JP3938831B2 - 太陽熱駆動冷凍システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽熱を熱源として、冷凍負荷を冷却するための太陽熱駆動冷凍システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の太陽熱駆動冷凍システム(例えば特開平11-281191号)においては、図1に示す如く、ヒートポンプ装置(1)に、高温側切換え装置(2)を介して集熱器(4)と空水冷型熱交換器(6)とが切り換え可能に接続されると共に、低温側切換え装置(3)を介して空水冷型熱交換器(5)と冷凍庫(7)とが切り換え可能に接続されている。
又、日射量の少ない時間帯や夜間にも冷凍庫(7)を一定温度以下に保つために、冷凍庫(7)には補助冷凍機(9)が配備されている。
【0003】
ヒートポンプ装置(1)は、第1ヒートポンプP1及び第2ヒートポンプP2を併設して構成されている。第1ヒートポンプP1は、水素平衡圧力の低い水素吸蔵合金MH1を内蔵した高温側第1反応容器(11)と水素平衡圧力の高い水素吸蔵合金MH2を内蔵した低温側第1反応容器(12)とを連結管(17)を介して連結してなり、連結管(17)にはバルブ(15)と流量計(81)とが介在している。又、第2ヒートポンプP2は、水素平衡圧力の低い水素吸蔵合金MH1を内蔵した高温側第2反応容器(13)と水素平衡圧力の高い水素吸蔵合金MH2を内蔵した低温側第2反応容器(14)とを連結管(18)を介して連結してなり、連結管(18)にはバルブ(16)と流量計(82)とが介在している。
【0004】
高温側切換え装置(2)は、蓄熱槽(9)から伸びる熱媒供給管(41)及び熱媒戻り管(42)を高温側第1反応容器(11)と高温側第2反応容器(13)の何れか一方に接続すると共に、空水冷型熱交換器(6)から伸びる熱媒供給管(61)及び熱媒戻り管(62)を他方の反応容器に接続するための配管系と、該配管系に介在する複数の3方弁とから構成される。
又、低温側切換え装置(3)は、空水冷型熱交換器(5)から伸びる冷媒供給管(51)及び冷媒戻り管(52)を低温側第1反応容器(12)と低温側第2反応容器(14)の何れか一方に接続すると共に、冷凍庫(7)から伸びる冷媒戻り管(71)及び冷媒供給管(72)を他方の反応容器に接続するための配管系と、該配管系に介在する複数の4方弁とから構成される。
【0005】
集熱器(4)は、ヒートパイプ構造を有する複数本の集熱管を併設して構成され、約140℃の高温水(熱媒)の供給が可能である。
集熱器(4)から伸びる熱媒供給管(41)及び熱媒戻り管(42)は直接に高温側切換え装置(2)と接続されており、日射量の変化に応じて、例えば100℃〜160℃の熱媒が、集熱器(4)から高温側切換え装置(2)を経てヒートポンプ装置(1)へ供給される。
【0006】
ヒートポンプ装置(1)においては、集熱器(4)が熱源、空水冷型熱交換器(5)及び空水冷型熱交換器(6)が放熱手段、冷凍庫(7)が冷凍負荷となって、図6に示す冷凍サイクル(▲4▼→▲1▼→▲2▼→▲3▼→▲4▼)が構成される。
例えば、第1ヒートポンプP1においては、先ず、高温側第1反応容器(11)内の水素吸蔵合金MH1が加熱されることによって、水素が放出し(▲4▼→▲1▼)、放出された水素は低温側第1反応容器(12)へ送り込まれて、水素吸蔵合金MH2に吸収される(▲1▼→▲2▼:再生モード)。ここで、水素吸蔵合金MH2が水素を吸収することによって発生する熱は、空水冷型熱交換器(5)から放熱される。
【0007】
次に、低温側切換え装置(3)の切換えによって、低温側第1反応容器(12)には冷凍庫(7)が接続される。この状態で、低温側第1反応容器(12)では、水素吸蔵合金MH2に吸収されている水素が放出し(▲2▼→▲3▼)、これによって、冷凍庫(7)から冷媒戻り管(71)を経て供給される冷媒が冷却され、低温の冷媒が冷媒供給管(72)を経て冷凍庫(7)へ送り込まれる。
