JP3924235B2 - 薄鋼板の高疲労強度隅肉溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、隅肉溶接継手の溶接継手の疲労強度向上技術に関するもので、より詳しくは、570MPa以上の引っ張り強度を有し板厚1.0mm〜4.0mmの範囲の薄板の隅肉溶接継手の疲労強度向上技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶接鋼構造物の安全性および信頼性に重大な影響を与える疲労亀裂は、溶接部に発生しやすいため、従来から溶接鋼構造物の溶接部の疲労特性を向上させる方法が種々検討されてきた。
【0003】
従来から溶接部のうちで最も疲労亀裂が発生しやすい部位が溶接止端部であり、その主な原因が溶接止端部で発生しやすい引っ張りの残留応力による応力集中であることが知られている。
【0004】
従って、従来の溶接継手の疲労特性の改善方法として、溶接後にTIGなめ付け溶接(化粧溶接)や研削等の機械加工などにより溶接止端形状を改善する方法、ピーニングなどにより溶接止端形状の改善と圧縮残留応力の導入を同時に行う方法などがあった。これら方法は、溶接線全線に対して処理しなければ継手全体としての疲労強度の確保ができず、作業負荷が大きくなり、経済的には好ましい方法ではない。最近では、ピーニングを行う際に超音波を用いるピーニング、すなわち超音波ピーニング技術について、例えば米国において多くの技術が開示されている(例えば特許文献1〜3)。この技術は、従来のピーニング方法に比べ、超音波を用いることによりピーニングの効率が大幅に改善されたものであり、これによりピーニング作業負荷の軽減が期待できる。しかし、溶接継手全体の疲労強度向上のためには、溶接線全線にわたってピーニング処理をしなければならないことにはかわりはなく、作業工程がその分増え、経済的負荷が増加するという問題は未可決のままである。
【0005】
一方、最近では、溶接金属の変態温度が低くなるように溶接で使用する溶接材料の成分を設計し、溶接時に変態に伴う体積膨張を利用し圧縮残留応力を導入することで溶接止端部の引っ張り残留応力を低減させ、疲労特性を改善する技術が提案されている(例えば特許文献4。以降、このような溶接材料を総称して低温変態溶接材料と呼ぶ)。これによれば、低温変態溶接材料を用いて溶接して変態開始温度が170℃〜250℃の低温域で溶接金属をマルテンサイト変態およびそれによる体積膨張させることにより、その後の熱収縮起因の引張応力を相殺し室温での溶接止端部の引っ張り残留応力を低減あるいは圧縮残留応力とする技術が開示されている。
【0006】
このような溶接金属の低温変態膨張を利用した技術は、主に溶接に使用する溶接材料の成分設計を変更するだけで継手の疲労強度が改善できるという点で上述の溶接後の後処理技術に比べて作業工程が少なく、その分人件費が節約できる経済的に優れた方法である。
【0007】
しかし、特許文献4が開示する技術も実用上問題がないわけではない。実際、特許文献4に記載されている技術では、変態温度を下げる手段として、NiおよびCrを相当量、例えばNiを10%程度、Crを10%程度添加することが開示されている。しかし、このような高価な元素を添加することは、材料費の増加をもたらし、経済的な観点からは好ましくない。そのため、より安価な元素で変態温度を低減する方法が望まれていた。
【0008】
特許文献4の技術は、経済性の問題以外にも合金元素の大量添加により溶接作業性の劣化によりビード形状が悪くなるという問題も存在する。特にこの問題が顕著になるのは溶接ビードのスタート部とクレーター部である。これら部分は、溶接条件的にも非定常状態であるため特に作業性が問題になりやすい部分である。さらに、スタート部やクレーター部は、ビードの乱れに加え、構造的な応力集中部でもあるため、このような応力集中部でのビードの乱れやすいという問題が従来技術には存在していた。
【0009】
このように、溶接金属の変態膨張を利用する方法や超音波ピーニング法には、まだ解決が望まれている問題点が存在し、これら問題を解決した高疲労強度溶接継手および溶接継手の疲労強度向上方法が強く望まれていた。
【0010】
【特許文献1】
US 6171415 B1
【特許文献2】
US 6338765 B1
【特許文献3】
US 2002/0014100 A1
【特許文献4】
特開平11−138290号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
