JP3948232B2 - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク、油性インク等の液体インクを用いて記録画像を形成するインクジェット記録用シートに関するものであり、特に、インクジェット記録用シート上にフルカラーで印字された画像の印字濃度が高く、インクの吸収性に優れるという特徴を維持しつつ、従来のインクジェット記録用シートの欠点であった長期保存での変色のないインクジェット記録用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体インクを微細なノズルから記録体に噴出して画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音が少なく、カラー化が容易であること、高速記録が可能であること、また、他の印刷装置より安価であること等の理由から端末用プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、あるいは帳票印刷などで広く利用されている。
一方、プリンタの急速な普及や高精細・高速化、さらにはデジタルカメラの登場により、記録体側にも高度な特性が要望されるようになった。すなわち、吸収性、記録濃度、耐水性、および保存性に優れた、銀塩方式の写真に匹敵する画質と保存性を兼ね備えた記録体の実現が強く求められている。
【0003】
このような要求に答えるため、支持体上に顔料および接着剤を主体とするインク受容層を設けたシートに関する提案が多数なされてきた。例えば、非晶質シリカおよび高分子バインダーからなる塗布層(特開昭55−51583号公報、同57−157786号公報、同62−158084号公報)、ゼオライト等のインク吸着顔料を有する塗布層(特開昭56−144172号公報)、微粉ケイ酸および水溶性樹脂からなる塗布層(特開昭56−148583号公報)、多孔質のカチオン性アルミナ水和物を有する塗布層(特開昭60−232990号公報)等を支持体上に設ける方法が提案されている。
【0004】
また、印字の耐水性改善の観点から、カチオン性ポリマー(特開昭56−84992号公報、同60−49990号公報、同61−125878号公報)、塩基性ラテックス(特開昭57−36692号公報)等をインク受容層に含有させる方法が提案されている。
【0005】
さらに、印字の保存性改善の観点から、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、塩化第二クロム等の金属酸化物、金属塩化物またはタンニン酸のうちの少なくとも一つを添加する方法(特開昭57−87987号公報)、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤を添加する方法(特開昭57−74192号公報)、ヒンダードアミン類を添加する方法(特開昭61−146591号公報)、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系やフェニルサリチル酸系等の紫外線吸収剤を添加する方法(特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報、同63−222885号公報)、チオ尿素系化合物を添加する方法(特開昭61−163886号公報)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール等の特定のメルカプト化合物を添加する方法(特開昭61−177279)、ジチオカルバミン酸塩、チウラム塩、チオシアン酸エステルまたはチオシアン酸塩を添加する方法(特開平7−314882号公報)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの技術を用いて形成されるフルカラーインクジェット記録画像は長期保存中での変色、とりわけシアンインク用染料としてフタロシアニン系染料を用いた場合、その褪色に伴う変色に対してはまだまだ不十分であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、インクジェット記録用シート上にフルカラーで印字された場合に、従来のインクジェット記録用シートの欠点であった長期保存での変色、とりわけシアンインク用染料としてフタロシアニン系染料を用いた場合、その褪色に伴う変色を著しく減少させたインクジェット記録用シートに関するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記態様を含む。
[1]液体インクを用いて記録画像を形成するインクジェット記録用シートにおいて、記録用シート中に一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表わされる化合物から選ばれる少なくとも一種と、一般式(3)で表されるジアリルアミン系化合物のホモポリマーおよび一般式(3)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物とのコポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有せしめたことを特徴とするインクジェット記録用シート。
【化4】
【化5】
【化6】
〔式中、R1、R2、R3はそれぞれ、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のヒドロキシアルキル基またはC1〜C4のジヒドロキシアルキル基を、pは1〜3の整数を、qは1〜6の整数を、r、tはそれぞれ1または2を示す。R4、R5はそれぞれ水素原子またはメチル基を、R6は水素原子またはC1〜C4のアルキル基を、HXは酸を表す。〕
R4、R5は水素原子が好ましい。またR6も水素原子が好ましい。
【0009】