又、高温側切換え装置(2)の切換えによって、高温側第1反応容器(11)には空水冷型熱交換器(6)が接続される。この状態で、低温側第1反応容器(12)から放出されるガスは高温側第1反応容器(11)へ送り込まれ、水素吸蔵合金MH1に吸収される(▲3▼→▲4▼:冷熱発生モード)。ここで、水素吸蔵合金MH1が水素を吸収することによって発生する熱は、空水冷型熱交換器(6)から放熱される。
【0008】
尚、図1に示すヒートポンプ装置(1)においては、高温側切換え装置(2)、低温側切換え装置(3)及びヒートポンプ装置(1)のバルブ(15)(16)の切り換えが、流量計(81)(82)によって計測される単位時間当りの水素ガス流量の積算値に基づいて制御され、これによって、再生モードから冷熱発生モードへの切り換えが行なわれる。
【0009】
上述の冷凍サイクルを第1ヒートポンプP1と第2ヒートポンプP2で位相を180度ずらして繰り返し行なわしめることにより、冷凍庫(7)には連続的に低温の冷媒が供給され、冷凍庫(7)内は、例えば零下20℃の低温に保たれるのである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図1に示す太陽熱駆動冷凍システムにおいては、日射量が多く、外気温度も高い時間帯には、充分な太陽熱(入熱)が得られるので、ヒートポンプ装置(1)の運転によって充分な冷凍出力が得られるが、それ以外の時間帯では冷凍出力が不足するため、空水冷型熱交換器(5)(6)に配備されたファンを高速回転させて、強風運転を行なうことにより、冷凍出力を出来るだけ増大させると共に、冷凍出力の不足分を補助冷凍機(9)によって補うことが行なわれている。
【0011】
しかしながら、充分な太陽熱が得られない時間帯では、空水冷型熱交換器(5)(6)の強風運転と補助冷凍機(9)の運転のために大きな電力が必要となる問題があった。
そこで本発明の目的は、充分な太陽熱が得られない時間帯において消費電力の節減を図ることが出来る太陽熱駆動冷凍システムを提供することである。
【0012】
【課題を解決する為の手段】
本発明に係る太陽熱駆動冷凍システムにおいては、ヒートポンプ装置(1)に、高温側切換え装置(2)を介して集熱器(4)と空水冷型熱交換器(6)とが切り換え可能に接続されると共に、低温側切換え装置(3)を介して空水冷型熱交換器(5)と冷凍庫(7)とが切り換え可能に接続され、冷凍庫(7)には補助冷凍機(9)が配備されて、日射量の少ない期間の冷凍能力を補うことが可能となっている。
【0013】
ヒートポンプ装置(1)は、第1及び第2のヒートポンプを併設して構成され、第1ヒートポンプは、水素平衡圧力の低い水素吸蔵合金MH1を内蔵した高温側第1反応容器(11)と水素平衡圧力の高い水素吸蔵合金MH2を内蔵した低温側第1反応容器(12)とを互いに連結してなり、第2ヒートポンプは、水素平衡圧力の低い水素吸蔵合金MH1を内蔵した高温側第2反応容器(13)と水素平衡圧力の高い水素吸蔵合金MH2を内蔵した低温側第2反応容器(14)とを互いに連結してなり、夫々、高温側の反応容器から低温側の反応容器へ水素ガスを流す再生モードと、低温側の反応容器から高温側の反応容器へ水素ガスを流す冷熱発生モードの設定が可能である。
【0014】
前記高温側切換え装置(2)、低温側切換え装置(3)、空水冷型熱交換器(5)(6)及び補助冷凍機(9)は制御回路(8)によって制御されている。該制御回路(8)は、
再生モードに設定すべきヒートポンプの高温側の反応容器から低温側の反応容器へ流れる水素ガスの流量の積算値、若しくは、該積算値に相当する物理量を計測するための第1計測手段と、
第1計測手段による計測値が所定値に達したとき、各ヒートポンプを再生モードと冷熱発生モードの間で切り換える第1制御手段と、
第1制御手段によるモード切換えの時間間隔、若しくは該時間間隔に対応する期間の長さを計測するための第2計測手段と、
第2計測手段による計測値が所定の基準時間を越えないときは空水冷型熱交換器(5)(6)を強風運転に設定し、計測値が基準時間を越えるときは空水冷型熱交換器(5)(6)を弱風運転に設定すると共に、空水冷型熱交換器(5)(6)の強風運転に必要な電力と弱風運転に必要な電力の差を補助冷凍機(9)に追加投入する第2制御手段