溶接金属の変態開始温度を充分下げて疲労強度を向上させる技術は、特に新しい製造工程を必要とするわけではないためメリットが大きいが、作業性が悪い、高コストである、などの問題が現存している。一方、従来継手に対してピーニング処理をして疲労強度を向上させる方法は、全溶接線に対して実行しなければならず、製造コスト増加につながる方法である。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、従来よりも安価な元素で溶接金属の変態温度を低減させて溶接継手の疲労強度を十分に向上させ、ピーニング処理を、ビード形状が乱れやすいスタート部分とクレーター部分に限定させることにより、従来低温変態のために必要であった高価な合金元素の添加量を大幅に低減させ、かつピーニング範囲を狭くすることにより従来よりも経済性および溶接金属の靭性に優れる、薄鋼板の高疲労隅肉溶接継手および高疲労強度隅肉溶接方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以上のような背景より、薄板の溶接継手の疲労強度向上方法について鋭意研究を重ねてきた。本発明は、かかる研究の成果によりなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
【0017】
(1) 鋼板を隅肉溶接する方法において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ引っ張り強度が570MPa以上の鋼板を用い、溶接部に溶接金属の溶け込み深さが該鋼板の1/2以下、かつ、質量%で、
C:0.35〜0.70%、
Si:0.1〜0.8%、
Mn:0.4〜2.0%、
P:0.03%以下、
S:0.02%以下
であり残部が鉄または不可避不純物からなり、オーステナイトからマルテンサイトまたはベイナイトに変態開始する温度が400℃以下250℃以上である溶接金属を形成し、該溶接部の溶接ビードのスタート部およびクレーター部の端部から少なくとも10mm以上の範囲にわたって、溶接止端部が該鋼板表面より0.03mm以上かつ板厚の1/4以下へこむように、周波数が23kHz〜60kHzの範囲内にある超音波を用いて、該溶接止端部をピーニング処理することを特徴とする高疲労強度隅肉溶接方法。
【0019】
(2) 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Ni、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種または2種以上を合計量で0.001〜2.0%含有することを特徴とする前記(1)記載の高疲労強度隅肉溶接方法。
【0021】
(3)ピーニングを行なう際の、溶接部に衝撃を加える先端部分に、直径が1 .5mm〜7.0mmの範囲内にあるピンを1本または複数本用い、かつ、ピン先端の硬度が、ビッカース硬さで450 以上900以下であるピンを用いることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高疲労強度隅肉溶接方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0024】
まず、本発明の技術思想について述べる。本発明の技術思想は大きく2つ存在し、第1の技術思想は、溶接金属の変態膨張を利用し溶接残留応力を低減する技術に関するものであり、第2の技術思想はピーニング処理に関するものである。初めに第1の技術思想について述べる。
【0025】
第1の技術思想である溶接金属の変態膨張を利用した疲労強度向上方法はさらに3つの方法に細分することができる。
【0026】
1つ目は、溶接金属の変態膨張を利用し、反力により鋼材側に生じる残留応力を低減させ、その効果により疲労強度を向上させる方法である。そのためには、変態温度を低減させる元素を溶接金属に添加する必要があるが、従来技術、例えば特許文献4で開示されているような成分系では材料の費用が高くなりすぎ経済効果が期待できない。そこで、本発明では、これに代わる元素として安価なCを用いている。第1の技術思想における2つ目の方法は、通常、変態温度を充分低くする程度にCを添加すると高温割れが発生し残留応力を低減しても割れが形成するノッチによる応力集中のため疲労強度が向上しないという問題を、板厚を限定することにより高温割れを回避するという方法である。Cは、NiやCrと比べ非常に安価な元素であり、かつ変態温度を下げる働きがあることは知られていた。しかし、Cは溶接金属の凝固温度も低くさせ、溶接金属の凝固過程において、低融点部分が発生しそれが高温割れを発生させるという大きな問題があるため、これまでCは残留応力低減による疲労強度向上方法技術には用いられてこなかった。本発明者らは、板厚を限定することによりこの問題を回避することができることを見いだし、かつ割れを回避できるCの範囲で疲労強度を向上できることを見いだした。板厚を限定することの効果は、板が薄くなる分、凝固が一様に表面方向に向かうようになり、割れが生じやすい突き合わせ凝固が回避できるようになるためと考えられる。第1の技術思想における3つ目の方法は、鋼板の強度を高くし、かつ、溶け込み深さを限定することにより、溶接金属の変態膨張時に発生する反力をその分大きくさせ、より効果的に残留応力を低減でき、疲労強度も向上することができるというものである。溶接金属が変態膨張しても、その時点で導入される圧縮応力は、高々鋼板の強度程度であり、ましてや変態中の溶接金属を周囲の鋼材が拘束しなければ、溶接金属は自由に膨張するだけで圧縮応力は導入されない。逆に、鋼板の強度程度まで圧縮応力が導入されるとすれば、鋼板強度が高いほど圧縮応力も大きくなるため、変態終了後に熱収縮が発生しても圧縮応力が残留する確率が高くなることが理解できる。すなわち、鋼板の強度が充分でない場合は導入される圧縮応力がそれだけ小さく、また、溶け込みが深すぎると溶接金属の膨張を拘束する鋼板部分が減少してしまうため、やはり導入される圧縮応力は小さくなる。逆に、これら、鋼板の強度および溶け込み深さを規定することにより、効率よく残留力を制御でき、疲労強度の向上も期待できる。
