JP3934777B2 - オキシ水酸化ニッケル製造用水酸化ニッケル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオキシ水酸化ニッケル製造用水酸化ニッケルに関し、詳しくは電池の電極材料として用いた場合に優れた放電特性、特に高い放電電位を示すオキシ水酸化ニッケル製造用水酸化ニッケルに関する。なお、本発明でいう水酸化ニッケルとは、ニッケルの一部が、例えばコバルト、亜鉛、マンガン等によって各々5.0重量%以下置換されたものも包含するものとする。また、本発明でいうオキシ水酸化ニッケルも、ニッケルの一部が、例えばコバルト、亜鉛、マンガン等によって各々5.0重量%以下置換されたものも包含するものとする。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来のアルカリマンガン電池の正極合剤は、電解二酸化マンガンと黒鉛とを良く混合し、これを粉末成形機で成形して円筒形のペレットとすることで使用されている。
【0003】
しかし、このような正極合剤を用いたアルカリ電池においては、高負荷での放電のときに活物質の利用率の急激な低下が見られ、単3電池で1Aの電流を取り出すと20%程度の利用率になってしまう。また、高負荷の場合、電位の低下も急激であり、放電のごく初期に1.1V以下まで下がってしまう。
【0004】
そこで、高負荷での利用率と電位の低下とを防ぐ目的でオキシ水酸化ニッケルを二酸化マンガンに添加することが考えられる。オキシ水酸化ニッケルは、それのみでも正極剤となることができ、二酸化マンガンに比べて高負荷での利用率と電位の低下が小さい。従って、これを二酸化マンガンに添加することで高負荷でも利用率が高く、高電位な正極剤を得ることができる。従来よりオキシ水酸化ニッケルの添加は提案されている(例えば特開昭56−155630号公報)が、目的は異なる様である。
【0005】
従来、このオキシ水酸化ニッケルを化学合成する場合、ニッケル塩水溶液に酸化剤を溶解させたアルカリ水溶液を反応させ、ニッケルを酸化させると同時にオキシ水酸化物として沈澱を生成させる方法が主にとられてきた(例えば特開昭56−54759号公報)。しかし、この方法では、オキシ水酸化ニッケルのX線回折パターンで見られる結晶性、配向性を制御するのは困難であり、それらに性能が大きく影響される電池材料としては、このような合成法によって得られるオキシ水酸化ニッケルは使用し難い。
【0006】
オキシ水酸化ニッケルの化学合成の他の方法としては、水溶液中で水酸化ニッケルを酸化することが挙げられる。この方法では、水酸化ニッケルの結晶性、配向性を制御することでオキシ水酸化ニッケルの構造を制御できるため、予め電池材料に適した結晶性、配向性の水酸化ニッケルを合成することで、電池特性の優れた水酸化ニッケルを合成できる。
【0007】
しかし、丸田等(文献名「第37回電池討論会要旨集」P141(1996))は、水酸化ニッケルを室温(20〜30℃)付近で酸化処理しても、オキシ水酸化ニッケルを合成するのは困難であり、温度を5℃以下まで下げて酸化処理を行った場合にのみオキシ水酸化ニッケルが得られるとしている。また、ニッケルの一部をコバルトで15%程度置換した場合に室温でオキシ水酸化ニッケルの単相は得られるとしており、水酸化ニッケルでは室温付近での酸化が困難であった。そして、低温で酸化処理することは工業的に不利であり、またニッケルの一部をコバルトで置換することは、コバルトが高価な故に経済的に不利である。
【0008】
そして、得られたオキシ水酸化ニッケルをアルカリ電池の正極剤として用いる場合、その結晶性と放電容量の関係は、これまで何等論じられていなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、室温付近での酸化処理によって容易にオキシ水酸化ニッケルが得られ、かつ得られたオキシ水酸化ニッケルを電池の電極材料として用いた場合に優れた放電特性を示すオキシ水酸化ニッケル製造用水酸化ニッケルを提供することにある。