とを具えている。
【0015】
上記本発明の太陽熱駆動冷凍システムにおいては、集熱器(4)から供給される熱媒は、日射量に応じて温度が変化する状態で、ヒートポンプ装置(1)の一方のヒートポンプへ供給されることになる。これによって、該ヒートポンプの高温側反応容器が加熱され、該容器内の水素吸蔵合金から水素ガスが放出される。この水素ガスは、高温側反応容器から低温側反応容器へ送りこまれ、低温側反応容器内の水素吸蔵合金に吸収される(再生モード)。
【0016】
この過程で、高温側反応容器から低温側反応容器へ移動する水素ガスの流量(単位時間当り)の積算値、若しくは、該積算値に相当する物理量が計測され、該計測値が所定値と比較される。
ここで、所定値としては、所定の冷凍サイクル(図6)における再生プロセス(▲1▼→▲2▼)で移動すべき水素ガスの総量、若しくは該総量に相当する物理量に設定されている。従って、前記計測値が該所定値に達したとき、再生プロセスに必要な水素ガスが高温側反応容器から低温側反応容器へ移動したことになる。そこで、この時点で、該ヒートポンプを再生モードから冷熱発生モードへ切り換えるのである。
この結果、該ヒートポンプの低温側反応容器から水素が放出し、これに伴って低温側反応容器の温度が低下し、冷凍庫(7)へ低温の冷媒が供給される。低温側反応容器から放出される水素ガスは高温側反応容器へ送り込まれ、水素吸蔵合金に吸収されることになる(▲3▼→▲4▼)。
斯くして所定の冷凍サイクル(図6▲1▼〜▲4▼)が構成され、該冷凍サイクルを第1ヒートポンプP1と第2ヒートポンプP2で180度の位相差をもって繰り返し行なわしめることにより、冷凍庫(7)には連続的に低温の冷媒が供給され、冷凍庫(7)の温度は低温に保たれる。
【0017】
尚、高温側の反応容器から低温側の反応容器へ所定量の水素ガスが移動するのに要する時間は、日射量等によって異なり、この結果、各ヒートポンプにおける再生モードの所要時間が変化し、この結果、再生モードと冷熱発生モードの間の切換え時間(系統切り換えの時間間隔)も変化する。例えば一日の日射量の変化を考えると、早朝は日射量が少ないため、モード切換えの時間間隔は長くなるが、その後の日射量の増大に伴って、モード切換え時間は徐々に短くなり、午後から夕刻においては、日照量の減少に伴って、モード切換えの時間間隔は徐々に長くなる。
【0018】
従って、上記本発明の太陽熱駆動冷凍システムにおいては、モード切換えの時間間隔が所定の基準時間を越えないとき、即ち日射量の多いときは空水冷型熱交換器(5)(6)は強風運転に設定され、ヒートポンプ装置(1)の出力が増大される。これに対し、モード切換えの時間間隔が基準時間を越えるとき、即ち日射量の少ないときは空水冷型熱交換器(5)(6)は弱風運転に設定されると共に、空水冷型熱交換器(5)(6)の強風運転に必要な電力と弱風運転に必要な電力の差が、補助冷凍機(9)に追加投入される。
【0019】
ここで、仮に、モード切換えの時間間隔が長いときにも空水冷型熱交換器(5)(6)を強風運転に設定する構成を考えた場合、空水冷型熱交換器(5)(6)の強風運転によって冷凍庫(7)を所定温度以下に保つことは可能であるが、この様に入熱量の少ない状態でのヒートポンプ装置(1)の運転では、空水冷型熱交換器(5)(6)に投入される電力が高い効率で冷凍出力の増大に寄与せず、電力損失が生じることなる。
これに対し、本発明の如く、モード切換えの時間間隔が長いときに空水冷型熱交換器(5)(6)を弱風運転に切り換え、これによって得られる電力減少量を補助冷凍機(9)に追加投入して、より高い出力で補助冷凍機(9)を運転すれば、補助冷凍機(9)に投入される電力は高い効率で冷凍出力の増大に寄与するので、結果として、システム全体の消費電力の節減が図られる。
【0020】
【発明の効果】