[2]一般式(1)で表わされる化合物が1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンである[1]記載のインクジェット記録用シート。
[3]一般式(2)で表わされる化合物が1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ブタンである[1]記載のインクジェット記録用シート。
[4]インクジェット記録用シート上にキャスト処理した光沢層を設けた[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
[5]一般式(3)で表されるジアリルアミン系化合物のホモポリマーおよびおよび一般式(3)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物とのコポリマーが、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体の内の少なくとも1種である[1]〜[4]いずれかに記載のインクジェット記録用シート。
[6]液体インクに用いられるシアン染料がフタロシアニン系染料である[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、水性インク等の液体インクを用いて記録画像を形成するインクジェット記録用シートにおいて、該記録用シート中に一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表わされる化合物から選ばれる少なくとも一種と、一般式(3)で表されるジアリルアミン系化合物のホモポリマーおよび一般式(3)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物とのコポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有させることにより、インクジェット記録用シート上にフルカラーで印字された場合に、従来のインクジェット記録用シートの欠点であった長期保存中での変色、とりわけシアンインク用染料としてフタロシアニン系染料を用いた場合、その褪色に伴う変色を著しく減少させたインクジェット記録用シートが得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【化7】
【化8】
【化9】
〔式中、R1、R2、R3はそれぞれ、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のヒドロキシアルキル基またはC1〜C4のジヒドロキシアルキル基を、pは1〜3の整数を、qは1〜6の整数を、r、tはそれぞれ1または2を示す。R4、R5はそれぞれ水素原子またはメチル基を、R6は水素原子またはC1〜C4のアルキル基を、HXは酸を表す。〕
【0011】
一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表わされる化合物の具体例としては、2,2'−チオジエタノール、2,2'−ジチオジエタノール、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルジチオ)エタン、2,2'−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ジエチルスルフィド、2,2'−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ジエチルジスルフィド、ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)メタン、ビス(2−ヒドロキシエチルジチオ)メタン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルジチオ)プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ブタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルジチオ)ブタン、1,6−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2−ヒドロキシエチルジチオ)ヘキサン、エチルチオエタノール、エチルジチオエタノール、n−プロピルチオエタノール、イソプロピルチオエタノール、イソプロピルジチオエタノール、n−ブチルチオエタノール、1−エチルチオ−1−(2−ヒドロキシエチルチオ)メタン、1−エチルチオ−2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エタン、1−エチルチオ−3−(2−ヒドロキシエチルチオ)プロパン、1−エチルチオ−4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ブタン、1,1−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルジチオ)プロパン、1,4−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルチオ)ブタン、1,6−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルチオ)ヘキサン、1−エチルチオ−2−(2,3−ジヒドロキシプロピルチオ)エタン等が挙げられる。
【0012】
これらの化合物のうちでも、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ブタンはとりわけ変色防止効果が高く、かつ安全性も高いため、特に好ましく用いられる。
【0013】
