JP3934651B2 - マルチキャリア通信システム及びその受信装置 - Google Patents
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Description
フィルタバンク変調、DMT変調、FMT変調などのマルチキャリア通信システムにおけるビットエラー率(BER)は、チャネル間干渉(Inter channel Interference:ICI)による歪みが含まれる受信信号を利用することにより改善が可能である。チャネル間干渉は通信システム、たとえばOFDM−CDMAにおいてシステム誤動作により、あるいはサブチャネル間の直交性の喪失などの不可避な環境により発生する。このチャネル間干渉はスペクトルエネルギーの漏洩、時にはサブチャネル間のクロストークと呼ばれ漏洩に起因する。
本発明のターボレシーバの主な利点は、ICIの振る舞いが、零平均ガウス分布確率変数(例えば下記文献1で使用されたガウス近似)として扱われることであり、有限状態離散マルコフプロセスモデルを採用する。このようなICIモデルでは、ICIの性質から簡易ガウス近似がより現実的であるように思われる。本発明のターボレシーバは最大事後確率推定アルゴリズムに基いている。このターボレシーバでは、非線形処理後に一方のサブチャネルから導出した情報が他方のサブチャンネルの推定最大事後確率を精練し、同様に、他方のサブチャネルから導出した情報が一方のサブチャンネルの推定最大確率を精練する。
文献1:K.Sathananthan and C.Tellambura,“Probability of error calculation of OFDM system with frequency offset”,IEEE Trans.Commun.Vol.49,No.11,Nov.2001,pp1884−1888.
帯域を独立の狭帯域である複数のサブバンドに分割し、かつ、サブバンド毎の送信データを周波数多重して送受信するマルチキャリア通信システムにおいて、たとえば、フィルタバンク変調、DMT(Discrete Multitone)変調、FMT(Filtered Multitone)変調などのマルチキャリア通信システムにおいて、フィルタセットの選択はシンボル間干渉(ISI)とチャネル間干渉(ICI)を完全に除去するという拘束の下で実行されてきた。
ドップラーシフトがなく、且つ、送受信器間でオフセット周波数がなく、しかも信号歪を起こさない理想的な伝送チャネルでは、この拘束は受信機において伝送シンボルのエラーフリーの復元を保証する。しかし、発振器の不正確なチューニングやドップラーシフトにより各チャネルに発生する周波数オフセットは、スペクトル漏洩あるいはICIによるBER劣化を引き起こす。
そのようなBERの劣化を緩和する唯一の方法は、周波数オフセットをできるだけ小さく、具体的には、サブキャリア周波数間隔の1%以内に維持することである。しかしながら、この方法は、精密な周波数オフセット推定を必要とし、また、ノイズが混合されたマルチキャリア信号を受信する際、ノイズレベルが大きいと、周波数オフセット推定の精度を損なうという問題がある。更に、この方法は、高速フェージングチャネルにおいて、すなわち、ドップラーシフトが伝送シンボルに対して一定でなく、しかも、時間により変化する高速フェージングチャネルにおいて、正しく動作しない。
ここではDMTベースシステムと理想白色ガウス雑音(AWGN)チャネルを想定する。又、シンボル間干渉ISIのレベルはチャネル間干渉ICIや他の雑音信号に比べて無視し得るものであると想定する。簡単化するために、着目サブチャネルと該着目サブチャネルの下方に配置された第1の隣接サブチャネルと上方に配置された第2の隣接サブチャネルのみを考える。図1及び図2は周波数オフセットが零の場合と(図1)、周波数オフセットが零でない場合(図2)における、3つのサブチャネルの周波数応答を示す。第1、第2、第3のサブチャネルに対応する中心周波数f1,f2,f3の信号は図1、図2において垂直矢印で示されている。図1、図2において、サブチャネル番号0(ch0)は着目チャネルを示し、サブチャネル番号−1(ch−1)は周波数スケールにおいて着目チャネルより下に置かれるサブチャネルを示し、サブチャネル番号+1(ch+1)は周波数スケールにおいて着目チャネルより上に置かれるサブチャネルを示す。DMTシンボルの周期をTとすると、周波数スケールは1/Tに等しいチャネル間隔で正規化される。すなわち、周波数スケールの1単位はチャネル間隔である。図1に示されているように、周波数オフセット(チャネル間隔で正規化されている)αが0の時、図中の実線Aと断続線Bで示される下方サブチャネルと上方サブチャネルの伝達関数は、着目サブチャネル(点線C)の中心周波数f2において無限の減衰を与える。又、同様に着目サブチャネルの伝達関数は、下方及び上方のサブチャネルの中心周波数f1,f3おいて無限の減衰を与える。すなわち、周波数オフセットαが零であれば、隣接サブチャネル間にICIは発生しない。言い換えると、周波数オフセットが零であれば、それぞれのサブチャネルは直交し、ICIは完全に存在しない。
しかし、周波数オフセットαが零でないと、サブチャネルの直交性が崩れ、ICIが発生する。図2はDMTシステムにおいて周波数オフセットαが零でないときの各サブチャネルのスペクトル特性を示す。隣接サブチャネルのスペクトルは−3dBでクロスし、最初のサイドローブは−13dBと高い。システムモデルの複雑性をさけるために以下では1及び2チャネル間隔離れたサブチャネル同士が干渉する場合を考える。隣接サブチャネルのスペクトルは、図2においてα0−1,α1−1;α10,α−10;α01,α−11として示される非零の相互ゲインを有することは明らかである。この表記においてαの第1インデックスは干渉源であるサブチャネルを示し、第2インデックスは干渉対象のサブチャネルを示す。すなわち、α−10は番号−1の下位サブチャネルからサブチャネル番号0の着目チャネルへの漏れ伝達係数(振幅)を示し、α−11は番号−1の下位サブチャネルからサブチャネル番号1の上位チャネルへの漏れ伝達係数(振幅)を示し、α01はサブチャネル番号0の着目サブチャネルから番号1の上位のサブチャネルへの漏れ伝達係数を示し、α0−1は番号0の着目サブチャネルからサブチャネル番号−1の下位サブチャネルへの漏れ伝達係数を示し、α10はサブチャネル番号+1の上位サブチャネルから番号0の着目サブチャネルへの漏れ伝達係数を示す。以上のように、周波数オフセットαが零でないと、非零の相互ゲイン、すなわち、サブチャネル間にICI(クロストーク)を発生する。