本発明に係る太陽熱駆動冷凍システムによれば、充分な太陽熱が得られない時間帯において消費電力の節減を図ることが出来る。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1に示す太陽熱駆動冷凍システムに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
該太陽熱駆動冷凍システムにおいては、図1に示す如く、ヒートポンプ装置(1)に、高温側切換え装置(2)を介して集熱器(4)と空水冷型熱交換器(6)とが切り換え可能に接続されると共に、低温側切換え装置(3)を介して空水冷型熱交換器(5)と冷凍庫(7)とが切り換え可能に接続され、集熱器(4)と高温側切換え装置(2)とは直接に接続されている。
又、日射量の少ない時間帯や夜間にも冷凍庫(7)を一定温度以下に保つために、冷凍庫(7)には補助冷凍機(9)が配備されている。
【0022】
ヒートポンプ装置(1)は、第1ヒートポンプP1及び第2ヒートポンプP2を併設して構成されている。第1ヒートポンプP1は、水素平衡圧力の低い水素吸蔵合金MH1を内蔵した高温側第1反応容器(11)と水素平衡圧力の高い水素吸蔵合金MH2を内蔵した低温側第1反応容器(12)とを連結管(17)を介して連結してなり、連結管(17)にはバルブ(15)と流量計(81)とが介在している。又、第2ヒートポンプP2は、水素平衡圧力の低い水素吸蔵合金MH1を内蔵した高温側第2反応容器(13)と水素平衡圧力の高い水素吸蔵合金MH2を内蔵した低温側第2反応容器(14)とを連結管(18)を介して連結してなり、連結管(18)にはバルブ(16)と流量計(82)とが介在している。
【0023】
高温側切換え装置(2)は、蓄熱槽(9)から伸びる熱媒供給管(41)及び熱媒戻り管(42)を高温側第1反応容器(11)と高温側第2反応容器(13)の何れか一方に接続すると共に、空水冷型熱交換器(6)から伸びる熱媒供給管(61)及び熱媒戻り管(62)を他方の反応容器に接続するための配管系と、該配管系に介在する複数の3方弁とから構成される。
又、低温側切換え装置(3)は、空水冷型熱交換器(5)から伸びる冷媒供給管(51)及び冷媒戻り管(52)を低温側第1反応容器(12)と低温側第2反応容器(14)の何れか一方に接続すると共に、冷凍庫(7)から伸びる冷媒戻り管(71)及び冷媒供給管(72)を他方の反応容器に接続するための配管系と、該配管系に介在する複数の4方弁とから構成される。
【0024】
集熱器(4)は、ヒートパイプ構造を有する複数本の集熱管を併設して構成され、約140℃の高温水(熱媒)の供給が可能である。
集熱器(4)から伸びる熱媒供給管(41)及び熱媒戻り管(42)は直接に高温側切換え装置(2)と接続されており、日射量の変化に応じて、例えば100℃〜160℃の熱媒が、集熱器(4)から高温側切換え装置(2)を経てヒートポンプ装置(1)へ供給される。
【0025】
ヒートポンプ装置(1)が構成する冷凍サイクル(図6に示す▲4▼→▲1▼→▲2▼→▲3▼→▲4▼)は従来(特開平11-281191号)と同様である。
又、高温側切換え装置(2)、低温側切換え装置(3)及びヒートポンプ装置(1)のバルブ(15)(16)の切り換えが、流量計(81)(82)によって計測される単位時間当りの水素ガス流量の積算値に基づいて制御され、これによって、再生モードから冷熱発生モードへの切り換えが行なわれる。
【0026】
即ち、第1ヒートポンプP1の流量計(81)の計測データQ1と、第2ヒートポンプP2の流量計(82)の計測データQ2が、マイクロコンピュータからなる制御回路(8)へ供給され、これらの計測データが夫々積算される。そして、該積算値が所定値を越えたとき、高温側切換え装置(2)、低温側切換え装置(3)及びヒートポンプ装置(1)のバルブ(15)(16)を切り換えて、再生モードのヒートポンプは冷熱発生モードへ、そして、冷熱発生モードのヒートポンプは再生モードへ切り換えるのである。
【0027】