一般式(3)のHXで表される酸は、無機酸であるが、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が挙げられる。これらの酸のうちでも、塩酸、硫酸は特に変色防止に効果的であり、好んで用いられる。
【0014】
一般式(3)で表されるジアリルアミン系化合物のホモポリマーおよびコポリマーとしては、例えば、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルアミン硫酸塩、ポリジアリルアミンのリン酸塩、ポリジアリルアミンの酢酸塩、ポリジアリルアミンのプロピオン酸塩、ポリジアリルアミンのメタンスルホン酸塩、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリジアリルメチルアミン硫酸塩、ポリジアリルエチルアミン塩酸塩、ポリジアリルエチルアミン硫酸塩、ポリジアリル−n−プロピルアミン塩酸塩、ポリジアリル−n−ブチルアミン塩酸塩、ポリ(ジ−2−メチルアリルアミン塩酸塩)、ポリ(ジ−2−メチルアリルアミン硫酸塩)、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体、ジアリルアミン硫酸塩・アクリルアミド共重合体、ジアリルアミンのリン酸塩・アクリルアミド共重合体、ジアリルメチルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体、ジアリルメチルアミン硫酸塩・アクリルアミド共重合体、ジアリルメチルアミンのリン酸塩・アクリルアミド共重合体、ジアリルエチルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体等が挙げられる。R4、R5は水素原子が好ましい。R6も水素原子が好ましい。これらを用いることにより耐水性が向上するだけでなく、変色防止に相乗効果がある。
【0015】
フルカラーインクジェット記録画像が長期保存中で変色、とりわけシアンインク用染料としてフタロシアニン系染料を用いた場合、その褪色に伴う変色が著しい要因は、フタロシアニン骨格を有するシアン染料が、空気中のガス、とりわけオゾンのような酸化力の強いガスにより容易に、かつ選択的に酸化されるためと考えられる。
【0016】
今回、見出した一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表される化合物が、とりわけ変色防止に効果的であった理由は明らかではないが、一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表される化合物自体がオゾンのような酸化力の強いガスにより酸化されやすいため、シアン染料が酸化される前に酸化され、結果的にシアン染料の酸化を防止するものと考えられる。
【0017】
また、一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表わされる化合物が酸化されて生じる化合物は無色のため、地肌が黄変する等の問題点を生じないことも大きな特徴である。
【0018】
前記一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表される化合物のインクジェット記録用シート中の含有量としては、0.1〜4g/m2程度、好ましくは0.2〜2g/m2程度である。因みに、0.1g/m2より少ないと保存性改善効果が不十分で印字耐水性、印字濃度等の向上効果も十分得られない恐れがあり、また4g/m2より多いと画質の低下を招く恐れがある。
一般式(3)で表される化合物のホモポリマーおよびコポリマーの含有量は、一般に顔料100重量部に対して1〜100重量部、 好ましくは5〜50重量部の範囲で調節される。配合量が少ないと印字耐水性、印字濃度等の向上効果が得られにくく、多いと逆に印字濃度が低下したり、画像のにじみが発生しやすい。
【0019】
前記一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物のホモポリマーあるいはコポリマーを含むインクジェット記録用シートの作成方法としては、例えば抄紙工程中でサイズプレス等によって特定の化合物を含む塗液を原紙に塗布または含浸させる方法、インク吸収性顔料、接着剤、特定の化合物を混合して得たインク受容層用塗液を、紙(酸性紙、中性紙)、合成紙、プラスチックフィルム、不織布等の支持体に塗工機を用いて塗布乾燥してインク受容層を形成する方法、顔料、接着剤、さらには特定のポリマーからなるインク受容層上に特定の化合物を含む塗液を塗布する方法等が挙げられる。
【0020】
なかでも、インク受容層中に前記特定の化合物を含有させる方法は、画像の変色防止により効果的であるため好ましい。
【0021】
前記一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表される化合物が水溶性の場合には、水溶液をインク受容層用塗液中に添加あるいはインク受容層上に塗工して用いる。一方、水への溶解性が低い場合には、水を分散媒体とし、ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル等の撹拌・粉砕機により微粉砕した後用いる。
【0022】
インクジェット記録用紙の支持体としては、紙(酸性紙、中性紙)、合成紙、プラスチックフィルム、不織布あるいはプラスチックフィルムをコート紙や上質紙等と接着剤を介して貼合せたもの、または紙にプラスチックをラミネートしたもの等が使用される。かかるプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等のフィルムが挙げられる。
【0023】
インク受理層中に含有せしめる顔料としては、例えばゼオライト、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物、リトポン、尿素−ホルマリン樹脂フィラー等が挙げられる。これらは単独または二種以上を混合して用いられる。
