JP3935092B2 - R−tm−b系永久磁石 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モーターなどの回転機器、アクチュエータおよびクランパー等に使用されるR−TM−B系永久磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
Nd−Fe−B系磁石は、磁気特性が高いことや、主要材料であるFeが豊富で安価であり、しかもNdがSmと比べて資源的に有利で安価であることから、Sm−Co系磁石に代わって希土類磁石の主流となっている。
【0003】
しかしながら、Nd−Fe−B系磁石は、一般の鉄鋼材質やSm−Co系磁石と比較して非常に腐食し易いという欠点を有しているため、従来よりさまざまな表面処理の提案がなされてきた。
【0004】
Nd−Fe−B系磁石の防錆処理としては、例えば、安価で耐食性に優れるNiメッキが広く採用されており、このような防錆処理がなされた磁石は、通常、接着剤で他の部材に固定して使用される。使用される接着剤としては、エポキシ系、嫌気性アクリル系接着剤が多く、特に嫌気性アクリル系接着剤は作業性が良いことから好んで選定されることが多い。
【0005】
ところが、嫌気性アクリル系接着剤は、被着体がNiである場合、反応性が乏しいという欠点がある。そのため、Niを代表とする反応不活性な被着体を接着する場合、一般に、接着面にプライマー(活性剤)処理が施される。しかしながら、このようなプライマー(活性剤)処理は作業性を著しく低下させ、嫌気性アクリル系接着剤の作業性の良さという長所を生かせず、接着工程における作業コストをアップさせる要因となっていた。また、プライマー処理を省いた場合、接着剤を必要な強度が得られるレベルまで反応させるために高い温度および時間を必要とする。このため、加熱による作業性低下、リードタイム長時間化、エネルギーロス、また、着磁した磁石を接着するときの加熱による特性劣化(熱減磁)を引き起こすことがあった。
【0006】
また、嫌気性接着剤に活性な金属として、Fe,Cuが例示できるが、これらはいずれも腐食および変色しやすい金属であるため磁石の防錆被膜として実際に使用されることはなかった。特にCuに関しては、Niメッキの下地として用いられることのみに留まっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであり、その目的は、上記の課題を解決し、Cuが本来持つ嫌気性接着剤に対する高い反応性を維持しつつ、磁石表面のCu層の変色・酸化を抑制したR−TM−B系永久磁石を提供することにある。さらには、接着剤の硬化時における加熱温度の低下または加熱を不要とすることで、工程内のリードタイムの短縮、環境負荷の低減を促進する磁石を提供する事である。また、着磁した磁石を接着する過程で生じる熱減磁を抑制することで、高特性磁石の使用範囲を広げることを可能とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、R(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種類以上からなる)、TM(Feを主成分とする遷移元素)、およびホウ素(B)を主成分として含む焼結磁石体と、この焼結磁石体の最表面に保護膜として形成されたCu層とを有するR−TM−B系永久磁石であって、前記Cu層の表面は、窒素を構造中に2個以上含む窒素環式化合物で処理されてなり、当該処理された磁石表面の上に接着対象物との接着のために塗設される接着剤が嫌気性アクリル系接着剤から構成される。
【0009】
本発明の好ましい態様として、前記窒素環式化合物は、ベンゾトリアゾール系化合物、インダゾール系化合物、およびイミダゾール系化合物から選ばれた少なくとも1種以上として構成される。
【0010】
本発明の好ましい態様として、前記Cu層の表面は、前記窒素環式化合物を含む溶液でぬらして乾燥させて構成される。
【0011】
本発明の好ましい態様として、前記溶液中に含有される前記窒素環式化合物濃度は、総和で0.005〜1.5wt%となるように構成される。
【0012】
本発明の好ましい態様として、前記Cu層は、湿式メッキ法、機械メッキ法、真空成膜法、CVD法、またはPVD法で形成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のR−TM−B系永久磁石について詳細に説明する。
【0014】