初期状態では、高温側切換え装置(2)の切換え設定によって、ヒートポンプ装置(1)の高温側第1反応容器(11)に集熱器(4)が接続されると共に、高温側第2反応容器(13)に空水冷型熱交換器(6)が接続される一方、低温側切換え装置(3)の切換え設定によって、ヒートポンプ装置(1)の低温側第1反応容器(12)に空水冷型熱交換器(5)が接続されると共に、低温側第2反応容器(14)に冷凍庫(7)が接続されている。
【0028】
この状態で、第1ヒートポンプP1の高温側第1反応容器(11)内の水素吸蔵合金MH1が加熱されることによって、水素が放出し(▲4▼→▲1▼)、放出された水素は低温側第1反応容器(12)へ送り込まれて、水素吸蔵合金MH2に吸収される(▲1▼→▲2▼)。ここで、水素吸蔵合金MH2が水素を吸収することによって発生する熱は、空水冷型熱交換器(5)から放熱される。
そして、高温側第1反応容器(11)から低温側第1反応容器(12)へ移動する水素ガスの流量の積算値が所定値を越えたとき、制御回路(8)から高温側切換え装置(2)及び低温側切換え装置(3)へ供給される制御信号C1、C2によって、これらの装置(2)(3)が切り換えられ、高温側第1反応容器(11)には空水冷型熱交換器(6)が接続されると共に、高温側第2反応容器(13)には集熱器(4)が接続される一方、低温側第1反応容器(12)には冷凍庫(7)が接続されると共に、低温側第2反応容器(14)には空水冷型熱交換器(5)が接続される。
尚、ヒートポンプ装置(1)のバルブ(15)(16)は、高温側切換え装置(2)及び低温側切換え装置(3)の切換え時に、制御回路(8)から供給される制御信号C3によって、一時的に閉じられる。
【0029】
この状態で、低温側第1反応容器(12)では、水素吸蔵合金MH2に吸収されている水素が放出し(▲2▼→▲3▼)、これによって、冷凍庫(7)から冷媒戻り管(71)を経て供給される冷媒が冷却され、低温の冷媒が冷媒供給管(72)を経て冷凍庫(7)へ送り込まれる。
又、低温側第1反応容器(12)から放出される水素ガスは高温側第1反応容器(11)へ送り込まれ、水素吸蔵合金MH1に吸収される(▲3▼→▲4▼)。ここで、水素吸蔵合金MH1が水素を吸収することによって発生する熱は、空水冷型熱交換器(6)から放熱される。
【0030】
上述の冷凍サイクルを第1ヒートポンプP1と第2ヒートポンプP2で位相を180度ずらして繰り返し行なわしめることにより、冷凍庫(7)には連続的に低温の冷媒が供給され、冷凍庫(7)内は、例えば零下20℃の低温に保たれるのである
【0031】
又、図1に示すヒートポンプ装置(1)においては、空水冷型熱交換器(5)(6)及び冷凍庫(7)の運転が制御回路(8)によって制御されている。
即ち、制御回路(8)に内蔵せるタイマーによって、上述のモード切換えの時間間隔(系統切り換えの時間間隔)、即ち再生モードの所要時間が計測されており、該計測値が所定の基準時間(本実施例では30分)を越えないときは空水冷型熱交換器(5)(6)を強風運転に設定し、計測値が基準時間を越えるときは空水冷型熱交換器(5)(6)を弱風運転に設定すると共に、空水冷型熱交換器(5)(6)の強風運転に必要な電力と弱風運転に必要な電力の差を補助冷凍機(9)に追加投入するのである。
【0032】
図2は、制御回路(8)が実行する制御手続きを表わしている。
先ずステップS1にて、高温側切換え装置(2)及び低温側切換え装置(3)の系統を初期設定する。続いて、ステップS2では、タイマーをリセットし、ステップS3では、水素流量の積算値Fを0に設定する。次に、ステップS4にて、流量計から水素流量の計測データQを取り込み、ステップS5にて、水素流量の積算値Fに計測データQを加算して、水素流量を積算する。その後、ステップS6では、水素流量の積算値Fが所定値Fsを越えたかどうかを判断し、ノーの場合はステップS4〜S6を繰り返す。そして、ステップS6にてイエスと判断されたときは、ステップS7に移行して、高温側切換え装置(2)及び低温側切換え装置(3)の系統を切り換える。
【0033】
