JP3942165B2 - 渦電流探傷プローブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、渦電流探傷プローブと渦電流探傷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6と図7を参照して従来の渦電流探傷プローブを説明する。なお両図に共通の部分は、同じ符号を使用している。
図6(a)は、パンケーキ状の励磁コイルEと縦置き型の検出コイルDからなる渦電流探傷プローブの斜視図である。
渦電流探傷プローブは、励磁コイルEのコイル面を検査体T側に向けて、所定の間隔をおいて検査体Tに上置し、励磁コイルEに励磁電流を流すと、検査体Tには、図6(b)のように渦電流I1が発生する。その際、検査体TにきずFがあると、そのきずFの両側に逆方向に流れる電流I2が発生する。
【0003】
図6(a)の渦電流探傷プローブは、検出コイルDが、図6(b)のようにきずFの長手方向に並行する位置にあるとき、即ち検出コイルDがきずFに対して角度0度の位置にあるとき、電流I2によって検出コイルDに電圧が誘起し、いわゆるきず信号が発生する。その際、きずFの長さが、図6(c)のように励磁コイルEの内径よりも小さい場合には、検出コイルDに誘起するきず信号は、小さくなり、きずFの探傷に支障が生じる。
【0004】
次に図7により、図6(a)の渦電流探傷プローブの特性を説明する。
図7は、検査体TのきずFの長さが異なる場合のきず信号パターンを示し、横軸は、励磁電流と同相のきず信号成分を、縦軸は、位相が90度異なるきず信号成分を示す。
【0005】
図7のきず信号パターンの測定には、内径9mmの励磁コイルEと160×160×1.5mmの黄銅板の検査体Tを用いた。その黄銅板には、幅0.5mm、深さ板厚の80%、長さ5mm、10mm、15mmのきずFを形成してある。励磁コイルEには、20kHzの励磁電流を流した。
【0006】
検出コイルDに発生するきず信号は、きずFの長さが短くなるほど小さくなり、きずFの長さが励磁コイルEの内径よりも小さくなると、きずFの探傷は難しくなる。したがって短いきずを探傷するには、励磁コイルEの内径を小さくしなければならないが、図6(a)の渦電流探傷プローブは、励磁コイルEの内側に検出コイルDを配置しているから、励磁コイルEの内径は、あまり小さくすることができない。そのため図6(a)の渦電流探傷プローブは、短いきずを探傷できない欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、図6(a)の渦電流探傷プローブの前記問題点に鑑み、図6(a)の渦電流探傷プローブよりも短いきずの探傷が可能な渦電流探傷プローブとその渦電流探傷プローブを用いた渦電流探傷装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願の発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の渦電流探傷プローブは、コイル面が検査面に垂直な励磁コイルとコイル面が検査面に垂直な検出コイルからなり、励磁コイルと検出コイルは、両コイルのコイル面がほぼ直交するように配置してあり、検出コイルは、励磁コイルの両側に別々のものを配置してあることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1〜図5を参照して、本願発明の実施の形態に係る渦電流探傷プローブを説明する。なお各図に共通の部分は、同じ符号を使用している。
【0010】
図1は、本願発明の実施形態に係る渦電流探傷プローブの構成を示す。
図1(a)は、渦電流探傷プローブの平面図、図1(b)は、図1(a)のX1−X1部分の矢印方向の断面図、図1(c)は、図1(a)のX2−X2部分の矢印方向の断面図である。
図1において、Eは、コイル面が検査面に垂直な、いわゆる縦置き型の矩形状の励磁コイル、D1,D2は、コイル面が検査面に垂直な、いわゆる縦置き型の矩形状の検出コイルである。
【0011】
検出コイルD1、D2は、励磁コイルEの両側に、検出コイルD1、D2のコイル面が励磁コイルEのコイル面とほぼ直交し、励磁コイルEの中央に励磁コイルEのコイル軸とほぼ平行するように配置してある。
なお検出コイルD1、D2は、いずれか一方のみでもよい。また検出コイルD1、D2のコイル面は、励磁コイルEのコイル面と交差するように配置すればよい。
【0012】
図2は、図1の渦電流探傷プローブにより検査体に発生する渦電流の概略を示す。
励磁コイルEに励磁電流を流すと、図2(a)のように、検査体に励磁コイルEの巻線の方向に流れる渦電流Iが発生する。検査体にきずがないときは、検査体に発生する渦電流はIのみであるが、検査体にきずFがあるときは、図2(b)のようにきずFの両側を逆方向に流れる渦電流iも発生する。検出コイルD1、D2には、渦電流iにより電圧が誘起する。このように、検査体にきずのないときは、検出コイルD1、D2に電圧を誘起しないが、検査体にきずがあるときは、検出コイルD1、D2に電圧を誘起する。この誘起電圧により検査体のきずを探傷することができる。
検出コイルD1,D2は、両コイルの誘起電圧を重畳するように接続し、いわゆるきず信号として取り出す。
【0013】
次に図3、図4、図5により図1の渦電流探傷プローブの諸特性について説明する。
ここで諸特性の測定には、長さ(幅)19mm、高さ19mm、巻線断面2×2mmの励磁コイルEと、長さ(幅)7mm、高さ9mm、巻線断面1×1mmの検出コイルD1,D2からなる渦電流探傷プローブを用いた。また検査体は、160×160×1.5mmの黄銅板を用い、その黄銅板に幅0.5mm、深さ板厚の20%、40%,60%,80%、長さ5mm、10mm、15mmのきずFを形成したものを用いた。励磁コイルEには、20kHzの励磁電流を流した。
