JP3934729B2 - 液晶表示素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子に係り、特に、ゲスト−ホスト方式の液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶中に二色性比の大きな色素を溶解したゲスト−ホスト方式の液晶表示素子は、視角が広いなどの利点があり、将来を期待される表示方式の一つである。近年、カラーディスプレイの需要が高まり、ゲスト−ホスト方式によるカラーディスプレイの開発も盛んに行われている。
【0003】
ゲスト−ホスト方式のカラー液晶表示素子の一例として、(T.Utida:Proc.3rd.Display Res.Conf.,p202,1983)に示されるような、イエロー、シアン、マゼンタの三色のゲスト−ホストセルを重ねたものが知られている。
【0004】
このようなフルカラーゲストホスト方式において、明るく鮮明な色表示を実現するためには、色素の分光スペクトルが理想的な形状であることが必要である。
【0005】
さらに鮮明な色を表現するためには、吸光度を上げる必要があり、このためには色素を液晶中により多く溶解させる必要がある。そこで色素の液晶に対する溶解性、溶解安定性を向上させることが重要となる。また表示のコントラストを上げるためには色素の二色比、配向秩序度を向上させることが必要である。
【0006】
また携帯端末用の表示素子の特性として、低消費電力化が必要であるが、このためには駆動電圧を低くする必要がある。低電圧駆動を実現するためには電気光学特性において、しきい値電圧を低くすることが重要である。特に、二色性色素を液晶中に溶解させ、これをマイクロカプセル化したゲストホスト液晶マイクロカプセルでは、しきい値電圧の問題は深刻であり、鮮明な色表示を実現するためには20Vから50Vほどの高い電圧が必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、ゲスト−ホスト方式において明るく鮮明な色表示を実現するためには、鮮明な色を表現するのに必要とされる吸光度を実現するだけの色素の液晶に対する溶解性、溶解安定性が必要である。色素の濃度が小さいと十分な色表示ができず、またこれを補うべくセル厚を大きくすれば、消費電力が大きくなり、かつ着色液晶の電場に対する応答速度が小さくなる。
【0008】
液晶に対する色素の溶解性を向上させるためには、一般に長鎖アルキル基等のフレクシビリティな置換基を導入することが試みられている。本方法によって溶解性はある程度改善されるものの、溶解度の温度依存性が大きいことが問題となる。即ち、例えば5℃における溶解度が20℃における溶解度と比較して著しく小さい場合、たとえ20℃における溶解度が大きくても5℃において色素の析出が起こるため、このような色素を表示素子に用いることは困難である。
【0009】
このように、これまで数多くの二色性色素が合成され、検討されてきたが、未だ十分な溶解性、温度変化に対する溶解安定性を有する二色性色素分子は得られていないのが現状である。
【0010】
一方、このようなゲストホスト型液晶表示素子では、十分な吸光度を得るために液晶に溶解する二色性色素の濃度を大きくすると、着色液晶の保持率の低下、粘性の増加をまねき、電気光学特性が劣化するのでコントラストが低下する、しきい値電圧が増加するという問題を生じてしまう。
【0011】
また二色性色素の濃度を大きくすると、二色性比や配向秩序度の低下をもまねいてしまい、コントラストの低下を生じてしまう。
【0012】
本発明の目的は、液晶に対する優れた溶解性および溶解安定性を有する二色性色素を含む液晶組成物を用いた、明るく鮮明な色表示が得られる液晶表示素子を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、後述する式(1)〜(7)のいずれかに示す骨格を有する二色性色素分子を溶解した液晶を主成分とする液晶表示素子を提供する。
【0018】
以下、本発明は、以下に示す種々の態様が可能である。
【0019】
(1)対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、基本骨格または置換基の少なくとも一部に不斉中心または不斉構造を有する部位が1分子中に複数存在する二色性色素化合物を溶解した液晶を主成分とする液晶表示素子。
【0020】
(2)対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、基本骨格または置換基の少なくとも一部に不斉中心または不斉構造を有する部位が存在する二色性色素化合物であって、一方の鏡像体のみから構成される二色性色素化合物を溶解した液晶を主成分とする液晶表示素子。
【0021】
(3)対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、基本骨格または置換基の少なくとも一部に不斉中心または不斉構造を有する部位が1分子中に複数存在するとともに、基本骨格と置換基の接合部以外の部位が剛直部のみである二色性色素化合物の2種以上を溶解した液晶を主成分とする液晶表示素子。
【0022】
(4)対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、基本骨格または置換基の少なくとも一部に不斉中心または不斉構造を有する部位が存在する二色性色素化合物であって、一方の鏡像体のみから構成され、かつ、基本骨格または置換基の少なくとも一部に不斉中心または不斉構造を有する部位が1分子中に複数存在するとともに、基本骨格と置換基の接合部以外の部位が剛直部のみである二色性色素化合物の2種以上を溶解した液晶を主成分とする液晶表示素子。
【0023】
(5)対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、基本骨格と置換基の接合部以外の部位が剛直部のみである二色性色素化合物の2種以上であり、かつチオカルボニル基、チオエステル基、ジチオエステル基、セレノカルボニル基、セレノエステル基、およびジセレノエステル基からなる群から選ばれた少なくとも1種を有する二色性色素分子を溶解した液晶を主成分とする液晶表示素子。
【0024】
(6)対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、チオカルボニル基、チオエステル基、ジチオエステル基、セレノカルボニル基、セレノエステル基、およびジセレノエステル基からなる群から選ばれた少なくとも1種を有する二色性色素分子であって、基本骨格または置換基の少なくとも一部に不斉中心または不斉構造を有する部位が1分子中に複数存在するとともに、基本骨格と置換基の接合部以外の部位が剛直部のみである二色性色素化合物の2種以上を溶解した液晶を主成分とする液晶表示素子。
【0025】
(7)対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、チオカルボニル基、チオエステル基、ジチオエステル基、セレノカルボニル基、セレノエステル基、およびジセレノエステル基からなる群から選ばれた少なくとも1種を有し、基本骨格または置換基の少なくとも一部に不斉中心または不斉構造を有する部位が存在する二色性色素化合物であって、一方の鏡像体のみから構成される二色性色素分子を溶解した液晶を主成分とする液晶表示素子。
【0026】
(8)対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、基本骨格に置換基としてトラン(ジフェニルアセチレン)部位またはジフルオロスチルベン部位を有する二色性色素を含有する液晶を主成分とする液晶表示素子が提供される。
【0027】
本発明によると、対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、基本骨格に置換基としてトラン(ジフェニルアセチレン)部位またはジフルオロスチルベン部位を有する二色性色素を含有する液晶表示素子。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
【0029】
本発明の第1の態様は、液晶材料に溶解される二色性色素化合物として、チオカルボニル基、チオエステル基、ジチオエステル基、セレノカルボニル基、セレノエステル基、またはジセレノエステル基を有する二色性色素分子を用いたことを特徴とする。
【0030】
好ましくは、二色性色素分子は、下記式(1)〜(7)に示す骨格を有するものである。
【0031】
【化8】
Figure 0003934729
【0032】
(式中、X、YはO、S、またはSeを示し、ただし、X、YがともにOの場合はない。)
【化9】
Figure 0003934729
【0033】
(式中、X、YはO、S、またはSeを示し、ただし、X、YがともにOの場合はなく、R1 、R2 は、H、アルキル基またはシクロアルキル基を示し、A、BはSまたはNHを示し、n、mは0〜4の整数を示す。)
【化10】