【0027】
本発明における第2の技術思想は、溶接ビードのスタート部分とクレーター部分に対して、ピーニング処理をほどこして、そこの部分の疲労強度を確保しようというものである。スタート部分およびクレーター部分は、ビード形状が乱れやすいという問題に加え、構造的にも応力集中しやすい部分である。そのため、本発明では、スタート部分とクレーター部分以外の溶接止端部については第1の技術思想を用いて疲労強度を確保し、スタート部分とクレーター部分についてはピーニング処理を用いて疲労強度を確保することにより、溶接継手全体としての高疲労強度を実現させている。このように、ピーニング処理をスタート部分とクレーター部分近傍に限定することにより、ピーニング作業の負荷をできるだけ低減させることが可能になる。
【0028】
本発明は、ピーニング処理として、特に超音波を用いたピーニングを用いることを特徴としている。超音波ピーニングを用いると、その分、ピーニング処理をする時間が短縮され、それだけメリットは大きい。本発明の本意は、できるだけ簡便な方法で疲労強度を向上させる技術の提供を目的としているため、超音波ピーニングを使用する意義は大きい。
【0029】
次に、板厚を限定した理由について述べる。
【0030】
本発明では、溶接金属の変態温度を下げるためにCを通常の場合より多めに添加している。しかし、Cを添加すると高温割れが発生する危険性が高まり、割れ発生の場合、そこに応力集中が生じ、結局疲労強度は向上しない。本発明では、疲労強度を向上できるCの範囲内で割れ発生を防ぐために板厚に制限を設けている。板厚を制限する、言いかえると薄鋼板に限定するという効果は、以下のようにして説明できる。
【0031】
図1は、薄鋼板の重ね隅肉溶接継手を示した図である。図1の点線は、溶接部の冷却過程でのある時刻における等温線1(例えば、1000℃まで加熱された部分)を示し、実線で囲まれた部分は溶接金属2を示している。板が薄いため、等温線は溶接金属より遠いところに位置している。そのため、溶接金属の冷却は、主として溶接金属表面からの熱放散で決定されるようになり、溶接金属の凝固もまた図1の矢印の方向、すなわち表面方向に進むこととなる。この場合は、図1の左側に示す凝固組織が得られることになり凝固同士がぶつかり合わない、すなわち突き合わせ凝固をおこさなくなるため高温割れは回避できることとなる。この凝固過程は、板が厚くなった場合、異なってくる。図2は、板が充分厚い場合の溶接部の凝固過程を示した概念図である。点線は図1同様等温線1であり、実線で囲まれた部分が溶接金属2であるが、板が厚いため、板そのものの熱容量が大きく、板の温度が上昇しにくいため等温線は溶接金属のすぐ近くに位置している。このため、溶接金属は、表面からの熱放散よりも、板そのものからの冷却、言い換えると、板への熱拡散で決定されるため、凝固は図2の矢印で示された方向に進む。このため、図2の左側に示す凝固組織が得られることになり溶接金属の中央部分で凝固同士がぶつかり合う、すなわち突き合わせ凝固が生じるため割れが発生しやすい。これは、凝固が進むにつれ、低融点物質4が突き合わせ凝固部分に集中してくるためである。
【0032】
図3は、Cを0.6%含むワイヤを用いて重ね隅肉溶接を行ったときの割れ観察の結果を示したものである。割れ観察は、溶接部よりマクロを採取し、それを顕微鏡にて観察し、割れの長さを測定し、その合計を割れ長さと定義した。図3における白丸が測定結果である。板が薄い場合は割れ長さは0mm、すなわち割れは発生していないが、板が厚くなってくると割れ長さは次第に長くなってくることが理解できる。通常、Cが高いワイヤを用いる場合は、凝固割れ発生という問題が生じるが、図3から割れ発生は、板厚を限定することにより防ぐことができることがわかる。
【0033】
本発明では、図1に示すような凝固過程を得るために板厚の範囲を限定した。板厚の下限1.0mmは、これより薄い板の場合、後述する溶け込み深さを限定することが難しくなりそれだけ溶接金属の変態膨張時に反力として作用する母材部分が少なくなり、溶接止端部への圧縮応力の導入が難しくなるためである。板厚の上限4.0mmは、これを上回る板厚では凝固割れの危険が高まるため、この板厚を設定した。
【0034】
次に、溶接金属のオーステナイトからマルテンサイトまたはベイナイト変態開始温度を限定した理由について述べる。
【0035】