【0024】
これらのなかでも、非晶質シリカ、アルミナおよびアルミナ水和物は、インク吸収性に優れているため、好ましく用いられる。
【0025】
インク受容層中の顔料の使用量としては、インク受容層の固形分に対して20〜90重量%程度、好ましくは30〜80重量%程度である。なお、90重量%を越えるとインク受容層の塗膜強度が低下し、また20重量%未満になるとインクの吸収性が低下し、記録後のインク乾燥性が不充分となり画質が低下する恐れがある。
【0026】
本発明において、さらにカチオン性ポリマーとして、水に溶解あるいは乳化したときに解離してカチオン性を呈するポリマーを併用することも可能である。このようなカチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・二酸化イオウ共重合体、ポリアリルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩共重合体、N−ビニルアクリルアミジン塩酸塩・アクリルアミド共重合体、ジアルキルアミン・エピクロロヒドリン付加重合物、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン重合物、ジシアンジアミド・ホルマリン重縮合物、ポリエチレンポリアミン・ジシアンジアミド重縮合物、ポリエチレンイミン塩酸塩、ポリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルジアルキルアミン塩酸塩、(メタ)アクリロイルオキシアルキルジアルキルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体、ポリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルジアルキルアミン塩酸塩、(メタ)アクリルアミドアルキルジアルキルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体等が挙げられる。
【0027】
インク受容層には、接着剤として、例えば酸化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、完全(部分)ケン化ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体の塩、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、ポリエステルポリウレタン系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス等の水性接着剤、或いはポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の有機溶剤可溶性樹脂が、単独あるいは複数を混合して用いられる。
これらの接着剤は、一般に顔料100質量部に対して1〜200質量部程度、好ましくは10〜100質量部程度の範囲で使用される。
【0028】
更に、インク受容層中には、顔料分散剤、増粘剤、架橋剤、流動性変性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤等を適宜添加することもできる。
【0029】
インク受容層は、インク受容層用塗液をバーコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の塗工方式で支持体上の少なくとも片面に乾燥後の塗布量が2〜30g/m2程度となるように塗布乾燥して形成される。因みに、塗布量が2g/m2より少ないと記録画質が低下する恐れがあり、また30g/m2より多いと塗膜強度が低下する恐れがある。
【0030】
インク受容層形成後、高光沢を付与する等の目的のために例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダーなどで加圧下のロールニップ間を通して表面の平滑性を与えることも可能である。
【0031】
上述したインク受容層上にさらに光沢層を設けることができる。この光沢層は、樹脂を主成分とすることができる。また顔料および樹脂を含有させて構成することもできる。光沢層はインクを速やかに通過または吸収できるよう、光沢を阻害しない範囲で多孔性もしくは通液性にするのが好ましい。このようにするためには、顔料を配合するか、光沢を落とさない範囲で、樹脂が完全に成膜しないような乾燥条件を選択すると良い。
【0032】
光沢層に用いる顔料は、インク受容層に用いたものと同様のものが挙げられるが、光沢、透明性、インク吸収性の点で、コロイダルシリカ、非晶質シリカ、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、ゼオライト、合成スメクタイト等が好ましい。これらの顔料は光沢層中に10〜80重量%含まれることが望ましい。顔料のBET式比表面積が大きいほど、インクの吸収性に優れるため、150m2/g以上が好ましい。顔料の平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜1μmのものがより好ましい。粒子径が0.01μm未満になると、インク吸収性の改良効果に乏しく、5μmを超えると、光沢や印字濃度の低下が起こる恐れがある。顔料として一次粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、二次粒子の平均粒子径が10nm以上500nm以下であるシリカ微細粒子を使用すると、光沢、インクの吸収性に特に優れたものとなる。光沢層が顔料を主成分(10〜80%)として形成する場合、インクの吸収性が特に好ましい。
【0033】