Figure 0003934729
【0034】
(式中、XはO、SまたはSeを示し、YはO、S、Seを示す。ただし、X、YともにOの場合を除く。)
【化11】
Figure 0003934729
【0035】
(式中、XはSまたはSeを示し、R1 、R2 はH、アルキル基を示す。)
【化12】
Figure 0003934729
【0036】
(式中、X、YはSを示し、Z、WはO、S、またはSeを示し、ただし、Z、WすべてがOの場合はなく、R1 、R2 は、アルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、もしくはこれらの置換体を示す。)
【化13】
Figure 0003934729
【0037】
(式中、X、YはSを示し、Z、WはO、S、またはSeを示し、ただし、Z、WすべてがOの場合はなく、R1 、R2 は、アルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、もしくはこれらの置換体を示す。)
【化14】
Figure 0003934729
【0038】
本発明者らは、二色性色素分子のカルボニル基の酸素原子およびエステルの酸素原子を硫黄原子またはセレン原子で置換することにより、液晶に対する溶解性、温度変化に対する溶解安定性が大幅に向上することを見出し、本発明をなすに至った。即ち、本発明の第1の態様に係る二色性色素分子は、例えば下記式(8)に示すように、アントラキノン類色素のカルボニル基の酸素原子を硫黄原子で置換したものである。
【0039】
図1は、下記式(8)に示す二色性色素分子と、下記式(9)に示す、酸素原子を硫黄置換していない二色性色素分子の液晶に対する溶解性、溶解安定性を比較して示す特性図である。
【0040】
【化15】
Figure 0003934729
【0041】
(式中、R1 、R2 はエチル基またはn−ブチル基を示す。)
図1に示す結果から、本発明に係る二色性色素分子は、酸素原子を硫黄置換していない二色性色素分子に比べ、高い溶解性、溶解安定性を示していることがわかる。
【0042】
また、本発明の第1の態様に係る二色性色素分子は、下記式(10)に示すようなクマリン類色素のカルボニル基の酸素原子を硫黄原子で置換したものでもよい。図5は、式(10)に示す二色性色素分子と、下記式(11)に示す、酸素原子を硫黄置換していない二色性色素分子の液晶に対する溶解性、溶解安定性を比較して示す特性図である。
【0043】
【化16】
Figure 0003934729
【0044】
図2に示す結果から、本発明に係る二色性色素分子は、酸素原子を硫黄置換していない二色性色素分子に比べ、はるかに高い溶解性、溶解安定性を示すことがわかる。
【0045】
更に、本発明の第1の態様に係る二色性色素分子は、下記式(12)に示すようなペリレン類色素のカルボニル基の酸素原子を硫黄原子で置換したものでもよい。図3は、式(12)に示す二色性色素分子と、下記式(13)に示す、酸素原子を硫黄置換していない二色性色素分子の液晶に対する溶解性、溶解安定性を比較して示す特性図である。
【0046】
【化17】
Figure 0003934729
【0047】
図3に示す結果から、本発明に係る二色性色素分子は、酸素原子を硫黄置換していない二色性色素分子に比べ、はるかに高い溶解性、溶解安定性を示すことがわかる。
【0048】
更にまた、本発明の第1の態様に係る二色性化合物を用いた着色液晶は、従来の着色液晶と比較して電気抵抗値が高く、TFT駆動に適するものである。また、特に、フッ素系液晶に適用した場合に、良好な結果が得られる。
【0049】
本発明の第1の態様に係る二色性色素の他の例は、下記式(14)〜(22)にまとめた。
【0050】
アントラキノン類
【化18】
Figure 0003934729
【0051】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 は、Hまたはアルキル基を示し、X,Y=O、S、またはSeを示し、ただし、X、YがともにOの場合はない。)
クマリン類
【化19】
Figure 0003934729
【0052】
(式中、R1 、R2 は、Hまたはアルキル基を示し、XはO、SまたはSe、YはO、S、またはSeを示す。ただし、X、YともにOの場合を除く。)
ペリレン類
【化20】
Figure 0003934729
【0053】
(式中、R1 、R2 は、Hまたはアルキル基を示し、X,Y、Z、WはO、S、またはSeを示し、ただし、X,Y、Z、WすべてがOの場合を除く。)
以上説明したように、本発明の第1の態様によると、アントラキノン類色素、クマリン類色素、ペリレン類色素等の二色性色素のカルボニル基の酸素原子、エステルの酸素原子が硫黄原子、セレン原子で置換されており、硫黄原子、セレン原子は酸素原子と比較して電子的にソフトであるため、色素分子の疎水性が増加し、置換することによって疎水環境である液晶に対する溶解性が大幅に向上する。
【0054】
また硫黄、セレン置換二色性色素のチオカルボニル基、セレノカルボニル基は、カルボニル基と比較してイオン性化合物に対する親和性が低いため、着色液晶にイオン性不純物が混入することがない。その結果、着色液晶の抵抗値が大きく、TFT駆動に適するものとなる。
【0055】
本発明の第2の態様は、液晶層中に、プロトン供与性の第1の化合物と、プロトン受容性の第2の化合物がともに溶解されており、第1の化合物と第2の化合物が水素結合にて接続され、第1及び第2の化合物のうち少なくとも一方の化合物が可視光領域に吸収を有するものであることを特徴とする。
【0056】
本発明者らは、プロトン供与性化合物とプロトン受容性化合物を共に液晶層に溶解して、これらの化合物間で水素結合を形成させ、これらの化合物の中で少なくとも一方の化合物を可視光領域に吸収を有する色素分子とすることにより、十分な量の色素分子を長期間安定に液晶中に溶解することが可能となり、ひいてはしきい値電圧の低減、応答の高速化、二色比の向上、配向秩序度の向上を達成することができることを見い出した。
【0057】
本発明の第2の態様に係る液晶表示素子は、図4に示すように、液晶3中にプロトン供与性化合物1(水素結合ドナー)とプロトン受容性化合物2(水素結合アクセプター)とを、共に液晶中に溶解させたものを、電極6、7が形成された基板4、5間に狭持した構成を有する。
【0058】
図4に示すように、液晶3中にて、これらのプロトン供与性化合物1とプロトン受容性化合物2は水素結合にて接続される。この時、これらの化合物1、2の内少なくとも一方を色素分子とする。こうすることで、水素結合により他の化合物とほぼ直線的に接続され見かけの分子構造が液晶分子と等しくなる。従って色素分子を単独で液晶中に溶解させるよりも、水素結合により分子構造が液晶分子とほぼ等しくなった色素分子のほうが、その溶解度が格段に向上し、さらに溶解安定性も向上する。
【0059】
また、水素結合性ドナー、アクセプターの内、色素でない方の分子構造を液晶構造とすることによって、格段に色素の溶解性を向上させることができる。これは色素を溶質、もう一方を溶媒の一部とした場合、色素と溶媒の一部が水素結合を形成することになり、色素−溶媒間に強い相互作用があると見なすことができるためである。
【0060】
水素結合ドナーとしてはカルボキシル基を有する化合物を、水素結合アクセプターとしてはピリジン類化合物を用いることが安定な水素結合を形成する上で好ましいが、これらに限定されるものではない。ピリジン類化合物は、プロトン受容性を高めるため、電子供与性置換基を有することがより望ましい。
【0061】
水素結合ドナーとしてカルボキシル基を用いた場合、液晶層の抵抗値が低下する場合がある。しかし、この場合は水素結合ドナーのモル量に対し、1当量を超過する水素結合アクセプターを加えることにより、高い抵抗値を実現することができる。
【0062】
また本発明では、プロトン供与性化合物(水素結合ドナー)とプロトン受容性化合物(水素結合アクセプター)とを両方とも色素とし、全体として黒色の二色性色素とすることができる。従来では、黒色のゲストホスト方式の液晶表示素子は複数の色素、例えばイエロー、シアン、マゼンタ3色の色素を混合し、液晶中に溶解することで作成していた。しかし種類の異なる色素が液晶中に共存し色素同士が相互作用することにより、色素の耐光性が劣化することがしばしばあった。
【0063】
本発明では補色同士の色素分子をそれぞれ水素結合にて結合させているので、異なる色素分子同士の相互作用が起こりにくくなり、単に複数種類の色素を混合して用いるものよりも、耐光性が格段に向上する。
【0064】
また本発明では、プロトン供与性化合物(水素結合ドナー)とプロトン受容性化合物(水素結合アクセプター)の両者を色相が異なる色素とし、印加電圧の大きさによってセル全体としての色相を変化させることができる。即ち、プロトン供与性化合物(水素結合ドナー)とプロトン受容性化合物(水素結合アクセプター)の一方を電圧印加方向に対して長軸方向が立ち上がるP型の二色性色素にし、その他方を電圧印加方向に対して短軸方向が立ち上がるN型の二色性色素として、これらを直線状に水素結合にて接続することにより、複数の色素の内いずれか一方、またはこれらの中間の色相を1種類の液晶層で得ることができる。
