JP3941679B2 - 赤外線ガス分析計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学工場や製鉄所のガス濃度に関するプロセスモニター、ボイラーや燃焼炉の燃焼ガス分析、大気汚染の監視、自動車排ガス測定などに使用するのに適した赤外線ガス分析計に関し、特にガス分子固有の赤外線吸収効果を利用してガス又は蒸気中にある特定成分の濃度を測定する赤外線ガス分析計に関する。
【0002】
【従来の技術】
基準ガスと試料ガスを試料セルに切り換えて流通させる赤外線ガス分析計が知られている。
図7はそのような赤外線ガス分析計で、本発明者が先に提案したものの流路図である(特許文献1参照。)。試料セル1はガス導入口1aとガス排出口1bを有し、三方弁7を介して試料ガス又は基準ガスがガス導入口1aから試料セル1内に供給され、ガス排出口1bから排出される。試料セル1の一端には赤外光を発する光源5が配設され、試料セル1の他端には試料セル1を透過した赤外光を検出するための検出器2が配設されている。
【0003】
光源5と試料セル1端部の間には赤外光を断続するためのセクタ3が設けられている。セクタ3は遮光部と切欠部とからなり、回転軸を中心に回転して、切欠部が試料セル1の光軸上にあるときに赤外光を試料セル1内に照射し、遮光部が試料セル1光軸上にあるときに試料セル1内への赤外光の照射を遮断するように構成されている。コントローラ6はモータ4を介してセクタ3の回転位置制御を行い、また、ドライバ8を介して三方弁7の駆動制御を行う。
【0004】
検出器2はその内部に試料ガス中の測定対象ガスが封入されており、測定対象ガス固有の周波数の赤外光強度を内部の圧力変化により検出する。そして、検出器2での検出出力は、信号処理回路9で所定の信号処理を受け、試料ガス中の測定ガス濃度が計測される。
【0005】
このような赤外線ガス分析計では、三方弁7を介して試料セル1に供給される基準ガスと試料ガスを得るための前処理装置が三方弁7の試料ガス用ポートと標準ガス用ポートにそれぞれ接続される。それらの前処理装置には、図8に示されるように、それぞれダスト除去のためのフィルタ12a,12b、ガスを吸引するポンプ14a,14b、ガス流量を調整するニードル弁16a,16bのほか、ガスを除湿するためにペルチェ素子を利用した電子クーラ18a,18bが設けられる。
【0006】
基準ガスとしては、基準ガスに含まれる測定対象成分の濃度が測定に影響しない程度である必要があり、大気や、大気を精製器に通して測定対象成分を取り除いたガスが用いられる。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−49797号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
赤外線ガス分析計でSO2やNOを測定する場合、SO2、NOの赤外線吸収波長帯に重なる吸収波長帯をもつ水蒸気による干渉誤差がある。図8に示されたような前処理装置では、ガス中の水蒸気を電子クーラで取り除くが、電子クーラで発生するドレンの凍結の問題から電子クーラの温度は低くても1℃程度が限界である。しかし、1℃では、常圧で約7000ppmの水蒸気がガスに含まれる。
【0009】
そのため、SO2やNO測定では検出器信号がガス中の水蒸気影響を受けるため、基準ガスと試料ガスで使われるそれぞれの電子クーラの温度を同一とし、試料セルヘ切り換えて導入される基準ガスと試料ガスに含まれる水蒸気量を等しくして水蒸気誤差を除いている。
【0010】
しかしながら、2つの電子クーラの温度を長期間にわたって全く同一に制御することは難しく、また、電子クーラの使用環境温度が上昇すると、ペルチェ素子の冷却能力の限界から温度制御ができなくなり、2つの電子クーラの温度のずれにより、測定の誤差が大きくなる問題点があった。その対策としては、2つの電子クーラの温度を全く同一にするために、同じ冷却ブロックに2つの流路を設置する、所謂2系列の電子クーラが用いられることもある。
【0011】
しかし、2つの電子クーラの温度を全く同一にできたとしても、基準ガスである大気が乾燥していてガス露点が電子クーラ温度より低い場合には、切り換えて試料セルに導入される基準ガスと試料ガスの水蒸気量が異なることになり、測定の誤差が大きくなる問題点があった。