この場合、光沢層がインク吸収性および透明性に優れるため、光沢層にカチオン性化合物を配合すると、インク染料が効率よく光沢層に定着し、光沢層の透明性とあいまって印字濃度の極めて優れたものとなり易い。光沢層の樹脂としては、水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体)、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス等の水分散性樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種樹脂(接着剤)が単独あるいは併用して使用される。
【0034】
なお、樹脂を主体に光沢層を形成する場合、特にエチレン性不飽和結合を有するモノマー(以下エチレン性モノマーという)を重合させてなる重合体あるいは共重合体(以下一括して重合体と称する)を主成分として構成されるのが好ましい。さらに、これら重合体の置換誘導体でも良い。また、上記のエチレン性モノマーをコロイダルシリカの存在下で重合させ、Si−O−R(R:重合体成分)結合によって複合体になった形、あるいは上記重合体にSiOH基等のコロイダルシリカと反応するような官能基を導入しておき、コロイダルシリカと反応させて複合体になった形で使用することも可能である。この複合体を使用した場合、光沢、インク吸収性に優れたものとなりやすい。
【0035】
更に加熱鏡面ドラムを用いるキャスト方式で光沢層を得る態様では、 上記の重合体は、そのガラス転移点が40℃以上のものが好ましく、50〜100℃の範囲であるものがより望ましい。ガラス転移点が低いと乾燥の際に成膜が進みすぎ、表面の多孔性が低下する結果、インクの吸収速度が低下するおそれが生じる。また、乾燥温度が重要であり、乾燥温度が高すぎると成膜が進みすぎ、表面の多孔性が低下する結果、インクの吸収速度が低下し、逆に乾燥温度が低すぎると、光沢に乏しくなる傾向が有り、生産性も低下する。
光沢層ではキャスト方式を用いることもできる。この態様では、キャストドラムからの離型性に優れたものとなり易い。複合体粒子は特に限定しないが、例えば平均粒径が20〜200nm程度である。
【0036】
ウェット法は、基紙上に塗工した光沢発現層が湿潤状態にあるうちに該光沢発現層を加熱された鏡面ドラム面に圧接して強光沢仕上げを行うものである。ゲル化法は、基紙上に塗工した光沢発現層が湿潤状態にあるうちにこの光沢発現層をゲル化剤浴に接触させ、ゲル化状態にした光沢発現層を加熱ドラム面に圧接して強光沢仕上げを行うものである。リウェット法は、湿潤状態の光沢発現層を一旦乾燥してから再度湿潤液に接触させた後、加熱ドラム面に圧接して強光沢仕上げを行うものである。
【0037】
光沢層用塗工組成物中には白色度、粘度、流動性等を調節するために、一般の印刷用塗工紙やインクジェット用紙に使用されている顔料、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤及び分散剤、増粘剤等の各種助剤が適宜添加される。また、前記のカチオン樹脂等のカチオン化合物を配合し、光沢層にもインク染料定着性を付与させることが可能である。光沢層の塗工量は、乾燥固形分で0.2〜30g/m2 、好ましくは、1〜20g/m2である。ここで、0.2g/m2未満では光沢が十分に出ない場合があり、30g/m2を越えて多いとインク乾燥性が劣ったり、記録濃度が低下する恐れがある。
【0038】
また、支持体の裏面に保護層を設けたり、支持体とインク受容層の間に中間層を設けることももちろん可能で、インクジェット記録用シート製造分野における各種の公知技術が付加し得るものである。
【0039】
記録画像を形成するための水性インクとは、着色剤および液媒体、その他の添加剤からなる記録液体である。
着色剤としては直接染料、酸性染料、反応性染料等の各種水溶性染料が挙げられる。また、水性インク等の液媒体としては、水単独、あるいは水および水溶性有機溶剤の併用がある。水溶性有機溶剤としては、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル等が挙げられる。
さらに添加剤としては、例えばpH調整剤、金属封鎖剤、防ばい剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、界面活性剤、および防錆剤等が挙げられる。
【0040】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろんこれらに限定されるものではない。なお、例中の「部」および「%」は、特に断わらない限りそれぞれ重量部および重量%を示す。
実施例1
【0041】
(インク受容層用塗液Aの調整)
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX60、(株)トクヤマ製)100部、ケイ素変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、(株)クラレ製)の10%水溶液250部、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体(商品名:スミレーズレジン 1001、住友化学(株)製)の40%水溶液75部、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンの5%水溶液 200部および少量の消泡剤、分散剤および水からなる固形分濃度15%のインク受容層用塗液Aを得た。
【0042】
(インクジェット記録用シートの作成)
65g/m2の上質紙上にインク受容層用塗液Aを固形分で12g/m2となるようにワイヤーバーにて塗布乾燥してインク受理層を設けた後、スーパーキャレンダー処理してインクジェット記録用シートを作成した。
【0043】
実施例2〜10