本発明のR−TM−B系永久磁石は、R(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種類以上からなる)、TM(Feを主成分とする遷移元素)、およびホウ素(B)を主成分として含む焼結された磁石体と、この磁石体の最表面に形成されたCu層とを有しており、さらに、このCu層の表面は、窒素を構造中に2個以上含む窒素環式化合物でキレート化されている。
【0015】
まず、最初に永久磁石の本体となる磁石体について、説明する。
本発明において磁石体は、R(Yを含む希土類元素の1種類以上)、TM(Feを主成分とする遷移元素)、およびホウ素(B)を含有するものである。
【0016】
R、TM、およびBの含有量は、それぞれ、5.5at%≦R≦30at%、42at%≦TM≦90at%、2at%≦B≦28at%、であることが好ましい。なお、TMは基本的に主成分たるFeとその置換元素、および不可避の不純物とから構成される。
【0017】
本発明における磁石体を粉末冶金法により製造する場合、下記の組成であることが好ましい。
【0018】
上記の希土類元素Rは、Nd、Pr、Ho、Tbのうち少なくとも1種、あるいはさらにLa、Sm、Ce、Gd、Er、Dy、Eu、Pm、Tm、Yb、Yのうち1種以上を含むものが好ましい。なお、Rとして2種類以上の元素を用いる場合、原料としてミッシュメタル等の混合物を用いることができる。
【0019】
Rの含有量は、特に、5.5〜30at%であることが好ましい。5.5at%未満では、結晶構造がα−Feと同一構造の立方晶組織となるため、高い保磁力(Hcj)が得られず、30at%を超えると、Rリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下する。
【0020】
TMの含有量は42〜90at%であることが好ましい。TMが42at%未満であると残留磁束密度(Br)が低下し、90at%を超えると保磁力(Hcj)が低下する。Feの一部をCoで置換することにより、磁気特性を損なうことなく温度特性を改善することができるが、Co置換量がFeの50%を超えると磁気特性が低下するため、Co置換量は50%以下とすることが好ましい。
【0021】
B(ホウ素)の含有量は2〜28at%であることが好ましい。Bが2at%未満であると菱面体組織となり保磁力(Hcj)が不十分であり、28at%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなるため、残留磁束密度(Br)が低下する。
【0022】
また、上記のR、TM、Bの他、不可避不純物としてNi、Si、Al、Cu、Ca、O、C等が全体の3at%以下含有されていてもよい。
【0023】
さらに、Bの一部をC、P、S、Cuのうち1種以上で置換することにより、生産性の向上および低コスト化が実現できる。この場合、置換量は全体の4at%以下であることが好ましい。また、保磁力の向上、生産性の向上、低コスト化のためにAl、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Ni、Si、Hf、Ga、Cu等の1種以上を添加してもよい。この場合、添加量は総計で10at%以下とすることが好ましい。
【0024】
R−TM−B系磁石素体は実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有する。この主相の粒径は0.5〜100μm程度であることが好ましい。さらに通常、体積比で0.5〜50%の非磁性相を含むものである。このような磁石素体は、以下に述べるような粉末冶金法により製造されることが好ましい。
【0025】
まず、所望の組成の合金を鋳造法、ストリップキャスト法等のプロセスで作製する。得られた合金をジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等により、粒径10〜800μm程度に粗粉砕し、次いでジェットミル、アトライター等により0.5〜10μm程度の粒径に微粉砕する。
【0026】
得られた粉末を、好ましくは磁場中にて成型する。この場合、磁場強度は600kA/m以上、成型圧力は0.5〜5ton/cm2程度であることが好ましい。得られた成型体を、900〜1200℃の温度で、0.5〜24hr焼結し、急冷する。なお、焼結雰囲気はArガス等の不活性ガスまたは真空中であることが好ましい。この後、好ましくは不活性ガス雰囲気中または真空中で500〜900℃にて1〜24hrの時効処理を行う。また、焼結処理および時効処理は複数回に分けて行なってもよい。
【0027】
