JP3922670B2 - 洗口液及びその白濁防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、口腔内の殺菌などを行うための洗口液及びその白濁防止方法に関し、特に長期間保存しても白濁やオリの発生がなく、かつ殺菌作用が維持される洗口液及びその白濁防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より液体口腔用組成物には、単に口を洗浄することを目的とするものと、殺菌剤等を含有し歯垢の形成等を防止することを目的とするものとが知られている。
前者の口を洗浄することを目的とするものとしては、洗口剤等があるが、その洗浄の際に口に清涼感を与えるためにペパーミントオイル、スペアミントオイル等の香料を含有させることが普通であり、この中でも清涼感を与えることを主目的としているものを「口中清涼剤」と呼ぶことがある。
また、後者の液体口腔用組成物では、歯肉炎や虫歯などの予防に塩化セチルピリジニウムをはじめとする殺菌剤が使用されている。この塩化セチルピリジニウムは口腔粘膜や歯牙表面に比較的吸着されやすく、歯牙表面への細菌の吸着を防止し、歯垢の形成を防止するものと考えられているため、塩化セチルピリジニウムが他の物質の影響によりその歯牙等への吸着能が低下することがないようにすることが必要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
洗口液等の液状口腔用組成物においては、その組成物の成分の組み合わせによっては、長期間保存した場合、白濁やオリが発生するという問題があり、特に透明な容器を使用する製品では、透明外観を損なうことになり、また品質の保障の問題もあり、商品価値が低下するため好ましいことではないので、それを防ぐ方法を開発することが必要である。
単に洗浄を目的とするものでは、安全に口中を洗浄できるとともに香料の可溶化剤としての作用が大きい界面活性剤を配合して液体透明口腔用組成物を調製するが、このような液体透明口腔用組成物では添加剤の選択により白濁やオリの発生を比較的簡単に防ぐことができる。
【0004】
しかし、殺菌剤を配合する液体口腔用組成物では、前記の白濁やオリの発生防止という問題の他に、殺菌剤が失活しないようにしなければならない。例えば、殺菌剤の代表例である塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン等は、界面活性剤によるミセル中への取り込みに基づく殺菌力の失活が生じないようにしなければならない。
このため、上記の液体口腔用組成物について、その白濁やオリの発生を防ぐには、殺菌剤を含まない液体口腔用組成物において有効であるとされている添加剤を加えたとしても、果して効果が出るとは限らない。
【0005】
本発明者らは、液体口腔用組成物を開発しようとして、歯垢の形成を予防することができるよう、殺菌剤、例えば塩化セチルピリジニウム等のカチオン殺菌剤を含有する液体口腔用組成物を検討した。
さらに、虫歯の予防に有効であり、安定性に優れているという条件を持たせる上から、アルカリ性を維持できるようにする必要があり、そのアルカリ性の維持には周知の緩衝剤を用いるよりも唾液の緩衝能と同じ働きを持つ炭酸水素アルカリ金属塩を用いてアルカリ性としたものが有効であることを見いだした。
【0006】
そして、この液体口腔用組成物を炭酸水素アルカリ金属塩を用いてアルカリ性とした場合においては、緩衝剤を用いる場合と異なってアルカリ性の維持が強いことによるのか、前記殺菌剤が吸着などによる失活や白濁やオリの発生が起こりやすいため、殺菌剤の作用を保持しながら、白濁やオリの発生を防止することが困難であることがわかってきた。
本発明は、口腔内を殺菌する作用だけでなく、洗浄作用も高い液体口腔用組成物について、白濁やオリの発生が十分に防止されるとともに、十分な殺菌作用が維持されて歯垢の形成を防止することができる液体口腔用組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記の目的を達成するために、カチオン系殺菌剤、界面活性剤を含有する液体口腔用組成物について、その組合せであって、かつ前記した両方の作用を十分に達成できる組成について種々検討したところ、非エステル系界面活性剤を用いたところ、炭酸水素アルカリ金属塩を用いてアルカリ性とすることで、保存中の白濁やオリの発生が十分に防止されるとともに、十分な殺菌作用が維持され歯垢の形成を防止することができることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