その後、ステップS8では、タイマーの計時値Tが所定の基準値Ts以上であるか否かを判断し、イエスと判断されたときはステップS9にて空水冷型熱交換器(5)(6)を弱風運転に設定すると共に、強風運転と弱風運転の電力差を補助冷凍機(9)に追加投入し、ノーと判断されたときはステップS10にて強風運転に設定した後、ステップS2に戻る。
尚、前記所定値Fsとしては、図6に示す冷凍サイクルにおける再生プロセス(▲1▼→▲2▼)で移動すべき水素ガスの総量が設定されている。
上記手続きによって、図6の冷凍サイクルが繰り返し実行される。又、モード切換えの時間間隔に応じて、空水冷型熱交換器(5)(6)が弱風運転と強風運転の間で切り換えられることになる。
【0034】
図3は、図1に示す太陽熱駆動冷凍システムの構成において、空水冷型熱交換器(5)(6)を連続的に強風運転に設定する第1制御方式と、空水冷型熱交換器(5)(6)を連続的に弱風運転に設定する第2制御方式と、空水冷型熱交換器(5)(6)を弱風運転に設定すると共に、空水冷型熱交換器(5)(6)の弱風運転に必要な電力と強風運転に必要な電力の差を補助冷凍機(9)に追加投入する第3制御方式を採用した場合の、モード切換えの時間間隔と冷凍出力の関係を、コンピュータシミュレーションによって求めた結果を表わしている。
図3のグラフから明らかなように、モード切換えの時間間隔が30分未満では、第1制御方式(強風運転)による冷凍出力が最も大きいが、モード切換えの時間間隔が30分以上になると、第3制御方式(弱風運転+補助冷凍機)による冷凍出力が最も大きくなっている。従って、モード切換えの時間間隔が30分未満では第1制御方式を設定し、モード切換えの時間間隔が30分以上になると第3制御方式を設定する制御方式を採ることによって、消費電力の節減を図ることが出来ると言える。
【0035】
又、図4は、一日の日射量Sの変化と、上述の第1制御方式(強風運転)を設定した場合と第3制御方式(弱風運転+補助冷凍機)を設定した場合の冷凍出力Pの変化を、コンピュータシミュレーションによって求めた結果を表わしている。
図4のグラフから明らかな様に、午前10時頃にモード切換えの時間間隔が30分以上から30分未満に変化し、これに伴って第1制御方式による冷凍出力と第3制御方式による冷凍出力の大小関係が逆転している。又、午後5時頃にモード切換えの時間間隔が30分未満から30分以上に変化し、これに伴って第1制御方式による冷凍出力と第3制御方式による冷凍出力の大小関係が逆転している。従って、図4に示すカーブで日射量が変化する場合、午前10時頃までは第3制御方式(弱風運転+補助冷凍機)を設定し、その後、午後5時頃まで第1制御方式(強風運転)を設定し、その後、再び第3制御方式(弱風運転+補助冷凍機)を設定することによって、消費電力の節減を図ることが出来ると言える。
【0036】
更に、図5は、再生モードに切り換えられてからの経過時間と、再生過程における再生用(高温側)水素吸蔵合金の水素吸蔵量との関係を、コンピュータシミュレーションによって算出した結果を表わしている。図示の如く、モード切換え後の時間経過に伴って、即ち再生処理の進行に伴って、水素吸蔵合量は減少している。
弱風運転の場合は、再生終了を表わす水素吸蔵量の目標値(0.14wt.%)に達するまでに27分の時間が必要である。一方、強風運転の場合は、17分で再生が終了しているが、水素吸蔵量が0.17wt.%の時点で強風運転から弱風運転に切り換えたとしても、図示の如く、ほぼ同じ17分で再生が終了している。従って、この切り換え運転によって、消費電力の節減を図ることが出来るのである。これは、水素吸蔵量が0.17wt.%以下では、水素流量が極端に少なくなるために、空冷に必要な熱量が減少するためである。
【0037】
そこで、空水冷型熱交換器(5)(6)の制御においては、1サイクル毎に水素流量を計測して、該計測値が所定の基準値(例えば14mol/Hr・kg合金)を下回った時点で、空水冷型熱交換器(5)(6)を強風運転から弱風運転に切り換える制御方式を採用する。これによって、消費電力の節減を図ることが出来る。
【0038】