【0065】
またこの効果は、プロトン供与性化合物(水素結合ドナー)とプロトン受容性化合物(水素結合アクセプター)の両方を電圧印加方向に対して長軸方向が立ち上がるP型或いはN型の二色性色素にし、これらをそれぞれ分子軸が垂直になるように水素結合することによっても実現することができる。
【0066】
また、本発明の第2の態様では、プロトン供与性化合物(水素結合ドナー)とプロトン受容性化合物(水素結合アクセプター)との間の水素結合の形成により、それ自体で液晶性を発現させることができる。これらの化合物の少なくとも一方は、可視光領域に吸収を有する色素であるため、二色性色素液晶としての挙動をする。従って、従来最も重要な問題の一つであった色素の液晶に対する溶解性の制約がなくなり、自由な割合で色素を添加することができる。
【0067】
さらに本発明の第2の態様では、プロトン供与性化合物或いはプロトン受容性化合物に自由に色素分子を与えられるので、色素濃度を広範囲に設定することができる。この場合、液晶中の色素濃度を大きくできるので、所定の吸光を得るのに必要とされるセルの厚さを小さくできるため、消費電力を低減することができる。
【0068】
また本発明の第2の態様では、前記二色性色素液晶を他の液晶に混合して液晶物性を調整することができる。この場合においても、色素の溶解性による制約は全くない。
【0069】
本発明の第2の態様では、色素分子を完全に合成する必要はなく、特定の骨格あるいは置換基を有する分子を混合するだけでよい。そのため、実現が容易であり、コスト低減を実現することができ、さらに合成上の制約を受けることがない。
【0070】
本発明の第2の態様に用いる液晶としては、メルクジャパン社製TC−4368XX、ZL−4281/2、ZLI−3889、ZLI−5500−000、MLC−6041−000、ZLI−4620、ZLI−5100−000、ZLI−1840、ZLI−2116−000、ZLI−2293、チッソ化学工業社製LIXON4033−000XX、LIXON4034−000XX、LIXON−5052等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0071】
本発明の第2の態様では、プロトン供与性化合物とプロトン受容性化合物をともに液晶層に溶解し、これらの化合物が液晶中で水素結合にて接続されることによって、プロトン供与性或いはプロトン受容性化合物である色素分子の液晶に対する溶解性が向上する。
【0072】
本発明の第2の態様では、水素結合はフレキシブルな結合形態であるため、液晶の粘性が大きく低下して、しきい値電圧を低減することができる。この場合、しきい値電圧低減の効果は、液晶マイクロカプセルの場合に特に顕著となる。
【0073】
本発明の第3の態様は、液晶材料に溶解される二色性色素化合物として、基本骨格と置換基の接合部以外の部位が剛直部のみである二色性色素化合物の2種以上を用いることを特徴とする。
【0074】
好ましくは、二色性色素分子のすべてが、基本骨格と置換基の接合部以外の部位に、H以外の置換基を持たない原子数が直鎖状に4つ以上連続する部位が存在しないことがよい。
【0075】
例えば、二色性色素分子は、下記式(23)に示す構造を有するものである。
【化21】
Figure 0003934729
【0076】
(式中、XはO、S、Se、NH2 、または−CH2 −を示し、R1 、R2 は、H、アルキル基またはシクロアルキル基を示し、A、Bはアミノ基、ニトロ基、またはヒドロキシ基を示し、m、n、s、tは0〜4の整数を示し、ただし、m、n、s、tのすべてが0になることはない。)
本発明者らは、2種以上の二色性色素を含有する着色液晶において、すべての二色性色素分子が、基本骨格と置換基の接合部以外の部位が剛直部のみとすることにより、温度変化に対する二色性色素分子の溶解安定性が著しく向上することを見い出し、本発明をなすに至った。
【0077】
即ち、本発明の第3の態様に係る二色性色素混合物は、例えば下記式(24)に示すように、基本骨格と置換基の接合部以外の部位にフレクシブルな部位が存在せず、剛直部のみから構成されているものである。
【0078】
【化22】
Figure 0003934729
【0079】
(式中、R1 、R2 はHまたは剛直なアルキル基を示す。)
図5は、本発明の第3の態様に係る色素混合物(式24)と柔軟性置換基(n−ブチル基)を有する色素化合物の温度と溶解度(wt%)の関係を示す特性図である。図5により、本発明の第3の態様に係る二色性色素混合物は、n−ブチル基のようにフレクシブルな置換基を有する二色性色素と比較して溶解度の温度依存性が著しく小さいことが分かる。これは、従来のフレクシブル置換基を有する二色性色素はエントロピーの変化量が大きく、本発明に係る二色性色素混合物はエントロピーの変化量が小さいことに起因すると考えられる。
【0080】
図6に、下記式(25)に示す化合物のアルキル基の鎖長を変化させた場合の溶解度の温度依存性を示した。図6から、アルキル鎖長が延びるに従って、全体として溶解度は大きくなるが、その温度依存性はアルキル鎖長の炭素数が4以上の場合から急激に大きくなることが分かった。
【0081】
【化23】
Figure 0003934729
【0082】
(式中、n=0,1,2,3)
以上説明したように、本発明の第3の態様によると、液晶材料に溶解される二色性色素分子混合物を、基本骨格または置換基に基本骨格と置換基の接合部以外の部位に柔軟性部位を持たない二色性色素のみで構成することにより、エントロピー効果を軽減することが出来、それによって溶解度の温度依存性を大幅に低減することが可能であり、その結果、ゲスト−ホスト方式ディスプレイが低温にさらされることによって起こる色素析出を防ぐことが出来る。
【0083】
本発明の第4の態様は、基本骨格または置換基の少なくとも一部に不斉中心または不斉構造を有する部位が1分子中に複数存在する二色性色素化合物、または基本骨格または置換基の少なくとも一部に不斉中心または不斉構造を有する部位が存在する二色性色素化合物であって、一方の鏡像体のみから構成される二色性色素化合物を用いることを特徴とする。
【0084】
本発明者らは、二色性色素分子に複数の不斉源を導入してジアステレオマー同士の混合物とすることにより、またはその混合物若しくは1つの不斉源を有するジアステレオマーを光学分割して一方の鏡像体を得ることにより、液晶に対する溶解性が飛躍的に向上することを見い出し、本発明をなすに至った。
【0085】
そのような二色性色素分子として、例えば下記(26)、式(27)、式(28)に示すもの、またはその混合物が挙げられる。
【0086】
【化24】
Figure 0003934729
【0087】
(式中、XはO、S、Se、NH、−CH2 −を示し、R1 、R2 は少なくとも1種の不斉中心または不斉構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、またはジシクロヘキシル基を示し、A、Bはアミノ基またはヒドロキシ基を示し、s、tは0〜4の整数を示し、u、vは0〜3の整数を示し、ただし、s+t≧2、s+u≦4、t+v≦4である。)
【化25】
Figure 0003934729
【0088】
(式中、XはS、NH、−CH2 −を示し、R1 、R2 は少なくとも1種の不斉中心または不斉構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、置換フェニル基、置換ビフェニル基、置換シクロヘキシルフェニル基、または置換ジシクロヘキシル基を示し、A、Bはアミノ基、ヒドロキシ基を示し、s、tは0〜3の整数を示し、u、vは0〜5の整数を示し、ただし、u+v≧2である。)
【化26】
Figure 0003934729
【0089】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 は、少なくとも1種の不斉中心または不斉構造を有するアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、置換フェニル基、置換ビフェニル基、置換シクロヘキシルフェニル基、または置換ジシクロヘキシル基を示し、A、Bはアミノ基またはヒドロキシ基を示し、s、t、u、wは0〜5の整数を、α、βは0〜2の整数をそれぞれ示し、ただし、s+t+u+w≧2である。)
ジアステレオマー同士の混合物の作製方法としては、以下の方法がある。
【0090】
1)二色性色素分子の合成経路におけるカイラル部導入段階において、混合物とする方法
2)単独に合成した色素分子を混合して作成する方法
まず、1)の方法について、上述の式(27)に示す化合物を例に挙げて詳しく説明する。
【0091】