(b)通信システムの一般的なモデル
図3は周波数オフセットを有するDMTシステムにおける4つのサブチャネルの相互ICIを示すための一般的なモデル(4サブチャネル−モデル)である。本発明のターボレシーバによれば、3つのサブチャネル−モデル(図4参照)と比べると4つのサブチャネル−モデルの方がDMTの低ロールオフスペクトル特性のために大抵はトータルシステムBERを改善することが可能である。11,12,13はサブチャネルch−1,ch0,ch+1、ch+2の送信装置、21,22,23,24は各サブチャネルの受信装置、31,32,33,34は各サブチャネルの伝送路、4ijは番号iのサブチャネルから番号jのサブチャネルへの漏れ伝達係数(干渉係数)αijをサブチャネル信号Diにそれぞれ乗算する乗算器、51,52,53,54は隣接のサブチャネルからのクロストーク(ICI)を自分のサブチャネル信号に合成する第1の合成部、61,62,63,64は2チャネル間隔離れたサブチャネルからのクロストーク(ICI)を自分のサブチャネル信号に合成する第2の合成部、71,72,73,74はノイズ合成部である。
図3から明らかなように下位サブチャネルch−1からの信号はクロストーク係数α−10を介して着目サブチャネルch0に漏洩し、上位サブチャネルch+1からの信号はクロストーク係数α10を介して着目サブチャネルに漏洩し、更に上位サブチャネルch+2からの信号はクロストーク係数α20を介して着目サブチャネルch0に漏洩する。尚、更に下位のサブチャネルch−2からの信号がクロストーク係数α−20を介して着目サブチャネルに漏洩するが、ch+2からの漏洩と同様に考えられるので説明は省略する。図3のモデルは相互干渉のサブチャネルは上位及び下位のサブチャネルであると限定しているけれど、通信システム全体のサブチャネル数は限定しておらず4より大きなN個のサブチャネルを有するマルチキャリア通信システムにも適用できる。しかしながら、かかる場合でも各サブチャネルへの干渉は、下位の2つのサブチャネル及び上位の2つのサブチャネルからのみである。この場合、干渉係数は係数の連鎖を示す。サブチャネル間の周波数直交性の理由で、図3でn1(t),n2(t),n3(t),n4(t)と表記されているノイズ成分は統計的に独立(相関無し)である。
サブチャネルが周波数ドメインに配置されているとしているが、同様のモデルは、DMT変調方式やフィルタバンク変調方式などのシステムに対してのみならずその他のシステムに適用され得る。また、ディメンジョンを他の領域、例えば空間(空間分割多重アクセス)、極性その他の領域に拡張できる。
(c)技術的課題
図3のモデルはICIの原因になる物理プロセスを理解する上で有益である。このモデルを用いていうならば、課題は、ICIが発生しても、各サブチャネルの受信信号や送信情報シンボルの値(2進数であれば符号)を正しく決定できるようにすることである。
受信装置におけるICIを緩和する1つの可能性のある方法は、以下の文献2で提案されているICIキャンセルのための判定帰還イコライザ(DFE)を採用することである。
文献2:Viterbo and K.Fazel,“How to combat long echoes in QFDM transmission schemes:Subchannel equalization or more powerful channel coding,”Proc.IEEE Globecom’95,Singapore,Nov.1995,pp.2069−2074
ところで、個々の受信装置の出力がハードビットデシジョン(硬判定)の形式であると、サブチャネル間で情報を共有しても、わずかな利点が存在するにすぎない。これは硬判定であるDFEの動作範囲を制限する。
以上のアプローチが多くの実際のケースで有効であっても、ICIの効果を最小化するものであり次善の策である。なぜならば、ICIには送信シンボルについての情報が含まれているからであり、このICIに含まれる送信シンボル情報を用いて受信信号を良好に復調できる可能性があるからである。
以上から、本発明の目的は、ICIが存在する通信システムにおいて該ICIを利用してBERパフォーマンスを改善することである。
本発明の別の目的は、ICIを利用した事後確率に基づいてBERを小さくすることである。
上記着目サブチャネルの受信部は、▲1▼クロストークパスの結合度を考慮して、着目サブチャネルを介して受信したデータが2値の一方である確率と他方である確率との差を前記軟判定対象値として演算する手段、▲2▼他のサブチャネルの受信部から入力された前記軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整する手段、▲3▼該軟判定対象値に基づいて受信データを判定する判定部を備えている。
図2は周波数オフセットが零でないときの周波数特性である。
図3は周波数オフセットを有するDMTシステムにおける4つのサブチャネルの相互ICIを示すための一般的なモデルである。
図4は下位の1サブチャネル及び上位の1サブチャネル間の干渉を利用して受信データを復調する通信システムの全体構成図であり、サブチャネル数が3つの場合である。
図5は3サブチャネルモデルの受信装置の構成図である。
図6は下位の1サブチャネル及び上位の2つのサブチャネル間の干渉を利用して受信データを復調する通信システムの全体構成図であり、サブチャネル数が4つの場合(4サブチャネル−モデル)である。
図7は上位2つのサブチャネルと下位1つのサブチャネルからのクロストークが存在する場合における受信装置の第1の構成図で、受信装置全体のの左側の構成を示している。
図8は上位2つのサブチャネルと下位1つのサブチャネルからのクロストークが存在する場合における受信装置の第2の構成図で、受信装置全体の右側の構成を示している。
図9は本発明のターボレシーバによる繰り返し回数に応じた着目サブチャネルのコンステレーション説明図である。
図10は本発明のターボレシーバ及び従来のマッチトフィルタベースレシーバの平均BERパフォーマンスの特性図である。
図11は本発明のターボレシーバを採用したDMTベース通信システムの構成図である。
図12は本発明のターボ処理機能を備えたDMTレシーバのBERパフォーマンスを示す特性図である。