実施例1において、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンの代わりに、以下の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作成した。
実施例2:1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ブタン
実施例3:2,2'−チオジエタノール
実施例4:2,2'−ジチオジエタノール
実施例5:ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)メタン
実施例6:1,6−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ヘキサン
実施例7:エチルチオエタノール
実施例8:イソプロピルチオエタノール
実施例9:1−エチルチオ−2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エタン
実施例10:1,2−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルチオ)エタン
【0044】
実施例11
実施例1において、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体(商品名:スミレーズレジン1001、住友化学(株)製)の代わりに、以下の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作成した。
実施例11:ポリジアリルメチルアミン塩酸塩(商品名:PAS−M−1、日東紡績(株)製)
【0045】
実施例12
(インク受容層用塗液Bの調整)合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX60、(株)トクヤマ製)100部、ケイ素変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、(株)クラレ製)の10%水溶液250部、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体(商品名:スミレーズレジン 1001、住友化学(株)製)の40%水溶液75部および少量の消泡剤、分散剤および水からなる固形分濃度15%のインク受容層用塗液Bを得た。
【0046】
(インクジェット記録用シートの作成)
65g/m2の上質紙上にインク受容層用塗液Bを固形分で12g/m2となるようにワイヤーバーにて塗布乾燥しインク受理層を設けた後、さらに1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンの5%水溶液を固形分で1.0g/m2となるようにワイヤーバーにて塗布乾燥し、スーパーキャレンダー処理してインクジェット記録用シートを作成した。
【0047】
実施例13
(光沢発現層用塗液Cの調整)ガラス転移点75℃のスチレン−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体とコロイダルシリカの複合体(共重合体とコロイダルシリカは、重量比で40:60)100部、増粘・分散剤としてアルキルビニルエーテル・マレイン酸誘導体共重合体5部、離型剤としてレシチン3部よりなる固形分濃度30%の光沢発現層用塗液を得た。
(インクジェット記録用シートの作成)65g/m2の上質紙上に実施例1のインク受容層用塗液Aを固形分で12g/m2となるようにワイヤーバーにて塗布乾燥してインク受理層を設けた後、光沢発現層用塗液Cを塗工した後、ただちに表面温度が85℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後離型させ、光沢層を有する光沢タイプのインクジェット記録用シートを作成した。このときの光沢層の塗工量は固形分で8g/m2であった。
【0048】
実施例14
(光沢発現層用塗液Dの調整)ガラス転移点75℃のスチレン−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体とコロイダルシリカの複合体(共重合体とコロイダルシリカは、重量比で40:60)100部、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタン10部、増粘・分散剤としてアルキルビニルエーテル・マレイン酸誘導体共重合体5部、離型剤としてレシチン3部よりなる固形分濃度30%の光沢発現層用塗液を得た。
(インクジェット記録用シートの作成)65g/m2の上質紙上に実施例1のインク受容層用塗液Aを固形分で12g/m2となるようにワイヤーバーにて塗布乾燥してインク受理層を設けた後、光沢発現層用塗液Dを塗工した後、ただちに表面温度が85℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後離型させ、光沢層を有する光沢タイプのインクジェット記録用シートを作成した。このときの光沢層の塗工量は固形分で8g/m2であった。
【0049】
比較例1
実施例1において、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作成した。
【0050】
比較例2
実施例1において、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンの5%水溶液200部の代わりに、以下のようにして得られた3,3'−チオジプロピオン酸ジラウリルの20%分散液50部を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作成した。
(3,3'−チオジプロピオン酸ジラウリル分散液の調製)
