JP3944561B2 - 厚板材の接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は比較的板厚の大きな金属材料構造物の如き2枚の厚板材の接合方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2枚の厚板材を接合する場合の方法として、図7にその一例の概要を示す如く、2枚の厚板材aの突き合わせ面部にV開先bを形成し、このV開先b内を下向き溶接して、下層から順次溶着金属cを積層して板厚の全厚を仕上げることにより、2枚の厚板材aを接合するようにした開先溶接法が広く知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の開先溶接法の場合には、次の如き問題がある。
▲1▼V開先b内での溶接量が上層に行くに従い大きくなるため、二点鎖線で示すように、厚板材a間に溶接角変形が発生する。
▲2▼厚板材aではV開先bが狭開先となることから、溶接初期の段階で溶接角変形が発生すると、溶接トーチがV開先b内に入らなくなることがある。
▲3▼下向き溶接となるため、溶け込みが浅くなり、融合不良や溶け込み不足等の溶接欠陥が入り易くなる。
▲4▼下向き溶接となることから、溶着速度を大きくできず溶接能率が上がらない。
▲5▼下向き溶接では、欠陥除去に伴うはつり滓がV開先b内に溜ることから、溶接欠陥の補修が困難である。
【0004】
一方、溶接角変形が発生しにくい開先溶接法として、厚板材の突き合わせ面部にX開先を形成して、このX開先を両面から溶接するようにした開先溶接法も採用されているが、その場合、厚板材間に収縮が発生する問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、溶接角変形や収縮を抑えることができ、溶接欠陥を発生しにくくでき、溶接能率を向上させることができるような厚板材の接合方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、2枚の厚板材の突き合わせ面部にI開先を形成し、該I開先内の板幅方向の中央部に、板厚方向に沿うよう銅板製の仕切り板を配置し、上記I開先内に挿入した薄型の溶接トーチにより、両開先面と仕切り板とに溶接し、2枚の厚板材で繋げるような溶接部を得た後、この溶接部を挟んで立向き上進又は下進として溶接し、溶着金属を板幅方向両端へ向けて積層させるようにする厚板材の接合方法とする。
【0007】
I開先の中央部から両端へ向けて溶接するため、溶接角変形や収縮が低く抑えられ、特に、中央部から両端へ向けて交互に溶接することにより、溶接角変形や収縮が極めて低く抑えられる。
【0008】
又、2枚の厚板材の突き合わせ面部にI開先を形成し、該I開先内の板幅方向の中央部に、板厚方向に沿うよう銅板製の仕切り板を配置し、上記I開先内に、2台の薄型の溶接トーチを、上記仕切り板を挟んで対向するように挿入して、該2台の溶接トーチの併用により、上記仕切り板の部分から立向き上進又は下進として溶接し、溶着金属を板幅方向両端へ向けて積層させるようにすることによって、作業効率をより向上できることになる。
【0009】
更に、銅板製の仕切り板を用いることに代えて、厚板材と同材質の仕切り板を用いるようにすることにより、仕切り板を取り外すことなく、そのまま溶かし込ませることができるので、より能率的となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2は本発明の実施の一形態を示すものであり、先ず、図1(イ)に示す如く、接合すべき2枚の厚板材1を平置きし、その突き合わせ面部に、薄型のMAG溶接トーチ2が挿入される間隔が保持されるようにI開先3を形成して、該I開先3の下側に、銅板製又はセラミックス材製の一時当て金4を配置すると共に、該I開先3内の板幅方向中央部に、図2に示す如き冷却水通路5を有する銅板製の仕切り板6を、板厚方向に沿うように介在配置して、段取り状態とする。
【0014】
