【0050】
これらの水不溶性粉体は、使用感の点から、本発明シャワー用剤中の含有量は、0.5〜60%、特に1〜25%が好ましい。
【0051】
本発明のシャワー用剤は、1回当りの使用量が1〜50g、好ましくは2〜20gであるように調整して製造され、使用毎にシャワー用具(シャワーヘッド又はアタッチメント)に注入し、流速1〜20L/分の流水で20秒〜2分間で使い切る様に調整して使用するのが、油性成分等の油滴の肌、毛髪への吸着がよく好ましい。
流水中へのシャワー用剤の溶出速度は、流水の流路に内蔵されたシャワー用剤の容器から流水の流路への出口孔の大きさと形状、該部分の流水の流路径、シャワー用剤の粘度等で調整される。より具体的には本発明のシャワー用剤を、孔径0.1mm〜2mm、より好ましくは0.2mm〜1.5mm、孔の総面積10mm2〜45mm2、より好ましくは15mm2〜40mm2のシャワーヘッドから、流量5L/分〜15L/分、より好ましくは8L/分〜12L/分で身体に適用するシャワー方法により使用するのが好ましい。また、流水の流路、例えばシャワーヘッドの下部(シャワーヘッドとシャワーホースの間に設けたアタッチメント中)又はシャワーヘッドにシャワー用剤を内蔵したシャワーヘッドを使用するのが好ましい。
【0052】
【実施例】
各界面自由エネルギーを以下の方法により算出した。
【0053】
【数5】
【0054】
肌に類似した性質を有するケラチンパウダーに対する油の浸透現象を用いた浸透速度法により測定した。装置は、FACE自動粉体接触角計PHW−S型(協和界面科学株式会社製)を用いた。装置の概念図を図1に示す。測定は以下の手順に従って行った。
【0055】
▲1▼図1中の円筒充填管(断面積S=0.2827cm2)に、目開き500μmのふるいを通したケラチンパウダー(東京化成製)1.6〜2.0gを充填し、1000回程度タッピングして空隙率εを0.33〜0.37に調整する。
▲2▼円筒充填管に定性濾紙No.1(ADVANTEC製)をセットし、3つの孔(直径1.45mm)の開いた面を、測定対象である油性成分面に接触させ、粉体への油性成分の浸透に伴う加重Wを測定し、式(4)により算出する。
【0056】
【数6】
【0057】
試験例1
表1に示す組成の油性成分を水相成分に添加しながら乳化機で分散し水中油型分散物を製造し、シャワー用剤としての試験を行った。粘度、モード粒径、拡張ぬれ仕事、水油間の界面自由エネルギー、付着仕事はそれぞれ表1の通りであった。なお、比較例1は界面活性剤を乳化剤とした水中油型乳化物であり、シャワー時に希釈されても界面活性剤を乳化剤とする水中油型乳化物の状態であるので、この水中油型乳化物の状態で、拡張ぬれ仕事、水油間の界面自由エネルギー、付着仕事を計測した。比較例2〜3および実施例1〜3についての上記物性は、それぞれ油性成分について計測した。
【0058】
【表1】
【0059】
粘度の測定条件:使用機器 BM型粘度計 (株)東京什器製
ローター/回転数 No.1/60r/min、No.4/12r/min
測定時間 60秒
測定温度 25℃
モード粒径の測定方法:レーザー回折/散乱法
【0060】
〔試験方法〕
シャワーヘッドとシャワーホースの間に、試料を注入できるようにしたアタッチメントを取り外し自在に設け(図2)、このアタッチメント(図3)に試料10gを注入し、流水の温度及び流量を一定に設定して(水温39±1℃、流量8±1L/分)水を流し、流水中に試料を希釈、分散させ、シャワーヘッドの散水部から吐出させた。これを前腕屈側部に適用した(試料が流出し終わるまで、約20秒)。適用部位を乾燥させた後に、手の平の感触により油剤の残留感を評価した。
【0061】
〔試験結果〕
手の平の感触による油剤の残留感の評価結果を表2に示す。
〔評価基準〕
油剤の残留感を、5:強く感じる、4:感じる、3:やや感じる、2:あまり感じない、1:感じない、という基準で評価し、被験者10人の平均値を採用した。
【0062】
【表2】
【0063】
表2より、流水中に希釈して使用するシャワー用剤においては、界面活性剤を乳化剤とした水中油型乳化物である比較例1に比べ、水溶性高分子の増粘機構による水中油型分散物を構成し水油間の界面自由エネルギーが2mJ/m2以上である比較例2〜3、及び実施例1〜3の方が油相である油滴の疎水性により油剤の肌残留性がはるかに優れていることがわかる。さらに、拡張ぬれ仕事が−10mJ/m2未満である比較例2〜3に比べ、拡張ぬれ仕事が−10〜30mJ/m2である実施例1〜3の方が、油性成分が肌に広がりやすく肌との接触面積が増大することで肌への吸着性が高まるため、油剤の肌残留性がはるかに優れていることがわかる。