また、得られたオキシ水酸化ニッケルをアルカリマンガン乾電池の二酸化マンガンに添加することで、高負荷での利用率と電位の低下を防ぐとともに、低負荷でも利用率の低下を起こさないような、オキシ水酸化ニッケル製造用水酸化ニッケルを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、検討の結果、厚さ方向と平面方向のアスペクト比が特定範囲にあり、また平面方向が一定の長さにある板状一次粒子からなり、かつX線回折における特定面の半値全幅が一定値以上の水酸化ニッケルが上記目的を達成し得ることを知見した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、厚さ方向に対する平面方向のアスペクト比が3〜60、平面方向の粒径が0.01〜1.0μmの板状一次粒子であり、かつX線回折における半値全幅が(100)>0.3deg.、(001)<(101)、0.25deg.<(001)<4.0deg.、0.3deg.<(101)<4.5deg.、ピーク強度比I(001)/I(101)>1であり、ニッケル塩水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とをOH - /Ni比が2より大きい条件で混合し熟成して得られたものであることを特徴とするオキシ水酸化ニッケル製造用水酸化ニッケルを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
水酸化ニッケルも、これを酸化して得られるオキシ水酸化ニッケルも、c軸方向に層の積み重なった同じ構造を持つ。そして、酸化剤による水酸化ニッケルの酸化反応、電池にしたときのオキシ水酸化ニッケルの電気化学的な還元反応は、すべてプロトンの固相内での移動をともなう。このとき、プロトンは固相内をc軸に垂直な方向(c面に沿った方向)に移動し、同時にプロトンの脱離・挿入にともない格子定数も変化する。従って本発明者らは、原料の水酸化ニッケルのa軸、c軸方向の一次粒子径や結晶性を規定すれば、酸化しやすく、かつ酸化後のオキシ水酸化ニッケルの電池性能を制御できると考え、原料である水酸化ニッケルの物性、形状を規定したものである。
【0014】
かかる見地から、本発明の水酸化ニッケルは、厚さ方向に対する平面方向のアスペクト比が3〜60、平面方向の粒径が0.01〜1.0μmの板状一次粒子であることが必要である。電池の充電時にはH+ 等がc面に沿った方向に移動するので、粉体粒子のアスペクト比がこれより平面方向に大きくなると(アスペクト比が60を超える)、c面方向への移動距離が大きくなりすぎるので、電池の性能が低下する。アスペクト比がこれより小さいものは(アスペクト比が3未満)、実質的に工業的に製造が困難である。
【0015】
平面方向の粒径が0.01μm未満では、単位胞が数十個程度の粒子なので充放電中に構造が保ちにくい。また平面方向の粒径が1.0μmを超えるとアスペクト比が上記範囲にあったとしても、実際の移動距離が大きくなるので電池性能が低下する。
【0016】
また、本発明の水酸化ニッケルは、X線回折における半値全幅が(100)>0.3deg.である。X線回折における半値全幅が(100)が0.3deg.以下では、水酸化ニッケルを室温で酸化してオキシ水酸化ニッケルとすることができない。
【0017】
また、本発明の水酸化ニッケルは、X線回折における半値全幅が(001)<(101)、0.25deg.<(001)<4.0deg.、0.3deg.<(101)<4.5deg.、ピーク強度比I(001)/I(101)>1である。この範囲において、室温での酸化が容易となり、かつ酸化して得られたオキシ水酸化ニッケルが優れた放電特性を示す。特に低負荷放電で優位性を得るためには、結晶子のa軸方向とc軸方向への成長の度合いの比と結晶性の良さの比に対する要求が激しくなる。即ち、c軸方向に適当な歪みをもっていて、プロトンの出入りに伴い格子定数の変化を受け入れられやすい様な粒子の大きさと結晶性の良さが求められる。従って、ピーク強度比の好ましい範囲として上記のように規定される。
【0018】
ここで半値全幅(001)は、c軸方向の粒子径、構造の歪みの程度を反映し、この値が小さいほどc軸方向の粒子径が大きく構造の歪みが小さい。半値全幅(101)は、a軸・c軸両方向を含む面の粒子径、構造の歪みの程度を反映し、この値が小さいほどa軸・c軸両方向、或いはどちらか一方の粒子径が大きく、構造の歪みが小さい。また、半値全幅が大きい程、その固相内に不純物(ナトリウム塩、カリウム塩や硫酸根、硝酸根、塩化物、アンモニア塩等)を取り込んでいる可能性が高く、これが酸化・還元反応でのプロトンの移動を妨げることがあるので、半値全幅(001)、(101)は大きすぎない方が良い。ピーク強度比I(001)/I(101)は、ここでは粒子の形状に影響され、この値が大きいほどa軸方向に対してc軸方向の粒子径比が小さい板状粒子であることが言える。このような板状粒子はX線回折の測定サンプリング時に配向しやすく、(001)面がX線の反射面に揃いやすいため、(001)面のピーク強度が大きくなる。半値全幅(001)<(101)は、c軸方向に適度な構造の歪みをもち、且つa軸方向の粒径が適度に小さい場合にこの条件を満たし、本発明の材料については、c軸方向の構造の歪みの程度とa軸方向の粒径との比を表わす指標として使える。