上述の式(27)に示す化合物は、例えば下記式(29)の合成経路に示すように、1,5−ジクロロアントラキノン(式a)に対する、2つのチオフェノール誘導体(式b)、(式c)による置換反応によって得ることができる。これらのチオフェノール誘導体は、パラ位に不斉中心を含む置換基を有するラセミ体である。(式b)、(式c)のチオフェノール誘導体は、同時に(式a)の1,5−ジクロロアントラキノンに対して反応させる。
【0092】
【化27】
Figure 0003934729
【0093】
その結果、アントラキノン骨格の1位と5位に、任意に(式b)、(式c)のチオフェノールが導入されることになる。即ち生成物は、次の混合物となる。
【0094】
(1)(式b)のチオフェノール誘導体のみが置換した化合物、
(2)(式c)のチオフェノール誘導体のみが置換した化合物、
(3)(式b)、(式c)のチオフェノール誘導体が置換した化合物
これらの混合物の各成分色素化合物は、互いに結晶を形成することがないため、混合物全体の液晶材料に対する溶解性は、単独の色素の場合より大きく向上する。なお、単独での溶解性が比較的悪いジアステレオマーは、混合物を溶媒に溶かし、ろ過によって分別しても良い。また、この混合物は、光学分割によってより液晶材料に対する溶解性を高めることができる場合がある。即ち、不斉中心を有するあるいは不斉構造を有する部位を有する化合物の結晶の形態として、図7に示すような鏡像体1、鏡像体2が交互に配列する性質を有する場合、光学分割によって一方の鏡像体のみ、即ち鏡像体1のみ、あるいは鏡像体2のみとすることにより、大幅に液晶に対する溶解性が向上する。このことは、単一の不斉中心を有するあるいは不斉構造を有する部位を有する化合物についても同様にあてはまる。
【0095】
以上のように、本発明の第4の態様に係る液晶表示素子では、液晶材料に溶解される二色性色素分子に複数の不斉源を導入してジアステレオマー同士の混合物とすることにより、液晶材料に対する二色性色素の溶解性を向上させることが出来、それによってゲスト−ホスト方式の液晶表示素子において鮮明な色表示を実現するものである。また、不斉源を有する二色性色素分子のうち、一方の鏡像体のみが存在するように分割した二色性色素もまた液晶材料に対する溶解性が向上し、同様の効果が得られるものである。
【0096】
以上説明した第1〜第4の態様における二色性色素の要件は、それぞれ相互に組合せても、良好な効果を得ることが可能である。
【0097】
【実施例】
以下に、本発明の種々の実施例および比較例6〜8を示す。
【0098】
実施例1
2,6−ジクロロアントラキノンと、下記式(30)に示す2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジフォスフェタン−2,4−ジサルファイドを、蒸留等で脱水処理したトルエンに溶解し、窒素気流中で110℃、20時間加熱かくはんした。反応溶液を処理、カラム精製して下記式(31)に示す化合物を得た。
【0099】
次に、式(31)に示す化合物を蒸留等で脱水処理したトルエンに溶解し、窒素気流中で下記式(32)に示すチオフェノール類と反応させた。反応溶液を処理、カラム精製して式(8)に示す二色性色素を得た。
【0100】
【化28】
Figure 0003934729
【0101】
こうして得た式(8)に示す色素を液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に混合し、−5℃、10度、20度における溶解度を、沈澱が十分に残存していることを確認した上で上澄みを採取し、ろ過して吸光分析によって求めたところ、図1に示す結果を得た。
【0102】
図1から、本実施例により、溶解度の温度依存性が小さく、低温でも色素析出のおそれがない、溶解度が大きい着色液晶を得ることができたことがわかる。
【0103】
実施例2
上記式(11)に示すクマリン類色素と、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジフォスフェタン−2,4−ジサルファイドを、蒸留等で脱水処理したトルエンに溶解し、窒素気流中で110℃、20時間加熱かくはんした。反応溶液を処理し、カラム精製して、上記式(25)に示す化合物を得た。
【0104】
こうして得た式(25)に示す色素を液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に混合し、−5℃、10度、20度における溶解度を、沈澱が十分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取し、ろ過して吸光分析によって求めたところ、図2に示す結果を得た。
【0105】
図2から、本実施例により、溶解度の温度依存性が小さく、低温でも色素析出のおそれがない、溶解度が大きい着色液晶を得ることができたことがわかる。
【0106】
実施例3
上記式(13)に示すペリレン類色素と、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジフォスフェタン−2,4−ジサルファイドを、蒸留等で脱水処理したトルエンに溶解し、窒素気流中で180℃、20時間加熱かくはんした。反応溶液を処理し、カラム精製して、式(12)に示す化合物を得た。
【0107】
こうして得た式(12)に示す色素を、液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に混合し、−5℃、10度、20度における溶解度を、沈澱が十分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取し、ろ過して吸光分析によって求めたところ、図3に示す結果を得た。
【0108】
図3から、本実施例によると、溶解度の温度依存性が小さく、低温でも色素析出のおそれがない、溶解度が大きい着色液晶を得ることができた。
【0109】
比較例1
上記式(9)に示すアントラキノン類二色性色素化合物を液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に混合し、−5℃、10度、20度における溶解度を、沈澱が十分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取し、ろ過して吸光分析によって求めたところ、図1に示す結果を得た。
【0110】
図1から、本比較例に係る、上記式(9)に示す二色性色素化合物は、上記式(8)に示す硫黄置換体と比較して、溶解性および溶解安定性に劣ることが分かった。
【0111】
比較例2
上記式(11)に示すクマリン類二色性色素化合物を、液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に混合し、−5℃、10度、20度における溶解度を、沈澱が十分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取し、ろ過して吸光分析によって求めたところ、図2に示す結果を得た。
【0112】
図2から、本比較例に係る、上記式(11)に示す二色性色素化合物は、上記式(10)に示す硫黄置換体と比較して、溶解性および溶解安定性に劣ることが分かった。
【0113】
比較例3
上記式(13)に示すペリレン類二色性色素化合物を、液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に混合し、−5℃、10度、20度における溶解度を、沈澱が十分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取し、ろ過して吸光分析によって求めたところ、図3に示す結果を得た。
【0114】
図3から、本比較例に係る、上記式(13)に示す二色性色素化合物は、上記式(12)に示す硫黄置換体と比較して、溶解性および溶解安定性に劣ることが分かった。
【0115】
実施例4
下記式(33)(上記式(7)と同一)に示すアントラキノン類二色性色素化合物を、液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に混合し、−5℃、10度、20度における溶解度を、沈澱が十分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取し、ろ過して吸光分析によって求めたところ図8に示す結果を得た。
【0116】
【化29】
Figure 0003934729
【0117】
図8から、本実施例に係る二色性色素化合物は、溶解性および溶解安定性に優れていることが分かった。
【0118】
実施例5
プロトン供与性化合物として式(34)に示す3、9−ペリレンジカルボン酸と、プロトン受容性化合物である、式(35)に示すピリジン誘導体を液晶材料メルクジャパン社製TC−4368XXに溶解した。式(35)のRは、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル等のアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、ハロゲン等である。
【0119】
【化30】
Figure 0003934729