【0012】
本発明は、基準ガスと試料ガスの水蒸気量が異なることに起因する誤差をなくすことのできる赤外線ガス分析装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、含有する水蒸気量が互いに異なる基準ガスと試料ガスを測定対象とする赤外線ガス分析計であって、基準ガスと試料ガスの供給を切り換える切換弁と試料セルの間に、ガスに接する状態で水分を保持することができ、両ガスの露点の間の一定の温度に設定されて、一方のガスを除湿し他方のガスを加湿して両ガスの水分量を等しくする共通の冷却器を設置して、基準ガスと試料ガスがその共通の冷却器を通るように流路を構成することで、試料セルに交互に導入される基準ガスと試料ガスに含まれる水蒸気量を等しくする。
【0014】
すなわち、本発明の赤外線ガス分析計は、基準ガスと試料ガスを選択的に試料セルに供給する切換弁と、前記切換弁から試料セルヘガスが導入される途中で両ガス中の水蒸気量を等しくする共通の冷却器と、前記試料セルに赤外光を照射する光源と、前記光源からの赤外光を断続する断続手段と、前記試料セルを透過した赤外光を検出する検出器と、前記切換弁の切換え制御と前記断続手段の断続制御とを行うコントローラと、基準ガスと試料ガスを透過したそれぞれの赤外光の前記検出器における検出値に基づいて試料ガス中の測定ガス濃度を求める信号処理手段とを備えている。
【0015】
【作用】
基準ガスと試料ガスが水蒸気量を等しくする共通の冷却器を通るため、長期的に安定で、かつ冷却器の使用環境温度が高くなって温度制御が精度よくできなくても、両ガスの水蒸気量は常に等しいため、水蒸気誤差を排除することができる。
【0016】
基準ガスの露点が冷却器温度より低くなり、一方、試料ガスが燃焼排ガスのように露点が冷却器温度より高い場合、試料ガスが冷却器で除湿された際に結露したドレン水が冷却器内の流路に付着し、基準ガスが冷却器を通過する際にそのドレン水で加湿されるため、水蒸気誤差を排除することができる。基準ガスも試料ガスも、冷却器内の温度での飽和水蒸気量を含んで冷却器から出てくるからである。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は一実施例の赤外線分析計の流路図であり、図7と同一部分には同一の符号を使用する。
試料セル1はガス導入口1aとガス排出口1bを有し、切換弁である三方弁7を介して試料ガス又は基準ガスがガス導入口1aから試料セル1内に供給され、ガス排出口1bから排出される。
【0018】
この実施例では、三方弁7と試料セル1の間の流路に、ガス中の水蒸気を冷却除去する共通の冷却器として、ペルチェ素子を利用した電子クーラ10を設置しており、三方弁7から供給される試料ガスと基準ガスは、ともにこの電子クーラ10を経由して試料セル1へ導かれる。
【0019】
電子クーラ10が三方弁7と試料セル1の間の流路に配置されたことにより、三方弁7に基準ガスと試料ガスを供給する前処理装置には冷却器は不要になる。すなわち、試料ガスと基準ガスをそれぞれ供給するために三方弁7の試料ガス用ポートと標準ガス用ポートにそれぞれ接続される前処理装置は、図2に示されるように、それぞれダスト除去のためのフィルタ12a,12b、ガスを吸引するポンプ14a,14b及びガス流量を調整するニードル弁16a,16bだけを含んだものとなり、ガスを除湿するための冷却器は省略される。
【0020】
試料セル1の一端には赤外光を発する光源5が、また、試料セル1の他端には試料セル1を透過した赤外光を検出するための検出器2が配設されている。
【0021】
光源5と試料セル1端部の間には赤外光を断続するためのセクタ3が設けられている。このセクタ3は、図3に示されるように、遮光部3aと切欠部3bとからなり、セクタ回転軸3cを中心としてセクタ3が回転するよう構成されている。1aは試料セル1の断面を表わしている。セクタ3が回転して切欠部3bが試料セル1の光軸上にあるときに赤外光を試料セル1内に照射し、遮光部3aが試料セル1の光軸上にあるときに試料セル1内への赤外光の照射を遮断する。
【0022】
コントローラ6は、モータ4を介してセクタ3の回転位置制御を行い、また、ドライバ8を介して三方弁7の駆動制御を行う。
【0023】