【0019】
半値全幅(001)<0.25deg.ではc軸方向の粒子径が大きく、かつ構造の歪みが小さいためにプロトンの出入りにともなう格子定数の変化を受け入れられず、プロトンの脱離・挿入が阻害される。また、4.0deg.<(001)では粒径は小さくなるが構造が歪みすぎているために、または固相内に取り込まれた不純物により、プロトンの移動が阻害される。
【0020】
半値全幅(101)<0.3deg.ではa軸とc軸の両方、或いはどちらか一方の粒子径が大きく、構造の歪みが小さい。c軸の粒子径の場合は(001)の時の説明と同様な理由により、a軸の粒子径の場合はプロトンの移動距離が長くなるために、酸化・還元反応が起こりにくくなる。また、4.5deg.<(101)では粒径は小さくなるが構造が歪み過ぎているために、または固相内に取り込まれた不純物により、プロトンの移動が阻害される。
【0021】
ピーク強度比I(001)/I(101)<1ではX線回折の測定サンプリング時に、(001)面がX線の反射面に揃いにくい形状をしている。即ち、a軸方向に対してc軸方向の粒子径の比が大きく、このような粒子ではプロトンの出入りにともなう格子定数の変化を受け入れられず、プロトンの脱離・挿入が阻害される。
【0022】
半値全幅(001)>(101)では、c軸方向の構造の歪みが小さく、且つa軸方向の粒子径が大きいために、プロトンの脱離・挿入が阻害されるだけでなく、プロトンの移動距離が長くなり、酸化・還元反応が起こりにくくなる。
【0023】
このような物性、性状を有する本発明の水酸化ニッケルは、次のようにして合成される。
すなわち、水酸化ニッケルの合成は、ニッケル塩水溶液とアルカリ水溶液との混合により行い、熟成を行う。熟成温度は室温〜200℃とする。熟成は湯浴、オイルバス、蒸気による熱処理の他に、密閉系での熱処理や100℃以上での熱処理にはオートクレーブ等が用いられる。熟成後、洗浄、濾過、乾燥して目的とする水酸化ニッケルを得る。ニッケル塩としては、硫酸塩、硝酸塩、塩化物等、アルカリとしては水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0024】
同じ合成方法ではニッケル塩に硝酸塩を用いるとX線回折ピークが鋭いものが得られ易く、硫酸塩を用いるとブロードなものが得られ易い。これは、硫酸イオンが結晶面に吸着して粒子の成長を阻害するためである。同様に水酸化リチウム、アンモニア水を用いると、水酸化ナトリウム、カリウムを用いた場合よりもX線回折ピークが鋭いものが得られ易い。これもやはり、ナトリウムイオン、カリウムイオンが結晶成長を阻害するためである。原料が同じ場合、X線回折ピークの半値全幅は熟成の有無、温度(室温〜200℃)、OH- /Niを変えることによって調整される。熟成を行わないと、X線回折ピークがブロードになり、構造の歪みが大きい細かい粒子ができる。X線回折ピークは熟成温度が高い程、熟成時間が長いほど、OH- /Ni比が大きいほど鋭くなる。また、OH- /Ni比が2より大きくなるとピーク強度比I(001)/I(101)が1よりも大きく、且つ半値全幅(001)<(101)となる。
【0025】
なお、電池材料用水酸化ニッケルとしては球状粉が一般的であるが、これは板状一次粒子が凝集して球状形成するため、このような水酸化ニッケルも本発明に包含される。また、上記のようにして得られた水酸化ニッケルは、通常不純物又は添加剤としてコバルト、亜鉛、マンガン等を各々5.0重量%以下含まれる。
【0026】
次に、オキシ水酸化ニッケルの製造方法について述べる。
上記のようにして得られた水酸化ニッケルを、酸化剤を溶解させたアルカリ水溶液中に分散し、5時間以上撹拌する。アルカリの濃度については、酸化反応において水酸化ニッケルからプロトンが放出されるので、このプロトンを中和できるアルカリ量以上の濃度であればよい。また、反応が5時間以下だと酸化不十分により水酸化ニッケルが残ってしまう。この時の温度は30℃以下、好ましくは20℃以下になるように調整する。酸化剤としては、アルカリ領域で働く酸化剤、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム等が用いられる。しかし、次亜鉛塩素酸ナトリウムは、塩素を発生するため、工業的にはあまり用いない方が好ましい。その後、粉末を洗浄、濾過、乾燥して、目的とするオキシ水酸化ニッケルを得る。
