JP3928405B2 - 回転体と回転軸との締結構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転体と回転軸との締結構造に関するもので、プーリや電磁クラッチ等の動力伝達装置の取付構造に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
プーリの取付構造として、例えば実開平2−67152号公報に記載の発明では、シャフトに雄ねじ部を形成し、一方、プーリに雌ねじ部を形成して両者をネジ結合にて締結している。
【0003】
このとき、雄ねじ部及び雌ねじ部は、プーリ及びシャフトにトルクが作用したときに、ねじが締まっていくような向きにねじを形成する必要があるが、駆動側機器又は従動側機器に大きなトルク変動が発生すると、プーリ及びシャフトにねじが緩む向きのトルク(以下、このトルクを負トルクと呼ぶ。)が作用するので、負トルクが大きい場合には、プーリとシャフトとのねじ結合が緩んでしまう可能性がある。
【0004】
因みに、内燃機関(エンジン)は、燃焼室内で燃料が間欠的に燃焼(爆発)することによりピストンが往復運動するので、電動モータ等の駆動源に比べてトルク変動が大きく、負トルクが発生し易く、上記問題が発生し易い。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、回転体と回転軸とをねじ結合する場合において、ねじ結合が緩んでしまうことを防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、内燃機関で発生したトルクを回転機器(200)に伝達する動力伝達装置のうち、トルクを受ける回転体(100)と回転機器(200)の回転軸(210)との締結構造であって、回転体(100)は、トルクを受ける円筒状の本体部(110)と、本体部(110)の内周側に位置して本体部(110)と同軸上に配置された円形状のインナーハブ(130)と、本体部(110)の内周部とインナーハブ(130)の外周部との間に配置される弾性材(140)とからなり、インナーハブ(130)の中心部には、雌ねじ部(131)が形成された貫通穴(132)を有する円筒部(133)が形成され、インナーハブ(130)の外周部には、弾性材(140)と噛み合う突起部(134)が形成された環状部(135)が形成され、環状部(135)と円筒部(133)は、複数本のブリッジ部(136)によって機械的に連結され、複数本のブリッジ部(136)はそれぞれ、円筒部(133)から環状部(135)に向かって、正トルク方向に傾斜して延びており、本体部(110)が受けたトルクは、弾性材(140)を介して環状部(135)に伝達され、複数本のブリッジ部(136)は、環状部(135)に伝達されたトルクを円筒部(133)に伝達するとともに、環状部(135)から円筒部(133)に伝達されるトルクが所定トルク以上となったときに破断する強度に設定されており、回転軸(210)には、雌ねじ部(131)と噛み合う第1雄ねじ部(211)、及び第1雄ねじ部(211)の先端側に配置され第1雄ねじ部(211)よりピッチ寸法が小さい第2雄ねじ部(212)が設けられ、第1雄ねじ部(211)及び第2雄ねじ部(212)は、回転体(100)に正トルクが作用したときに締まっていく向きのねじであり、第2雄ねじ部(212)には、円筒部(133)のうち第2雄ねじ部(212)側の側面に面するようにナット(213)が締め付けられ、ナット(213)の慣性モーメントは、回転体(100)の慣性モーメントより小さいことを特徴とする。
【0007】
これにより、ナット(213)が緩んだときのナット(213)の移動量が回転体(100)が緩んだときの回転体(100)の移動量より小さくなるので、回転体(100)はナット(213)が移動した量以上に移動することができず、回転体の緩みがナット(213)により規制され、回転体のねじ結合が緩んでしまうことが防止される。
【0008】
ところで、上述の説明からも明らかように、ナット(213)が大きく緩む、つまりナット(213)が大きく移動すると、回転体の緩みを十分に防止することができない。一方、負トルクが発生したときのナット(213)の緩み量は、ナット(213)の慣性モーメントが大きいほど大きくなる。
【0009】
これに対して、請求項1に記載の発明は、ナット(213)の慣性モーメントは、回転体(100)の慣性モーメントより小さいことを特徴としているので、負トルクが発生したときのナット(213)の緩み量(ナット(213)の移動量)を小さな量に抑えることができ、回転体の緩みを確実に防止できる。
【0010】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本実施形態は、本発明に回転体と回転軸との締結構造を車両用空調装置の圧縮機に駆動源であるエンジンからの駆動力を伝達する回転体であるプーリの締結構造に適用したものであって、図1はプーリ100を圧縮機200のシャフト210に組み付けた状態を示すプーリ100の断面図である。
【0012】
図1中、プーリ本体110はVベルトを介して走行用エンジン(図示せず。)から駆動力(トルク)を受けて回転する略円筒状に形成された金属又は硬質樹脂(本実施形態では、フェノール樹脂)製のものであり、このプーリ本体110の内周側にはプーリ本体110を回転可能に支持するラジアル転がり軸受120が装着される円筒状のプーリハブ111が一体成形されている。因みに、ラジアル転がり軸受120の内輪は、圧縮機200のフロントハウジングに装着又は圧入される。