検出器2は、その内部に試料ガス中の測定対象ガスが封入されており、測定対象ガス固有の周波数の赤外光強度を内部の圧力変化により検出する。そして、検出器2での検出出力は、信号処理回路9で所定の信号処理を受け、試料ガス中の測定ガス濃度が計測される。
【0024】
図4は信号処理回路9の一実施例を示したものである。比較器9bは予め決められた所定電圧Vrと基準ガスを透過した赤外光の検出出力である比較信号との差に比例した信号を出力し、増幅器9aはかかる比較器9bの出力によりゲインが調整されるよう構成されている。このため、増幅器9aのゲインは、基準ガスの増幅された後の出力が一定値Vrに保持されるように調整されることとなり、この試料ガスの検出出力である測定信号がここでゲイン倍されることによって、基準ガスとの出力比が求められることとなる。
【0025】
そして、増幅器9aの出力は、試料ガス又は基準ガスの供給状態に応じてコントローラ6によって引算器9cの測定入力又は比較入力に適宜切り換えられ、引算器9cは両者の差をとり出力する。ここで、検出器2の比較信号をR,測定信号をMとすると、増幅器9aの増幅率は、比較信号Rを一定値VrにするようVr/Rとなるため、引算器9cの出力Vは、
V=(Vr/R)・(R−M)
=Vr(1−M/R)
となり、測定信号Mと比較信号Rとの比に応じた出力を得ることができる。
【0026】
このように、試料ガス、基準ガスを透過した赤外光を別々に検出し、両者の検出出力比を求めるよう構成したため、光源の印加電圧や周囲温度或いは光源自体の劣化等による光量変化、試料セルの透過窓やセル内の汚れ、さらに検出器の感度変化があっても、検出精度が低下するといった問題が解消できる。
【0027】
次に、コントローラ6の動作を図5のフローチャートに基づいて説明する。まず、モータ4を介してセクタ3を回転させ赤外光を遮断した状態で(ステップS1)、一つ前に供給したガスとは異なるガスを供給するようにドライバ8を介して三方弁7を切り換える(ステップS2,S3,S4)。そして、供給されたガスが前回供給されたガスを完全に置換して試料セル1に充填されるまでの時間を待って(ステップS5)、再びモータ4を介してセクタ3を回転させ赤外光を試料セル1内に照射する(ステップS6)。そして、検出器2において赤外光が検出されるための時間を待って、再度モータ4を介してセクタ3を回転させ赤外光を遮断し、上記ステップS1〜S7の動作を繰り返す。
【0028】
図6は、以上のようにコントローラ6が動作したときのセクタ3の開閉動作と、試料セル1内の試料ガスの充填状態を示すタイミングチャートである。この図では、試料セル1の内径を8mm、長さを50mm、内容積2.51cm3、ガス流量1リットル/minとし、0.5秒毎に三方弁7を切り換えた場合の例が示されている。かかる場合、ガスが完全に入れ換わる時間は0.15秒となり、試料セル内の試料ガスの状態は図6の上図に示されるようになる。ここで、試料ガスが存在しない部分は基準ガスが充填されていることを示している。
【0029】
コントローラ6によりセクタ3が駆動されるタイミングは、図6下図に示されているように、三方弁7を切り換えてからセクタ3を駆動し赤外光を試料セル1に照射するまでの時間を、ガスが完全に置換されるまでの時間の約2倍の0.3秒程度とすれば、ガスが完全に入れ替わった状態で赤外光が入射されるため、より精度の高い測定が可能となると共に、ガスの流量が0.5リットル/min程度に下がった場合であっても、測定精度に影響を与えることはない。
【0030】
このように、試料セル1内のガスが完全に置換される時間を予め求めておき、三方弁7を切り換えてからその時間を待って或いはさらに余裕を持たせてセクタ3を駆動し赤外光を試料セル1に照射するようにすれば、ガスが置換される際の流量変化による検出精度への影響を削減することができる。
【0031】
なお、以上の実施例では、セクタ3を回転駆動することによって、赤外光を断続的に試料セル1に照射するよう構成したが、セクタを設けるのに替えて光源への電力供給を断続することによって赤外光の照射を断続するようにしてもよい。
【0032】
また、上述した実施例では、1種類の試料ガスを分析する場合を示したが、複数種類の試料ガスを分析することも可能である。2種類の試料ガスを分析する場合の例も先に引用した特許文献1に記載されている。本発明はそのような複数種類の試料ガスを分析するように構成された赤外線ガス分析計においても、基準ガスと複数種類の試料ガスとを選択的に試料セルに供給する切換弁と試料セルとの間の流路に、全てのガスが共通に通過するように1つの水蒸気冷却除去用冷却器を配置することによって、同様に適用することができる。