【0120】
下記表1に、式(34)で表す3、9−ペリレンジカルボン酸と式(35)で表すピリジン誘導体を混合した水素結合型(本実施例)と、式(34)で表す3、9−ペリレンジカルボン酸を直接エステル化した化合物と、式(34)で表す3、9−ペリレンジカルボン酸単体を液晶材料に溶解させたものの室温での飽和濃度を吸光分析にて測定した結果を示す。
【0121】
【表1】
Figure 0003934729
【0122】
上記表1から、本実施例では、溶解度は2.5wt%であった。式(34)に示す化合物を直接エステル化した場合の飽和濃度は0.9wt%であり、また下記式(36)に示す化合物単独の飽和濃度は0.1wt%以下であった。このように本実施例では格段に溶解度が向上している。
【0123】
【化31】
Figure 0003934729
【0124】
次に、この色素含有液晶材料にカイラル剤としてメルク社製S811を溶解させ、電極6、7をそれぞれ表面に有する基板4、5間(セル厚10μm、ツイスト角240°)に狭持して図4に示す液晶表示素子を作成した。
【0125】
図9に印加電圧に対する460nmの光の透過率を示した。比較例4として3、9ーペリレンジカルボン酸ジイソブチルエステルをTC−4368XXに溶解して全く同様の条件のセルに注入した場合の測定結果を併せて示した。
【0126】
本発明による水素結合型ゲストホスト方式の場合は3、9ーペリレンジカルボン酸ジイソブチルエステルを用いた場合と比較してしきい値電圧が低減してV−T特性の急峻性に優れていることが分かった。
【0127】
さらに本実施例にかかる色素含有液晶材料をセル厚10μm、パラレル配向のセルに注入し、配向方向に対して水平、または垂直方向の偏向の透過率を測定することによって二色比、配向秩序度を測定した。また3、9ーペリレンジカルボン酸ジイソブチルエステル及び式(34)に示す材料を単独で用いたものについても上記表1に示してある。このように、本実施例では二色比は11.1、配向秩序度は0.77と他の従来のものよりも格段に向上していることが分かる。
【0128】
このように、本実施例では、プロトン供与性化合物(水素結合ドナー)としてアントラキノンカルボン酸類(式(34))(色素)を、水素結合アクセプターとして4−フェニルピリジン(式(35))を用いた場合について、アントラキノンカルボン酸類(式(34))単独の場合と4−フェニルピリジン(式(35))が共に溶解している場合の溶解性の比較を上記表1に示した。
【0129】
またアントラキノンカルボン酸類(式(34))をエチルエステル化(アルキルエステル)した場合の溶解性をも併せて示した。
【0130】
上記表1に示すように、4−フェニルピリジン(式(35))を共に溶解させることによって溶解性はアントラキノンカルボン酸類(式(34))単独の場合と比較して約30倍(フッ素系液晶の場合)に向上する。一方アントラキノンカルボン酸類(式(34))をエチルエステル化した場合の溶解性はアントラキノンカルボン酸類の約10倍程度であった。
【0131】
また上記表1には、上記3種類の状態の配向秩序度を併せて示した。本発明のようにプロトン供与性化合物とプロトン受容性化合物により水素結合を形成することで、二色性色素の配向秩序度も向上することが分かった。これは水素結合が直線状の結合であるため二色性色素化合物の見かけの分子長が大きくなることに起因すると考えられる。
【0132】
本発明では、プロトン供与性化合物(水素結合ドナー)とプロトン受容性化合物(水素結合アクセプター)を共に液晶に溶解するだけで、水素結合により互いの化合物が結合されるので、エステル結合により分子長を長くする処理と比較すると、エステル化等の他の特別な合成を必要とせず、簡便かつ安価に製造することができる。
【0133】
実施例6
図10に示すように、プロトン供与性化合物1として実施例1で用いた3、9ーペリレンジカルボン酸(式(34))と、プロトン受容性化合物2として実施例1で用いたピリジン誘導体(式(35))を液晶材料としてTC−4368XX(メクル社製)に溶解した色素含有液晶材料を調合した。
【0134】
次に、この色素含有液晶材料を平均粒径10μmの液晶マイクロカプセル8中にカプセル化した。マイクロカプセルの製造方法はソープフリー重合法を用い、反応溶液の攪拌速度、重合速度等の調整により平均粒径が10μmとなるように調整した。
【0135】
こうして得た液晶マイクロカプセルをITO付ガラス基板表面に印刷し、本実施例の液晶表示素子を形成した。この素子に徐々に電圧を印加し印加電圧に対する460nmの光の透過率を測定した。この結果を図11に示す。本実施例による液晶表示素子のしきい値電圧は約3Vであった。またV−T特性の急峻性は液晶マイクロカプセルの粒径分布に依存し、粒径分布の半値幅が小さい程急峻であることが分かった。
【0136】
図11には、比較例5として色素材料として3、9ーペリレンジカルボン酸ジイソブチルエステルを用い、これを液晶TC−4368XX(メルク社製)に溶解して、本実施例と全く同様の条件で液晶マイクロカプセルを作成し、セルを作成した場合の測定結果を併せて示した。
【0137】
本実施例によるゲストホスト液晶表示素子の場合は、従来の3、9ーペリレンジカルボン酸ジイソブチルエステルを用いた場合と比較して、しきい値電圧が大幅に低減することが分かった。
【0138】
このように、本実施例では、プロトン供与性化合物とプロトン受容性化合物を液晶中に溶解し、これをマイクロカプセル化したものを調光層として用いるものである。
【0139】
図10に示すようにマイクロカプセルのポリマー外壁8に内包される液晶3中に少なくとも1つが可視光領域に吸収を有する色素からなるプロトン供与性化合物1(水素結合ドナー)とプロトン受容性化合物2(水素結合アクセプター)が共に溶解しており、これらの化合物が水素結合によって結合している。
【0140】
本発明によるゲストホスト液晶材料は、従来の、液晶材料に単に二色性色素を溶解しているものと比較すると、粘弾性が低いため、しきい値電圧を大幅に低減できる。
【0141】
マイクロカプセル化した液晶材料を基板上に形成する液晶表示素子は、透明電極を有する基板間に液晶材料をそのまま狭持したのみの液晶表示素子と比較して、界面の規制力が大きいためにしきい値電圧が高いことが問題になっていたが、本発明を用いることによって大幅にしきい値電圧を低減できる。
【0142】
実施例7
プロトン供与性化合物として式(36)に示すカルボキシル基を有するアントラキノン類色素と、プロトン受容性化合物として式(35)に示すピリジン誘導体を、液晶材料TC−4368XX(メクル社製)に溶解した色素含有液晶材料を用いて、実施例5と全く同様の検討を行った。
【0143】
室温における飽和濃度を吸光分析にて測定したところ上記表1に示すように3.0wt%であった。
【0144】
比較例として式(36)に示す化合物を直接エステル化(アルキルエステル)した色素を本実施例と同じ液晶材料中に溶解したものを用いその飽和濃度を測定したところ、飽和濃度は1.0wt%であった。このように、本実施例によるものの方が、直接エステル化するより溶解性の向上の度合いが大きいことが分かった。また単に式(36)に示す化合物を液晶中に溶解させたものの飽和濃度は、0.1wt%以下であった。
【0145】
次に、この実施例に用いた色素含有液晶材料を、図4に示すように、セルに注入し、液晶表示素子を形成した。この液晶表示素子の電気光学特性を測定した。その結果を図12に示す。図12には、比較例6として、カルボキシル基を有するアントラキノン類色素のアルキルエステルを、液晶材料TC−4368XX (メルク社製)に溶解して本実施例と全く同様の条件のセルに注入した場合の測定結果を併せて示した。
【0146】
本発明による液晶表示素子は、比較例6と比較して、しきい値電圧が低減してV−T特性の急峻性に優れていることが分かった。
【0147】
さらに本実施例にかかる色素含有液晶材料をセル厚10μm、パラレル配向のセルに注入し、配向方向に対して水平、または垂直方向の偏向の透過率を測定することによって二色比、配向秩序度を測定した。またカルボキシル基を有するアントラキノン酸色素のアルキルエステル及び式(36)に示す材料を単独で用いたものについても上記表1に示す。
【0148】
このように、本実施例では、二色性比は8.52、配向秩序度は0.71と他の従来のものよりも格段に向上していることが分かる。
【0149】
実施例8
プロトン供与性化合物として実施例4で用いたカルボキシル基を有するアントラキノン類色素(式(36))とプロトン受容性化合物として実施例4で用いたピリジン誘導体(式(34))を液晶材料TC−4368XX(メクル社製)に溶解し、色素含有液晶材料を調合した。これを用いて平均粒径10μmの液晶マイクロカプセルを作成した。マイクロカプセルの製造方法はソープリー重合法を用い、反応溶液の攪拌速度、重合速度等の調整により平均粒径が10μmとなるように調整した。
【0150】