本発明は、以下の手段により、上記の課題を解決することができた。
(1)塩化セチルピリジニウム、非エステル系界面活性剤、炭酸水素アルカリ金属塩を含有する洗口液であって、前記非エステル系界面活性剤が、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー及び/又はポリオキシエチレン・アルキルエーテルであり、他の界面活性剤を含有せず(但し、前記塩化セチルピリジニウムを除く)、前記炭酸水素アルカリ金属塩を0.05〜1.0g/100ミリリットルとなる割合で用い、前記炭酸水素アルカリ金属塩によってpHを7.5〜8.5としたことを特徴とするアルカリ性の洗口液。
(2)塩化セチルピリジニウム、非エステル系界面活性剤、炭酸水素アルカリ金属塩を含有する洗口液であって、前記非エステル系界面活性剤が、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー及び/又はポリオキシエチレン・アルキルエーテルである洗口液について、他の界面活性剤を含有せず(但し、前記塩化セチルピリジニウムを除く)、前記炭酸水素アルカリ金属塩を0.05〜1.0g/100ミリリットルとなる割合で用い、前記炭酸水素アルカリ金属塩によってpHを7.5〜8.5とすることを特徴とするアルカリ性の洗口液の白濁防止方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本発明は、水、或いはアルコールを含有する水からなる溶媒中にカチオン系殺菌剤、非エステル系界面活性剤と炭酸水素アルカリ金属塩を加えてアルカリ性とした液体口腔用組成物であって、そのpH値は例えば7.5〜9.5が好適なものであり、さらに好ましくは7.5〜8.5である。
そのようなカチオン系殺菌剤としては、例えば塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジンなどを挙げることができる。また、炭酸水素アルカリ金属塩としては例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどを挙げることができる。
【0010】
この液体口腔用組成物では、炭酸水素アルカリ金属塩でアルカリ性とするとともに、さらに非エステル系界面活性剤を含有しており、これは不水溶性成分を溶かしこむ作用をする他、洗浄作用も有するものである。
このようにして用いる非エステル系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、あるいはポリオキシエチレン・アルキルエーテルなどを挙げることができる。具体的には、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)ブロックポリマー(「POE(160)POP(30)」と略記する、以下同様)、POE(200)POP(40)、POE(200)POP(70)、POE(300)POP(55)などが挙げられる。
【0011】
また、一般には例えば油性の香料、例えばペパーミント系の香料を加え、これを安定的に溶解させるためにポリオキシエチレン・アルキルエーテルを加える。そのようなポリオキシエチレン・アルキルエーテルとしては、例えばポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(25)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(30)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(50)オレイルエーテルなどを挙げることができる。
この他にも以下に示すとおり、変性アルコールやエタノールなどのアルコール類、グリセリン、グリチルリチン酸塩及びその誘導体、キシリトールなどを加えても良い。
【0012】
本発明の組成物の混合比としては、例えば次のようなものが挙げられる。アルコール類を5ミリリットル、グリセリンを5〜20g、非エステル系界面活性剤を0.1〜1.0g、塩化セチルピリジニウムを0.005〜0.05g、グリチルリチン酸ジカリウムを0.01〜0.22g、キシリトールを適量、炭酸水素アルカリ金属塩を0.1〜5.0g、香料を適量、着色剤を微量、精製水を残量加えて全体で100ミリリットルとなるようにする。
混合方法は特に制限はなく、すべての成分を均一に混合して、液相が均一化して濁りがなくなればよい。
【0013】