図4は下位及び上位のトータル2つのサブチャネル間の干渉を利用して受信データを復調する通信システムの全体構成図であり、サブチャネル数が3つの場合である。本発明は少なくとも4つのサブチャネルを有する通信システム(4サブチャネル−モデル)に提供するものであるが、本発明を理解する上でサブチャネル数が3つの通信システム(3サブチャネル−モデル)を最初に説明する。
図4の通信システムには、3つのサブチャネルch−1,ch0,ch+1を介してそれぞれ独立にデータを送信する3つの送信装置21,22、23、第iサブチャネルから第jサブチャネルへの結合係数αijを有する多数のクロストークパス31ij、各サブチャネル毎に設けられ、対応するサブチャネルからデータを受信し、該受信データの軟判定を行う3つの受信装置40,50,60、各受信装置の軟判定対象値を他の受信装置に入力する手段71,72を備えている。なお、32〜34、35〜37はICI信号やノイズを合成する合成部である。
サブチャネルch0の受信装置50は下位及び上位サブチャネルch−1,ch+1の受信装置40、60から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データの”0”、”1”を判定する。同様に他の受信装置も下位及び上位のサブチャネルの受信装置から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データの”0”、”1”を判定する。
(B)3つのサブチャネルにおける受信シンボル復調のアルゴリズム
図4に示す通信システムにおいて着目サブチャネルch0の受信機が受信シンボルを復調するアルゴリズムについて説明する。
復調アルゴリズムの原理は、着目サブチャネルch0で受信する情報シンボルが”0”(=+1)である事後確率P(D0=+1/y(t))と、”1”(=−1)である事後確率P(D0=−1/y(t))の差を示す値lnD0を導出することである。というのは、事後確率の差lnD0を導出できれば、受信情報シンボルが”0”であるか”1”であるか判定することができるからである。すなわち、着目サブチャネルの確率差lnD0は、受信情報シンボルが”0”(=+1)である事後確率P(D0=+1/y(t))と”1”(=−1)である事後確率P(D0=−1/y(t))の差であるから、lnD0>0であれば着目サブチャネルの受信情報は”0”,lnD0<0であれば着目サブチャネルの受信情報は”1”であると判定できるからである。以上から、まず事後確率の差を示す値lnD0を導出する。
バイナリ情報(2値情報)が隣接する2つのサブチャネルを介して信号S* ij(t)として送信されるものとする。なお、S* ij(t)におけるインデックスiはサブチャネル番号を示し、インデックスjはサブチャネルiにおける情報シンボルDiの符号(i=−1,0又は1)により決定される。すなわち、
である。以後、表記を簡単にするために、式においてS* ij(t)の時間依存性を省略する。すなわち、S* ij(t)をS* ijと表記する。
送信情報シンボルDiは統計的に独立で(相関がなく)、且つ、等分布確率変数であるとする。図4から、下位及び上位サブチャネルからICIの影響を受けた着目サブチャネルの信号は、上位及び下位サブチャネルで送信された信号S* −1j,S* 1jと着目チャネル信号S* 0jとのクロストーク係数αによる線形結合として表現される。なお、クロストーク係数αはクロストークの漏れに応じた値である。着目チャネルの情報シンボルD0が+1であれば、着目チャネルの受信信号Sj(j=0〜3)は、下位及び上位のサブチャネルの信号D−1,D1が+1であるか、−1であるかにより
となる。信号Sjのjは信号番号を表わす。又、同様に着目チャネルの情報シンボルD0が−1であれば、着目チャネルの受信信号Sj(j=4〜7)は、下位及び上位のサブチャネルの信号D−1,D1が+1であるか、−1であるかにより
となる。
ICIの導入後は、(2)及び(3)式に従って、各サブチャネルの受信機入力における8つの信号としてSj(i=0,1,2,....7)を使用する。(2)及び(3)式におけるSjのインデックスjは信号番号を示し、下位サブチャネル、上位サブチャネル、着目サブチャネルにおけるシンボルD−1,D1及びD0をペア(対)にすることにより決定される。
以下の▲1▼、▲2▼を考慮することにより最適受信のアルゴリズムを更に発展することができる。すなわち、▲1▼ある情報信号同士は符号が反対であり、S* −10=−S* −11、S* 00=−S* 01、S* 10=−S* 11であるということ、及び▲2▼情報シンボルの送信のために下位、上位及び着目サブチャネルにおいて同一信号が使用され、S* −10=S* 00=S* 10及びS* −11=S* 01=S* 11であるということ、を考慮することにより、最適受信のアルゴリズムを更に発展することができる。後者の▲2▼は、全サブチャネルが同じ値であり、かつ、全サブチャネルの情報信号間に、振幅、波形、エネルギーなどに関して差が無いという事実を示している。この場合、各サブチャネルにおける(2)、(3)式の信号は、次式で示すようにペアになり、且つ反対符号になる。
(2)、(3)、(4)式より、信号Sjを受信する事後確率、換言すれば、受信信号がSjである事後確率P(Sj/y(t))は、次式
により与えられる。ただし、
k0は正規化因子、
jは信号番号(j=0,1,....,7)
y(t)はICIを伴う信号系列Sjとスペクトルパワー強度N0を有する白色ガウス雑音n(t)との合成信号(y(t)=Sj+n(t))、
Papr(Sj)は受信信号Sjの事前確率
P(y(t)/Sj)は条件付き確率であり、受信語がy(t)であった時、送られた符号語がSjであったという確率、
である。着目チャネルの事前確率Papr(Sj)(j=0,1,....,7)は、(2)〜(4)式より着目サブチャネルの信号がS* 00である、またはS* 01である事前確率と2つの隣接サブチャネルにおける情報信号S* ijの事後確率の交差積として表現される。すなわち、D0=+1の場合には、
となり、D0=−1の場合には
となる。
(6)〜(7)式において、Papr(Sj)は、着目サブチャネルにおいて番号jの情報信号Sjが送信される事前確率(送信確率)である。また、事前確率Papr(S* ij)はデータ発生元の統計に依存し、最も実際的には1/2に等しいと仮定される。確率P(S* ij)は受信信号S* ijの事後確率で、事前確率Papr(S* ij)と異なリ、又、受信側で高い信頼度で推
においてP(S* ij)の最も良い推定であろう。この仮定により、(6)及び(7)式は以下のように書き替えることができる。