こうして得た液晶マイクロカプセルをITO付ガラス基板表面に印刷し、本実施例の液晶表示素子を形成した。図13に印加電圧に対する460nmの光の透過率を示した。しきい値電圧は約3Vであった。またV−T特性の急峻性は液晶マイクロカプセルの粒径分布に依存し、粒径分布の半値幅が小さい程急峻であることが分かった。
【0151】
図13には、比較例7としてカルボキシル基を有するアントラキノン類色素のアルキルエステルを液晶材料TC−4368XX(メルク社製)に溶解して本実施例と全く同様の条件で液晶マイクロカプセルを作成し、セルを作成した液晶表示素子の測定結果を併せて示した。
【0152】
本実施例による液晶表示素子は、比較例7の場合と比較して、しきい値電圧が大幅に低減することが分かった。
【0153】
実施例9
プロトン供与性化合物として下記式(37)に示すカルボキシル基を有するアントラキノン類色素と、プロトン受容性化合物として下記式(38)に示すピリジン骨格を有する化合物を、共に液晶材料TC−4368XX(メクル社製)に溶解し、色素含有液晶材料を調合した。
【0154】
次に、図4に示すように、この着色液晶にカイラル剤としてメルク社製S811を溶解させ、これを表面に電極6、7を有する基板4、5をセル厚10μmのツイスト角240°に組立、この間に注入して液晶表示素子を形成した。本液晶セルは電圧無印加時は黒色を呈し、電圧を印加するに従って、図14に示すように視感反射率が増加した。
【0155】
【化32】
Figure 0003934729
【0156】
実施例10
プロトン供与性化合物として式(38)に示すカルボキシル基を有するアントラキノン類色素とプロトン受容性化合物として下記式(39)に示すピリジン骨格を有する化合物を共に液晶材料TC−4368XX(メクル社製)に溶解した。
【0157】
【化33】
Figure 0003934729
【0158】
次に、図4に示すように、この着色液晶にカイラル剤としてメルク社製S811を溶解させ、これを表面に電極6、7を有する基板4、5をセル厚10μmのツイスト角240°に組立て、この間に注入して液晶表示素子を作成した。
【0159】
本実施例の液晶表示素子は、液晶セルは電圧無印加時はブルーを呈し、電圧を印加するに従って図15に示すように、(A、B、C)とブルーからイエロー方向に色相が変化した。
【0160】
実施例11
1,5−ジクロロアントラキノン1.02g(3.68mmol)を20mlのジメチルホルムアミドに溶解させ、窒素雰囲気下で80度に加熱した。ここに下記式(40)に示す4種のチオフェノール誘導体を大過剰、炭酸ナトリウムを1,5−ジクロロアントラキノンに対して2当量同時に加えて3時間かくはんし、室温で終夜静置した。次に、吸引ろ過によって結晶をろ別し、ジメチルホルムアミド、続いて水で洗浄し、湿式カラム精製して式(24)に示す二色性色素混合物を得た。収率は90%であった。
【0161】
【化34】
Figure 0003934729
【0162】
こうして得たイエローの色素を液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に室温で混合し、−5度、10度、20度における溶解度を沈澱が十分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取、ろ過して吸光分析によって求めた。その結果、本実施例に係る二色性色素混合物は、溶解度の温度依存性が小さく、低温でも色素析出のおそれがない着色液晶を得ることができることがわかった。
【0163】
図16に該色素混合物を含む着色液晶溶液の分光透過スペクトルを示す。
【0164】
実施例12
1,4,5,8−テトラクロロアントラキノンを用いたことを除いて、実施例11と同様にして上記式(40)に示すチオフェノール誘導体を反応させ、下記式(41)に示すマゼンタの二色性色素を得た。収率は80%であった。
【0165】
【化35】
Figure 0003934729
【0166】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 は、H、メチル基、エチル基、またはt−ブチル基を示す。)
実施例11と同様にして溶解度を測定し、図17に示す結果を得た。図17から、本実施例によると、二色性色素の溶解度の温度依存性が小さく、低温でも色素析出のおそれがない着色液晶を得ることができたことがわかる。本実施例に係る二色性色素は、実施例11に係る二色性色素よりも溶解性が大きいが、これは混合物を構成する二色性色素の種類が実施例11より多いことによるものと考えられる。図18に、該色素混合物を含む着色液晶溶液の分光透過スペクトルを示す。
【0167】
実施例13
1,5−ジクロロアントラキノンを用い、実施例11と同様にして下記式(42)に示す2種のチオフェノール置換体を反応させ、下記(式43)に示すマゼンタの二色性色素混合物を得た。収率は80%であった。その結果、二色性色素溶解度の温度依存性が小さく、低温でも色素析出のおそれがない着色液晶を得ることができた。
【0168】
【化36】
Figure 0003934729
【0169】
比較例8
上記式(25)(n=3)に示す、置換基にフレクシブル部位を有するマゼンタの二色性色素化合物について、実施例11,12と同様にして溶解度を測定した。その結果を図6に示す。図6からわかるように、この二色性色素は、20℃の溶解度は大きいが、低温における溶解度が著しく小さいことが分かった。該着色液晶(色素濃度1.4%)をセル厚10μmのセルに注入し、−5℃で150時間静置したところ、針状結晶の析出が確認された。
【0170】
実施例14
1,5−ジクロロアントラキノン1.02g(3.68mmol)を20mlのジメチルホルムアミドに溶解し、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。ここに過剰の式(44)、式(45)に示すチオフェノール誘導体、1,5−ジクロロアントラキノンに対して2当量の炭酸ナトリウムを同時に加えて3時間かくはんし、室温で終夜静置した。
【0171】
【化37】
Figure 0003934729
【0172】
次に、吸引ろ過によって結晶をろ別した。結晶は塩化ナトリウムが殆どであるが、一部溶解性が悪い色素分子が含まれている。ろ液はエバポレーションによって濃縮し、湿式カラムで過剰分のチオフェノール誘導体を除去した。
【0173】
このようにして得たイエローの色素混合物を液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)と室温で混合し、3カ月間静置した。沈澱が十分に残存していることを確認し、上澄みを採取して吸光分析によって溶解度を求めたところ、4.3wt%であった。
【0174】
実施例15
1,4,5,8−テトラクロロアントラキノンを用いたことを除いて、実施例14と全く同様の反応を行い、分離精製してマゼンタの色素混合物を得た。室温における溶解度は4.0%であった。実施例14よりも溶解性が大きいのは、混合しているジアステレオマーの種類がより多いことによるものと考えられる。
【0175】
実施例16
1,5−ジクロロアントラキノンを用い、チオフェノール誘導体の代わりに下記式(46)、(47)に示すアニリン誘導体を導入した。合成法は実施例14とほぼ同一であるが、反応性が実施例14の場合よりも悪いため、触媒を投入して170℃で10時間かくはんした。
【0176】
得られたマゼンタの混合色素の室温における溶解度は、4.5wt%であった。
【0177】
【化38】
Figure 0003934729
【0178】
実施例17
1,5−ジクロロアントラキノンを用い、下記式(48)に示すアニリン誘導体を導入した。合成法は実施例16と同様に行った。再結晶法により光学分割して、室温における溶解度を測定ところ、3.9wt%であった。後述する比較例12の結果との比較より、光学分割することによって溶解性が著しく向上することが分かった。
【0179】
【化39】
Figure 0003934729
【0180】
比較例9
1,5−ジクロロアントラキノンに4−n−ブチルチオフェノール、および4−エチルチオフェノールを実施例14と同様の方法で導入し、イエローの色素混合物を得た。得られた混合色素の室温における溶解度は、0.5wt%であり、実施例14で得た色素混合物と比較して溶解度が著しく小さいことが分かった。
【0181】
比較例10
1,4,5,8−テトラクロロアントラキノンに4−n−ブチルチオフェノール、および4−エチルチオフェノールを実施例14と同様の方法で導入し、マゼンタの色素混合物を得た。得られた混合色素の室温における溶解度は0.9wt%であり、実施例15で得た色素混合物と比較して、溶解度が著しく小さいことが分かった。
【0182】
比較例11
1,5−ジクロロアントラキノンに4−n−ブチルアニリン、および4−エチルアニリンを実施例16と同様の方法で導入した。得られたマゼンタの混合色素の室温における溶解度は0.6wt%であり、実施例16で得た色素混合物と比較して溶解度が著しく小さいことが分かった。
【0183】
比較例12