本発明における疲労強度向上方法はの1つは、溶接金属の変態膨張を利用し、疲労亀裂が発生する溶接止端部の残留応力を低減すなわち圧縮残留応力にすることを利用するものである。そのためには、溶接終了後室温にまで冷却した状態まで変態膨張による導入された圧縮応力が残留していなければならない。しかし、一般的には、溶接金属が変態膨張しても、変態後の熱収縮により引っ張り残留応力になることが通常であった。圧縮応力を残留させるためには、変態を低い温度で発生させ、変態終了後の熱収縮を小さくすることが必要である。そのため、オーステナイトからの変態開始温度を限定する必要がある。溶接金属の変態開始温度の上限350℃は、これを上回る温度で変態が始まる場合、変態終了後の熱収縮が大きすぎ、疲労強度を改善するほどの残留応力低減が得られないため、この値を設定した。なお、変態開始温度の上限400℃は、特許文献4に開示されている従来技術よりはかなり高い温度である。この理由は、本発明では薄板に限定しているからで、一般に板が薄いと拘束度が低くなる傾向にあるため、特許文献4に示されている変態開始温度ほど低くする必要はないからである。一方、変態開始温度が低すぎると、残留オーステナイトが多くなり、変態膨張量が不十分となってくるため、また、溶接金属の強度も母材に比べ低くなり、圧縮残留応力が充分導入されなくなるため下限を250℃とした。
【0036】
次に、溶接止端部の鋼材表面からのへこみ量を限定した理由について述べる。本発明では、溶接継手の疲労強度向上を、溶接金属の変態膨張とピーニング処理の2つを併用して達成させている。溶接金属の変態膨張を用いて疲労強度を向上させる方法は、溶接金属の変態開始温度を限定したり、溶接金属の成分を限定することにより疲労強度向上効果を確保することができるが、ピーニング処理を行った場合、その処理で疲労強度向上効果が得られているのかどうかは必ずしも明確ではない。そこで、本発明者らは、ピーニング処理をした後の溶接止端部のへこみ量に着目し、疲労強度向上効果が得られるへこみ量を調査した。へこみ量の下限0.03mmは、これを下回るへこみ量では、ピーニング処理の効果が小さく疲労強度が向上しないためこの値を設定した。上限の板厚の1/4は、これ以上のへこみ量となるピーニング処理は、板厚減少による局部応力の増加を引き起こし、継手としての疲労強度向上からは好ましくないためこの値を設定した。
【0037】
次に、止端部へのピーニング処理を行う領域または止端部のへこみが存在する領域の範囲を限定した理由について述べる。
【0038】
本発明において、ピーニング処理を行う目的は、ビード形状が不良となる溶接ビードのスタート部分とクレーター部分の疲労強度を確保することである。そのため、ピーニング処理を行う、またはそれによって止端部のへこみが存在する領域はビード形状が不良となる領域をカバーする必要がある。特に疲労特性上問題となる部分はビードの両端部分である。そのため、止端部へのピーニング処理または止端部へのへこみは、この両端部分を少なくともカバーしていなければならない。そして、ビード形状が悪い、両端部から10mmの範囲は、確実にピーニング処理を実施しへこみが確保されていなければならない。本発明で、止端部へのピーニング処理を行う領域また止端部へのへこみがスタート部とクレーター部の端部から少なくとも10mm以上の範囲にわたると限定した理由は以上のことによる。また本発明では、ピーニング処理領域またはへこみ部領域の上限を特に設けていない。上限を設けることにより疲労強度がさらに向上するという効果が必ずしも得られないからである。しかし、ピーニング処理そのものは製造コストの上昇を招き、また本発明では低温変態溶接金属で疲労強度向上が達成されているため、好ましくはこの上限を100mmとすることが望ましい。
【0039】
次に、溶接金属の各成分の範囲限定理由について述べる。
【0040】
Cは、溶接金属の強度を増加させかつ変態温度を下げるという意味で、本発明において最も重要な成分である。Cの下限0.35%は、これを下回る量では変態温度が充分低減しないため、残留応力が低減されず、結果的に疲労強度が向上しないためである。また、Cの上限0.70%は、これを上回る量を添加してもその効果が同じとなり、また溶接ワイヤを作製するときの製造工程負荷が増加するため、その上限を0.70%とした。
【0041】
Siは主として脱酸元素として添加されるべき元素である。Siの下限0.1%は、これを下回る添加量では脱酸効果が不十分で溶接金属中の酸素を充分低減できない危険性がある。酸素の増加は機械的特性、特に靱性の劣化を招くため下限を0.1%とした。上限は、これを上回る量を添加しても靱性劣化を招くためこの値を設定した。
【0042】
Mnは、強度を上げ、かつ変態温度を下げる効果を持つため添加する。Mnの下限、0.4%は強度確保という効果が得られる最低限の値として設定した。変態温度を下げるという観点からは、Mnの添加量は本発明にある上限2.0%を上回っても問題はないが、本発明ではすでに説明したCで変態温度が充分低減されていること、および過度のMn添加は溶接材料が高価になり本発明の本意からはずれるため上限を2.0%とした。
【0043】