あるいは、情報信号S* ijと送信情報信号Di((1)式参照)との間に直接の関係が存在する時は、(6)及び(7)式においてP(S* ij)=P(Di=j/y(t))と置き換えることができ、(6)及び(7)式は次式で表現される。なお、P(S* ij)は第iサブチャネル信号Diがjである確率である。
(10)及び(11)式において、着目サブチャネルにおける受信信号Sjの事前確率Papr(Sj)(j=0,1,2,....,7)は、情報信号S* ijの送信事前確率Papr(S* ij)と下位及び上位の隣接チャネルで受信した情報シンボルDiが+1又は−1である事後確率との交差チャネル積で表現される。
本発明のターボレシーバ(最尤レシーバ)において、着目サブチャネルの受信情報シンボルD0の符号は以下のように決定する。すなわち、着目サブチャネル(番号0)の受信情報シンボルD0が+1である確率P(D0=+1/y(t))と、D0が−1である確率P(D0=−1/y(t))をそれぞれ求め、それらの大小比較により、あるいはそれらの対数(logarithm)の差と閾値との比較により受信情報シンボルD0の符号を決定する。
着目サブチャネルの受信情報シンボルD0がjとなる事後確率P(D0=j/y(t))は、D0がjである信号を受信する事後確率として得ることができる。従って、事後確率P(D0=+1/y(t))は着目サブチャネルの受信情報シンボルD0が”0”(=+1)となる確率であり、以下のように求めることができる。すなわち、(1)、(2)式より、着目サブチャネルで”0”(=+1)の情報シンボルを送信する信号はS0〜S3であるから、着目サブチャネルの受信情報シンボルD0が”0”(=+1)となる事後確率P(D0=+1/y(t))は、信号S0〜S3を受信する事後確率の和となり(12a)式で求めることができる。同様に、着目サブチャネルの受信情報シンボルD0が”0”(=−1)となる事後確率P(D0=−1/y(t))は(12b)式で求めることができる。
(12a)に(5)式を適用すると(ただしk0=1とする)、(13)式
となり、更に、(12b)に(5)式を適用すると(ただしk0=1とする)、(14)式
となる。(13)、(14)式に(10)、(11)式を代入し、簡単化のために、P(Di=±1/y(t))のy(t)を省略すると(すなわち、P(Di=±1/y(t))=P(Di=±1)とすると)、(15)、(16)式が得られる。
更に、(15)式を変形すると、(17a),(17b)式が得られる。
同様に、(16)式を変形すると(18a),(18b)式が得られる。
以上より、着目サブチャネルの受信情報シンボルD0が”0”(=+1)、”1”(=−1)となる事後確率P(D0=+1/y(t))、P(D0=−1/y(t))が求まれば、それらの大小比較により、あるいはそれらの対数(logarithm)の差と閾値との比較により受信情報シンボルの符号(+1又は−1)を決定できる。
・大小比較による判定
着目サブチャネルの情報シンボルD0が+1であるか、−1であるかは、まず、
であればD0=+1と判定し、
であればD0=−1であると判定する。
・対数の差による判定
着目サブチャネルの情報シンボルD0が+1であるか、−1であるかは、まず、ln P(D0=+1/y(t))−ln P(D0=−1/y(t))を演算し(lnはeを底とする対数)、しかる後、その正負により判定する。すなわち、
であればD0=+1と判定し、
であればD0=−1であると判定する。
さて、送信シンボルD0が統計的に独立(相関がない)であり、且つ、等分散された確率変数であることから、次式が成立する。
(20)式より、(17b)式及び(18b)式における共通の乗数は判定ルールに影響を及ぼさないから、(17b),(18b)式は(21),(22)式のようになる。
ここで、次式
の代数同一性を考慮して(21)、(22)式を変形すると以下の(23)、(24)
となる。ここで、以下の(25)、(26)式
を採用すると、A,B,C,Dは以下のようになる。
(25)、(26)式を(19c)、(19d)式の左辺の判定式に適用すると新判定式は次式
(4)式を考慮することにより、(27)式の新判定式を構成する各項は以下のように書き替えることができる。なお、lnDi=lnP(Di=+1)−lnP(Di=−1)である。
以上において、lnDi=lnP(Di=+1/y(t))−lnP(Di=−1/y(t))は、第iサブチャネルで送信された信号Diが+1であるか、−1であるかの事後確率の対数差(第iサブチ
とする。また、また、(27)式の(A−B),(C−D)は次式のようになる。
ただし、
である。(27)〜(30)式はICIを伴ったバイナリー信号の最適なレシーバ構造を定義する。(27)〜(30)式から判るように、あるサブチャネルの送信情報シンボルDの符号を判定する時、隣接チャネルの判定情報が使用される。(27)〜(30)式の判定ルールにおいて、lnD−1,lnD+1はそれぞれ、下位サブチャネル(ch−1)及び上位サブチャネル(ch+1)における情報シンボルが+1である事後確率と、−1である事後確率の対数差を表わしている。全ての計算は直列的であるので、着目サブサブチャネルのデータ処理中、繰り返し計算により隣接サブチャネルから最新の事後確率を利用することができる。
以上から、(27)〜(30)式より軟判定対象値であるlnD0を演算し、しかる後、軟判定対象値InD0の正負により着目サブチャネルの受信シンボルの”0”、”1”を判定するようにアルゴリズムを作成する。
(C)受信装置の構成
図5は3サブチャネルモデルの受信装置、すなわち、ICIを利用した最大事後確率に基づいた受信装置(ターボレシーバという)の構成図であり、着目サブチャネルの受信部のみの構成を示しているが、他のサブチャネルの受信部も同一の構成を有している。また、この受信部は前述のアルゴリズムを実行する構成を備えている。
着目サブチャネルの受信装置50は、大きく分けると相関ユニット(マッチトフィルでも良い)51、他チャネル判定結果作用部52、第1、第2の非線形ユニット53,54、シンボル判定部55を備えている。
相関ユニット51の乗算器51a及び積分器51bは、判定式である(28)〜(30)式の
加算部51iは積分器51b,51dの積分出力を加算し、減算器51jは積分器51b,51dの積分出力を減算し、加算部51kは積分器51f,51hの積分出力を加算し、減算器51mは積分器51f,51hの積分出力を減算する。また、加算部51nは加算部51i,51kの出力を加算して(28)式の右辺第1項