1,5−ジクロロアントラキノンを用い、上記式(48)に示すアニリン誘導体を導入した。合成は実施例16と同様に行った。室温における溶解度を測定したところ、0.2wt%であり、実施例14で得た色素混合物と比較して溶解度が著しく小さいことが分かった。
【0184】
実施例18
下記式(49)に示すような、チオカルボニル基を有し、かつ剛直な置換基のみを有する色素混合物を、液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に混合し、−5℃、10度、20度における溶解度を、沈澱が十分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取し、ろ過して吸光分析によって求めたところ、図19に示す結果を得た。
【0185】
【化40】
Figure 0003934729
【0186】
(式中、R1 、R2 は、エチル基またはt−ブチル基を示す。)
図19から、本実施例に係る二色性色素混合物は、チオカルボニル基を有することと、剛直な置換基のみを有することの2つの作用の相乗効果により、1つの作用単独の場合の効果よりも、さらに溶解性および溶解安定性に優れていることが分かった。
【0187】
また、この二色性色素混合物を溶解した着色液晶の保持率を測定したところ、太陽光10万ルクス照射後、50℃で98.5%であった。
【0188】
実施例19
下記式(50)に示すような、チオカルボニル基を有し、複数のカイラル中心を有し、かつ剛直な置換基のみを有する色素混合物を、液晶材料LIXON4033−000XX(商品名:チッソ化学工業社製)に混合し、−5℃、10度、20度における溶解度を、沈澱が十分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取し、ろ過して吸光分析によって求めたところ、図19に示す結果を得た。
【0189】
【化41】
Figure 0003934729
【0190】
図19から、本実施例に係る二色性色素混合物は、チオカルボニル基を有することと、複数のカイラル中心を有することと、剛直な置換基のみを有することの3つの作用の相乗効果により、1つの作用単独の場合の効果よりも、さらに溶解性および溶解安定性に優れていることが分かった。
【0191】
また、この二色性色素混合物を溶解した着色液晶の保持率を測定したところ、太陽光10万ルクス照射後、50℃で98.3%であった。
【0192】
以下、本発明の第5の態様について説明する。
【0193】
反射型カラー表示素子において明るい色表示を得るためには、既に述べたように、カラーフィルター、偏光板を用いない表示方式である必要がある。また、3層積層型表示素子は、構造が複雑であり、量産に向くものではない。この問題を解決するために、液晶をポリマーによってマイクロカプセル化し、印刷等で基板上に塗布、積層させる方法が提案されている。しかし、液晶マイクロカプセルはしきい値電圧が大きく、消費電力が大きくなることが分かった。
【0194】
本発明の第5の態様は、液晶マイクロカプセルにおいて、しきい値電圧を低減し、反射型表示素子の消費電力低減を目的としたものである。また、本発明の第5の態様は、液晶マイクロカプセルを用いない液晶セルにおいても、しきい値電圧を低減させ、従来の表示素子においても低消費電力駆動を実現することを目的とする。
【0195】
本発明者らは、上記の問題点を考慮して鋭意検討した結果、アントラキノンを基本骨格とする二色性色素に、トラン(ジフェニルアセチレン)骨格またはジフルオロスチルベン骨格を置換基として導入した二色性色素を液晶に溶解することにより、液晶セルのしきい値電圧を大幅に低減することができることを見い出し、本発明をなすに至った。
【0196】
即ち、本発明の第5の態様に係る二色性色素は、例えば下記式(51)に示すようなアントラキノン類二色性色素である。
【0197】
【化42】
Figure 0003934729
【0198】
(式中、XはO、S、−CH2 −、−NH−、−N(Me)−、−S−CH2 −、−O−CH2 −を示し、A1 、A2 はH、NH2 、NO2 を示し、R1 、R2 はニトロ基またはアルキル基を示し、m、n、s,tは0〜4の整数、ただし同時に0となることはなく、ただしm+s4、n+t4である。)
なお、トランの末端にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、またはニトロ基等の電子吸引性置換基を導入することができる。
【0199】
トラン骨格は直線性が高いため、これを置換基として導入することにより、色素の二色性比が向上し、表示素子のコントラストが増加して、鮮明な色表示を得ることができる。また、トランの末端にニトロ基等の電子吸引基を導入した場合は、トランの誘導率異方性が大きくなり、液晶全体のしきい値電圧、飽和電圧が低減し、低消費電力駆動を実現することができる。また、ジフルオロスチルベン骨格を導入した場合も、低消費電力駆動を実現することができる。
【0200】
本発明の第5の態様に係る二色性色素としては、下記式(52)に示すようなクマリン類色素、下記式(53)に示すようなペリレン類色素を挙げることができる。いずれも二色性比向上、しきい値電圧低減を実現することができる。
【0201】
【化43】
Figure 0003934729
【0202】
(式中、R1 、R2 はアルキル基、R3 はアルキル基、ニトロ基を示す。)
【化44】
Figure 0003934729
【0203】
本発明の第5の態様に係る二色性色素に基づくしきい値電圧、飽和電圧低減効果は、通常の液晶セルに対して効果があるが、特に、しきい値電圧、飽和電圧が大きいことが問題になる液晶マイクロカプセル、高分子分散型液晶セルにおいて大きな効果を発揮することができる。
【0204】
本発明の第5の態様は、アントラキノン類色素、クマリン類色素、ペリレン類等の色素にトラン(ジフェニルアセチレン)置換基を導入したゲスト−ホスト方式表示素子に関するものである。トラン,ジフルオロスチルベンの導入により、二色性色素、延いては着色液晶材料の誘導率異方性が大きくなり、液晶セルのしきい値電圧、飽和電圧が低減され、低電圧駆動を実現することができる。また、トランの導入により、二色性色素の配向秩序度が大きくなり、もって表示素子のコントラストを増加せしめ、鮮明な表示を得ることができる。
【0205】
実施例20
下記式(54)に示すアントラキノン類二色性色素化合物をメルクジャパン社製液晶TC−4368XXに1wt%の濃度で溶解し、着色液晶を作成した。この着色液晶を厚さ10μm、240°ツイストのSTNセルに注入し、しきい値電圧の測定を行ったところ、1.5V(トラン,ジフルオロベンゾフェノン)であった。さらに、この着色液晶を用いて平均粒径10μmの液晶マイクロカプセルを作成した。
【0206】
このようにして得た液晶マイクロカプセルを、印刷法等でITO付きガラス基板に塗布し、さらにその上に隙間ができないようにITO付きガラス基板に張り合わせて、セルを作成した。このセルのしきい値電圧、飽和電圧は、トランの場合、それぞれ1.7V、15Vであり、配向秩序度Sは0.78であった。なお、ジフルオロベンゾフェノンの場合は、それぞれ1.7V,15V,S=0.75であった。
【0207】
【化45】
Figure 0003934729
【0208】
実施例21
下記式(55)に示すクマリン類二色性化合物を用い、濃度を0.2wt%とした以外は、実施例20と全く同様にして、STNセルを作成した。このSTNセルのしきい値電圧は1.4V(トラン,ジフルオロベンゾフェノン)であった。さらに、得られた着色液晶を用いて、実施例20と全く同様にして、セルを作成した。このセルのしきい値電圧、飽和電圧は、トランの場合、ジフルオロベンゾフェノンの場合、ともにそれぞれ1.6V、13Vであった。
【0209】
これらの結果は、実施例20と比較して色素濃度が小さいが、これは実施例20のアントラキノン類色素と比較して、本実施例のクマリン類色素は吸光係数が大きく、鮮明な色表示を得るのに必要とされる濃度が小さくて済むからである。一般に、液晶に色素を溶解すると、液晶の粘弾性が増加し、しきい値電圧が大きくなる。この点を考慮すると、吸光係数が大きい色素を用いる本実施例は有効である。実際に、実施例20よりも小さいしきい値電圧、飽和電圧を得ることができた。また配向秩序度Sは、トランの場合0.70、ジフルオロベンゾフェノンの場合0.66であった。
【0210】
【化46】
Figure 0003934729
【0211】
実施例22
下記式(56)に示すペリレン類二色性色素を用い、濃度を0.8wt%とした以外は、実施例20と全く同様にして、STNセルを作成した。このSTNセルのしきい値電圧は1.6V(トラン,ジフルオロベンゾフェノン)であった。また、得られた着色液晶を用いて、実施例20と全く同様にして、液晶マイクロカプセルのセルを作成した。このセルのしきい値電圧、飽和電圧はそれぞれ1.8V、16V(トラン,ジフルオロベンゾフェノン)であった。
【0212】