PおよびSは、本発明では不純物である。しかし、これら元素は、溶接金属に多く存在すると、靱性が劣化するため、その上限をそれぞれ0.03%、0.02%とした。
【0044】
以上が、本発明における溶接金属の基本成分である。しかし、溶接金属の強度、さらには靱性をより確保するためには、要求特性に応じてさらなる合金元素の添加が望ましい場合も生じる。しかし、溶接金属の強度、靱性のみに着目して合金元素を添加させると、安価な材料で溶接継手の疲労強度を向上させるという目的に反する結果になりかねない。本発明における本意は、あくまでも安価なCを用いて疲労強度を向上させることを目的とするものであるため、高価な元素を必ずしも添加していない。しかし、本発明では、疲労強度向上以外、例えば作業性の観点からCuを、また、靱性改善などの目的でさらなる添加元素として、Ni、Cr、Mo、V、Nb、Ti、Ca、B、Mgを、これら合計を0.001%以上添加することができる。この下限0.001%は、これら合金元素を添加し、靱性改善効果が期待できる最低限の値として規定した。一方、安価な材料で疲労強度を向上させるという目的のためには、これらの合計を2.0%以下に抑える必要であり、好ましくはこれら合金元素の合計1.0%以下とすることが望ましい。
【0045】
次に、被溶接鋼板の強度を限定した理由について述べる。
【0046】
本発明では、溶接金属の変態温度を低減することにより疲労強度を向上させる技術を提供することを目的とするものである。疲労亀裂は、必ずしも変態温度の低い溶接金属に発生せず、むしろ鋼材側の熱影響部に発生しやすい。すなわち、鋼材熱影響部の残留応力を低減しなければ溶接継手全体としての疲労強度を向上させることはできない。溶接金属の変態膨張で鋼材熱影響部に発生する残留応力を低減させることができる理由は、溶接金属が膨張するときに鋼材側に発生する応力も溶接金属への反力により圧縮応力になることによる。このため、より高い反力が期待できる高強度鋼材ほど疲労特性の改善も大きいと期待される。鋼材強度が低い場合は、反力も低くならざるを得ず、変態終了後の熱収縮で再び引っ張り応力状態に戻ってしまう危険があるためである。引張り応力が残留してしまえば、疲労強度改善は望めない。そのため、本発明では、特に疲労強度向上が期待できる下限の強度として570MPaを設定した。なお、本発明では鋼材の強度の上限を設けてはいない。反力を確保するという観点からは必ずしも上限を設けることでより高疲労強度が得られるというわけではないためである。しかし、鋼板強度を著しく高くすことは、疲労強度の向上は期待できるものの、鋼板そのものの費用がかさみ、安価な材料であるCを溶接金属に添加して材料費を抑えるという本発明の本意からはずれるので、好ましくは上限を980MPaと設定することが望ましい。
【0047】
次に溶接部の溶け込み深さを限定した理由について述べる。
【0048】
鋼材強度限定理由について述べた時、溶接金属の変態膨張時に発生する反力について言及したが、溶け込み深さが大きい場合にも溶接金属の変態膨張時に鋼材熱影響部の反力が大きくならず、疲労強度は改善しない。図4はこのことを説明した概念図である。図4では、溶け込み深さが大きく、図4中のAで示された部分は、ほとんど力を支えることはできないため、溶接金属2は変態時にほとんど自由に膨張してしまう。そのため、鋼材熱影響部側に反力が発生しない。比較的板が厚い場合は、このような溶け込み深さの問題は気にせずともよかったが、薄板の場合は溶け込み深さを制御しなければ残留応力を低減できず、ひいては疲労強度を向上させることができない。しかし、本発明では溶接金属の変態温度を下げるためにCを添加しているため、高温割れ防止の観点から薄板に限定することは必須であり、効果をより高めるためには溶け込み深さも制御する必要がある。溶け込み深さを被溶接鋼板の板厚の1/2以下としたのは、鋼材からの反力が充分期待できる範囲という意味で設定した。しかし、より大きな反力を得るという観点からは、溶け込み深さの上限を好ましくは板厚の1/3以下とすることが望ましい。
【0049】
次に、ピーニング処理について特に超音波を用いたピーニング処理に限定した理由について述べる。
【0050】
ここで超音波ピーニングとは周波数が20kHzから60kHzの範囲内にある周波数を持つものをいう。超音波を用いる最大のメリットは、ピーニング先端のピンの重さが小さくても十分大きな衝撃力を与えることができ、その結果少ない作業時間で十分なピーニング効果をあげることができる点である。ピーニング処理をすることによる疲労強度向上原理は、そこの部分の形状を改善させるとともに圧縮の残留応力を付与することによる。そのためには、ピーニング部分に塑性歪を導入させなければならない。弾性歪の範囲内では、応力が残留しないからである。塑性歪を導入するためには、材料が持つ降伏強度以上の衝撃応力を加える必要があるが、これをもし、静的応力で実現しようとする場合は、溶接部に降伏応力以上の応力を加える必要があり、その分装置が大きくなってしまい、作業負荷の増大をまねく。一方、超音波を用いると、ピーニング部分に加わる応力はピンの質量が例えば10g程度でも十分大きな応力になることがわかる。