本発明の液体口腔用組成物において、歯面強化のためには次のようなものを併用してもよい。フッ素イオン源としては、フッ化ナトリウム、フルオロリン酸塩、シリコフッ化物、フルオロほう酸塩など、またカルシウムイオン源としては、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトなどを挙げることができる。フッ素イオン源の配合濃度としては、50〜500ppmが配合できる。
【0014】
本発明の液体口腔用組成物においてはこの他エタノール、水などの希釈剤、シリコン、リン酸エステル、セラック、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの歯面コート剤、グリセリン等の湿潤剤、発泡剤、甘味料、香料、保存料、着色剤などの添加物を配合することができる。配合できる添加物を以下に例示する。
本発明者の研究によれば、界面活性剤としてエステル系の界面活性剤を添加すると、白濁やオリが発生するので、これらを含有しないことが必要である。
【0015】
甘味剤:異性果糖、ステビアサイド、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸塩、トレハロースなど、
香料:メントール、チモール、カルバクロール、アネトール、ユーカリオイル、オイゲノール、ペパーミントオイル、シナモンオイル、シネオールなど、
防腐剤:トリクロサン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、パラヒドロキシ安息香酸エステルなど、
溶媒:エタノール、変性アルコール、水など、
【0016】
また、塩化リゾチーム、デキストラナーゼ、溶解酵素、ムタナーゼ、グリチルリチン酸塩及びその誘導体、クロルヘキシジン又はその塩、ソルビン酸、アレキシジン、ヒノキチオール、アルキルグリシン、アルキルジアミノエチルグリシン塩、アラントイン、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、アズレン、ビタミンC、ビタミンE、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第1錫、水溶性リン酸塩、第四級アンモニウム化合物、塩化ナトリウムなどの有効成分を配合することもできる。
また、本発明の液体口腔組成物を着色するのに添加する着色剤の色素としては、法定色素等の色素、例えば青色1号等の青色、黄色4号等の黄色、赤色102号等の赤色、緑色201号等の緑色等に代表される化粧品等に使用することが可能な色素を挙げることができる。これらの中、前記したPH条件で安定性の高いものが好ましい。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を説明するが、本発明はこの内容に制限されない。
処方▲1▼〜▲3▼を調製し、その性状変化に関して白濁、オリの発生について確認を行った。ただし、室温長期保存を要する長期安定性に関する試験では、室温で6ケ月以上維持しないと、その試験結果を確認することができない。しかし、それと同じ現象は、60℃で10日間保ち、その後冷蔵庫で1〜2日間静置するという加速試験によると、その長期保存の場合と同じ結果が得られることがわかったので、その加速試験を行うことにより長期安定性に関する測定を行った。
すなわち、下記のような処方で調製したものを80ml透明ペットボトルに充填し、60℃で10日間保ち、その後冷蔵庫で1〜2日間静置した後、液の性状を目視で確認した。なお、評価は4段階方式で行い、それは表1の後に示す。
【0018】
(実施例1)(処方▲1▼)
界面活性剤の種類と白濁との関係を調べた。
前記の界面活性剤は、第1表に示すように種々変えて試験を行った。
結果を第1表に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
なお、液の性状欄の+,−は以下の意味を示す。
− :変化なし + :やや白濁
++:白濁 +++:かなり白濁
(以下同じ)
また、第1表中の界面活性剤は、次のとおりである。
POE(60)硬化ヒマシ油:ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油
POE(100)硬化ヒマシ油:ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油
【0021】
(実施例2)(処方(2))
塩化セチルピリジニウムの濃度と白濁との関係を調べた。
供試処方
変性アルコール 5.0wt%
界面活性剤(第2表) 0.2wt%
炭酸水素ナトリウム 0.5wt%
塩化セチルピリジニウム 0.005wt%,又は 0.01wt%
精製水 残部