3,3'−チオジプロピオン酸ジラウリル100部、スルホン基変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセランL−3266、日本合成化学(株)製)5部、少量の界面活性剤、消泡剤よび水からなる固形分濃度20%の組成物をサンドグラインダーで平均粒子径が0.5μmとなるまで粉砕し、分散液を得た。
【0051】
比較例3
比較例2において、3,3'−チオジプロピオン酸ジラウリルの代わりに、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを用いた以外は、比較例2と同様にしてインクジェット記録用シートを作成した。
【0052】
比較例4
実施例1において、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合物(商品名:スミレーズレジン 1001、住友化学(株)製)の代わりに、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:ユニセンスCP−103、センカ(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作成した。
【0053】
比較例5
実施例1において、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合物(商品名:スミレーズレジン 1001、住友化学(株)製)の代わりに、ポリエチレンポリアミン・ジシアンジアミド重縮合物(商品名:ネオフィックスRP−70、日華化学(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作成した。
【0054】
比較例6
実施例14において、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンを用いなかった以外は、実施例14と同様にしてインクジェット記録用シートを作成した。
【0055】
実施例および比較例で得たインクジェット記録用シートについて、エプソンインクジェットプリンターPM−800Cを用いて、シアン、マゼンタ、イエロー混色によるミックスブラックおよびシアンインクのベタ印字およびISO−400の画像(「高精細カラーディジタル標準画像データISO/JIS−SCID」、p13、画像名称:ポートレート、財団法人日本企画協会発行)を印字し、以下の評価を行い、結果を表1に示した。なお、PM−800Cには、シアン染料としてフタロシアニン系染料が使用されている。
【0056】
〔印字濃度〕
シアン、マゼンタ、イエロー混色によるミックスブラックおよびシアンインクのベタ印字部の濃度をマクベス濃度計(形式:RD−914、マクベス製)を用いて測定した。
【0057】
〔画質〕
ISO−400の画像を目視で観察し、その画質を評価した。
(評価基準)
◎ :非常に優れている
○ :優れている
× :劣っている
【0058】
〔耐オゾン性〕
長期保存性との相関の高い耐オゾン性を評価した。シアン、マゼンタ、イエロー混色によるミックスブラックおよびシアンインクのベタ印字およびISO−400の画像を、オゾン濃度 10ppmの容器に12時間放置した。ベタ印字の場合には試験後のマクベス濃度を測定し、次の式により画像残存率を算出した。一方、画像の場合には目視により変色の度合いを観察し、評価した。
画像残存率(%)=〔(処理後の濃度)/(処理前の濃度)〕×100
(評価基準)
◎ :変褪色がみられない
○ :変褪色がややみられるものの、実用上問題なし
× :変褪色が著しく、実用上問題あり
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
表1から明らかなように、本発明のインクジェット記録用シートは、画像の印字濃度が高く、画質にも優れ、かつオゾンガスに暴露された場合でも画像の変褪色が非常に少なく、長期保存性に優れた記録用シートであった。
Claims (6)
- 液体インクを用いて記録画像を形成するインクジェット記録用シートにおいて、記録用シート中に一般式(1)で表わされる化合物および一般式(2)で表わされる化合物から選ばれる少なくとも一種と、一般式(3)で表されるジアリルアミン系化合物のホモポリマーおよび一般式(3)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物とのコポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有せしめたことを特徴とするインクジェット記録用シート。
- 一般式(1)で表わされる化合物が1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンである請求項1記載のインクジェット記録用シート。
- 一般式(2)で表わされる化合物が1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ブタンである請求項1記載のインクジェット記録用シート。
- インクジェット記録用シート上にキャスト処理した光沢層を設けた請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 一般式(3)で表されるジアリルアミン系化合物のホモポリマーおよびおよび一般式(3)と共重合可能なエチレン性不飽和化合物とのコポリマーが、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合体の内の少なくとも1種である請求項1〜4いずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 液体インクに用いられるシアン染料がフタロシアニン系染料である請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
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