【0051】
この原理を簡単に説明する。
【0052】
周波数を33kHzとし、ピンの質量を10g、ピンが振動する範囲を0.03mmとし、ピン先端の直径を3mmと仮定する。このとき、ピンのスピード、Vは
V=0.03×33000=1000mm/s=1m/s
である。ピンは1/33000秒に1回スピードを+1m/sから−1m/sに変化させると考えると、その変化は、ピーニング処理部分にピンがぶつかる瞬間に発生する。このスピード変化が1回の周波数内の1/10の時間すなわち、1/330000秒の間で生じるとすると、速度の時間変化、すなわち加速度、Aは
A=dV/dt=2×330000=660000m/s2
となる。衝撃力Fは、上記加速度にピンの重さ10g=1/100kgをかければ求まり、
F=660000×1/100=6600N
となる。応力Sは、これをピンの断面積、1.5×1.5×3.14=7.1mm2で割れば計算でき、
S=6600/7.1=930N/mm2=930MPa
となる。注意すべきは、この応力は、ピンの重さがわずかに10gとした場合の値である点である。実際の超音波ピーニングの場合は、速度反転が生じる時間間隔が上記計算の設定よりさらに短いと考えられるため、より大きな衝撃応力が出ているものと考えられる。
【0053】
以上のように、ピーニング処理のうち、特に超音波を用いる方法は、ピンの質量が小さくて済み、その分装置の軽量化ができるなどの利点を有することがわかる。
【0054】
次に超音波ピーニングの周波数を限定した理由について述べる。
【0055】
下限の20kHzは、これを下回る周波数の場合、人間が聞こえる周波数すなわち可聴周波数の範囲の入ってしまい、ピーニング作業の観点からは好ましいことではない。本発明の本意は、簡便な疲労強度向上方法を提供することにあるため、作業環境が劣化するような方法は本発明の本意からはずれる。また、上記衝撃応力の試算からわかるように、超音波の周波数は高いほど衝撃応力が高くなりそれだけ有利となる。下限の20kHzは、簡便な装置で十分なピーニング効果を得られる周波数として、また作業環境を劣悪なものとしない値として設定した。なお、下限の20kHzは、より高い衝撃応力を得る観点から、好ましくは23kHz以上とすることが望ましい。上限の60kHzは、これ以上の周波数になると、現在の技術では簡便な装置で超音波を得ることが難しくなり、かつ人間の耳には聞こえないものの健康管理上の問題が生じてくるためこの値を設定した。
【0056】
次に、ピンの硬さを限定した理由について述べる。
【0057】
本発明では、鋼材および溶接金属の強度を限定している。これは、溶接金属の変態膨張を有効に圧縮弾性歪みに変化させることを目的としている。しかし、溶接ビードのスタート部、クレーター部に関してはビード形状の劣化からピーニング処理などで疲労強度を確保する必要がある。一方、強度に関しては、スタート部、クレーター部も所定の強度を有している。例えば、引っ張り強度が780MPaの場合、硬さは280Hv程度ある。980MPaになると、硬さは350Hv近くある。ピーニングによりそこの部分の形状改善や残留応力低減を実行するには、ピーニング部分に塑性ひずみを導入しなければならない。そのためには、ピンの硬さを鋼材および溶接金属より硬くする必要がある。そのため本発明ではピンの硬さの下限を450Hvとした。上限の900Hvは、これ以上硬い材料はあるものの、ピンそのもののコストが大きくなり、またピーニング効果が格段に大きくなるというわけではないため、この値を設定した。
【0058】
次にピンの直径を限定した理由について述べる。
【0059】
前述の衝撃応力試算例からわかるように、最終的な衝撃応力は、衝撃力をピン断面積で割ることにより求めることができ、また断面積が小さいほど衝撃応力は大きくなる傾向にある。より大きい衝撃応力を得るためにはピンを例えば針のように細くすればいいが、この場合、ピンが折れたり座屈したりする危険があり、不必要な細形はかえってマイナスである。下限1.5mmは、ピンが座屈をせず、また折れたりしないで十分ピーニング処理に耐えうる値として設定した。逆にピンの直径が大きすぎると十分な衝撃応力が得られなくなる。上限の7mmは、これ以上の直径ではピンの断面積が大きすぎ、衝撃力としては十分であるものの衝撃応力が所定の値にならない場合があるためこの値を設定した。
【0060】
【実施例】
表1に疲労試験片を作製したときに用いた溶接ワイヤの成分を示す。ワイヤ径は、全て1.2mmである。なお、ワイヤにCuが添加されているものは、ワイヤ通電性を良くし、作業性を向上させるためのもので、変態温度を調整するために添加したものではない。これらワイヤを用い、Ar+20%CO2のシールドガスを用いて表2に示す成分の鋼板を用いて隅肉溶接を実施した。表3には、鋼板と溶接ワイヤの組み合わせ、そのときの溶接条件および溶接金属成分を示した。表3に示したマルテンサイト変態開始温度(Ms)は、その溶接金属からフォーマスター試験片を採取して実測した値である。溶接継手は、表2に示す、400MPa級、490MPa級、570MPa級および780MPa級鋼材の4種類を用い、これら鋼材の板厚は機械加工にて減厚することにより調整した。溶接条件は表3に示すように変化させているため、溶け込み深さも変化することとなる。