これらの結果は、実施例20と比較して、しきい値電圧、飽和電圧はやや大きいが、これはペリレン類色素の場合、液晶に及ぼす粘弾性増加効果が他の色素より大きいことによるものと考えられる。またトランの場合、配向秩序度Sは0.70、ジフルオロベンゾフェノンの場合、Sは0.67であった。
【0213】
【化47】
Figure 0003934729
【0214】
比較例13
下記式(57)に示すアントラキノン類二色性色素を用い、実施例20と全く同様のSTNセルを作成した。このSTNセルのしきい値電圧は1.9Vであった。さらに、実施例1と全く同様にして液晶マイクロカプセルのセルを作成した。このセルのしきい値電圧は2.5V、飽和電圧は20Vであった。また、配向秩序度Sは0.76であった。
【0215】
【化48】
Figure 0003934729
【0216】
比較例14
下記式(58)に示すクマリン類二色性色素を用い、実施例21と全く同様のSTNセルを作成した。このSTNセルのしきい値電圧は1.8Vであった。さらに、実施例21と全く同様にして液晶マイクロカプセルを作成した。このセルのしきい値電圧は2.3V、飽和電圧は19Vであった。また、配向秩序度Sは0.61であった。
【0217】
【化49】
Figure 0003934729
【0218】
比較例15
下記式(59)に示すペリレン類二色性色素を用い、実施例22と全く同様のSTNセルを作成した。このSTNセルのしきい値電圧は2.0Vであった。さらに、実施例22と全く同様にして、液晶マイクロカプセルを作成した。この液晶マイクロカプセルのしきい値電圧は2.7V、飽和電圧は22Vであった。また、配向秩序度Sは0.51であった。
【0219】
【化50】
Figure 0003934729
【0220】
実施例23
下記式(60)に示すクマリン類色素と、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジフォスフェタン2,4−ジサルファイドを蒸留等で脱水処理したトルエンに溶解し、窒素気流中、110℃で2時間、加熱し、撹拌した。反応溶液を処理し、カラム精製して、下記式(61)に示すイエロー色素を得た。
【0221】
このようにして得た下記式(61)に示す色素を、液晶材料LIXSON4033−000XX(チッソ化学工業社製)に混合し、24℃、−5℃における溶解度を、沈殿が充分に残存していることを確認した上で、上澄みを採取し、濾過して吸光分析により求めたところ、下記表2に示す結果を得た。
【0222】
【化51】
Figure 0003934729
【0223】
比較例16
上記式(60)に示すクマリン類色素の−5℃、24℃における溶解度を測定した。その結果を同様に下記表2に示した。
【0224】
【表2】
Figure 0003934729
【0225】
上記表2から、クマリン類色素のカルボニル基の酸素原子を硫黄原子で置換した二色性色素は、硫黄原子で置換しないものに比べ、液晶材料への溶解度がはるかに高いことがわかる。
【0226】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1の態様によれば、二色性色素のカルボニル基の酸素原子、エステルの酸素原子を硫黄原子またはセレン原子で置換することにより、液晶に対する溶解性、溶解安定性に優れ、かつ着色液晶の抵抗値が高い二色性色素が得られ、その結果、明るく鮮明な色表示が得られる液晶表示素子が提供される。
【0227】
また、本発明の第2の態様は、プロトン供与性化合物とプロトン受容性化合物がともに液晶層に溶解し、互いに水素結合にて接合されており、これらの化合物の中で少なくとも一方の化合物が色素である。こうすることで水素結合のフレクシビリティから液晶材料の粘弾性が低下してしきい値電圧の低減、電気光学特性の向上、応答の高速化が達成され、水素結合の直線性から見かけの分子長が大きくなるため二色比、配向秩序度が増加する。また液晶の対する色素の溶解性が大幅に向上する。
【0228】
更に、本発明の第3の態様によれば、二種類以上の二色性色素を含有する着色液晶において、すべての二色性色素分子を基本骨格と置換基の接合部以外の部位を剛直部のみとすることにより、液晶への溶解度の温度依存性を低減し、低温においても色素の析出がない高濃度着色液晶を用いた液晶表示素子を実現することが可能である。
【0229】
更にまた、本発明の第4の態様によれば、二色性色素分子に複数の不斉源を導入してジアステレオマー同士の混合物とし、または不斉源を有する二色性色素分子において、一方の鏡像体のみが存在するように光学分割することによって液晶への溶解性を向上させることが可能となり、この効果によって鮮明な色表示、消費電力低減、電場に対する応答速度の増大を実現できる液晶表示素子が提供される。
【0230】
また、本発明の第5の態様では、二色性色素が、アントラキノン類、クマリン類、ペリレン類等の基本骨格にトラン(ジフェニルアセチレン)部位またはジフルオロベンゾフェノンを導入したものであり、色素の二色性比、誘導率異方性を向上させるものである。これによって、液晶表示素子のコントラスト向上、しきい値電圧、飽和電圧低減が実現され、低電圧駆動で鮮明な表示を得ることができるようになった。本発明の第5の態様は、特に液晶マイクロカプセルを用いた表示素子において、大きな効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例1の二色性混合色素の飽和温度と溶解度の関係を示す特性図。
【図2】実施例2および比較例2の二色性混合色素の飽和温度と溶解度の関係を示す特性図。
【図3】実施例3および比較例3の二色性混合色素の飽和温度と溶解度の関係を示す特性図。
【図4】本発明の第2の態様に係る液晶表示素子を示す断面図。
【図5】液晶に対する二色性混合色素の飽和温度と溶解度の関係を示す特性図。
【図6】二色性混合色素の直鎖状アルキル基の炭素数と溶解度および温度依存性を示す特性図。
【図7】光学分割によって溶解性が増大するタイプの二色性混合色素の結晶形態を説明する図。
【図8】実施例4の二色性混合色素の飽和温度と溶解度の関係を示す特性図。
【図9】実施例5および比較例4の液晶表示素子の電気光学特性を示す特性図。
【図10】本発明の第2の態様に係る液晶表示素子の液晶マイクロカプセルを説明する図。
【図11】実施例6および比較例5の液晶表示素子の電気光学特性を示す特性図。
【図12】実施例7および比較例6の液晶表示素子の電気光学特性を示す特性図。
【図13】実施例8および比較例7の液晶表示素子の電気光学特性を示す特性図。
【図14】実施例9の液晶表示素子の電気光学特性を示す特性図。
【図15】実施例10の液晶表示素子の色相変化を示す図。
【図16】実施例11の二色性混合色素の分光透過スペクトルを示す特性図。
【図17】実施例12の二色性混合色素の飽和温度と溶解度の関係を示す特性図。
【図18】実施例12の二色性混合色素の分光透過スペクトルを示す特性図。および
【図19】実施例18および19の二色性混合色素の飽和温度と溶解度の関係を示す特性図。
【符号の説明】
a…(+)体色素分子
b…(−)体色素分子
1…プロトン供与性化合物
2…プロトン受容性化合物
3…液晶分子
4,5…基板
6,7…電極
8…マイクロカプセルのポリマー外壁

Claims (1)

  1. 対向して配置され、対向面に電極を有する、一対の基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層が、下記式(1)〜(7)のいずれかに示す骨格を有する二色性色素分子を溶解した液晶を主成分とする液晶表示素子。
    Figure 0003934729
    (式中、X、YはO、S、またはSeを示し、ただし、X、YがともにOの場合はない。)
    Figure 0003934729
    (式中、X、YはO、S、またはSeを示し、ただし、X、YがともにOの場合はなく、R1 、R2 は、H、アルキル基またはシクロアルキル基を示し、A、BはSまたはNHを示し、m、nは0〜4の整数を示す。)
    Figure 0003934729
    (式中、XはO、SまたはSeを示し、YはO、S、Seを示す。ただし、X、YともにOの場合は除く。)
    Figure 0003934729
    (式中、XはSまたはSeを示し、R1 、R2 はH、アルキル基を示す。)
    Figure 0003934729
    (式中、X、YはSを示し、Z、WはO、S、またはSeを示し、ただし、Z、WすべてがOの場合はなく、R1 、R2 は、アルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、もしくはこれらの置換体を示す。)
    Figure 0003934729
    (式中、X、YはO、S、Seを示し、ただし、X、YともにOの場合はなく、R1 、R2 は、アルキル基、フェニル基、シクロアルキル基、もしくはこれらの置換体を示す。)
    Figure 0003934729
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