【0033】
実施例では、ガス中の水蒸気を冷却除去する冷却器として、ペルチェ素子を利用した電子クーラを使用しているが、冷却器は電子クーラに限らず、ガスの断熱膨張による冷却を利用したガス冷却器など、ガスを連続的に冷却できる機能を持ったものであれば本発明の冷却器として使用することができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の赤外線ガス分析計では、基準ガスと試料ガスの供給を切り換える切換弁と試料セルの間に両ガスの水蒸気量を等しくする共通の冷却器を設置して、基準ガスと試料ガスがその共通の冷却器を通るように流路を構成したので、長期的で、かつ冷却器の使用環境温度が高い場合でも、ガス中の水蒸気による干渉誤差を受けずに測定できる。
基準ガスが冷却器温度より低い露点に乾燥している場合でも、水蒸気による干渉誤差を受けずに測定できる。
また、従来のように切換弁に試料ガスと基準ガスをそれぞれ供給する前処理装置電子に冷却器を設けた場合には、ガスの種類の数だけの冷却器が必要であったが、本発明では冷却器は1台でよいため、装置を小型で安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例の赤外線分析計を示す流路図である。
【図2】同実施例において供給されるガスの前処理装置を示す流路図である。
【図3】同実施例におけるセクタを示す平面図である。
【図4】同実施例における信号処理回路を示す回路図である。
【図5】同実施例の動作を示すフローチャート図である。
【図6】同実施例の動作を示すタイミングチャート図である。
【図7】従来の赤外線分析計を示す流路図である。
【図8】同従来例において供給されるガスの前処理装置を示す流路図である。
【符号の説明】
1 試料セル
1a ガス導入口
1b ガス排出口
2 検出器
3 セクタ
5 光源
6 コントローラ
7 三方弁
8 ドライバ
10 電子クーラ
Claims (3)
- 含有する水蒸気量が互いに異なる基準ガスと試料ガスを測定対象とする赤外線ガス分析計であって、
基準ガスと試料ガスを選択的に試料セルに供給する切換弁と、
前記切換弁から試料セルヘガスが導入される途中に配置され、ガスに接する状態で水分を保持することができ、両ガスの露点の間の一定の温度に設定されて、一方のガスを除湿し他方のガスを加湿して両ガスの水蒸気を等しくする共通の冷却器と、
前記試料セルに赤外光を照射する光源と、
前記光源からの赤外光を断続する断続手段と、
前記試料セルを透過した赤外光を検出する検出器と、
前記切換弁の切換え制御と前記断続手段の断続制御とを行うコントローラと、
基準ガスと試料ガスを透過したそれぞれの赤外光の前記検出器における検出値に基づいて試料ガス中の測定ガス濃度を求める信号処理手段とを備えたことを特徴とする赤外線ガス分析計。 - 前記コントローラは、基準ガス又は試料ガスを試料セルに供給して試料セル内が基準ガス又は試料ガスに完全に置換された後、前記光源からの赤外光が前記試料セルに照射されるように前記断続手段を制御するものである請求項1に記載の赤外線ガス分析計。
- 前記信号処理手段は、基準ガスと試料ガスを透過したそれぞれの赤外光の前記検出器における検出値の比に基づいて測定ガス濃度を求める処理を行うものである請求項1又は2に記載の赤外線ガス分析計。
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JP2002345622A Expired - Lifetime JP3941679B2 (ja) | 2002-11-28 | 2002-11-28 | 赤外線ガス分析計 |
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2002
- 2002-11-28 JP JP2002345622A patent/JP3941679B2/ja not_active Expired - Lifetime
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