【0061】
図5は、本実施例で用いた疲労試験片の形状を示した図である。図5では、疲労試験片を冶具5及び冶具6で保持して、わざと溶接ビードのスタート部7とクレーター部8にも疲労荷重が加わるようになっている。一般に、疲労試験片に用いられる溶接継手は、溶接ビードのスタート部とクレーター部が試験片に残らないように機械加工で削除される場合が多い。しかし、実構造物によっては、スタート部とクレーター部の削除が不可能または非常に難しい場合がある。そこで、このような構造物の疲労挙動を再現できるようにしたのが図5である。図5では、応力集中部はスタート部7とクレーター部8に加え、コーナー部9も応力集中部となる。
【0062】
図5に示すような試験片をあらかじめ複数個用意しておき、そのまま疲労試験を行う場合と、種々の条件でピーニング処理をして疲労試験を行う場合とで疲労強度に与える影響を調べた。疲労強度は、500万回荷重を負荷しても破断しない荷重で定義し、例えば、疲労強度が1kNであるというのは、応力比が0.1で負荷荷重が0.11〜1.11kNの間で500万回繰り返し荷重を負荷しても破断せず、それを上回る荷重範囲では500万回より少ない繰り返し数で破断する荷重で定義した。なお、疲労破断の判断は、試験片のスタート部、クレーター部およびコーナー部に歪ゲージを貼り付けておき、疲労試験中にその歪ゲージの読みが初期の値より20%減少したときを疲労破断したとみなしたものである。また、歪ゲージは溶接後に試験片に貼り付けたため、溶接残留応力の影響は含まれていない。
【0063】
図6,7は、溶け込み深さとピーニング処理後のへこみ量を示している。図6からわかるように、溶接ビード(図中のハッチングをした部分)を拘束する部分は、ビード下の鋼材部分である。また、溶け込み深さとへこみ量は、疲労試験終了後の継手からマクロ試験片を採取し、図6,7に示す部分の溶け込み深さとへこみ量を測定することにより決定することができる。また、表3には、図6で定義される溶け込み深さの測定値を、表4の溶接金属成分は、疲労試験片の溶接金属部分(図6に示すハッチング部分)より採取した試料を分析した結果を示している。
【0064】
表3には、溶け込み深さの測定値と板厚に対する溶け込み深さの比を示しているが、溶け込み深さの比が本発明の範囲外である板厚の1/2を上回っている継手は、表3における継手No.の、5と6−Bだけである。継手No.5は、No.4に比べわざと入熱量を高くして溶け込みを大きくした場合であり、No.6−Bは、No.6−Aと鋼材および溶接材料かつ溶接条件まで同じであるが、板厚のみわざと本発明の範囲外にしたものである。No.6−Bは、板が薄いため溶け込みを板の1/2以下に抑えることができなかった場合である。
【0065】
表4には、溶接金属の変態開始温度を示している。変態開始温度は、実際に表3の鋼材と溶接材料の組み合わせおよび溶接条件で試験片を作製し、その溶接ビードからフォーマスター試験を行ない変態開始温度を求めた結果である。変態開始温度が本発明の範囲外である継手No.は、表4の継手No.で(表3の継手No.と同じ)、1、4である。
【0066】
表5及び表6には、ピーニング条件、へこみ量および疲労試験結果を示している。表5には、表3における継手の内、板厚が2mm以上のもの、表6には、板厚が2mm未満のものをまとめた。表5及び表6を2つに分けた理由は、板厚が異なると、疲労強度を比較することが難しくなるためである。
【0067】
表5の疲労試験結果を見ると、試験No.1は変態開始温度が本発明の範囲外であったためコーナー部より疲労亀裂が発生し疲労強度が低くなった例である。試験No.2は、No.1にピーニング処理を行なわなかったためさらに疲労強度は低くなった。試験No.3は変態開始温度は表4の継手No.2から300℃と本発明の範囲内であったものの、ピーニング範囲が本発明の範囲外で、スタート部とクレーター部の疲労向上が不十分であったため疲労強度は低いままであった。試験No.4では、ピーニング処理条件を本発明の範囲内に設定したため疲労強度は十分向上した例である。試験No.5は変態温度が本発明の範囲内であるがピーニングもしていないため疲労強度としては低くなった。それに対し、試験No.6は本発明の範囲内であるため疲労強度は十分高い。試験No.7は継手No.4の場合であり、変態開始温度が本発明の範囲外であったため、ピーニング条件が本発明の範囲内でもコーナー部からの疲労が防げず、疲労強度は向上していない。試験No.8は、変態温度蛾本発明の範囲外でかつピーニング処理模していないため、表5の中では最も低い疲労強度を示した例である。試験No.9は、変態温度、ピーニング条件ともに本発明の範囲内であるものの溶け込み深さが本発明の範囲外であったため残留応力低減が十分ではなくコーナー部から疲労亀裂が発生した。試験No.10は、ピン直径が細すぎ、ピーニング中にピンが折れてしまった例で、試験No.11はピン直径が本発明の範囲外で、いずれの場合もピーニング効果が不十分となり、結果的にへこみ量が本発明の範囲外となった例である。試験No.12は、ピン硬さが低く、鋼板および溶接金属を十分ピーニングできず、結果的にへこみ量が不十分で疲労強度が向上しなかった例である。試験No.13は、板厚が本発明の範囲外であったため、特にクレーター部分に凝固割れが発生し、ピーニング処理をしても割れが形成するノッチから疲労が発生してしまい、表5の中では疲労強度が特に低い結果となってしまった例である。