このようにして形成された磁石体(永久磁石)の表面には、いわゆる保護膜としてのCu層が形成される。Cu層の形成方法に関しては特に制限はなく、電気メッキ等の湿式メッキ法や;機械メッキ法や;蒸着、スパッタ、イオンプレーティング等の真空成膜法や;CVD(Chemical Vapor Deposition)法や;PVD(Physical Vapor Deposition)法などいずれの方法を用いてもよい。
【0028】
代表的Cu層形成法の一例として電気メッキ法を取り挙げて、以下詳細に説明する。
【0029】
上記の要領で得られた磁石体にCu層をメッキ形成する前に、下記の要領で所定の前処理をおこなうことが好ましい。すなわち、メッキ処理前に、磁石体の加工面のバリ等を取り除くために、バレル研磨を行う。さらに磁石体の表面の汚れを取り除くため脱脂処理を行い、酸による化学エッチングを施し表面を清浄化する。脱脂処理で用いる脱脂液は、通常の鉄鋼用に使用されているものであればよい。一般には、NaOHを主成分とするものであって、その他の添加剤は特定されるものでない。化学エッチングで使用する酸としては硝酸を用いることが好ましい。一般の鋼材にメッキ処理を施す場合、塩酸、硫酸等の非酸化性の酸が用いられることが多い。
【0030】
しかしながら、本発明のごとく磁石体が希土類元素を含む場合には、塩酸、硫酸等の非酸化性の酸を用いて処理を行うと、酸により発生する水素が永久磁石表面に吸蔵され、吸蔵部位が脆化して多量の粉状未溶解物が発生する。この粉状未溶解物はメッキ後の面粗れ、欠陥および密着不良を引き起こしてしまう。
【0031】
このため、これらの酸は化学エッチング処理液に含有させないことが好ましい。したがって、水素の発生が少ない酸化性の酸である硝酸を用いることが好ましく、さらにアルドン酸またはその塩が同時に含有されているのが表面に目視で確認不可なレベルの凹凸が形成され、被膜の密着力が向上するのでより一層好ましい。
【0032】
なお、このような密着性の向上はアルドン酸またはその塩によって選択的に実現し、他の有機酸、例えばクエン酸、酒石酸等では実現しない。
【0033】
このような前処理による磁石体表面の溶解量は、表面から平均厚みで5μm以上、好ましくは10〜15μmとするのが好適である。5μm未満の溶解量では磁石体表面の加工による変質層、酸化層を完全に除去できないために、保護層が正常に磁石体表面に形成されず、耐食性を悪化させてしまう。前処理に用いられる処理液の硝酸濃度は1規定以下、特に0.5規定以下とするのがより好ましい。硝酸濃度が1規定を超える場合は磁石体の溶解速度が極めて速く、溶解量の制御が困難となり、特にバレル処理のような大量処理では溶解量のバラツキが大きくなり、製品の寸法精度が維持できなくなってしまう。また、硝酸濃度が薄くなり過ぎると溶解量の不足となる。このため、硝酸濃度は前述のごとく1規定以下、特に0.5〜0.05規定とするのが望ましい。また、処理終了時のFeの溶解量は、1〜10g/l程度とされる。
【0034】
さらに、前処理を行った磁石体表面から少量の未溶解物、残留酸成分を完全に除去するため、超音波を使用した洗浄を実施することが好ましい。この超音波洗浄は、磁石体の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ないイオン交換水の中で行うのが好ましい。また、前記超音波洗浄の前後、および前記前処理の各過程で必要に応じて同様な水洗を行ってもよい。
【0035】
上記の前処理を行った磁石体の表面上に電気メッキによりCu層(Cu保護層)を設層する。Cu層を電気メッキにより設層することにより、特に小物形状においては量産性に優れた高性能耐食膜を形成することができる。なお、磁石体表面に直接、電気メッキによりCu層を形成する場合、磁石体表面へのCuの置換析出を防止するため、pH7〜10の弱アルカリ浴中で処理することが好ましい。
【0036】
このときメッキ浴は有機ホスホン酸化合物、EDTA、シアンのいずれかを浴中に含んでいることが好ましい。特に、有機ホスホン酸化合物、EDTAは環境負荷が小さいため好ましい。なお、本発明の効果である嫌気性接着剤に対するCuの優れた反応性は、金属皮膜の最表面にCuが存在すれば下地層の種類にかかわらず発現させることができる。本発明におけるCu層の厚さは、1〜60μm、好ましくは5〜30μmとされる。
【0037】
このようなCu層の表面は、前述したように窒素を構造中に2個以上含む窒素環式化合物でキレート化処理される。
【0038】
窒素を構造中に2個以上含む好適な窒素環式化合物としては、ベンゾトリアゾール系化合物、インダゾール系化合物、およびイミダゾール系化合物が挙げられる。