尚、上記実施例では、高温側の反応容器から低温側の反応容器へ流れる水素ガスの流量の積算値によってモード切換えを行なっているが、高温側反応容器から低温側反応容器へ水素ガスが移動を開始した後における、該高温側反応容器へ供給される熱媒と該高温側反応容器から排出される熱媒の温度差の積算値によって、モード切換えを行なう方式も採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る太陽熱駆動冷凍システムの構成を示す系統図である。
【図2】該システムの制御回路が実行する制御手続きを表わすフローチャートである。
【図3】モード切換えの時間間隔と冷凍出力の関係を表わすグラフである。
【図4】一日の時刻と冷凍出力の関係を表わすグラフである。
【図5】再生開始後の経過時間と水素吸蔵量の関係を表わすグラフである。
【図6】冷凍サイクルを説明する図である。
【符号の説明】
(1) ヒートポンプ装置
(2) 高温側切換え装置
(3) 低温側切換え装置
(4) 集熱器
(5) 空水冷型熱交換器
(6) 空水冷型熱交換器
(7) 冷凍庫
(8) 制御回路
(9) 補助冷凍機
Claims (3)
- 太陽熱を熱源とする太陽熱駆動冷凍システムであって、ヒートポンプ装置(1)に、高温側切換え装置(2)を介して集熱器(4)と空水冷型熱交換器(6)とが切り換え可能に接続されると共に、低温側切換え装置(3)を介して空水冷型熱交換器(5)と冷凍庫(7)とが切り換え可能に接続され、冷凍庫(7)には補助冷凍機(9)が配備されて、日射量の少ない期間の冷凍能力を補うことが可能な太陽熱駆動冷凍システムにおいて、
ヒートポンプ装置(1)は、第1及び第2のヒートポンプを併設して構成され、第1ヒートポンプは、水素平衡圧力の低い水素吸蔵合金MH1を内蔵した高温側第1反応容器(11)と水素平衡圧力の高い水素吸蔵合金MH2を内蔵した低温側第1反応容器(12)とを互いに連結してなり、第2ヒートポンプは、水素平衡圧力の低い水素吸蔵合金MH1を内蔵した高温側第2反応容器(13)と水素平衡圧力の高い水素吸蔵合金MH2を内蔵した低温側第2反応容器(14)とを互いに連結してなり、夫々、高温側の反応容器から低温側の反応容器へ水素ガスを流す再生モードと、低温側の反応容器から高温側の反応容器へ水素ガスを流す冷熱発生モードの設定が可能であり、
前記高温側切換え装置(2)、低温側切換え装置(3)、空水冷型熱交換器(5)(6)及び補助冷凍機(9)は制御回路(8)によって制御され、該制御回路(8)は、
再生モードに設定すべきヒートポンプの高温側の反応容器から低温側の反応容器へ流れる水素ガスの流量の積算値、若しくは、該積算値に相当する物理量を計測するための第1計測手段と、
第1計測手段による計測値が所定値に達したとき、各ヒートポンプを再生モードと冷熱発生モードの間で切り換える第1制御手段と、
第1制御手段によるモード切換えの時間間隔、若しくは該時間間隔に対応する期間の長さを計測するための第2計測手段と、
第2計測手段による計測値が所定の基準時間を越えないときは空水冷型熱交換器(5)(6)を強風運転に設定し、計測値が基準時間を越えるときは空水冷型熱交換器(5)(6)を弱風運転に設定すると共に、空水冷型熱交換器(5)(6)の強風運転に必要な電力と弱風運転に必要な電力の差を補助冷凍機(9)に追加投入する第2制御手段
とを具えていることを特徴とする太陽熱駆動冷凍システム。 - 前記第1計測手段によって計測される物理量は、高温側反応容器から低温側反応容器へ水素ガスが移動を開始した後における、該高温側反応容器へ供給される熱媒と該高温側反応容器から排出される熱媒の温度差の積算値である請求項1に記載の太陽熱駆動冷凍システム。
- 前記第1計測手段によって計測される物理量は、再生モードに設定すべきヒートポンプの低温側反応容器から低温側冷却手段へ戻る冷媒と低温側冷却手段から低温側反応容器へ供給される冷媒の温度差の積算値である請求項1に記載の太陽熱駆動冷凍システム。
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