【0068】
表6は板厚が2mm未満の場合の疲労試験結果を示している。試験No.22は、板厚が本発明の範囲外であり、その結果溶け込み深さが課題になり疲労強度が低くなった例である。板が薄いため疲労強度が低くなったとも考えられるが、板厚に比例して疲労強度が高くなると仮定しても板厚1.5mm換算で疲労強度は4.5×1.5/0.9=7.5(kN)であり、本発明の範囲内である試験No.21より低い値である。試験No.23は、ピーニング処理を過度に行なってしまった例であり、ピーニング処理をしたところの局部応力が高くなり、疲労強度が向上しなかった例である。試験No.24は、鋼材強度が本発明例の範囲外で低すぎ、圧縮残留応力導入が不十分であったため疲労強度は向上しなかった。試験No.25は鋼材強度とへこみ量が本発明の範囲外であり、板厚1.5mmの試験片(表6の試験No.22以外の試験片)の中ではもっとも低い疲労強度になった例である。
【0069】
以上のように、表5では、本発明の範囲内の場合、疲労強度は14kNを上回り、表6では、本発明の範囲内では疲労強度は、9kNを上回っており、高疲労強度が実現されていることがわかる。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、低温変態溶材における問題点、およびピーニング処理の問題点、すなわち安価な溶接材料で低温変態を実現し、かつピーニング処理工程を大幅に低減させて疲労強度を向上させることが可能である。したがって、本発明は工業的価値の極めて高い発明であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、板が薄い場合の溶接金属の凝固方向および溶接金属の凝固組織を説明する概念図である。
【図2】図2は、板が厚い場合の溶接金属の凝固方向、溶接金属の凝固組織および低融点物質の集まる部分を説明する概念図である。
【図3】図3は、0.6%Cを含むワイヤで重ね隅肉溶接を行ったときの、板厚と割れ長さの関係と示した図である。
【図4】図4は、溶け込み深さが大きい場合、鋼材の反力が低下することを説明するための概念図である。
【図5】図5は、本願実施例で用いた疲労試験片の形状を説明する概念図である。
【図6】図6は、重ね継手における溶け込み深さを説明する概念図である。
【図7】図7は、ピーニング処理をした後のへこみ量を説明する概念図である。
【符号の説明】
1 等温線
2 溶接金属
3 溶接金属表面
4 低融点物質
5 冶具
6 冶具
7 スタート部
8 クレーター部
9 コーナー部
10 溶け込み深さ
11 へこみ量
Claims (3)
- 鋼板を隅肉溶接する方法において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ引っ張り強度が570MPa以上の鋼板を用い、溶接部に溶接金属の溶け込み深さが該鋼板の1/2以下、かつ、質量%で、
C:0.35〜0.70%、
Si:0.1〜0.8%、
Mn:0.4〜2.0%、
P:0.03%以下、
S:0.02%以下
であり残部が鉄または不可避不純物からなり、オーステナイトからマルテンサイトまたはベイナイトに変態開始する温度が400℃以下250℃以上である溶接金属を形成し、該溶接部の溶接ビードのスタート部およびクレーター部の端部から少なくとも10mm以上の範囲にわたって、溶接止端部が該鋼板表面より0.03mm以上かつ板厚の1/4以下へこむように、周波数が23kHz〜60kHzの範囲内にある超音波を用いて、該溶接止端部をピーニング処理することを特徴とする高疲労強度隅肉溶接方法。 - 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Ni、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種または2種以上を合計量で0.001〜2.0%含有することを特徴とする請求項1記載の高疲労強度隅肉溶接方法。
- ピーニングを行なう際の、溶接部に衝撃を加える先端部分に、直径が1.5mm〜7.0mmの範囲内にあるピンを1本または複数本用い、かつ、ピン先端の硬度が、ビッカース硬さで450以上900以下であるピンを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の高疲労強度隅肉溶接方法。
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