上記溶接トーチ2は図3(イ)(ロ)に示す如く、下端部前面に開口7を有する薄型扁平のトーチヘッド8内の前部位置に、下端部となる先端部を前方へ湾曲変向させたワイヤ送給管9を上下方向に配して、該ワイヤ送給管9の先端部を上記開口7に臨ませるようにすると共に、該ワイヤ送給管9内に、たとえば、直径が1.2mmの溶接ワイヤ10を挿通させるようにし、且つ上記トーチヘッド8内の後部位置に、シールドガス送給管11を上下方向に配置して、該シールドガス送給管11の下端となる先端の送給口12を、前方に向けてワイヤ送給管9の先端部背面に位置させるようにし、更に、上記ワイヤ送給管9を、回転軸心Oを中心に水平方向へ回動できるようにして、溶接ワイヤ10が水平方向に首振り可能となるように構成してある。
【0015】
上記段取り状態において、I開先3内に溶接トーチ2を挿入し、該I開先3内を、最初に、仕切り板6の片面側の部分から溶接する。この場合、たとえば、溶接トーチ2を板厚方向の最下部に位置させ、図1(イ)に示す如く、立向き上進溶接させるようにする。この立向き上進溶接を繰り返すことにより、図2に示す如く、仕切り板6の片面側に溶着金属13の層が2〜3層形成されると、2枚の厚板材1が溶着金属13を介して繋がるので、仕切り板6を撤去し、次に、図1(イ)において二点鎖線で示す如く、溶接トーチ2を、仕切り板6のあった位置を挟んで反対側の位置に移動させ、同様に立向き上進溶接を行って、溶着金属13の層を2〜3層形成させるようにする。
【0016】
上述した如き立向き上進溶接を、仕切り板6のあった位置を挟んで、左右交互に行うことにより、図1(ロ)に示す如く、溶着金属13を板幅方向両端へ向けて順次積層して行くことにより、図1(ハ)に示す如き板厚方向及び板幅方向に連続した溶接継手14を完成させる。
【0017】
本発明では、I開先3の中央部から板幅方向両端へ向けて交互に溶着金属13を積層して行くように溶接するため、溶接角変形や収縮を極めて低く抑えることができる。又、立向き溶接の採用により溶融池が大きくなるので、溶接速度を速くすることができ、能率よく溶接作業を行うことができ、且つ溶け込みを大きくすることができることから、溶け込み不足等の溶接欠陥を発生しにくくすることができる。更に、立向き溶接では、欠陥除去に伴うはつり滓がI開先3内に溜まらないことから、溶接欠陥があったとしても、その補修を容易に行うことができる。
【0018】
因に、仕切り板6に銅板を採用していることから、該仕切り板6は片面側に溶着金属層が形成された状態では容易に撤去することができる。又、一時当て金4として、銅板あるいはセラミックス材を採用していることにより、一時当て金4も容易に剥離させることができ、そのため、裏はつりを不要とすることができる。なお、I開先3の溶接は、中央部から幅方向両端へ向けて厳格に交互に行わなくても、溶接角変形や収縮を低く抑えることができる。
【0019】
次に、図4(イ)(ロ)は本発明の他の実施の形態を示すもので、2台の溶接トーチ2を併用して、I開先3の中央部から両端へ向けて溶接を進めるようにしたものである。すなわち、図4(イ)に示す如く、2台の溶接トーチ2を、I開先3内に、仕切り板6を挟んで対向させて挿入配置し、初めは、図1(イ)に示したのと同様に、一方の溶接トーチ2の立向き上進溶接により仕切り板6の片面側に溶着金属13を2〜3層形成させるようにするが、仕切り板6を撤去した後は、図4(ロ)に示す如く、2台の溶接トーチ2を併用して板幅方向両端側へ向けて溶着金属13を同時に積層させて行くようにする。
【0020】
図4(イ)(ロ)に示すような手順で接合作業を行うと、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0021】
図5は仕切り板の他の例を示すもので、厚板材1と同じ材質の仕切り板15としたものである。
【0022】
厚板材1と同材質の仕切り板15を採用すると、そのまま溶かし込むことができるので、撤去の手間を省くことができ、より能率的に作業を進めることができる。
【0023】
次いで、図6は本発明の更に別の実施の形態を示すもので、2枚の厚板材1により形成したI開先3の板幅方向の一端外側に、銅板製又はセラミックス材製の当て金16を配置し、I開先3内に挿入した溶接トーチ2の立向き上進溶接により、上記当て金16の部分から板幅方向他端へ向けて、溶着金属13を積層させるようにしたものである。