【0013】
なお、本実施形態では、プーリ本体110として、複数列のV溝112が設けられたポリードライブベルト対応型のプーリを採用しているとともに、プーリ本体110を樹脂製としているので、プーリハブ111のうち軸受120が装着(圧入)される内周側には、金属製のスリーブ113がインサート成形にてプーリハブ111に一体化されている。
【0014】
インナーハブ130はプーリ本体110の内周側に位置してプーリ本体110と同軸上に配置されて回転する金属製のものであり、このインナーハブ130の外周側は、インナーハブ130より硬度の低い弾性材(本実施形態では、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合ゴム))にて構成された、トルク伝達部材をなすダンパー140を介してプーリ本体110の内周側にてプーリ本体110と機械的に係合して噛み合っている。
【0015】
そして、インナーハブ130は、圧縮機200のシャフト210の外周面に形成された第1雄ねじ部211とネジ結合する雌ねじ部131が形成された貫通穴132を有する円筒部133、ダンパー140と噛み合う突起部134が形成された環状部135、及び環状部135と円筒部133とを機械的に連結して環状部135から円筒部133にトルクを伝達するとともに、環状部135から円筒部133に伝達されるトルクが所定トルク以上となったときに破断するような強度に設定された複数本(本実施形態では、3本)のブリッジ部136(図2参照)等から構成されている。
【0016】
なお、ブリッジ部136と円筒部133とは、金属粉を焼結することにより一体成形され、ブリッジ部136と環状部135とは、一体成形されたブリッジ部135と円筒部133とを環状部135を樹脂成形するための金型内に配置した状態で樹脂を金型内にインジェクションする又はインサート成形することにより一体化されている。
【0017】
また、インナーハブ130は、少なくとも雌ねじ部131が形成された後、ダクロ処理にてその表面に腐食防止用の被膜が形成されている。なお、ダクロ処理とは、金属亜鉛フレーク、無水クロム酸等の分解水溶液(処理溶液)内に被処理物を浸漬させた後、焼き付け炉内で被処理物を約300℃で加熱することにより、六価クロムをグリコール等の有機物によって還元して亜鉛フレークを被処理物に結びつけて被膜を形成するものである。因みに、無水クロム酸は、金属素地表面を酸化して被処理物と化学的に結合し、強固な密着力を発生させる。
【0018】
ところで、シャフト210に形成された第1雄ねじ部211先端側には、図3に示すように、第1雄ねじ部211よりピッチ寸法が小さい第2雄ねじ部212が設けられており、この第2雄ねじ部212には、プーリ100の側面に接触するナット213が締め付けられている。
【0019】
因みに、本実施形態では、第1雄ねじ部211のピッチ寸法は1mmであり、第2雄ねじ部212のピッチ寸法は0.8mmであり、両雄ねじ部211、212は、圧縮機200を駆動させるトルク(以下、この向きのトルクを正トルクと呼ぶ。)がプーリ100に作用したときに、第1雄ねじ部211と雌ねじ部131とが締まっていく向きのねじが形成されている。
【0020】
なお、本実施形態では、シャフト210の先端側からプーリ100をシャフト210に挿入して第1雄ねじ部211にねじ結合した後、ナット213をシャフト210の先端側から第2雄ねじ部212にねじ結合するので、第2雄ねじ部212のねじ径は第1雄ねじ部211のねじ径より小さくしている。
【0021】
また、ワッシャ214は第1雄ねじ部211の根本側の段付き部に嵌合されたでものあり、このワッシャ214によりプーリ100に作用する軸力を受けて、第1雄ねじ部211の根本側に雌ねじ部131が過度に食い込むことを防止している。
【0022】
次に、本実施形態に係る継ぎ手100の概略作動を述べる。
【0023】
プーリ本体110に伝達されたトルクは、ダンパー140を介してインナーハブ130に伝達される。このとき、ダンパー140がプーリ110の回転方向、つまり周方向に圧縮変形することにより、トルク変動を吸収しながらプーリ110からインナーハブ130にトルクを伝達する。
【0024】
そして、プーリ110からインナーハブ130に伝達されるトルクが所定値以上となると、ブリッジ部136が破断するため、プーリ本体110からインナーハブ130へのトルク伝達が遮断される。つまり、ブリッジ部136は、所定値以上のトルクが伝達されることを防止するトルクリミッタ機構として機能する。
【0025】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0026】
大きな負トルクが作用してプーリ100及びナット213が緩むと、プーリ100がナット213側に移動し、ナット213はシャフト210の先端側に移動する。このとき、第2雄ねじ部212のピッチ寸法が第1雄ねじ部211のピッチ寸法より小さいため、プーリ100はナット213が移動した量以上に移動することができず、プーリ100の緩みがナット213により規制され、プーリ100のねじ結合が緩んでしまうことが防止される。
【0027】
ところで、上述の説明からも明らかように、ナット213が大きく緩む、つまりナット213がシャフト210の先端側に大きく移動すると、プーリ100の緩みを十分に防止することができない。一方、負トルクが発生したときのナット213の緩み量は、ナット213の慣性モーメントが大きいほど大きくなる。