を出力する。また、減算部51pは加算部51i,51kの出力を減算して
を出力する。除算部51q,51rは入力信号を1/2にして出力する。
他チャネル判定結果作用部52は加算器52a〜52cを備え、それぞれ
を演算する。
第1の非線形ユニット53は(28)式の右辺第2〜第5項のln coshの演算を行う部分であり、第1、第2の非線形部53a,53bを有している。第1非線形部53aの加算部71a,71bはそれぞれ(28)式の右辺第2、第3項の{ }内の演算をそれぞれ行う。但し、(E0−E1)/N0=ΔE1としている。ln cosh演算部71c,71dはそれぞれ(28)式の右辺第2、第3項の演算を行い、減算器71eはln cosh演算部71cの演算結果からln cosh演算部71dの演算結果を減算して出力する。
又、第2非線形部53bの加算部71a’,71b’はそれぞれ(28)式の右辺第4、第5項の{ }内の演算をそれぞれ行う。但し、(E2−E3)/N0=ΔE2としている。ln cosh演算部71c’,71d’はそれぞれ(28)式の右辺第4、第5項の演算を行い、減算器71e’はln cosh演算部71c’の演算結果からln cosh演算部71d’の演算結果を減算して出力する。
又、加算部53cは加算器71e,71e’の出力を合成し、除算部53dは合成信号を1/2して(28)式の右辺第2〜第5項の演算結果を出力する。
第2の非線形ユニット54は(29)、(30)式の右辺第1〜第3項の演算を行う部分である。加算部54a,54bはそれぞれ(29)、(30)式の右辺第1項の演算を行い、加算部54c,54dはそれぞれ(29)、(30)式の右辺第2項、第3項の演算を行い、加算部54e,54fはそれぞれ(29)、(30)式の右辺の演算を行い、ln cosh演算部54g,54h
シンボル判定部55の加算器55aは、相関ユニット51の除算部51rの出力信号
は(27)式のlnD0(軟判定対象値)を発生する。判定部55cはlnD0の正負を判定し、正であれば受信シンボルは”0”と判定し、負であれば”1”であると判定する。又、シンボル判定部55は(27)式の演算結果(軟判定対象値)lnD0を下位及び上位の隣接するサブチャネルの受信部40,60の他チャネル判定結果作用部へフィードバックする。
(D)4サブチャネルを有する本発明の通信システムの全体の構成例
図6は下位の1つのサブチャネル及び上位の2つのサブチャネル間の干渉を利用して受信データを復調する通信システムの全体構成図であり、4つのサブチャネルch−1,ch0,ch+1、ch+2を介してそれぞれ独立にデータを送信する4つの送信装置121,122、123,124,第iサブチャネルから第jサブチャネルへの結合係数αijを有する多数のクロストークパス131ij、各サブチャネル毎に設けられ、対応するサブチャネルからデータを受信し、該受信データの軟判定を行う4つの受信装置150,160,170,180,各受信装置の軟判定対象値を着目チャネルch0の受信装置160に入力する手段191,192を備えている。なお、他の受信装置に入力する手段の図示は省略しているが、受信装置160と同様に考えることができる。132〜139、140〜143はICI信号やノイズを合成する合成部である。
サブチャネルch0の受信装置160は下位及び上位サブチャネルch−1,ch+1、ch+2の受信装置150,170,180から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データの”0”、”1”を判定する。同様に他の受信装置も下位及び上位のサブチャネルの受信装置から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データの”0”、”1”を判定する。
(E)4つのサブチャネルにおける受信シンボル復調のアルゴリズム
図6に示す通信システムにおいて着目サブチャネルch0の受信機が受信シンボルを復調するアルゴリズムについて説明する。
復調アルゴリズムの原理は、3サブチャネル−モデルの場合と同様に着目サブチャネルch0で受信する情報シンボルが”0”(=+1)である事後確率P(D0=+1/y(t))と、”1”(=−1)である事後確率P(D0=−1/y(t))の差を示す値lnD0を導出することである。着目サブチャネルの確率差lnD0は、受信情報シンボルが”0”(=+1)である事後確率P(D0=+1/y(t))と”1”(=−1)である事後確率P(D0=−1/y(t))の差であるから、lnD0>0であれば着目サブチャネルの受信情報は”0”,lnD0<0であれば着目サブチャネルの受信情報は”1”であると判定できる。
バイナリ情報(2値情報)が隣接する2つのサブチャネルを介して信号S* ij(t)として送信されるものとする。なお、Sf* ij(t)におけるインデックスiはサブチャネル番号を示し、インデックスjはサブチャネルiにおける情報シンボルDiの符号(i=−1,0又は1)により決定される。すなわち、
Di=+1ならばj=0
Di=−1ならばj=1
である。以後、表記を簡単にするために、式においてS* ij(t)の時間依存性を省略する。すなわち、S* ij(t)をS* ijと表記する。
図6から、下位及び上位サブチャネルからICIの影響を受けた着目サブチャネルの信号は、上位及び下位サブチャネルで送信された信号S* −1j,S* 1j,S* 2jと着目チャネル信号S* 0jとのクロストーク係数αによる線形結合として表現される。なお、クロストーク係数αはクロストークの漏れに応じた値である。着目チャネルの情報シンボルD0が+1であれば、着目チャネルの受信信号Sj(j=0〜7)は、下位及び上位のサブチャネルの信号D−1,D1,D2が+1であるか、−1であるかにより
となる。信号Sjのjは信号番号を表わす。又、同様に着目チャネルの情報シンボルD0が−1であれば、着目チャネルの受信信号Sj(j=8〜15)は、下位及び上位のサブチャネルの信号D−1,D1,D2が+1であるか、−1であるかにより
となる。
ICIの導入後は、(32)及び(33)式に従って、各サブチャネルの受信機入力における16個の信号としてSj(i=0,1,2,....15)を使用する。(32)及び(33)式におけるSjのインデックスjは信号番号を示し、下位サブチャネル、上位サブチャネル、着目サブチャネルにおけるシンボルD−1,D1,D2及びD0をペア(対)にすることにより決定される。