【0039】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルへキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシー5´−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール等が好適に用いられる。
【0040】
また、インダゾール系化合物としては、インダゾール、1−メチルインダゾール、6−フェニル−1−メチルインダゾール、1−エチルー5−メチルインダゾール、3−フェニルインダゾール、6−ベンジルインダゾール等が好適に用いられる。
【0041】
また、イミダゾール系化合物としては、ベンズイミダゾール、1−メチルイミダゾール、4−エトキシ−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジルー2−メチルイミダゾール等が好適に用いられる。
【0042】
Cuイオンと上記窒素環式化合物のキレートが下記の方法で形成される。
すなわち、磁石体とこの磁石体の全表面を覆うように形成されたCu層との一体化物を、上記窒素環式化合物を希釈した溶液に浸漬又は噴霧等でぬらした後、室温〜120℃の温度条件で乾燥させる。溶液中に含有される窒素環式化合物の総和濃度は、0.005〜1.5wt%、好ましくは、0.05〜0.2wt%とされる。この濃度が0.005wt%未満であると、Cu層の変色抑制効果が十分でなく、また1.5wt%を超えると表面ムラが生じたり、ベタツキがとれないといった不都合が生じることがある。
【0043】
上記窒素環式化合物は、Cuとキレートを形成し、大気中の酸素とCuとの反応を抑制する効果があるので、Cuの変色を低減することができる。上記窒素環式化合物の中では、形成されたキレート化合物が水に不溶になるものが好ましい。特に、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体を用いるのがより好ましい。
【0044】
【実施例】
以下、具体的実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
〔実施例1〕
磁石サンプルの作製
(14.1)Nd−(0.4)Dy−(78.8)Fe−(0.6)Co−(6.1)B組成からなる鋳塊を粗粉砕し、さらに不活性ガスによるジェットミル粉砕で平均粒径約3.5μmの微粉末を得た。これを磁場中で成型し、焼結、熱処理を経て焼結磁石を得た。次いで、これを10mm×5mm、厚さ5mmに切り出し加工した。
【0046】
加工後の磁石は、バレル研磨、脱脂、エッチングの工程を経てCuメッキを行ない、磁石表面に15μmのCu層を形成した。
【0047】
Cu層をメッキにて形成した磁石をベンゾトリアゾール系溶液(城北化学(株)製;商品名 BT−LX)に浸漬後、風乾させて実施例1のサンプルを作製した。なお、使用したベンゾトリアゾール系溶液(エタノールで希釈)の濃度は0.1wt%とした。
【0048】
〔実施例2〕
上記実施例1において、使用したベンゾトリアゾール系溶液の濃度を0.1wt%から0.5wt%に変えた。それ以外は、上記実施例1と同様にして実施例2のサンプルを作製した。
【0049】
〔実施例3〕
上記実施例1において、使用したベンゾトリアゾール系溶液の濃度を0.1wt%から0.01wt%に変えた。それ以外は、上記実施例1と同様にして実施例3のサンプルを作製した。
【0050】
〔実施例4〕
上記実施例1において、使用したベンゾトリアゾール系溶液の濃度を0.1wt%から1.0wt%に変えた。それ以外は、上記実施例1と同様にして実施例4のサンプルを作製した。
【0051】
〔比較例1〕
上記実施例1において、Cu層を形成した後、ベンゾトリアゾール系溶液を用いた浸漬処理を行わなかった。それ以外は、上記実施例1と同様にして比較例1のサンプルを作製した。
【0052】
〔比較例2〕
上記実施例1において、Cu層の形成に代えて、Ni層(厚さ15μm)を電気メッキにより形成した。その後の浸漬処理も行わなかった。それ以外は、上記実施例1と同様にして比較例2のサンプルを作製した。
【0053】
このように作製した各サンプルについて、下記の要領で、(1)接着強度および(2)外観検査の評価をそれぞれ行った。
【0054】
(1)接着強度
各サンプルについて嫌気性アクリル系接着剤(ロックタイト638UV)を0.002g塗布し、この塗布面を、表面が洗浄された鉄板に圧着した後、室温で1,3,5,10min放置し、圧縮せん断試験をおこなった。サンプル数は各10とし、測定値の平均をとり接着強度とした。