【0027】
このようにして製造されたオキシ水酸化ニッケルは、電池の正極活物質として用いられる。また、このオキシ水酸化ニッケル1〜99重量%と二酸化マンガン99〜1重量%とを正極活物質とするアルカリ電池は、二酸化マンガンのみの場合よりも優れた放電性能を示す。
【0028】
【実施例】
以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説明する。
【0029】
〔実施例1〕
1mol/lの硫酸ニッケル水溶液1リットルと、3mol/lの水酸化ナトリウム水溶液1リットルを混合し、オートクレーブ100℃で12時間熟成する。この後、粉末を純水で洗浄、濾過、70℃で乾燥し、水酸化ニッケルを得た。この水酸化ニッケルのX線回折パターンを図1に示す。
【0030】
得られた水酸化ニッケル30gを、過硫酸カリウム57.6gを溶解させた1mol/l水酸化ナトリウム水溶液1.8リットル中に分散させ、20℃で12時間撹拌して、オキシ水酸化ニッケルを得た。このオキシ水酸化ニッケルのX線回折パターンを図1に示す。また、この酸化前の水酸化ニッケルの物性、性状は下記の通りであった。
【0031】
【0035】
〔比較例1〕
1.7mol/lの硫酸ニッケル水溶液1.5リットルに、NH3/Ni=3(モル比)となるようにアンモニア水を混合し、80℃で8時間熟成した。この後、粉末を純水で洗浄、濾過、70℃で乾燥し、水酸化ニッケルを得た。この水酸化ニッケルのX線回折パターンを図2に示す。
【0036】
得られた水酸化ニッケル30gを、過硫酸カリウム57.6gを溶解させた1mol/l水酸化ナトリウム水溶液1.8リットル中に分散させ、20℃で12時間撹拌して、オキシ水酸化ニッケルを得た。このオキシ水酸化ニッケルのX線回折パターンを図2に示す。また、この酸化前の水酸化ニッケルの物性、性状は下記の通りであった。
【0037】
【0038】
図1及び2に示されるように、実施例1では、水酸化ニッケルを酸化すると2θ=33度付近の水酸化ニッケルの(100)面に帰属されるピークが消失しており、室温付近での合成でもほぼ完全にオキシ水酸化ニッケルに酸化されていることが分かる。
【0039】
これに対して比較例1では、(100)面のピークが確認でき、未だ酸化されていない水酸化ニッケルが存在していることが判る。この水酸化ニッケルのX線回折パターンは、実施例1に比べて(100)面の半値全幅が小さくなっている。このことは比較例1の水酸化ニッケルは実施例1のものに比べて結晶子がa軸方向に厚いことを示している。酸化過程では、固相内をプロトンがc面に沿った方向(a軸方向を含む)に移動し、固相外に取り出されることが考えられる。このため、a軸方向によく成長した水酸化ニッケルでは、プロトンの移動距離が長くなり、十分に酸化できないものと考えられる。
【0040】
実施例1及び比較例1で得られたオキシ水酸化ニッケルを用いて下記の方法で2種類のテストセルを作製し、放電試験を行った。放電試験は、放電時の液温25℃で行った。高負荷放電は30mAで、低負荷放電は5mAでそれぞれ行い、それぞれ参照極に対して−0.2V、−0.4Vまで放電したときの時間を測定した。
【0041】
実際に電池では二酸化マンガンの対極に亜鉛が使われており、一般にこれをモーター等の電源に用いた場合、0.9V付近ではモーターが動かなくなると言われている。ここでの0.9Vは、本発明者らの試験用電池でほぼ−0.4Vに相当し、また、更に高負荷モーター等の用途に用いた場合を考慮し、−0.2V、−0.4Vまでの放電時間を測定することにした。
【0042】
<オキシ水酸化ニッケルを正極活物質とした電池テスト>
オキシ水酸化ニッケル8g、黒鉛0.6g、水9gを混合し、50℃で12時間以上乾燥させた。これから0.4gを坪量し、直径1cm円盤状に1tの一軸圧力をかけて成型し、正極用ペレットとした。対極にはニッケルメッシュ、電解液には25%水酸化カリウム水溶液をそれぞれ用い、参照極はHg/HgO電極とした。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の結果から、実施例1で得られたオキシ水酸化ニッケルは、比較例1で得られたオキシ水酸化ニッケルに比べて高い放電容量を示す。