以下の▲1▼、▲2▼を考慮することにより最適受信のアルゴリズムを更に発展することができる。すなわち、▲1▼ある情報信号同士は符号が反対であり、S* −10=−S* −11、S* 00=−S* 01、S* 10=−S* 11、S* −20=−S* 21であるということ、及び▲2▼情報シンボルの送信のために下位、上位及び着目サブチャネルにおいて同一信号が使用され、S* −10=S* 00=S* 10=S* 20及びS* −11=S* 01=S* 11=S* 21であるということ、を考慮することにより、最適受信のアルゴリズムを更に発展することができる。後者の▲2▼は、全サブチャネルが同じ値であり、かつ、全サブチャネルの情報信号間に、振幅、波形、エネルギーなどに関して差が無いという事実を示している。この場合、各サブチャネルにおける(32)、(33)式の信号は、次式で示すようにペアになり、且つ反対符号になる。
以後、3サブチャネルのモデルと同様に考えることができる。すなわち、3サブチャネル−モデルの場合と同様に、着目サブチャネルの受信情報シンボルD0が”0”(=+1)、”1”(=−1)となる事後確率P(D0=+1/y(t))、P(D0=−1/y(t))を求める。これが求まれば、それらの大小比較により、あるいはそれらの対数(logarithm)の差と閾値との比較により受信情報シンボルの符号(+1又は−1)を決定できる。すなわち、着目サブチャネルの情報シンボルD0が+1であるか、−1であるかは、
し、1より小さければ、D0=−1であると判定する。あるいは、ln P(D0=+1/y(t))−ln P(D0=−1/y(t))を演算し、しかる後、その正負により判定する。すなわち、正であればD0=+1と判定し、負であればD0=−1であると判定する。なお、y(t)はICIを伴う信号系列Sjとスペクトルパワー強度N0を有する白色ガウス雑音n(t)との合成信号(y(t)=Sj+n(t))である。
4サブチャネルモデルでは、
ここで、a,b,c,dは次式に示す通りである。
最終的に、(35),(36)式を用いてlnD0は次式
で与えられる。
(F)本発明の受信装置
図7、図8は上位2つのサブチャネルと下位1つのサブチャネルからのクロストークが存在する場合における本発明の着目サブチャネルの受信装置構成図で、一点鎖線より分割して示しており、(41)式の右辺の演算を実現する。図7は受信装置全体の左側の構成を、図8は同右側の構成を示している。図7、図8の受信装置を着目チャネルch0の受信装置とすれば、チャネルch+1、ch+2よりクロストークを受ける3サブチャネル−モデルの受信装置と、チャネルch−1よりクロストークを受ける2サブチャネル−モデルの受信装置を結合した構成となり、(41)式は図中、ポイントP1,P2,P3における値の和となる。
着目サブチャネルの受信装置160は、大きく分けると相関ユニット161、第1〜
は、第iサブチャネル(i= −1,+1,+2)で送信された信号Diが+1であるか、−1であるかの事後確率の対数差(第iサブチャネルの軟判定値)である。また、信
である。
るとき、S0′+S1′,S0′−S1′,S2′+S3′,S2′−S3′,……,ΣSj′(j=0〜7)を演算する加減算回路で構成されている。
第1演算部162は図5の一点鎖線で囲んだ構成と同一の構成を備え、信号S0(t)〜S7(t)のうち信号S0(t)〜S3(t)について(28)式の右辺第2項〜第5項、(29)式、(30)式の演算を行う。なお、合成部165の加算部165aで(28)式の右辺第1項(=S0′+S1′+S2′+S3′)が加算され、(29)式の演算が完了する。
第2演算部163は図5の一点鎖線で囲んだ構成と同一の構成を備え、信号S0(t)〜S7(t)のうち信号S4(t)〜S7(t)について、(28)式の右辺第2項〜第5項、(29)式、(30)式の演算を行う。ただし、(28)式、(29)式、(30)式においてS0(t)〜S3(t)をS4(t)〜S7(t)と変更する。また、合成部165の加算部165aで(28)式の右辺第1項(=S4′+S5′+S6′+S7′)が加算され、(29)式の演算が完了する。
合成部165は、信号S0(t)〜S3(t)についての(27)式の右辺の演算結果
と、信号S4(t)〜S7(t)についての(27)式の右辺の演算結果
を合成すると共に、合成結果(図中P1のポイントの値)に第3演算部164の演算結果を加えて(41)式のlnD0として判定部166に入力する。
第3演算部164は、下位サブチャネルch−1の軟判定データlnD−1に基づいて演算結果を補正し、補正結果に所定の演算処理を施して合成部165に入力する。
信号S0(t)〜S3(t)のときの(28)式第1項〜第5項の値を▲1▼〜▲5▼と表現し、信号S4(t)〜S7(t)のときの(28)式第1項〜第5項の値を▲1▼′〜▲5▼′と表現し、軟判定データlnD−1作用部164aの出力を▲6▼と表現すれば、ポイントP2の値は、
となる。また、ポイントP3の値は、
となる。従ってシンボル判定部166にはポイントP1、P2、P3の値を合成したlnD0(軟判定対象値)、すなわち、(41)式で与えられるlnD0(軟判定対象値)が入力される。なお、
lnD0=(42)+(43)+(44)+(45)
である。
シンボル判定部166は、このlnD0(軟判定対象値)の正負を判定し、正であれば受信シンボルは”0”と判定し、負であれば”1”であると判定する。又、シンボル判定部166は、lnD0(軟判定対象値)を下位及び上位のサブチャネルの受信部150,170,180の判定結果作用部へフィードバックする。
以上、要約すれば、少なくとも4つのサブチャネルを介して信号を送受するマルチキャリア通信システムにおいて、着目サブチャネルch0の受信装置は、着目サブチャネル以外のサブチャネルにおける軟判定対象値lnD+1,lnD+2,lnD−1を用いて、自身の軟判定対象値lnD0を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データを判定する。
(G)ターボデコーダとの類似性
上記本発明の受信データの復調アルゴリズムは、下記文献に記述されているターボ符号のターボデコーダに類似している。
文献:.M.C.Valeniti and B.D.Woerner,“Variable latency turbo codes for wireless multimedia applications,”Proc,Int.Symposium on Turbo codes and Related Topics.,Brest,France,Sept.1997,pp216−219.