【0028】
これに対して、本実施形態では、ナット213の慣性モーメントは、プーリ100の慣性モーメントに比べて十分に小さいので、負トルクが発生したときのナット213の緩み量、すなわちナット213の移動量を小さな量に抑えることができ、プーリ100の緩みを確実に防止できる。
【0029】
なお、ナット213とプーリ100との接触面圧が大きいと、プーリ100がねじが緩む向きに回転すると、ナット213がプーリ100と一体的にねじが緩む向きに回転するおそれがあるので、ナット213とプーリ100との接触面圧を十分に小さくする、接触面圧が略0となるようにナット213をプーリ100の側面に接触させる、又はナット213とプーリ100の側面との間に微少な隙間が発生するようにしてナット213を第2雄ねじ部212に締め付けることが望ましい。
【0030】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第1雄ねじ部211と第2雄ねじ部212とは、同一の向きのねじであったが、第1雄ねじ部211は正トルクが作用したときに締まっていく向きのねじとし、第2雄ねじ部212は負トルクが作用したときに締まっていく向きのねじとしてもよい。
【0031】
なお、この場合、正トルクが作用しているときに、ナット213が緩むおそれがあるが、ナット213の慣性モーメントを十分に小さくし、かつ、第2雄ねじ部212のピッチ寸法を十分に小さくすれば、ナット213が緩むことを防止できる。
【0032】
また、上述の実施形態では、メートル並目ねじ(JIS B 0205)を採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、メートル細目ねじ(JISB 0207)やインチねじ等のその他のねじ規格であってもよい。
【0033】
また、上述の実施形態では、車両用空調装置の圧縮機にエンジンからの駆動力を伝達するプーリの締結構造に本発明を適用した、本発明の適用はこれに限定されるものではない。
【0034】
また、ナット213は、いわゆるナット(JIS B 1181)に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るプーリの取付構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプーリの正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプーリの取付構造を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
100…プーリ(回転体)、210…シャフト、211…第1雄ねじ部、
212…第2雄ねじ部、213…ナット。
Claims (2)
- 内燃機関で発生したトルクを回転機器(200)に伝達する動力伝達装置のうち、前記トルクを受ける回転体(100)と前記回転機器(200)の回転軸(210)との締結構造であって、
前記回転体(100)は、前記トルクを受ける円筒状の本体部(110)と、前記本体部(110)の内周側に位置して前記本体部(110)と同軸上に配置された円形状のインナーハブ(130)と、前記本体部(110)の内周部と前記インナーハブ(130)の外周部との間に配置される弾性材(140)とからなり、
前記インナーハブ(130)の中心部には、前記雌ねじ部(131)が形成された貫通穴(132)を有する円筒部(133)が形成され、
前記インナーハブ(130)の外周部には、前記弾性材(140)と噛み合う突起部(134)が形成された環状部(135)が形成され、
前記環状部(135)と前記円筒部(133)は、複数本のブリッジ部(136)によって機械的に連結され、
複数本のブリッジ部(136)はそれぞれ、前記円筒部(133)から前記環状部(135)に向かって、正トルク方向に傾斜して延びており、
前記本体部(110)が受けた前記トルクは、前記弾性材(140)を介して前記環状部(135)に伝達され、
前記複数本のブリッジ部(136)は、前記環状部(135)に伝達された前記トルクを前記円筒部(133)に伝達するとともに、前記環状部(135)から前記円筒部(133)に伝達されるトルクが所定トルク以上となったときに破断する強度に設定されており、
前記回転軸(210)には、前記雌ねじ部(131)と噛み合う第1雄ねじ部(211)、及び前記第1雄ねじ部(211)の先端側に配置され前記第1雄ねじ部(211)よりピッチ寸法が小さい第2雄ねじ部(212)が設けられ、
前記第1雄ねじ部(211)及び前記第2雄ねじ部(212)は、前記回転体(100)に正トルクが作用したときに締まっていく向きのねじであり、
前記第2雄ねじ部(212)には、前記円筒部(133)のうち前記第2雄ねじ部(212)側の側面に面するようにナット(213)が締め付けられ、
前記ナット(213)の慣性モーメントは、前記回転体(100)の慣性モーメントより小さいことを特徴とする回転体と回転軸との締結構造。 - 前記第2雄ねじ部(212)のねじ径は、前記第1雄ねじ部(211)のねじ径より小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の回転体と回転軸との締結構造。
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