【0046】
比較例1のオキシ水酸化ニッケルは、図2に示されるX線回折パターンから酸化が不十分であることが判っており、これがそのまま容量に影響していると考えられる。また、放電反応では酸化反応と逆の反応が起こっており、固相内にプロトンが取り込まれた後、c軸に垂直な方向に移動する。このため、c軸に垂直な方向によく成長した水酸化ニッケルでは、プロトンの移動距離が長くなり、十分に放電できないものと考えられる。
【0047】
<オキシ水酸化ニッケルと二酸化マンガンとを正極活物質とした電池テスト>
オキシ水酸化ニッケルと二酸化マンガンを合わせて8g(オキシ水酸化ニッケル25重量%含有)になるように秤量し、これと黒鉛0.6g、水9gを混合し、50℃で12時間以上乾燥させた。これから0.4gを坪量し、直径1cmの円盤状に1tの一軸圧力をかけて成型し、正極用ペレットとした。対極にはニッケルメッシュ、電解液には25%水酸化カリウム水溶液をそれぞれ用い、参照極はHg/HgO電極とした。なお、オキシ水酸化ニッケルを用いず、二酸化マンガンのみを正極活物質としたものを参考例とした。結果を表2に示すと共に、実施例1及び参考例の低負荷放電の結果を図3、高負荷放電の結果を図4にそれぞれ示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示されるように、30mAでの高負荷放電では実施例1は、二酸化マンガンのみの参考例よりも高い放電容量を示した。高負荷放電では、参考例に比べて放電容量が増加するのは、オキシ水酸化ニッケルは二酸化マンガンに比べて高負荷放電での容量の低下が小さいためであると考えられる。
【0050】
比較例1のオキシ水酸化ニッケルを添加した場合、高、低負荷放電の両方で参考例と比べて放電容量が低かった。これも、上記したオキシ水酸化ニッケルのみでの放電の場合と同様の理由が考えられる。即ち、オキシ水酸化ニッケル自身の容量が二酸化マンガンの容量に比べて大きく低下しているため、これを添加しても逆に容量は低下する。
【0051】
図3及び4の結果から、実施例1は参考例に比べて、高、低負荷放電の両方で放電時間の全領域における高い電位と高容量が得られることが判り、特に高負荷での用途において、使用時間の長い、ハイ・パワーな電池を供給できる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の水酸化ニッケルによって、室温付近での酸化処理によって容易にオキシ水酸化ニッケルが得られ、かつ得られたオキシ水酸化ニッケルを電池の電極材料として用いた場合に優れた放電特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1における水酸化ニッケルとオキシ水酸化ニッケルのX線回折図。
【図2】 比較例1における水酸化ニッケルとオキシ水酸化ニッケルのX線回折図。
【図3】 実施例1及び参考例の低負荷放電(5mA)における放電時間と電位の関係を示すグラフ。
【図4】 実施例1及び参考例の高負荷放電(30mA)における放電時間と電位の関係を示すグラフ。
Claims (6)
- 厚さ方向に対する平面方向のアスペクト比が3〜60、平面方向の粒径が0.01〜1.0μmの板状一次粒子であり、かつX線回折における半値全幅が(100)>0.3deg.、(001)<(101)、0.25deg.<(001)<4.0deg.、0.3deg.<(101)<4.5deg.、ピーク強度比I(001)/I(101)>1であり、ニッケル塩水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とをOH - /Ni比が2より大きい条件で混合し熟成して得られたものであることを特徴とするオキシ水酸化ニッケル製造用水酸化ニッケル。
- 請求項1に記載の水酸化ニッケルを20〜30℃で酸化することを特徴とするオキシ水酸化ニッケルの製造方法。
- 請求項2により得られるオキシ水酸化ニッケル。
- 請求項3に記載のオキシ水酸化ニッケルを正極活物質又は負極活物質として用いた電池。
- 請求項3に記載のオキシ水酸化ニッケル1〜99重量%と二酸化マンガン99〜1重量%とからなるアルカリ電池用正極活物質。
- 請求項5に記載の正極活物質を用いたアルカリ電池。
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