【0024】
この場合、厚板材1の材質が変形の少ない材質であったり、板幅が小さいときに有利である。
【0025】
なお、上記各実施の形態では、MAG溶接を採用したが、MIG溶接やTIG溶接を採用してもよいこと、又、実施の形態では、立向き上進溶接を採用したが、立向き下進溶接としても支障はなく、更に、立向き上進溶接と立向き下進溶接とを連続して行うようにした場合には、極めて合理的に作業を進めることができて有利であり、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0026】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明の厚板材の接合方法によれば、次の如き優れた効果を発揮する。
(1) 2枚の厚板材の突き合わせ面部にI開先を形成し、該I開先内の板幅方向の中央部に、板厚方向に沿うよう銅板製の仕切り板を配置し、上記I開先内に挿入した薄型の溶接トーチにより、上記仕切り板の部分から該仕切り板の位置を挟んで立向き上進又は下進として溶接し、溶着金属を板幅方向両端へ向けて積層させるようにするので、厚板材の溶接角変形や収縮を低く抑えることができ、又、立向き溶接の採用により、溶接速度を速くすることができて溶接能率を向上させることができると共に、溶け込みを大きくすることができて溶接欠陥を発生しにくくすることができる。
(2) I開先内の溶接を中央部から板幅方向へ向けて交互に行うことにより、I開先の中央部から板幅方向両端へ向けて交互に溶着金属を積層することができて、厚板材の溶接角変形や収縮を極めて低く抑えることができる。
(3) 2台の溶接トーチを併用してI開先内の中央部から両端へ向けて同時に溶接作業を進めるようにすることによって、作業効率を大幅に向上させることができる。
(4) 厚板材と同材質の仕切り板を用いることによって、仕切り板の撤去作業を不要とすることができ、より能率的に作業を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示すもので、(イ)(ロ)(ハ)はそれぞれ作業手順を示す概要図である。
【図2】図1(イ)のA−A方向矢視に相当する拡大平面図である。
【図3】溶接トーチを拡大して示すもので、(イ)は概略切断側面図、(ロ)は概略正面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示すもので、(イ)(ロ)はそれぞれ作業手順を示す概要図である。
【図5】仕切り板の他の例を示す平面図である。
【図6】本発明の更に他の実施の形態を示す概要図である。
【図7】開先溶接法の一例を示す概要図である。
【符号の説明】
1 厚板材
2 溶接トーチ
3 I開先
6 仕切り板
13 溶着金属
15 仕切り板
16 当て金
Claims (4)
- 2枚の厚板材の突き合わせ面部にI開先を形成し、該I開先内の板幅方向の中央部に、板厚方向に沿うよう銅板製の仕切り板を配置し、上記I開先内に挿入した薄型の溶接トーチにより、上記仕切り板の部分から上進又は下進として溶接し、溶着金属を板幅方向両端へ向けて積層させるようにすることを特徴とする厚板材の接合方法。
- 溶接トーチによる溶接を、仕切り板の位置を挟んで交互に行うようにする請求項1記載の厚板材の接合方法。
- 2枚の厚板材の突き合わせ面部にI開先を形成し、該I開先内の板幅方向の中央部に、板厚方向に沿うよう銅板製の仕切り板を配置し、上記I開先内に、2台の薄型の溶接トーチを、上記仕切り板を挟んで対向するように挿入して、該2台の溶接トーチの併用により、上記仕切り板の部分から立向き上進又は下進として溶接し、溶着金属を板幅方向両端へ向けて積層させるようにすることを特徴とする厚板材の接合方法。
- 銅板製の仕切り板を用いることに代えて、厚板材と同材質の仕切り板を用いるようにする請求項1、2又は3記載の厚板材の接合方法。
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