合計 100.0wt%
結果を第2表に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
(実施例3)(処方(3))
炭酸水素ナトリウムの濃度と白濁との関係を調べた。
供試処方
変性アルコール 5.0wt%
界面活性剤(第3表) 0.2wt%
炭酸水素ナトリウム 0.05wt%,又は 0.30wt%
塩化セチルピリジニウム 0.01wt%
精製水 残部
合計 100.0wt%
結果を第3表に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
(実施例4)
製剤のpHと白濁との関係を調べた。
実施例1と同じ処方の液体口腔用組成物を調製した。これは開放した状態で放置することにより徐々にpHが上昇する傾向がある。室温で4日以上放置すると、pHが9以上となる。このように放置することによりpHを上昇させた処方のものを80ml入り透明ペットボトルに充填し、60℃で10日間保ち、その後冷蔵庫で1〜2日間静置した後の液の性状を目視で観察した。
(結果)
pHが上昇するにつれて白濁の程度は大きくなる傾向が認められた。また、非エステル系界面活性剤ではpHが9以上の高い条件でも白濁は認められなかった。
【0026】
実施例1から次のことが分かった。すなわち、塩化セチルピリジニウム及び界面活性剤を含有した液体口腔用組成物において炭酸水素ナトリウムを添加してアルカリ性とする時に、非エステル系界面活性剤を含有させることで白濁を防止できた。
実施例2から次のことが分かった。炭酸水素ナトリウムの濃度を0.5wt%の場合において、エステル系界面活性剤の場合には、塩化セチルピリジニウムの濃度が0.005〜0.01wt%という広い範囲で白濁が認められた。一方、非エステル系界面活性剤を使用した場合には、同範囲で白濁は認められなかったので、長期間保存が可能であることがわかった。
【0027】
実施例3から次のことが分かった。塩化セチルピリジニウムの濃度を0.01wt%とすると、エステル系界面活性剤の場合には、炭酸水素ナトリウムの濃度が0.05〜0.30wt%という広い範囲で白濁が認められた。一方、非エステル系界面活性剤を使用した場合には、同範囲で白濁は認められなかったので、アルカリ性において濃度を変えて調製することが可能である。
【0028】
処方例4〜5
以下の第4表及び第5表に処方例4〜5を示す。ただし、表中のPOP・POEブロックポリマーは、ポリオキシエチレンのエチレン鎖が30〜300の範囲のもの、ポリオキシプロピレンのポロピレン鎖が30〜70の範囲のものが用いられる。また、表中のPOEセチルエーテルは、エチレン鎖が2〜50の範囲のものが用いられる。
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
【発明の効果】
本発明は、カチオン系殺菌剤と炭酸水素アルカリ金属塩に加え、非エステル系界面活性剤を含有させ、エステル系界面活性剤を含有しないので、白濁やオリの発生が十分に防止されていて、商品価値が低下することなく、また製剤のアルカリ性が安定に維持することができて、虫歯の予防に有効である液体口腔用組成物を提供することができる。
Claims (2)
- 塩化セチルピリジニウム、非エステル系界面活性剤、炭酸水素アルカリ金属塩を含有する洗口液であって、前記非エステル系界面活性剤が、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー及び/又はポリオキシエチレン・アルキルエーテルであり、他の界面活性剤を含有せず(但し、前記塩化セチルピリジニウムを除く)、前記炭酸水素アルカリ金属塩を0.05〜1.0g/100ミリリットルとなる割合で用い、前記炭酸水素アルカリ金属塩によってpHを7.5〜8.5としたことを特徴とするアルカリ性の洗口液。
- 塩化セチルピリジニウム、非エステル系界面活性剤、炭酸水素アルカリ金属塩を含有する洗口液であって、前記非エステル系界面活性剤が、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー及び/又はポリオキシエチレン・アルキルエーテルである洗口液について、他の界面活性剤を含有せず(但し、前記塩化セチルピリジニウムを除く)、前記炭酸水素アルカリ金属塩を0.05〜1.0g/100ミリリットルとなる割合で用い、前記炭酸水素アルカリ金属塩によってpHを7.5〜8.5とすることを特徴とするアルカリ性の洗口液の白濁防止方法。
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