なお、圧縮せん断試験はハンドプレスで強度測定を行った。
【0055】
(2)外観検査
外観変化については、プレッシャー・クッカー・テストを行った。試験条件は120℃、0.2MPa、100%RHの環境下に60時間放置とした。
接着強度の結果を下記表1に示し、外観検査の結果を下記表2に示した。なお,表1中の数値の単位はkg/cm2である。
【0056】
【表1】
Figure 0003935092
【0057】
【表2】
Figure 0003935092
【0058】
上記表1および表2の結果より、Cu層にベンゾトリアゾール系の浸漬処理をおこなった本発明サンプルは、耐湿試験下において外観変化が非常に少なく、嫌気性接着剤との反応性に優れていることがわかる。
【0059】
また、上記の評価実験に加えて、本発明サンプル1〜3および比較例サンプル1について、意図的に表面Cu層にピンホール(孔径約200μm)を空けた不良サンプルを作製した後、プレッシャー・クッカー・テスト(120℃、0.2MPa、100%RHの環境下に60時間放置)を行ない、しかる後、各サンプルを取り出し、ピンホール部分を確認したところ、本発明サンプルでは、Cu層の変色が少ないために、ピンホール箇所から発生している磁石の錆びを容易に確認することができた。
【0060】
しかしながら、比較例サンプルのものでは、Cu層が磁石錆びと同様な色に変色しているためにピンホール箇所から発生している磁石の錆びを発見することは極めて困難であった。このことより、本発明サンプルは、製造後、所定の期間倉庫等に保存され、その後に磁石接合部品として組み立てられる際の不良の検出が早期かつ確実で行えるので、製造コストの低減化にもつながる。
【0061】
【発明の効果】
上記の結果より本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明は、R(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種類以上からなる)、TM(Feを主成分とする遷移元素)、およびホウ素(B)を主成分として含む焼結磁石体と、この焼結磁石体の表面に形成されたCu層とを有するR−TM−B系永久磁石であって、
前記Cu層の表面は、窒素を構造中に2個以上含む窒素環式化合物で処理され、Cuイオンと窒素環式化合物とのキレートが形成されているため、Cuが本来持つ嫌気性接着剤に対する高い反応性を維持しつつ、磁石表面のCu層の変色・酸化が抑制できる。これにより、例えば、小型モータ機器等の接着工程におけるプライマー処理を省略できるため、組み立て作業のスピードアップが可能となる。また、このとき従来のように高い加熱を必要としないため、接着工程における磁気特性の損失がほとんどない。また、昇降温作業が不要となりリードタイムの短縮につながり、環境負荷が小さくなる。さらに、磁石接合部品として組み立てられる際の不良の検出が早期かつ確実で行えるので、製造コストの低減化にもつながる。

Claims (5)

  1. R(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種類以上からなる)、TM(Feを主成分とする遷移元素)、およびホウ素(B)を主成分として含む焼結磁石体と、この焼結磁石体の最表面に保護膜として形成されたCu層とを有するR−TM−B系永久磁石であって、
    前記Cu層の表面は、窒素を構造中に2個以上含む窒素環式化合物で処理されてなり、当該処理された磁石表面の上に接着対象物との接着のために塗設される接着剤が嫌気性アクリル系接着剤であることを特徴とするR−TM−B系永久磁石。
  2. 前記窒素環式化合物は、ベンゾトリアゾール系化合物、インダゾール系化合物、およびイミダゾール系化合物から選ばれた少なくとも1種以上である請求項1に記載のR−TM−B系永久磁石。
  3. 前記Cu層の表面は、前記窒素環式化合物を含む溶液でぬらして乾燥させられてなる請求項1または請求項2に記載のR−TM−B系永久磁石。
  4. 前記溶液中に含有される前記窒素環式化合物濃度は、総和で0.005〜1.5wt%である請求項3に記載のR−TM−B系永久磁石。
  5. 前記Cu層は、湿式メッキ法、機械メッキ法、真空成膜法、CVD法、またはPVD法で形成されてなる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のR−TM−B系永久磁石。
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