【0014】
図3は、きずの長さが異なる場合のきず信号パターンを示し、きずの深さが、板厚の80%、きずの長さが5mm、10mm、15mの場合である。
図3において、横軸は、励磁電流と同相のきず信号成分を、縦軸は、位相が90度異なるきず信号成分を示す。
きず信号パターンは、きずの長さが5mm、10mm、15mmのいずれの場合も、ほぼ同じになる。即ち図1の渦電流探傷プローブは、きずの長さの影響が小さいことが分かる。
【0015】
また図1の渦電流探傷プローブは、励磁コイルEの厚み(図1(a)の検出コイルD1と検出コイルD2の間の厚み)を薄くすることによりさらに短いきずの探傷も可能になる。本実施の形態に用いた励磁コイルEは、巻線断面が2×2mmであるから、励磁コイルEの厚みは、2mmになる。このサイズに対応して従来のパンケーキ状の励磁コイルを形成するには、パンケーキ状コイルの内径を2mmにし、その内側に検出コイルを配置しなければならないが、製造は困難である。
【0016】
図4は、渦電流探傷プローブのリフトオフ雑音(渦電流探傷プローブと検査体の距離の変化に起因する雑音)ときず信号を示し、きずの長さは、15mm、きずの深さは、板厚の0%,20%,40%,60%,80%の場合である。
リフトオフ雑音は、きず信号に対して非常に小さく、S/Nが高くなる。即ち図1の渦電流探傷プローブは、リフトオフ雑の影響をほとんど受けることがないことが分かる。
【0017】
図5は、検査体の表側と裏側のきずについて、きずの深さが異なる場合のきず信号パターンを示し、きずの長さは、15mm、きずの深さは、板厚の40%、60%、80%の場合である。
図5(a)は、検査体の表側のきずの信号パターンを、図5(b)は、検査体の裏側のきずの信号パターンを示す。
きず信号パターンは、表側のきずの場合も裏側のきずの場合も、きずの深さの違いにより大きく異なっている。即ち図1の渦電流探傷プローブは、表側のきずの場合も裏側のきずの場合も、きずの深さに対応したきず信号を発生するから、検査体の表側と裏側のきずの深さを評価することができる。
【0018】
以上図3、図4、図5の特性から、図1の渦電流探傷プローブは、きずの長さの影響が小さく、従来の渦電流探傷プローブでは、探傷が困難であった短いきずの探傷も可能であることが分かる。また図1の渦電流探傷プローブは、リフトオフ雑音の影響が小さく、検査体の表側と裏側のきずの深さを的確に評価できることが分かる。
【0019】
前記実施の形態の励磁コイルおよび検出コイルは、矩形状のコイルについて説明したが、三角形等の多角形のコイルであってもよい。
【0020】
前記各実施の形態は、渦電流探傷プローブについて説明したが、その渦電流探傷プローブを用いて渦電流探傷装置を構成し、検査体のきずの評価を行うことができる。即ち渦電流探傷プローブの検出コイルの出力は、きず信号検出手段へ供給され、検出コイルのきず信号が検出される。検出されたきず信号は、きず信号評価手段へ供給される。きず信号評価手段は、その検出された検出コイルのきず信号に基づいて、きずを的確に検知し、きずの深さ等を評価して、表示或いは記録する。
【0021】
【発明の効果】
本願発明の渦電流探傷プローブは、従来の渦電流探傷プローブに比べて検査体のきずの長さの影響が小さく、従来の渦電流探傷プローブでは、探傷が困難であった短いきずの探傷も可能になった。
【0022】
また従来の励磁コイルの内側に検出コイルを配置する形式の渦電流探傷プローブは、短いきずの探傷には、励磁コイルの内径を小さくして、励磁コイルを小型にしなければならないが、構造上小型化には限度がある。これに対して、本願発明の渦電流探傷プローブは、励磁コイルに縦置き型コイルを用いるから、短いきずの探傷には、励磁コイルを薄くすることによって対応することができ、励磁コイルの長さや高さは、必ずしも変える必要がない。したがって本願発明は、短いきずの探傷に適し、従来の渦電流探傷プローブでは、探傷が困難であった短いきずの探傷も可能な渦電流探傷プローブを容易に製造することができる。
【0023】
本願発明の渦電流探傷プローブは、リフトオフ雑音が小さく、S/Nが高くなる。また本願発明の渦電流探傷プローブは、検査体の表側および裏側のきずも探傷することができ、かつきずの深さも評価できる。
【0024】
本願発明の渦電流探傷装置は、本願発明の渦電流探傷プローブを用いることにより、従来の渦電流探傷装置よりも短いきずを探傷できるから、検査体のきずを的確に検知し、きずの深さ等を的確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態に係る渦電流探傷プローブの平面図と断面図である。
【図2】図1の渦電流探傷プローブによって発生する渦電流を説明する図である。
【図3】図1の渦電流探傷プローブのきずの長さが異なる場合のきず信号パターンを示す図である。
【図4】図1の渦電流探傷プローブのリフト雑音ときず信号を示す図である。
【図5】図1の渦電流探傷プローブのきずの深さが異なる場合のきず信号パターンを示す図である。
【図6】従来の渦電流探傷プローブの斜視図、その渦電流探傷プローブによって発生する渦電流の概略を示す図である。
【図7】従来の渦電流探傷プローブのきずの長さが異なる場合のきず信号パターンを示す図である。
【符号の説明】
D1,D2 検出コイル
E 励磁コイル
F きず
I,i 渦電流
Claims (1)
- コイル面が検査面に垂直な励磁コイルとコイル面が検査面に垂直な検出コイルからなり、励磁コイルと検出コイルは、両コイルのコイル面がほぼ直交するように配置してあり、検出コイルは、励磁コイルの両側に別々のものを配置してあることを特徴とする渦電流探傷プローブ。
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