ターボデコーダとの類似性により、本発明のアルゴリズムをターボレシーバと呼ぶことにする。ターボデコーダにおいては、各デコーダは情報を他のデコーダに渡し、そして、他のデコーダにより導き出された情報を用いて順番に推定された事後確率を精練する。同様に、本発明のアルゴリズムにおいても、一方のサブチャネルから導き出された情報が、非線形処理後に、他方のチャネルの推定された事後確率を精練するために使用され、又に前記他方のサブチャネルから導き出された情報が、前記一方のチャネルの推定された事後確率を精練するために使用される。もし、ターボデコーダにおいて、個々のデコーダ出力がハードビット判定(硬判定)の形式であれば情報を共有することにはわずかな利点があるにすぎない。ハードビット判定は、ICIキャンセルのためにViterbo and Fazelが既出の文献2で提案した判定帰還イコライザに類似する。ここでは、ハードビット判定は繰り返しの最後でのみ実施される。
これらの構造的類似性は以下の理由による。すなわち、ターボレシーバでは、ターボ符号の場合と同様に、ICIの存在により、同じ情報が非相関ノイズを有するサブチャネル上を送信されるからである。この非相関ノイズの振る舞いにより、事後確率の推定(あるいは決定の信頼性)を、他サブチャネルから導出した推定事後確率を使って改善することが可能となる。
繰り返しターボデコーダのように、本発明のアルゴリズムは、受信された情報について最終判定を行う前に、1回以上の繰り返し行う。また、最初のステップ、すなわち、他チャネルからの判定を利用できないとき、データが等分布確率変数であれば、最初のサブチャネルのために、
P(D−1=+1)=1/2, P(D−1=−1)=1/2
P(D+1=+1)=1/2, P(D+1=−1)=1/2
P(D+2=+1)=1/2, P(D+2=−1)=1/2
と設定することができる。この設定はベストの設定である。それゆえ、第1ステップにおいて、下位サブチャネルch−1における事後確率の差lnD−1は零であるとする。上位サブチャネルch+1,ch+2も同様に考えることにより、事後確率の差lnD+1=0,差lnD+2=0とする。lnD−1=lnD1=lnD2=0として(35)〜(36)式、(41)式を計算することにより、未知であったlnD0の最初の推定を得ることができる。同様に、本発明のアルゴリズムによれば、Nサブチャネル通信システムにおいて、最初の繰り返し中、下位サブチャネルはlnD−2=lnD0=lnD1=0としてlnD−1を演算し、上位サブチャネルはlnD3=lnD2=lnD0=0としてlnD1を演算する。第2ステップでは、着目サブチャネルの新たな事後確率の推定値を演算するために、前ステップで得られているlnD−1、lnD1、lnD2を判定式(35)〜(36)、(41)に適用する。これにより、1つのサブチャネルレシーバの出力は他のレシーバで事前確率として使用される。
図9はN=64の通信システムにおける着目サブチャネルのコレステレーションであり、異なる繰り返し回数の後でS/N比=20dBのQPSK変調を行った場合である。尚、交差チャネル漏れ係数はα−10=0.25、α10=0.15、α20=0.075であるとする。(A)はQPSK変調した原データ、(B)はICIにより劣化した信号、(C)はS/N比20dBの受信信号、(D)は本発明による1回繰り返し後の受信データ、(E)は本発明による2回繰り返し後の受信データのコレステレーションである。
これより、本発明によれば、コレステレーションのバラツキが小さくなり、BERが改善されて小さくなっていることが判る。また、くり返し回数を多くすればコレステレーションのバラツキが更に小さくなり、BERが更に改善されることが判る。
(H)ノイズイミュニティとシミューレーション結果
本発明の非線形信号処理の有効性を証明するために、本発明レシーバと古典的なマッチトフィルタレシーバに対してコンピュータシミューレーションを行った。図10はα−10=0.25、α10=0.15、α20=0.075の場合における本発明レシーバ及びマッチトフィルタレシーバにおける平均BERパフォーマンスを、2Eb/N0の関数として示している(シミューレーション結果A〜Dを参照)。Eb/N0は、1ビット当たりの背景雑音電力スペクトル強度N0に対する平均受信信号エネルギーEbの比である。また、参考として、α−10=α10=α20=0のICIが存在しない場合における本発明のレシーバ(マッチトフィルタレシーバに相当)のシミューレーション結果Eを図9に表示する。更に参考として、(46)式の公式を使って計算したマッチトフィルタレシーバのICIが存在しない時のBERシミューレーション結果Fを表示する。
コンピュータシミューレーションにより得られたBERパフォーマンスと(46)式で計算されたBERパフォーマンスとはかなり良く一致している。又、図10のプロットから明らかなようにICIが存在しななければ、本発明レシーバのBERは、従来のマッチトフィルタベースレシーバの(46)式で得られたBERと差異がない。尚、後者のBERは図10で”Reference”(E)として示している。又、ICIが存在する場合(α01=0.25,α0−1=0.15,α20=0.075の場合)、非線形処理をしない従来のデバイス(繰り返し1回、特性A)は本発明のレシーバより性能が劣っており、特に高いEb/N0において顕著であることがシミューレーション結果より判る。
(I)DMTシステムへの適用
本発明のターボレシーバの応用としてDMTベース通信システムを考える。図11はかかるターボレシーバを採用したDMTベース通信システムの構成図であり、周知のDMT通信システムにおける受信機のFFT部の後段に本発明のターボレシーバを配置した構成を有している。。