【0064】
試験例2
表3に示す組成の油性成分を水相成分に添加しながら乳化機で分散し水中油型分散物を製造し、シャワー用剤としての試験を行った。粘度、モード粒径、拡張ぬれ仕事、水油間の界面自由エネルギー、付着仕事はそれぞれ表3の通りであった。なお、拡張ぬれ仕事、水油間の界面自由エネルギー、付着仕事は油性成分についての値である。
【0065】
【表3】
【0066】
粘度の測定条件:使用機器 BM型粘度計 (株)東京什器製
ローター/回転数 No.4/12r/min
測定時間 60秒
測定温度 25℃
モード粒径の測定方法:レーザー回折/散乱法
【0067】
〔試験方法〕
試験例1と同じ方法にて行った。
【0068】
〔試験結果〕
手の平の感触による粉体の残留感の評価結果を表4に示す。
〔評価基準〕
粉体の残留感を、5:強く感じる、4:感じる、3:やや感じる、2:あまり感じない、1:感じない、という基準で評価し、被験者10人の平均値を採用した。
【0069】
【表4】
【0070】
表4より、流水中に希釈して使用するシャワー用剤においては、拡張ぬれ仕事が−10mJ/m2未満である比較品に比べ、拡張ぬれ仕事が−10〜30mJ/m2である実施例4〜5の方が、油性成分が肌に広がりやすく肌との接触面積が増大することで肌への吸着性が高まるため、シリコーンパウダーの肌残留性がはるかに優れていることがわかる。また、油剤はシリコーンパウダーが肌に吸着する際にバインダーの働きをするので、比較例4に比べ、実施例4〜5は、油剤の肌残留性も優れていると考えられる。
【0071】
〔シリコーンパウダーの定量〕
試験例2においては、別途、シャワーによるサンプルの適用部位を乾燥させた後に、当該部位にカップを被せ、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム2.7%水溶液10mLを満たした状態で、ガラスピペットにより1分間軽擦し、皮膚に吸着したシリコーンパウダーを分散、回収した。この回収液に対して、波長550nmの光の透過率を求め、予め作成した検量線からシリコーンパウダーを定量し、この値をもって皮膚へのシリコーンパウダーの吸着量とした。結果を表5に示す。なお単位は、mg/10mLである。
【0072】
【表5】
【0073】
表5より、流水中に希釈して使用するシャワー用剤においては、拡張ぬれ仕事が−10mJ/m2未満である比較品4に比べ、拡張ぬれ仕事が−10〜30mJ/m2である本発明品4〜5の方が、油性成分が肌に広がりやすく肌との接触面積が増大することで肌への吸着性が高まるため、シリコーンパウダーの肌残留性がはるかに優れていることがわかる。また、油剤はシリコーンパウダーが肌に吸着する際にバインダーの働きをするので、比較例4に比べ、実施例4〜5は、油剤の肌残留性も優れていると考えられる。
【0074】
【発明の効果】
本発明のシャワー用剤は、液体状で使い勝手がよく、油性成分が肌、毛髪上に残留し易い。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動粉体接触角計の概念図である。
【図2】シャワーヘッドとシャワーホースの間にアタッチメントを設けた状態を示す図である。
【図3】シャワー用剤を注入できるアタッチメントの一例(外観図及び断面図)を示す図である。
【符号の説明】
S:充填管の断面積
L:粉体充填高さ
Wt:時間tにおける加重
ρ:油性成分の密度
Ws:粉体充填重量
ρs:粉体の真密度
1:シャワーヘッド
2:アタッチメント
3:シャワーホース
21:空気口
22:シャワー用剤注入口
23:シャワー用剤
Claims (6)
- シャワー用剤の粘度が1,000〜100,000mPa・sである請求項1又は2記載のシャワー方法。
- シャワー用剤が、更に、水不溶性粉体を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のシャワー方法。
- シャワー用剤を、孔径0.1 mm 〜2 mm 、孔の総面積10 mm 2 〜45 mm 2 のシャワーヘッドから、流量5L/分〜15L/分で身体に適用する請求項1〜4のいずれか1項記載のシャワー方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載のシャワー用剤を流水の流路に内蔵するシャワーヘッド。
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