図11の通信システムにおいて、直列並列変換器(S/P)201の後でデータレートR(bits/sec:bps)の入力ビットストリームは、新レートR/N(bps)でN個の並列サブチャネル転送される。NポイントIFFT202は、N並列データを結合して1揃えのリアルタイム領域のサンプル信号に変換する。並列直列変換器(P/S)203において、これらNサンプルは直列フォーマットに変換された後、連続してディジタルアナログ変換器(DAC)204に入力される。DAC出力側のローパスフィルタ(LPF)205の出力信号は連続時間DMT信号である。白色ガウス雑音チャネルにおいて、送信DMT信号は、白色ガウス雑音n(t)により劣化し、DMTレシーバ300に送られる。受信機は送信機と逆の機能を実行する。FFT301は、各サブチャネルで送られた信号に対してNマッチトフィルタアレイとして復調処理を行う。ターボ3021〜302Nは本発明のターボアルゴリズムに基づいたサブチャネル処理を行い、これにより周波数オフセットが存在してもBERを改善する。尚、303はADコンバータ、304はシリアルパラレル変換器、305はパラレルシリアル変換器である。
図12は従来のDMTベースレシーバのBERパフォーマンスを示すと共に、本発明のターボ処理機能を備え,3回及び6回ターボ繰り返しを行うDMTレシーバのBERパフォーマンスを示す。但し、図12はN=64の場合で、BERパフォーマンスは、チャネル間周波数で正規化した周波数オフセットをパラメータとして、2Eb/N0に対して示されており、本発明のBER特性B,B′(ICI−4 Model)には”Proposed”が付されている。
図12より、周波数オフセットが小さい程、BER特性は良好になり、また、本発明”ICI−4 Modelの方が従来装置よりBER特性が良好なことが判る。また、提案済みの”ICI−3 Model“の場合(特性A,A′)より2dBの改善が得られている。
以上、マルチキャリア通信システムにおいて、隣接サブチャネルにおけるICIの効果を検討した。従来のマッチトフィルタレシーバのパフォーマンスは隣接サブチャネルの結合が増大するに連れて、あるいは周波数オフセットが増加するに連れて、急速に劣化する。これに対し、本発明は推定事後確率に基づいたレシーバであり、各サブチャネルのレシーバが隣接サブチャネルのレシーバに情報を渡すターボレシーバであり、繰り返し、隣接サブチャネルのレシーバにより導かれた情報を使って推定された事後確率を精練する。このため、本発明のターボレシーバは従来のマッチトフィルタレシーバに比べてBERパフォーマンスをかなり改善することができる。これは本発明のターボアルゴリズムの非線形信号処理が、事後確率を最大にするために隣接サブチャネルで得られた情報を利用するからである。最も大きなBERの改善は、ICIがガウスノイズを支配する高S/N比エリアにおいて生じる。シミューレーション結果によれば、本発明のターボレシーバはICI結合係数のかなり広い範囲に渡って良好なパフォーマンスを達成できる。
Claims (3)
- 少なくとも4つのサブチャネルを介して信号を送受するマルチキャリア通信システムにおいて、
4つのサブチャネルを介してそれぞれ独立にデータを送信する送信装置、
対応するサブチャネルからデータを受信し、該受信データの軟判定を行う各サブチャネル毎に設けられた受信部を含む受信装置、
着目サブチャネル以外の3つのサブチャネル対応の受信部における軟判定対象値を着目サブチャネルの受信部に入力する手段、
を備え、前記着目サブチャネルの受信部は、
4つのサブチャネル信号で伝送された4つのデータのうち、着目サブチャネルを除く3つのサブチャネルのデータについて、全てのデータが同じ組み合せ及び少なくとも1つのデータが異なるとした場合におけるトータル8つの組み合せのそれぞれにおいて、着目サブチャネル以外の他の3つのサブチャネルからのクロストークを考慮して計算される第1〜第8基準信号を作成する手段、
該各基準信号と実際の受信信号との乗算結果をそれぞれ積分する8つの相関手段、
各相関器出力と着目サブチャネル以外の3つのサブチャネルの受信部から入力された前記軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整するための調整値を算出する手段、
前記全相関手段の合成出力に前記調整値を加算して前記自身の軟判定対象値を調整して出力する調整部、
該軟判定対象値に基づいて受信データを判定する判定部、
を備えたことを特徴とする通信システム。 - 前記軟判定対象値は、クロストークパスの結合度を考慮して、着目サブチャネルから受信したデータが2値のうち一方である確率と他方である確率との差であることを特徴とする請求項1記載の通信システム。
- 少なくとも4つのサブチャネルを介してそれぞれ独立にデータを送信するマルチキャリア通信システムにおける受信装置において、
チャネル間の結合度を考慮して、自身のサブチャネルから受信したデータが2値のうちの一方である確率と他方である確率との差を軟判定対象値として演算し、かつ、他の3つのサブチャネルの受信部から入力された軟判定対象値を用いて、該自身の軟判定対象値を調整して出力する軟判定対象値出力手段、
該調整された軟判定対象値に基づいて受信データを判定する判定部、
を備え、前記軟判定対象値出力手段は、
4つのサブチャネル信号で伝送された4つのデータのうち、3つのデータについて、全てのデータが同じ組み合せ及び少なくとも1つのデータが異なるとした場合におけるトータル8つの組み合せのそれぞれにおいて、着目サブチャネル以外の他の3つのサブチャネルからのクロストークを考慮して計算される第1〜第8基準信号を作成する手段、
該各基準信号と実際の受信信号との乗算結果をそれぞれ積分する8つの相関手段、
各相関器出力と着目サブチャネル以外の3つのサブチャネルの受信部から入力された前記軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整するための調整値を算出する手段、
前記全相関手段の合成出力に前記調整値を加算して前記自身の軟判定対象値を調整して出力する調整部、
を備えたことを特徴とする受信装置。
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